JPH11172476A - 鉄系金属の酸洗処理方法及び酸洗処理装置 - Google Patents

鉄系金属の酸洗処理方法及び酸洗処理装置

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JPH11172476A
JPH11172476A JP9361888A JP36188897A JPH11172476A JP H11172476 A JPH11172476 A JP H11172476A JP 9361888 A JP9361888 A JP 9361888A JP 36188897 A JP36188897 A JP 36188897A JP H11172476 A JPH11172476 A JP H11172476A
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pickling
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pickling solution
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Kiyotaka Okamura
清隆 岡村
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Daido Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 酸洗液が硝酸を含有せず、しかも線材等の鉄
系金属部材の表面を高能率かつ十分に清浄化できる酸洗
方法を提供する。 【解決手段】 3〜30重量%の硫酸と、0.05〜1
0重量%の過酸化水素とを含有する硫酸−過酸化水素系
酸洗液21に、鉄系金属からなる被処理部材Wを浸漬し
てその表面を酸洗処理する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば高炭素クロ
ム軸受鋼線材、あるいは炭素工具鋼線材等の鉄系金属線
材を含む、各種鉄系金属の酸洗処理方法及び酸洗処理装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、鋼線等の線材に対し、線引きや圧
延等の加工により生じたスケールや汚れ等を除去するた
めに酸洗処理が行われている。例えば、高炭素クロム軸
受鋼線材を例にとれば、熱間圧延による圧延線材に、例
えば炭化物を球状化するための球状化焼鈍を施し、次い
で酸洗・被膜処理した後、冷間引抜加工によるサイジン
グ等の工程へと流れてゆく。そして、圧延・熱処理の線
材表面にはかなりの厚さのスケール層が形成されている
ことから、これを硫酸を含有する酸洗液を用いて酸化鉄
系スケールを溶解除去することが行なわれる。また、炭
素工具鋼線材等においても、圧延後に歪除去や均質化、
あるいは析出物固溶等の目的で熱処理が施され、さらに
酸洗によりスケール層が除去されて、以降の加工等が施
される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、熱間圧延及
び熱処理の工程を経て製造された上記軸受鋼線材あるい
は炭素工具鋼線材等の場合、例えばその熱処理の過程
で、素地の表層近傍部(例えばスケール層との境界付
近)において、雰囲気変動等の原因で浸炭現象あるいは
脱炭現象が不可避的に進行し、それによる変質層が該素
地の表層部に形成されることがある。このような変質層
は、スケール層の主体となる鉄系酸化物等よりも酸溶解
しにくいことから、通常の硫酸系酸洗液等では上側のス
ケール層は除去されても、変質層は除去しきれずに酸洗
後の線材表面に残留することがある。ベアリング転動
体、工具あるいはばねなどの線材加工製品の製造のため
に、このような変質層が残留した線材に対し伸線加工を
施したりすると、該表面残留物が破壊の起点となって断
線等のトラブルを生ずる恐れがある。
【0004】一方、別の問題としては、硫酸系酸洗液に
よる処理後に線材表面にはスマットと呼ばれる残留物層
が残る場合がある。該スマット層は、例えば、鉄炭化物
(セメンタイト等)やクロム炭化物等の金属炭化物、あ
るいは鉄系酸化物、鉄−クロム系複合酸化物などを主体
に構成されるものであるといわれている。ここで、線材
に冷間引抜加工による伸線を施す場合、線材表面には潤
滑のための被膜を形成する必要があるが、上述のような
スマット層が残留していると、潤滑被膜の付着が不十分
となり、伸線時に焼き付き等のトラブルを生ずる場合が
ある。
【0005】そこで、上述のような変質層やスマット層
を除去するために、硫酸よりもさらに酸化力の強い硝酸
系の酸洗液により線材を仕上酸洗して、そのような表面
残留物を除去することが行なわれている。しかしなが
ら、上記従来の酸洗液に含まれる硝酸は窒素成分を含ん
でおり、これを含有した酸洗廃液が排出されると海洋、
河川あるいは湖沼が窒素により富栄養化する問題があ
る。そのため、近年は廃液中の窒素含有量に対する規制
が強化されており、これを受けて線材処理ラインにおい
ても、硝酸を含有する処理液をなるべく使用しないで済
む酸洗技術への要望が高まりつつある。
【0006】本発明の課題は、酸洗液が硝酸を含有しな
いか、又は含有していてもその含有量を削減することが
でき、しかも線材等の鉄系金属部材の表面を高能率かつ
十分に清浄化できる酸洗方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】上述の課
題を解決するために、本発明の鉄系金属の酸洗処理方法
は、3〜30重量%の硫酸と、0.05〜10重量%の
過酸化水素とを含有する硫酸−過酸化水素系酸洗液に鉄
系金属からなる被処理部材を浸漬することにより、該被
処理部材の表面を酸洗処理することを特徴とする。被処
理部材は例えば鉄系金属線材である。
【0008】本発明の酸洗処理方法では、従来の硝酸系
の酸洗液に代えて上述の組成を有する硫酸−過酸化水素
系酸洗液を用いることで、鉄系線材等の鉄系金属被処理
部材の表面を、従来の硝酸系酸洗液と同程度又はそれ以
上のレベルで高能率かつ十分に清浄化できる。また、酸
洗液が硝酸を含有しないか、あるいは含有していてもそ
の含有量を削減することができるので、酸洗廃液による
水質環境の富栄養化といった問題も生じにくく、ひいて
は環境保護にも貢献することができる。
【0009】被処理部材は、鉄系金属であれば特に限定
はされないが、例えば炭素クロム軸受鋼を例示できる。
具体的には、JIS4805に規定されている下記のよ
うなものがある(以下、括弧内はFeに対する添加元素
の含有量、単位:重量%): SUJl(C:0.95〜1.10、Si:0.15〜
0.35、Mn:<0.50、Cr:0.90〜1.2
0); SUJ2(C:0.95〜1.10、Si:0.15〜
0.35、Mn:<0.50、Cr:1.30〜1.6
0); SUJ3(C:0.95〜1.10、Si:0.15〜
0.35、Mn:0.90〜1.15、Cr:0.90
〜1.20); SUJ4(C:0.95〜1.10、Si:0.15〜
0.35、Mn:<0.50、Cr:1.30〜1.6
0、Mo:0.10〜0.25); SUJ5(C:0.95〜1.10、Si:0.15〜
0.35、Mn:0.90〜1.15、Cr:0.90
〜1.20、Mo:0.10〜0.25)。
【0010】また、JISに規定された炭素工具鋼(S
K1〜7)、Mn鋼(SMn420〜443)、MnC
r鋼(SMnC420、443)、Cr鋼(SCr41
5〜445)、CrMo鋼(SCM415〜445、8
22)、NiCr鋼(SNC236、415、631、
815〜836)、NiCrMo鋼(SNCM220、
240、415、420、431〜447、616、6
25、630、815)、AlCrMo鋼(SACM6
45)等の各種機械構造用合金鋼、Si−Mn系、Cr
−Mn系、Cr−V系、Cr−Mn−B系、(以上、J
IS SUP3、6、7、9、9A、10、11A)、
Si−Cr系、Cr−Mo系(以上、SUP12、1
3)、Si−Cr−Mo系(ISO)の各種ばね鋼に対
しても本発明の方法を適用することができる。
【0011】さらに、本発明はステンレス鋼にも適用可
能である。ステンレス鋼としては、例えば、SUS20
1、SUS202、SUS301、SUS301J、S
US302、SUS302B、SUS304、SUS3
04L、SUS304N1、SUS304N2、SUS
304LN、SUS305、SUS309S、SUS3
10S、SUS316、SUS316L、SUS316
N、SUS316LN、SUS316J1、SUS31
6J1L、SUS317、SUS317L、SUS31
7J1、SUS321、SUS347、SUSXM15
J1等のオーステナイト系ステンレス鋼、SUS329
J1、SUS329J2L等のオーステナイト−フェラ
イト系ステンレス鋼、SUS405、SUS410L、
SUS429、SUS430、SUS430LX、SU
S434、SUS436L、SUS444、SUS44
7J1、SUSXM27等のフェライト系ステンレス
鋼、SUS403、SUS410、SUS410S、S
US420J1、SUS420J2、SUS429J
1、SUS440A等のマルテンサイト系ステンレス
鋼、SUS631等の析出硬化系ステンレス鋼等を例示
できる。
【0012】上述のような鋼種の線材を被処理部材とす
る場合、その線材は熱間圧延後、必要に応じて熱処理を
施して得られたものを使用できる。例えば、高炭素クロ
ム軸受鋼の場合は、熱間圧延後、例えば炭化物を球状化
するための球状化焼鈍を施したものである。球状化焼鈍
は、例えば次のような原理に基づいて実施されるもので
ある。まず、球状化処理を行う前の材料は、室温におい
ては、フェライト相を主体とするマトリックス相中に網
状あるいは層状の炭化物が析出した、硬さの大きい組織
を示す(例えば高炭素クロム軸受用鋼の場合)。これ
を、オーステナイト化温度(高炭素クロム軸受用鋼の場
合、例えば723〜727℃程度)よりも50〜90℃
程度高い第一の処理温度に材料を所定時間保持すること
により、網状あるいは層状の炭化物を、後に成長の核と
すべき部分を残して固溶させ、次いで上記第一の処理温
度よりも25〜65℃程度低い第二の処理温度に所定時
間保持することにより、上記核を球状の炭化物粒子に成
長させる方法を例示できる。
【0013】一方、それ以外の鋼種においても、熱間圧
延後に、圧延後に歪除去や均質化、あるいは析出物固溶
等の目的で熱処理が施されたものを使用できる。ただ
し、鋼種によっては熱処理が省略されることもある。
【0014】上述のような圧延線材あるいは圧延後熱処
理を施された圧延線材等の被処理部材の場合、硫酸−過
酸化水素系酸洗液への浸漬に先立って別の脱スケール処
理(以下、先行脱スケール処理という)により、その表
面の酸化鉄系スケール成分を部分的に除去ないし減少さ
せ、その時点で被処理材表面に残留している変質層やス
マット層等の残留物層を、上記硫酸−過酸化水素系酸洗
液に浸漬して除去することができる。この場合、硫酸−
過酸化水素系酸洗液への浸漬に先立って、被処理部材表
面に形成された酸化鉄系スケール成分を、硫酸を3〜3
0重量%含有する硫酸系酸洗液又は塩酸を3〜30重量
%含有する塩酸系酸洗液に浸漬して除去ないし減少させ
る工程(以下、前酸洗工程という)を行うことができ
る。なお、硫酸系酸洗液中の硫酸濃度あるいは塩酸系酸
洗液中の塩酸濃度が3重量%未満になると、被処理部材
表面の酸化鉄系スケールの除去効果が不十分となる。一
方、硫酸系酸洗液中の硫酸濃度あるいは塩酸系酸洗液中
の塩酸濃度が30重量%を超えると、硫酸濃度増加に見
合うスケール除去効果の向上が期待できなくなり、余分
に硫酸を含有させる分だけ酸洗液コストをいたずらに高
騰させる結果につながる。
【0015】上記前酸洗工程において酸化鉄系スケール
成分が除去された被処理部材の表面には、炭素含有量が
部材の平均炭素含有量とは異なる変質層が形成されてい
ることがある。例えば、軸受鋼線材あるいは炭素工具鋼
線材等の場合、例えばその熱処理の過程で、素地の表層
近傍部(例えばスケール層との境界付近)において、雰
囲気変動等の原因で浸炭現象あるいは脱炭現象が不可避
的に進行し、それによる変質層が該素地の表層部に形成
されることがある。このような変質層は、スケール層の
主体となる鉄系酸化物等よりも酸溶解しにくいことか
ら、通常の硫酸系酸洗液等では上側のスケール層は除去
されても、変質層は除去しきれずに酸洗後の線材表面に
残留することが多い。そこで、上記前酸洗工程に引き続
いて、硫酸−過酸化水素系酸洗液へ浸漬することによ
り、該変質層を化学的に剥離除去することができる。
【0016】一方、クロムを含有する鋼線材(例えばS
Cr420)を熱間圧延により製造した場合、例えば前
述の硫酸系酸洗液で処理を行なっても、その表面には、
鉄−クロム系複合酸化物やセメンタイト、あるいはクロ
ム炭化物(例えばCr236)など、硫酸単独では除去
しにくい金属化合物からなるスマット層が、強固に付着
した状態で表面に残留しやすい。しかしながら、上記本
発明の硫酸−過酸化水素系酸洗液を用いれば、鋼種によ
り、このようなスマット層も確実かつ迅速に除去ないし
減少させることができる場合がある。
【0017】硫酸を単独で含有する酸洗液は、硝酸系の
酸洗液と比較して酸化力が不足し、例えば上述のような
変質層やスマット層等を除去しきれない場合がある。し
かしながら、本発明の硫酸−過酸化水素系酸洗液の場
合、液中に存在する過酸化水素の酸化作用により、硫酸
単独では不足がちとなる自然電位レベルが補われる形と
なり、結果として酸洗液は、硝酸液水溶液に匹敵するか
それを上回る自然電位を有するようになって、良好な酸
洗能力を生ずるようになるものと考えられる。
【0018】なお、硝酸を用いない酸洗技術として特開
平9−170090号公報には、硫酸系水溶液に過酸化
水素を配合する方法が開示されている。しかしながら、
この方法は、酸洗液中に存在するFe3+イオンの酸化作
用を専ら利用するものであり、過酸化水素は、その酸化
反応によりFe3+イオンが還元されて生ずるFe2+イオ
ンを、元のFe3+イオンに戻すために使用される。そし
て、Fe2+イオンの酸化以外に過酸化水素が消費される
ことがないよう、被処理部材と接触する酸洗液は一定濃
度のFe2+イオン濃度を必ず含むものとされ、また、該
状態が維持されるように過酸化水素の添加量が調整され
る結果、過酸化水素を実質的に含まないものとなる。
【0019】これに対し、本発明の酸洗方法では、被処
理部材と接触する硫酸−過酸化水素系酸洗液中には、表
記0.05〜10重量%の濃度で過酸化水素が含有され
ている。すなわち、液中に鉄イオンが存在する場合は、
実質的にその全てをFe3+イオンとした上で、なお余剰
の過酸化水素を含有させた酸洗液を用いる点に、本発明
の最大の特徴がある。この場合、Fe3+イオンもその酸
化作用により被処理物表面の清浄化に寄与しうるが、よ
り大きな役割を果たすのは余剰に存在する過酸化水素で
あり、その強力な酸化作用によって、被処理部材表面に
上記変質層などの強固で安定な残留物が形成されていて
も、これを極めて効果的に除去することが可能となるの
である。また、建浴直後の酸洗液には、鉄系イオンは通
常ほとんど含有されていないが、従来の酸洗液では十分
な酸洗効果を得るために、ある程度の量のFe3+イオン
を含有させることが必須なため、建浴時にわざわざ硫酸
第二鉄等の形でFe3+イオンを配合することが行われて
いた。しかしながら、本発明で使用される硫酸−過酸化
水素系酸洗液は、建浴の段階でも余剰の過酸化水素によ
り十分な酸洗効果が得られるため、Fe3+イオン等の配
合は不要である。
【0020】なお、硫酸−過酸化水素系酸洗液中の硫酸
濃度が3重量%未満になると、被処理部材表面の清浄化
効果が十分に達成できなくなる。一方、硫酸を30重量
%を超えて含有させても、硫酸濃度増加に見合う表面清
浄化効果の向上が期待できなくなり、余分に硫酸を含有
させる分だけ酸洗液コストをいたずらに高騰させる結果
につながる。なお、硫酸濃度は望ましくは5〜20重量
%、さらに望ましくは5〜15重量%とするのがよい。
【0021】硫酸−過酸化水素系酸洗液は、実質的に硝
酸を含有しないものであることが望ましいが、被処理部
材表面に対する清浄化能力を一層向上させる等の目的
で、3重量%以下の範囲で硝酸が含有されていてもよ
い。ただしこの場合も、硫酸と過酸化水素とが含有され
ていることで、従来の硝酸系酸洗液と比較して硝酸の含
有量を削減できることに変わりはない。
【0022】一方、過酸化水素濃度については、これが
0.05重量%未満になると過酸化水素の酸化力に基づ
く清浄化効果の向上がほとんど期待できなくなる。ま
た、過酸化水素濃度が10重量%を超えると、過酸化水
素濃度増加に見合う表面清浄化効果の向上が期待できな
くなり、また、自己分解による過酸化水素の無駄な消費
も増大することから、余分に過酸化水素を含有させる分
だけ酸洗液コストをいたずらに高騰させる結果につなが
る。なお、過酸化水素濃度は望ましくは0.05〜5重
量%、さらに望ましくは0.1〜3重量%とするのがよ
い。
【0023】また、被処理部材表面の清浄化効果を十分
に得るには、飽和カロメル電極を基準として20℃にて
測定した被処理部材に対する硫酸−過酸化水素系酸洗液
の自然電位が−500mV以上、より望ましくは−25
0mV以上の範囲で調整するのがよい。この場合、該自
然電位の上限値は、被処理部材の表面が不働態化せず、
必要十分な酸洗効果が得られる程度に設定される。
【0024】なお、自然電位は、20℃に温度調節した
処理液中の被処理部材と、参照電極としての飽和カロメ
ル電極(ただし電解質溶液として飽和KClを用いる)
との間に生ずるガルバニー起電力として測定することが
できる。また、該自然電位の調整は、酸洗液中のFe3+
イオン濃度、あるいは余剰に存在する過酸化水素の濃度
調整により行なうことができる。
【0025】上記硫酸−過酸化水素系酸洗液は、40〜
80℃と、室温よりも高い温度に温度調整して用いる
と、酸洗能力をより高めることができる。温度が40℃
未満では、温度上昇による酸洗能力向上の効果は余り期
待できない。一方、温度が80℃以上に上昇すると、逆
に酸溶解反応等が過剰となり肌荒れ等の問題につながる
場合がある。なお、硫酸−過酸化水素系酸洗液の温度
は、望ましくは55〜65℃とするのがよい。
【0026】また、上記硫酸−過酸化水素系酸洗液は、
JISにSUJ2として規定されている高炭素クロム鋼
線材(線径10mm)を、温度30〜40℃の条件で浸
漬したときの線径減少速度(直径の減少速度)が、0.
02〜0.1mm/分となるものであることが望まし
い。線径減少速度が0.02mm/分未満になると被処
理部材表面の清浄化効果、例えば変質層の除去効果が不
十分となる場合がある。一方、線径減少速度が0.1m
m/分を超えると、被処理部材の酸溶解が過剰となり、
肌荒れ等の不良につながる場合がある。
【0027】なお、本発明者らの検討によれば、硫酸−
過酸化水素系酸洗液を用いて鉄系線材の酸洗処理を行な
った場合、従来の硝酸系酸洗液を用いた場合と比較し
て、処理後の線材表面がより平滑に仕上がることが判明
している。従って、例えば軸受用鋼線材等を、ベアリン
グ転動体や工具類の製造のために伸線加工を施したりす
る場合に、その表面を平滑に仕上がっていれば伸線時の
摩擦抵抗が減少し、例えば加工能率が向上する上、引っ
掛かりや断線等のトラブルも少なくなり、さらに伸線用
のダイスの寿命も延ばすことができる。
【0028】次に、過酸化水素は化学的安定性が一般に
それほど高くないことから、上記硫酸−過酸化水素系酸
洗液中に含有される過酸化水素は、例えば液中の鉄イオ
ンやその他分解触媒となりうる物質の存在により、被処
理部材の浸漬を行なわなくとも自己分解を起こして徐々
に濃度を減少させる。従って、被処理部材の浸漬直前時
に0.05〜10重量%の過酸化水素濃度が確保される
よう、先行する被処理部材の処理に伴う減少分あるいは
自己分解による減少分を補う形で、新たな過酸化水素を
連続的又は断続的に供給することが望ましい。なお、過
酸化水素を供給した後は被処理部材をなるべく直ちに投
入することが望ましい。
【0029】例えば、硫酸−過酸化水素系酸洗液によ
り、線材等の被処理部材を、所定の処理単位に区切って
バッチ酸洗処理する場合は、その1単位の処理が終了す
る毎に、0.05〜10重量%の過酸化水素濃度が確保
されるよう、その都度所定量の過酸化水素を硫酸−過酸
化水素系酸洗液に補充することができる。こうすれば、
被処理部材の投入時において硫酸−過酸化水素系酸洗液
中の過酸化水素濃度を確実に上記濃度範囲に調整するこ
とが可能となり、表面清浄化の効果をより確実に達成で
きるほか、1単位の処理により消耗した分だけ次の単位
の処理時に過酸化水素を補充すればよいから、過酸化水
素の無駄が抑さえられて効率的である。この場合も、過
酸化水素を供給した後は被処理部材をなるべく直ちに投
入するようにし、またその単位の処理が終了した後は、
なるべく速やかに過酸化水素を供給することが、自己分
解等に基づく過酸化水素の無駄な消費を抑さえる上で望
ましい。
【0030】なお、上記本発明の酸洗処理は、次のよう
な装置を用いることにより、能率よく実施することがで
きる。すなわち、該装置は、硫酸−過酸化水素系酸洗液
を収容する酸洗液収容部と、少なくとも被処理部材の浸
漬直前時において、硫酸−過酸化水素系酸洗液に対し、
0.05〜10重量%の過酸化水素濃度が確保されるよ
う、先行する被処理部材の処理に伴う減少分あるいは自
己分解による減少分を補う形で、新たな過酸化水素を連
続的又は断続的に補充する過酸化水素補充機構と、を備
えて構成される。
【0031】また、その酸洗処理を前述のバッチ処理で
行なう場合、上記装置を次のように構成すると、これを
能率よく実施することができる。すなわち、該装置を、
被処理部材を所定の処理単位毎に酸洗液収容部内に搬入
して、これを硫酸−過酸化水素系酸洗液中に浸漬させる
被処理部材搬入機構と、硫酸−過酸化水素系酸洗液によ
る処理が終了した被処理部材の単位を、酸洗液収容部か
ら搬出する被処理部材搬出機構とを設け、過酸化水素補
充機構は、被処理部材の1単位の処理が終了する毎に、
0.05〜10重量%の過酸化水素濃度が確保されるよ
う、その都度所定量の過酸化水素を硫酸−過酸化水素系
酸洗液に補充するものとして構成する。
【0032】なお、本発明が適用可能な被処理部材は線
材に限らず、例えば帯状鋼や棒鋼、板鋼、管鋼等であっ
てもよい。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付
の図面を参照して説明する。図1は、本発明の酸洗方法
を実施するライン(酸洗処理装置1)の一例を模式的に
示している。この例では、被処理部材は鉄系線材のコイ
ル、例えば熱間圧延後、必要に応じて所定の熱処理を施
すことにより製造されて表面にスケール層が形成された
高炭素クロム軸受鋼線材のコイルWであり、例えばレー
ル4に沿って移動するトラバーサ2により、吊具7に引
っ掛けられた状態で、所定経路に沿って配置された各工
程位置を順次搬送されるようになっている。そして、本
実施例では、搬送されるコイルWは、A位置で硫酸系酸
洗液による第一酸洗処理(前酸洗工程)が行なわれ、B
位置で第一水洗処理が行なわれ、C位置で硫酸−過酸化
水素系酸洗液による第二酸洗処理が行なわれ、さらにD
位置で第二水洗処理が行なわれるようになっている。な
お、図1において符号3はトラバーサ2を自走させるた
めの駆動モータであり、符号5は、例えば吊具7を懸架
するワイヤ(あるいはチェーン)6を巻き取りあるいは
繰り出すことにより、コイルWを上昇位置と下降位置と
の間で昇降させる昇降機構である。なお、トラバーサ2
と昇降機構5とは、被処理部材搬入機構及び被処理部材
搬出機構を構成する。
【0034】まず、吊具7により保持されたコイルWは
上昇位置に位置した状態でトラバーサ2によりA位置へ
移動する。A位置には、硫酸を3〜30重量%含有する
水溶液からなる硫酸系酸洗液9がタンク8に収容されて
おり、コイルWはそこで下降位置へ下降してその硫酸系
酸洗液9に所定時間浸漬され、第一酸洗処理が行なわれ
る。
【0035】上記第一酸洗処理により、線材表面に形成
されている酸化鉄系スケールは除去されるが、多くの場
合、熱処理時の雰囲気変動等に起因する脱炭層や浸炭層
等の変質層、あるいは鉄−クロム系複合酸化物やセメン
タイトなどからなるスマット層が除去しきれずに線材表
面に残留する。特に、互いに接触しあう巻線部間には酸
洗液が十分に行き渡らないことが多いため上記変質層や
スマット層が残りやすく、例えば線径7mm程度以下の
細線では、単位コイル長さ辺りの巻線部の形成密度が増
大し、巻線間の接触面積の合計も大きくなることから、
該変質層ないしスマット層の残留量は特に多くなる。
【0036】硫酸系酸洗液9への浸漬が終了するとコイ
ルWは昇降機構5により上昇位置へ引き上げられ、トラ
バーサ2によりB位置へ移動して、再び下降位置とな
る。該B位置には、水洗用のシャワーノズル10が、例
えばコイルWを周方向に取り囲む形態で複数配置されて
おり、それぞれコイルWに向けて水を噴射することによ
りこれを水洗する。
【0037】水洗の終わったコイルWはC位置へ運ばれ
る。該C位置には、3〜30重量%(望ましくは5〜2
0重量%、より望ましくは5〜15重量%)の硫酸と、
0.05〜10重量%(望ましくは0.05〜5重量
%、さらに望ましくは0.1〜3重量%)の過酸化水素
とを含有する水溶液からなる硫酸−過酸化水素系酸洗液
(以下、単に酸洗液とも言う)21を収容したタンク2
0(酸洗液収容部)が配置されている。コイルWはそこ
で下降位置へ下降してタンク20内の硫酸−過酸化水素
系酸洗液21に所定時間浸漬され、第二酸洗処理が行な
われる。この場合、被処理部材である線材は、上記コイ
ルWを処理単位としてバッチ酸洗処理されることとな
る。なお、飽和カロメル電極を基準として20℃にて測
定した被処理部材に対する酸洗液21の自然電位は、−
500mV以上、より望ましくは−250mV以上の範
囲で調整される。
【0038】上記酸洗液21中では、液中に存在する鉄
イオンは過酸化水素の配合により実質的に全てFe3+
オンとなっており、さらに上記濃度の過酸化水素が一種
の過剰状態で含有されている。これにより、コイルWの
線材は、過酸化水素の強力な酸化作用により、例えば線
径7mm程度以下の細線の場合でも、上記変質層やスマ
ット層を確実かつ効果的に除去することができる。ま
た、液中のFe3+イオンもその酸化作用により、線材表
面の清浄化に寄与しうる。
【0039】なお、過酸化水素は化学的安定性が一般に
それほど高くないことから、上記硫酸−過酸化水素系酸
洗液中に含有される過酸化水素は、例えば液中の鉄イオ
ンやその他分解触媒となりうる物質の存在により、コイ
ルWの浸漬を行なわなくとも自己分解を起こして徐々に
濃度を減少させる。そこで、図2に示すように、コイル
Wの浸漬直前時に前述の過酸化水素濃度が確保されるよ
う、先行するコイルWの処理に伴う減少分あるいは自己
分解による減少分を補う形で、新たな過酸化水素を供給
する過酸化水素供給機構15が設けられている。
【0040】この過酸化水素供給機構15は、コイルW
が1バッチ処理される毎に、その都度所定量の過酸化水
素を硫酸−過酸化水素系酸洗液21に補充するものとし
て構成されている。すなわち、該過酸化水素供給機構1
5は、過酸化水素(H22)を貯溜する主貯溜部27
と、その主貯溜部27からの過酸化水素を1回投入分だ
け一時的に貯溜する一時貯溜部23とを有している。主
貯溜部27からの過酸化水素は電磁バルブ26を有する
配管28を経て一時貯溜部23へ供給される。また、一
時貯溜部23内の過酸化水素は電磁バルブ25を開くこ
とによりタンク20内に投入される。さらに、一時貯溜
部23内には、過酸化水素の上記1回分投入量に対応す
る高さ位置に液面センサ24が配置されている。また、
符号22は、タンク20内にコイルWが存在するか否か
を検出するためのコイル検出センサである。そして、コ
イル検出センサ22、液面センサ24、バルブ25、バ
ルブ26およびタイマー39等が、過酸化水素供給機構
15の作動シーケンスを司る制御部30(マイクロプロ
セッサ又はハードウェアシーケンス回路等で構成され
る)に接続されている。
【0041】以下、上記過酸化水素供給機構15の作動
を説明する。図3(a)は、コイルWが酸洗液21中で
酸洗される状態を示している。そして、この浸漬時間を
利用して一時貯溜部23に過酸化水素を満たす。制御部
30(図2)は電磁バルブ26を開とし、電磁バルブ2
5を閉とする。そして、過酸化水素の液面が液面センサ
24に検出されたら電磁バルブ26を閉じ、コイルWの
酸洗が終了するまで待機する。図4は被処理材(コイル
W)の投入/引上げを繰り返したときの、酸洗液21中
の過酸化水素濃度の時間的変化を模式的に示したもので
ある。被処理部材を投入すると、酸洗の進行により液中
の過酸化水素が消費され、濃度は減少する。
【0042】タイマー39(図2)が計測するコイルW
の浸漬時間がタイムアップすると、図3(b)に示すよ
うにコイルWは引き上げられる。しかしながら、酸洗液
21中の過酸化水素は、引き上げ後も前述の自己分解を
起こすため、そのまま放置すれば図4に破線で示すよう
に、濃度はさらに減少することとなる。そこで、図3
(c)に示すように、コイルWが引き上げられてコイル
検出センサ22(図2)が非検出状態になると制御部3
0(図2)は電磁バルブ25を開き、一時貯溜部23内
の過酸化水素を全てタンク20内に投入する。これによ
り、図4に示すように酸洗液21中の過酸化水素濃度は
再び上昇する。そして、過酸化水素の投入が終了すれ
ば、電磁バルブ25が閉じられるとともに、図3(d)
に示すように、次のコイルWが酸洗液21中に浸漬さ
れ、以下同様の処理が繰り返される。
【0043】これにより、コイルWの投入時において硫
酸−過酸化水素系酸洗液21中の過酸化水素濃度を確実
に前述の濃度範囲(上限値をCU、下限値をCLとする)
に調整することができるようになり、線材の表面清浄
化、すなわちスマット層等の除去を確実に行なうことが
できる。また、コイルWの1バッチ(単位)の処理によ
り消耗した分だけ次のコイルWの処理時に過酸化水素を
補充すればよいから、過酸化水素の無駄が抑さえられて
効率的である。なお、タンク20へのコイルWの浸漬時
間tは、その浸漬期間中において過酸化水素濃度が上記
CU〜CLに維持されるように設定することが望ましい。
この場合、タンク20内の酸洗液21の絶対量が少なけ
れば浸漬時間tは短くなり、逆に多ければtは長くな
る。従って、線材表面を清浄化するのに必要十分な浸漬
時間tが確保できるよう、タンク20内の酸洗液21の
量を調整することが望ましいといえる。
【0044】図1に戻り、第二酸洗処理が終了したコイ
ルWはD位置に運ばれ、そこでB位置と同様のシャワー
ノズル40により水洗され、必要に応じて中和処理され
た後、図示しない乾燥装置により乾燥されて処理が終了
する。
【0045】なお、上記説明した例では第二酸洗処理に
おいて、1バッチの酸洗処理が終了する毎に、タンク2
0内の酸洗液21に対し断続的に過酸化水素を供給して
いたが、過酸化水素濃度(あるいは該濃度を反映した情
報:例えば酸洗液の自然電位)をモニタしながら、これ
が所定の範囲内に維持されるよう連続的に過酸化水素を
供給するようにしてもよい。図5は、その場合の過酸化
水素供給機構15の構成例を示している。タンク20内
の酸洗液21は、タンク20と連通する循環管路31と
これに設けられたポンプ32により循環させられてい
る。また、過酸化水素は貯溜部27から比例制御弁等の
流量可変バルブ125を介してタンク20内に供給され
る。一方、その循環管路31内の酸洗液21の自然電位
が、該酸洗液21中に浸漬される鉄系電極(ただし、腐
食等を防止するためにステンレス鋼製等のものを用い
る)及び標準電極と、それらの電極間のガルバニ起電力
を測定するポテンショメータ等(いずれも図示せず)を
含んで構成された電位測定部33により測定される。制
御部30はその自然電位の測定結果を受け、酸洗液21
の自然電位が所定の範囲内のものとなるように流量可変
バルブ125の開き量を制御し、過酸化水素の供給量を
調整する。
【0046】
【実施例】(実施例1)所定の圧延装置により温度90
0℃以上で熱間圧延され、さらに球状化焼鈍処理を72
5℃とそれに続く800℃との2段階の熱処理にて行っ
た高炭素クロム軸受鋼線材(SUJ2、線径5.5m
m)を、外径1150mm、内径1000mmのコイル
に巻き取り、硫酸濃度10重量%の硫酸系酸洗液(温度
50℃)中に900秒浸漬して第一酸洗処理を行ない、
その後シャワーにより水洗した。この時点で線材表面を
観察したところ、変質層と思われる層がかなり残留して
いた。また、この変質層は、X線回折により分析したと
ころ脱炭層であることがわかった。
【0047】次に、コイルWを硫酸−過酸化水素系酸洗
液(ヒータにより、温度60℃に加熱)中に300秒浸
漬して第二酸洗処理を行なった。なお、酸洗液は表1に
示す各種組成のものを用い、浴温は30〜40℃の範囲
とした。ただし、表中「*」を付したものは、本発明の
範囲外のものである。また、10重量%硝酸水溶液を用
いたものは参照例である。なお、酸洗液の組成は、最後
に過酸化水素を投入する形で建浴直後に化学滴定法等に
より分析した値であり、過酸化水素の投入から1分以内
にコイルWの酸洗を行なっている。また、被処理部材か
ら長さ10cmの測定電極片を採取して、これを飽和カ
ロメル電極(プリンストン・アライド・リサーチ社、型
番:K0077)とともに酸洗液中に浸漬するととも
に、両電極間に生ずるガルバニ起電力をポテンシオメー
タにより測定し、これを酸洗液の自然電位測定値とし
た。
【0048】こうして電解脱スケール処理が終了後、線
材Wを苛性ソーダ水溶液で中和し、さらにこれを洗浄・
乾燥してその表面の変質層の除去状態を評価した。な
お、評価は、線材表面の拡大写真(倍率10倍)を撮影
し、その変質層の除去領域の面積率を画像処理により求
め、面積率がほぼ100%に近いものを優(◎)、90
%以上のものを良(○)、50〜90%のものを可
(△)、50%未満のものを不可(×)として行った。
一方、各試料について、日本工業規格B0601に記載
の方法により、表面粗度の最大高さRmaxを測定し、Rm
axの値が15μm未満のものを優(◎)、15〜30μ
mのものを良(○)、30〜40μmのものを可
(△)、40μmを超えるものを不可(×)として判定
した。また、第二酸洗処理時の線材の線径減少速度は、
第二酸洗処理前の線径をD0、酸洗処理終了後の線径を
D1、酸洗の浸漬時間をTとして、(D0−D1)/Tに
より求めた。以上の結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】すなわち、第二酸洗の酸洗液として、本発
明の組成範囲で硫酸と過酸化水素とを含有するものを用
いることにより、変質層を良好に除去できていることが
わかる。また、硝酸水溶液を用いたものと比較して、表
面が平滑化していることもわかる。
【0051】(実施例2)所定の圧延装置により温度9
00℃以上で熱間圧延されたはだ焼き鋼(SCr42
0、線径5.5mm)を、外径1150mm、内径10
00mmのコイルに巻き取り、硫酸濃度10重量%、温
度50℃の硫酸系酸洗液中に900秒浸漬して第一酸洗
処理を行ない、その後シャワーにより水洗した。この時
点で線材表面を観察したところ、相当量のスマット層が
残留していた。
【0052】次に、コイルWを硫酸−過酸化水素系酸洗
液中に250秒浸漬して第二酸洗処理を行なった。な
お、酸洗液は表1に示す各種組成のものを用い、浴温は
30〜40℃の範囲とした。ただし、表中「*」を付し
たものは、本発明の範囲外のものである。また、10重
量%硝酸水溶液を用いたものは参照例である。なお、酸
洗液の組成は、最後に過酸化水素を投入する形で建浴直
後に化学滴定法等により分析した値であり、過酸化水素
の投入から1分以内にコイルWの酸洗を行なっている。
また、被処理部材から長さ10cmの測定電極片を採取
して、これを飽和カロメル電極(プリンストン・アライ
ド・リサーチ社、型番:K0077)とともに酸洗液中
に浸漬するとともに、両電極間に生ずるガルバニ起電力
をポテンシオメータにより測定し、これを酸洗液の自然
電位測定値とした。
【0053】こうして電解脱スケール処理が終了後、線
材Wを苛性ソーダ水溶液で中和し、さらにこれを洗浄・
乾燥してその表面のスマット層の除去状態を評価した。
なお、評価は、線材表面の拡大写真(倍率10倍)を撮
影し、その脱スマット領域の面積率を画像処理により求
め、面積率がほぼ100%に近いものを優(◎)、90
%以上のものを良(○)、50〜90%のものを可
(△)、50%未満のものを不可(×)として行った。
一方、各試料について、日本工業規格B0601に記載
の方法により、表面粗度の最大高さRmaxを測定し、Rm
axの値が15μm未満のものを優(◎)、15〜30μ
mのものを良(○)、30〜40μmのものを可
(△)、40μmを超えるものを不可(×)として判定
した。また、第二酸洗処理時の線材の線径減少速度は、
第二酸洗処理前の線径をD0、酸洗処理終了後の線径を
D1、酸洗の浸漬時間をTとして、(D0−D1)/Tに
より求めた。以上の結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】すなわち、第二酸洗の酸洗液として、本発
明の組成範囲で硫酸と過酸化水素とを含有するものを用
いることにより、良好な脱スマット状態が得られている
ことがわかる。また、硝酸水溶液を用いたものと比較し
て、表面が平滑化していることもわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鉄系金属の酸洗方法を実施するライン
の一例を示す概念図。
【図2】その硫酸−過酸化水素系酸洗液を用いる酸洗工
程の、過酸化水素供給機構の一例を示す概念図。
【図3】図2の作用説明図。
【図4】被処理部材をバッチ酸洗処理するときの、硫酸
−過酸化水素系酸洗液中の過酸化水素濃度変化の様子を
示す説明図。
【図5】過酸化水素供給機構の変形例を示す概念図。
【符号の説明】
1 酸洗処理装置 2 トラバーサ(被処理部材搬入機構、被処理部材搬出
機構) 5 昇降機構(被処理部材搬入機構、被処理部材搬出機
構) 9 硫酸系酸洗液 15 過酸化水素補充機構 20 タンク(酸洗液収容部) 21 硫酸−過酸化水素系酸洗液

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 3〜30重量%の硫酸と、0.05〜1
    0重量%の過酸化水素とを含有する硫酸−過酸化水素系
    酸洗液に鉄系金属からなる被処理部材を浸漬することに
    より、該被処理部材の表面を酸洗処理することを特徴と
    する鉄系金属の酸洗処理方法。
  2. 【請求項2】 前記硫酸−過酸化水素系酸洗液は40〜
    80℃に温度調整されたものが使用される請求項1記載
    の鉄系金属の酸洗処理方法。
  3. 【請求項3】 前記被処理部材は、前記硫酸−過酸化水
    素系酸洗液への浸漬に先立って別の脱スケール処理(以
    下、先行脱スケール処理という)により、その表面の酸
    化鉄系スケール成分が部分的に除去ないし減少させられ
    たものである請求項1又は2に記載の鉄系金属の酸洗処
    理方法。
  4. 【請求項4】 前記硫酸−過酸化水素系酸洗液への浸漬
    に先立って、前記被処理部材表面に形成された酸化鉄系
    スケール成分を、硫酸を3〜30重量%含有する硫酸系
    酸洗液又は塩酸を3〜30重量%含有する塩酸系酸洗液
    に浸漬して除去ないし減少させる工程が行なわれる請求
    項3記載の鉄系金属の酸洗処理方法。
  5. 【請求項5】 前記被処理部材は、その表面に、炭素含
    有量が部材の平均炭素含有量とは異なる変質層が形成さ
    れたものであり、 前記硫酸−過酸化水素系酸洗液への浸漬により該変質層
    が化学的に剥離又は溶解除去される請求項1ないし4の
    いずれかに記載の鉄系金属の酸洗処理方法。
  6. 【請求項6】 前記被処理部材は、金属炭化物及び/又
    は鉄−クロム系複合酸化物を含有するスマット層が表面
    に形成された鋼線材であり、前記硫酸−過酸化水素系酸
    洗液への浸漬により該スマット層を除去又は減少させる
    請求項1ないし5のいずれかに記載の鉄系金属の酸洗処
    理方法。
  7. 【請求項7】 前記硫酸−過酸化水素系酸洗液には、前
    記被処理部材の浸漬直前時に前記0.05〜10重量%
    の過酸化水素濃度が確保されるよう、先行する被処理部
    材の処理に伴う減少分あるいは自己分解による減少分を
    補う形で、新たな過酸化水素が連続的又は断続的に供給
    される請求項1ないし6のいずれかに記載の鉄系金属の
    酸洗処理方法。
  8. 【請求項8】 前記硫酸−過酸化水素系酸洗液により、
    前記被処理部材は、所定の処理単位に区切ってバッチ酸
    洗処理されるとともに、その1単位の処理が終了する毎
    に、前記0.05〜10重量%の過酸化水素濃度が確保
    されるよう、その都度所定量の過酸化水素が前記硫酸−
    過酸化水素系酸洗液に補充される請求項7記載の鉄系金
    属の酸洗処理方法。
  9. 【請求項9】 硫酸−過酸化水素系酸洗液を収容する酸
    洗液収容部と、 少なくとも被処理部材の浸漬直前時において、前記硫酸
    −過酸化水素系酸洗液に対し、0.05〜10重量%の
    過酸化水素濃度が確保されるよう、先行する被処理部材
    の処理に伴う減少分あるいは自己分解による減少分を補
    う形で、新たな過酸化水素を連続的又は断続的に補充す
    る過酸化水素補充機構と、を備えたことを特徴とする酸
    洗処理装置。
  10. 【請求項10】 被処理部材を所定の処理単位毎に前記
    酸洗液収容部内に搬入して、これを前記硫酸−過酸化水
    素系酸洗液中に浸漬させる被処理部材搬入機構と、 前記硫酸−過酸化水素系酸洗液による処理が終了した前
    記被処理部材の単位を、前記酸洗液収容部から搬出する
    被処理部材搬出機構とを設け、 前記過酸化水素補充機構は、前記被処理部材の1単位の
    処理が終了する毎に、0.05〜10重量%の過酸化水
    素濃度が確保されるよう、その都度所定量の過酸化水素
    を前記硫酸−過酸化水素系酸洗液に補充するものである
    請求項9記載の酸洗処理装置。
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