JPH11172474A - ステンレス鋼の表面処理方法 - Google Patents
ステンレス鋼の表面処理方法Info
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- JPH11172474A JPH11172474A JP35228197A JP35228197A JPH11172474A JP H11172474 A JPH11172474 A JP H11172474A JP 35228197 A JP35228197 A JP 35228197A JP 35228197 A JP35228197 A JP 35228197A JP H11172474 A JPH11172474 A JP H11172474A
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Abstract
部材表面の溶解進行を安定化でき、ひいてはスケール層
等の除去が十分になされて処理材表面の仕上がりも良好
なステンレス鋼の表面処理方法を提供する。 【解決手段】 ステンレス鋼被処理部材の脱スケール等
を行うために、弗酸−硫酸系酸洗液中に中にこれを浸漬
し、該ステンレス鋼被処理部材の表面に形成されている
スケール層を除去又は減少させる。弗酸−硫酸系酸洗液
は、弗酸と硫酸とを含有し、かつ液中のFe3+イオンの
重量をM(III)、同じくFe2+イオンの重量をM(II)と
して、M(III)/(M(III)+M(II))が0.3〜1の範
囲となるように調整される。
Description
スケール等を行うための表面処理方法に関する。
より製造されることが多いが、その熱間圧延加工あるい
はそれに続く熱処理により線材表面にはかなりの厚さの
スケール層を生ずるので、これを酸洗処理により除去す
ることが広く行われている。ここでステンレス鋼は鉄の
ほかにクロムが多量に含有されていることから、スケー
ル中には比較的溶解除去しやすい酸化鉄系スケール層の
ほか、緻密で強固な酸化クロム系スケールも形成され
る。
酸洗により可溶性の酸化鉄系の層を除去した後、次に溶
融塩浴に浸漬するいわゆるソルト処理により、クロム酸
化物を可溶性のクロム酸塩等に転化し、引き続き硫酸等
の酸浴でこれを溶解除去することが行なわれている。し
かし、これでもクロム水和物等のスケール被膜が線材表
面に相当量残留することから、さらに別の酸洗液に浸漬
して化学的にこの被膜を剥離除去する仕上酸洗処理が行
なわれるのが通常である。
に従来使用されていた酸洗液としては、弗酸と硝酸とを
含有する弗酸−硝酸系酸洗液が、クロム水和物等の被膜
除去効果に比較的優れているが、硝酸は窒素成分を含ん
でおり、これを含有した酸洗廃液が排出されると海洋、
河川あるいは湖沼が窒素により富栄養化する問題があ
る。そのため、近年は廃液中の窒素含有量に対する規制
が強化されており、これを受けて線材処理ラインにおい
ても、硝酸を含有する処理液をなるべく使用しないです
む酸洗技術への要望が高まりつつある。
弗酸と硫酸とを含有する弗酸−硫酸系酸洗液が用いられ
る場合がある。しかしながら、この酸洗液においては、
液中の弗酸及び硫酸の濃度がそれほど変動していないに
も拘わらず、線材表層部の溶解進行がある場合には不足
して処理後の表面にスケール残を生じたり、あるいは逆
に溶解進行が過剰になって肌荒れが生じるなど、スケー
ル除去能力が安定化しにくい問題がある。従って、該弗
酸−硫酸系酸洗液による、弗酸−硝酸系酸洗液の代替
は、未だ充分に進んでいるとはいい難い。
用しつつも、被処理部材表面の溶解進行を安定化でき、
ひいてはスケール層の除去が十分になされて処理材表面
の仕上がりも良好なステンレス鋼の酸洗処理方法を提供
することにある。
題を解決するために、本発明のステンレス鋼の表面処理
方法は、弗酸と硫酸とを含有し、かつ液中のFe3+イオ
ンの重量をM(III)、同じくFe2+イオンの重量をM(I
I)として、M(III)/(M(III)+M(II))が0.3〜1
の範囲となるように調整された弗酸−硫酸系酸洗液(以
下、単に酸洗液ともいう)中にステンレス鋼被処理部材
(以下、単に被処理部材ともいう)を浸漬して、該ステ
ンレス鋼被処理部材の表面に形成されているスケール層
及び/又は脱クロム層を除去ないし減少させることを特
徴とする。被処理部材は、例えばステンレス鋼線材であ
る。
ール能力は、酸洗液中のFe系イオン濃度、特にFe3+
イオンとFe2+イオンとの濃度比率に依存して大きく変
化することを見い出し、本発明を完成するに至った。す
なわち、上記本発明の酸洗方法によれば、弗酸と硫酸と
を含有する弗酸−硫酸系酸洗液により、ステンレス鋼製
被処理部材の表面に残留するクロム水和物等の強固なス
ケール被膜、あるいはスケール層形成に伴い素地側に形
成されるクロム欠乏層等の脱クロム層等を容易に剥離除
去することができる。そして、弗酸−硫酸系酸洗液中の
Fe3+イオンの重量(M(III))とFe2+イオンの重量
(M(II))とを、M(III)/(M(III)+M(II))が0.
3〜1の範囲となるように調整することで、被処理部材
表層部の酸化溶解の進行が鈍ったり、あるいは逆に過剰
になったりすることがなく、その脱スケール能力を安定
に制御することが可能となる。これにより、部材表面の
過不足のない酸化溶解状況を常に安定して形成でき、ひ
いてはスケール層ないし脱クロム層の除去が十分になさ
れ、表面の仕上がりも良好なものとすることができる。
満になると、酸洗液の脱スケール能力が不十分となり、
被処理部材表面にスケールが残留する問題を生ずる。本
発明者らの検討によれば、酸洗液の自然電位はM(III)
/(M(III)+M(II))が大きくなるほど高くなること
が判明している。従って、M(III)/(M(III)+M(I
I))が0.3未満になった場合に脱スケール効果が不足
するのは、酸洗液の自然電位が低くなり過ぎ、十分な脱
スケール状態を得るのに必要な酸化溶解電流密度を確保
できなくなるためであると考えられる。
I))の値の調整は、Fe3+イオン源となる電解質(例え
ばFe2(SO4)3など)、あるいはFe2+イオン源と
なる電解質(例えばFeSO4など)を酸洗液中に適宜
投入する方法の他、Fe3+イオンの含有量を増加させる
場合には、適当な酸化剤(例えば過酸化水素)を酸洗液
中に投入して、液中のFe2+イオンをFe3+イオンに酸
化する方法がある。また、酸洗液中のFe3+イオン及び
Fe2+イオンの含有量は、チオシアン酸カリウム比色滴
定法等の化学滴定法により同定可能である。
への浸漬工程に先立つ別の脱スケール処理(先行脱スケ
ール処理)により、予めその表面のクロム系酸化物が部
分的に除去されたものとすることができる。例えば、被
処理部材が熱間圧延により製造されたステンレス鋼線材
である場合、先行脱スケール処理は次のようなものとす
ることができる。 前酸洗処理:ステンレス鋼線材表面に形成されるスケ
ール層のうち、可溶性の酸化鉄系の層を主に除去するた
めの酸洗処理である。酸洗液としては、例えば10〜1
5重量%の硫酸を含有する硫酸系酸洗液を使用できる。 ソルト処理:前酸洗処理が行なわれる場合はその後で
実施される。水酸化ナトリウムと硝酸ナトリウムとの混
合塩浴(例えば水酸化ナトリウムの重量をW1、硝酸ナ
トリウムの重量をW2としてW1/W2が2〜5)等、ア
ルカリ金属塩を主体とする溶融塩浴が使用され、スケー
ル層に含まれるクロム酸化物系のスケール層を、重クロ
ム酸ナトリウム等の水溶性塩成分を主体とする層に転化
する。また、高熱(温度が例えば400〜450℃)の
溶融塩浴に浸漬加熱した後急冷することでスケール層に
亀裂を生じさせ、以降の酸洗処理におけるスケール層へ
の酸洗液の浸透を促す効果も生じうる。 補助酸洗処理:ソルト処理で生じた水溶性塩成分を溶
解除去する。例えば硫酸系酸洗液が使用される。
施された被処理部材に対し、前述の弗酸−硫酸系酸洗液
に浸漬する本発明の脱スケール処理を施すことにより、
クロム系酸化物又は該クロム系酸化物に由来するクロム
系化合物のうち、上記先行脱スケール処理において除去
しきれなかったものを、スケール層として除去すること
ができる。例えば、上記補助酸洗処理を行なっても、被
処理材たるステンレス鋼線材の表面にはクロム水和物等
の被膜が相当量残留する場合がある。そこで、線材を上
記弗酸と硫酸とを含有する弗酸−硫酸系酸洗液へ浸漬す
ることにより、このような被膜を容易にかつ確実に除去
することがでる。
の表面のスケール層をショットブラスト等の機械的な研
磨処理により除去する工程を含むものとしてもよい。
重量%の弗酸と、2〜15重量%の硫酸とを含有するも
のを使用するのがよい。これら2成分の含有量が上述の
範囲の下限値未満となっている場合、例えばクロム水和
物等の被膜除去の効果が不十分となり、脱スケール効果
が不十分となる場合がある。また、弗酸が4重量%を超
えて含有された場合は、被処理部材の酸化溶解が過剰と
なり、表面状態が却って悪化する場合がある。一方、硫
酸の含有量が15重量%を超えた場合は、酸洗液の粘性
率が上がり過ぎ、液中の物質移動が妨げられて反応速度
が低下して、脱スケール効果が却って低下する場合があ
る。なお、弗酸−硫酸系酸洗液中の弗酸の含有量は、よ
り望ましくは1〜4重量%とするのがよく、硫酸の含有
量はより望ましくは4〜10重量%とするのがよい。
ンとFe2+イオンとの合計含有量は、0.05〜10重
量%の範囲で調整するのがよい。該合計含有量が0.0
5重量%未満になると、酸洗液中の鉄系イオンの量がわ
ずかに変動しただけでM(III)/(M(III)+M(II))の
値が大きく変化し、これを前述の範囲内に制御すること
が困難となる。一方、合計含有量が10重量%を超える
と酸洗液の粘性率が上がり過ぎ、液中の物質移動が妨げ
られて反応速度が低下して、脱スケール効果が却って低
下する場合がある。
具体的には、JIS:G4304に記載された各種ステ
ンレス鋼があり、例えば、SUS201、SUS20
2、SUS301、SUS301J、SUS302、S
US302B、SUS304、SUS304L、SUS
304N1、SUS304N2、SUS304LN、S
US305、SUS309S、SUS310S、SUS
316、SUS316L、SUS316N、SUS31
6LN、SUS316J1、SUS316J1L、SU
S317、SUS317L、SUS317J1、SUS
321、SUS347、SUSXM15J1等のオース
テナイト系ステンレス鋼(常温においてもオーステナイ
ト組織を示すステンレス鋼)、SUS329J1、SU
S329J2L等のオーステナイト−フェライト系ステ
ンレス鋼(オーステナイトとフェライトの2相組織を示
すステンレス鋼)、SUS405、SUS410L、S
US429、SUS430、SUS430LX、SUS
434、SUS436L、SUS444、SUS447
J1、SUSXM27等のフェライト系ステンレス鋼
(熱処理によって硬化せず、かつフェライト組織を示す
ステンレス鋼)、SUS631等の析出硬化系ステンレ
ス鋼(アルミニウム、銅などの元素を添加することによ
り、熱処理によってこれらの元素を主体とする化合物等
を析出させ、硬化させることができるステンレス鋼)等
を例示できる。
念には、下記に例示される耐熱鋼も含まれるものとし、
これら鋼種に対しても本発明を適用することができる。 オーステナイト系耐熱鋼 例えばJIS:G4311及びG4312に組成が規定
されたものがあり、SUS31、SUH35、SUH3
6、SUH37、SUH38、SUH309、SUH3
10、SUH330、SUH660、SUH661等を
例示できる。なお、該オーステナイト系耐熱鋼は、本発
明においてオーステナイト系ステンレス鋼の概念に含ま
れるものとして取り扱う。 フェライト系耐熱鋼 例えばJIS:G4311及びG4312に組成が規定
されたものがあり、SUH446等を例示できる。な
お、該フェライト系耐熱鋼は、本発明においてフェライ
ト系ステンレス鋼の概念に含まれるものとして取り扱
う。 マルテンサイト系耐熱鋼 例えばJIS:G4311及びG4312に組成が規定
されたものがあり、SUS1、SUS3、SUS4、S
US11、SUS600、SUS616等を例示でき
る。なお、該マルテンサイト系耐熱鋼は、本発明におい
てマルテンサイト系ステンレス鋼の概念に含まれるもの
として取り扱う。
の、弗酸−硫酸系酸洗液中におけるアノード分極曲線を
模式的に表したものである。前述の通り、酸洗液の自然
電位は、M(III)/(M(III)+M(II))が大きくなるほ
ど高くなり、アノード分極曲線には、低電位側から、電
位増加に伴い酸化溶解電流密度が比較的大きく増加する
活性態域、電流密度値が比較的小さく、また電位変化に
対する電流密度変化も鈍くなる不働態域、電位変化に伴
い電流密度値が再び大きく増加する過不働態域が現われ
る。この場合、電流密度レベルは、脱スケール効果が過
不足なく得られる範囲(以下、最適電流密度範囲とい
う)に設定する必要があり、M(III)/(M(III)+M(I
I))の値は、酸洗液の自然電位がアノード分極曲線上に
おいて、上記最適電流密度範囲に対応した値のものとな
るように調整されることとなる。
曲線の活性態域と不働態域とにまたがって存在する場
合、M(III)/(M(III)+M(II))の値(すなわち酸洗
液の自然電位)は、不働態域に対応した範囲で制御する
ほうが、液の電位変化に対する溶解電流密度の変化も小
さいので、安定した脱スケール効果が得られ、表面の仕
上がりもより良好なものとできる。しかしながら、鋼種
によっては不働態域での電流密度がやや過剰となる場合
があり、この場合は活性態域の、電流密度ピーク点より
も負側の電位領域を採用することで、電流密度を適当な
値に下げることが可能となる。
比較的多量のNiを含んで耐酸化性が高く、酸洗液のM
(III)/(M(III)+M(II))の値を0.5以上の比較的
高い値に設定することが、良好な脱スケール効果を得る
上で望ましい。これは、M(III)/(M(III)+M(II))
を0.5以上とすることで、酸洗液の被処理部材に対す
る自然電位が不働態域のものになるためであると考えら
れる。また、オーステナイト系ステンレス鋼の場合は、
脱スケールの処理速度を高めるため、弗酸及び硫酸の濃
度を上限値(前者4重量%、後者15重量%)近くまで
増加させることも十分可能である。
ト系のステンレス鋼はNiを実質的に含有しないため、
オーステナイト系ステンレス鋼に比べるとやや耐酸化性
が低く、M(III)/(M(III)+M(II))の値(すなわち
酸洗液の自然電位)をオーステナイト系ステンレス鋼と
同様の高い値に設定すると、酸化溶解速度がやや過剰と
なって肌荒れ等の問題を生ずる場合もある。これを防止
するためには、M(III)/(M(III)+M(II))の値を
0.3〜0.5と、オーステナイト系ステンレス鋼の場
合よりも幾分低く設定することが有効となる。また被処
理部材の過剰な溶解を同様に抑制するために、酸洗液中
の弗酸含有量は3重量%以下、同じく硫酸含有量は7重
量%以下と、これもやや低めに設定することが望ましい
といえる。
材に限らず、例えば帯状鋼や棒鋼、板鋼、管鋼等であっ
てもよい。
の図面を参照して説明する。図1は、本発明の酸洗方法
を実施するラインの一例を概念的に示している。この例
では、被処理部材はステンレス鋼線材のコイル、例えば
熱間圧延等により製造されて表面にスケール層が形成さ
れたステンレス鋼線材のコイルWであり、例えば図2に
示すレール4に沿って移動するトラバーサ2により、吊
具7に引っ掛けられた状態で、図1に示す各工程位置を
順次搬送されるようになっている。なお、図2において
符号3はトラバーサ2を自走させるための駆動モータで
あり、符号5は、例えば吊具7を懸架するワイヤ(ある
いはチェーン)6を巻き取りあるいは繰り出すことによ
り、コイルWを上昇位置と下降位置との間で昇降させる
昇降機構である。なお、トラバーサ2と昇降機構5と
は、被処理部材搬入機構及び被処理部材搬出機構を構成
する。
ャワー槽51、ソルト処理槽52、冷却槽53、補助酸
洗槽54、シャワー槽55、仕上げ酸洗槽56、シャワ
ー槽57及び中和槽60がこの順序で配置され、被処理
部材である線材は、上記コイルWを処理単位として各槽
にてバッチ処理されることとなる。すなわち、図2に示
すように、吊具7により保持されたコイルWは上昇位置
に位置した状態でトラバーサ2により各槽8(50,5
2,54,56,58:図では符号8により統一的に表
示)の上方へ移動し、ついで昇降機構5により下降位置
へ下降してその槽中の液9中に所定時間浸漬されて各処
理が行なわれる。液9への浸漬が終了するとコイルWは
昇降機構5により上昇位置へ引き上げられ、トラバーサ
2により次のシャワー槽51,55,57あるいは冷却
槽53へ運ばれて再び下降位置となる。各シャワー槽に
は水洗用のシャワーノズル10が、例えばコイルWを周
方向に取り囲む形態で複数配置されており、それぞれコ
イルWに向けて水を噴射することによりこれを水洗す
る。
る。図3(a)は、脱スケール前のステンレス鋼線材表
面のスケール形成状態の一例を模式的に示すものであ
る。ステンレス鋼素地は鉄を主成分として、少ないもの
で10重量%程度、多いもので30重量%以上のクロム
を含有している。クロムは酸素との親和力が強く、大気
など酸素を含有する雰囲気中で熱間加工や熱処理を行う
と、そのスケール形成過程の初期段階で優先的に酸化さ
れて、緻密で強固な三酸化二クロム等を主体とする酸化
クロム系スケール層(図ではCr2O3と略記)を形成す
る。そして、鉄成分はそれに準じて酸化が進行し、酸化
クロム系スケール層の上に酸化鉄系スケール層(図では
Fe−Oと略記)を形成する。なお、酸化クロム系スケ
ール層と酸化鉄系スケール層との間に、鉄−クロム系複
合酸化物を主体とする複合酸化物スケール層(図ではF
e−Cr−Oと略記)が形成される場合がある。
ず、前酸洗槽50(図1)にて前酸洗処理される。酸洗
液としては、例えば10〜15重量%の硫酸を含有する
硫酸系酸洗液が使用される。この処理では、図3(b)
に示すように、コイルWは酸洗液に浸漬されることによ
り、線材表面に形成されるスケール層のうち、可溶性の
酸化鉄系スケール層あるいは複合酸化物スケール層が主
に除去される。
洗された後、ソルト処理槽52でソルト処理される。こ
の槽には、アルカリ金属塩を主体とする溶融塩、例えば
水酸化ナトリウムと硝酸ナトリウムとの混合溶融塩浴
(例えば水酸化ナトリウムの重量をW1、硝酸ナトリウ
ムの重量をW2としてW1/W2が2〜5)が形成されて
いる。浴温は例えば400〜450℃である。スケール
層に含まれる酸化クロム系スケール層は、前述のように
三酸化二クロム等を主体とする緻密で強固なものであ
り、前酸洗ではほとんど除去することができない。そこ
で、上記溶融塩浴に浸漬することで、図3(c)に示す
ように酸化クロム系スケール層は、溶融塩との間で化学
反応を起こして重クロム酸ナトリウム等の水溶性塩成分
を主体とする層に転化する。ソルト処理後のコイルW
は、冷却槽53(図1)にて冷却水中に投じられ急冷さ
れる。これにより、線材表面のスケール層には亀裂が生
じ、以降の酸洗処理におけるスケール層への酸洗液の浸
透を容易にする。
にて補助酸洗処理される。酸洗液としては、例えば硫酸
を5〜10重量%含有する硫酸系酸洗液が使用される。
この酸洗液への浸漬により、ソルト処理で生じた水溶性
塩成分が溶解除去される。しかしながら、補助酸洗処理
を行なってもなお、図4(a)に示すように、ステンレ
ス鋼線材の素地表面には相当量の残留皮膜が残るのが通
常である。この残留皮膜は、一般に、図4(b)に示す
ような構造を有するクロム水和物被膜であるといわれて
いる。
1)で水洗後、仕上酸洗槽56へ運ばれ、そこで仕上酸
洗処理(本発明の第一酸洗処理)される。本実施例にお
いては、この仕上酸洗処理が本発明の脱スケール処理と
して行われ、コイルWは、弗酸−硫酸系酸洗液に浸漬さ
れる。該弗酸−硫酸系酸洗液は、具体的には0.5〜4
重量%(望ましくは1〜4重量%)の弗酸と、2〜15
重量%(望ましくは4〜10重量%)の硫酸とを含有す
る水溶液系酸洗液とされ、弗酸−硫酸系酸洗液中のFe
3+イオンの重量(M(III))とFe2+イオンの重量(M
(II))とは、0.3〜1の範囲となるように調整され
る。さらに、Fe3+イオンとFe2+イオンとの合計含有
量は、0.05〜10重量%の範囲で調整される。
れる。その推測される除去のメカニズムを図4(c)及
び(d)に示している。すなわち、含まれる弗酸に由来
するF-イオンが残留皮膜中のクロム水和物の骨格を破
壊する一方、硫酸はその酸化力により、露出した素地の
鉄成分を溶かし出して残留皮膜を剥がしとると考えられ
る。なお、硫酸は、酸洗液中のFe2+イオンを酸化して
Fe3+イオンとし、このFe3+イオンが素地中の鉄成分
をFe2+イオンに酸化して溶かし出す機構が主体になっ
ていると推測される。ここで、素地の表層部には、スケ
ール層側へのクロム拡散に起因するクロム欠乏層(脱ク
ロム層)が形成されることがある。この場合、酸洗液と
の接触により、このクロム欠乏層も溶解除去することが
できる。
0.3〜1の範囲となるように調整することで、被処理
部材表層部の酸化溶解の進行が鈍ったり、あるいは過剰
になったりすることがなく、その脱スケール能力を安定
に制御することが可能となる。これにより、部材表面の
過不足のない酸化溶解状況を安定して形成でき、ひいて
はスケール層の除去が十分になされ、表面の仕上がりも
良好なものとすることができる。
ちに、弗酸−硫酸系酸洗液中のFe3+イオンは、Fe2+
イオンに還元されて量が次第に減少し、M(III)/(M
(III)+M(II))の値も小さくなる。この場合、例えば
酸洗液中のFe3+イオン及びFe2+イオンの含有量を、
前述の化学滴定法等により定期的に同定するとともに、
M(III)/(M(III)+M(II))が0.3未満となった場
合には、過酸化水素等の酸化剤を適量酸洗液中に投入し
てFe2+イオンをFe3+イオンに酸化し、該M(III)/
(M(III)+M(II))の値を0.3以上の値に維持する
ようにする。
(約20℃前後)としてもよいが、これを昇温すること
で、脱スケールの反応速度を増大させて処理の能率を向
上させることができる。なお、酸洗液を昇温する場合
は、その液温は、蒸気等が過剰に発生しない範囲で、線
材の材質あるいは表面のスケール形成状態に応じて所期
の脱スケール反応速度が得られるよう、適宜(例えば7
0℃以下)調整することができる。
によって適宜調整することができる。例えばコイルWの
材質がオーステナイト系ステンレス鋼である場合は、比
較的多量のNiを含んで耐酸化性が高く、酸洗液のM(I
II)/(M(III)+M(II))の値を0.5以上の比較的高
い値に設定することが、良好な脱スケール効果を得る上
で望ましい。一方、フェライト系あるいはマルテンサイ
ト系のステンレス鋼の場合は、オーステナイト系ステン
レス鋼よりも幾分酸化溶解が進行しやすいので、過剰な
溶解による肌荒れ等の発生を避けるため、M(III)/
(M(III)+M(II))の値は0.3〜0.5とやや低目
に設定するのがよい。また、過剰な溶解を同様に抑制す
るために、酸洗液中の弗酸含有量は3重量%以下、同じ
く硫酸含有量は7重量%以下と、これもやや低めに設定
することが望ましい。
了した線材コイルWは、シャワー槽57で水洗後、さら
に中和槽60で中和された後、図示しない乾燥装置によ
り乾燥されて処理が終了する。
は、スマットと呼ばれる残留スケール層が残ることがあ
る。このスマット層が形成される原因としては、素地中
に存在していた金属炭化物、例えばクロム含有炭化物
(例えばM23C6あるいはM2C、Mはクロムを主成分と
する金属元素)等の粒子が酸洗により遊離して、素地表
面に再吸着することが考えられる。このようなスマット
層が形成されると線材の表面が黒変して外観が損われる
ほか、ばねなどの線材加工製品を製造するために、処理
後の線材に伸線加工を施す場合はスマット層により摩擦
が増大して傷発生や断線等のトラブルを起こしたり、伸
線ダイスの寿命を縮めたりする問題が生じうることもあ
りうる。この場合、線材を、硝酸水溶液等の酸洗液にさ
らに浸漬することにより、上記スマット層を除去するこ
とができる。
した後、大気中にて温度1000℃で熱処理したオース
テナイト系ステンレス鋼線材(SUS304、線径5.
5mm)を、所定の大きさのコイルに巻き取った。この
コイルWを、図1のラインにて酸洗処理した。なお、各
処理の条件は以下の通りである。 前酸洗処理 酸洗液:10重量%硫酸水溶液 浸漬時間:300秒 ソルト処理 溶融塩:水酸化ナトリウム60重量%、残部硝酸ナトリ
ウム 浴温:450℃ 浸漬時間:350秒 補助酸洗処理 酸洗液:10重量%硫酸水溶液 浸漬時間:180秒 仕上酸洗処理 酸洗液:弗酸−硫酸水溶液: 表1の各種組成を採用。ただしFe3+イオン及びFe2+
イオンは、Fe2(SO4)3及びFeSO4の形でそれぞ
れ配合し、チオシアン酸カリウム比色滴定法により各含
有量M(III),M(II)を同定して、M(III)/(M(III)
+M(II))の値を算出している。 浸漬時間:300秒
ソーダ水溶液で中和し、さらにこれを洗浄・乾燥してそ
の表面のスケール層の除去状態を評価した。なお、評価
は、線材表面の拡大写真(倍率10倍)を撮影し、その
脱スケール領域の面積率を画像処理により求め、面積率
がほぼ100%に近いものを優(◎)、90%以上のも
のを良(○)、50〜90%のものを可(△)、50%
未満のものを不可(×)として行った。また、一方、各
試料について、日本工業規格B0601に記載の方法に
より、表面粗度の最大高さRmaxを測定し、Rmaxの値が
15μm未満のものを優(◎)、15〜30μmのもの
を良(○)、30〜40μmのものを可(△)、40μ
mを超えるものを不可(×)として判定した。以上の結
果を表1に示す。
の値が本発明の範囲に属する弗酸−硫酸系酸洗液を使用
して処理を行ったものは、良好な脱スケール状態が得ら
れていることがわかる。
延した後、窒素雰囲気中にて温度850℃で熱処理した
フェライト系ステンレス鋼線材(SUS430、線径
5.5mm)を、所定の大きさのコイルに巻き取った。
このコイルWを、図1のラインにて酸洗処理した。な
お、各処理の条件は以下の通りである。 前酸洗処理 酸洗液:10重量%硫酸水溶液 浸漬時間:300秒 ソルト処理 溶融塩:水酸化ナトリウム60重量%、残部硝酸ナトリ
ウム 浴温:450℃ 浸漬時間:350秒 補助酸洗処理 酸洗液:10重量%硫酸水溶液 浸漬時間:180秒 仕上酸洗処理 酸洗液:弗酸−硫酸水溶液: 表2の各種組成を採用。ただしFe3+イオン及びFe2+
イオンは、Fe2(SO4)3及びFeSO4の形で配合
し、チオシアン酸カリウム比色滴定法により各含有量M
(III),M(II)を同定して、M(III)/(M(III)+M(I
I))の値を算出している。 浸漬時間:250秒
ソーダ水溶液で中和し、さらにこれを洗浄・乾燥してそ
の表面のスケール層の除去状態を評価した。なお、評価
は、線材表面の拡大写真(倍率10倍)を撮影し、その
脱スケール領域の面積率を画像処理により求め、面積率
がほぼ100%に近いものを優(◎)、90%以上のも
のを良(○)、50〜90%のものを可(△)、50%
未満のものを不可(×)として行った。また、一方、各
試料について、日本工業規格B0601に記載の方法に
より、表面粗度の最大高さRmaxを測定し、Rmaxの値が
15μm未満のものを優(◎)、15〜30μmのもの
を良(○)、30〜40μmのものを可(△)、40μ
mを超えるものを不可(×)として判定した。以上の結
果を表2に示す。
の値が本発明の範囲に属する弗酸−硫酸系酸洗液を使用
して処理を行ったものは、良好な脱スケール状態が得ら
れていることがわかる。
す概念図。
図。
模式図。
のアノード分極曲線の模式図。
Claims (7)
- 【請求項1】 弗酸と硫酸とを含有し、かつ液中のFe
3+イオンの重量をM(III)、同じくFe2+イオンの重量
をM(II)として、M(III)/(M(III)+M(II))が0.
3〜1の範囲となるように調整された弗酸−硫酸系酸洗
液中にステンレス鋼被処理部材(以下、単に被処理部材
という)を浸漬して、該ステンレス鋼被処理部材の表面
に形成されているスケール層及び/又は脱クロム層を除
去ないし減少させることを特徴とするステンレス鋼の表
面処理方法。 - 【請求項2】 前記被処理部材は、前記弗酸−硫酸系酸
洗液への浸漬に先立つ別の脱スケール処理(以下、先行
脱スケール処理という)により、予めその表面のクロム
系酸化物が部分的に除去されたものであり、 前記弗酸−硫酸系酸洗液に浸漬することにより、前記ク
ロム系酸化物又は該クロム系酸化物に由来するクロム系
化合物のうち、前記先行脱スケール処理において除去し
きれなかったものが、前記スケール層として除去ないし
減少させられる請求項1記載のステンレス鋼の表面処理
方法。 - 【請求項3】 前記弗酸−硫酸系酸洗液中の弗酸の含有
量が0.5〜4重量%、同じく硫酸の含有量が2〜15
重量%の範囲で調整されている請求項1又は2に記載の
ステンレス鋼の表面処理方法。 - 【請求項4】 前記弗酸−硫酸系酸洗液中のFe3+イオ
ンとFe2+イオンとの合計含有量が0.05〜10重量
%の範囲で調整される請求項1ないし3のいずれかに記
載のステンレス鋼の表面処理方法。 - 【請求項5】 前記被処理部材はオーステナイト系ステ
ンレス鋼であり、前記弗酸−硫酸系酸洗液は、前記M(I
II)/(M(III)+M(II))の値が0.5以上の範囲で調
整される請求項1ないし4のいずれかに記載のステンレ
ス鋼の表面処理方法。 - 【請求項6】 前記被処理部材はフェライト系又はマル
テンサイト系ステンレス鋼であり、前記弗酸−硫酸系酸
洗液は、前記M(III)/(M(III)+M(II))の値が0.
3〜0.5の範囲で調整される請求項1ないし4のいず
れかに記載のステンレス鋼の表面処理方法。 - 【請求項7】 前記弗酸−硫酸系酸洗液中の弗酸含有量
は3重量%以下であり、同じく硫酸含有量は7重量%以
下である請求項6記載のステンレス鋼の表面処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35228197A JPH11172474A (ja) | 1997-12-04 | 1997-12-04 | ステンレス鋼の表面処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35228197A JPH11172474A (ja) | 1997-12-04 | 1997-12-04 | ステンレス鋼の表面処理方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11172474A true JPH11172474A (ja) | 1999-06-29 |
Family
ID=18422998
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP35228197A Pending JPH11172474A (ja) | 1997-12-04 | 1997-12-04 | ステンレス鋼の表面処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH11172474A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109722508A (zh) * | 2017-10-27 | 2019-05-07 | 杰富意钢铁株式会社 | 铁素体系不锈钢板及其制造方法 |
-
1997
- 1997-12-04 JP JP35228197A patent/JPH11172474A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109722508A (zh) * | 2017-10-27 | 2019-05-07 | 杰富意钢铁株式会社 | 铁素体系不锈钢板及其制造方法 |
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