JP2000192300A - 鉄系金属線材の酸洗処理方法 - Google Patents

鉄系金属線材の酸洗処理方法

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JP2000192300A
JP2000192300A JP36448098A JP36448098A JP2000192300A JP 2000192300 A JP2000192300 A JP 2000192300A JP 36448098 A JP36448098 A JP 36448098A JP 36448098 A JP36448098 A JP 36448098A JP 2000192300 A JP2000192300 A JP 2000192300A
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pickling
iron
wire
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nitric acid
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Kiyotaka Okamura
清隆 岡村
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Daido Steel Co Ltd
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  • Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 酸洗液中の硝酸含有量の削減が可能でしかも
線材等の鉄系金属部材の表面を高能率かつ十分に清浄化
でき、加えて線材の仕上がり表面が極度に平滑化せず、
伸線加工等に供した場合に引き抜きダイスの寿命低下を
招きにくい酸洗方法を提供する。 【解決手段】 5〜30重量%の硫酸と、1〜6重量%
の硝酸とを含有し、かつその温度を50〜70℃に昇温
した硫酸−硝酸系酸洗液21に鉄系金属線材Wを浸漬す
ることにより、該鉄系金属線材の表面を酸洗処理する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば高炭素クロ
ム軸受鋼線材、あるいは炭素工具鋼線材等の鉄系金属線
材を含む、各種鉄系金属の酸洗処理方法及び酸洗処理装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、鋼線等の線材に対し、線引きや圧
延等の加工により生じたスケールや汚れ等を除去するた
めに酸洗処理が行われている。例えば、高炭素クロム軸
受鋼線材を例にとれば、熱間圧延による圧延線材に、例
えば炭化物を球状化するための球状化焼鈍を施し、次い
で酸洗・被膜処理した後、冷間引抜加工によるサイジン
グ等の工程へと流れてゆく。そして、圧延・熱処理の線
材表面にはかなりの厚さのスケール層が形成されている
ことから、これを硫酸を含有する酸洗液を用いて酸化鉄
系スケールを溶解除去することが行なわれる。また、炭
素工具鋼線材等においても、圧延後に歪除去や均質化、
あるいは析出物固溶等の目的で熱処理が施され、さらに
酸洗によりスケール層が除去されて、以降の加工等が施
される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、熱間圧延及
び熱処理の工程を経て製造された上記軸受鋼線材あるい
は炭素工具鋼線材等の場合、例えばその熱処理の過程
で、素地の表層近傍部(例えばスケール層との境界付
近)において、雰囲気変動等の原因で浸炭現象あるいは
脱炭現象が不可避的に進行し、それによる変質層が該素
地の表層部に形成されることがある。このような変質層
は、スケール層の主体となる鉄系酸化物等よりも酸溶解
しにくいことから、通常の硫酸系酸洗液等では上側のス
ケール層は除去されても、変質層は除去しきれずに酸洗
後の線材表面に残留することがある。ベアリング転動
体、工具あるいはばねなどの線材加工製品の製造のため
に、このような変質層が残留した線材に対し伸線加工を
施したりすると、該表面残留物が破壊の起点となって断
線等のトラブルを生ずる恐れがある。
【0004】一方、別の問題としては、硫酸系酸洗液に
よる処理後に線材表面にはスマットと呼ばれる残留物層
が残る場合がある。該スマット層は、例えば、鉄炭化物
(セメンタイト等)やクロム炭化物等の金属炭化物、あ
るいは鉄系酸化物、鉄−クロム系複合酸化物などを主体
に構成されるものであるといわれている。ここで、線材
に冷間引抜加工による伸線を施す場合、線材表面には潤
滑のための被膜を形成する必要があるが、上述のような
スマット層が残留していると、潤滑被膜の付着が不十分
となり、伸線時に焼き付き等のトラブルを生ずる場合が
ある。
【0005】そこで、上述のような変質層やスマット層
を除去するために、硫酸濃度を高めて酸洗力を高めるこ
とも考えられる。また、酸化力を高めるために過酸化水
素や過マンガン酸カリウム等の適当な酸化剤を酸洗液中
に適宜添加することもある。しかしながら、このような
方法を採用した場合、本発明者らの検討によると、酸洗
後の線材表面が平滑化し過ぎることがあり、例えば酸洗
後の線材を、線引きダイスを用いた伸線加工に供した場
合に次のような不具合を生じうることがわかった。すな
わち、線材表面が平滑になり過ぎると、ダイス内面と線
材表面との間の密着面積が増大したり、あるいは極めて
平滑な部材間にて生ずる張り付き現象等の要因にて接触
摩擦が増大し、ダイス寿命を縮めたりする場合がある。
また、伸線に際しては線材表面に、潤滑あるいは焼付き
防止のための樹脂あるいは潤滑剤の被膜(以下、両者を
総称して潤滑被膜という)を施す必要があるが、線材表
面が滑らかであると、ダイスと線材とが直接接触する平
坦な部分が多くなるので、ダイスを通す際に線材表面に
保持される潤滑被膜の量が不十分となったり、あるいは
密着力が不足したりすることがある。その結果、潤滑効
果が不足してダイス焼付きが起こったり、あるいはそれ
に伴うダイスマークが発生して、細線への伸線が不可能
となったり、伸線速度が低下したりといった不具合を生
じうる。
【0006】一方、硫酸よりもさらに酸化力の強い硝酸
系の酸洗液を使用することも行われている。しかしなが
ら、現行の硝酸系の酸洗液は12%程度のかなり高濃度
の硝酸を含有しており、廃液処理が問題になる場合があ
る。すなわち、酸洗液に含まれる硝酸は窒素成分を含ん
でおり、これを含有した酸洗廃液が排出されると海洋、
河川あるいは湖沼が窒素により富栄養化する問題があ
る。そのため、近年は廃液中の窒素含有量に対する規制
が強化されており、これを受けて線材処理ラインにおい
ても、処理液中の硝酸含有量を減ずる技術への要望が高
まりつつある。
【0007】本発明の課題は、酸洗液中の硝酸含有量の
削減が可能でしかも線材等の鉄系金属部材の表面を高能
率かつ十分に清浄化でき、加えて線材の仕上がり表面が
極度に平滑化せず、伸線加工等に供した場合に引き抜き
ダイスの寿命低下を招きにくい酸洗方法を提供すること
にある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】上述の課
題を解決するために、本発明の鉄系金属線材の酸洗処理
方法は、5〜30重量%の硫酸と、1〜6重量%の硝酸
とを含有し、かつその温度を50〜70℃に昇温した硫
酸−硝酸系酸洗液に鉄系金属線材を浸漬することによ
り、該鉄系金属線材の表面を酸洗処理することを特徴と
する。
【0009】本発明の酸洗処理方法では、従来の硝酸系
の酸洗液に代えて上述の組成を有する硫酸−硝酸系酸洗
液を用い、かつ酸洗液浴の温度を50〜70℃に昇温す
ることで、鉄系金属線材の表面を、従来の硝酸系酸洗液
と同程度又はそれ以上のレベルにて十分かつ高能率に清
浄化できる。また、硝酸のみを含有していた従来の酸洗
液の場合、最低でも10〜12重量%程度の硝酸含有量
が必要であったところ、本発明のようにが硫酸−硝酸系
酸洗液を使用することで、硝酸の含有量を大幅に削減す
ることができるので、酸洗廃液による水質環境の富栄養
化といった問題も生じにくく、ひいては環境保護にも貢
献することができる。また、酸洗液浴を昇温することで
線材溶解の反応効率が向上し、単位重量の線材当りの硝
酸の消費量が減少する上、浸漬時間も短くて済むように
なる。その結果、同じ重量の線材を処理した場合でも酸
洗廃液の発生量が少なくなり、ひいては排出される硝酸
の量をさらに減ずることができる。また、線材の処理能
率も向上させることができる。
【0010】また、上記の酸洗液を使用することにより
酸洗後の線材表面が適度に粗くなるので、例えば前述の
ような平滑化の進行し過ぎによる、伸線引抜時の接触摩
擦増大を抑制することができ、ダイス寿命を向上でき
る。また、線材表面が適度に粗くなることで線材表面に
保持される潤滑被膜の量を十分確保でき、また、その線
材表面に対する密着力も向上する。これにより、ダイス
焼付きやダイスマークの発生等も効果的に防止ないし抑
制することができる。
【0011】硫酸−硝酸系酸洗液中の硫酸含有量が5重
量%未満になると、酸洗液の線材に対する溶解力が低下
し、処理能率が低下したり十分な酸洗効果が得られなく
なる場合がある。他方、硫酸含有量が30重量%を超え
ると、酸洗後の線材表面の仕上がりが平滑化し過ぎ、伸
線引抜時の接触摩擦が増大してダイス寿命を縮めたり、
あるいは断線等のトラブルにつながる場合がある。ま
た、硫酸濃度増加に見合う溶解力効果の向上も期待でき
なくなり、余分に硫酸を含有させる分だけ酸洗液コスト
をいたずらに高騰させる結果につながる。なお、酸洗液
中の硫酸濃度は、望ましくは7〜15重量%とするのが
よい。
【0012】他方、硫酸−硝酸系酸洗液中の硝酸含有量
が1重量%未満になると、酸洗液の線材に対する溶解力
が低下し、処理能率が低下したり、十分な酸洗効果が得
られなくなる場合がある。また、硫酸濃度が比較的高い
場合には、処理後の線材の表面粗さが小さくなり過ぎ、
伸線加工時等において前述の不具合を生ずる場合があ
る。他方、硝酸含有量が6重量%を超えると、逆に酸洗
液の線材に対する溶解力が強くなり過ぎ、例えばコイル
状に巻かれた線材の重なり部等、酸洗液の浸透がやや起
こりにくい部分にて線材表面を十分に溶解させようとし
た場合に、コイルの最外面部など酸洗液との接触が妨げ
られにくい部分の溶解が過剰になったりする不具合につ
ながる。酸洗液中の硝酸濃度は、望ましくは2〜5重量
%とするのがよい。
【0013】また、酸洗液の温度が50℃未満になる
と、酸洗処理能率が低下したり、十分な酸洗効果が得ら
れなくなる場合がある。また、処理後の線材の表面粗さ
が小さくなり過ぎ、伸線加工時等において前述の不具合
を生ずる場合がある。他方、酸洗液の温度が70℃を超
えると、浸漬された線材の溶解が急速に進みやすくな
り、溶解量の制御を行いにくくなる場合がある。また、
酸洗液の蒸発が激しくなるので、その蒸気の排出に手間
がかかるほか、蒸発に伴い酸濃度が変化しやすくなり、
工程の安定化にも支障を来たす。なお、酸洗液の温度
は、望ましくは55〜65℃の範囲にて調整するのがよ
い。
【0014】なお、参考技術として特開昭52−638
24号公報には、ステンレス鋼帯を硝酸と硫酸とを含有
する水溶液にて酸洗処理する技術が開示されている。し
かしながら、公報中に開示された酸洗条件においては、
本発明と類似した濃度の酸洗液(硫酸:10重量%、硝
酸:5重量%)を使用しているものの、酸洗液浴の温度
が40℃と、本発明よりもかなり低い温度が採用されて
いる。本発明の酸洗方法においては、酸洗液浴の昇温に
より線材表面を比較的急速に溶解させることで、伸線加
工等に適した、適度に粗い表面状態を得ることに成功し
ている。しかしながら、上記公報の技術では酸洗液浴の
温度が低いため被処理材の表面がゆっくりと溶解するの
で、もし線材の酸洗に適用すれば、伸線加工等には不利
な平滑な表面状態にならざるを得ない。これは、該公報
の技術が帯鋼に関するものであって、線材に関するもの
ではないことからも明白である。
【0015】また、処理後の線材表面の中心線平均粗さ
Raは0.8〜6μmとなっているのがよい。中心線平
均粗さRaが0.8μm以下では、伸線時の線材とダイ
スとの接触摩擦が増大し、ダイス寿命を縮めたり、ダイ
ス焼き付きやダイスマークの発生等を引き起こす場合が
ある。他方、中心線平均粗さRaが6μmを超えると、
線材表面が逆に粗くなり過ぎて線材とダイスとの接触摩
擦が増大し、ダイス寿命を縮めたり、あるいは断線等の
トラブルにつながる場合がある。上記中心線平均粗さR
aは、望ましくは2〜4μmとなっているのがよい。他
方、処理後の線材表面の10点平均粗さRzは、同様の
理由により9〜40μm、望ましくは15〜30μmと
なっているのがよい。
【0016】本発明に適用可能な鉄系金属線材の材質
は、鉄系金属であれば特に限定はされないが、例えば炭
素クロム軸受鋼を例示できる。具体的には、JIS48
05に規定されている下記のようなものがある(以下、
括弧内はFeに対する添加元素の含有量、単位:重量
%): SUJl(C:0.95〜1.10、Si:
0.15〜0.35、Mn:<0.50、Cr:0.9
0〜1.20); SUJ2(C:0.95〜1.10、Si:0.15〜
0.35、Mn:<0.50、Cr:1.30〜1.6
0); SUJ3(C:0.95〜1.10、Si:0.15〜
0.35、Mn:0.90〜1.15、Cr:0.90
〜1.20); SUJ4(C:0.95〜1.10、Si:0.15〜
0.35、Mn:<0.50、Cr:1.30〜1.6
0、Mo:0.10〜0.25); SUJ5(C:0.95〜1.10、Si:0.15〜
0.35、Mn:0.90〜1.15、Cr:0.90
〜1.20、Mo:0.10〜0.25)。
【0017】また、JISに規定された炭素工具鋼(S
K1〜7)、Mn鋼(SMn420〜443)、MnC
r鋼(SMnC420、443)、Cr鋼(SCr41
5〜445)、CrMo鋼(SCM415〜445、8
22)、NiCr鋼(SNC236、415、631、
815〜836)、NiCrMo鋼(SNCM220、
240、415、420、431〜447、616、6
25、630、815)、AlCrMo鋼(SACM6
45)等の各種機械構造用合金鋼、Si−Mn系、Cr
−Mn系、Cr−V系、Cr−Mn−B系、(以上、J
IS SUP3、6、7、9、9A、10、11A)、
Si−Cr系、Cr−Mo系(以上、SUP12、1
3)、Si−Cr−Mo系(ISO)の各種ばね鋼に対
しても本発明の方法を適用することができる。
【0018】上述のような鋼種の線材を使用する場合、
その線材は熱間圧延後、必要に応じて熱処理を施して得
られたものを使用できる。例えば、高炭素クロム軸受鋼
の場合は、熱間圧延後、例えば炭化物を球状化するため
の球状化焼鈍を施したものである。球状化焼鈍は、例え
ば次のような原理に基づいて実施されるものである。ま
ず、球状化処理を行う前の材料は、室温においては、フ
ェライト相を主体とするマトリックス相中に網状あるい
は層状の炭化物が析出した、硬さの大きい組織を示す
(例えば高炭素クロム軸受用鋼の場合)。これを、オー
ステナイト化温度(高炭素クロム軸受用鋼の場合、例え
ば723〜727℃程度)よりも50〜90℃程度高い
第一の処理温度に材料を所定時間保持することにより、
網状あるいは層状の炭化物を、後に成長の核とすべき部
分を残して固溶させ、次いで上記第一の処理温度よりも
25〜65℃程度低い第二の処理温度に所定時間保持す
ることにより、上記核を球状の炭化物粒子に成長させる
方法を例示できる。
【0019】一方、それ以外の鋼種においても、熱間圧
延後に、圧延後に歪除去や均質化、あるいは析出物固溶
等の目的で熱処理が施されたものを使用できる。ただ
し、鋼種によっては熱処理が省略されることもある。
【0020】上述のような圧延線材あるいは圧延後熱処
理を施された圧延線材等の鉄系金属線材の場合、硫酸−
硝酸系酸洗液への浸漬に先立って別の脱スケール処理
(先行脱スケール処理)により、その表面の酸化鉄系ス
ケール成分を部分的に除去ないし減少させ、その時点で
被処理材表面に残留している変質層やスマット層等の残
留物層を、上記硫酸−硝酸系酸洗液に浸漬して除去する
ことができる。この場合、硫酸−硝酸系酸洗液への浸漬
に先立って、鉄系金属線材表面に形成された酸化鉄系ス
ケール成分を、硫酸を3〜30重量%含有する硫酸系酸
洗液又は塩酸を3〜30重量%含有する塩酸系酸洗液に
浸漬して除去ないし減少させる工程を、先行脱スケール
処理として行うことができる。なお、硫酸系酸洗液中の
硫酸濃度あるいは塩酸系酸洗液中の塩酸濃度が3重量%
未満になると、鉄系金属線材表面の酸化鉄系スケールの
除去効果が不十分となる場合がある。一方、硫酸系酸洗
液中の硫酸濃度あるいは塩酸系酸洗液中の塩酸濃度が3
0重量%を超えると、硫酸濃度増加に見合うスケール除
去効果の向上が期待できなくなり、余分に硫酸を含有さ
せる分だけ酸洗液コストをいたずらに高騰させる結果に
つながる場合がある。
【0021】上記先行脱スケール処理により酸化鉄系ス
ケール成分が除去された鉄系金属線材の表面には、炭素
含有量が部材の平均炭素含有量とは異なる変質層が形成
されていることがある。例えば、軸受鋼線材あるいは炭
素工具鋼線材等の場合、例えばその熱処理の過程で、素
地の表層近傍部(例えばスケール層との境界付近)にお
いて、雰囲気変動等の原因で浸炭現象あるいは脱炭現象
が不可避的に進行し、それによる変質層が該素地の表層
部に形成されることがある。このような変質層は、スケ
ール層の主体となる鉄系酸化物等よりも酸溶解しにくい
ことから、通常の硫酸系酸洗液等では上側のスケール層
は除去されても、変質層は除去しきれずに酸洗後の線材
表面に残留することが多い。そこで、上記先行脱スケー
ル処理に引き続いて、硫酸−硝酸系酸洗液へ浸漬するこ
とにより、該変質層を化学的に剥離・除去することがで
きる(以下、これを溶削処理ともいう)。
【0022】一方、クロムを含有する鋼線材(例えばS
Cr420)を熱間圧延により製造した場合、例えば前
述の硫酸系酸洗液で処理を行なっても、その表面には、
鉄−クロム系複合酸化物やセメンタイト、あるいはクロ
ム炭化物(例えばCr23 )など、硫酸単独では除
去しにくい金属化合物からなるスマット層が、強固に付
着した状態で表面に残留しやすい。しかしながら、上記
本発明の硫酸−硝酸系酸洗液を用いれば、鋼種により、
このようなスマット層も確実かつ迅速に除去ないし減少
させることができる場合がある。
【0023】なお、硫酸−硝酸系酸洗液にて鉄系線材を
処理する場合、条件によってはNO 等の窒素酸化物ガ
スが発生することがある。硫酸−硝酸系酸洗液の線材に
対する溶解力の少なくとも一部は、含有される硝酸の酸
化力によって担われていると考えられるが、線材を酸化
・溶解した硝酸自体は弱酸である亜硝酸に還元され、液
中にて過飽和となった亜硝酸が窒素酸化物を遊離しやす
くなることが原因であると考えられる。本発明者らが検
討した結果によると、新しく建浴した酸洗液では窒素酸
化物の発生はそれほど顕著ではないが、線材のバッチを
数回処理した後から窒素酸化物の発生が見られるように
なり、特に線材投入直後における線材表面からの窒素酸
化物発生が著しくなる。このことから考えて、酸洗液に
よる線材の溶解により、線材から脱落した不溶性のスラ
ッジ(例えばセメンタイトやクロム酸化物など)や、線
材の溶解により内部から表面に露出するスマット粒子
が、亜硝酸の水と窒素酸化物への分解反応(HNO
HNO→2NO+HO)を促進する触媒として機
能しているとも推測される。
【0024】このような窒素酸化物の発生を抑制するに
は、酸洗液に適当な酸化剤を添加して亜硝酸を酸化し、
硝酸に戻してやることが有効である。このような酸化剤
としては過酸化水素を使用することができる。過酸化水
素の添加・配合により、酸洗液からの上記のような窒素
酸化物の発生を効果的に防止ないし抑制することができ
る。また、亜硝酸の酸化に伴い過酸化水素は水に変化す
るのみであり、線材の溶解反応を妨げる反応性生物を生
ずる心配がない。
【0025】なお、過酸化水素の添加量は、例えば酸洗
液中に生じている亜硝酸を過不足なく酸化できる程度の
量に留めるのがよい。他方、線材の溶解に伴い酸洗液中
に溶出する鉄イオンのうちFe3+イオンは、その強い
酸化作用により酸洗液の溶解力に少なからず寄与してい
ると考えられる。そこで、線材の酸化・溶解に伴いFe
3+イオンが還元されて生ずるFe2+イオンを、過酸
化水素の配合によりFe3+イオンに積極的に戻すこと
も考えられる。この場合は、亜硝酸の略全てと、Fe
2+イオンの少なくとも一部が酸化されるように過酸化
水素の添加量を調整するのがよい。なお、添加された過
酸化水素が、亜硝酸やFe2+イオンの酸化に直ちに消
費される結果、添加後の酸洗液中に過酸化水素が残留し
ていないこともありうる。
【0026】過酸化水素は化学的安定性が一般にそれほ
ど高くないことから、上記硫酸−硝酸系酸洗液中に含有
される過酸化水素は、例えば液中の鉄イオンやその他分
解触媒となりうる物質の存在により、鉄系金属線材の浸
漬を行なわなくとも自己分解を起こして徐々に濃度を減
少させる。場合によっては、亜硝酸やFe2+イオンな
ど、所望の被酸化物質の酸化に与る前に、他の触媒物質
により無駄に分解消費されてしまうこともありうる。従
って、過酸化水素の酸洗液中への投入は、鉄系金属線材
の浸漬直前時に行うことが望ましい。なお、過酸化水素
を供給した後は鉄系金属線材をなるべく直ちに投入する
ことが望ましい。
【0027】例えば、硫酸−硝酸系酸洗液により、線材
等の鉄系金属線材を、所定の処理単位に区切ってバッチ
酸洗処理する場合は、その1単位の処理が終了する毎
に、その都度所定量の過酸化水素を硫酸−硝酸系酸洗液
に補充することができる。こうすれば、過酸化水素の無
駄な消費が一層抑制され、窒素酸化物の発生防止効果が
さらに高められる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付
の図面を参照して説明する。図1は、本発明の表面処理
方法としての酸洗方法を実施するラインの一例を概念的
に示している。この例では、図2に示すように、被処理
部材は鉄系線材のコイル、例えば熱間圧延等により製造
されて表面にスケール層が形成された高炭素クロム軸受
鋼線材のコイルWであり、例えばレール4に沿って移動
するトラバーサ2により、吊具7に引っ掛けられた状態
で、図1に示す各工程位置に順次搬送されるようになっ
ている。なお、図2において符号3はトラバーサ2を自
走させるための駆動モータであり、符号5は、例えば吊
具7を懸架するワイヤ(あるいはチェーン)6を巻き取
りあるいは繰り出すことにより、コイルWを上昇位置と
下降位置との間で昇降させる昇降機構である。なお、ト
ラバーサ2と昇降機構5とは、被処理部材搬入機構及び
被処理部材搬出機構を構成する。
【0029】図1に示すラインでは、脱スケール槽
(I)50、シャワー槽51、脱スケール層(II)5
2、シャワー槽53、溶削槽54、シャワー槽55、脱
スマット層56、シャワー槽57、仕上酸洗槽58及び
シャワー槽59がこの順序で配置され、被処理部材であ
る線材は、上記コイルWを処理単位として各槽にてバッ
チ処理されることとなる。すなわち、図2に示すよう
に、吊具7により保持されたコイルWは上昇位置に位置
した状態でトラバーサ2により各槽20(50,52,
54,56,58:図では符号20により統一的に表
示)の上方へ移動し、次いで昇降機構5により下降位置
へ下降してその槽中の液21中に所定時間浸漬されて各
処理が行なわれる。液21への浸漬が終了するとコイル
Wは昇降機構5により上昇位置へ引き上げられ、トラバ
ーサ2により次のシャワー槽51,53,55,57,
59へ運ばれて再び下降位置となる。各シャワー槽には
水洗用のシャワーノズル10が、例えばコイルWを周方
向に取り囲む形態で複数配置されており、それぞれコイ
ルWに向けて水を噴射することによりこれを水洗する。
【0030】図1において、脱スケール槽(I)50及
び脱スケール槽(II)52には、硫酸を3〜30重量
%含有する水溶液からなる硫酸系酸洗液21がタンク2
0に収容されており、コイルWはそこで下降してその硫
酸系酸洗液21に所定時間浸漬され、先行脱スケール処
理が行なわれる。すなわち、本実施例では、シャワー水
洗を挟んで硫酸系酸洗液への二段階の浸漬により先行脱
スケール処理が行われる形となっている。
【0031】上記先行脱スケール処理により、線材表面
に形成されている酸化鉄系スケールは除去されるが、多
くの場合、熱処理時の雰囲気変動等に起因する脱炭層や
浸炭層等の変質層、あるいは鉄−クロム系複合酸化物や
セメンタイトなどからなるスマット層が除去しきれずに
線材表面に残留する。特に、互いに接触しあう巻線部間
には酸洗液が十分に行き渡らないことが多いため上記変
質層やスマット層が残りやすく、例えば線径7mm程度
以下の細線では、単位コイル長さ辺りの巻線部の形成密
度が増大し、巻線間の接触面積の合計も大きくなること
から、該変質層ないしスマット層の残留量は特に多くな
る。そこで、以下に述べる本発明の酸洗処理方法によ
り、溶削処理が実施される。
【0032】先行脱スケール処理が終了するとコイルW
はシャワー槽53におけるシャワー水洗処理を経て、溶
削槽54に運ばれる。ここには、図3に示すように、5
〜30重量%(望ましくは7〜15重量%)の硫酸と、
1〜6重量%(望ましくは2〜5重量%)の硝酸とを収
容した硫酸−硝酸系酸洗液21が収容され、ヒータHに
て50〜70℃(望ましくは55〜65℃)に加熱され
ている。コイルWはそこで下降位置へ下降してタンク2
0内の硫酸−硝酸系酸洗液21に所定時間浸漬され、溶
削処理が行なわれる。なお、コイルWの重量を0.5〜
2tとし、該処理単位を浸漬するための硫酸−硝酸系酸
洗液21の浴体積を2〜20mとした場合に、その硫
酸−硝酸系酸洗液浴へのコイルWの浸漬時間は30〜1
00秒に調整される。
【0033】従来の硝酸系の酸洗液に代えて上述の組成
を有する硫酸−硝酸系酸洗液を用い、かつ酸洗液浴の温
度を50〜70℃に昇温することで、コイルWに巻かれ
た線材の表面が速やかに溶解され、従来の硝酸系酸洗液
と同程度又はそれ以上のレベルにて十分かつ高能率に清
浄化できる。例えば線径7mm程度以下の細線の場合で
も、前記した変質層やスマット層を確実かつ効果的に除
去することができる。また、硝酸系酸洗液の場合、最低
でも10〜12重量%程度の硝酸含有量が必要であった
ところ、上記の昇温された硫酸−硝酸系酸洗液21を使
用することで、硝酸の含有量を大幅に削減することがで
きる。
【0034】さらに、上記の酸洗液21を使用すること
により酸洗後の線材表面を適度に粗くすることができ、
例えば平滑化の進行し過ぎによる伸線引抜時の接触摩擦
増大が抑制されて、ダイス寿命を向上できる。また、線
材表面が適度に粗くなることで線材表面に保持される潤
滑被膜の量を十分確保でき、また、その線材表面に対す
る密着力も向上する。処理後の線材表面の中心線平均粗
さRaは0.8〜6μm、望ましくは2〜4μmとなっ
ているのがよく、10点平均粗さRzは、9〜40μ
m、望ましくは15〜30μmとなっているのがよい。
【0035】また、線材の浸漬に伴う酸洗液21からの
窒素酸化物の発生を抑制するために、酸洗液21には、
過酸化水素が適宜添加される。図3に示すように、溶削
槽54には、過酸化水素を供給する過酸化水素供給機構
15が設けられている。この過酸化水素供給機構15
は、コイルWが1バッチ処理される毎に、その都度所定
量の過酸化水素を硫酸−硝酸系酸洗液21に補充するも
のとして構成されている。すなわち、該過酸化水素供給
機構15は、過酸化水素(H)を貯溜する主貯溜
部27と、その主貯溜部27からの過酸化水素を1回投
入分だけ一時的に貯溜する一時貯溜部23とを有してい
る。
【0036】主貯溜部27からの過酸化水素は電磁バル
ブ26を有する配管28を経て一時貯溜部23へ供給さ
れる。また、一時貯溜部23内の過酸化水素は電磁バル
ブ25を開くことによりタンク20内に投入される。さ
らに、一時貯溜部23内には、過酸化水素の上記1回分
投入量に対応する高さ位置に液面センサ24が配置され
ている。また、符号22は、タンク20内にコイルWが
存在するか否かを検出するためのコイル検出センサであ
る。そして、コイル検出センサ22、液面センサ24、
バルブ25、バルブ26およびタイマー39等が、過酸
化水素供給機構15の作動シーケンスを司る制御部30
(マイクロプロセッサ又はハードウェアシーケンス回路
等で構成される)に接続されている。
【0037】図4(a)は、コイルWが酸洗液21中で
酸洗される状態を示している。そして、この浸漬時間を
利用して一時貯溜部23に過酸化水素を満たす。制御部
30(図2)は電磁バルブ26を開とし、電磁バルブ2
5を閉とする。そして、過酸化水素の液面が液面センサ
24に検出されたら電磁バルブ26を閉じ、コイルWの
酸洗が終了するまで待機する。タイマー39(図2)が
計測するコイルWの浸漬時間がタイムアップすると、図
4(b)に示すようにコイルWは引き上げられる。図4
(c)に示すように、コイルWが引き上げられてコイル
検出センサ22(図3)が非検出状態になると制御部3
0(図3)は電磁バルブ25を開き、一時貯溜部23内
の過酸化水素を全てタンク20内に投入する。過酸化水
素の投入が終了すれば、電磁バルブ25が閉じられると
ともに、図4(d)に示すように、次のコイルWが酸洗
液21中に浸漬され、以下同様の処理が繰り返される。
【0038】図1に戻り、溶削処理が終了したコイルW
はシャワー槽55を経て脱スマット槽56へ運ばれ、収
容されている脱スマット液中に浸漬されて脱スマット処
理される。この脱スマット処理は、溶削処理にて除去し
きれなかったスマットを補完的に除去する目的で行うも
のであるが、溶削処理時に十分脱スマットできるようで
あれば省略してもよい。
【0039】なお、本実施例では、脱スマット液とし
て、過マンガン酸カリウムと水酸化ナトリウムとを所定
量溶解させた水溶液が使用されている。このような水溶
液を使用することにより、特にクロム系酸化物からなる
スマット(以下、クロム系スマットという)を効果的に
除去することができる。水酸化ナトリウムの配合により
溶液のpHを塩基性とした状態では、過マンガン酸カリ
ウムによるクロム成分の酸化反応が促進され、クロム系
スマットが溶解度の高い6価クロム系の反応生成物に転
化され易くなることが、その要因として推測される。溶
液中の過マンガン酸カリウムの配合量をN1、水酸化ナ
トリウムの配合量をN2とすれば、N1+N2は10〜3
0重量%に調整するのがよい。N1+N2が10重量%未
満では脱スマット性能が低下し、30重量%以上に濃度
を増加させても脱スマット効果のそれ以上の向上が期待
できなくなる。
【0040】他方、N2/N1は0.5〜8の範囲で調整
するのがよい(例えば4程度)。N2/N1が0.5未満
では、過マンガン酸カリウムが不足して脱スマット性能
が低下する場合がある。他方、N2/N1が8を超える
と、水酸化ナトリウムの配合による脱スマット促進効果
があまり期待できなくなる。
【0041】脱スマット処理が終了したコイルWは、シ
ャワー槽を経て仕上酸洗槽58に運ばれ、そこで例えば
5〜20重量%硫酸水溶液等を用いて仕上酸洗された
後、さらにシャワー槽59で水洗される。その後、必要
に応じて中和処理され、図示しない乾燥装置により乾燥
されて処理が終了する。
【0042】
【実施例】(実施例1)所定の圧延装置により温度90
0℃以上で熱間圧延され、さらに球状化焼鈍処理を72
5℃とそれに続く800℃との2段階の熱処理にて行っ
た高炭素クロム軸受鋼線材(SUJ2、線径7.8m
m)を、外径1150mm、内径1000mmのコイル
(重量1トン)に巻き取り、硫酸濃度10重量%の硫酸
系酸洗液(温度50℃)中に15分浸漬して先行脱スケ
ール処理を行ない、その後シャワーにより水洗した。こ
の時点で線材表面を観察したところ、変質層と思われる
層がかなり残留していた。また、この変質層は、断面の
顕微鏡観察から脱炭層であると推測された。
【0043】次に、コイルWを硫酸−硝酸系酸洗液(ヒ
ータにより、温度60℃に加熱)中に90秒浸漬して溶
削処理を行なった。なお、酸洗液は表1に示す各種組成
のものを用い、浴温は60℃とした。ただし、表中
「*」を付したものは、本発明の範囲外のものである。
なお、酸洗液中には、窒素酸化物の発生抑制のために過
酸化水素を適宜添加した。脱スケール処理が終了後、線
材Wを苛性ソーダ水溶液で中和し、さらにこれを洗浄・
乾燥してその表面の変質層の除去状態を評価した。な
お、評価は、線材表面の拡大写真(倍率10倍)を撮影
し、その変質層の除去領域の面積率を画像処理により求
め、面積率がほぼ100%に近いものを優(◎)、90
%以上のものを良(○)、50〜90%のものを可
(△)、50%未満のものを不可(×)として行った。
一方、処理後の各線材について、日本工業規格B060
1に記載の方法により、表面の中心線平均粗さRaと1
0点平均粗さRzとを測定した。
【0044】さらに、各線材は、化成処理によりリン酸
カルシウム系の潤滑被膜を形成し、超硬合金ダイスを用
いて減面率12%、引抜速度45m/分にて線径7.3
mm(公差範囲:7.27〜7.31mm)に1パスに
て伸線加工を行うとともに、ダイス内面の減耗に伴い公
差上限値を外れるまでの処理線材量(長さ:単位m)に
てダイス寿命を測定した。なお、評価は、ダイス寿命が
30000m以上のものを優(◎)、20000〜30
000mのものを良(○)、10000〜20000m
のものを可(△)、10000mに満たないものを不可
(×)とした。以上の結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】硫酸−硝酸系酸洗液の組成を、硫酸5〜3
0重量%、硝酸1〜6重量%とすることで変質層を十分
に除去することができ、伸線性も良好であることがわか
る。酸洗液の組成を硫酸7〜15重量%、硝酸2〜5重
量%とすることで、一層顕著な効果が達成されている。
なお、硫酸のみを本発明の範囲内のものとし、硝酸を配
合しない番号1の条件では酸洗効果が不十分であり、硝
酸が多すぎる番号8の条件では、部分的に溶削が過度に
進行して線径不足を引き起こしていた。また、硫酸量が
少ない番号9の条件では酸洗効果が不十分であり、硫酸
が過剰な番号16の条件では、線材の仕上がり表面が平
滑化しすぎて伸線性の低下を来たしている。
【0047】(実施例2)実施例1と同じ線材を用い、
溶削処理における硫酸−硝酸系酸洗液の組成を、硫酸1
0重量%、硝酸3重量%に固定するとともに、浴温度を
40〜80℃の各種温度に調整した以外は、実施例1と
同様の条件にて実験を行い、変質層除去の評価と表面粗
さの測定とを行った。ただし、表中「*」を付したもの
は、本発明の範囲外のものである。以上の結果を表2に
示す。
【0048】
【表2】
【0049】すなわち、酸洗液の温度を50〜70℃と
することで、良好な酸洗効果が達成されていることがわ
かる。なお、液温が50℃未満である番号21の条件で
は酸洗効果が不足し、70℃を超える番号27の条件で
は蒸気発生が激しく、取扱いが困難であった。
【0050】(実施例3)所定の圧延装置により温度9
00℃以上で熱間圧延され、さらに球状化焼鈍処理を7
25℃とそれに続く800℃との2段階の熱処理にて行
った高炭素クロム軸受鋼線材(SUJ2、線径:7.8
mm(A)及び5.5mm(B)の2種類)を、外径1
150mm、内径1000mmのコイル(重量1トン)
に巻き取った。これを、実施例1と同様に先行脱スケー
ル処理を行ない、その後シャワーにより水洗した。
【0051】次に、コイルWを、組成及び温度の異なる
酸洗液中に各種時間浸漬して溶削処理を行なった。な
お、酸洗液は表3に示す各種組成のものを用いた。脱ス
ケール処理が終了後、線材Wを苛性ソーダ水溶液で中和
し、さらにこれを洗浄・乾燥してその表面の変質層の除
去状態を、実施例1と同様に評価した。また、処理後の
各線材について、日本工業規格B0601に記載の方法
により、表面の中心線平均粗さRaと10点平均粗さR
zとを測定した。
【0052】次に、各線材は、線材Aに対しては化成処
理によりリン酸カルシウム系の潤滑被膜を形成し、線材
Bに対しては化成処理によりリン酸亜鉛カルシウム系の
第一潤滑被膜の上に、石灰石けん系の第二潤滑被膜を形
成した。線材Aについては、超硬合金ダイスを用いて減
面率12%、引抜速度45m/分にて線径7.3mm
(公差範囲:7.27〜7.31mm)まで1パスにて
伸線加工を行った。他方、線材Bについては、超硬合金
ダイスを用いて合計減面率79%、引抜速度400m/
分にて線径2.5mm(公差範囲:2.47〜2.51
mm)まで6パスにて伸線加工を行った。そして、それ
ぞれダイス内面の減耗に伴い公差上限値を外れるまでの
処理線材量にてダイス寿命を測定した。なお、評価は、
線材Aについては、ダイス寿命が30000m以上のも
のを優(◎)、20000〜30000mのものを良
(○)、10000〜20000mのものを可(△)、
10000mに満たないものを不可(×)とした。他
方、線材Bについては、ダイス寿命が20000m以上
のものを優(◎)、15000〜20000mのものを
良(○)、10000〜15000mのものを可
(△)、10000mに満たないものを不可(×)とし
た。以上の結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】すなわち、溶削処理後の線材表面の中心線
平均粗さRaが0.8〜6μm、10点平均粗さRzが
9〜40μmの範囲にて良好なダイス寿命を示してお
り、特にRaが2〜4μm、Rzが15〜30μmの範
囲では、より厳しい線材Bの伸線条件においても、優れ
たダイス寿命特性を示していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸洗方法を実施するラインの一例を示
す概念図。
【図2】その線材のコイルの搬送機構の一例を示す模式
図。
【図3】その硫酸−硝酸系酸洗液を用いる溶削工程にお
いて、窒素酸化物発生を抑制するために過酸化水素を供
給する機構の一例を示す模式図。
【図4】図2の作用説明図。
【符号の説明】
1 酸洗処理装置 2 トラバーサ(鉄系金属線材搬入機構、鉄系金属線材
搬出機構) 5 昇降機構(鉄系金属線材搬入機構、鉄系金属線材搬
出機構) 9 硫酸系酸洗液 15 過酸化水素補充機構 20 タンク(酸洗液収容部) 21 硫酸−硝酸系酸洗液

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 5〜30重量%の硫酸と、1〜6重量%
    の硝酸とを含有し、かつその温度を50〜70℃に昇温
    した硫酸−硝酸系酸洗液に鉄系金属線材を浸漬すること
    により、該鉄系金属線材の表面を酸洗処理することを特
    徴とする鉄系金属線材の酸洗処理方法。
  2. 【請求項2】 処理後の線材表面の中心線平均粗さRa
    を0.8〜6μmとする請求項1記載の酸洗処理方法。
  3. 【請求項3】 処理後の線材表面の10点平均粗さRz
    を9〜40μmとする請求項1又は2に記載の酸洗処理
    方法。
  4. 【請求項4】 前記鉄系金属線材は、前記硫酸−硝酸系
    酸洗液への浸漬に先立って別の脱スケール処理(以下、
    先行脱スケール処理という)により、その表面の酸化鉄
    系スケール成分が部分的に除去ないし減少させられたも
    のである請求項1ないし3のいずれかに記載の酸洗処理
    方法。
  5. 【請求項5】 前記先行脱スケール処理として、前記鉄
    系金属線材表面に形成された酸化鉄系スケール成分を、
    硫酸を3〜30重量%含有する硫酸系酸洗液又は塩酸を
    3〜30重量%含有する塩酸系酸洗液に浸漬して除去な
    いし減少させる工程が行なわれる請求項4記載の酸洗処
    理方法。
  6. 【請求項6】 前記鉄系金属線材は、その表面に、炭素
    含有量が部材の平均炭素含有量とは異なる変質層が形成
    されたものであり、 前記硫酸−硝酸系酸洗液への浸漬により該変質層が化学
    的に剥離又は溶解除去される請求項1ないし5のいずれ
    かに記載の酸洗処理方法。
  7. 【請求項7】 前記鉄系金属線材は、金属炭化物及び/
    又は鉄−クロム系複合酸化物を含有するスマット層が表
    面に形成された鋼線材であり、前記硫酸−硝酸系酸洗液
    への浸漬により該スマット層を除去又は減少させる請求
    項1ないし6のいずれかに記載の酸洗処理方法。
  8. 【請求項8】 前記硫酸−硝酸系酸洗液には、前記鉄系
    金属線材の浸漬に伴う窒素酸化物の発生を防止ないし抑
    制するために、過酸化水素が添加される請求項1ないし
    7のいずれかに記載の酸洗処理方法。
  9. 【請求項9】 前記硫酸−硝酸系酸洗液により、前記鉄
    系金属線材は、所定の処理単位に区切ってバッチ酸洗処
    理されるとともに、その1単位の処理が終了する毎に、
    予め定められた量の過酸化水素が前記硫酸−硝酸系酸洗
    液に補充される請求項8記載の酸洗処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014526617A (ja) * 2011-09-26 2014-10-06 エイケイ・スチール・プロパティーズ・インコーポレイテッド 酸化電解酸浴中でのステンレス鋼の酸洗い
CN113481359A (zh) * 2021-07-09 2021-10-08 镇江市黄墟锚链有限公司 一种高韧性锚链拉丝回火加工工艺

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