JP3587164B2 - 案内または搬送用部材の焼付き防止処理方法 - Google Patents

案内または搬送用部材の焼付き防止処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼付きの発生しやすい環境で使用される案内または搬送用部材、例えばピンチロールなどのような案内ロール、金属製品搬送ロール、およびロール以外にも焼付きの発生しやすい環境で使用されるガイド、例えば熱間圧延設備のサイドガイド等の鋼板摺動面などの焼付き防止処理方法に関する。
【0002】
本発明において案内または搬送用部材とは、被案内部材を案内する際に、或いは被搬送部材を搬送する際に、これら部材と接触した状態で使用される部材を指す。
【0003】
【従来の技術】
ロール使用前にロール表面に皮膜を形成させ、運転初期からロール表面と製品の間が金属間接触をしない様な処置を施すと、ロールの焼付きが発生しないことが知られている。この現象は、ロール表面と製品間に生ずる金属間接触を阻止することにより焼付きを生じないことを意味している。
【0004】
特開昭58−221284号には、ロール表面を酸化皮膜処理することによりロールの焼付きを防止するという観点から、ロール表面を加熱して酸化皮膜を形成したり、或いはロール表面をカセイソーダ溶液中で加熱して酸化皮膜を形成する技術が開示されている。また、この他にクロム酸による酸化処理、硫化処理、リン酸皮膜処理等の処理によっても同様の効果が得られること、低クロム鋼などのような耐食性の低い材料からなるロールの場合には水に浸漬し、或いはロールを組込み後使用前に水をかけることにより表面に錆を形成させることによっても同様の効果が期待できることが開示されている。
【0005】
また、特開平5−329508号には、被圧延材およびロールよりも酸化しやすい炭素鋼または低合金鋼の粉末を、圧延前の鋼材の表面に供給する高Cr鋼材の圧延方法が開示されている。
【0006】
特開昭60−86262号には、継目無鋼管製管用芯金を、水蒸気:5.0容量%以上、酸素:0.5〜5.0容量%、を含有するとともに残部が実質的に不活性ガスから成り、かつ水蒸気に対する酸素の容量比が1/3より小さい値の混合ガス雰囲気中にて、1000℃以下の温度に加熱保持して、前記芯金表面にスケール(酸化物皮膜)を形成して継目無鋼管製管用芯金の寿命延長を図ることが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術には次のような問題がある。
【0008】
特開昭58−221284号に開示された技術では、ロール表面に酸化被膜を生成させるのに加熱が必要であり、ロール表面を加熱するための装置が別途必要となる。また、クロム酸による酸化処理、硫化処理、リン酸皮膜処理等の処理においては、これらの皮膜が鋼帯との衝突等により一部が剥がれたときは効果がなくなるので、その都度補修する必要がある。
【0009】
特開平5−329508号に開示された技術では、鋼材の熱間圧延においてロール表面の肌荒れを防ぎ、表面品質の良好な圧延製品を得るためには、被圧延材の表面とロールとの間に適当な酸化物の被膜が存在する必要があり、このため炭素鋼または低合金鋼の粉末を供給するには例えばエアーアトマイズ装置が必要になり、コスト高となる。
【0010】
特開昭60−86262号に開示された技術では、密着性に優れた緻密なスケールを形成できるが、本方法によるスケールは非常に薄く鋼帯と接触するロールの焼付きを防止するためのロール表面への酸化膜を形成するには満足な効果が得られない。また、水蒸気と酸素の混合ガス雰囲気中にて、1000℃以下の温度に加熱保持するための電気炉等が必要であり、該電気炉はロールやガイド等の大型部材の処理には適さないし、大型部材の部分的な処理も困難である。
【0011】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、安価な処理方法により高い焼付き防止効果を得ることができる案内または搬送用部材の焼付き防止処理方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、熱間圧延設備において、各設備内または各設備間において用いられる案内または搬送用部材の少なくとも1つが上記焼付き防止処理方法を施した部材である熱間圧延設備を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、安価に且つ高い焼付き防止効果が得られる酸化膜の形成方法について検討した結果、希塩酸または希硝酸または希硫酸で案内または搬送用部材表面を酸化膜処理すること、とりわけ鉄分が溶解した希塩酸または希硝酸または希硫酸で案内または搬送用部材表面を酸化膜処理することにより、案内または搬送用部材表面に酸化膜を形成して案内または搬送用部材の焼付き防止処理方法を知見した。
【0013】
すなわち、本発明の案内または搬送用部材焼付き防止処理方法は以下のような特徴を有する。
【0015】
)鋼帯と接触する案内または搬送用部材の焼付きを防止するために案内または搬送用部材表面に酸化膜を形成するための処理方法において、案内または搬送用部材表面に鉄分が溶解した希塩酸または希硝酸または希硫酸を塗付することにより案内または搬送用部材表面に酸化膜を形成することを特徴とする案内または搬送用部材の焼付き防止処理方法。
【0016】
)上記(1)に記載の焼付き防止処理を施したことを特徴とする案内または搬送用部材。
【0017】
)案内または搬送用部材は、ピンチロール、サイドガイド、搬送ロールのいずれかであることを特徴とする上記()に記載の案内または搬送用部材。
【0020】
)少なくとも粗圧延設備と、仕上圧延設備と、熱延鋼帯巻取り設備とを、この順序で有する熱間圧延設備において、前記各設備内または各設備間において用いられる案内または搬送用部材の少なくとも1つが、上記(1)に記載の焼付き防止処理方法を施した部材であることを特徴とする熱間圧延設備。
【0021】
)スラブを粗圧延設備で粗バーとなす工程と、該粗バーを仕上圧延設備で熱延鋼帯となす工程と、該熱延鋼帯をピンチし巻取る工程とを備えた鋼帯の製造方法において、前記各工程内または各工程間において用いられる案内または搬送用部材に対し、上記(1)に記載の焼付き防止処理方法を施した部材を用いて、前記各工程内または各工程間の鋼帯の案内または搬送に供することを特徴とする鋼帯の製造方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、安価に且つ高い焼付き防止効果が得られる酸化膜の形成方法について検討した結果、その原理についてはよくわからないところがあるが、希塩酸または希硝酸または希硫酸で案内または搬送用部材表面を酸化膜処理すること、とりわけ鉄分が溶解した希塩酸または希硝酸または希硫酸で案内または搬送用部材表面を酸化膜処理することにより、案内または搬送用部材表面に案内または搬送用部材の焼付き防止効果にとって良い酸化膜が形成されることを確認した。
【0023】
ここで、希塩酸または希硝酸または希硫酸については、どれを用いても効果は同一であった。ただし、その濃度は15%を超えると案内または搬送用部材表面を溶かす恐れが生じるので1〜15%の濃度が好ましい。
【0024】
案内または搬送用部材表面への希塩酸または希硝酸または希硫酸の塗布方法および鉄分が溶解した希塩酸または希硝酸または希硫酸の塗布方法は、吹付け方式でも塗付方式でも可能であるが、通常はハケを用いた塗付方式を採用している。吹付け方式では溶液が下方に垂れて有効でないからである。目安としては案内または搬送用部材組替え1週間前に塗付すると酸化膜の形成の状態がよい。また塗布後は自然乾燥すれば良い。
【0025】
鉄分とは鉄または酸化鉄を意味する。鉄とは1つの形態は鉄粉(切り粉)でこれは粒子が大きいので一旦溶液をろ過したものを使用する。鉄の他の形態はボルト等を溶液に漬けたものでこれはろ過すること無しに使用した。しかるに酸化鉄は既に粒子が細かくなっているためろ過せず使用した。ここで、鉄または酸化鉄は希塩酸または希硝酸または希硫酸溶液に完全溶解させる必要はなく、未溶解のまま用いて良い。未溶解の方がハケでの塗布がし易くなる。ただし、実際に案内または搬送用部材表面の酸化膜形成に意味があるのは溶解した鉄分のみと思われる。
【0026】
鉄と酸化鉄とでは作用効果に違いは見られなかったが、鉄または酸化鉄の鉄分が溶解した希塩酸または希硝酸または希硫酸溶液の方が、鉄分を含まない希塩酸または希硝酸または希硫酸溶液に比べて堅固で、すぐには剥がれない酸化膜を形成できることを確認した。
【0027】
本発明は、焼付きの発生しやすい環境で使用される案内または搬送用部材、例えばピンチロールやサイドガイド中の竪ロールなどのような案内ロール、金属製品搬送ロール、およびロール以外にも焼付きの発生しやすい環境で使用されるガイド、例えば熱間圧延設備のサイドガイド等の鋼板摺動面などに有用である。
【0028】
図2に、粗圧延設備と仕上圧延設備と熱延鋼帯巻取り設備とを、この順序で有する熱間圧延設備において、前記各設備内または各設備間において用いられる案内または搬送用部材の一例を示す。該案内または搬送用部材を前記焼付き防止処理方法を施した部材とすることにより、前記案内または搬送用部材の焼付きを未然に防ぐことが可能となる。
【0029】
また、使用中鋼帯との衝突等によって、一部の酸化膜が剥げることが生じるが、これらの環境下においては熱と雰囲気によって、案内または搬送用部材の表面は自己酸化して酸化膜は自動的に修復されるので補修の必要は生じない。
【0030】
【実施例】
一般的に行われている熱延鋼帯の製造方法では、仕上圧延後の熱延鋼帯は、ホットランテーブル上を搬送される間に冷却用流体が噴きつけられて所定の温度まで冷却され、最終的に案内ロールであるピンチロールを介してコイラーに巻取られる。
【0031】
図1に本発明法により、希塩酸および酸化鉄が溶解した希塩酸を仕上圧延後の熱延鋼帯をコイラーにて巻取る際に介するピンチロールに塗布して、熱間圧延を実施したときの焼付き発生率の結果を示す。焼付き発生率は次工程での品質確性もしくはコイラー検査にて焼付きが発生していた本数である。また、焼付きの発生は、鋼帯の内面または外面に焼付きキズが発生したことにより判断した。
【0032】
ここで、希塩酸は濃度10%のものを用い、ロール組替えの1.5週間前にハケを用いて3度塗りでロールに塗布した。酸化鉄が溶解した希塩酸は酸化鉄を濃度10%の希塩酸に溶解した溶液で、ロール組替えの0.8週間前にハケを用いて2度塗りでロールに塗布した。
【0033】
塗布剤無しのときピンチロールの焼付き発生率は80%であり、海水または食塩水を塗布した場合前記焼付き発生率は75%となる。これに対し、本発明法の濃度10%の希塩酸を塗布した場合前記焼付き発生率は25%と激減するが、酸化鉄が溶解した希塩酸を塗布した場合、前記焼付き発生率は5%とほぼ完全にロールの焼付きを防止できる。酸化鉄が溶解した希塩酸を塗布した場合の効果がより大きいのは、この方が溶解している鉄の分、酸化鉄量が増え、酸化膜が厚くなるためと思われる。また、希塩酸の代わりに希硝酸、希硫酸を塗布して実施したが、焼付き発生率に有意差は生じなかった。また酸化鉄の代わりに鉄粉を用いても焼付き発生率は同一であった。
【0034】
なお、焼付きに耐え得る程度の酸化膜形成までの所要時間は、海水または食塩水をピンチロールに塗布して用いる場合には2日毎に塗付して2〜2.5週間、希塩酸または希硝酸または希硫酸をピンチロールに塗布して用いる場合には3度塗りで1〜1.5週間、酸化鉄または鉄が溶解した希塩酸または希硝酸または希硫酸をピンチロールに塗布して用いる場合には2度塗りで0.3〜0.8週間が必要だった。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば案内または搬送用部材表面に希塩酸または希硝酸または希硫酸とりわけ鉄分が溶解した希塩酸または希硝酸または希硫酸を塗付することにより、案内または搬送用部材表面に安価に且つ高い焼付き防止効果が得られる酸化膜を形成している。このような焼付き防止処理が施された案内または搬送用部材を熱間圧延設備に用いることにより、前記案内または搬送用部材の焼付きを未然に防ぐことが可能となり、歩留まり向上および表面性状の優れた鋼帯を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ロール塗布剤によるピンチロールの焼付き発生率を示す図
【図2】熱間圧延設備内または設備間において用いられる案内または搬送用部材の一例を示す図

Claims (5)

  1. 鋼帯と接触する案内または搬送用部材の焼付きを防止するために案内または搬送用部材表面に酸化膜を形成するための処理方法において、案内または搬送用部材表面に鉄分が溶解した希塩酸または希硝酸または希硫酸を塗付することにより案内または搬送用部材表面に酸化膜を形成することを特徴とする案内または搬送用部材の焼付き防止処理方法。
  2. 請求項1に記載の焼付き防止処理を施したことを特徴とする案内または搬送用部材。
  3. 案内または搬送用部材は、ピンチロール、サイドガイド、搬送ロールのいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の案内または搬送用部材。
  4. 少なくとも粗圧延設備と、仕上圧延設備と、熱延鋼帯巻取り設備とを、この順序で有する熱間圧延設備において、前記各設備内または各設備間において用いられる案内または搬送用部材の少なくとも1つが、請求項1に記載の焼付き防止処理方法を施した部材であることを特徴とする熱間圧延設備。
  5. スラブを粗圧延設備で粗バーとなす工程と、該粗バーを仕上圧延設備で熱延鋼帯となす工程と、該熱延鋼帯をピンチし巻取る工程とを備えた鋼帯の製造方法において、前記各工程内または各工程間において用いられる案内または搬送用部材に対し、請求項1に記載の焼付き防止処理方法を施した部材を用いて、前記各工程内または各工程間の鋼帯の案内または搬送に供することを特徴とする鋼帯の製造方法。
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