JPH10259500A - 線材の電解脱スケール装置 - Google Patents

線材の電解脱スケール装置

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JPH10259500A
JPH10259500A JP9085793A JP8579397A JPH10259500A JP H10259500 A JPH10259500 A JP H10259500A JP 9085793 A JP9085793 A JP 9085793A JP 8579397 A JP8579397 A JP 8579397A JP H10259500 A JPH10259500 A JP H10259500A
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JP
Japan
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wire
electrolytic
loop
descaling
electrode
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JP9085793A
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English (en)
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Kiyotaka Okamura
清隆 岡村
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Daido Steel Co Ltd
Original Assignee
Daido Steel Co Ltd
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Publication date
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C25ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
    • C25FPROCESSES FOR THE ELECTROLYTIC REMOVAL OF MATERIALS FROM OBJECTS; APPARATUS THEREFOR
    • C25F7/00Constructional parts, or assemblies thereof, of cells for electrolytic removal of material from objects; Servicing or operating
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C25ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
    • C25FPROCESSES FOR THE ELECTROLYTIC REMOVAL OF MATERIALS FROM OBJECTS; APPARATUS THEREFOR
    • C25F1/00Electrolytic cleaning, degreasing, pickling or descaling
    • C25F1/02Pickling; Descaling
    • C25F1/04Pickling; Descaling in solution
    • C25F1/06Iron or steel

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  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
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  • Electrochemistry (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ループロ線材の間接通電による電解脱スケー
ル処理を、高電流効率を確保しつつ行うことができる電
解脱スケール装置を提供する。 【解決手段】 ループロ線材Wを搬送しつつ、電解液2
1中に配置されたアノード電極24aとカソード電極2
4bとからなる電極対24により間接電解することで、
該線材Wの表面を電解脱スケール処理する。そして、互
いに隣接するアノード電極24aとカソード電極24b
との中間位置に対応して漏洩電流遮断部材31が配置さ
れ、これがアノード電極24aからループロ線材Wの下
側を通ってカソード電極24b側へ向かおうとする漏洩
電流を遮断又は抑制する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、線材の電解脱スケ
ール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、鋼線等の線材に対し、線引きや圧
延等の加工により生じたスケールや汚れ等を除去するた
めに酸洗処理が行われている。このような酸洗処理は、
図10に示すように、線材を巻き束ねてコイル110を
作り、これを吊り具105で吊り下げた状態で、酸洗処
理槽100に収容された酸洗液101に浸漬することに
より行われており、また、ステンレス鋼線材等のよう
に、形成されるスケール層が緻密で強固な場合は、コイ
ル110に対し通電することにより、電解酸洗処理が行
われる場合もある。
【0003】ところが、上述の方法においては、圧延機
等の線材加工装置から供給される線材を、一旦コイル状
に巻き取ってからバッチ処理により酸洗することになる
ため、処理能率が悪い欠点がある。また、コイル状に束
ねられた状態では線材に重なり部が多く生ずるため、酸
洗液が線材同士の隙間に浸透しにくく、処理に時間がか
かったり処理ムラが生じたりする問題がある。
【0004】そこで、線材酸洗の能率及び処理品質の改
善のため、線材に巻線部を順次形成し、それら巻線部を
一方向にずらせて互いに積層することでいわゆるループ
ロ状態とし、そのループロ状の線材(以下、ループロ線
材という)を連続的に搬送しつつこれを所定の電解液に
浸漬し、電解液中に配置された電極と線材との間で通電
することにより、該線材の表面を電解脱スケール処理す
る方法が考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の
電解酸洗処理においては、ローラ電極を介して直接ルー
プロ線材に通電されるので、スケールが形成された線材
表面と電極との間でスパークが生じやすい問題がある。
そこで図12に示すように、アノード電極101とカソ
ード電極102とをループロ線材の一方の側に隣接配置
し、アノード電極101、電解液L、ループロ線材W、
電解液L、カソード電極102の順で導電経路Pを形成
して、ループロ線材Wの電解を行うことができれば、上
述のようなスパーク防止を図ることができて好都合であ
る。ところが、この方法においては、アノード電極10
1とカソード電極102とが同一槽内に互いに隣接して
配置されているために、ループロ線材Wを通らずに、電
解液Lを介してアノード電極101からカソード電極1
02へ直接流れてしまう漏洩電流ILが生じやすく、脱
スケールの電流効率が低下する欠点がある。
【0006】本発明の課題は、ループロ線材の間接通電
による電解脱スケール処理を、高電流効率を確保しつつ
行うことができる電解脱スケール装置を提供することに
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】本発明
は、線材に巻線部を順次形成し、それら巻線部を一方向
にずらせて互いに積層することにより得られるループロ
線材を電解脱スケール処理するための装置に関するもの
であり、上述の課題を解決するために下記の要件を含ん
で構成されることを特徴とする。 電解脱スケール槽:電解液が収容される。 線材コンベア:ループロ線材を電解液中で搬送するた
めに電解脱スケール槽内に配置され、上面側が搬送面と
されるとともに該搬送面が液通に構成される。 1ないし複数組の電極対:搬送されるループロ線材に
対しそれぞれ下側から対向するとともに、該ループロ線
材の搬送方向に並んで配置されるアノード電極とカソー
ド電極とからなり、アノード電極、電解液、ループロ線
材、電解液、カソード電極の順で導電経路を形成して、
ループロ線材の間接電解を行う。 漏洩電流遮断部材:互いに隣接する上記アノード電極
とカソード電極との中間位置に対応して、それらアノー
ド電極とカソード電極よりも下方に配置され、アノード
電極からループロ線材の下側を通ってカソード電極側へ
向かおうとする漏洩電流を遮断又は抑制する。
【0008】上述の構成によれば、アノード電極からル
ープロ線材の下側を通ってカソード電極側へ向かおうと
する漏洩電流を、漏洩電流遮断部材が遮断又は抑制する
ので、該漏洩電流による電流損失が少なくなり、ひいて
は電流効率を高めることができる。
【0009】なお、帯状鋼における類似技術として、特
開平6−220699号公報には、アノード電極101
とカソード電極102との間に非導電材料を配置し、上
記漏洩電流を遮断して電流効率を高める技術が開示され
ている。しかしながら、上記公報には帯状鋼の処理に適
した方法しか開示されておらず、例えば帯状鋼ワークの
場合はシンキングロールを介してテンション状態で電解
槽に導入できるのに対し、ループロ線材の場合は多数の
巻線部が形成されていることからこのような搬送方法は
採用することができない。そこで本発明においては、線
材コンベアを用いることでループロ線材を電解液中で安
定的に搬送しつつ、液通に構成されたその搬送面を介し
てその下側に配置された電極により、間接通電による電
解脱スケール処理をループロ線材において支障なく行う
ことができるようにした。
【0010】また、上記公報に開示されているように、
帯状鋼の電解酸洗処理においては、ワークの両側の板面
を均一に脱スケール処理するために、アノード電極とカ
ソード電極との組はワークの上下両側に配置される。し
かしながら、ループロ状態の線材の場合は上下に電極を
配置した場合、引っ掛かり等、巻線部の電極との干渉が
生じやすく、連続搬送しながらの処理に支障をきたす場
合がありうる。また、ワークの上下に電極を設ける場合
は、当然のことながら電極及びその電源設備のコスト上
昇を招き槽構造も複雑化する問題が生ずるわけである
が、帯状鋼の場合はワークの片側に電極を配置しただけ
では電極を配置しない側の電解処理が不十分となるた
め、問題の多い上記電極配置構造をあえて採用せざるを
得ない事情がある。
【0011】しかしながら線材は帯状鋼に比べると幅方
向の寸法が小さく、ループロ化された線材の場合は、電
極が下側のみでも電解電流が巻線部の隙間において線材
の上側にもまわり込むので、本発明の装置構成における
ように電極はループロ線材の下側に配置するのみで十分
であり、上側には電極を配置する必要はない。それどこ
ろか、むしろ上側の電極を排除することで、以下に述べ
るような利点が新たに生ずるのである。 (1)電解脱スケール槽内を搬送されるループロ線材の上
側から、漏洩電流の発生源となる電極が排除され、しか
も電極を排除した分だけ電解液の液面を線材に近付ける
ことができるので線材上側における漏洩電流経路の断面
積が減少する。これにより、線材上側では漏洩電流が極
めて発生しにくくなり、電流効率がさらに高められる。 (2)上側電極を排除した分だけ 電極及びその電源設備の
コストを削減でき、また、電解脱スケール槽の上側空間
がフリーになるので、排気装置などの周辺設備の設置も
容易となる。
【0012】そして、電解脱スケール槽に収容された電
解液の液面レベルは、搬送されるループロ線材の上面か
ら該液面までの高さdが10〜200mmの範囲となるよ
うに調整するのがよい。ループロ線材の上面から液面ま
での高さdが200mmを超えると、線材上側での電流漏
洩量が大きくなり、電流効率が低下することにつなが
る。一方、上記高さdが10mm未満になると、搬送され
るループロ線材の巻線部が液面から突出しやすくなり、
その突出部の脱スケールが不十分となったり、あるいは
液面境界付近で線材が腐食されたりする問題が生じやす
くなる。なお、上記高さdは、望ましくは30〜150
mm、より望ましくは50〜100mmの範囲で調整するの
がよい。
【0013】電解脱スケール槽は、電解液を常時保持す
るとともに該電解液のオーバフロー流出部を備えた内槽
と、その内槽のオーバフロー流出部からオーバーフロー
した電解液を受ける外槽と、その外槽に受けられた電解
液を内槽へ戻す循環送液手段とを備えるものとして構成
することができる。槽をオーバーフロー構造とすること
で、液面レベルを上記条件を満足する一定位置に容易に
保持することができる。この場合、電解液は、内槽の上
面に形成された開口部からオーバーフローさせることが
できる。こうすれば、液面は上記開口部の高さレベルに
ほぼ維持されるので、該内槽の開口上縁から、搬送され
るループロ線材の上面までの高さhを10〜200mm
(望ましくは30〜150mm、より望ましくは50〜1
00mm)に設定しておけば、dを前述の範囲に確実に維
持することができる。この場合、線材の線径と巻線部の
直径及び巻線間のずれ量により異なるが、一般の鉄鋼線
材の処理ラインにおいては、搬送コンベアの搬送面から
上記内槽開口部までの高さh’を50〜500mm(望ま
しくは80〜350mm、より望ましくは100〜300
mm)とすることで、前述のhを10〜200mm(望まし
くは30〜150mm、より望ましくは50〜100mm)
に設定する上で都合がよい。
【0014】線材コンベアは、ループロ線材の搬送方向
に所定の間隔で配列する複数の搬送ロールを備えたもの
として構成でき、アノード電極とカソード電極とを、そ
れら搬送ロール間に形成された間隙内に配置することが
できる。これにより電極をループロ線材に近付けること
ができ、電解液中での抵抗損失が減少するので電解脱ス
ケール処理の電力効率を高めることができる。
【0015】次に、電解脱スケール槽には、漏洩電流遮
蔽部材に対応する位置において搬送されるループロ線材
よりも上方に、アノード電極からループロ線材の上側を
通ってカソード電極側へ向かおうとする漏洩電流を遮断
又は抑制する上部漏洩電流遮断部材を設けることができ
る。これにより、線材上側での漏洩電流発生をさらに効
果的に防止ないし抑制することができ、ひいては前述の
電流効率をより高めることができる。この場合、上部漏
洩電流遮断部材は、その上部が電解液の液面よりも上方
に突出する形態で配置すれば、上部漏洩電流遮断部材の
上方を回り込もうとする漏洩電流をより効果的に遮断す
ることができる。
【0016】また、上部漏洩電流遮断部材は、ループロ
線材の上面側に当接して該ループロ線材の搬送方向に回
転するロール部材を含むものとして構成することができ
る。こうすれば、上部漏洩電流遮断部材は、漏洩電流の
遮断機能に加えて、ループロ線材の電解液の液面からの
露出防止機能を兼ね備えるものとなり、電解脱スケール
の効率と仕上がり品質の両方を一挙に向上させることが
できるようになる。
【0017】なお、脱スケール用の電解液としては、硫
酸ソーダ水溶液等の中性塩系の電解液を使用することも
できるが、この場合は処理後に線材表面が活性化して腐
食を受けやすくなるため、硝酸浴等に浸漬して線材表面
に不働態皮膜を作る、いわゆる不働態化処理が別途必要
となり、工数の増加につながる問題がある。
【0018】そこで、酸洗液として上記中性塩系のもの
に代え、弗酸と硝酸との混合水溶液液を用いば、中性塩
系の酸洗液を用いる場合に比べて酸洗処理効率が向上
し、また不働態化処理も不要となる利点が生ずる。すな
わち、弗酸と硝酸とを含有する電解液中において電解脱
スケール処理を施すことにより、例えばステンレス鋼等
に形成された強固な酸化物層も速やかに除去することが
できる。なお、本発明でいう脱スケール処理において
は、線材表面に形成されたスケールの他、該表面に付着
した油分や汚れ等も除去できる場合がある。
【0019】上述の弗酸−硝酸系の電解液は、弗酸を
0.1〜5重量%、硝酸を1〜20重量%含有するもの
を使用することが望ましい。これら2成分の含有量が上
述の範囲の下限値未満となっている場合、線材表面の洗
浄効果が十分に得られなくなる場合がある。また、弗酸
ないし硝酸成分が多く含有され過ぎていると、同様に洗
浄効果が十分に得られなくなる場合があるほか、これら
酸成分の含有量が極端に多くなった場合には、酸による
腐食を受けて線材の表面状態が却って悪化する場合があ
る。ここで、電解液は、より望ましくは弗酸を0.5〜
2重量%、硝酸を3〜10重量%含有するものを使用す
るのがよい。
【0020】具体的には、圧延ないし伸線による線材製
造ラインからループロ状態で搬送・供給される鉄系線材
に対し、上記電解脱スケール処理を施すことにより、そ
の表面に形成されたスケール層を効果的に除去すること
ができる。例えば、線材側をカソード、電極側をアノー
ドとして通電した場合、線材表面に形成されたFe系の
酸化物が還元され、これが溶解することでスケール除去
が促進される。また、本発明の方法により鉄系線材に電
解脱スケール処理を施すと、特に不働態化処理を行わな
くとも比較的耐食性に優れた表面状態を得ることがで
き、ひいては上述の不働態化処理を省略できる利点が生
ずる。なお、本明細書においては、電解液中に正電荷を
放出する側の電極あるいは線材部分をアノード、電解液
から正電荷を受け取る側の電極あるいは線材部分をカソ
ードと定義する。
【0021】ここで弗酸−硝酸系の電解液に使用される
硝酸は窒素成分を含んでおり、近年、これを含有した酸
洗廃液が排出されると海洋、河川あるいは湖沼が窒素に
より富栄養化することが指摘されている。そのため、最
近では廃液中の窒素含有量に対する規制が強化されてお
り、これを受けて線材処理ラインにおいても、硝酸を含
有する処理液をなるべく使用しないですむ電解脱スケー
ル技術への要望が高まりつつある。そこで、弗酸−硝酸
系の電解液に代えて、弗酸と硫酸とを含有する電解液を
使用すれば、電解液(酸洗液)が硝酸を含有しないため
廃液中の窒素含有量を低減することができ、ひいては近
年強化されつつある廃液中の窒素含有量規制にも十分対
応することができる。また、弗酸−硝酸系の電解液と比
べて同等又はそれ以上のその脱スケール効果を達成する
ことができ、例えばステンレス鋼等に形成された強固な
酸化物層も速やかに除去することができる。
【0022】上述の電解液は、具体的には弗酸を0.5
〜10重量%、硫酸を1〜40重量%含有するものを使
用することが望ましい。これら2成分の含有量が上述の
範囲の下限値未満となっている場合、線材表面の洗浄効
果が十分に得られなくなる。また、弗酸ないし硫酸成分
が多く含有され過ぎていると、同様に洗浄効果が十分に
得られなくなる場合があるほか、これら酸成分の含有量
が極端に多くなった場合には、酸による腐食を受けて線
材の表面状態が却って悪化する場合がある。ここで、電
解液は、より望ましくは弗酸を1〜5重量%、硫酸を3
〜20重量%含有するものを使用するのがよい。
【0023】次に、本発明が適用可能な線材は、鉄系線
材であれば特に限定はされないが、形成されるスケール
が緻密で強固なステンレス鋼線材に対しては、上記電解
液を用いることで、特に顕著な脱スケール効果を達成す
ることができる。具体的には、日本工業規格G4304
(1987)に記載された各種ステンレス鋼、例えば、
SUS201、SUS202、SUS301、SUS3
01J、SUS302、SUS302B、SUS30
4、SUS304L、SUS304N1、SUS304
N2、SUS304LN、SUS305、SUS309
S、SUS310S、SUS316、SUS316L、
SUS316N、SUS316LN、SUS316J
1、SUS316J1L、SUS317、SUS317
L、SUS317J1、SUS321、SUS347、
SUSXM15J1等のオーステナイト系ステンレス
鋼、SUS329J1、SUS329J2L等のオース
テナイト−フェライト系ステンレス鋼、SUS405、
SUS410L、SUS429、SUS430、SUS
430LX、SUS434、SUS436L、SUS4
44、SUS447J1、SUSXM27等のフェライ
ト系ステンレス鋼、SUS403、SUS410、SU
S410S、SUS420J1、SUS420J2、S
US429J1、SUS440A等のマルテンサイト系
ステンレス鋼、SUS631等の析出硬化系ステンレス
鋼が使用できる。
【0024】また、ステンレス鋼以外では、例えば日本
工業規格に規定されたMn鋼(SMn420〜44
3)、MnCr鋼(SMnC420、443)、Cr鋼
(SCr415〜445)、CrMo鋼(SCM415
〜445、822)、NiCr鋼(SNC236、41
5、631、815〜836)、NiCrMo鋼(SN
CM220、240、415、420、431〜44
7、616、625、630、815)、AlCrMo
鋼(SACM645)等の各種機械構造用合金鋼、Si
−Mn系、Cr−Mn系、Cr−V系、Cr−Mn−B
系、(以上、JISSUP3、6、7、9、9A、1
0、11A)、Si−Cr系、Cr−Mo系(以上、S
UP12、13)、Si−Cr−Mo系(ISO)の各
種ばね鋼、及び炭素クロム軸受鋼(SUJ2、3)等に
対しても本発明の電解脱スケール装置を適用することが
できる。
【0025】例えば鉄系線材の場合、圧延ないし伸線に
よる線材製造ラインからループロ状態で搬送・供給され
る線材に対し、上記電解脱スケール処理を施すことによ
り、その表面に形成されたスケール層を効果的に除去す
ることができる。ここで、熱間圧延あるいは温間圧延に
より線材を製造後、コイル状態を経由せずに直ちにルー
プロ状態とすることにより、線材の冷却速度を高めるこ
とができ、ひいては線材表面におけるスケールの成長が
抑制されるので電解脱スケール処理時間を短縮すること
ができる。この場合、熱間圧延ないし温間圧延の温度
は、線材の材質によっても異なるが、例えばステンレス
鋼の場合は800〜1400℃で行うのがよい。また、
圧延後、熱処理を施した後直ちにループロ状態とするこ
ともできる。
【0026】なお、線材を圧延により製造する場合、原
料となる被圧延材は多段の対ロールにより圧延されて断
面積が大きく縮小することから、帯状鋼を圧延で製造す
る場合と異なり、断面の急激な縮小に伴う皺が線材表面
に発生しやすい傾向にある。具体的には、図11(a)
に示すように、被圧延材Wをロール孔型200cを有す
る対ロール200a,200bで圧延すると、被圧延材
Wの表面には周方向に強い圧縮力が働き、皺Kが発生す
る要因となる。このような傾向は、圧延が多段階になる
ほど、また、一段当りの圧下率が高くなるほど顕著とな
る。一方、帯状鋼の場合は、同図(b)に示すように、
被圧延材W’は平坦なロール面を有すロール300a,
300bの間で一方向に圧縮されるので、その表面には
主に引張応力が作用し、線材圧延の場合と比較すれば上
述のような皺は生じにくいといえる。
【0027】一方、図11(c)に示すように、ロール
孔型202を有する対ロール201a,201bで線状
の被圧延材Wを圧延した場合、被圧延材Wがロール孔型
202から対ロール201a,201bの隙間にはみ出
して、その断面両側に凸状部分Bを生ずることがある。
この凸状部分Bが生じた状態の被圧延材Wを、90°異
なる方向から別の対ロール203a,203bで圧延す
ると、凸状部分Bは被圧延材Wの本体部分に被さるよう
に潰れ、その潰れた部分の下側にも皺Kが生じやすい。
このように、圧延線材と帯状鋼とでは、皺発生の起こり
やすさが異なるため、得られる圧延材の表面状態、例え
ばスケールの形成状況には大きな差異を生ずる。具体的
には、図11(a)あるいは(c)に示すように、被圧
延材Wに皺Kが生じた場合には、その皺Kの内面に形成
されたスケール層が被圧延材Wの奥深くまで潜り込むこ
とになる。従って、圧延線材の表面の脱スケールを十分
に行うためには、該皺K内に形成されたスケールもある
程度は除去する必要性がある。
【0028】従って、帯状鋼の場合は、上述のような皺
は生じにくいから、脱スケール後の表面粗度はそれほど
大きくならないが、圧延線材の場合は、皺の内部まで脱
スケール処理が施される結果、スケールが除去された皺
が溝状の凹部となって線材の表面に残留し、結果として
スケール除去後の表面粗度が大きくなることとなる。そ
して、上記熱間圧延ないし温間圧延により製造されたス
テンレス鋼線材の場合、脱スケール後の線材の表面粗度
が、日本工業規格B0601に記載の方法により測定さ
れた表面粗度の最大高さRmaxが5〜20μmとなるよう
に電解脱スケール条件を設定するのがよい。Rmaxが5
μm以下になると、十分な脱スケール状態が得られなく
なる。一方、Rmaxが20μmを超えると、脱スケール
後の線材にさらに伸線処理等を施す場合に、その伸線性
が悪化したり、あるいは伸線後の線材の表面品質が低下
したりする問題が生ずる。なお、電解脱スケール条件
は、脱スケール後の線材の表面粗度の最大高さRmaxが
望ましくは5〜15μm、より望ましくは10〜15μm
となるように設定するのがよい。このように、電解脱ス
ケール処理の結果として得られる材料の表面粗度に上述
のような望ましい範囲が存在するのは、帯状鋼の場合と
大きく異なる点でもある。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態をいく
つかの実施例により図面を用いて説明する。図1は、本
発明の電解脱スケール装置を含んで構成された線材の表
面清浄化ラインの一構成例を示すブロック図である。該
表面清浄化ライン50は、圧延装置1(又は伸線装置)
で製造された線材W’(本実施例では、ステンレス鋼で
構成されているものとする)をループロ状態で搬送する
コンベア3、溶体化処理炉4、冷却槽5、予備洗浄槽
6、電解脱スケール装置8、仕上処理槽10、中和槽1
2等を備え、各槽間には水洗用のシャワー槽7、9、1
1等が適宜配置される。
【0030】圧延装置1は、例えば800〜1400℃
に加熱された被圧延材を、多段の対ロールにより順次圧
延してその断面積を順次縮小させることにより線材とす
るものである。該圧延装置1により製造された線材W’
はルーパー2により巻き取られる。ルーパー2は、例え
ば図2に示すように、線材W’が上側から挿通され、そ
の外側下部に設けられた複数のターンロール2aを介し
て本体2bの外側下部に線材W’を巻き付けることによ
り巻線部Cを形成する。形成された巻線部Cはルーパ2
の下側に配置されたコンベア3上に順次落下し、そのコ
ンベア3の駆動に伴い互いにずれた状態で積層されてル
ープロ状態となる。すなわち、熱間圧延(ないし温間圧
延)により製造された線材W’は、コイル状に巻き取ら
れた状態を経由することなく直接ループロ状態とされる
わけである。以下、線材W’は表面清浄化ライン50の
全体を通じて、このループロ状態でコンベア3等により
搬送されながら、一連の処理が連続的に施されることと
なる。なお、以下においてループロ状態の線材をループ
ロ線材Wという。
【0031】溶体化処理炉4は、例えばループロ線材W
中の炭化物等を固溶させて、以下の工程におけるループ
ロ線材Wの耐食性を確保するためのものであり、処理後
は線材マトリックス中に炭化物等が再析出しないよう
に、冷却槽5においてループロ線材Wを強制冷却する。
次に、予備洗浄槽6は、ループロ線材Wから可溶性のス
ケール等を予め溶解除去するために設けられており、硫
酸溶液等の酸洗液を収容する。そして、その下流側に本
発明の電解脱スケール装置8が配置されているが、詳し
い構成は後に説明する。電解脱スケール装置8のさらに
下流には、塩酸溶液等を収容した仕上処理槽10が配置
されており、電解脱スケール後のループロ線材Wの表面
を仕上処理する。仕上処理後のループロ線材Wは、さら
に中和槽12に搬送されるとともに、そこでプレパレン
溶液等(プレパレンは商品名)のアルカリ性水溶液で構
成された中和液に浸漬されて残留した処理液等が中和処
理され、以下の工程に回される。なお、ループロ線材W
の材質ないし性状に応じて、溶体化処理炉4、冷却槽
5、予備洗浄槽6、仕上処理槽10、ならびにシャワー
槽7及び11のうち、それらの1ないし複数のものを適
宜省略することができる。
【0032】図3は、電解脱スケール装置8の一例を模
式的に示している。すなわち、該電解脱スケール装置8
においては、電解脱スケール槽20が、電解液21を常
時充満させておくための内槽51と、その内槽51から
オーバーフローした電解液21を受ける外槽52とを備
え、外槽52内の電解液21は配管52aを介してポン
プ80により内槽51内に戻されて循環するようになっ
ている。すなわちこれら配管52aとポンプ80とが循
環送液手段を構成する。なお、内槽51内の電解液21
は、内槽51の上面に形成された開口部51aからオー
バーフローする。
【0033】次に、外槽52及び内槽51には、それぞ
れその前端面側に線材入口52b及び51bが、また同
じく後端面側には線材出口52c及び51cが形成され
ている。なお、内槽51の線材入口51b及び線材出口
51cは、開口部51aよりも少し下側に形成されてい
る。そして、それら線材入口52b及び51b及び線材
出口52c及び51cの下側において、外槽52及び内
槽51の内側には、線材入口から線材出口に向かう方向
において、線材搬送コンベア40を構成する複数の搬送
ロール53が所定の間隔で配置されており、図4(a)
に示すモータ41等の駆動部により各々同方向に回転駆
動されて、ループロ線材Wがその上面側で搬送されるよ
うになっている。
【0034】なお、図4(a)において、搬送されるル
ープロ線材W上面から液面L、すなわち内槽51の開口
部51aまでの高さhは10〜200mm、望ましくは3
0〜150mm、より望ましくは50〜100mmの範囲で
調整される。また、線材搬送コンベア40の搬送面から
内槽51aの開口部までの高さh’は50〜500mm、
望ましくは80〜350mm、より望ましくは100〜3
00mmとされている。
【0035】次に、図3に示すように、ループロ線材W
の下側には、該ループロ線材Wの搬送方向に並んで配置
されるアノード電極24aとカソード電極24bとから
なる電極対24が、線材Wの下面側に対向するように、
該線材Wの搬送方向に沿って複数組(本実施例では2組
のみを示している)設けられており、アノード電極24
aは電源47の正極に、カソード電極24bは同じく負
極にそれぞれ接続されている。
【0036】次に、各電極は搬送ロール53の間に形成
された間隙内に配置されている。そして、線材搬送方向
上流側に位置する電極対24(図面左側)については、
内槽51内の最上流側の搬送ロール53を第一ロールと
し、以下、下流側に並ぶ各搬送ロール53を順次第二、
第三、第四のロールとすれば、アノード電極24aは第
一ロールと第二ロールとの間に配置され、カソード電極
24bは第三ロールと第四ロールとの間に配置されてい
る。そして、第二ロールと第三ロールとの間に形成され
る間隙には、ループロ線材Wの搬送方向に沿う板状の補
助遮蔽部材30が配置され、その補助遮蔽部材30の下
面に対し、下向きに突出する形態でこれと一体的に、内
槽51の幅方向に亙る板状の漏洩電流遮断部材31(図
4(b)参照)が、アノード電極24aとカソード電極
24bよりも下側に突出して配置されている。漏洩電流
遮断部材31は、アノード電極24aからループロ線材
Wの下側を通ってカソード電極24b側へ向かおうとす
る漏洩電流を遮断又は抑制する働きをなし、例えば図4
(a)に示すように、その下端側は内槽51の底部に対
しボルト等の締結手段により固定されている。
【0037】一方、上記電極対24の下流側に隣接する
電極対24(図面右側)に対しても同様の形態で補助遮
蔽部材30及び漏洩電流遮断部材31が配置されている
が、そのアノード電極24a、補助遮蔽部材30及び漏
洩電流遮断部材31、カソード電極24bの配列順序
は、上記上流側の電極対24とは逆となっている。すな
わち、各電極は、ループロ線材Wの搬送方向において互
いに隣接するもの同士24a,24bが電極対24をな
し、各電極対24は電源47に対し、その上流側のもの
と下流側のものとの極性関係が、隣接する電極対24の
間で互いに逆となるように接続される。なお、隣接する
電極対24間において、中央の搬送ロール53cを挟ん
で互い隣接する電極同士は同極性(本実施例ではともに
カソード電極24b)となり、それらの間で漏洩電流が
発生する心配がないことから、漏洩電流遮断部材31は
当該電極同士の間には配置されていない。なお、電極配
列においてアノード電極24a同士が隣接する部分が生
ずる場合においても、それら電極同士の間には漏洩電流
遮断部材31を配置する必要性はない。
【0038】電解脱スケール槽20には、各漏洩電流遮
断部材31に対応する位置において搬送されるループロ
線材Wよりも上方に、上部漏洩電流遮断部材としてのロ
ール部材60が設けられている。該ロール部材60は、
内槽51の幅方向上部内面に回転可能に取り付けられ
て、ループロ線材Wの上面側に当接して該ループロ線材
Wの搬送方向に回転するとともに、その上部が電解液の
液面よりも上方に突出する形態で配置されており、アノ
ード電極24aからループロ線材Wの上側を通ってカソ
ード電極24b側へ向かおうとする漏洩電流を遮断又は
抑制する一方、ループロ線材Wの電解液21の液面から
の露出を防止ないし抑制する働きもなす。なお、図4に
示すように、ロール部材60はモータ61等により駆動
することができるが、自由回転としてもよい。
【0039】次に、電解液21は、弗酸と硫酸を含有す
る水溶液、例えば弗酸を0.5〜10重量%(望ましく
は1〜5重量%)、硝酸を1〜40重量%(望ましくは
3〜20重量%)含有するものが使用されている。な
お、電解液21は、弗酸と硝酸を含有する水溶液、例え
ば弗酸を0.1〜5重量%、硝酸を1〜20重量%含有
するもの、望ましくは弗酸を0.5〜2重量%、硝酸を
3〜10重量%含有するものを使用することもできる。
また、各隣接する搬送ロール51の間には、ループロ線
材Wを電解脱スケール処理するための電極対24が、搬
送されるループロ線材Wに対し、それぞれその下側から
対向するように配置されている。各電極対24はカーボ
ンを主体に構成され、例えばグラファイト粉末を板状に
成形して焼成したもの等が使用されているが、それ以外
の材質のもの、例えば白金やパラジウム等の貴金属ある
いは、板状の基材をそれら貴金属で被覆したものも使用
可能である。
【0040】以下、電解脱スケール装置8の作用につい
て説明する。図1において、コンベア3により搬送され
てくるループロ線材Wは、図3に示すように搬送ロール
53に受け渡され、電解脱スケール槽20内の電解液2
1に浸漬される。すると、ループロ線材Wは、カソード
電極24bと対向する位置においてはアノードとなり、
同じくアノード電極24aと対向する位置においてはカ
ソードとなるように、交互に通電方向が変化しながら通
電されて、表面に形成されたスケールが除去されてゆ
く。そのスケール除去反応は、以下のような機構に基づ
いて進行するものと推測される。すなわち、ループロ線
材Wがカソード電極24bを通過する際には、ステンレ
ス鋼で構成されたループロ線材Wの表面においては、下
記化1に示すアノード酸化反応が起こるものと考えられ
る。
【0041】
【化1】
【0042】すなわち、熱間圧延により製造されたステ
ンレス鋼線材の表面には、酸に難溶性のクロム酸化物
(Cr23)を含有する強固なスケール層が形成されて
いるが、上記化1に示す反応式に基づいてアノード酸化
反応による分解が起こることにより、これが酸に可溶の
クロム酸成分(あるいは重クロム酸成分)に転化して、
その溶解除去が促進される。一方、アノード電極24a
を通過する際には、下記化2に示すカソード還元反応が
起こるものと考えられる。
【0043】
【化2】
【0044】この場合は、スケール中の鉄イオンがカソ
ード還元反応により還元されてその溶解が促進され、ス
ケールの主成分となる鉄の酸化物が除去される。こうし
て、ループロ線材Wの表面ではアノード酸化反応とカソ
ード還元反応とが交互に起こってスケール除去が進行し
てゆくものと考えられる。なお、図3の電解脱スケール
装置8においてはループロ線材Wに対するスケール除去
反応は、一見電極対24との対向面側で優先的に進むよ
うにも思われるが、実際は電解液21の電気抵抗が十分
小さい限り、反応を媒介するイオンが電極と対向してい
ないループロ線材Wの裏側にも回り込むので、アノード
酸化反応及びカソード還元反応のいずれにおいても、ス
ケール除去反応は支障なく進行する。
【0045】ここで、図4に示すように、アノード電極
24aからアノード電極24bへ向かう電流は、ループ
ロ線材Wの下側における漏洩が漏洩電流遮断部材31に
より、また上側における漏洩がロール部材60により、
それぞれ遮断又は抑制されるのでループロ線材Wに集中
し、電解脱スケール処理における電流効率が向上する。
また、搬送されるループロ線材W上面から液面Lまでの
距離が10〜200mm、望ましくは30〜150mm、よ
り望ましくは50〜100mmの範囲で調整されているこ
とから、ループロ線材Wの上側における漏洩電流経路の
断面積が減少し、線材上側での漏洩電流がさらに発生し
にくくなっている。さらに、ループロ線材Wの上面側は
ロール部材60により上方への移動を規制されるから、
ループロ線材Wの電解液21からの露出も起こりにくく
なっている。
【0046】上記電極対24とループロ線材Wとの間で
通電される電流の電流密度は1A/dm2以上、望まし
くは5A/dm2以上に設定することで、上述の電解脱
スケール効果が高められる。なお、電流密度を50A/
dm2より大きく設定しても、水素もしくは酸素の発生
量が大きくなるのみで、脱スケール速度は余り変化しな
いので、電流密度はそれ以下の範囲、より望ましくは3
0A/dm2以下の範囲で設定するのがよい。この場
合、図3に示すように、通電の極性を、電源47に接続
された極性反転制御部36により所定の周期で反転させ
るようにすれば、アノード酸化反応とカソード還元反応
とが交互に進行して、同様の電解脱スケール処理を行う
ことができる。このような効果をより顕著に得るために
は、通電方向の反転の頻度を0.1〜70回/秒に設定
するのがよく、さらに望ましくは0.2〜30回/秒と
するのがよい。この場合、アノード電極24a及びカソ
ード電極24bは、極性反転に伴いそれぞれカソード電
極及びアノード電極として機能することとなる。
【0047】上述のような通電方向の反転により電解脱
スケール効果が高められる原因については、次のような
機構が推定される。まず、ループロ線材W側がカソード
となってFe酸化物の還元反応が起こる際には、これと
同時に起こる前述の加水分解反応(あるいは水の電気分
解反応)により生成した水素ガスが、スケール層に形成
されたクラック等からその内部に浸透する一方、通電方
向が反転してループロ線材W側がアノードとなった場合
には、その浸透した水素ガスがスケール層から急速に放
出される。一方、これとは逆に、ループロ線材W側がア
ノードとなった場合には、酸素が発生してこれがスケー
ル層に浸透し、極性反転に伴いこれが急速に放出される
こととなる。すなわち、極性が反転する毎に、水素及び
酸素のスケール層に対する浸透・放出が交互に繰り返さ
れ、その衝撃によってスケール層の破壊・脱落が促進さ
れるものと考えられる。なお、スケール層がの大部分が
酸化鉄のみで構成されている場合など、カソード還元反
応だけでも十分な脱スケール効果が得られる場合には、
極性反転は特に行わない構成としてもよい。
【0048】上記構成において極性反転制御部36は、
例えば公知の方形波インバータ回路等で構成することが
でき、電流の通電方向を方形波状に切り換えることがで
きる。この場合、その切り換えパターンは、順方向通電
時と逆方向通電時とで最大電流の絶対値及び通電時間が
ほぼ等しくなるように設定することができる。一方、例
えば図8に示すように、順方向通電時間t0が逆方向通
電時間t1と同じか又はそれよりも長くなるように設定
すると、上述の効果をさらに顕著に得ることができる場
合がある。具体的にはt0はt1の1〜5倍程度、より望
ましくは1〜3倍程度に設定するのがよい。また、順方
向通電時における最大電流の絶対値Imaxが、逆方向通
電時の最大電流の絶対値Iminよりも小さくなると、ル
ープロ線材W側がカソードとなった場合に電解液中の不
純物成分が該線材Wの表面に堆積してこれを汚染するこ
とがあるので、Imax>Iminとなるように設定すること
が望ましい。また、通電方向の反転は、図7に示すよう
に正弦波状に切り換えることもできる。
【0049】次に、線材W’は前述の通り熱間圧延で製
造されるが、この場合、図9(a)に示すように、原料
となる被圧延材Pは多段の対ロールにより圧延されて断
面積が大きく縮小することから、同図(b)に示すよう
に、断面の急激な縮小に伴う皺WRが線材表面に発生し
やすい傾向にある。この点が、熱間圧延により帯状鋼を
製造する場合と大きく異なる点であり、従って、線材
W’の表面の脱スケールを十分に行うためには、そのよ
うな皺WR内に形成されたスケールSRもある程度は除
去する必要性がある。この場合、スケールSRが除去さ
れた皺WRは溝状の凹部Gとなって線材の表面に残留
し、結果としてスケール除去後の線材W’の表面粗度は
大きくなる。そして、この表面粗度が伸線性及び伸線後
の表面品質に大きく影響することがわかっており、例え
ば線材W’がステンレス鋼線材の場合、脱スケール後の
線材W’の表面粗度の最大高さRmaxが5〜20μm、望
ましくは5〜15μm、より望ましくは10〜15μmと
なるように電解脱スケール条件を設定するのがよい。
【0050】なお、図5に示すように、上部漏洩電流遮
蔽部材は内槽51の幅方向に配置された板状部材70で
構成することもできる。この場合、該板状部材70の下
端部にはループロ線材Wの上面と接触して回転する補助
ロール71を設けることができる。また、該板状部材7
0をループロ線材W側に付勢してこれを押さえるばね等
の弾性部材72を設けることもできる。
【0051】また、図6に示す例では、補助遮蔽部材が
省略され、各電極対24のアノード電極24aとカソー
ド電極24bとは、搬送ロール53を挟んで互いに隣接
して配置されている。この場合、漏洩電流遮断部材31
は、アノード電極24aとカソード電極24bとの間に
配置された搬送ロール53のほぼ直下位置に配置するこ
とができる。なお、該構成においては漏洩電流遮断部材
31の上端部に、搬送ロール53と接触して回転する補
助ロール31aを設けることができる。
【0052】また、図7に示すように、ループロ線材W
の搬送方向に並ぶ複数の電極を該搬送方向において二分
し、その同じ組に属する電極の極性が全て同一となり、
異なる組間では極性が互いに逆となるように構成するこ
ともできる。この場合、それら電極の一方の組において
はアノード酸化反応又はカソード還元反応の一方のみが
進行し、他方の組においてはそれらの他方のみが進行す
る形となる。そして、それら組の境界において隣接する
2つの電極が、アノード電極24aとカソード電極24
bとからなる電極対24を形成するから、漏洩電流遮断
部材31及び上部漏洩電流遮蔽部材60(あるいは7
0)は、それらの間に対応して配置するようにすればよ
い。
【0053】
【実施例】
(実施例1)所定の圧延装置により温度900℃以上で
熱間圧延されたステンレス鋼線材(SUS304、線径
5.5mmφ)を、図2に示す所定のルーパ2とコンベア
3とを用いて巻線径1170mm、巻線間ずれ量27.5
mmのループロ状態とし、これを連続的に搬送しながら1
150℃で溶体化し、さらにこれを水冷後、図3に示す
電解脱スケール装置8により、下記の条件で脱スケール
処理を行った。すなわち、電解液は弗酸1重量%、硝酸
5重量%を含有するものを使用し、電解液の温度を60
℃、電圧8〜9V、ループロ線材Wの搬送速度を5cm
/秒、電極とループロ線材Wとの距離を3cmに設定し
た。また、ループロ線材Wが陰極となる時間T1と同じ
く陽極となる時間T2との比T1/T2が1/2となり、
サイクルピッチ(T1+T2)が0.6秒となるように、
通電の極性を周期的に反転させた。そして、上記電解脱
スケール処理中の通電電流値Iを測定するとともに、ル
ープロ線材Wを導入しない場合の電流値IBも同様に測
定した。なお、電解脱スケール処理の合計時間は90秒
とした。
【0054】ここで、ループロ線材Wを導入した場合の
電流値IBは、該線材の脱スケールに費やされた電流I1
と漏洩電流I2との和に相当するものと考えられる。そ
して、ループロ線材Wを導入しない場合の電流IBは漏
洩電流I2に相当するものと推測し、電流効率ηは、 η=I1/(I1+I2)=(I−IB)/I‥‥‥(1) で求めた。なお、参照例として上部漏洩電流遮断部材と
してのロール部材60を省略した電解脱スケール装置の
構成、及び比較例としてロール部材60、漏洩電流遮断
部材31及び補助遮蔽部材30を省略した電解脱スケー
ル装置の構成を用いて同様の試験を行った。
【0055】こうして電解脱スケール処理が終了後、ル
ープロ線材Wをプレパレン水溶液で中和し、さらにこれ
を洗浄・乾燥してその表面の脱スケール状態を目視にて
評価した。以上の結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】まず、処理後のループロ線材Wは、いずれ
も線材表面の拡大表面(倍率10倍)を観察した場合
の、その脱スケール領域の面積率は、いずれの構成の装
置を用いた場合も90%以上となり、良好な脱スケール
状態が得られた。一方、電流効率ηは、比較例の装置と
用いた場合と比較して、漏洩電流遮断部材を使用した参
照例の装置を用いた場合の方が電流効率が高く、さらに
ロール部材60を併用する実施例の装置を用いれば、さ
らに電流効率が高くなっていることがわかる。
【0058】(実施例2)所定の圧延装置により温度9
00℃以上で熱間圧延されたステンレス鋼線材(SUS
304、線径5.5mmφ)を、図2に示す所定のルーパ
2とコンベア3とを用いて巻線径1170mm、巻線間ず
れ量27.5mmのループロ状態とし、これを連続的に搬
送しながら1150℃で溶体化し、さらにこれを水冷
後、図3に示す電解脱スケール装置8にて脱スケール処
理を行った。なお、電解液は表1に示す各種組成のもの
を用いた。ただし、表中「*」を付したものは、本明細
書において示した望ましい範囲から外れた組成のもので
あり、硫酸に変えて塩酸を用いたものは比較例である。
また、電解液の温度を60℃、電流密度を10A/dm
2、ループロ線材Wの搬送速度を5cm/秒、電極対2
4とループロ線材Wとの距離を3cmに設定するととも
に、該線材Wがカソードとなる時間T1と同じくアノー
ドとなる時間T2との比T1/T2が1/2となり、サイ
クルピッチ(T1+T2)が0.6秒となるように、通電
の極性を周期的に反転させた。また、電解液中にてルー
プロ線材Wが通電を受ける合計時間は90秒とした。
【0059】こうして電解脱スケール処理が終了後、ル
ープロ線材Wをプレパレン水溶液で中和し、さらにこれ
を洗浄・乾燥してその表面の脱スケール状態を評価し
た。なお、評価は、線材表面の拡大写真(倍率10倍)
を撮影し、その脱スケール領域の面積率を画像処理によ
り求め、面積率がほぼ100%に近いものを優(◎)、
90%以上のものを良(○)、50〜90%のものを可
(△)、50%未満のものを不可(×)として行った。
一方、各試料について、日本工業規格B0601に記載
の方法により、表面粗度の最大高さRmaxを測定した。
以上の結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】すなわち、弗酸及び硫酸を本発明の組成範
囲で含有する電解液を用いることにより、良好な脱スケ
ール状態が得られていることがわかる。
【0062】(実施例3)実施例2と同じ線材を使用
し、また、電解液組成を弗酸3重量%/硫酸10重量%
に固定し、さらに通電極性反転のサイクルピッチを0.
02〜30秒の各種値に設定して、他は実施例1と同じ
条件により同様の実験を行った。結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】すなわち、通電方向の反転の頻度を0.1
〜70回/秒、望ましくは0.2〜30回/秒とするこ
とにより、良好な脱スケール状態が得られていることが
わかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電解脱スケール装置を含む線材の表面
清浄化ラインの構成例を示すブロック図。
【図2】ルーパの作用を示す説明図。
【図3】本発明の電解脱スケール装置の一例を示す側面
断面模式図。
【図4】図3の電解脱スケール装置の要部を示す側面断
面模式図および平面模式図。
【図5】その変形例の要部を示す側面断面模式図および
平面模式図。
【図6】図3の電解脱スケール装置の別の変形例を示す
側面断面模式図。
【図7】同じくさらに別の変形例を示す側面断面模式
図。
【図8】通電極性の反転パターンの一例を示すグラフ。
【図9】圧延線材の表面に皺ができる様子を示す説明
図。
【図10】従来の線材酸洗方法を示す模式図。
【図11】線材表面に皺が発生する様子を示す説明図。
【図12】漏洩電流が発生する様子を示す説明図。
【符号の説明】
W ループロ線材 C 巻線部 3 コンベア(線材搬送手段) 8 電解脱スケール装置 20 電解脱スケール槽 21 電解液 24 電極対 24a アノード電極 24b カソード電極 31 漏洩電流遮断部材 60 ロール部材(上部漏洩電流遮断部材) 70 板状部材(漏洩電流遮断部材)

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 線材に巻線部を順次形成し、それら巻線
    部を一方向にずらせて互いに積層することにより得られ
    るループロ線材を電解脱スケール処理するための装置で
    あって、 電解液が収容される電解脱スケール槽と、 ループロ線材を電解液中で搬送するために前記電解脱ス
    ケール槽内に配置され、上面側が搬送面とされるととも
    に該搬送面が液通に構成された線材コンベアと、 搬送
    される前記ループロ線材に対しそれぞれ下側から対向す
    るとともに、該ループロ線材の搬送方向に並んで配置さ
    れるアノード電極とカソード電極とからなり、前記アノ
    ード電極、前記電解液、前記ループロ線材、前記電解
    液、前記カソード電極の順で導電経路を形成して、前記
    ループロ線材の間接電解を行う1ないし複数組の電極対
    と、 互いに隣接する前記アノード電極とカソード電極との中
    間位置に対応して、それらアノード電極とカソード電極
    よりも下方に配置され、前記アノード電極から前記ルー
    プロ線材の下側を通って前記カソード電極側へ向かおう
    とする漏洩電流を遮断又は抑制する漏洩電流遮断部材
    と、 を備えたことを特徴とする線材の電解脱スケール装置。
  2. 【請求項2】 前記電解脱スケール槽に収容された前記
    電解液の液面レベルは、搬送される前記ループロ線材の
    上面から該液面までの高さが10〜200mmの範囲とな
    るように調整される請求項1記載の電解脱スケール装
    置。
  3. 【請求項3】 前記電解脱スケール槽は、 前記電解液を常時保持するとともに該電解液のオーバフ
    ロー流出部を備えた内槽と、 その内槽のオーバフロー流出部からオーバーフローした
    電解液を受ける外槽と、 その外槽に受けられた電解液
    を前記内槽へ戻す循環送液手段とを備える請求項2記載
    の電解脱スケール装置。
  4. 【請求項4】 前記電解液は、前記内槽の上面に形成さ
    れた開口部からオーバーフローするようになっており、
    該内槽の開口上縁から、搬送される前記ループロ線材の
    上面までの高さが10〜200mmに設定されている請求
    項3記載の電解脱スケール装置。
  5. 【請求項5】 前記線材コンベアは、前記ループロ線材
    の搬送方向に所定の間隔で配列する複数の搬送ロールを
    備え、前記アノード電極と前記カソード電極とは、それ
    ら搬送ロール間に形成された間隙内に配置されている請
    求項1ないし4のいずれかに記載の電解脱スケール装
    置。
  6. 【請求項6】 前記電解脱スケール槽には、前記漏洩電
    流遮蔽部材に対応する位置において搬送される前記ルー
    プロ線材よりも上方に、前記アノード電極から前記ルー
    プロ線材の上側を通って前記カソード電極側へ向かおう
    とする漏洩電流を遮断又は抑制する上部漏洩電流遮断部
    材が設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載
    の電解脱スケール装置。
  7. 【請求項7】 前記上部漏洩電流遮断部材は、その上部
    が前記電解液の液面よりも上方に突出する形態で配置さ
    れている請求項6記載の電解脱スケール装置。
  8. 【請求項8】 前記上部漏洩電流遮断部材は、前記ルー
    プロ線材の上面側に当接して該ループロ線材の搬送方向
    に回転するロール部材を含む請求項6又は7に記載の電
    解脱スケール装置。
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