JP4692960B2 - 微小加工装置及び微小ワーク加工方法 - Google Patents
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ここで、レチクルは、石英基板の表面のうち、露光パターンを構成する領域を除いた他の領域を、金属薄膜や酸化物薄膜等の薄膜(遮光部)で覆ったものであって、石英基板が露出している領域(透光部)でのみ露光光の透過を許容するものである。
このため、レチクルは、フォトリソグラフィに用いる前に、欠陥検査装置によって欠陥の有無や欠陥の存在場所が調べられ、欠陥が存在する場合には欠陥処理装置による欠陥修正処理が行われる。前述のように、近年はレチクルのパターン自体も微細化が進んでいるので、欠陥修正処理では、より微細な加工に対応することが求められている。
黒欠陥の修正方法としては、例えば、後記の特許文献1,2,3に記載の技術が知られている。
特許文献2には、液体金属Ga(ガリウム)イオン源を用いた収束イオンビーム装置によって、黒欠陥に収束イオンビームを照射することで黒欠陥をスパッタリングして除去したり、アシストガス雰囲気下で黒欠陥に収束イオンビームを照射することで黒欠陥をエッチングして除去する技術が記載されている。
特許文献3には、原子間力顕微鏡(AFM)等のプローブ顕微鏡の探針によって黒欠陥を擦って削り落とすという技術である。
また、この手法では、イオン源として用いたGaのイオンがレチクルの石英基板に打ち込まれてガリウムステインを生じさせてしまったり、黒欠陥周辺部の石英基板に対してもGaイオンが照射されることでスパッタリングを生じさせてしまうなどして、欠陥修正箇所周辺における石英基板の光透過率を低下させてしまう場合がある。
しかし、この手法では、欠陥修正箇所周辺に黒欠陥の削りカスが発生するので、この削りカスをレチクル上から除去する必要がある。特許文献3では、クリーンエアーガンによって清浄エアーをレチクル表面に吹き付けることによって削りカスを除去しているが、このようにクリーンエアーガンを用いてオンマシンで残渣除去を行うと、欠陥修正装置内にナノパーティクルが散乱してレチクルを汚染してしまうことがあった。
すなわち、本発明に係る微小加工装置は、ワークの微小領域を削り取る切削加工装置と、該切削加工装置が前記ワークから削り取った加工残渣を吸着する吸着装置とを有する微小加工装置を提供する。
この微小加工装置では、ワークの切削加工によって生じた加工残渣は、吸着装置によって吸着されて、ワーク表面から除去されるので、加工残渣が周囲に拡散しにくい。このため、この微小加工装置では、加工残渣によるワークの汚染を効果的に防止することができる。また、この微小加工装置では、加工残渣をワークから効果的に除去することができるので、ワークに特別な汚染管理が要求される場合を除いて、ワークの洗浄を行う必要がない。
なお、この微小加工装置の切削加工装置は、探針を試料表面に沿って走査させるプローブ顕微鏡によって構成することができる。この場合には、プローブ顕微鏡において探針を試料に対して所定の圧力で当接させた状態で、探針を試料に対して相対移動させることで、探針の先端によって試料表面を削り取る。
正電極及び負電極は、ワークの切削加工を行う刃物部を保持する保持部に設けられている。すなわち、この微小加工装置では、正電極及び負電極は、刃物部とともに移動する保持部に設けられているので、刃物部による切削加工を行ったのちにただちに加工残渣を吸着することができ、加工残渣が周囲に拡散しにくい。
また、正電極及び負電極を、極力線幅を狭くした配線によって構成することで、正電極及び負電極の設置面積を同一としながら、正電極と負電極との境界の長さを確保して、より多くの加工残渣を吸着することができる。
この場合には、加工残渣が導体である場合にも、加工残渣が正電極と負電極との間に吸着された際に加工残渣と各電極との間で電荷の移動が生じず、加工残渣に生じた分極が維持されるので、吸着装置による加工残渣の吸着保持が継続される。
このように構成される微小加工装置では、正電極及び負電極を単純な形状(例えば直線状や矩形)とした場合に比べて正電極と負電極との境界、すなわち静電吸着が行われる領域が多いので、吸着可能な加工残渣の量が多い。
このように構成される微小加工装置では、ワークの加工残渣が導体である場合にも、加工残渣が刃物部に静電気力によって付着することがないので、常に良好な切削加工を行うことができる。また、このように刃物部に加工残渣が付着しにくいので、刃物部によるワークの加工部位を良好に視認することができ、正確な加工が可能である。
さらに、この微小ワーク加工方法では、切削加工装置による切削加工と前後して、ワーク上の不要物が吸着装置によって吸着されるので、ワークの切削加工によって生じた加工残渣は、ただちに吸着装置によって吸着されて、ワーク表面から除去されることとなり、加工残渣が周囲に拡散しにくい。このため、この微小ワーク加工方法では、加工残渣によるワークの汚染を効果的に防止することができる。
加工工程では、ワークの加工を切削加工によって行うため、ワークには、切削加工が施された領域以外にダメージが生じない。
また、加工工程と前後して、ワーク上の不要物が吸着装置によって吸着されるので、ワークの切削加工によって生じた加工残渣は、ただちに吸着装置によって吸着されて、ワーク表面から除去されることとなり、加工残渣が周囲に拡散しにくい。
さらに、この微小ワーク加工方法では、ワークの加工後に加工部位を確認し、加工が不足している場合には再度加工を施すこととしてもよい。これにより、ワークの加工を確実に行うことができる。
以下に示す各実施形態では、本発明を、フォトリソグラフィによる半導体集積回路の形成に用いるレチクルの加工等に用いる微小加工装置に適用した例を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る微小加工装置1は、レチクルLの微小領域を削り取る切削加工装置2と、切削加工装置2がレチクルLから削り取った加工残渣を吸着する吸着装置3と、これら切削加工装置2及び吸着装置3の動作を制御する制御装置4とを有している。
ここで、レチクルLは、石英基板Bと、石英基板Bの表面のうち、露光パターンを構成する領域を除いた他の領域を覆う遮光部Sとを有している。遮光部Sは、例えばCr(クロム)等の金属薄膜や酸化物薄膜の薄膜によって構成されている。遮光部Sのうち、露光パターンを構成する領域にはみ出した部分がレチクルLの黒欠陥FBである。
本実施形態では、切削加工装置2は、レチクルLを保持するステージ10と、レチクルLの切削加工を行う刃物部11と、刃物部11を保持する加工用アーム12(保持部)と、加工用アーム12をレチクルLに対して相対移動させる移動装置13と、刃物部11の三次元位置を検出する位置検出装置14とを有している。
ここで、上記の切削加工装置2は、探針を試料表面に沿って走査させるプローブ顕微鏡とほぼ同様の構成であるので、この微小加工装置1においては、レチクルLの表面形状を観察する観察装置として利用される。
加工用アーム12は、ステージ10上に張り出した状態で移動装置13によって一端側を支持されるカンチレバーによって構成されている。
刃物部11は、加工用アーム12の先端(自由端)の下面側に突出させて設けられた突起部によって構成されている。刃物部11は、工業用ダイヤモンド等の硬質な材質によって構成されており、その先端は、研磨等によって鋭利な角部に整形されている。
加工用アーム12には、移動装置13に支持される端部(固定端)側に、この部位の上下方向の変形を検出する変形検出素子14aが設けられている。変形検出素子14aとしては、加工用アーム12の表面に貼り付けられる、ピエゾ素子等の歪みセンサが用いられる。
具体的には、制御装置4は、移動装置13と刃物部11との相対位置の情報と移動装置13の動作情報とに基づいて、無負荷状態における刃物部11の三次元位置を検出し、変形検出素子14aによって検出された加工用アーム12の変形量に基づいて、負荷が加わった状態(すなわち切削加工時)における刃物部11の三次元位置の情報の補正並びに刃物部11に加わった負荷の大きさの検出とを行う構成とされている。
なお、移動装置13に対する刃物部11の相対位置は、実測によって求めてもよく、各部材の寸法等から求めてもよい。
吸着装置3は、図2に示すように、加工用アーム12の下面に設けられた正電極16と、加工用アーム12の下面に正電極16と隣接して設けられた負電極17と、加工用アーム12の下面に正電極16及び負電極17を覆うようにして設けられる絶縁層18と、正電極16と負電極17との間に電位差を生じさせる電圧源19とを有している。
本実施形態では、正電極16及び負電極17は、それぞれ加工用アーム12の長手方向に沿って延びる幅の狭い直線状の電極パターンによって構成されている。
絶縁層18は、正電極16及び負電極17のうち、少なくとも加工用アーム12の先端近傍部分を覆うものであって、正電極16及び負電極17の全体を覆っていることが好ましい。
具体的には、移動装置13を操作することによって、刃物部11を、レチクルLの表面に対してレチクルLが損傷しない程度の圧力で当接させて、加工用アーム12に上方に反る向きの弾性変形を生じさせる。この状態で、移動装置13によって刃物部11をレチクルLに対して相対移動させて、レチクルLの表面の所望領域をラスター状に走査し、このときに位置検出装置14によって検出された刃物部11の上下方向の位置情報に基づいて、レチクルLの表面形状を検出する。
このように、加工用アーム12の上方に反る向きの弾性変形量は、レチクルLにおいて刃物部11が当接させられている部位の高さに応じて変化する。位置検出装置14は、変形検出素子14aの出力に基づいて、変位検出装置14bによって加工用アーム12の先端の変位量を検出することで、刃物部11の上下方向の位置情報を得る。
加工工程では、移動装置13を操作することによって、刃物部11を黒欠陥FBに対向する位置まで移動させるとともに、黒欠陥FBに対して加工部位を確認する際の圧力よりも強い所定の圧力で当接させる。さらに、この状態で、移動装置13によって刃物部11をレチクルLに対して相対移動させることで、刃物部11の先端によって黒欠陥FBを削り取る。
ここで、刃物部11の黒欠陥FBに対する当接圧力は、加工用アーム12のヤング率と、加工用アーム12に生じた上方に反る向きの弾性変形量とに基づいて検出することができるので、この当接圧力が適切な大きさとなるように移動装置13の動作を制御する。
吸着装置3は、電圧源19によって正電極16と負電極17との間に電位差を生じさせることで、正電極16と負電極17との間に静電界を形成する。すると、この静電界によって黒欠陥FBの削りカスPが分極させられて、図4に示すように、正電極16と負電極17とにまたがるようにして吸着される。
本実施形態では、正電極16及び負電極17は、絶縁層18によって覆われているので、削りカスPが導体である場合にも、削りカスPが正電極16と負電極17との間に吸着された際に削りカスPと各電極との間で電荷の移動が生じず、削りカスPに生じた分極が維持されるので、吸着装置3による削りカスPの吸着保持が継続される。
そして、ステージ10からレチクルLを取り外したのち、電圧源19による正電極16、負電極17への電圧の供給を停止させ、全ての処理を完了する。
さらに、黒欠陥FBの切削加工によって生じた削りカスPは、吸着装置3によって吸着されて、レチクルLの表面から速やかに除去されるので、削りカスPが周囲に拡散しにくい。このため、この微小加工装置1では、削りカスPによるレチクルLの汚染を効果的に防止することができる。
特に、本実施形態では、正電極16及び負電極17は、刃物部11を支持する加工用アーム12に設けられていて、正電極16及び負電極17は、刃物部11とともに移動するので、刃物部11による切削加工を行ったのちにただちに削りカスPを吸着することができ、削りカスPが周囲に拡散しにくい。
これにより、この微小加工装置1で加工したレチクルLは、特別な汚染管理が要求される場合を除いて、洗浄を行う必要がない。
また、正電極16及び負電極17を、極力線幅を狭くした配線によって構成することで、正電極16及び負電極17の設置面積を同一としながら、正電極16と負電極17との境界の長さを確保して、より多くの削りカスPを吸着することができる。
この場合には、正電極16及び負電極17を単純な形状(例えば直線状や矩形)とした場合に比べて正電極16と負電極17との境界、すなわち静電吸着が行われる領域が多いので、吸着可能な加工残渣の量が多い。
ここで、櫛形状部16a,17aの向きは任意とすることができる。図6では、櫛形状部16a,17aを構成する電極パターンを加工用アーム12の長手方向に略平行にした例を示しており、図7では、櫛形形状部16a,17aを構成する電極パターンを加工用アーム12の長手方向に略直交させた例を示している。
この場合には、黒欠陥FBが導体である場合にも、黒欠陥FBの削りカスPが刃物部11に静電気力によって付着することがないので、常に良好な切削加工を行うことができる。また、このように刃物部に加工残渣が付着しにくいので、刃物部によるワークの加工部位を良好に視認することができ、正確な加工が可能である。
刃物部11を黒欠陥FBと等電位とするには、例えば、微小加工装置1に、刃物部11とレチクルLの遮光部Sとを接続する配線を設ければよい。ここで、刃物部11をダイヤモンドによって構成する場合には、このダイヤモンドに導電性を持たせるために、ボロンをドーピングする。
以下、本発明の第二実施形態について、図8を用いて説明する。
本実施形態に係る微小加工装置31は、第一実施形態に示す微小加工装置1において、加工用アーム12に正電極16及び負電極17を設ける代わりに、切削加工装置2に、移動装置13によって加工用アーム12とともに移動させられる吸着用アーム32を一本設けて、この吸着用アーム32の表面に正電極16と負電極17とを、互いに隣接させて設けたことを主たる特徴とするものである。
この微小加工装置31では、加工用アーム12及び吸着用アーム32を、レチクルLに対して、加工用アーム12と吸着用アーム32との配列方向のうち、加工用アーム12側に移動させながらレチクルLの加工が行われるようになっており、これによって刃物部11によって加工された領域がただちに正電極16及び負電極17に対向させられて、これら電極間に速やかに吸着される。
図9に示す例では、吸着用アーム32として、加工用アーム12の幅方向の両隣にそれぞれ棒状のアームを設け、これら吸着用アーム32にそれぞれ正電極16及び負電極17を設けている。
また、この例では、吸着用アーム32の先端を、加工用アーム12の先端に回り込むように曲げている。これによって、正電極16及び負電極17がより刃物部11に接近することとなり、削りカスPを発生直後に速やかに吸着することができる。また、吸着用アーム32の先端同士の間には隙間が形成されており、これによって刃物部11近傍のワークの状態を、顕微鏡等の観察装置によって確認することができるようになっている。
なお、これら二本の吸着用アーム32の先端同士が接続されて、一つの吸着用アーム32とされていてもよい。
2 切削加工装置
3 吸着装置
11 刃物部
12 加工用アーム(保持部)
13 移動装置
16 正電極
16a 櫛形状部
17 負電極
17a 櫛形状部
18 絶縁層
19 電圧源
32 吸着用アーム
L レチクル(ワーク)
Claims (7)
- ワークの微小領域を削り取る切削加工装置と、
該切削加工装置が前記ワークから削り取った加工残渣を吸着する吸着装置とを有し、
前記切削加工装置が、前記ワークの切削加工を行う刃物部と、該刃物部を保持する保持部と、該保持部を前記ワークに対して相対移動させる移動装置とを有しており、
前記切削加工装置が、前記保持部の表面に設けられた正電極と、前記保持部の表面に前記正電極と隣接して設けられた負電極と、前記正電極と前記負電極との間に電位差を生じさせる電圧源とを有する微小加工装置。 - ワークの微小領域を削り取る切削加工装置と、
該切削加工装置が前記ワークから削り取った加工残渣を吸着する吸着装置とを有し、
前記切削加工装置が、前記ワークの切削加工を行う刃物部と、該刃物部を保持する加工用アームと、該加工用アームを前記ワークに対して相対移動させる移動装置とを有しており、
前記吸着装置が、前記移動装置によって前記加工用アームとともに移動させられる吸着用アームと、該吸着用アームの表面に設けられた正電極と、前記吸着用アームの表面に前記正電極と隣接して設けられた負電極と、前記正電極と前記負電極との間に電位差を生じさせる電圧源とを有する微小加工装置。 - 前記正電極及び前記負電極の表面を覆う絶縁層を有している請求項1または2に記載の微小加工装置。
- 前記正電極及び前記負電極が、互いに噛み合わされる櫛形状部を有する請求項1から3のいずれかに記載の微小加工装置。
- 前記刃物部が前記ワークと等電位とされている請求項1から4のいずれかに記載の微小加工装置。
- ワークの微小領域を削り取る切削加工装置と、該切削加工装置が前記ワークから削り取った加工残渣を吸着する吸着装置とを有する微小加工装置を用いた微小ワーク加工方法であって、
刃物部を保持する保持部を前記ワークに対して相対移動させて前記ワークの切削加工を行う加工工程と、
前記保持部の表面に設けられた正電極と負電極との間に電位差を生じさせてこれら正電極と負電極との間に静電界を形成し、前記ワークの加工残渣を前記正電極と負電極とに吸着させる吸着工程とを含む微小ワーク加工方法。 - ワークの微小領域を削り取る切削加工装置と、該切削加工装置が前記ワークから削り取った加工残渣を吸着する吸着装置とを有する微小加工装置を用いた微小ワーク加工方法であって、
刃物部を保持する加工用アームを前記ワークに対して相対移動させて前記ワークの切削加工を行う加工工程と、
前記加工用アームとともに移動させられる吸着用アームの表面に設けられた正電極と負電極との間に電位差を生じさせてこれら正電極と負電極との間に静電界を形成し、前記ワークの加工残渣を前記正電極と負電極とに吸着させる吸着工程とを含む微小ワーク加工方法。
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