JP4692921B2 - 単分散球状カーボン多孔体 - Google Patents
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Description
従来、この種の用途には、主として、活性炭の使用が検討されていた。しかしながら、活性炭は、形状が不規則であり、細孔分布が広く、ミクロサイズの細孔の割合も多いという欠点がある。そのため、活性炭に代わるカーボン多孔体に関し、従来から種々の提案が為されている。
(1)メソポーラスシリカ(例えば、AlMCM−48など)の細孔内にフルフリルアルコールを吸着させ、
(2)これを140℃で2時間加熱し、フルフリルアルコールを重合させ、
(3)これをさらに真空中において900℃で加熱することにより、フルフリルアルコールを熱分解させ、
(4)得られた複合体からメソーポーラスシリカをNaOH水溶液で除去する、
カーボンモレキュラーシーブの製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、直径が均一であり、かつ、細孔が規則配列したカーボンモレキュラーシーブが得られる点が記載されている。
(1)メソ構造を有するシリカにフルフリルアルコールを含浸させ、
(2)これをN2中において353Kで2時間加熱し、フルフリルアルコールを重合させ、
(3)これをさらにN2中において1073Kで1時間加熱し、
(4)得られたカーボン・シリカ複合体に48%HFを加えてテンプレートを除去する、
メソポーラスカーボンの製造方法が開示されている。
同文献には、メソポーラスシリカを合成する場合において攪拌条件を変えると、2〜8μmの多分散球状粒子、0.2〜0.5μmのサブミクロン粒子の凝集体、又は、10〜20nmのナノ粒子の凝集体からなるメソポーラスシリカが得られる点、及び、これをテンプレートに用いると、メソポーラスシリカの形状を保持したメソポーラスカーボンが得られる点が記載されている。
また、カーボン多孔体を触媒担体等に使用する場合において、高活性を得るためには、これに担持される触媒表面への反応物質や電子の供給を容易化する必要がある。そのためには、細孔構造は、できるだけ単純であること、すなわち、細孔が球の表面から中心部まで最短距離で連結していること、例えば、細孔が球の中心から表面に向かって放射状に形成されていることが好ましい。
さらに、カーボン多孔体に窒素をドープさせると、吸着特性が変わる。高い充填性を有し、細孔が放射状に形成され、かつ、種々の吸着特性を有するカーボン多孔体を合成するためには、粒子形状、細孔構造等を維持したまま、窒素ドープ量を制御する必要がある。
しかしながら、球状単分散で、かつ、細孔が放射状に形成されたカーボン多孔体、並びに、このような構造を有するカーボン多孔体であって、その内部に貴金属微粒子が担持されたもの、及び/又は、窒素がドープされたものが製造された例は、従来にはない。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、球状単分散で、細孔が放射状に形成され、かつ、その内部に貴金属微粒子が担持され、及び/又は、窒素がドープされた単分散球状カーボン多孔体を提供することにある。
単分散度=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100(%) ・・・(1)
具体的には、後述する方法を用いることによって、平均粒径が50nm以上2μm以下である単分散球状カーボン多孔体が得られる。また、その比表面積が1000m2/g以上である単分散球状カーボン多孔体が得られる。さらに、その細孔分布が0.5nm以上2.0nm以下にピークを持つ単分散球状カーボン多孔体が得られる。
貴金属微粒子の大きさは、テンプレートとして用いる球状メソ多孔体の細孔径でほぼ決まる。後述する方法を用いると、その粒径が5.0nm以下である貴金属微粒子を担持させた単分散球状カーボン多孔体が得られる。
また、単分散球状カーボン多孔体に担持させることが可能な貴金属微粒子の担持量の最大値は、テンプレートとして用いる球状メソ多孔体の細孔率(空隙率)でほぼ決まる。後述する方法を用いると、貴金属微粒子の担持量が80wt%以下である単分散球状カーボン多孔体が得られる。
窒素がドープされた単分散球状カーボン多孔体は、後述するように、炭素源として含窒素有機物を用いることにより合成することができる。窒素ドープ量は、含窒素有機物の種類及び量を制御することにより、調節することができる。
本発明に係る単分散球状カーボン多孔体は、シリカを含む球状メソ多孔体の細孔内に吸着させた炭素源を炭化させ、球状メソ多孔体を除去することにより得られる。そのため、所定の平均粒径を有し、球状単分散で、かつ、細孔が中心から表面に向かって放射状に伸びているカーボン粒子を合成するためには、このような構造を有する球状メソ多孔体をテンプレートに用いる必要がある。
(1)水に適量の界面活性剤とシリカ原料(及び必要に応じて他の原料)とを加え、塩基性条件下でシリカ原料(及び必要に応じて添加された他の原料)を加水分解させ、
(2)溶液から生成物を分離し、界面活性剤を除去すること、
により得られる(例えば、特開平10−328558号公報、特開2004−2161号公報等参照)。
(1) テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン(シラン化合物)、
(2) トリメトキシシラノール、トリエトキシシラノール、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン(シラン化合物)、
(3) ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン等のジアルコキシシラン(シラン化合物)、
(4) メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si2O5)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si4O9)、水ガラス(Na2O・nSiO2、n=2〜4)等のケイ酸ナトリウム、
(5) カネマイト(NaHSi2O5・3H2O)、二ケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、δ−Na2Si2O5)、マカタイト(Na2Si4O9)、アイアライト(Na2Si8O17・xH2O)、マガディアイト(Na2Si14O17・xH2O)、ケニヤイト(Na2Si20O41・xH2O)等の層状シリケート、
(6) Ultrasil(Ultrasil社)、Cab−O−Sil(Cabot社)、HiSil(Pittsburgh Plate Glass社)等の沈降性シリカ、コロイダルシリカ、Aerosil(Degussa−Huls社)等のフュームドシリカ、
などを用いることができる。
なお、これらのシリカ原料は、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。但し、2種以上のシリカ原料を用いると、メソポーラスシリカの製造時の反応条件が複雑化する場合がある。このような場合には、シリカ原料は、単独で使用するのが好ましい。
(1) アルミニウムブトキシド(Al(OC4H9)3)、アルミニウムエトキシド(Al(OC2H5)3)、アルミニウムイソプロポキシド(Al(OC3H7)3)等のAlを含むアルコキシド類、及び、アルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム等の塩類、
(2) チタンイソプロポキシド(Ti(Oi−C3H7)4)、チタンブトキシド(Ti(OC4H9)4)、チタンエトキシド(Ti(OC2H5)4)等のTiを含むアルコキシド、
(3) マグネシウムメトキシド(Mg(OCH3)2)、マグネシウムエトキシド(Mg(OC2H5)2)等のMgを含むアルコキシド、
(4) ジルコニウムイソプロポキシド(Zr(Oi−C3H7)4)、ジルコニウムブトキシド(Zr(OC4H9)4)、ジルコニウムエトキシド(Zr(OC2H5)4)等のZrを含むアルコキシド、
などを用いることができる。
CH3−(CH2)n−N+(R1)(R2)(R3)X− ・・・(2)
(但し、R1、R2、R3は、炭素数が1〜3であって、同一又は異なるアルキル基、Xはハロゲン原子、nは8〜21の整数。)
(1)式で表される界面活性剤の中でも、アルキルトリメチルアンモニウムハライド(例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、ノニルトリメチルアンモニウムハライド、デシルトリメチルアンモニウムハライド、ウンデシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド等)が好ましく、特に、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はアルキルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
同様に、溶液中の界面活性剤の濃度は、0.005mol/L以上0.04mol/L以下が好ましく、さらに好ましくは、0.007mol/L以上0.03mol/L以下、さらに好ましくは、0.008mol/L以上0.018mol/L以下である。
さらに、界面活性剤/シリカ原料(及び必要に応じて添加される他の原料)の比率(モル比)は、0.1以上3以下が好ましく、さらに好ましくは、0.2以上2.7以下、さらに好ましくは、0.3以上2.5以下である。
一方、シリカ原料としてシラン化合物以外の化合物を用いる場合には、予め、水(又は、必要に応じてアルコールが添加されたアルコール水溶液)にシリカ原料を加えて、水酸化ナトリウム等の塩基性物質を加える。塩基性物質の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子と等モル程度の量とするのが好ましい。シラン化合物以外のシリカ原料を含む溶液に塩基性物質を加えると、シリカ原料中に既に形成されているSi−(O−Si)4結合の一部が切断され、均一な溶液が得られる。溶液中に含まれる塩基性物質の量は、球状メソ多孔体の収量や気孔率に影響を及ぼすので、均一な溶液が得られた後、溶液に希薄酸溶液を加え、溶液中に存在する過剰の塩基性物質を中和させる。希薄酸溶液の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子に対して1/2〜3/4倍モルに相当する量が好ましい。
界面活性剤を除去する方法としては、具体的には、
(1) 前駆体を大気中又は不活性雰囲気下において、所定温度(300〜1000℃、好ましくは、400〜700℃)で所定時間(30分以上、好ましくは、1時間以上)焼成する焼成方法、
(2) 前駆体を界面活性剤の良溶媒(例えば、少量の塩酸を含むメタノール)中に浸漬し、所定の温度(例えば、50〜70℃)で加熱しながら攪拌し、前駆体中の界面活性剤を抽出するイオン交換法、
などがある。
有機物は、炭素源となるものであり、熱分解によって炭素を生成可能なものであればよい。このような有機物としては、具体的には、
(1) 常温で液体であり、かつ、熱重合性のポリマー前駆体(例えば、フルフリルアルコール、アニリン等)、
(2) 炭水化物の水溶液と酸の混合物(例えば、スクロース(ショ糖)、キシロース(木糖)、グルコース(ブドウ糖)などの単糖類、あるいは、二糖類、多糖類と、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの酸との混合物)、
(3) 不飽和結合を有する重合性のガス(例えば、アセチレン、プロピレン等)、
(4) 2液硬化型のポリマー前駆体の混合物(例えば、フェノールとホルマリン等)、
などがある。
これらの中でも、ポリマー前駆体は、溶媒で希釈することなくメソポーラスシリカの細孔内に含浸させることができるので、相対的に少数回の含浸回数で、相対的に多量の炭素を細孔内に生成させることができる。また、重合開始剤が不要であり、取り扱いも容易であるという利点がある。
また、メソポーラスシリカを密閉可能な容器内に入れ、容器内を排気した後、容器に液体又は溶液の炭素源の蒸気を導入してもよい。これにより、メソポーラスシリカの細孔内に炭素源を吸着させることができる。
また、炭素源として炭水化物の水溶液と酸の混合物を用いる場合、酸の量は、有機物を重合させることが可能な最小量とするのが好ましい。
さらに、炭素源として、2液硬化型のポリマー前駆体の混合物を用いる場合、その比率は、ポリマー前駆体の種類に応じて、最適な比率を選択する。
例えば、有機物が、ポリマー前駆体、炭水化物の水溶液と酸の混合物、又は、2液硬化型のポリマー前駆体の混合物である場合、有機物の重合は、有機物を吸着させたメソポーラスシリカを所定温度で所定時間加熱することにより行う。最適な重合温度及び重合時間は、有機物の種類により異なるが、通常、重合温度は50℃〜400℃、重合時間は5分〜24時間である。
有機物の炭化は、非酸化雰囲気中(例えば、不活性雰囲気中、真空中など)において、メソポーラスシリカを所定温度に加熱することにより行う。加熱温度は、具体的には、500℃以上1200℃以下が好ましい。加熱温度が500℃未満であると、有機物の炭化が不十分となる。一方、加熱温度が1200℃を超えると、シリカと炭素が反応するので好ましくない。加熱時間は、加熱温度に応じて、最適な時間を選択する。
一方、不飽和結合を有する重合性のガスを炭素源として用いる場合、これを不活性ガス(N2、アルゴン、ヘリウム等)で希釈して、メソポーラスシリカを設置した流通型反応管に流し、所定温度で所定時間加熱する(いわゆる「熱CVD法」)。これにより、細孔内への炭素源の吸着と同時に重合と炭化が起こる。同様の方法で、液体の炭素源を不活性ガスでバブリングし、一工程でメソポーラスシリカ内に炭素を析出させることもできる。加熱温度は、ガスの種類に応じて、最適な温度を選択する。
また、吸着、重合及び炭化の各工程を複数回繰り返す場合、各炭化工程は、相対的に低温で炭化処理を行い、最後の炭化処理が終了した後、さらにこれより高い温度で、再度、炭化処理を行っても良い。最後の炭化処理を、それ以前の炭化処理より高い温度で行うと、複数回に分けて細孔内に導入されたカーボンが一体化しやすくなる。
メソポーラスシリカの除去方法としては、具体的には、
(1) 複合体を水酸化ナトリウム中で加熱する方法、
(2) 複合体をフッ化水素酸水溶液でエッチングする方法、
などがある。
貴金属微粒子の担持は、具体的には、
(1)貴金属化合物を溶解させた溶液をメソポーラスシリカの細孔内に吸着させ(貴金属化合物吸着工程)、
(2)メソポーラスシリカを乾燥させることにより、貴金属化合物を細孔内に析出させ(乾燥工程)、
(3)析出した貴金属化合物を還元し、貴金属微粒子に変換する(還元工程)、
ことにより行う。
(1) ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、ジニトロジアンミン白金(II)、ヘキサアンミン白金(IV)塩化物、テトラアンミン白金(II)塩化物、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)等のPt化合物、
(2) 硫酸パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、ジニトロジアンミンパラジウム(II)、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)、トランス−ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)等のPd化合物、
(3) 塩化ロジウム、硫酸ロジウム、硝酸ロジウム、酢酸ロジウム(II)、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム(III)、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、アセチルアセトナトジカルボニルロジウム(I)、テトラカルボニルジ−μ−クロロジロジウム(I)等のRh化合物、
(4) 塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、ドデカカルボニルトリルテニウム(0)、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)等のRu化合物、
(5) ヘキサクロロイリジウム(IV)酸六水和物、ドデカカルボニルテトライリジウム(0)、カルボニルクロロビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)等のIr化合物、
(6) ヘキサクロロ金(IV)酸六水和物、シアン化金アンモニウム等のAu化合物、
(7) 硝酸銀、シアン化銀等のAg化合物、
などがある。これらは、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
溶液中に溶解させる貴金属化合物の量は、溶媒への貴金属化合物の溶解度、目的とする担持量等に応じて、任意に選択することができる。一般に、貴金属化合物の濃度が高くなるほど、1回当たりの貴金属化合物の吸着量を多くすることができる。
また、吸着は、メソポーラスシリカに貴金属化合物を溶解させた溶液を加え、室温において所定時間(通常は、数時間程度)攪拌することにより行う。メソポーラスシリカは、吸着特性に優れているので、これを貴金属化合物溶液に加えて攪拌するだけで、貴金属化合物溶液を細孔内に容易に吸着させることができる。
貴金属化合物の還元は、水素雰囲気下で行う。還元温度及び還元時間は、貴金属化合物の種類に応じて、最適なものを選択する。例えば、貴金属化合物が塩化白金酸である場合、5%水素−窒素気流中において、150℃以上500℃以下で0.5時間以上加熱するのが好ましい。
なお、1回当たりの貴金属微粒子の担持量が相対的に少ない場合には、上述した貴金属化合物吸着工程、乾燥工程、及び、還元工程を複数回繰り返しても良い。
「含窒素有機物」とは、窒素を含む有機物であって、熱分解させることにより窒素を含むカーボンを生成可能なものをいう。そのためには、含窒素有機物は、窒素を含有するヘテロ環化合物が好ましい。
(1)含窒素五員環化合物であるピロール及びその誘導体、ジアゾール類及びその誘導体、トリアゾール類及びその誘導体、
(2)含窒素六員環化合物であるピリジン及びその誘導体、ジアジン類及びその誘導体、トリアジン類及びその誘導体、
(3)含窒素縮合ヘテロ環化合物でらるキノリン、フェナントロリン、プリン等
が挙げられる。
アセトニトリル、アクリロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ピリジン、エチレンイミン等のイミン類、及び各種アミン類を用いることもできる。
これらの含窒素有機物は、それぞれ、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、1種又は2種以上の含窒素有機物と、上述した各種の有機物とを組み合わせて用いても良い。含窒素有機物の種類、及び、炭素源となる各種有機物との配合比率を変えると、窒素ドープ量を任意に変化させることができる。
含窒素有機物の吸着方法、吸着条件等のその他の点については、第1の実施の形態に係る吸着工程と同様であるので、説明を省略する。
[1. メソポーラスシリカの作製]
水5L、メタノール5Lに、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド35.2g(0.014mol/L)及び1規定水酸化ナトリウム22.8mLを添加した。この溶液に対し、テトラメトキシシラン13.2g(0.011mol/L)を添加し、完全に溶解させた。溶解後、約200秒で白色粉末が析出した。この溶液をさらに室温で8時間攪拌した後、溶液を一晩放置した。放置後、溶液の濾過及び洗浄を3回繰り返し、白色粉末を得た。この白色粉末を熱風乾燥機で3日間乾燥させた後、550℃で焼成し、有機成分を除去した。
合成されたメソポーラスシリカ粉末1.0gにフルフリルアルコール0.70mLを加え、細孔中に含浸させた。これを150℃で24時間加熱し、細孔内のフルフリルアルコールを重合させた。さらに、これを窒素気流中、500℃で6時間焼成し、ポリフルフリルアルコールをカーボン化させた。
次に、この粉末にフルフリルアルコール0.28mLを追加添加し、再度、150℃×4時間加熱(重合)及び窒素気流中、500℃×6時間焼成(カーボン化)を行った。2回めの焼成が終了した後、この粉末を、さらに窒素気流中、900℃で6時間焼成し、フルフリルアルコールを完全にカーボン化させた。
得られた粉末を48%HF溶液中に浸し、室温で3時間攪拌した。メソポーラスシリカが完全に溶解した後、溶液を濾過・洗浄し、黒色粉末を得た。
図1に、焼成後のメソポーラスシリカ粉末の走査型電子顕微鏡写真を示す。図1より、粒径の均一な球状メソポーラスシリカ粒子が得られていることがわかる。任意の100個の粒子の平均粒径は、0.72μm(単分散度は、2.5%)であった。
図2に、合成されたカーボン粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す。図2より、粒径の均一な球状カーボン粒子が得られていることがわかる。任意の100個の粒子の平均粒径は、0.66μm(単分散度は、2.2%)であった。
図3に、合成された球状カーボン粒子の細孔分布を示す。図3より、細孔分布は、1nmにピークを有していることがわかる。本実施例で得られた球状カーボン粒子のBET比表面積は、1200m2/gであった。
さらに、図4に、合成されたカーボン粒子の透過型電子顕微鏡写真を示す。図4より、本実施例で得られた単分散球状カーボン多孔体は、粒子の内部構造が放射状であること、すなわち、細孔がその中心から表面に向かって放射状に伸びていることがわかる。
[1. メソポーラスシリカの作製]
水4L、メタノール6Lに、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド38.3g(0.014mol/L)及び1規定水酸化ナトリウム22.8mLを添加した。この溶液に対し、テトラメトキシシラン13.2g(0.011mol/L)を添加し、完全に溶解させた。溶解後、約200秒で白色粉末が析出した。この溶液をさらに室温で8時間攪拌した後、溶液を一晩放置した。放置後、溶液の濾過及び洗浄を3回繰り返し、白色粉末を得た。この白色粉末を熱風乾燥機で3日間乾燥させた後、550℃で焼成し、有機成分を除去した。
合成されたメソポーラスシリカ粉末1.0gにフルフリルアルコール0.80mLを加え、細孔中に含浸させた。これを150℃で24時間加熱し、細孔内のフルフリルアルコールを重合させた。さらに、これを窒素気流中、500℃で6時間焼成し、ポリフルフリルアルコールをカーボン化させた。
次に、この粉末にフルフリルアルコール0.32mLを追加添加し、再度、150℃×4時間加熱(重合)及び窒素気流中、500℃×6時間焼成(カーボン化)を行った。2回めの焼成が終了した後、この粉末を、さらに窒素気流中、900℃で6時間焼成し、フルフリルアルコールを完全にカーボン化させた。
得られた粉末を48%HF溶液中に浸し、室温で3時間攪拌した。メソポーラスシリカが完全に溶解した後、溶液を濾過・洗浄し、黒色粉末を得た。
本実施例で得られた粉末の、走査型電子顕微鏡写真から求めた任意の100個の粒子の平均粒径は、0.90μm(単分散度は、4.0%)であった。
[1. Pt微粒子の担持]
ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物0.067gをメタノール50mLに溶解した。この溶液に、実施例1の[1.]で合成したメソポーラスシリカ粉末0.5gを加え、室温で1時間攪拌した。ロータリーエバポレータでメタノールを蒸発させた後、5%水素−窒素気流中、400℃で2時間加熱し、Pt分散シリカ粉末を得た。
Pt分散シリカ粉末0.3gにフルフリルアルコール0.16mLを加え、細孔中に含浸させた。これを150℃で24時間加熱し、細孔内のフルフリルアルコールを重合させた。さらに、これを窒素気流中、500℃で6時間焼成し、ポリフルフリルアルコールをカーボン化させた。
次に、この粉末にフルフリルアルコール0.07mLを追加添加し、再度、150℃×4時間加熱(重合)及び窒素気流中、500℃×6時間焼成(カーボン化)を行った。2回めの焼成が終了した後、この粉末を、さらに窒素気流中、900℃で6時間焼成し、フルフリルアルコールを完全にカーボン化させた。
得られた粉末を48%HF溶液中に浸し、室温で3時間攪拌した。メソポーラスシリカが完全に溶解した後、溶液を濾過・洗浄し、黒色粉末を得た。
図5に、得られた粉末のX線回折パターンを示す。図5より、Ptに対応するピークが認められ、Ptが分散したカーボン粉末が得られていることがわかる。X線回折ピークの半値幅からScherrerの式により求めたPtの結晶子径は、約2nmであった。また、得られた粉末のBET比表面積は、1100m2/gであった。さらに、細孔分布は、1nmにピークを有していた。
[1. 窒素ドープ単分散球状カーボン多孔体の作製]
ピロール−2−カルボキシアルデヒド0.952g(0.01mol)をフルフリルアルコール1mLに完全に溶解させた。この溶液に、実施例1の[1.]で合成したメソポーラスシリカ1.0gを加え、細孔中に含浸させた。これを150℃で24時間加熱し、細孔内の有機物を重合させた。さらに、これを窒素気流中、500℃で6時間焼成し、有機物ポリマをカーボン化させた。
次に、この粉末にピロール−2−カルボキシアルデヒドのフルフリルアルコール溶液0.28mLを追加添加し、再度、150℃×4時間加熱(重合)及び窒素気流中、500℃×6時間焼成(カーボン化)を行った。2回めの焼成が終了した後、この粉末を、さらに窒素気流中、900℃で6時間焼成し、有機物ポリマを完全にカーボン化させた。
得られた粉末を48%HF溶液中に浸し、室温で3時間攪拌した。メソポーラスシリカが完全に溶解した後、溶液を濾過・洗浄し、黒色粉末を得た。
本実施例で得られた粉末のBET比表面積は、1100m2/gであった。また、細孔分布は、1nmにピークを有していた。さらに、X線光電子分光法(XPS)法により分析した結果、窒素が5%ドープされていることを確認した。
XPSスペクトルピーク分離を行うと、401.1eV及び398.6eVの位置にピークが存在することがわかった。前者は、3個のsp2炭素に囲まれてグラフェン層内部に位置するクオータナリー(quaternary)状態の窒素原子に対応し、後者は、2個のsp2炭素に挟まれてグラフェン層端部に位置するピリジニック(pyridinic)状態の窒素原子に対応している。ピーク面積から比を求めたところ、クオータナリー(quaternary)状態の窒素原子とピリジニック(pyridinic)状態の窒素原子の存在比は2:1であった。この結果から、窒素ドープ単分散球状カーボン多孔体中で、窒素原子は骨格から失われることなく、2種類の化学結合状態で炭素原子とともに骨格を形成していることが確認された。
図6に、実施例1で合成した単分散球状カーボン多孔体と、実施例4で合成した窒素ドープ単分散球状カーボン多孔体の水蒸気吸着等温線を比較した結果を示す。窒素ドープ単分散球状カーボン多孔体の方が、より低水蒸気圧から水蒸気を吸着しており、窒素ドープにより親水性が改善されたことがわかる。
Claims (8)
- 球状のカーボン粒子からなり、
その内部に中心から表面に向かって放射状に伸びる細孔を有し、かつ、
次の(1)式で表される単分散度が10%以下である
単分散球状カーボン多孔体。
単分散度=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100(%) ・・・(1) - その平均粒径が50nm以上2μm以下である請求項1に記載の単分散球状カーボン多孔体。
- その比表面積が1000m2/g以上である請求項1又は2に記載の単分散球状カーボン多孔体。
- その細孔分布が0.5nm以上2.0nmにピークを持つ請求項1から3までのいずれかに記載の単分散球状カーボン多孔体。
- 前記カーボン粒子の内部に貴金属微粒子が担持されている請求項1から4までのいずれかに記載の単分散球状カーボン多孔体。
- 前記貴金属微粒子の粒径は、5.0nm以下である請求項5に記載の単分散球状カーボン多孔体。
- 前記貴金属微粒子の担持量は、80wt%以下である請求項5又は6に記載の単分散球状カーボン多孔体。
- 前記カーボン粒子に窒素がドープされている請求項1から7までのいずれかに記載の単分散球状カーボン多孔体。
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