JP7116564B2 - 単分散球状炭素多孔体及び固体高分子形燃料電池 - Google Patents

単分散球状炭素多孔体及び固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、単分散球状炭素多孔体及び固体高分子形燃料電池に関し、さらに詳しくは、直径、細孔径、及び比表面積が特定の範囲にあり、かつ、固体高分子形燃料電池の空気極側触媒層の触媒担体に適した細孔構造を持つ単分散球状炭素多孔体、及びこれを空気極側触媒層の触媒担体として用いた固体高分子形燃料電池に関する。
固体高分子形燃料電池は、電解質膜の両面に触媒を含む電極(触媒層)が接合された膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly,MEA)を備えている。MEAの両面には、さらに、ガス流路を備えた集電体(セパレータ)が配置される。固体高分子形燃料電池は、通常、このようなMEAと集電体からなる単セルが複数個積層された構造(燃料電池スタック)を備えている。
固体高分子形燃料電池において、触媒層は、一般に、担体表面に白金などの触媒金属微粒子を担持させた電極触媒と、触媒層アイオノマとの混合物からなる。触媒担体には、通常、カーボンブラック、アセチレンブラックなどの炭素材料が用いられている。さらに、触媒担体に用いられる炭素材料の細孔径、比表面積等が燃料電池の特性に影響を与えることが知られている。そのため、細孔径、比表面積等を制御した炭素材料に関し、従来から種々の提案がなされている。
例えば、非特許文献1には、細孔径が6.0nmである単分散球状炭素多孔体、及びその製造方法が開示されている。
特許文献1には、球状単分散で、かつ、細孔が放射状に形成された単分散球状カーボン多孔体、及びその製造方法が開示されている。
特許文献2には、
(a)放射状細孔を備え、平均細孔径が3.0nm以下である球状カーボン多孔体、及び、
(b)触媒を担持した球状カーボン多孔体と、カーボン繊維と、固体高分子電解質とを含む触媒層
が開示されている。
さらに、特許文献3には、導電性担体のポアに白金合金が担持された触媒を含む燃料電池用カソード電極が開示されている。
同文献には、触媒のポア直径及びBET比表面積を最適化すると、酸素還元反応(ORR)活性の向上とフラッディング耐性の向上とを両立できる点が記載されている。
特開2006-219322号公報 特開2007-220414号公報 国際公開第WO2013/129417号
K. Yano et al., Microporous and Mesoporous Materials, 158(2012)257-263
燃料電池を幅広い条件で作動させるためには、
(a)高湿時の高負荷性能の低下を抑制すること、
(b)低湿時の高負荷性能の低下を抑制すること、及び、
(c)アイオノマの触媒被毒による低負荷性能の低下を抑制すること、
が必要である。
高湿時の高負荷性能の低下は、主として空気極の生成水によるフラッディングが原因と考えられる。フラッディングに起因する性能低下を抑制するには、高湿時においても、酸素移動が可能な程度の空隙を触媒層内に確保する必要がある。
また、低湿時の高負荷性能の低下は、主として触媒層の厚さ方向のプロトン伝導経路が細い、又は少ないことが原因と考えられる。プロトン伝導経路の不足に起因する性能低下を抑制するには、低湿時においても、触媒層厚さ方向のプロトン伝導経路(アイオノマの繋がり)を確保する必要がある。
さらに、触媒被毒による低負荷性能の低下は、主としてアイオノマに被覆されている活性種の割合が大きいことが原因と考えられる。触媒被毒に起因する性能低下を抑制するには、少量のアイオノマで十分なプロトン伝導経路を確保する必要がある。
これらの性能低下は、触媒担体の細孔径、比表面積等を制御することにより、ある程度制御することができる。しかし、これらのすべての性能低下を同時に抑制可能な材料が提案された例は、従来にはない。
本発明が解決しようとする課題は、直径、細孔径、及び比表面積が特定の範囲にあり、かつ、固体高分子形燃料電池の空気極側触媒層の触媒担体に適した細孔構造を持つ単分散球状炭素多孔体を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような単分散球状炭素多孔体を空気極側触媒層の触媒担体として用いた固体高分子形燃料電池を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る単分散球状炭素多孔体は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記単分散球状炭素多孔体は、
直径が100nm以上300nm以下であり、
細孔径が3nm以上6nm以下であり、
比表面積が800m2/g以上である。
(2)前記単分散球状炭素多孔体を固体高分子形燃料電池の空気極側触媒層の触媒担体として使用した場合において、前記空気極側触媒層の酸素移動抵抗が30s/m以下である。
本発明に係る固体高分子形燃料電池は、本発明に係る単分散球状炭素多孔体を、少なくとも空気極側触媒層の触媒担体に用いたことを要旨とする。
単分散球状炭素多孔体を用いて触媒層を作製する場合において、単分散球状炭素多孔体の直径、細孔径、及び比表面積を最適化すると、多孔体内部に侵入するアイオノマと多孔体の外周部に存在するアイオノマの量比を最適化することができる。その結果、高湿時においても、酸素移動が可能な程度の空隙を触媒層内に確保することができ、かつ、低湿時においても、触媒層厚さ方向のプロトン伝導経路を確保することができる。さらに、従来に比べて少量のアイオノマでプロトン伝導経路を確保することができるので、触媒被毒による性能低下も抑制することができる。
実施例3及び比較例3~5で得られた燃料電池の60℃、80%RHにおける発電性能(電流-電圧曲線)である。 実施例3及び比較例3~5で得られた燃料電池の82℃、30%RHにおける発電性能(電流-電圧曲線)である。 実施例3及び比較例3~5で得られた空気極触媒層内の60℃、80%RHにおける酸素移動抵抗である。 実施例3及び比較例3~5で得られた空気極触媒層内の82℃、30%RHにおけるプロトン移動抵抗(比抵抗)である。 実施例3及び比較例3~5で得られた空気極触媒層内の82℃、30%RHにおけるPt利用率である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 単分散球状炭素多孔体]
本発明に係る単分散球状炭素多孔体は、以下の構成を備えている。
(1)前記単分散球状炭素多孔体は、
直径が100nm以上300nm以下であり、
細孔径が3nm以上6nm以下であり、
比表面積が800m2/g以上である。
(2)前記単分散球状炭素多孔体を固体高分子形燃料電池の空気極側触媒層の触媒担体として使用した場合において、前記空気極側触媒層の酸素移動抵抗が30s/m以下である。
[1.1. 多孔体の形態]
[1.1.1. 単分散]
本発明において、「単分散」とは、同一条件下で製造された複数個(好ましくは、20個以上)の粒子について算出された単分散度が10%以下であることをいう。また、「単分散度」とは、次の式(1)で表される値をいう。
単分散度=(粒子径の標準偏差)×100/(粒子径の平均値) ・・・(1)
一般に、粒子の直径のバラツキが小さくなるほど、粒子内及び/又は粒子間における各種の反応がより等方的に進行しやすくなる。そのため、粒子の単分散度は小さいほど良い。単分散度は、好ましくは、5%以下である。
[1.1.2. 球状]
本発明において、「球状」とは、同一条件下で製造された複数個(好ましくは、20個以上)の粒子について算出された真球度が13%以下であることをいう。また、「真球度」とは、次の式(2)で表される値をいう。
真球度=Δrmax×100/r0 ・・・(2)
但し
0は、粒子の表面に接する最小の外接円の半径、
Δrmaxは、外接円と粒子表面の各点との半径方向の距離の最大値。
一般に、粒子形状が真球に近くなるほど、粒子内及び/又は粒子間において生ずる電気化学反応や化学反応が等方的に進行しやすくなる。そのため、粒子の真球度は、小さいほど良い。真球度は、好ましくは、7%以下、さらに好ましくは、3%以下である。
[1.1.3. 直径]
本発明に係る単分散球状炭素多孔体を固体高分子形燃料電池の空気極側の触媒担体に用いる場合において、多孔体の直径が小さくなりすぎると、触媒層内の空隙が小さくなりすぎ、高湿時においてフラッディングが生じやすくなる。従って、多孔体の直径は、100nm以上である必要がある。多孔体の直径は、好ましくは、200nm以上である。
一方、多孔体の直径が大きくなりすぎると、プロトンや酸素、生成水の移動距離が長距離となる。そのため、それらの移動抵抗が高くなり、電池性能が低下する。従って、多孔体の直径は、300nm以下が好ましい。
[1.1.4. 細孔径]
本発明に係る単分散球状炭素多孔体を固体高分子形燃料電池の空気極側の触媒担体に用いた場合において、多孔体の細孔径が小さくなりすぎると、プロトンや酸素、生成水の移動経路の太さが細くなる。そのため、それらの移動抵抗が高くなり、電池性能が低下する。従って、細孔径は、3nm以上が好ましい。細孔径は、好ましくは、3.5nm以上である。
一方、多孔体の細孔径が大きくなりすぎると、細孔内にアイオノマが入り、Ptがアイオノマで被覆されやすくなる。その結果、触媒被毒が生じ、触媒活性が低下する。従って、細孔径は、6nm以下である必要がある。細孔径は、好ましくは、5nm以下である。
[1.1.5. 比表面積]
本発明に係る単分散球状炭素多孔体を固体高分子形燃料電池の空気極側の触媒担体に用いる場合において、多孔体の比表面積が小さくなりすぎると、触媒の活性種を微粒で高分散に担持できなくなり、触媒の有効面積が小さくなる。従って、多孔体の比表面積は、800m2/g以上である必要がある。多孔体の比表面積は、好ましくは、1000m2/g以上である。
[1.2. 多孔体の特性]
[1.2.1. 酸素移動抵抗]
「酸素移動抵抗」とは、触媒層内における酸素の移動しやすさを表す指標である。酸素移動抵抗の測定方法の詳細については、後述する。
一般に、酸素移動抵抗が小さくなるほど、高負荷時における性能低下が抑制される。本発明に係る単分散球状炭素多孔体を固体高分子形燃料電池の空気極側触媒層の触媒担体として使用した場合において、単分散球状炭素多孔体の形態を最適化すると、温度60℃、湿度80%RHにおける空気極側触媒層の酸素移動抵抗は、30s/m以下となる。
[1.2.2. Pt利用率]
「Pt利用率」とは、湿度が80%RH以上である時のPtの電気化学有効面積(ECA)に対する、各湿度でのPtのECAの割合である。Pt利用率の測定方法の詳細については、後述する。
一般に、Pt利用率が大きくなるほど、高負荷時における性能低下が抑制される。本発明に係る単分散球状炭素多孔体を固体高分子形燃料電池の空気極側触媒層の触媒担体として用いた場合において、単分散球状炭素多孔体の形態を最適化すると、温度82℃、湿度30%RHにおける空気極側触媒層のPt利用率が50%以上となる。
[1.2.3. プロトン移動抵抗]
「プロトン移動抵抗」とは、触媒層内におけるプロトンの移動しやすさを表す指標である。プロトン移動抵抗の測定方法の詳細については、後述する。
一般に、プロトン移動抵抗が小さくなるほど、高負荷時における性能低下が抑制される。本発明に係る単分散球状炭素多孔体を固体高分子形燃料電池の空気極側触媒層の触媒担体として用いた場合において、単分散球状炭素多孔体の形態を最適化すると、温度82℃、湿度30%RHにおける前記空気極側触媒層のプロトン移動抵抗の比抵抗が40Ωm以下となる。
[2. 単分散球状メソポーラスシリカ(鋳型)の製造方法]
後述するように、単分散球状炭素多孔体は、単分散球状メソポーラスシリカを鋳型に用いて製造される。単分散球状メソポーラスシリカ(鋳型)の製造方法は、
シリカ源、界面活性剤及び触媒を含む反応溶液中において、前記シリカ源を縮重合させ、前駆体粒子を得る重合工程と、
前記反応溶液から前記前駆体粒子を分離し、乾燥させる乾燥工程と、
前記前駆体粒子を焼成し、単分散球状メソポーラスシリカを得る焼成工程と
を備えている。
単分散球状メソポーラスシリカの製造方法は、乾燥させた前駆体粒子に対して拡径処理を行う拡径工程をさらに備えていても良い。
[2.1. 重合工程]
まず、シリカ源、界面活性剤及び触媒を含む反応溶液中において、前記シリカ源を縮重合させ、前駆体粒子を得る(重合工程)。
[2.1.1. シリカ源]
本発明において、シリカ源の種類は、特に限定されない。シリカ源としては、例えば、
(a)テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、テトラエチレングリコキシシラン等のテトラアルコキシシラン、
(b)3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン
などがある。シリカ源には、これらのいずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
シリカ源の種類は、メソポーラスシリカの直径に与える影響が大きい。例えば、テトラエチレングリコキシシランは、テトラメトキシシランに比べて反応性が大きい。一般に、シリカ源の反応性が大きくなるほど、直径が大きいメソポーラスシリカが得られる。
[2.1.2. 界面活性剤]
シリカ源を反応溶液中で縮重合させる場合において、反応溶液に界面活性剤を添加すると、反応溶液中において界面活性剤がミセルを形成する。ミセルの周囲には親水基が集合しているため、ミセルの表面にはシリカ源が吸着する。さらに、シリカ源が吸着しているミセルが反応溶液中において自己組織化し、シリカ源が縮重合する。その結果、1次粒子内部には、ミセルに起因するメソ細孔が形成される。メソ細孔の大きさは、主として、界面活性剤の分子長により制御(1~50nmまで)することができる。
本発明において、界面活性剤には、アルキル4級アンモニウム塩を用いる。アルキル4級アンモニウム塩とは、次の式(3)で表される化合物をいう。
CH3-(CH2)n-N+(R1)(R2)(R3)X- ・・・(3)
(a)式中、R1、R2、R3は、それぞれ、炭素数が1~3のアルキル基を表す。R1、R2、及び、R3は、互いに同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。アルキル4級アンモニウム塩同士の凝集(ミセルの形成)を容易化するためには、R1、R2、及び、R3は、すべて同一であることが好ましい。さらに、R1、R2、及び、R3の少なくとも1つは、メチル基が好ましく、すべてがメチル基であることが好ましい。
(a)式中、Xはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子の種類は特に限定されないが、入手の容易さからXは、Cl又はBrが好ましい。
(a)式中、nは7~21の整数を表す。一般に、nが小さくなるほど、メソ孔の中心細孔径が小さい球状のメソ多孔体が得られる。一方、nが大きくなるほど、中心細孔径は大きくなるが、nが大きくなりすぎると、アルキル4級アンモニウム塩の疎水性相互作用が過剰となる。その結果、層状の化合物が生成し、球状のメソ多孔体が得られない。nは、好ましくは、9~17、さらに好ましくは、13~17である。
(a)式で表されるものの中でも、アルキルトリメチルアンモニウムハライドが好ましい。アルキルトリメチルアンモニウムハライドとしては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、ノニルトリメチルアンモニウムハライド、デシルトリメチルアンモニウムハライド、ウンデシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド等がある。
これらの中でも、特に、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はアルキルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
単分散球状メソポーラスシリカを合成する場合において、1種類のアルキル4級アンモニウム塩を用いても良く、あるいは、2種以上を用いても良い。しかしながら、アルキル4級アンモニウム塩は、1次粒子内にメソ孔を形成するためのテンプレートとなるので、その種類は、メソ孔の形状に大きな影響を与える。より均一なメソ孔を有するシリカ粒子を合成するためには、1種類のアルキル4級アンモニウム塩を用いるのが好ましい。
[2.1.3. 触媒]
シリカ源を縮重合させる場合、通常、反応溶液中に触媒を加える。粒子状のメソポーラスシリカを合成する場合、触媒には、水酸化ナトリウム、アンモニア水等のアルカリを用いるのが好ましい。
[2.1.4. 溶媒]
溶媒には、水、アルコールなどの有機溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒などを用いる。
アルコールは、
(1)メタノール、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール、
(2)エチレングリコール等の2価のアルコール、
(3)グリセリン等の3価のアルコール、
のいずれでも良い。
水と有機溶媒の混合溶媒を用いる場合、混合溶媒中の有機溶媒の含有量は、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、溶媒中に適量の有機溶媒を添加すると、粒径や粒度分布の制御が容易化する。
溶媒に含まれるアルコールの種類及び量は、メソポーラスシリカの直径に与える影響が大きい。例えば、溶媒が水とメタノールの混合溶媒である場合、一般に、混合溶媒に含まれるメタノールの量が多くなるほど、直径が大きいメソポーラスシリカが得られる。
また、例えば、溶媒が水、メタノール、及びエチレングリコールの混合溶媒である場合、一般に、混合溶媒に含まれるエチレングリコールの量が多くなるほど、直径が大きいメソポーラスシリカが得られる。
[2.1.5. 反応溶液の組成]
反応溶液中の組成は、合成されるメソポーラスシリカの外形や細孔構造に影響を与える。反応溶液中の界面活性剤の濃度、及びシリカ源の濃度は、単分散球状メソポーラスシリカの直径、細孔径、及び比表面積などに与える影響が大きい。また、上述したように、溶媒に含まれるアルコールの種類及び量、並びに、シリカ源の種類は、メソポーラスシリカの直径に与える影響が大きい。
[A. 界面活性剤の濃度]
界面活性剤の濃度が低すぎると、テンプレートとなるべき界面活性剤の量が不足するために良好な多孔体を得ることができず、粒子径の均一性が低くなる。従って、界面活性剤の濃度は、0.003mol/L以上が好ましい。界面活性剤の濃度は、好ましくは、0.005mol/L以上、さらに好ましくは、0.01mol/L以上である。
一方、界面活性剤の濃度が高すぎると、形状が球状である多孔体を高比率で得ることができず、粒子径の均一性が低くなる。従って、界面活性剤の濃度は、0.03mol/L以下が好ましい。界面活性剤の濃度は、好ましくは、0.025mol/L以下、さらに好ましくは、0.02mol/L以下である。
[B. シリカ源の濃度]
シリカ源の濃度が低すぎると、形状が球状である多孔体を高比率で得ることができず、粒子径の均一性が低くなる。従って、シリカ源の濃度は、0.005mol/L以上が好ましい。シリカ源の濃度は、好ましくは、0.0065mol/L以上、さらに好ましくは、0.008mol/L以上である。
一方、シリカ源の濃度が高すぎると、テンプレートとなるべき界面活性剤の量が不足するために良好な多孔体を得ることができず、粒子径の均一性が低くなる。従って、シリカ源の濃度は、0.03mol/L以下が好ましい。シリカ源の濃度は、好ましくは、0.025mol/L以下、さらに好ましくは、0.02mol/L以下である。
[C. 触媒の濃度]
本発明において、触媒の濃度は、特に限定されない。一般に、触媒の濃度が低すぎると、粒子の析出速度が遅くなる。一方、触媒の濃度が高すぎると、粒子の析出速度が速くなる。最適な触媒の濃度は、シリカ源の種類、界面活性剤の種類、目標とする物性値などに応じて最適な濃度を選択するのが好ましい。
[2.1.6 反応条件]
所定量の界面活性剤を含む溶媒中に、シリカ源を加え、加水分解及び重縮合を行う。これにより、界面活性剤がテンプレートとして機能し、シリカ及び界面活性剤を含む前駆体粒子が得られる。
反応条件は、シリカ源の種類、前駆体粒子の粒径等に応じて、最適な条件を選択する。一般に、反応温度は、-20~100℃が好ましい。反応温度は、さらに好ましくは、0~80℃、さらに好ましくは、10~40℃である。
[2.2. 乾燥工程]
次に、前記反応溶液から前記前駆体粒子を分離し、乾燥させる(乾燥工程)。
乾燥は、前駆体粒子内に残存している溶媒を除去するために行う。乾燥条件は、溶媒の除去が可能な限りにおいて、特に限定されるものではない。
[2.3. 拡径処理]
次に、必要に応じて、乾燥させた前駆体粒子に対して拡径処理を行っても良い(拡径工程)。「拡径処理」とは、粒子内のメソ細孔の直径を拡大させる処理をいう。
拡径処理は、具体的には、合成された前駆体粒子(界面活性剤の未除去のもの)を、拡径剤を含む溶液中で水熱処理することにより行う。この処理によって前駆体粒子の細孔径を拡大させることができる。
拡径剤としては、例えば、
(a)トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、ナフタレン、ベンゼン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンなどの炭化水素、
(b)塩酸、
などがある。
炭化水素共存下で水熱処理することにより細孔径が拡大するのは、拡径剤が溶媒から、より疎水性の高い前駆体粒子の細孔内に導入される際に、シリカの再配列が起こるためと考えられる。
また、塩酸共存下で水熱処理することにより細孔径が拡大するのは、粒子内部においてシリカの溶解・再析出が進行するためと考えられる。製造条件を最適化すると、シリカ内部に放射状細孔が形成される。これを塩酸共存下で水熱処理すると、シリカの溶解・再析出が起こり、放射状細孔が連通細孔に変換される。
拡径処理の条件は、目的とする細孔径が得られるように、最適な条件を選択するのが好ましい。例えば、塩酸共存下において水熱処理する場合、一般に、水熱処理温度が高くなるほど、メソ細孔が大きくなる。細孔径が3~5nmである単分散球状炭素多孔体を得るためには、水熱処理温度は、140~150℃が好ましい。
[2.4. 焼成工程]
次に、必要に応じて拡径処理を行った後、前記前駆体粒子を焼成する(焼成工程)。これにより、単分散球状メソポーラスシリカが得られる。
焼成は、OH基が残留している前駆体粒子を脱水・結晶化させるため、及び、メソ細孔内に残存している界面活性剤を熱分解させるために行われる。焼成条件は、脱水・結晶化、及び界面活性剤の熱分解が可能な限りにおいて、特に限定されない。焼成は、通常、大気中において、400℃~700℃で1時間~10時間加熱することにより行われる。
[3. 単分散球状炭素多孔体の製造方法]
本発明に係る単分散球状炭素多孔体の製造方法は、
(a)鋳型となる単分散球状メソポーラスシリカを作製する第1工程と、
(b)単分散球状メソポーラスシリカのメソ細孔内にカーボンを析出させ、単分散球状メソポーラスシリカ/カーボン複合体を作製する第2工程と、
(c)複合体からシリカを除去する第3工程と
を備えている。
[3.1. 第1工程(鋳型の作製)]
まず、鋳型となる単分散球状メソポーラスシリカを作製する(第1工程)。
単分散球状メソポーラスシリカの製造方法の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[3.2. 第2工程(メソ細孔内へのカーボン析出)]
次に、単分散球状メソポーラスシリカのメソ細孔内にカーボンを析出させ、単分散球状メソポーラスシリカ/カーボン複合体を作製する(第2工程)。
メソ細孔内へのカーボンの析出は、具体的には、
(a)メソ細孔内にカーボン前駆体を導入し、
(b)メソ細孔内において、カーボン前駆体を重合及び炭化させる
ことにより行われる。
[3.2.1. カーボン前駆体の導入]
「カーボン前駆体」とは、熱分解によって炭素を生成可能なものをいう。このようなカーボン前駆体としては、具体的には、
(1) 常温で液体であり、かつ、熱重合性のポリマー前駆体(例えば、フルフリルアルコール、アニリン等)、
(2) 炭水化物の水溶液と酸の混合物(例えば、スクロース(ショ糖)、キシロース(木糖)、グルコース(ブドウ糖)などの単糖類、あるいは、二糖類、多糖類と、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの酸との混合物)、
(3) 2液硬化型のポリマー前駆体の混合物(例えば、フェノールとホルマリン等)、
などがある。
これらの中でも、ポリマー前駆体は、溶媒で希釈することなくメソ孔内に含浸させることができるので、相対的に少数回の含浸回数で、相対的に多量の炭素をメソ孔内に生成させることができる。また、重合開始剤が不要であり、取り扱いも容易であるという利点がある。
液体又は溶液のカーボン前駆体を用いる場合、1回当たりの液体又は溶液の吸着量は、多いほど良く、メソ孔全体が液体又は溶液で満たされる量が好ましい。
また、カーボン前駆体として炭水化物の水溶液と酸の混合物を用いる場合、酸の量は、有機物を重合させることが可能な最小量とするのが好ましい。
さらに、カーボン前駆体として、2液硬化型のポリマー前駆体の混合物を用いる場合、その比率は、ポリマー前駆体の種類に応じて、最適な比率を選択する。
[3.2.2. カーボン前駆体の重合及び炭化]
次に、重合させたカーボン前駆体をメソ孔内において炭化させる。
カーボン前駆体の炭化は、非酸化雰囲気中(例えば、不活性雰囲気中、真空中など)において、球状メソ多孔体を所定温度に加熱することにより行う。加熱温度は、具体的には、500℃以上1200℃以下が好ましい。加熱温度が500℃未満であると、カーボン前駆体の炭化が不十分となる。一方、加熱温度が1200℃を超えると、シリカと炭素が反応するので好ましくない。加熱時間は、加熱温度に応じて、最適な時間を選択する。
なお、メソ孔内に生成させる炭素量は、単分散球状メソポーラスシリカを除去した時に、カーボン粒子が形状を維持できる量以上であればよい。従って、1回の充填、重合及び炭化で生成する炭素量が相対的に少ない場合には、これらの工程を複数回繰り返すのが好ましい。この場合、繰り返される各工程の条件は、それぞれ、同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
また、充填、重合及び炭化の各工程を複数回繰り返す場合、各炭化工程は、相対的に低温で炭化処理を行い、最後の炭化処理が終了した後、さらにこれより高い温度で、再度、炭化処理を行っても良い。最後の炭化処理を、それ以前の炭化処理より高い温度で行うと、複数回に分けて細孔内に導入されたカーボンが一体化しやすくなる。
[3.3. 第3工程(鋳型の除去)]
次に、複合体から鋳型であるシリカを除去する(第3工程)。これにより、単分散球状炭素多孔体が得られる。
シリカの除去方法としては、具体的には、
(1) 複合体を水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液中で加熱する方法、
(2) 複合体をフッ化水素酸水溶液でエッチングする方法、
などがある。
[4. 固体高分子形燃料電池]
本発明に係る固体高分子形燃料電池は、本発明に係る単分散球状炭素多孔体を、少なくとも空気極側触媒層の触媒担体に用いたものからなる。
空気極側触媒層の組成(例えば、単位面積当たりのPt量、カーボンの重量に対するアイオノマの重量の比(I/C比)など)は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。また、空気極側触媒層以外の構成についても、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な構成を選択することができる。なお、本発明に係る単分散球状炭素多孔体は、燃料極側の触媒担体としても用いることができる。
[5. 作用]
単分散球状炭素多孔体を用いて触媒層を作製する場合において、単分散球状炭素多孔体の直径、細孔径、及び比表面積を最適化すると、多孔体内部に侵入するアイオノマと多孔体の外周部に存在するアイオノマの量比を最適化することができる。その結果、高湿時においても、酸素移動が可能な程度の空隙を触媒層内に確保することができ、かつ、低湿時においても、触媒層厚さ方向のプロトン伝導経路を確保することができる。さらに、従来に比べて少量のアイオノマでプロトン伝導経路を確保することができるので、触媒被毒による性能低下も抑制することができる。
上記構成の単分散球状炭素多孔体を空気極触媒担体に用いることで、高い湿度ロバスト性を持ち、低負荷から高負荷域まで高い電池性能を示す固体高分子形燃料電池を提供することができる。
単分散球状炭素多孔体を作製するための鋳型として用いる単分散球状メソポーラスシリカの直径と細孔径は、メソポーラスシリカの合成条件によって制御することができる。具体的には、直径は合成過程の溶媒組成比により、細孔径は細孔の水熱処理(放射状細孔の連通化過程)の温度により制御することができる。
さらに、本発明に係る単分散球状炭素多孔体を固体高分子形燃料電池の空気極触媒担体に用いることで、多孔体内部と外周部のアイオノマの量比を最適化することができる。その結果、高湿において酸素移動に必要な空隙と、低湿においてプロトン移動に必要な電極厚さ方向のアイオノマの繋がりとが確保される。さらに、アイオノマによる触媒被毒も抑制されることで、高い触媒活性が得られる。
(実施例1~2、比較例1~2)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例1]
[1.1.1. 単分散球状メソポーラスシリカの合成]
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド:14.1g、及び1規定水酸化ナトリウム溶液:13.7mLを、水:1970g、及びメタノール:1216gからなる混合溶液に添加した。この混合溶液にテトラエトキシシラン:14.5gを添加したところ、しばらくしてから溶液が白濁し、粒子が合成できたことが確認できた。界面活性剤のモル濃度は0.0125mol/L、シリカ源のモル濃度は0.0198mol/Lであった。
8時間室温で攪拌後、濾過し、残渣を水:1Lに再分散した。再び濾過後、残渣を45℃のオーブンで乾燥させた。乾燥した試料:10gを、2規定塩酸:300mLに分散後、オートクレーブ中、140℃で3日間加熱した。オートクレーブ処理後の試料を濾過・洗浄した後、試料を550℃で焼成することにより、有機成分を除去した。
[1.1.2. 単分散球状炭素多孔体の合成]
PFA製容器(容量15mL)に単分散球状メソポーラスシリカ:0.5gを入れ、フルフリルアルコール(FA)を細孔容量分だけ加えて、シリカの細孔内に浸透させた。これを150℃×24h熱処理することにより、FAを重合させた。さらに、これを窒素雰囲気中で500℃×6h熱処理し、FAの炭素化を進めた。これを2回繰り返した後、窒素雰囲気中で900℃×6h熱処理して、単分散球状メソポーラスシリカ/カーボン複合体を得た。
この複合体を12%HF溶液に12h浸漬し、シリカ成分を溶解した。溶解後、ろ過、洗浄を繰り返し、さらに45℃で乾燥して、単分散球状炭素多孔体を得た。
[1.2. 実施例2、比較例1~2]
水熱処理の温度を150℃(実施例2)、160℃(比較例1)、又は170℃(比較例2)とした以外は、実施例1と同様にして単分散球状炭素多孔体を得た。
[2. 試験方法]
[2.1. 粒子直径]
SEM像から、単分散球状炭素多孔体の粒子直径を計測した。
[2.2. 細孔径]
単分散球状炭素多孔体の窒素吸着等温線を測定した。窒素吸着等温線のBJH解析を行い、細孔分布の最頻出細孔径を単分散球状炭素多孔体の細孔径とした。
[2.3. 比表面積]
単分散球状炭素多孔体の窒素吸着等温線から、BET比表面積求めた。
[3. 結果]
表1に、各水熱温度で合成した単分散球状炭素多孔体の粒子直径、細孔径、及び比表面積を示す。表1より、以下のことが分かる。
(1)粒子直径は、水熱温度によらず、ほぼ一定であった。
(2)水熱温度が高くなるほど、細孔径は大きくなった。水熱温度を140~150℃とすると、細孔径が3~6nmである単分散球状炭素多孔体が得られることが分かった。
(3)水熱温度が高くなるほど、比表面積は低下した。
Figure 0007116564000001
(実施例3、比較例3~5)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例3]
[1.1.1. 空気極触媒]
実施例1で得られた単分散球状炭素多孔体(細孔径=3.8nm)とPt前駆体とを水系溶媒に分散させた。次いで、還元剤を用いた液相還元により、Ptを単分散球状炭素多孔体に担持させた。得られた空気極触媒のPt担持率は、30wt%であった。
[1.1.2. 燃料極触媒]
触媒担体としてカーボンブラックを用いた以外は、空気極触媒と同様にして、燃料極触媒を作製した。
[1.1.3. 電極シート]
触媒とアイオノマを溶媒中に分散させたインクを作製し、インク塗工機によってポリテトラフルオロエチレンシートにインクを塗工した。それを乾燥させた後、1cm2角に切り出し、電極シートとした。アイオノマには、フッ素系ポリマを用いた。また、空気極及び燃料極のいずれも、Pt目付量を0.08~0.12mg/cm2とし、アイオノマの炭素に対する重量比(I/C比)を1.0とした。
[1.1.4. MEAの作製]
フッ素系樹脂からなる電解質膜を空気極電極シートと燃料極電極シートで挟み、加熱プレスにより膜に電極シートを接合した。接合後、MEAからポリテトラフルオロエチレンシートを剥がした。
MEAを1cm2用角セルに組み付けた。さらに、MEAの両側に、拡散層及び集電体を配置した。拡散層には、カーボンペーパ(マイクロポーラスレイヤ付)を用いた。集電体には、流路一体型金メッキ銅板(流路:0.4mmピッチの直線流路)を用いた。
[1.2. 比較例3]
空気極触媒担体として、比較例1で得られた単分散球状炭素多孔体(細孔径=7.8nm)を用いた以外は、実施例3と同様にしてMEAを作製した。
[1.3. 比較例4]
空気極触媒担体として、特許文献2の実施例1に記載の放射状細孔を備えた球状カーボン多孔体(細孔径=1nm)を用いた以外は、実施例3と同様にしてMEAを作製した。
[1.4. 比較例5]
空気極触媒担体として、多分散炭素多孔体(細孔径=3.0nm)を用いた以外は、実施例3と同様にしてMEAを作製した。
[2. 試験方法]
最初に燃料電池の慣らし運転を行った。その後、発電性能と空気極の各特性とを評価した。評価方法の詳細は、以下の通りである。
[2.1. 慣らし運転]
発電電圧掃引で、燃料電池の慣らし運転を行った。条件は、以下の通りである。
セル温度/相対湿度(両極):60℃/80%RH
空気極ガス:Air、1000mL/min、大気圧
燃料極ガス:H2、500mL/min、大気圧
電圧掃引:掃引範囲0~1000mV、掃引速度10mV/sで20サイクル
[2.2. 発電性能評価]
電流掃引で、電流-電圧曲線(I-V曲線)を測定した。セル抵抗補正を行うため、電流掃引と同時にセル抵抗を測定した。測定条件は、以下の通りである。
セル温度/相対湿度(両極):60℃/80%RH、及び82℃/30%RHの2条件
空気極ガス:Air、2000mL/min、50kPa-G
燃料極ガス:H2、500mL/min、30kPa-G
電流掃引:開回路電圧から-0.1Vになるまで、10mA/(s・cm2)で掃引を3回実施
セル抵抗測定周波数:10kHz
[2.3. Ptの電気化学有効面積(ECA)]
COストリッピングにより、ECAを測定した。測定条件は、以下の通りである。
セル温度/相対湿度(両極):60℃/80%RH、及び82℃/30%RHの2条件
空気極ガス:5%CO/N2、400mL/min
燃料極ガス:10%H2/N2、1000mL/min
電圧掃引:115mVから1000mVに掃引速度20mV/sで2サイクル。各サイクルにおいて、1000mVで2分間保持した。
[2.4. 触媒層内プロトン移動抵抗]
交流インピーダンス法で周波数に対するインピーダンスを測定し、Nyquistプロットから触媒層内のプロトン移動抵抗を求めた。測定条件は、以下の通りである。
セル温度/相対湿度(両極):82℃/30%RH
空気極ガス:N2、1000mL/min
燃料極ガス:10%H2/N2、1000mL/min
装置:ポテショスタットPGSTAT30(Metrohm Autolab社)
電位:400mV vs RHE
周波数:15kHz~1Hz
振幅:5mV
[2.5. 酸素移動抵抗]
一定の酸素分圧で、空気極の全圧を110~150kPaの範囲で変えて限界電流を測定した。以下の式(4)で全酸素移動抵抗を求め、全圧に対して全酸素移動抵抗をプロットし、得られる直線の全圧ゼロにおける切片を触媒層内の酸素移動抵抗とした。
酸素移動抵抗[s/m]=C(O2)/{ilim/4F} ・・・(4)
但し、
C(O2)は、酸素濃度[molm-3]、
limは、限界電流[Cs-1-4]、
Fは、ファラデー定数[Cmol-1]。
本発明において、酸素濃度は、酸素分圧から気体の状態方程式(式(5))を用いて求めた。
C(O2)[molm-3]=p(O2)[Pa]/{R×T[K]} ・・・(5)
但し、
Rは、気体定数(8.31[m2kgs-2-1mol-1])、
Tは、セル温度[K]。
測定条件は、以下の通りである。
酸素分圧:1.5kPa
空気極ガス:Air(66mL/min)+N2(0.809~1.180mL/min)
燃料極ガス:H2、0.5L/min
背圧:8.7~48.7kPa-G(両極)
電圧掃引:100mVから900mVに掃引速度10mV/sで2サイクル
[3. 結果]
[3.1. 発電性能]
図1に、実施例3及び比較例3~5で得られた燃料電池の60℃、80%RHにおける発電性能(電流-電圧曲線)を示す。図2に、実施例3及び比較例3~5で得られた燃料電池の82℃、30%RHにおける発電性能(電流-電圧曲線)を示す。図1及び図2より、以下のことが分かる。
(1)実施例3は、高湿条件、及び低湿条件のいずれにおいても、比較例3~5より発電性能が高い。
(2)比較例3は、低湿条件下の性能(図2)が極端に低い。これは、細孔径が大きすぎるために、プロトン移動抵抗が高くなったためと考えられる。すなわち、比較例3で用いた触媒担体は、細孔径が大きいために、担体内部に入るアイオノマが多い。そのため、電極厚さ方向のプロトン伝導をになう担体外周部のアイオノマが不足していると考えられる。この点から、細孔径は、5nm以下が好ましい。
(3)比較例4は、高湿条件下の性能(図1)が低い。これは、細孔径が小さいため、担体内部の生成水が排出されず、フラッディングが生じたためと考えられる。
[3.2. 酸素移動抵抗]
図3に、実施例3及び比較例3~5で得られた空気極触媒層内の60℃、80%RHにおける酸素移動抵抗を示す。図3より、以下のことが分かる。
(1)比較例4、5は、実施例3に比べて、酸素移動抵抗が大きい。これは、クヌッセン拡散による抵抗やPtとアイオノマとの界面抵抗の両方又はどちらか一方が大きいためと考えられる。
(2)実施例3及び比較例3は、いずれも酸素移動抵抗が30s/m以下となった。これは、クヌッセン拡散による抵抗やPtとアイオノマの界面抵抗の両方又はいずれか一方が小さいためと考えられる。
[3.3. プロトン移動抵抗]
図4に、実施例3及び比較例3~5で得られた空気極触媒層内の82℃、30%RHにおけるプロトン移動抵抗(比抵抗)を示す。図4より、以下のことが分かる。
(1)比較例3は、プロトン移動抵抗(比抵抗)が極端に高い。これは、細孔径が大きすぎるために、担体外周部のアイオノマが不足しているためと考えられる。
(2)比較例5は、プロトン移動抵抗(比抵抗)が40Ωmを超えていた。これは、担体内部のアイオノマ比率が高く、担体外周部のアイオノマが少なく、電極厚さ方向のプロトン移動の経路が細くなっているためと考えられる。
(3)実施例3及び比較例4は、いずれもプロトン移動抵抗(比抵抗)が40Ωm以下となった。これは、細孔径が小さいために、電極の厚さ方向に十分なプロトン伝導経路が形成されたためと考えられる。
[3.4. Pt利用率]
図5に、実施例3及び比較例3~5で得られた空気極触媒層内の82℃、30%RHにおけるPt利用率を示す。図5より、以下のことが分かる。
(1)比較例4は、Pt利用率が低い。これは、担体内部のアイオノマが少ないため、担体内部のPtのうち、30%RHの低湿度でプロトンが届くPt割合が低いためと考えられる。
(2)実施例3、比較例3、及び実施例5は、いずれもPt利用率が50%を超えていた。これは、担体内部のアイオノマが多いため、担体内部のPtのうち、30%RHの低湿度でプロトンが届くPt割合が高いためと考えられる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る単分散球状炭素多孔体は、固体高分子形燃料電池の空気極側触媒層の触媒担体、あるいは、燃料極側触媒層の触媒担体として用いることができる。

Claims (4)

  1. 以下の構成を備えた単分散球状炭素多孔体。
    (1)前記単分散球状炭素多孔体は、
    直径が100nm以上300nm以下であり、
    細孔径が3nm以上6nm以下であり、
    比表面積が800m2/g以上である。
    (2)前記単分散球状炭素多孔体は、これを固体高分子形燃料電池の空気極側触媒層の触媒担体として使用し、前記触媒担体に30wt%のPtを担持させ、前記空気極側触媒層のPt目付量を0.08~0.12mg/cm 2 とし、前記空気極側触媒層のI/Cを1.0とし、温度:60℃、湿度:80%RHの条件下で前記空気極側触媒層の酸素移動抵抗を測定した場合において、前記酸素拡散抵抗が30s/m以下となるものからなる。
  2. 前記単分散球状炭素多孔体は、これを前記固体高分子形燃料電池の前記空気極側触媒層の前記触媒担体として使用し、前記触媒担体に30wt%のPtを担持させ、前記空気極側触媒層のPt目付量を0.08~0.12mg/cm 2 とし、前記空気極側触媒層のI/Cを1.0とし、温度:82℃、湿度:30%RHの条件下で前記空気極側触媒層のPt利用率を測定した場合において、前記Pt利用率が50%以上となるものからなる請求項1に記載の単分散球状炭素多孔体。
  3. 前記単分散球状炭素多孔体は、これを前記固体高分子形燃料電池の前記空気極側触媒層の前記触媒担体として使用し、前記触媒担体に30wt%のPtを担持させ、前記空気極側触媒層のPt目付量を0.08~0.12mg/cm 2 とし、前記空気極側触媒層のI/Cを1.0とし、温度:82℃、湿度:30%RHの条件下で前記空気極側触媒層のプロトン移動抵抗の比抵抗を測定した場合において、前記プロトン移動抵抗の比抵抗が40Ωm以下となるものからなる請求項1に記載の単分散球状炭素多孔体。
  4. 請求項1から3までのいずれか1項に記載の単分散球状炭素多孔体を、少なくとも空気極側触媒層の触媒担体に用いた固体高分子形燃料電池。
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