JP4691029B2 - エンジン用部品 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジン用部品に関し、特に、エンジンから排出される高温の排気ガスによって高温に曝されるエンジン用部品に関する。
自動二輪車や全天候型四輪車両などの車両では、車両自体の性能に加えて、優れた意匠を備えていることが重要な課題のひとつである。図9は、スポーツタイプの自動二輪車の一例を示す側面図である。図9に示す自動二輪車200は、V型エンジン201と、排気ガスを導くための排気管202とを備えている。V型エンジン201は、シリンダー203と、シリンダーヘッド204と、ヘッドカバー205とを備えている。V型エンジン201は、形状の美観が優れているため、外部に露出するように自動二輪車に搭載される場合が多く、自動二輪車全体の外観に大きな影響を及ぼしている。
排気管202は、V型エンジン201の2つのシリンダー203のそれぞれから導かれ、一本に集合され、車体後部から排気ガスを噴出させるよう後輪側へ伸ばされている。排気管202は、エンジン201で発生した排気ガスを効率よく排出するために、所定の太さを備えていることが必要であり、また、消音器202aを構成している部分では、消音のための構造を収納するために直径が大きくなる。このため、自動二輪車全体の外観に占める排気管の割合は比較的大きく、排気管の形状や色が自動二輪車全体の意匠に及ぼす影響は大きい。
シリンダー203、シリンダーヘッド204、ヘッドカバー205などのエンジン部分、および、エンジンから排気ガスを導くための排気管202やそのカバーなどを本願明細書ではエンジン用部品と呼ぶ。上述した理由から、エンジン用部品の形状や色は、自動二輪車全体の意匠を決定する上で重要な要素となっている。
従来より、こうした外観に表れるエンジン用部品には、めっきなどの表面処理を行うことによって光沢のある金属色を付与され、エンジン用部品の意匠が高められている。なかでも装飾クロムめっきは、光沢感のある特有の銀白色を被めっき材に付与することができるため、エンジン用部品に広く用いられてきた(たとえば、特許文献1)。
装飾クロムめっきは、優れた金属光沢を有し、耐腐食性に優れるため、エンジン用部品以外の様々な分野において用いられている。優れた外観および耐腐食性を得るためには、装飾クロムめっきを厚く形成する必要はない。逆に装飾クロムめっきを厚く形成すると色調や表面の仕上げが悪くなる。このため、一般に装飾クロムめっきは、好ましくは0.1μmから0.15μmの厚さで用いられる。
なお、クロムを用いためっきとして、硬質クロムめっき(工業用クロムめっき)も広く工業製品に利用されている。硬質クロムめっきは、摩擦係数が低く、耐摩耗性に優れているため、各種機械部品の摺動部などに用いられる。耐磨耗性が求められるため、硬質クロムめっきは通常、数μm以上の厚さで形成される。また、硬質クロムめっきは、装飾クロムめっきのような装飾性に優れた表面を有していない。通常、めっき後の装飾クロムめっきは1μm以下、典型的には0.2μm以下の表面粗さ(Ra)を有しているのに対して、硬質クロムめっきは1μm以上の表面粗さを有している。
装飾クロムめっきの形成には、通常、六価クロム(Cr6+)を含むクロム酸のめっき液が用いられている。六価クロムは安価であり、六価クロムを含むめっき液(以下、六価クロムめっき液と呼ぶ)から形成されたクロムめっき層は、素地基材との密着性が良好であり、耐食性や耐摩耗性などに優れている。さらに、六価クロムめっき液から形成されたクロムめっき層は、独特の金属光沢のある銀白色を有する。こうした理由から自動二輪車のエンジン用部品には六価クロムめっき液が広く用いられている。
しかし、六価クロムは生物に対する毒性が高いことが知られており、六価クロムめっき液を用いてめっきを行う場合には、作業者の安全を確保し、環境汚染を防止することが求められるようになってきている。
こうした六価クロムの問題を解決するため、六価クロムに比べて毒性の低い三価クロム(Cr3+)を用いて装飾クロムめっきを行うことが望まれており、三価クロムを含む種々のめっき液が提案されている(特許文献2、3)。
特開2003−41933号公報 特開昭52−065138号公報 特開昭52−092834公報 特開平9−95793号公報 特開平9−228069号公報
環境や安全性の観点からは、三価クロムを含むめっき液(以下、三価クロムめっき液と呼ぶ)を用いることが好ましい。しかし、従来の三価クロムめっき液を用いて形成されたクロムめっき層は、クロムめっき層の成長の安定性や形成されたクロムめっき層の耐食性および耐摩耗性などのめっき成膜特性の点などで六価クロムめっき液から形成しためっき層よりも劣るという問題があった。
また、エンジン用部品は、燃料の燃焼による発熱や高温の排気ガスによって高い温度に加熱される。従来の三価クロムめっき液を用いてエンジン用部品にクロムめっき層を形成した場合、加熱によってクロムめっき層にクラックが入りやすいという問題があった。クロムめっき層にクラックが生じると、その部分から錆びが発生し、外観を著しく損ねてしまう。
このため、種々の組成を有する三価クロムめっき液が20年以上も前から提案されているが、特に、エンジン用部品には三価クロムめっき液が用いられることはほとんどなかった。
本発明は、このような従来の課題を解決し、三価クロムめっき液を用いて形成され、六価クロムめっき液から形成しためっき層と同程度の良好な成膜特性を有し、耐熱性に優れたクロムめっき層を備えたエンジン部品を提供することを目的とする。
本発明のエンジン用部品は、金属基材と、前記金属基材の表面の少なくとも一部を覆っており、三価クロムめっき液によって形成されたクロムめっき層とを備えたエンジン用部品であって、前記クロムめっき層に含まれるホウ素の含有量は0.05質量%以上0.3質量%以下であり、前記クロムめっき層の厚さは0.7μm以下である。
ある好ましい実施形態において、前記クロムめっき層に含まれるホウ素の含有量は0.05質量%以上0.1質量%以下である。
ある好ましい実施形態において、前記クロムめっき層に含まれる鉄の含有量は2質量%以下である。
ある好ましい実施形態において、前記クロムめっき層は、前記金属基材表面の350℃以上の温度に加熱される領域を覆っている。
ある好ましい実施形態において、エンジン用部品は、前記金属基材表面と前記クロムめっき層との間に設けられた下地めっき層をさらに備え、前記クロムめっき層は前記350℃以上の温度に加熱される領域において、0.2μm以上0.7μm以下の厚さを有する。
ある好ましい実施形態において、前記下地めっき層はCおよびSの少なくとも一方を含む。
ある好ましい実施形態において、前記下地めっき層はさらにNiを含む。
ある好ましい実施形態において、前記下地めっき層は、前記クロムめっき層を構成するCrよりも硬度が低い金属から形成されている。
ある好ましい実施形態において、前記下地めっき層はNiめっきから形成されている。
ある好ましい実施形態において、前記クロムめっき層の色調は、CIE(Commission Internationale de l'Eclairage)1976で測定されるL*値が68以上80以下の範囲内にある。
ある好ましい実施形態において、前記金属基材は、Fe、Al、Zn、またはMgを主成分とする材料から構成されている。
ある好ましい実施形態において、前記金属基材は、エンジンからの排気ガスが通過する通路を規定する金属管である。
本発明のエンジンは、上記いずれかのエンジン用部品を備えている。
本発明の輸送機器は、上記いずれかのエンジン用部品またはエンジンを備えている。
本発明によれば、クロムめっき層中のホウ素含有量が0.05質量%以上0.3質量%以下に調整されており、クロムめっき層の厚さが0.7μm以下であるため、三価クロムめっき液を用いて、六価クロムめっき液から形成しためっき層と同程度の良好な成膜特性を有し、耐熱性に優れたクロムめっき層を得ることができる。したがって、三価クロムめっき液を用いて、良好な外観を有するエンジン部品を得ることができる。
また、クロムめっき層中のホウ素の含有量を0.1質量%以下にし、鉄の含有量を2質量%以下にすることによって、六価クロムめっき液から形成されるクロムめっき層と同程度の銀白色の色調を得ることができる。さらに、クロムめっき層の厚さを0.2μm以上0.7μm以下の範囲にすることによって、熱変色の生じにくいエンジン部品が得られる。
本願発明者は、三価クロムめっき液の組成および形成されたクロムめっき層中の組成を検討した結果、クロムめっき層にクラックが生じるという問題は、クロムめっき層中に含まれるホウ素含有量が関係していることを見出した。また、クロムめっき層の成長の安定性や形成されたクロムめっき層の耐食性および耐摩耗性も、クロムめっき層中に含まれるホウ素含有量および三価クロムめっき液中のホウ素濃度が関係していることを見出した。
また、従来の三価クロムめっき液から形成されるクロムめっき層は、六価クロムめっき液から形成されるクロムめっき層に比べて黒味を帯びた色調を有している。これは形成したクロムめっき層の鉄含有量に関連していることがわかった。
さらに、三価クロムめっき液から形成されるクロムめっき層をエンジン部品に形成する場合、加熱によって表面の色調が変化し、クロムめっき層が青紫色を呈する場合がある。このような変色はエンジン部品が搭載された自動二輪車などの外観を損なうことになる。本願発明者は、クロムめっき層の加熱による変色が、クロムめっき層の厚さに依存することを見出した。
1.エンジン用部品の構造
(1)基本構造
以下、図1を参照して、本発明によるエンジン用部品の構成を説明する。図1に示すように、本発明のエンジン用部品は、金属基材1と、金属基材1の表面を少なくとも一部を覆うクロムめっき層3と、金属基材1とクロムめっき層3との間に設けられた下地めっき層2とを備えている。以下、これら各構成要素について詳述する。
(i)金属基材
金属基材1は、用途に適した強度と、必要に応じた耐食性などを備え、エンジン用部品として通常使用される材料により形成することができる。代表的には、Fe系材料が挙げられる。そのほか、Al系材料、Zn系材料、Mg系材料、Ti系材料などの非Fe材料から金属基材1を形成してもよい。
Fe系材料としては、FeまたはFeを主成分とする鋼であり、機械構造用鋼(例えば、機械構造用炭素鋼(STKM)、機械構造用合金鋼など)、ステンレス鋼(例えば、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼など)、軟鋼(例えば、SPCC、SPHCなど)などが挙げられる。Al系材料としては、AlまたはAl−Si合金、Al−Si−Mg系合金などのAl合金が挙げられる。Zn系材料としては、Znのほか、Znめっきが被覆されたZnめっき鋼板、またはZnを主成分とし、Ni、Co、Cr、Alなどの合金元素を含有するZn合金めっきが被覆されたZn合金めっき鋼板が挙げられる。Mg系材料としては、Mg−Al系合金やMg−Zn系合金などが挙げられる。Ti系材料としては、Ti、またはTiを主成分とし、Al、V、Siなどの元素を含有するTi合金が挙げられる。
これらの材料は、種類によって、それぞれ、特性が異なる。例えば、Alは、軽量で光輝性を有しており、Tiは、軽量で優れた強度を有しているなどの特徴がある。このため、用途や要求特性などに応じて、適切な材料を選択することができる。
(ii)下地めっき層
金属基材1の上に形成される下地めっき層2は、クロムめっき層3の下地めっきとして用いられる。クロムめっき層に発生するクラックを防止し、耐食性および耐摩耗性に優れたクロムめっき層を安定に成長させるという観点からは、下地めっき層2を設けなくてもよい。クロムめっきでは、通常、素地基材との密着性を高めるなどの目的で、クロムめっき層の下に下地めっき層が形成されている。このため、下地めっき層2は、各種金属基材との密着性、および、クロムめっき層との密着性に優れていることが好ましい。さらに、耐食性などの他の特性も兼ね備えていることが好ましい。
本発明に用いられる下地めっき層2を構成する金属は、クロムめっき層の形成に用いられるクロムの硬度(ビッカース硬度)との関係で規定することができる。具体的には、下地めっき層2を構成する金属は、クロムの硬度(約350〜1200Hv)よりも低い硬度を有する金属で形成されていることが好ましい。クロムめっき層と金属基材との間に硬度が低い金属からなる層を介在させることにより、ヒートサイクルによるクロムめっき層へのストレスを小さくすることができるため、クラックの発生などが抑えられ、表面性状に優れたクロムめっき層を得ることができる。クロムよりも硬度が低い金属として、例えば、ニッケル(Ni)(硬度:約150〜350Hv)、銅(Cu)(硬度:約40〜250Hv)、スズ(Sn)(硬度:約20〜200Hv)、鉛(Pb)(測定不能)などが挙げられる。
これらの金属を含む下地めっき層として、例えば、ニッケルめっき、銅めっき、スズめっき、鉛めっき、亜鉛−ニッケルめっきなどからなる層を用いる。これらのめっき層は、単独で形成されていても良いし、二種以上が組み合わされて複数の下地めっき層を構成していてもよい。また、同種の下地めっき層であって、添加剤などの種類が異なるめっき層が複数形成されていてもよい。クロムめっき層の下地処理として用いられる代表的な下地めっき層は、ニッケルめっきであり、これにより、耐食性、光沢性などが一層向上する。
下地めっき層2には、種々の添加剤を構成する元素が含まれている。これらの添加剤は、クロムめっき層の光沢性を高める目的で、下地めっき層2を形成するめっき液中に添加されている。具体的には、一次光沢剤(サッカリンナトリウム、ナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸三ナトリウム、ベンゼンスルホン酸などの非ブチン系光沢剤)、二次光沢剤(2−ブチル−1,4−ジオール、アリルスルホン酸ナトリウムなど)などが用いられる。これらの添加剤は、いずれも、Cおよび/またはSを構成元素として含んでいる。下地めっき層に含まれるCおよび/またはSは、下地めっき層の種類や添加剤の種類などによっても相違するが、おおむね、合計で、約0.001〜1.0質量%である。以下において詳述するように、これらの元素は、加熱によって約0.1〜10質量%まで濃化し、クロムめっき層の表面の変色をもたらす。さらに、下地めっき層2がニッケルめっき層の場合、ニッケルめっき層に含まれるNiも、表面の変色に大きく関与する。
以下、下地めっき層の代表例であるニッケルめっきについて、詳しく説明する。ニッケルめっきは、主に、めっき液に添加される光沢剤の種類や添加の有無などにより、無光沢ニッケルめっきと、半光沢ニッケルめっきと、光沢ニッケルめっきとに大別される。これらは、要求される特性や用途などに応じて、適宜、適切に組合せることができ、これにより、所望の外観を得ることができる。
このうち光沢ニッケルめっきは、めっき液中にサッカリンやベンゼンスルホン酸などの光沢剤を添加して得られ、表面のレベリング(平滑化)作用やクロムめっき層との密着性などに優れているため、クロムめっき層の真下に形成される下地層として広く用いられている。光沢ニッケルめっきに用いられる光沢剤は、通常、めっき層中に、CおよびSの少なくとも一方を合計で約0.001〜1.0質量%含み、Sの含有量が多いほど耐食性が低下する傾向にある。
これに対し、無光沢ニッケルめっきは、めっき液中に光沢剤を含まない点で、光沢ニッケルめっきと相違する。無光沢ニッケルめっきは、光沢ニッケルめっきに比べて光沢性に劣るが、めっき層のつきまわり(付着性)、耐食性、変色防止作用などに優れている。
また、半光沢ニッケルめっきは、めっき液中に非クマリン系の半光沢剤を添加して得られる。半光沢剤は、上述の光沢剤とは異なり、Cおよび/またはSの含有量が少ない。このため、光沢ニッケルめっきに比べて耐食性は良好であるが、光沢性に劣る。
一般に、S含有量の異なるニッケルめっき層を重ねて形成すると、各めっき層の間に電位差が生じ、S含有量の多い皮膜が優先的に腐食される。このような性質を利用して、ニッケルめっきの構成を2層以上の複数とし、耐食性の向上を図る場合が多い。例えば、素地金属に、半光沢ニッケルめっき層および光沢ニッケルめっき層を順次形成した2層めっきの場合、光沢めっき層は半光沢めっき層に比べて卑な電位となり、優先的に腐食される。このため、半光沢めっき層の下にある素地金属は腐食されずに保護される。上記の2層めっき層において、さらに耐食性を高める目的で、半光沢ニッケルめっき層と光沢ニッケルめっき層の間に、S含有量の多いトリニッケルめっき層(光沢ニッケルめっき層の一種)を形成し、3層めっきとする場合もある。トリニッケルめっき層に含まれるSは、主に、光沢剤以外の添加剤から供給されることが多い。この場合は、まず、最上層の光沢ニッケルめっき層が優先的に腐食し、次いで、中間層のトリニッケルめっき層が腐食することにより、半光沢ニッケルめっき層および素地金属の両方が保護されることになる。
このようなニッケルめっきによる作用を有効に発揮させるためには、ニッケルめっき層の厚さは、合計で、約10〜30μmであることが好ましい。より好ましくは、約15μm以上、25μm以下である。
なお、ニッケルめっき層以外の下地めっき層を形成する場合は、おおよそ、10〜30μmの厚さに制御することが好ましい。
(iii)クロムめっき層
下地めっき層2の上には、クロムめっき層3が形成されている。クロムめっき層3は、以下において詳細に説明するように、三価クロムめっき液を用いて電気めっきにより形成された装飾クロムめっき層である。
クロムめっき層が、三価クロムめっき液を用いて形成されたのか六価クロムめっき液を用いて形成されたのかはクロムめっき層の結晶状態を測定することにより判別することができる。具体的にはクロムめっき層をX線回折することにより、容易に判別することができる。図2(a)および(b)に、X線回折法によるクロムめっき層の分析結果をそれぞれ示す。測定方法の詳細は、以下のとおりである。
分析機器:理学電機製X線回折装置RAD−3C型
測定条件:Cu対陰極を使用、40kV/40mAで通電
六価クロムめっき液を用いて形成されたクロムめっき層のX線回折結果は、図2(b)に示すとおりである。約40θ〜50θの回折角付近に、約1200cpsの極めて大きな回折ピークが観測されるとともに、約65θおよび約83θの回折角付近に、それぞれ、約200cpsの大きな回折ピークが観測される。これらのピークは、回折角の小さい順に、(111)配向の結晶、(200)配向の結晶、および、(211)配向の結晶に由来する。
これに対し、三価クロムめっき液を用いて形成されたクロムめっき層のX線回折結果は、図2(a)に示すとおりである。約40〜50θの回折角付近に、(111)配向の結晶に由来する約100cpsの小さい回折ピークが観測されるのみである。(111)配向結晶に由来するピークの半値幅をピーク強度で除した値(半値幅/ピーク高さ)は、約0.6rad/cpsであり、六価クロムを用いたときに観測される(111)配向結晶の値(約7.9×10-4rad/cps)に比べて、非常に広い。
これらの図より、三価クロムめっき液を用いて形成されたクロムめっき層は、実質的に非晶質構造を有しているのに対して、六価クロムを用いたクロムめっき層は、多結晶からなる結晶構造を有しているのがわかる。めっき層が結晶構造か非結晶構造であるかは、例えば、約40〜50θの回折角付近に、(半値幅/ピーク高さ)が約0.001rad/cps以下の回折ピークが観測されるかどうかによって判別することができる。
クロムめっき層3に含まれるホウ素の量は、0.05質量%以上0.3質量%以下である。ホウ素の含有量が0.3質量%よりも多い場合、400℃以上の加熱を受けることによってクロムめっき層3にクラックが生じてしまう。一方、ホウ素の含有量が0.05%よりも少ない場合、クロムめっき層3の耐食性および耐摩耗性が低下する。また、クロムめっき層3を形成する際のめっき成長の安定性が低下する。好ましくは、ホウ素の含有量は0.05質量%以上0.2質量%以下であり、より好ましくは、0.05質量%以上0.1質量%以下である。ホウ素の含有量が少ないほうが、クラックの発生をより確実に防止することができ、また耐食性および耐摩耗性も優れる。
ここで、「めっき成長の安定性」とは、めっき処理によるクロムめっき層のつきまわり(付着性)が経時的に一定であることを意味する。詳細には、ハルセル試験を行った場合、広範囲の電流密度領域にわたってめっき厚さの不足や焦げ、条痕などの外観不良が生じないこと、または、被めっき材においてめっきされにくい部分(例えば、電極と反対側に配置される被めっき面)にも、所定の厚さを備えためっき層が形成されていることを意味する。
また、「めっきの耐食性」は、めっき処理によって付与される耐食性を意味する。具体的には、めっき処理後の試料を用いてJIS H8502に規定するめっきの耐食性試験方法のキャス試験を行ったとき、レイティングナンバーが7.0以上を満足する場合、「めっき耐食性に優れる」という。
「めっきの耐摩耗性」は、めっき処理によって付与される耐摩耗性(硬度)を意味する。具体的には、めっき処理後の試料を用いてJIS Z 2244に規定するビッカース硬度を測定したとき、ビッカース硬度が350Hv0.1(試験力0.9807N)以上の範囲にある場合、「めっき耐摩耗性に優れる」という。
このようにクロムめっき層3がホウ素を含有することにより、耐食性および耐摩耗性に優れたクロムめっき層が得られる。また、クロムめっき層を安定的に成長させることができる。しかし、ホウ素はめっき層の硬化作用を有しており、含有量が上述の範囲を超えると、特に、高温(特に400℃以上)に加熱されることによって、クロムめっき層の硬度が大きくなり、ヒートサイクルによるクロムめっき層へのストレスが高まる結果、表面にクラックなどが発生しやすくなる。クラックが発生すると、クラックを起点として錆が生じやすくなる。クラックが多量に発生すると、皮膜が剥離するなどして外観が損なわれる恐れもある。また、含有量が上述の範囲を超えることによって色調が低下してしまう。
上述したようにホウ素はクロムめっき層を硬化させるため、ホウ素を含むクロムめっき層を厚く形成するとクラックが生じやすくなる。このため、クロムめっき層3の厚さは、0.7μm以下であることが好ましい。クロムめっき層3が0.7μmよりも厚いと、ホウ素の含有量が上述の範囲内であってもクラックのないクロムめっき層を形成することが困難となる。クラックの発生をより確実に防止するためには、クロムめっき層3の厚さは0.5μm以下であることが好ましい。
なお、加熱によるクラック発生の防止という観点からは、エンジン用部品の高温になる領域においてのみ、クロムめっき層のホウ素含有量が、0.3質量%以下になっておればよい。しかし、めっきによって連続的にエンジン用部品の表面を覆うクロムめっき層において、一部分のホウ素含有量を変化させるのは困難である。このため、クロムめっき層のどの領域においてもクロムめっき層中のホウ素含有量は上述の範囲内にあることが好ましい。
ただし、ホウ素含有量がクロムめっき層のどの領域においても上述の範囲内にあるからといって、本発明のエンジン用部品は全体が高温に加熱される環境で使用される必要はなく、少なくとも一部が高温に曝されるエンジン用部品に本発明は好適に用いられる。
クロムめっき層3が上述したホウ素含有量を有する限り、六価クロムめっき液から形成しためっき層と同程度の良好な成膜特性を有し、耐熱性に優れたクロムめっき層を、三価クロムめっき液を用いて形成することができる。しかし三価クロムめっき液から形成されるクロムめっき層は、六価クロムめっき液から形成されるクロムめっき層に比べて黒味を帯びた色調を有している。この色調が黒味を帯びる原因はクロムめっき層に含まれる鉄およびホウ素の濃度に関係しており、特に鉄の含有量が多くなるほど色調が黒っぽくなる。詳細は不明であるが、クロムめっき層中の鉄は、三価クロムめっき液からクロムめっき層を成長させる際、鉄がめっき液中の種々の元素と結合するなどして、黒色の鉄を含む析出物を生成するためと考えられる。
このため、六価クロムめっき液から形成されるクロムめっき層と同程度の銀白色の色調を得るためには、クロムめっき層3中ホウ素の含有量は0.1質量%以下であり、鉄の含有量は2質量%以下であることが好ましい。鉄の含有量は、少ないほど良く、より好ましくは1質量%以下、さらにより好ましくは0.5質量%以下である。
ただし、六価クロムめっき液から形成されるクロムめっき層と対比されるような態様で本発明のエンジン用部品が使用されない場合には、ホウ素の含有量を0.3質量%以下にし、鉄の含有量を7質量%以下にすることによって、多少色調がくすむものの、クロムめっきとして遜色のない色調のクロムめっき層が得られる。
クロムめっき層のホウ素および鉄の含有量はいずれもGDS分析法によりクロムめっき層の深さ方向において含まれる各元素の含有量を分析したときの最大値で表される。
クロムめっき層3中ホウ素の含有量が0.1質量%以下であり、鉄の含有量は2質量%以下である場合、クロムめっき層の色調は、CIE(Commission Internationale de l'Eclairage)1976で測定されるL*値が68〜80の範囲を満足する。L値は、分光式色差計(例えば、東京電色カラーアナライザー製TC−1800MK−IIなど)を用いて計測される。この値は、六価クロムめっき液から形成されるクロムめっき層と同程度である。このため、上述の範囲に鉄の含有量が制限されているクロムめっき層3と六価クロムめっき液から形成されるクロムめっき層とを並べて比較しても色調の差はほとんど目立たない。
エンジン用部品がこのような構造を備えることによって、三価クロムめっき液を用いて、六価クロムめっき液から形成しためっき層と同程度の良好な成膜特性を有し、耐熱性に優れたクロムめっき層を得ることができる。また、クロムめっき層中のホウ素の含有量を0.1質量%以下にし、鉄の含有量を2質量%以下にすることによって、六価クロムめっき液から形成されるクロムめっき層と同程度の銀白色の色調を得ることができる。
(iv)変色防止のメカニズム
本発明のエンジン用部品は、シリンダー、シリンダーヘッド、ヘッドカバーなどのエンジン部分、エンジンから排気ガスを導くための排気管などに好適に用いることができる。ただし、350℃以上の熱に曝される場所に本発明のエンジン用部品が用いられる場合、加熱によって表面の色調が変化し、クロムめっき層が青紫色を呈することがある。このような場所に本発明のエンジン用部品が使用される場合には、クロムめっき層が、0.2μm以上の厚さを有していることが好ましい。以下、クロムめっき層の厚さを制御することにより、加熱によるクロムめっき層の変色を防止できる理由について、図3および図4を用いて説明する。
図3は、クロムめっき層表面の変色をもたらすと考えられる「C−Sの濃化層」または「C−S−Niの濃化層」(以下、単に「濃化層」と呼ぶ場合がある。)が生成するメカニズムを説明する図であり、加熱により、クロムめっき層と下地めっき層との界面近傍にCおよび/またはSが集まってくる様子を模式的に説明している。図3には、Fe基材とクロムめっき層との間にニッケルめっき層が形成された、本発明の代表的な構成を示しており、ニッケルめっき層は、Fe基材側から順に、半光沢ニッケルめっき層、トリニッケルめっき層、および光沢ニッケルめっき層の三層から構成されている。
なお、クロムめっき層とニッケルめっき層との界面近傍には、加熱により、クロムめっき層やニッケルめっき層に含まれる添加剤を構成する様々な元素が集まってくる。図3には、クロムめっき層の変色に関与していると考えられる元素、すなわち、上記の濃化層を構成する元素(C、S、およびNiの少なくとも1つ)と、これらの元素と結合しやすい元素(FeやCrなど)についてのみ示し、それ以外の元素(例えば、加熱により、上記の界面近傍に集まってくるOなど)は省略している。
図3に示すように、ニッケルめっき層側からクロムめっき層側に向かって、主に、CまたはSが移動し、上記の界面近傍に集まってくる。前述したとおり、CまたはSは、主に、ニッケルめっき液に添加される非ブチン系の光沢剤(ベンゼンスルホン酸など)を構成する元素であり、特に、光沢ニッケルめっき層およびトリニッケルめっき層には、Sが多く含まれている。そのため、上記の界面近傍には、CまたはSが多く集まった「C−Sの濃化層」が形成される。ここで、「C−Sの濃化層」は、CまたはSの少なくとも1つが集まっている層を意味する。なお、CまたはSは、クロムめっき層側から拡散移動する場合もあり得るが、ニッケルめっき層側から拡散移動する場合に比べて、その比率は非常に少ないため、図示していない。
下地めっき層がニッケルめっき層の場合、Niを含有する「C−S−Niの濃化層」が形成される。Niも、CまたはSと同様、変色に関与していると考えられる。ここで、「C−S−Niの濃化層」は、CまたはSまたはNiの少なくとも1つが集まっている層を意味する。
このような濃化層の形成により、クロムめっき層の表面の変色が生じる理由は、詳細には不明であるが、例えば、クロムめっき層を構成するCrが、上記の濃化層を構成する元素(CまたはSまたはNi)と結合し、クロムめっき層の屈折率が変化するため、変色を招くことが考えられる。また、鉄も、変色をもたらす原因物質と考えられる。金属基材がFe系材料から構成されている場合、加熱により、Fe系材料からFeが拡散して上記の界面近傍に濃化してくることもある(図示せず)。
このような濃化層に基づくクロムめっき層表面の変色は、クロムめっき層の厚さを0.2μm以上にすることによって防止できる。以下、図4(a)および(b)を参照しながら、その理由を説明する。
図4(b)は、従来のCr−ニッケルめっき層の一部を模式的に説明する図である。図4(b)に示すように、従来のクロムめっき層の厚さは、約0.1μm以下と小さいため、入射光は、クロムめっき層とニッケルめっき層との界面付近まで透過するようになる。その結果、上記の界面付近に生成される濃化層によって入射光の一部が吸収され、加熱による変色の程度がより顕著に見られるようになる。
これに対し、クロムめっき層の厚さを0.2μm以上とした場合は、図4(a)に示すように、入射光は、クロムめっき層の表面付近で大部分が反射され、クロムめっき層とニッケルめっき層との界面近傍まで透過することはない。そのため、通常のクロムめっき層の最表面に形成される酸化皮膜による干渉色だけとなり、濃化層による影響を抑えることができる。
このような作用を有効に発揮させるため、クロムめっき層の厚さは、0.2μm以上とする。加熱による熱変色の防止という観点からすれば、クロムめっき層は厚いほうがよい。好ましくは、クロムめっき層の厚さは、0.3μm以上であり、より好ましくは0.4μm以上である。
以上のことから、クラックの発生および加熱による変色を防止するためには、クロムめっき層の厚さは、0.2μm以上、0.7μm以下であることが好ましく、0.3μm以上、0.5μm以下であることがより好ましい。クロムめっき層の厚さが0.4μm以上、0.5μm以下であれば、クラックの発生をほぼ確実に防止するともに加熱による変色も確実に防止できる。
クロムめっき層3の厚さは、光学顕微鏡観察(倍率:400倍)によって測定する。具体的には、めっき層の厚さ方向断面を鏡面研摩し、エッチングする。これにより、クロムめっき層と下地めっき層とが明瞭に分離される。なお、クロムめっき層の表面粗さRaは、せいぜい、0.01μm程度であるため、表面粗さRaがクロムめっき層の厚さに及ぼす影響は、ほとんど、無視して良いと考えられる。また、測定部位によってクロムめっき層の厚さは、若干、異なるため、任意の観察領域において、測定場所を変えて合計3箇所測定し、その平均値を、「クロムめっき層の厚さ」と定める。
なお、濃化層の形成による他の変色防止手段として、例えば、CまたはSの含有量を低減する方法も考えられるが、この方法は、実用的でない。例えば、CまたはSの含有量を低減するためには、主に、下地めっき層に含まれる光沢剤の量を低減しなければならないが、その結果、光沢性が低下してエンジン用部品の意匠が著しく損なわれてしまう。本発明のように、優れた意匠を備えていることを重要課題のひとつとして掲げている場合は、光沢剤の減少に伴って意匠が損なわれることは、最も避けなければならない。
加熱による変色を防止するためには、350℃以上の温度に加熱されるクロムめっき層3の部分が、上記範囲の厚さを満足していればよく、金属基材1に形成されるクロムめっき層3の全ての部分が、上記範囲の厚さを満足する必要はない。また、350℃以下の温度にしかならない領域では、クロムめっき層3の厚さは0.2μm以下であってもよい。一般に、クロムめっき層は、加熱により、銀白色から黄色、黄金色へと着色していき、さらに約350〜500℃の高温になると、黄金色から紫色に変色する。このような色調の変化は、クロムめっき層が形成される部分全体に、均一に見られるのではなく、高温の排気ガスに曝されやすい部分で、顕著に発生する。従って、黄金色から紫色への変色を防止するためには、加熱による変色が最も進行しやすい部分、すなわち、350℃以上の温度に曝されるクロムめっき層の厚さを上記範囲に制御すれば良い。
この「350℃以上の温度に加熱される部分」としては、例えば、シリンダー、シリンダーヘッド、ヘッドカバーなどのエンジンを構成するエンジン用部品の一部、およびエンジンから排出される排気ガスを導く流路を構成している排気管の一部もしくは排気管のカバーが挙げられる。ここで言う排気管は直接的に排気ガスを案内する排気管であってもよいし、間接的に排気ガスによって加熱される排気管(二重管)であってもよい。排気管には、各シリンダーからの排気ガスを導くマニホールド部、触媒装置を覆う触媒装置収納部、消音器(マフラー)などが含まれる。
(2)具体的な構造および自動二輪車への適用
図5を参照しながら、本発明によるエンジン用部品の具体的な構造を説明する。図5は、本発明のエンジン用部品である排気管が用いられた自動二輪車100を示している。図5に示すように、自動二輪車100は、4サイクル内燃機関から構成されるエンジン30と、エンジン30で生じた排気ガスを車体後方から排出するために、排気ガスを導く排気管4とを備えている。排気管4は、エンジン30に接続され、エンジン30の前方から排出された排気ガスを後方へ導くよう、大きく曲がった排気経路を構成している排気管集合部4aと、消音器4bとを含む。排気管集合部4aは、一体的に1つの部品によって構成されていてもよいし、複数の部品を接合することにより構成されていてもよい。本実施形態では、排気管4は自動二輪車100の外観に表れるよう全体が露出しており、自動二輪車100全体の意匠の一部を構成している。以下において詳細に説明するように、排気管4全体が露出しているほうが、長期にわたって排気管4のクロムめっき層にクラックが生じさびが発生したり、熱による変色が生じず、新車のような外観を保つという本発明の効果が顕著に外観に表れる。しかし、排気管4の少なくとも一部が外観に表れる限り、自動二輪車の意匠によっては、排気管4の一部がカウルやプロテクタによって覆われていてもよい。また、排気管が用いられた自動二輪車の形状は図5に限られるわけではなく、たとえば、図9に示すような構造を備えた自動二輪車に本発明の排気管を採用してもよい。
次に、図6(a)、(b)および(c)を参照しながら、クロムめっき層の厚さを0.2μm以上にしたほうが好ましい「金属基材表面の350℃以上の温度に加熱される領域」を具体的に説明する。これらの図は、排気管4の一部を示す断面図である。
図6(a)は、エンジンに直接、接続される排気管4の排気管集合部4aを示している。図6(a)に示すように、エンジン(不図示)に接続される排気管集合部4aは、排気ガスが通過する通路6を規定している金属管5と、金属管5の外側面を覆うめっき層10とを含む。金属管5は屈曲部9を有している。屈曲部9は通路6が折れ曲る、あるいは通路6の伸びる向きが変化している部分である。
めっき層10は、前述したとおり、下地めっき層とクロムめっき層とから構成されている。金属管5は、通路6を規定しておればよく、通路6を規定する内管および内管の外側を囲むように保持された外管から構成される2重管構造を有していてもよい。
エンジン(不図示)と直接、接続される排気管集合部4aから入った排気ガスは、早い速度で通路6を移動するため、屈曲部9において、金属管5と衝突し、特に屈曲により形成される凸状表面部分9aに位置する金属管5の内側面9bと激しく衝突する。このため、外側部分9aが高温の排気ガスにより、約350℃以上の温度(例えば、約400〜500℃)に加熱される。
また、金属管5が2重管構造を有している場合、他の排気管部材23とを接続する連結部分21では1重管構造を採用することが多い。連結部21に2重管構造を採用すると、他の排気管部材23との溶接の際、外管と内管との熱膨張差によって金属管5が変形したり破損したりする可能性があるからである。金属管5がこのような構造を採用している場合、連結部分21の内側面が高温の排気ガスに直接接触することによって、連結部分21は、約350℃以上の温度(例えば、約400〜500℃)に加熱される。
図6(b)は、排気管4の触媒装置8を収納する触媒収納部22の断面を模式的に示している。触媒装置8は、触媒収納部22内に設けられ排気ガスが通過することによって、排気ガスに含まれる少なくとも1つの成分を分解する。分解の際、触媒装置8が発熱するため、触媒収納部22は、約350℃以上の温度(例えば、約400〜500℃)に加熱される。
また、エンジン30(図5)が複数のシリンダーを備えている場合、排気管4は各シリンダーで生じた排気ガスを一緒にして自動二輪車100の後方へ導くため、マニホールド部を備えていることがある。図6(c)は、シリンダーに接続された枝管4d、4eがマニホールド部15により集合され、一体化した排気管部材4fで排出される排気管4を示している。このような排気管集合部4aのマニホールド部15では、複数の枝管4d、4eから排気ガスが集まることによって、排気ガスの流量が増大するとともに、流路が曲げられるため、排気ガスがマニホールド部15の内側面に衝突する。このため、排気ガスによってマニホールド部15は、約350℃以上の温度(例えば、約400〜500℃)に加熱される。
本実施形態の自動二輪車は、図6(a)、(b)および(c)を用いて例示したこれら排気管の高温に加熱される部分の外側を覆うように0.2μm以上のクロムめっき層が形成されている。このため、高温の排気ガスに曝されても、加熱によるクロムめっき層の変色を防止することができる。
また、三価クロムを用いて形成されるクロムめっき層は、クロムめっき層に含まれるFe含有量が低減されているため、六価クロムを用いた場合と同程度の優れた色調を発現することができる。
本発明には、前述したエンジン用部品を備えた輸送機器も包含される。輸送機器としては、例えば、エンジンを備えた自動二輪車や全天候型四輪車両などの車両、エンジンを備えた船舶、飛行機などの輸送機器などが挙げられる。
2.エンジン用部品の製造方法
次に、本発明のエンジン用部品を製造する方法について説明する。本発明によるエンジン用部品は、所定の形状を有する金属基材に下地めっき層およびクロムめっき層を順に形成することにより製造される。以下、製造方法を詳細に説明する。
まず、金属基材の表面を脱脂して清浄にするため、金属基材を、水洗槽、超音波アルカリ脱脂槽、電界脱脂槽、酸処理活性化槽などの槽に所定時間、浸漬する。これにより、金属基材の表面は、充分脱脂されるため、金属表面に下地めっき層やクロムめっき層を形成しやすくなる。
次に、上記のようにして洗浄された金属基材を用い、電気めっきにより、金属基材の少なくとも外側表面上に下地めっき層およびクロムめっき層を順次、形成する。下地めっき層もクロムめっき層も、ともに、電気めっきを用いて形成され、その原理は、同じであるため、以下の説明では、クロムめっき層を形成する工程について、図7に示すめっき装置を用いて詳細に説明することにし、下地めっき層を形成する工程は、図面を参照せずに説明する。
下地めっき層は、めっき層を形成したい金属の溶液を含むめっき槽に上記の金属基材を浸漬し、所望の厚さが得られるまで通電することによって形成される。例えば、下地めっき層として、半光沢ニッケルめっき層、トリニッケルめっき層、および光沢ニッケルめっき層の三層からなるニッケルめっき層を形成する場合は、上記のようにして洗浄された金属基材を、半光沢ニッケルめっき液、トリニッケルめっき液、および光沢ニッケルめっき液に、それぞれ、浸漬し、所望のめっき層が形成されるまで通電する。具体的なめっき条件は、使用する金属基材やめっき液の組成、用途などによっても相違し、Ni−クロムめっきに通常、用いられる条件を適宜、選択すればよい。例えば、Fe基材に、5〜15μmの半光沢ニッケルめっき層、1〜2μmのトリニッケルめっき層、および5〜15μmの光沢ニッケルめっき層を、順次、形成する場合、めっき液の温度を約40〜65℃、めっき液のpHを約2〜5とすることが好ましい。また、めっき時間は、半光沢ニッケルめっきおよび光沢ニッケルめっきの場合、約10〜20分間とし、トリニッケルめっきの場合、約1〜5分間とすることが好ましい。なお、下地めっき層と金属基材との間にさらにストライクニッケル層を設けてもよい。
次いで、下地めっき層が形成された金属基材にクロムめっき層を形成する。図7に示すように、クロムめっき装置20は、クロムめっきを行うためのクロムめっき槽11と、クロムめっき槽11に添加されためっき液を汲み上げるポンプ12と、めっき液中に浮遊する不純物を除去するためのろ過器13と、めっき液の流量を調整する調整バルブ14と、めっき液の流量をモニターする流量計15とから構成されている。クロムめっき装置20の下流側には、めっき液中に含まれるFeなどの金属イオンを除去するためのイオン交換装置16が設置されている。クロムめっき装置20と、イオン交換装置16とは、金属管(不図示)で連結されている。
クロムめっき槽11には、三価クロムめっき液が満たされている。めっき液は、三価クロムイオン源として、クロム量に換算して30〜40g/lの塩基性硫酸クロムを含んでいる。
クロムめっき層中に含まれるホウ素および鉄の量が前述した範囲となるためには、用いるめっき液中のホウ素および鉄の濃度を所定の範囲にする必要がある。具体的には、三価クロムめっき液は、ホウ酸の含有量がホウ素量に換算して1〜5g/lの範囲であり、Feの含有量は0.5mg/l以下である。
ホウ酸の含有量は、従来の典型的な三価クロムめっき液に添加されるホウ素の量(約6〜15g/l)と比較すると、約1/15〜5/6に低減されている。近年、ホウ素の環境への排出量が規制されるようになってきており、ホウ素濃度の低いめっき液を用いることは、このような環境規制への適合にも適している。
また、従来の典型的な三価クロムめっき液には、めっき層のつきまわりなどを良くするため、約0.0001〜0.0003質量%の硫酸第一鉄が添加剤として含まれている。このため、従来の三価クロムめっき液を用いる場合、クロムめっき層には、約2〜20質量%のFeが含まれる。しかし、本発明で用いる三価クロムめっき液には、このような添加剤を含まないことが好ましく、Feの含有量を0.5mg/l以下に制限する。
ホウ酸はpHを調整し、クロムめっき層が銀白色の色調を確保するために用いられる。このため、ホウ酸の量を低減し、かつ、適切なpHを保つために、本発明で用いる三価クロムめっき液はクエン酸またはクエン酸化合物をクエン酸量に換算して5〜30g/lの範囲で含む。クエン酸化合物としては、クエン酸カリウムなどのクエン酸塩や、クエン酸ニッケルなどのクエン酸金属化合物を用いることができる。色調の優れたクロムめっき層を得るためにはクエン酸を用いることがより好ましい。クエン酸の添加量は好ましくは、10g/l以上25g/l以下であり、より好ましくは、20g/l以上25g/l以下である。
クロムめっきは、電気めっきによって行われる。クロムめっき槽11に上述の三価クロムめっき液を満たし、クロムめっきが施される金属基材17を陰極とする。クロムめっきは、めっき液からクロムイオンを補給して行われるため、陽極には、クロムめっき液に溶解しない不溶性陽極18が用いられる。
次に、両極間に直流電源19を接続し、通電する。クロムめっき液に含まれるクロムイオンは、陰極側の金属基材17に向かって移動し、金属のCrに還元されて析出する。
350℃以上の温度に加熱される領域に0.2μm以上のクロムめっき層を形成したい場合は、所望の厚さを有するクロムめっき層が形成されるよう、金属基材を配置してめっきすることが好ましい。特に、湾曲形状を有する排気管などの金属基材をめっきする場合は、電極と被めっき材(金属基材)との距離が、できるだけ、短くなるように金属基材を配置することが好ましい。
例えば、図8(a)に示すように、金属基材17の屈曲部の凸状部分9aと電極18との距離が最も短くなるように配置されている場合は、高温に加熱される凸状部分9aにCr層を効率よく形成することができる。
これに対し、図8(b)に示すように、金属基材17の凸状部分9aと電極18との距離が長くなるように配置されている場合は、凸状部分9aとは反対の凹状部分にクロムめっき層が形成されやすく、凸状部分9aには、クロムめっき層が形成されにくくなるため、めっき効率が悪くなる。
そのほか、例えば、電極面を通過する電気量(電流×時間)や電流密度などを制御することにより、クロムめっき層の厚さを所定の範囲に制御することもできる。特に、350℃以上の温度に加熱される領域に所定のクロムめっき層が形成されやすくなるように、電極の配置を工夫したり、補助電極を取り付けたりするなどして、電流密度などを制御することができる。具体的な制御方法は、使用する金属基材の種類や形状、めっき液の構成、クロムめっき層の厚さなどによって、適宜、適切な条件を選択すればよい。特に、めっき液に硫酸第一鉄が含まれない場合、一般にめっき層のつきまわりが悪くなるため、電極の配置を工夫するなどによって、電流密度が均一になるよう考慮する必要がある。
形成するクロムめっき層のホウ素含有量は、めっき液中のホウ素濃度のみならず、めっき液の温度やめっき時間、めっき液の攪拌速度などに依存し、特にめっき液の温度に依存する。一般にめっき液の温度が高くなるとクロムめっき層中のホウ素含有量が高くなる。このため、クロムめっき層中のホウ素量を上述した範囲に抑えるためには、めっき液の温度を25℃から30℃の範囲に制御することが好ましい。
クロムめっき層中の鉄の含有量を上述の範囲にするためには、金属基材からめっき液中に溶け出す鉄に留意する必要がある。また、金属基材が鉄を主成分としていなくとも、クロムめっき層側にFeが不可避的に集まってくる場合がある。その結果、めっき液に硫酸第一鉄を添加していなくてもめっき液中の鉄の濃度が高くなり、クロムめっき層に鉄が含まれてしまう可能性がある。
このような可能性を排除するために、めっき中にめっき液中の鉄濃度を定期的にモニターし、鉄の濃度が所定の値以上になった場合には、鉄を除去する必要がある。めっき液中に混入する鉄イオンは、陽イオン交換樹脂を備えたイオン交換装置16を用いて除去する。本発明に用いられる陽イオン交換樹脂は、Feなどのニ価の金属陽イオンと容易に交換し得る樹脂であれば特に限定されない。
具体的な除去方法は、以下のとおりである。まず、めっき中、定期的にポンプ12でめっき槽11からめっき液を汲み上げ、ろ過器13を用いて浮遊物を除去する。次に、浮遊物が除去されためっき液は、調整バルブ14によって流量を調整しながら、イオン交換装置16に導入され、陽イオン交換樹脂によってFeイオンなどの金属陽イオンを除去する。めっき液の流量は、流量計15でモニターする。イオン交換装置16によって処理されためっき液は、定期的に採取し、Fe濃度をチェックする。本発明のようにクロムめっき層のFe濃度を2質量%以下に低減するためには、めっき液中のFe濃度を約0.0001質量%以下に制御する必要があるため、上記の範囲になるまで、イオン交換装置16による除去を行う。
このようにしてFeイオンが除去されためっき液(再生めっき液)は、イオン交換装置16の出口から管路24を通ってめっき槽11に循環される。再生めっき液は、例えば、適切な貯蔵容器(不図示)に蓄えてもよい。
なお、イオン交換装置16を用いてめっき液中の金属陽イオンを除去する方法は、例えば、特許文献4などに詳細に説明されており、本発明の方法に適用することができる。また、その改変例も種々提案されており(例えば、特許文献5など)、これらの改変例も、本発明の方法に適用できる。
めっき後のクロムめっき層は、約1μm以下の表面粗さ(Ra)を有し、好ましくは0.2μm以下の表面粗さを有している。このため、めっき後、特に表面の仕上げを行わなくともクロムめっき層は十分な光沢を有している。
3.実験例
(実験例1)
本実験例では、クロムめっき層のホウ素含有量の下限を0.05質量%とすることにより、めっき成長の安定性が確保されることを明らかにする目的で、以下の実験を行った。
まず、STKM材から構成される金属管を用意し、以下の方法により、半光沢Niめっき層とトリNiめっき層と光沢Niめっき層とからなるNiめっき層を形成した。これらのめっき層を形成するために使用しためっき液の組成を表1に示す。なお、トリNiめっき液に含まれるCおよび/またはSは、光沢剤以外の添加剤から供給されている。
半光沢Niめっき層(厚さ約5〜15μm)
めっき条件 :10〜12V(ボルト)、1800〜2800A(アンペア)で通電。
トリNiめっき層(厚さ約1〜5μm)
めっき条件 :3〜3.5V、20〜40Aで通電。
光沢Niめっき層(厚さ約5〜15μm)
めっき条件 :10〜12V、1800〜2800Aで通電。
次に、図6に示すイオン交換装置を備えたクロムめっき装置を用い、下地めっき層の上にクロムめっき層を形成した(クロムめっき層の厚さは0.3μm)。クロムめっき液として、表2に示す四種類の三価クロムめっき液(No.1〜4)を用いた。試料1から試料4の三価クロムめっき液の構成成分は、硫酸第一鉄およびホウ酸の含有量が異なること以外、同じである。詳細には、これらの三価クロムめっき液には、いずれも、クエン酸が含まれており、硫酸第一鉄の添加量はそれぞれ、0(試料1)、2.5mg/l(試料2)、5mg/l(試料3)、および10mg/l(試料4)である。Fe量に換算すると、それぞれ、0(試料1)、0.05mg/l(試料2)、0.1mg/l(試料3)、および0.3mg/l(試料4)である。また、ホウ酸の添加量は、5g/l(試料1)、5g/l(試料2)、30g/l(試料2)、および60g/l(試料3)である。
なお、めっき層に含まれるホウ素含有量を種々の範囲に調整するため、めっき液の温度を約25〜60℃、電流密度を約10〜30A/dm2の範囲で変化させるとともに、めっき液のエアー撹拌量の程度を調整した。
試料1の本発明例の三価クロムめっき液を用いた場合、めっき中に混入するFeイオンは、陽イオン交換樹脂を備えたイオン交換装置を用いて除去した。具体的には、定期的に、めっき液をイオン交換装置に送り、めっき液中に含まれるFe濃度が0〜0.0001質量%の範囲になるように制御した。その結果、試料1の本発明例の三価クロムめっき液を用いた場合、クロムめっき層に含まれるFe含有量は、めっき層の厚さ方向に測定したとき、最大で0.2質量%となった。一方、試料2〜試料4の三価クロムめっき液を用いた場合は、イオン交換装置によるFeイオンの除去は実施しなかったため、クロムめっき層に含まれるFe含有量(最大値)は、それぞれ、2.0質量%、7.0質量%、および15.0質量%であった。
各試料について、前述した方法にしたがってめっき成長の安定性を測定し、各測定部位におけるクロムめっき層の厚さに基づいて下記基準で評価した。
<めっき成長の安定性>
評価基準(◎〜△を本発明例とする)
◎:クロムめっき層の厚さが0.25mm以上、0.5mm未満の範囲である。
○:クロムめっき層の厚さが0.20mm以上、0.25未満の範囲である。
△:クロムめっき層の厚さが0.05mm以上、0.20mm未満の範囲である。
×:クロムめっき層の厚さが0.05mm未満である。
得られた結果を表3に示す。
表3より、試料1から試料4のいずれの三価クロムめっき液を用いた場合であっても、クロムめっき層中にホウ素が全く含まれていない(含有量がゼロ)場合、めっきの成長は著しく不安定となるが、クロムめっき層中にホウ素を少なくとも0.05質量%以上含まれるようにめっき条件を設定することにより、めっきが安定して成長することがわかる。めっきを安定して成長させる目的に関する限り、クロムめっき層中のホウ素含有量は多いほど好ましい。
このようにめっき成長の安定性を確保するために、ホウ素は不可欠な成分であり、単純に、ホウ酸の代わりにクエン酸を添加するだけでは、優れためっき特性は得られないことが明らかになった。ホウ素の添加によってめっきは安定して成長するようになるが、この効果は、めっき層中のFe含有量にかかわらず、同様に見られた。
次に、ホウ素による上記の効果をさらに詳しく調べる目的で、試料1の三価クロムめっき液を用いて前述した方法と同様にしてクロムめっき層を形成した後、めっき耐食性およびめっき耐摩耗性を、前述した方法にしたがって測定し、それぞれ、下記基準で評価した。
<めっき耐食性>
評価基準(◎〜△を本発明例とする)
◎:レイティングナンバーが9.0以上である。
○:レイティングナンバーが8.0以上、9.0未満である。
△:レイティングナンバーが7.0以上、8.0未満である。
×:レイティングナンバーが7.0未満である。
<めっき耐摩耗性>
評価基準(◎〜△を本発明例とする)
◎:ビッカース硬度が500Hv以上である。
○:ビッカース硬度が450Hv以上、500Hv未満である。
△:ビッカース硬度が350Hv以上、450Hv未満である。
×:ビッカース硬度が350Hv未満である。
得られた結果を表4に示す。表4には、めっき成長の安定性の結果も示している。
表4より、クロムめっき層中にホウ素が全く含まれていない(含有量がゼロ)場合、めっき耐食性およびめっき耐摩耗性は著しく低下するが、クロムめっき層中にホウ素を少なくとも0.05質量%以上含むようにめっき条件を設定することにより、これらの特性は改善されることが分かる。この結果は、前述しためっき成長の安定性の結果と同様である。したがって、めっき成長の安定性のみならず、めっき耐食性およびめっき耐摩耗性を高めるためにも、ホウ素は不可欠な成分であることが分かる。
ただし、表4に示すように、クロムめっき層中のホウ素含有量が0.1質量%を超えると、めっき耐食性およびめっき耐摩耗性は徐々に低下する。この結果は、前述しためっき成長の安定性の結果と異なっている。
以上の結果より、めっき成長安定性、めっき耐食性、およびめっき耐摩耗性の三つの特性から総合的に評価されるめっき成膜特性を向上させるためには、クロムめっき層中のホウ素含有量を0.05〜0.3質量%の範囲に制御することが好ましい。
(実験例2)
本実験例では、クロムめっき層中のホウ素含有量およびFe含有量を制御することにより、めっき直後のクロムめっき層の色調が改善されることを明らかにする目的で、以下の実験を行った。
具体的には、実験例1の試料1から試料4の四種類の三価クロムめっき液を用い、前述した実験例1と同様にしてクロムめっき層を形成した。
このようにして得られた各試料について、以下の方法によってめっき直後の色調を測定し、下記基準で評価した。
<めっき直後の色調>
分光式色差計(東京電色カラーアナライザー製TC−1800MK−II)を用い、CIE1976に記載の方法に基づいてL*値を測定した。六価クロムめっき液を用いて得られるクロムめっき層の色調はL*値で70〜80の範囲である。本実験例では、L*値が68以上であれば六価クロムめっき液から得られるクロムめっき層と同程度の色調が得られるとみなした。
評価基準
◎:六価クロムと同程度の優れた色調が得られる。
(L*値=70以上、80以下)
○:やや金属光沢が低下するが、六価クロムと同程度の色調が得られる。
(L*値=68以上、70未満)
△:やや、黒味を帯びた色調となる(L*値=65以上、68未満)。
×:黒味を帯びた色調となる(L*値=65未満)。
これらの結果を表5に示す。
表5から明らかなように、試料4の三価クロムめっき液を用い、クロムめっき層中のFe含有量を15.0質量%に制御した場合、クロムめっき層中のホウ素含有量にかかわらず、黒味を帯びた色調のクロムめっき層が得られた。
試料3の三価クロムめっき液を用い、クロムめっき層中のFe含有量を7.0質量%に制御した場合、ホウ素量を0.3質量%以下にすることによってやや黒味を帯びた色調のクロムめっき層が得られた。
これに対し、試料2の三価クロムめっき液を用い、クロムめっき層中のFe含有量を2.0質量%に低減した場合、ホウ素量を0.3質量%以下に制御すると、やや黒味を帯びた色調のクロムめっき層が得られ、さらにホウ素量を0.1質量%以下に制御すると、六価クロムめっき液から得られるクロムめっき層とほぼ同じ色調を有するクロムめっき層が得られた。また、試料1の三価クロムめっき液を用い、クロムめっき層中のFe含有量を0.2質量%に低減し、ホウ素量を0.3質量%以下に制御した場合も同様の結果が得られた。クロムめっき層中のFe含有量を0.2質量%に低減し、ホウ素量を0.1質量%以下に制御すると、六価クロムめっき液から得られるクロムめっき層とほとんど区別のつかない色調を有するクロムめっき層が得られた。
したがって、六価クロムを用いたときと同程度の色調を兼ね備えた三価クロムめっき層を得るためには、三価クロムめっき層中のFe量を2.0質量%以下に抑制するとともに、ホウ素量を0.1質量%以下に低減すれば良いことが分かる。なお、色調に関する限り、クロムめっき層中のFe含有量およびホウ素含有量は少ないほど、良好な特性が得られる。
(実験例3)
本実験例では、クロムめっき層の厚さにより、加熱前後のクラックの発生状況およびクロムめっき層の色調がどのように変化するかを調べた。
具体的には、実験例1の試料1の三価クロムめっき液を用い、前述した実験例1と同様にしてクロムめっき層を形成した。クロムめっき層の厚さは、使用するめっき材料のサイズなどに応じてめっき時間を適切に制御することによって調整できる。本実験例では、めっき時間を0.3〜5分間の範囲で変化させることにより、クロムめっき層の厚さを0.1〜1.5μmまで変えた。
このようにして得られた各試料について、以下の方法によってめっき直後(加熱前)に観察されるクラックの発生状況を測定し、下記基準で評価した。さらに、前述した方法にしたがって、めっき直後のクロムめっき層の色調を測定し、評価した。
次に、上記の各試料を大気炉に設置し、400℃×8時間の条件で加熱した後、加熱後におけるクラックの発生状況を、めっき直後に観察されるクラックの発生状況を調べたときと同じ測定方法および評価基準で調べた。
<クラックの発生状況>
測定方法:光学顕微鏡(倍率400倍)を用い、クロムめっき層表面(約10mm×10mm)に発生するクラックを観察する。
評価基準(◎〜△を本発明例とする)
◎: クラックの発生なし。
○:不連続なクラックが、わずかに観察される。
△:やや連続したクラックが、少し発生する。
×: 連続的なクラックが多数発生している。
クラックの発生状況を表6にまとめて示す。また、めっき直後のクロムめっき層の色調を表7に示す。
表6に示すように、クロムめっき層の厚さが大きくなり、クロムめっき層中のホウ素含有量が上昇すると、クラックが発生しやすくなることが分かる。
例えば、加熱前(めっき直後)の実験結果を見ると、クロムめっき層の厚さが0.1〜0.3μmの範囲内では、クロムめっき層中のホウ素含有量を1.5質量%まで高めても、クラックはほとんど発生しなかった。クロムめっき層の厚さが0.5μm以上と大きくなるにつれてクラックは発生しやすくなり、クロムめっき層の厚さが1.5μmの場合、クロムめっき層のホウ素含有量にかかわらず、クラックが発生した。
一方、400℃で8時間の加熱処理を行ったときは、加熱前のときに比べてクラックがより発生しやすくなる傾向が見られた。具体的には、クロムめっき層の厚さが0.1〜0.7μmの範囲であっても、クロムめっき層中のホウ素含有量が0.05〜0.3質量%に制御しなければクラックの発生を有効に防止することができなかった。さらに好ましいホウ素含有量は0.05〜0.2質量%である。なお、クロムめっき層の厚さが0.7μmを超えるとクラックが発生しやすくなり、クロムめっき層の厚さが1.5μmでは、クロムめっき層中のホウ素含有量にかかわらず、クラックが発生した。
これらの実験結果を考慮すれば、加熱前後におけるクラックの発生を有効に防止するためには、クロムめっき層の厚さを0.7μm以下とし、さらにクロムめっき層中のホウ素含有量を0.05〜0.3質量%の範囲に制御すれば良いことが分かる。
次に、クロムめっき層のホウ素含有量が0.05質量%と0.1質量%の試料について、クロムめっき層の厚さを0.05μmから0.7μmの範囲で変化させ、加熱による変色の程度の評価を行った。
<熱変色の程度>
測定方法:分光式色差計(東京電色カラーアナライザー製TC−1800MK−II)を用い、CIE1976に記載の方法に基づいて、加熱前後のL*値、a*値、およびb*値を、それぞれ、測定する。加熱前の値を、それぞれ、L0*値、a0*値、およびb0*値とし、加熱後の値を、それぞれ、L1*値、a1*値、およびb1*値とし、以下のようにして、加熱後の色差ΔE*値を測定する。
評価基準(◎〜△を本発明例とする)
◎:ΔE*値<1
○:1≦ΔE*値<3
△:3≦ΔE*値<4
×: 4≦ΔE*値
表7から明らかなように、クロムめっき層の厚さ(μm)を0.2μm以上にした場合、加熱前後の色調の変化が小さく、0.3μm以上にした場合、ほとんど色調が変化しないことが分かった。
本発明は、エンジンを備えた自動二輪車や全天候型四輪車両などの車両、エンジンを備えた船舶、飛行機などの輸送機器に幅広く用いることができる。
本発明によるエンジン用部品の構成を模式的に示す図である。 (a)は、三価クロムを用いて形成されたクロムめっき層のX線回折法による分析結果を示す図であり、(b)は、六価クロムを用いて形成されたクロムめっき層のX線回折法による分析結果を示す図である。 加熱により、クロムめっき層と下地めっき層との界面近傍に「C−S濃化層」または「C−S−Ni濃化層」が生成する様子を模式的に示す図である。 (a)は、クロムめっき層の厚さを大きくすることによってクロムめっき層の変色を防止できることを説明するための模式図であり、(b)は、従来のクロム−ニッケルめっき層の一部を模式的に説明する図である。 本発明のエンジン用部品が用いられる自動二輪車の側面図である。 (a)は、エンジンに直接、接続される排気管の部分を模式的に示す図であり、(b)は、排気管の触媒収納部の断面を模式的に示す図であり、(c)はマニホールド部の断面を模式的に示す図である。 本発明に用いられるクロムめっき装置の例を示す図である。 (a)は、金属基材の湾曲部分と電極との距離が最も短くなるように配置されている状態を模式的に示す図であり、(b)は、金属基材の湾曲部分と電極との距離が長くなるように配置されている状態を模式的に示す図である。 自動二輪車の外観を示す側面図である。
符号の説明
30、201 エンジン
4、4a、202 排気管
203 シリンダー
204 シリンダーヘッド
205 ヘッドカバー
1 金属基材
2 下地めっき層
3 クロムめっき層
5 金属管
6 通路
7 サイレンサー部分
8 触媒
9 屈曲部
9a 凸状表面部分
9b 内側面
10 めっき層
11 クロムめっき槽
12 ポンプ
13 ろ過器
14 調整バルブ
15 流量計
16 イオン交換装置
17 金属基材
18 不溶性陽極
19 直流電源
20 クロムめっき装置
21 連結部分
22 触媒収納部
23 他の排気管
24 管路
100、200自動二輪車

Claims (14)

  1. 金属基材と、前記金属基材の表面の少なくとも一部を覆っており、三価クロムめっき液によって形成されたクロムめっき層とを備えたエンジン用部品であって、
    前記クロムめっき層に含まれるホウ素の含有量は0.05質量%以上0.3質量%以下であり、前記クロムめっき層に含まれる鉄の含有量は2質量%以下であり、前記クロムめっき層の厚さは0.7μm以下であるエンジン用部品。
  2. 前記クロムめっき層に含まれるホウ素の含有量は0.05質量%以上0.1質量%以下である請求項1に記載のエンジン用部品。
  3. 前記クロムめっき層は、前記金属基材表面の350℃以上の温度に加熱される領域を覆っている請求項に記載のエンジン用部品。
  4. 前記金属基材表面と前記クロムめっき層との間に設けられた下地めっき層をさらに備え、
    前記クロムめっき層は前記350℃以上の温度に加熱される領域において、0.2μm以上0.7μm以下の厚さを有する請求項に記載のエンジン用部品。
  5. 前記下地めっき層はCおよびSの少なくとも一方を含む、請求項に記載のエンジン用部品。
  6. 前記下地めっき層はさらにNiを含む、請求項に記載のエンジン用部品。
  7. 前記下地めっき層は、前記クロムめっき層を構成するCrよりも硬度が低い金属から形成されている、請求項に記載のエンジン用部品。
  8. 前記下地めっき層はNiめっきから形成されている、請求項に記載のエンジン用部品。
  9. 前記クロムめっき層の色調は、CIE(Commision Internationale de l’Eclairage)1976で測定されるL*値が68以上80以下の範囲内にある、請求項2から8のいずれかに記載のエンジン用部品。
  10. 前記金属基材は、Fe、Al、Zn、またはMgを主成分とする材料から構成されている、請求項4から9のいずれかに記載のエンジン用部品。
  11. 前記金属基材は、エンジンからの排気ガスが通過する通路を規定する金属管である、請求項1から10のいずれかに記載のエンジン用部品。
  12. 請求項1から10のいずれかに記載のエンジン用部品を備えたエンジン。
  13. 請求項11に記載のエンジン用部品を備えた輸送機器。
  14. 請求項12に記載のエンジンを備えた輸送機器。
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