JP4516440B2 - 耐高温酸化性および耐食性に優れたチタン合金 - Google Patents

耐高温酸化性および耐食性に優れたチタン合金 Download PDF

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Description

本発明は、特に耐高温酸化性と耐食性に優れ、例えば自動車用やバイク(自動二輪)用のマフラー材などとして有用なチタン合金材に関するものであり、より詳細には、チタン合金本来の優れた強度特性や耐食性を有しつつ、且つコストや加工性を損なうことなく、特に高温での耐酸化特性と耐食性を高めたチタン合金に関するものである。
なお本発明のチタン合金は、その優れた耐高温酸化性と耐食性を活かし、高温の酸化性雰囲気や腐食環境に曝される様々の用途に広く活用できるが、本明細書では特にマフラー材として使用する場合を主体にして説明する。
自動車やバイクの排気系は、エンジンの排ガス出口側から順にエキゾーストマニホールド→エキゾーストパイプ→触媒マフラー→プリマフラー→サイレンサー(メインマフラー)等によって構成されている(本明細書では、これら個々の部材および全体をマフラーと総称する)。これらマフラーの構成素材としては普通鋼が使用されていたが、近年では耐食性に優れたステンレス鋼が主流となっている。
しかし、最近バイクを中心としてチタン製マフラーが注目されており、従来の普通鋼やステンレス鋼に比べて軽量で且つ振動疲労に対する耐久性が良好で耐食性にも優れ、更には熱膨張率が小さく耐熱疲労特性にも優れているといった様々の特性を有していることから、レース用バイクをはじめとして量産バイクにもTi製マフラーを標準装備する例が増大している。
ところで、現在実用化されているチタン製マフラーの殆どは、JIS2種の工業用純チタンである。ちなみに、自動車やバイクエンジン等から放出される排気ガス温度は通常700℃程度以上になると予測されるが、バイク用マフラーの如く表面が外気に大きく開放されている場合は、表面から熱が外気へ放散されるためマフラー自体の温度はそれほど上がらず、JIS2種の純チタン材でも支障なく使用できる。ところが、外気に直接開放されていない自動車用マフラー、あるいはバイク用マフラーでもエキゾーストパイプや複数のエキゾーストパイプが合流する部分に配置される部材は高温になり易いため、現状のJIS2種純チタン材よりも高耐熱性のチタン合金材が望まれる。
こうした観点からすると、既存のチタン合金のうちTi−3Al−2.5VやTi−6Al−4Vなどのチタン合金は有望なマフラー用素材になり得ると考えられる。ところが、マフラーに成形して組み立てるには素材を薄板化する必要があり、加工性にも優れたものでなければならないため、成形加工性に欠ける上記2種の既存チタン合金では要求を満たすことができない。
そこで本出願人は、優れた耐熱性や耐食性を有すると共に成形加工性にも優れたチタン合金の開発を期してかねてより研究を進めており、その成果の一環として先に特許文献1に記載のチタン合金を開発した。
このチタン合金は、Al含量を質量基準で0.5〜2.3%の範囲に定め、好ましくは金属組織をα相:90体積%以上、β相:10体積%以下とすることによって、チタン合金本来の軽量性や耐食性を留保しつつ耐熱性や耐酸化性を高めると共に、マフラー素材として重要な成形加工性を高めたもので、有用なマフラー素材として期待できる。
ところが本発明者らが更に研究を進めるうち、該特許文献1に開示したチタン合金は、耐食性(特に、耐すきま腐食性)や耐高温酸化性において尚改善の余地を残していることが確認された。即ちこのチタン合金は、成形加工性と高温強度を両立させるためAl含量を上記範囲に規定しているが、実用性を考慮するとAl含量を1.5%程度以上にするのが好ましいと考えられていた。ところがこのレベルのAl含量では、より厳しい腐食環境や高温酸化性雰囲気に曝されたときの耐久性に限界があり、今後の需要者の要望を考慮すると更なる改善が望まれる。
また本発明者らは、チタン合金に関する他の改善技術として特許文献2に開示の発明も提案している。この発明は、最近需要が急増している眼鏡用フレームを主たる用途として適用されるもので、Al含量は上記と同レベルの0.5〜2.3%であり、β安定化元素を実質的に含有させることなく、4%以下のGaや1%以下のSiを含有させることによって冷間加工性とロウ付け後の疲労特性を高めたものである。この発明では、Al含量の上限を2.3%に制限することによって安定した成形加工性を確保しつつ、Si添加による微細なTiシリサイドの生成によってロウ付け後の結晶粒の成長を抑制し、疲労強度を高めている。しかしこのチタン合金は、その主たる用途が眼鏡用フレームの如く常温環境下で使用されるものであり、マフラー用素材の如く苛酷な腐食環境や高温酸化性雰囲気で使用される本発明のチタン合金とは異種の合金に属する。
特開2001-234266号公報 特開2003-55725号公報
本発明者らは上記の様な公知技術を踏まえ、特に前掲の特許文献1として開示したチタン合金を更に進化させ、該チタン合金が有する特徴を備えた上で、特に耐高温酸化性と耐食性の一段と改善されたチタン合金を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る耐高温酸化性および耐食性に優れたチタン合金は、質量基準でAl:0.30〜1.50%と、Si:0.10〜1.0%を、好ましくはSi/Alの質量比で1/3以上含有するところに特徴を有している。本発明のチタン合金は、他の元素としてNb:0.1〜0.5%を含有するものであってもよく、更には、Ta,W,Mo,Cr,Zr,Hfよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むものであってもよいが、それら添加合金元素の含有量は、前記Al,Si,Nbを含めた総含有量で2.5%以下に抑えることが望ましい。
本発明のチタン合金は、それ自身で優れた耐高温酸化性を有しているが、該チタン合金の表面に、Al系めっきを形成すれば、高温耐酸化性を一段と優れたものにできるので好ましい。
かくして得られる本発明のチタン合金は、高温の酸化性雰囲気や苛酷な腐食環境に曝される様々の部材として有効に活用することができ、具体的には、自動車用や自動二輪用のマフラー[エキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプ、触媒マフラー、プリマフラー、サイレンサー(メインマフラー)など個々のマフラー部品などを含む]として極めて有用であり、更には船舶用マフラー、工場の排ガスダクト、煙突・煙道の内張り材などとしても有用である。
本発明のチタン合金は、従来のチタン合金に比べて相対的にAl含量を低減すると共に少量のSiやNbを含有させ、耐食性の更なる向上と、従来材を凌駕する卓越した耐高温酸化性を与えたもので、チタン合金マフラー材の品質を一段と高めると共に、マフラー部材以外の用途においても、例えば船舶用マフラー、工場の排ガスダクト、煙突・煙道の内張り材の如く、高温の苛酷な酸化性雰囲気や腐食性雰囲気に曝される様々の部材として有効に活用できる。
本発明者らは、上記背景技術で指摘した様な状況の下で、従来からマフラー用素材として使われてきた純チタンはもとより、前記特許文献1として提示したチタン合金をも凌駕する性能のチタン合金を開発すべく、性能評価基準に立ち返って検討を進めた。その理由は下記の通りである。
すなわち、前記特許文献1に開示の発明で耐酸化性の評価法として採用しているのは、700℃で20時間もしくは40時間保持した後の酸化増量であり、該酸化増量の大小によって耐酸化性の優劣を評価している。ところが、試験温度が700℃を超える高温になると酸化スケールの生成が激しくなり、厚く成長したスケールが剥離することでスケールロスが起こり、酸化による重量はむしろ減少するため、酸化増量で耐高温酸化性を評価することはできない。また、700℃以上の高温になると、酸化スケールの生成が激しくなると共に酸素が金属チタン中へ拡散侵入し、硬くて脆弱な酸素拡散層が形成される(酸素拡散層の酸素濃度があるレベルを超えると酸化スケールになる)が、酸化増量では該酸素拡散層の形成状態を把握できない。更に加えて、試験温度が700℃を超えると結晶粒の成長が顕著となり、これが進むと脆化や疲労強度の低下につながる。
従って耐酸化性の評価には、酸化増量やスケールロス、酸素拡散層の形成度合いに加えて、結晶粒の成長状態も考慮に入れる必要がある。
すなわち本発明が意図する苛酷な高温酸化性雰囲気を想定して、より実用にマッチした性能評価を行なうには、1)供試チタン合金板の穴空きに直結するスケールロスによる板厚減少、2)強度劣化に直結する酸素拡散層の形成状態、3)チタン合金板の脆化と疲労強度劣化に直結する結晶粒の粗大化、等を定量的に把握することのできる試験法を確立する必要がある。
そこで、従来の純チタン材や前記特許文献1に開示されたチタン合金などとの差別化を明確にするため、下記の高温耐酸化性評価法を定めた。
[耐スケールロス性]
厚さ約1mmの供試チタン合金板(長さ100mm、幅10mm)を、内部を空気組成に保った加熱炉に装入し、800℃で100時間保持した後、試料断面を光学顕微鏡で観察する。
光学顕微鏡での観察は、通常の断面ミクロ組織を観察するのと同様に、試料断面が観察できる向きに試料を樹脂に埋め込んだ後、試料断面を鏡面研磨する。そして、この様に処理した試験片の断面を光学顕微鏡で観察したときに、白っぽく見える部分、即ち金属の部分(表面に形成された酸化スケールに相当する部分は暗い灰色に見えるので、金属部分と酸化スケールの部分は明瞭に区別できる)の板厚(X1)を測定し、高温酸化前の板厚(X0)に対する減少量から下記式によって板厚減少率を求め、測定箇所10箇所の平均値として耐スケールロス性を評価する。
板厚減少率(%)=[(X0−X1)/X0]×100。
[耐酸素拡散層形成性]
厚さ約1mmの供試チタン合金板(長さ100mm、幅10mm)を、内部を空気組成に保った加熱炉に装入し、800℃で100時間保持した後、該供試板を中央部で切断し、該切断面における金属チタン合金部分の表面から10μmの深さ位置のマイクロビッカース硬さ(Hv)を、測定箇所10の平均値として求め、耐酸素拡散層形成性を評価する。得られたビッカース硬さHvの値が小さいほど耐酸素拡散層形成性は良好と判断できる。
なお図1は、幾つかのチタン合金板について、酸化性雰囲気下、800℃で100時間保持した後に切断し、酸化スケールと母材部の界面を試料表面として該表面からの深さとマイクロビッカース硬さの関係を示したグラフである。このグラフにおいて、ベース硬さ(非酸化部の硬さに相当する硬さ)よりも硬くなっている部分が酸素拡散層の厚さに相当し、該厚さの序列は、最表面から10μmの深さ位置におけるマイクロビッカース硬さと比較することで対比でき、該ビッカース硬さ(Hv)の値が大きいものほど酸素拡散層は深いと判断できる。
[耐結晶粒成長性]
厚さ約1mm、長さ100mm、幅10mmの供試チタン合金板を、内部を空気組成に保った加熱炉に装入し、800℃で100時間保持した後、該供試板を中央部で切断してから該切断面を倍率100倍の顕微鏡で写真撮影し、その写真を画像解析することによって結晶粒径を測定し、10箇所測定の平均値として平均結晶粒径を求める。
なお図2は、参考までにJIS2種純チタン板の耐高温酸化性試験前後の断面顕微鏡写真を示したもので、左側の写真は試験前(加熱前)のもの、中央は800℃で10時間加熱した後のもの、右側の写真は800℃で100時間加熱した後のものを夫々示している。この写真からも、試験前の平均結晶粒径に対し加熱試験後は結晶粒径がかなり生長していることが分かる。なお加熱時間が10時間から100時間に増えると肉厚はかなり薄くなっているが、該肉厚減量が前述したスケールロスに相当する。
[耐脆化性]
厚さ約1mmの供試チタン合金板から図3に示す寸法形状の試験片を切り出し、各試験片を、内部を空気組成に保った加熱炉に装入し、800℃で100時間保持した後、島津製作所製の引張り試験機「オートグラフAG−D精密万能試験機」を用いて引張り試験を行なう。得られる常温伸び(l1)と、未酸化状態での常温伸び(l0)から、[(l1/l0)×100(%)]により10回測定の平均値として算出する。
ところで、従来材として使用されている純チタンは耐食性に優れたものであるが、耐高温酸化性を高めるためAlやSiなどの合金元素を添加すると耐食性は低下するので、腐食の問題も顕在化してくる可能性がある。そこで本発明では、従来のマフラー材では評価されていなかった耐食性も評価項目に加えた。
すなわち寒冷地の道路では、路面凍結防止のため塩(塩化ナトリウムや塩化カルシウムなど)の散布が行なわれるが、該路面を走行する自動車や自動二輪のマフラー表面にはこれらの塩が付着する。この塩は水との共存状態下にマフラーの熱で加熱されるとすきま腐食を起こし、穴空き欠陥に発展する可能性がある。そこで、こうした問題にも対処すべく、下記2つの試験法によって耐食性を評価した。
[全面腐食試験]
マフラー内の腐食環境を模擬した促進試験として、供試チタン合金板を1%H2SO4水溶液の沸騰液に48時間浸漬した後、供試板の重量を測定する。そして、腐食試験前の供試板の重量から重量減を求め、これを10個のサンプルについて測定して平均し、この値と試験前の試料の表面積から1年間の腐蝕減量(mm/年)に換算して求める。
[すきま腐食試験]
塩と水の共存によるすきま腐食環境を模擬した促進試験として、供試チタン合金板を10%NaCl水溶液の沸騰液に240時間浸漬し、すきま腐食の発生確率を求める。なお試験は、マルチクレビスによりすきま部を32箇所作成し、このうち何箇所のすきま部で腐食が生じたかどうかによって発生確率を算出する(試験法の詳細は特許第2871867号参照)。
また、チタン合金を従来の純チタンに代わるマフラー素材として実用化する上で、強度と加工性が重要な要求特性になることは変わりがないので、これらの物性については、常法に従って引張り特性(引張り強さ、伸び)はJIS H4600,JIS Z2201,2241により、また成形加工性はエリクセン試験(JIS Z2247)によって評価した。
本発明者らは上記試験法を採用し、まずチタンへのAlとSiの好適含有量とその効果について検討した。
Alは、周知の通りチタン材に対し耐熱性を高める作用を有する合金元素であり、Al含有量を多くするにつれて耐熱性や耐高温酸化性(耐スケールロス性、耐酸素拡散層形成性、耐結晶粒成長性)は改善される。しかしその反面、Al含有量を多くするにつれて延性が大幅に低下してくると共に耐食性も低下してくる。こうした利害得失を考慮し、マフラー素材などとして必要な最低限の成形加工性と耐食性を確保しつつ、高レベルの耐熱性や高温耐酸化性を確保するには、Al含量を少なくとも0.30%以上含有させねばならず、好ましくは0.40%以上含有させるのがよく、上限は多くとも1.50%以下、好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.8%以下に抑えることが望ましい。
次に、Siがチタン合金の結晶粒の成長抑制に優れた効果を発揮し、疲労特性の向上に寄与することは既に確認されており、こうした作用は本発明においても有効に発揮される。しかし本発明において特筆すべきSiの添加効果は、Alとの複合添加によって高温強度の向上に寄与するほか、耐食性の低下を最小限に抑えつつ耐高温酸化性、特に耐スケールロス性や耐酸素拡散層形成性を高め、更には、結晶粒の成長抑制によって疲労特性や脆性の向上に寄与する点である。
こうしたSiの効果を有効に発揮させるには、Siを0.10%以上含有させる必要があり、好ましくは0.20%以上、更に好ましくは0.30%以上含有させるのがよい。しかしSi含量が多過ぎると、耐食性に及ぼす悪影響が軽視できなくなると共に成形性も劣化するので、多くとも1.0%以下に抑えるべきであり、好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.7%以下に抑えることが望ましい。
上記の様にSiは、Al添加による耐食性の低下を最小限に抑えつつAlにほぼ匹敵する耐高温特性の向上効果を発揮するもので、こうした言わばAl代替元素としての効果をより効果的に発揮させるには、Si含量をAl含量に対する質量比率で1/3以上にすることが望ましく、より好ましくは1/2以上、更に好ましくは4/5以上にするのがよい。但し該比率が大きくなり過ぎると、Alに期待される効果、特に耐高温特性向上効果が有効に発揮され難くなるので、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下に抑えるべきである。
上記の様に本発明のチタン合金は、マフラー用素材等として求められる成形加工性を確保しつつ特に優れた耐高温酸化性と耐食性を高めるため適量のAlとSiを含有させるところに特徴を有しており、その最も単純で原料コストや量産性も加味した好ましい合金組成はTi−(0.30〜1.50%)Al−(0.10〜1.0%)Siからなる3元系のチタン合金である。しかし、更に適量のNbを含有させると、耐食性に殆んど悪影響を及ぼすことなく耐スケールロス性や耐酸素拡散層形成性を一段と高めることができるので好ましい。こうしたNbの効果は、質量基準で0.10%以上、より好ましくは0.15%以上含有させることによって有効に発揮される。しかしNb含量が多過ぎると、耐食性や成形加工性に悪影響が現われてくる他、Nbは比較的高価な元素で多量添加は経済的にも不利であるので、0.5%以下、より好ましくは0.3%以下に抑えるのがよい。
上記以外の添加許容元素としては、Ta,W,Mo,Cr,Zr,Hf等が挙げられ、これらの元素は夫々単独で、あるいは2種以上を任意の組合せで併用することによって、耐スケールロス性や耐酸素拡散層形成性の向上に寄与する他、Siほどではないが結晶粒成長抑制作用も有しており、疲労特性や脆性を高める作用も有している。こうした効果は、これら各元素の少なくとも1種を総和で0.1%程度以上含有させることによって有効に発揮される。しかしこれら合金元素の含有量が多過ぎると、成形加工性に悪影響が現われてくるので、前記Al,Si,Nbの含有量を含めて総含有量で2.5%、より好ましくは2.0%を超えないように含有量を調整すべきである。
本発明に係るチタン合金の残部成分は実質的にチタンである。ここで「実質的に」とは、原料チタンの種類(チタン鉱石やスクラップ、精製法など)に由来する微量元素の混入を許容するという意味であり、微量元素としては、例えばO(酸素),Fe,H(水素),C(炭素),N(窒素)などが挙げられる。これらの元素は、前述した本発明の特性に悪影響を及ぼさない量である限り具体的な上限値は元素の種類によって変わってくるが、本発明では一応の許容含有量を、それぞれOは0.15%以下(より好ましくは0.12%以下),Feは0.20%以下(より好ましくは0.15%以下),Hは0.03%以下(より好ましくは0.015%以下),Cは0.08%以下(より好ましくは0.03%以下),Nは0.05%以下(より好ましくは0.03%以下)と定めている。
上記以外に混入が予測される元素としてNi,Cl,Mg,Mn,Na,Cu,V,Sn,Pb,Ru,Co,Sなどが挙げられ、これらの元素も、混入経路の如何を問わず、前述した特性(耐熱性、耐食性、成形加工性など)に実質的な悪影響を及ぼさない範囲で微量の混入が許容されるが、それぞれ概ね数百ppm程度以下に抑えるのがよい。
尚本発明のチタン合金は、前述の如く従来の純チタンに匹敵する冷間圧延性と成形加工性を有しているので、該合金を用いたマフラー用素材やマフラーの製法は純チタンに準じた方法を採用すればよく、例えば、所定の合金組成となる様に原料成分を調整して溶製しインゴットを作った後、常法に従って鍛造および熱間圧延の後焼鈍してから表面を脱スケールする。次いで所定厚さまで冷間圧延してから焼鈍し、得られるコイルをスリットしてフープを作成し、これを造管機で管状に連続成形しTIG溶接することによって素管を製造する。そしてこの素管を寸法・形状を整えた純チタンやチタン合金(好ましくは本発明のチタン合金)製の端板などと組み付けることでマフラー状に加工すればよい。
この間の熱延条件や冷延条件、焼鈍条件、シーム溶接条件などは、用いるチタン合金の成分組成などに応じてその都度適正に調整すればよい。
上記の様に本発明では、チタン中に配合するAlおよびSi含有量を特定し、あるいは更には適量のNbを含有せしめ、更には、Ta,W,Mo,Cr,Zr,Hfから選ばれる少なくとも1種を含有させることによって、優れた成形加工性を確保しつつ耐食性、耐高温酸化性(耐スケールロス性、酸素拡散層形成性、結晶粒成長抑制性)、耐熱性などを高めたところに特徴を有している。しかし、本発明に係るチタン合金製品の表面に耐高温酸化特性や耐食性の更に優れた表面処理を施しておくことは、マフラー用素材等として耐久寿命を更に高める上で有効である。
その様な保護皮膜として好ましいのは、溶融AlめっきやAl合金めっきである。溶融AlまたはAl合金めっきとして特に好ましいのは、AlまたはAlとSiの総含有量が90質量以上である耐熱性のAl合金めっきであり、その好ましい厚さは1μm以上、より好ましくは5μm以上である。なお、該Al系溶融めっきと基材チタン合金との界面には、例えばAl3Tiの如きAl−Ti系金属間化合物を介在させ、基材とめっき層との密着性を高めることが好ましい。
次に、本発明に係るチタン合金におけるAlとSiの含有率が引張り特性とエリクセン値(成形加工性)、耐食性および耐酸化性に及ぼす影響を、後述する実施例を含めて整理した図面によって説明する。
図4は、チタン合金中に含まれるAlとSiの量が引張り特性とエリクセン値に与える影響を示したグラフであり、図中、〇印で示される測定点に示した四角で囲った数値は伸び率(%)、( )で囲った数値はエリクセン値、単に数値で示したのは引張り強さ(MPa)を示している。尚、Al:0%,Si:0%の位置はJIS2種純チタンを意味する。
また、図面右側の縮小図に示した符号A,B,C,D,CD,CC,DDは、本発明で定めるクレーム要件との関係を領域として示した説明図で、右上がりの直線は「Si=1/3×Al」、領域AとBは、本発明で定める「Al=0.30〜1.50%」と「Si=0.10〜1.0%」を同時に満たす領域を示しており、領域Cは、AlとSiの一方の含有率は適切であるが他方の含有率が不足する比較材、領域Dは、AlとSiの一方の含有率は適切であるが他方の含有率が多過ぎる比較材、領域CDは、AlとSiの一方の含有率が不足すると共に他方の含有率は多過ぎる比較材、領域CCは、AlとSiの両方が規定範囲に満たない比較材、領域DDは、AlとSiの両方が規定範囲を超える比較材の領域である。
この図の各点に示した引張り強さ、伸び率、エリクセン値から総合的に解析すると、下記の傾向を読取ることができる。
即ち領域CCは、Al,Siの含有量がいずれも規定範囲に満たないためエリクセン値が高く、成形加工性については全く問題のない領域である。また領域Cは、Al,Siの一方の含有率は適切であるが他方が不足するもので、相対的にエリクセン値が高く成形性は良好である。領域Dは、Al,Siの一方の含有率は適切であるが他方が多過ぎるもので、相対的に高強度でエリクセン値が高く成形加工性が悪い。領域CDは、Al,Siの一方の含有率が過剰で他方の含有率が不足する領域であり、過剰成分に起因するエリクセン値の低下が顕著で成形加工性に欠ける。領域DDは、Al,Siの含有率がいずれも多過ぎる領域であり、強度が高過ぎてエリクセン値が低く、成形加工性が劣悪である。
これらに対し領域A,Bは本発明の規定要件を満たす領域であり、JIS2種純チタン(Al,Siが共にゼロ%)に比べると引張り強さがやや高く、伸び率とエリクセン値はやや低い値となっているが、この程度であれば実用上は純チタン並みの成形加工性を有するものと評価できる。
図5は、チタン合金中に含まれるAlとSiの量が耐食性に与える影響を整理して示したグラフであり、図中、〇印で示される測定点に示した四角で囲った数値は全面腐食速度(mm/年)、( )で囲った数値はすきま腐食発生確率(%)を示している。なおこれらの試験条件は前述した通りであり、いずれも実使用条件よりも厳しい条件での試験であって、実際の使用条件で図示したレベルの腐食が起こるわけではない。
また、図面右側の縮小図に示した符号A,B,C,D、CD,CC,DDは、前記図4に示した縮小図で説明したのと同じである。
この図の各点に示した全面腐食速度とすきま腐食発生確率から総合的に解析すると、下記の傾向を読取ることができる。
領域CCは、Al,Siの含有量がいずれも規定範囲に満たない領域であり、全面腐食速度およびすきま腐食発生確率ともにJIS2種純チタン材とほぼ同レベルの値が得られる。また領域Cは、Al,Siのうち1方の含有率は適切であるが他方の含有率が不足するもので、全面腐食速度およびすきま腐食発生確率ともに、他の領域に比べて耐食性の低下度合いは少ない。また領域Dおよび領域DDは、Al,Siの1方もしくは双方が多過ぎる領域であり、全面腐食速度およびすきま腐食発生確率共に、他の領域に比べて高い値を示す。領域CDは、Al,Siのいずれか一方の含有率は不足するが他方の含有率が多過ぎる領域であり、過剰合金元素の影響が強く現われて、全面腐食速度およびすきま腐食発生確率がともに不良である。
これらに対し領域A,Bは、本発明の規定要件を満たす好適領域であり、領域CCやCに比べると耐食性は劣るものの、他の領域に比べると劣化度合いは少なく抑えられている。
またこの図より、チタンにAlとSiをそれぞれ単独で添加した場合、Alの方が耐食性の劣化度合いは大きく、また同じ総含有量で比較すると、Alを単独で添加する場合よりもAlとSiを複合添加した場合の方が、全面腐食速度およびすきま腐食発生確率共に増加傾向は明らかに低下している。
ちなみに図6,7は、Alを単独で添加した場合と、AlとSiを複合添加した場合について、総添加合金元素量が全面腐食速度とすきま腐食発生確率に与える影響を整理して示したグラフである。これらの図からも明らかな様に、Al単独添加では、全面腐食速度、すきま腐食発生確率ともにほぼ直線的に高まっているのに対し、Alの一部をSiに置換し、且つその置換量を増大するにつれて、腐食速度、腐食発生確率ともに上昇傾向は明らかに抑えられる傾向を確認できる。これらの傾向から、Alの一部をSiに置換することで耐食性の劣化を最小限に抑え得ることが確認できる。
次に図8は、チタン合金中に含まれるAlとSiの量が耐高温酸化性(耐スケールロス性、耐酸素拡散層形成性、耐結晶粒成長性)に与える影響を整理して示したグラフであり、図中、各測定点に示した〇印、斜線〇印および●印は、前掲の耐スケールロス性試験で得られた板厚減少率(X)が1%未満、1%以上5%未満、5%以上のものを表わしている。また各〇印の部分に数字で示したのは耐酸素拡散層形成性を示すもので、800℃×100時間酸化処理した後の最表面から10μmの深さにおける断面ビッカース硬さの値、四角で囲った数値は耐結晶粒成長性を示すもので、同じく800℃×100時間酸化処理後の平均結晶粒径の値、( )で囲った数値は耐脆化性を示すもので、同じく800℃×100時間酸化処理後の常温伸び率の低下量(%)を表わしている。
また、図面右側の縮小図に示した符号A,B,C,D、CD,CC,DDは、前記図4に示した縮小図で説明したのと同じである。
この図に示した耐スケールロス性、耐酸素拡散層形成性、耐結晶粒成長性、耐脆化性から総合的に解析すると、下記の傾向を読取ることができる。
領域DDは、耐高温酸化性の向上に有効なAl,Siの含有量がいずれも多過ぎる領域であり、上記4特性の何れも優れた値となる。また領域CCは、逆にAl,Siの含有量がいずれも不足するため、上記4特性の何れの値も低く、満足な耐高温酸化性が得られない。また領域Cは、Al,Siの一方の含有率は適切であるが他方の含有率が不足するため4特性の何れも相対的に低く、満足な耐高温酸化性が得られない。領域Dは、Al,Siの一方の含有率は適切であるが他方の含有率が多過ぎる領域で、耐高温酸化性は良好である。領域CDは、Al,Siの一方の含有率が不足すると共に他方の含有率は多過ぎる領域であり、過剰分のAlまたはSiの効果でそれなりの耐高温酸化性を得ることができる。
これらに対し領域A,Bは適量のAlとSiを含む実施例領域であり、領域Dほどではないが領域CCやCに比べると何れも優れた値を示している。これらの中でも領域Aは、Si含量がAl含量の1/3以上である好適実施例であり、領域Bよりも明らかに優れた耐高温酸化特性を示している。
上記図4〜8を総合的に観察すると、下記の傾向を確認できる。
本発明者らが先に開発した相対的にAl含量を抑えたTi−Al合金に適量のSiを添加し、好ましくはAlの一部に置き代えて適量のSiを添加することで、公知のチタン合金では実施されたことのない厳しい耐高温酸化性評価試験においても卓越した耐高温酸化性と耐食性を示すチタン合金を得ることができる。しかも、全体としての合金元素の含有量を最小限に抑えることで、実用上、純チタン材と同程度の加工性も保障できる。更に、総添加合金元素量で比較すると、Alを単独で添加する場合よりもSiを併用することで耐食性の低下も最小限に抑えることができ、結果的に耐高温酸化性と耐食性を両立しつつ、成形加工性にも優れたチタン合金を得ることが可能となる。
また後述する実施例でも明らかにする如く、更に他の元素として適量のNbを添加し、あるいは更にTa,W,Mo,Cr,Zr,Hfの1種以上を適量複合添加することで、耐高温酸化性と耐食性および成形加工性の全てにおいてバランスの取れたチタン合金を得ることが可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明の構成と作用効果をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受ける訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
原料としてJIS1種純チタン板と所定の添加元素を使用し、真空ボタン溶解炉によって表1に示す成分組成のチタン合金鋳塊(100〜200g)を製造し、これを1000℃で2時間加熱した後、厚さ6mmまで熱間圧延した。次いで、1000℃で20分間加熱した後、引き続いて840℃で1時間加熱し、その後、直ちに6mmから厚さ2.5mmまで熱間圧延を行なった。
得られた熱延板を800℃で20分間焼鈍し、空冷した後、表面の酸化スケール除去のため片面0.5mmの平面研削を行い、更に冷間圧延により厚さ約1mmの供試チタン合金板を作製した。更に、最終仕上げとして650℃×3時間(均熱時間)の真空焼鈍を行った。
得られた各供試板について、引張り特性と加工性を評価するため、常温(25℃)および高温(600℃、800℃)での引張試験(同前)とエリクセン試験(同前)を行った。尚この試験では、引張試験の上限温度を800℃としているが、本発明のチタン合金の使用温度が800℃以下に制限されるものでないことは言うまでもない。
また、得られた各供試板について、耐食性を全面腐食試験とすきま腐食試験によって評価すると共に、耐高温酸化性を評価した。なお全面腐食試験は、沸騰した1%H2SO4に48時間浸漬したときの重量変化から腐食速度を算出した。この試験環境はマフラー内の腐食環境を模擬したものである。またすきま腐食試験は、マルチクレビスにより試験片上にすきま部を32個作製し、沸騰した10%NaCl水溶液に240時間浸漬した後で、32個のすきまのうち何個ですきま腐食が発生したかにより、すきま腐食発生確率を算出した。この腐食環境は、マフラー外の環境を模擬したものである。なお、これらの腐食試験は実使用環境よりも厳しい条件で比較しており、実使用において同レベルの腐食が起こることを意味するものではない。
また耐高温酸化性評価法のうち、耐スケールロス性は800℃で100時間酸化させた前後の板厚減少率で評価した。耐酸素拡散層形成性は、前述した如く800℃で100時間酸化させた後、最表面から約10μmの深さにおけるマイクロビッカース硬さを測定することで評価した。耐結晶粒成長性は、800℃で100時間酸化した後の結晶粒径を測定することで評価した。耐脆化性は、[800℃で100時間酸化した後の常温伸び/未酸化状態での常温伸び]×100(%)を算出することで評価した。
なお、これら耐酸化性の評価も試験温度を800℃に設定しているが、これは本発明材の使用温度を800℃以下に限定している訳ではない。結果を表1,2に示す。
表1,2から次の様に解析できる。
No.1〜4は適正量のAlとSiを含む本発明のチタン合金であり、例えばNo.10,11に示すAl含量が相対的に多い従来タイプの耐熱、耐酸化性チタン合金に比べて高い伸びとエリクセン値を有し、優れた加工性を有しており、しかも純チタンに近い耐食性を有している。更に、純チタンに比べて耐スケールロス性の指標である板厚減少割合が小さく、耐酸素拡散層形成性の指標である最表面近傍の断面硬さも低い。更に、800℃、100時間保持後の結晶粒径の成長も小さく、且つ、耐脆化性を示す指標である[800℃、100時間保持後の常温伸び/常温伸び]の値も純チタンに比べると格段に高い値を示しており、優れた耐脆化性を有していることが分かる。
これに対しNo.6〜8は、Alの単独添加でSiが含まれていないため高温強度が不足気味であり、特に耐高温酸化性(耐スケールロス性、耐酸素拡散層形成性、耐結晶粒成長性、耐脆化性)がNo.1〜4のチタン合金材に比べて劣悪である。No.9は、Alと共にSiが含まれているもののその量が少ないため、No.1〜4のチタン合金材に比べると、耐高温酸化性(耐スケールロス性、耐酸素拡散層形成性、耐結晶粒成長性、耐脆化性)も悪い。
No.10,11は、Alを含めた添加合金元素量が相対的に多い従来タイプのTi−Al系合金であり、添加合金元素量が多いため耐高温酸化性は良好であるが、伸び率およびエリクセン値が低くて成形加工性が劣悪であり、且つ耐食性も悪い。
実施例2
前記実施例1と同様にして、表3に示す成分組成のチタン合金鋳塊を製造した後、同様の手順で熱間圧延を行い、焼鈍、空冷、酸化スケール除去のための平面研削、更に冷間圧延を行なって厚さ約1mmの供試チタン板を作製し、最終仕上げとして650℃×3時間(均熱時間)の真空焼鈍を行った。
得られた各供試板について、実施例1と同様にして引張り試験、エリクセン試験、耐食性試験および耐高温酸化性試験を行い、結果を表3,4に示した。
表3,4において、No.1〜14(但し、No.10を除く)は本発明の規定要件を満たす実施例であり、成形加工性、耐食性、耐高温酸化性の全てにおいてバランスの取れた特性が得られている。これに対しNo.10は、Al含量が下限値でSi含量が不足する比較材であり、成形加工性や耐食性は良好であるものの、特に耐高温酸化性のうち耐酸素拡散層形成性と耐結晶粒成長性が悪い。なおNo.15の純チタン材とNo.16〜20のチタン合金材は、前記実施例1の表1,2に示したNo.5〜11に相当するもので、何れも総合的にみると本発明の目的にそぐわない。
実施例3
前記実施例1と同様にして、表5に示す成分組成のチタン合金インゴットを製造した後、同様の手順で熱間圧延を行い、焼鈍、空冷、酸化スケール除去のための平面研削、更に冷間圧延を行なって厚さ約1mmの純チタン板を作製し、最終仕上げとして650℃×3時間(均熱時間)の真空焼鈍を行った。
得られた各供試板について、実施例1と同様にして引張り試験、エリクセン試験、耐食性試験および耐高温酸化性試験を行い、結果を表5,6に示した。
これらのチタン合金は、Al,Siに加えてNbを添加することによる効果を確認するために行なったものであり、AlやSiほどにはNb添加による顕著な効果は認められないが、成形加工性にそれほど悪影響を及ぼすことなく耐高温酸化性、特に耐酸素拡散層形成性を高める効果があることを確認できる。
実施例4
前記実施例1と同様にして、表7に示す成分組成のチタン合金鋳塊を製造した後、同様の手順で熱間圧延を行い、焼鈍、空冷、酸化スケール除去のための平面研削、更に冷間圧延を行なって厚さ約1mmの純チタン板を作製し、最終仕上げとして650℃×3時間(均熱時間)の真空焼鈍を行った。
得られた各供試板について、実施例1と同様にして引張り試験、エリクセン試験、耐食性試験および耐高温酸化性試験を行い、結果を表7,8に示した。
これらのチタン合金は、Al,Si,Nbに加えてTa,W,Mo.Cr,Zr,Hfを添加することによる効果を確認するために行なったものであり、いずれの元素も引張り強さを僅かに高めて伸びを低下させる傾向がみられるが、その程度は極僅かであり、耐高温酸化性のうち特に耐酸素拡散層形成性と耐脆化性を高める作用が認められる。
実施例5
前記実施例2に示した表3のNo.4で得たTi−Al−Si合金板に、下記構成の溶融Alめっき処理を施し、厚さが約2μmの耐酸化性皮膜を形成した後、実施例1と同様にして引張り試験、エリクセン試験および耐高温酸化性試験を行い、結果を表9,10に示した。
溶融Alめっき処理:700℃に加熱溶融したAl溶湯(Al含量;97%以上)に、各供試チタン合金板を10分間浸漬してから引き揚げ、平均膜厚が約2μmのAlめっき層を形成した。
表9,10からも明らかな様に、本発明の規定要件を満たすTi−Al−Si合金板の表面に、溶融Alめっき皮膜を形成すると、引張り特性、すなわち成形加工性に殆んど悪影響を及ぼすことなく、耐高温酸化性、特に耐酸素拡散層形成性や耐脆化性を有意に改善できることが分かる。
[マフラーへの成形加工]
消耗電極式アーク溶解炉を用いてTi−0.5%Al−0.6%Si合金を溶製し、1トンのインゴットを製造した。これを常法に従って鍛造→熱間圧延→焼鈍→脱スケール→冷間圧延→真空焼鈍の工程を経て板厚0.75mmのコイルを製造した。この実験で、Ti−0.5%Al−0.6%Si合金は、JIS2種純チタンの製造工程を実質的にそのまま適用して薄板状に加工できた。
得られたコイルを使用し、外径50.8mmおよび60.5mmの溶接管を製造すると共に、該コイルから切り出したチタン板と溶接し、エキゾーストパイプ、サイレンサーパイプの外筒および内装の一部に用いたバイクマフラーを製造したところ、マフラー組み立てに際して何らの問題も生じなかった。またこのマフラーは、排気管が特に高温となり既存のチタン合金マフラーでは高温酸化によりクラックが入ることが確認されている車種に適用した実車評価試験でも、耐食性や耐高温酸化性に何らのトラブルも生じなかった。
Ti−Al合金における最表面からの酸素拡散層深さと当該深さ位置でのビッカース硬さ(Hv)の関係を示すグラフである。 JIS2種純チタンを用いた高温酸化処理前の肉厚と断面金属組織(結晶粒)と、800℃で10時間もしくは100時間処理した後の肉厚(耐スケールロス性)と断面金属組織(結晶粒)を対比して示す顕微鏡写真である。 耐高温酸化性の評価試験に用いた試験片の寸法形状を示す説明図である。 Ti合金中のAlとSiの含有量が引張り特性とエリクセン値に与える影響を示すグラフである。 Ti合金中のAlとSiの含有量が耐食性(全面腐食速度、すきま腐食発生確率)に与える影響を示すグラフである。 Ti合金へのAl含有量(添加量)とSiを含めた総含有量が全面腐食速度に与える影響を示すグラフである。 Ti合金へのAl含有量とSiを含めた総含有量がすきま腐食発生確率に与える影響を示すグラフである。 Ti合金中のAlとSiの含有量が耐高温酸化性(耐スケールロス性、耐酸素拡散層形成性、耐結晶粒成長性、耐脆化性)に与える影響を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 質量基準でAl:0.30〜1.50%と、Si:0.10〜1.0%を含有し、残部がチタン及び不可避的不純物からなり、自動車用もしくは自動二輪用のマフラー材として使用されるものであることを特徴とする耐高温酸化性および耐食性に優れたチタン合金。
  2. Si/Alが質量比で1/3以上である請求項1に記載のチタン合金。
  3. 他の元素として、Nb:0.1〜0.5%を含有する請求項1または2に記載のチタン合金。
  4. 他の元素としてTa,W,Mo,Cr,Zr,Hfよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、前記AlおよびSiを含めた添加合金元素の総和が2.5%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のチタン合金。
  5. 表面に、Al系めっきが施されたものである請求項1〜4のいずれかに記載のチタン合金。
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