JP2003055725A - 冷間加工性およびロウ付け後の疲労強度に優れたチタン合金 - Google Patents
冷間加工性およびロウ付け後の疲労強度に優れたチタン合金Info
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Abstract
ずれにも優れ、メガネ用フレームや自転車用フレーム等
の素材として有用なチタン合金を提供する。 【解決手段】 本発明のチタン合金は、Al:0.5〜
2.3質量%を含有し、必要によりGa:4質量%以下
やSi:1質量%以下を含有し、且つβ安定化元素を実
質的に含有しないものである。
Description
や自転車用フレーム等の素材として有用なチタン合金に
関し、殊に冷間加工性およびロウ付け後の疲労強度の両
特性に優れたチタン合金に関するものである。
化もなく、しかも(強度/比重)比が高いことから、メ
ガネ用フレームを始めとして、時計、カメラ等様々な分
野で使用されている。これらの用途のうち、メガネ用フ
レームや自転車用フレーム等に使用される場合には、冷
間加工性が良好であると共に優れたロウ付け性が要求さ
れることになる。
使用されるチタン素材としては、冷間加工性を考慮して
JIS−1種やJIS−2種等の工業用純チタンが汎用
されている。しかしながら、これらの純チタンでは冷間
加工性については良好であるものの、ロウ付け性につい
ては必ずしも良好であるとは言えない。即ち、メガネ用
フレームをロウ付けによって製作するときには、Ti−
Zr−Ni−Cuロウ等のロウ材(融点:850〜90
0℃程度)を用いてロウ付けされることになるが、ロウ
付け部分近傍のフレーム本体は、900℃程度の高温に
曝されることになり、当該本体は結晶粒径の粗大化に起
因して脆くなってしまい、効果的なロウ付けが行なえな
いという問題がある。特に、こうしたロウ付け作業を行
なった場合には、ロウ付け時の熱に曝された部分(熱影
響部)において、疲労強度が低下するという問題があ
る。
せるという観点から、例えば特開昭60−9847号に
は、チタンにAlとV等の合金成分を含有させたものが
開示されている。この技術では、チタンに0.1〜4質
量%のAlと0.1〜3.5質量%のVを含有させるこ
とによって、純チタンの有する機械的強度やロウ付け時
の熱(750℃程度)による軟化・変形等の欠点を解消
するものである。また、この技術においては、Vは冷間
加工性を改善するという観点から上記の程度含有される
ものである。
けにおける再結晶や焼鈍での軟化度合いによって「ロウ
付け性」を評価しており、ロウ付け後の疲労強度につい
ては何ら考慮されておらず、こうした特性については必
ずしも良好であるとは言えない。特に、近年では、ロウ
付け部の接着強度の改善の観点から、比較的融点の高い
(900℃程度)ロウ材が用いられるのであるが、上記
の様な技術ではこうした高温でロウ付けした後の疲労強
度が著しく劣化することがある。
ム等では、その素材の特性として冷間加工性とロウ付け
性後の疲労強度のいずれも優れていることが要求される
が、これまで提案されているチタン合金では、こうした
要求特性のいずれも満足するものは存在しないのが実状
である。
の下になされたものであって、その目的は、冷間加工性
およびロウ付け後の疲労強度のいずれにも優れ、メガネ
用フレームや自転車用フレーム等の素材として有用なチ
タン合金を提供することにある。
発明のチタン合金とは、Al:0.5〜2.3質量%を
含有し、且つβ安定化元素を実質的に含有しない点に要
旨を有するものである。本発明のチタン合金には、必要
によって(1)Ga:4質量%以下(0質量%を含まな
い)、(2)Si:1質量%以下(0質量%を含まな
い)等を含有することも有用である。
るために、特にチタン材に対して耐熱性向上に有効であ
るとされているAlに着目して、その添加作用について
様々な角度から検討した。その結果、所定量のAlを含
有させ、且つβ安定化元素を実質的に含まないチタン合
金では、冷間加工性と共にロウ付け後の疲労強度も優れ
たものとなることを見出し、本発明を完成した。
金におけるAl含有量が冷間圧延性に及ぼす影響につい
て調査した。図1は、冷間圧延で耳割れが発生するまで
の限界圧下率をAl含有量との関係で示したグラフであ
る。この結果から明らかなように、Al含有量が2.3
質量%以下の領域では、75%の冷間圧延を行なっても
耳割れは発生せず、十分な圧延性が補償されることが分
かる。
を超えると明らかに限界圧下率の低下が認められるよう
になり、5質量%以上になると耳割ればかりでなく板幅
全体に亘ってクラックが発生する。そして冷間加工率で
75%を確保できれば、現在メガネ用フレールの素材と
して汎用されているJIS2種純チタンと同様の工程で
フレームを成形することができ、製造コストの実質的な
上昇も避けられることから、冷間加工性の面からしてA
l含有量を2.3質量%以下に抑えることが必須とな
る。尚、冷間加工性の観点からして、好ましい上限は2
質量%である。
け後における熱影響部の疲労強度(以下、単に「疲労強
度」と呼ぶことがある)の関係についても調査した。こ
の疲労強度については、900℃で2分間加熱したとき
に母材結晶粒が100μmを超える程度の粗大化が生じ
るか否かによってその良否を判断した。即ち、700℃
程度の加熱であれば疲労強度の劣化はあまり問題になら
ないが、900℃という変態点付近で加熱したときに結
晶粒が急激に成長すれば、疲労強度に悪影響を及ぼすこ
とが予測されることから、この結晶粒の粗大化の有無に
よって疲労強度の良否を判断したのである。その結果、
所定量のAlを含有させたTi−Al合金では、Al含
有量が増加するにつれて結晶粒の粗大化が阻止されて、
良好な疲労強度性が発揮されることが判明したのであ
る。
果が得られた理由については、次の様に考えることがで
きる。即ち、Alはα安定化元素であり、Alを含有さ
せることによってチタン合金のβ変態点を高くすること
ができ、これによって900℃の高温においても結晶粒
の粗大化が生じることなく、優れた疲労強度が発揮され
るものと考えられる。
場合には、チタン合金の組織はα+βの2相組織になっ
ており、2相が互いに結晶粒成長を抑制するので、急激
な粒成長が起こることはない。しかしながら、β変態点
よりも高い温度でロウ付けが行われると、β単相組織で
の加熱になって急激な結晶粒成長が起こることになる。
こうした結晶粒成長が発生すると、粗大結晶粒の部分は
強度が極端に低下するので、メガネフレーム等の製品に
したときには、ここに変形が集中することになる。そし
て、母材強度の高い材料ほど、この傾向が顕著になる。
また、結晶粒の粗大化が生じた部分は、ロウ付けの際に
水素を吸収すると共に、メガネフレームの作製に不可欠
なメッキ処理の際にも水素を吸収するのでチタン合金の
脆化が生じることになる。上記の様な変形集中と水素吸
収によって、結晶粒が粗大化した組織を含むチタン合金
では疲労強度が劣化することになる。
強度を良好に維持するためには、チタン合金のβ変態点
を高くすることが有効であり、本発明のチタン合金では
こうした観点から所定量のAlを含有させるものであ
る。但し、α安定化元素であればいずれの元素でも良い
というわけではなく、冷間加工性を劣化させないことも
必要である(後述する、O,C,N等)。こうした観点
からして、Alが本発明で目的とする特性をチタン合金
に付与する上で最適な元素であると考えられる。また、
Alによる上記の効果(β変態点上昇効果)を発揮させ
るためには、その含有量は少なくとも0.5質量%以上
とする必要があるが、好ましくは1.0質量%以上とす
るのが良い。
V,Cr,Mo等のβ安定化元素はチタン合金のβ変態
点を下げて本発明の効果を低減させる好ましくない元素
として実質的に含有しないものである。尚、「実質的に
含有しない」とは、製造工程上、不可避的に混入してく
る以外は含有しないことを意味する。
等の素材として求められる冷間加工性と疲労強度を確保
するための要件として、チタンに0.5〜2.3質量%
のAlを含有させ、且つβ安定化元素を実質的に含有し
ないところに特徴を有しており、その最も単純で原料コ
ストや量産性を考慮した好ましい合金組成は、Ti−
(0.5〜2.3質量%)Alからなる2元系のチタン
合金であるが、必要によって(1)Ga:4質量%以下
(0質量%を含まない)、(2)Si:1質量%以下
(0質量%を含まない)等を含有させることも有効であ
る。これらの元素を含有させるときの範囲限定理由は次
の通りである。
い) Gaは、Alと同様にα相を安定化させる作用を発揮
し、チタン合金のβ変態点を高くすることによって疲労
強度を改善するのに有用な元素である。こうした効果
は、Gaの含有量が多くなるほど大きくなるが、過剰に
なれば冷間加工性が劣化するので、その含有量は4質量
%以下にすべきである。尚、冷間加工性の観点からし
て、Ga含有量の好ましい上限は2質量%である。
い) Siは、Tiとの化合物(TiSi2,TiSi等)を
微細に析出させる作用を発揮し、この析出物が結晶粒界
の移動を阻害して結晶成長を抑制するので、疲労強度が
良好になる。こうした効果は、Siの含有量が多くなれ
ばなるほど大きくなるが、過剰になれば冷間加工性が劣
化するので、その含有量は1質量%以下にすべきであ
る。尚、冷間加工性の観点からして、Si含有量の好ま
しい上限は0.6質量%である。
よび好ましい合金元素は上記の通りであり、残部は実質
的にチタンからなるものである。尚、「実質的にチタ
ン」とは、本発明のチタン合金材にはチタン以外にもそ
の特性を阻害しない程度の他の成分(許容成分)をも含
み得るものであり、こうした許容成分としては、例えば
Sn,Zr,Hf等の元素や、O,N,C等の不可避不
純物が挙げられる。
はいわゆる中性元素と呼ばれているものであり、チタン
合金材のβ変態点を下げる様な不都合もなく、またその
添加効果も明確には認められないものであるが、過剰に
含有してくると冷間加工性を劣化させるので、その含有
量は総合計(1種または2種以上)で4質量%以下に抑
えるのが良い。また、O,N,C等は原料に由来して不
可避的に含まれてくる不純物であり、Tiに対しては基
本的にはα安定化元素(即ち、β変態点を上げる元素)
として作用するが、これらの元素は侵入型固溶体を形成
するので、少量含有するだけでチタン合金の強度を上昇
させて冷間加工性を劣化させるので、その含有量は合計
で0.3質量%以下に抑えるべきである。
あり、その加工性はα相の加工性に依存することにな
る。前述の如く、Alはα安定化元素であり、Tiのα
相に優先的に固溶し、α相を固溶強化することになる。
従って、Alの含有量を増加させていくと、α合金は硬
化していき加工性も劣化することになる。一方、Alを
含有させることによって、α合金のβ変態点を上昇さ
せ、ロウ付け時における結晶粒の粗大化を防止して疲労
強度を向上させるという効果も発揮されるのである。即
ち、本発明のチタン合金では、冷間加工性を損なわない
程度にAlを含有させることによって、良好な冷間加工
性と疲労強度を確保したものである。
っては、純チタンに準じた方法を採用すれば良く、例え
ば、所定の合金組成となる様に原料成分を調整して溶製
した後、常法に従って鋳造し、鍛造および熱間圧延の
後、焼鈍してから表面を脱スケールし、次いで所定の厚
みまで冷間圧延してから成形加工してメガネ用フレーム
等の素材とする。そして、この間の熱延条件や冷延条
件、焼鈍条件等は、用いるチタン合金の成分組成等に応
じてその都度適性に調整すれば良い。
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
が0〜6質量%のTi−Alを溶製し、250gの小型
インゴットを製造し、各インゴットを用いて図2に示す
工程を経て厚さ:1mmの薄板に加工した。
厚さ(圧延率;75%)まで圧延することとし、途中で
耳割れが発生した合金については、その時点で圧延を中
断した。尚、冷間圧延前に行なわれる熱間圧延の温度や
焼鈍温度については、予備実験で確認した最適条件を採
用した(前記図2参照)。この実験で得た限界圧下率に
及ぼすAl含有量の影響を示したのが前記図1である。
このとき、同様の製法で既存合金であるTi−3Al−
2.5V合金薄板も試作したが、このものは、冷間圧下
率55%で耳割れを起こすことが確認された。
板材を製作し、冷間加工性と疲労強度を評価した。この
とき、熱間圧延温度および焼鈍温度については、合金の
種類に応じて適当な温度を選んだ。
m〜1mmへの冷間圧延で耳割れが発生しなければ、冷
間加工性は良好であると判断した。また、同時に引張り
特性(強度、伸び)についても調査した。
部的に900℃で1分間加熱した棒材を試料として回転
曲げ疲労試験を行ない、疲れ限度(応力繰り返し数:1
07回のときの応力振幅)によって評価した。このと
き、ミクロ組織についても観察し、加熱後の平均粒径が
100μmを超える場合を結晶粒の粗大化ありと判断し
た。これらの結果を一括して、下記表1に示す。
足するチタン合金では、冷間加工性に優れると共に、加
熱時における結晶粒の粗大化が抑制されて優れた疲労強
度を発揮していることが分かる。
金の板材を製作し、その冷間加工性および疲労強度につ
いて実施例1、2と同様にして評価した。このとき、熱
間圧延温度および焼鈍温度については、合金の種類に応
じて適当な温度を選んだ。これらの結果を一括して下記
表2に示すが、本発明で規定する要件を満足するチタン
合金では、冷間加工性および疲労強度のいずれも優れて
いることが分かる。
タンに特定量のAlを含有させ、或いは更に他の合金元
素を含み、実質的にβ安定化元素を含有しないもので
は、純チタンに匹敵する優れた冷間加工性を有すると共
に、ロウ付け後の疲労強度にも優れたチタン合金を提供
し得ることになった。従って、このチタン合金は、メガ
ネ用フレームや自転車用フレーム等の素材として有用で
ある。
率の関係を示すグラフである。
説明図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 Al:0.5〜2.3質量%を含有し、
且つβ安定化元素を実質的に含有しないことを特徴とす
る冷間加工性およびロウ付け後の疲労強度に優れたチタ
ン合金。 - 【請求項2】 Ga:4質量%以下(0質量%を含まな
い)を含有するものである請求項1に記載のチタン合
金。 - 【請求項3】 Si:1質量%以下(0質量%を含まな
い)を含有するものである請求項1または2に記載のチ
タン合金。
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JP2001246729A JP4202626B2 (ja) | 2001-08-15 | 2001-08-15 | 冷間加工性およびロウ付け後の疲労強度に優れたメガネフレーム用チタン合金 |
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-
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- 2001-08-15 JP JP2001246729A patent/JP4202626B2/ja not_active Expired - Fee Related
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