JP5807503B2 - 耐熱チタン合金 - Google Patents
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(a)チタン合金の耐酸化性の向上には、ZrおよびNbの少なくとも一方を添加することが有効であり、かつ、これらの元素は単独添加より、複合添加の方がより耐酸化性に優れる。
(b)ZrおよびNbはいずれもチタンに対して全率固溶型元素であり、チタンに含有させても他の合金元素よりも加工性の劣化が少なく、両方を複合添加することで優れた加工性と耐酸化性を有するチタン合金を得ることができる。
(c)ZrおよびNbの少なくとも一方を添加したチタン合金に、SiおよびAlを添加すると、耐酸化性を向上させることができるものの加工性が大きく低下する。しかし、SiおよびAlをZrおよびNbよりも少量添加することで、加工性の低下を抑制し、耐酸化性を向上させることができる。すなわち、SiおよびAlは、ZrおよびNbの補助的な役割を果たす元素として含有させることができる。
(d)FeおよびOはTi−Zr−Nb系チタン合金の加工性を大きく劣化させる。しかし、FeおよびOの含有率を所定値以下にすることにより、十分な加工性を確保することが可能である。
1−1.実験方法
種々の合金元素を含有するチタン合金の小型試験片をアーク溶解にて作製した。この小型試験片を熱間圧延して得られた熱延板を焼鈍し、脱スケールを施した後、冷間圧延し、仕上げ焼鈍を実施して、厚さ1mmの薄板を製造した。
単独添加:Zr、Nb、SiおよびAlのそれぞれを、0.3%、0.5%、1.0%または2.0%
複合添加1(ZrおよびNb)
Zr:0.3%、0.5%、1.0%または2.0%に対して、Nb:0.3%、0.5%、1.0%または2.0%
複合添加2(Zr、NbおよびO)
Zr:0.3%およびO:0.12%に対して、Nb:0.3%、0.5%または1.0%
複合添加3(Zr、NbおよびFe)
Zr:0.3%およびFe:0.13%に対して、Nb:0.3%、0.5%または1.0%
1−2−1.単独添加の場合
図1は、単独添加の場合の合金元素含有率と引張試験による伸びとの関係を示す図である。同図から、これらの元素の含有率を増加させた場合の伸びの低下は、ZrおよびNbでは小さいが、SiおよびAlでは大きいことがわかった。
図3は、ZrおよびNbを複合添加した場合の合金元素含有率と引張試験による伸びとの関係を示す図である。同図から、ZrおよびNbは、複合添加の場合も前記図1に示す単独添加の場合と同様に、含有率を増加させた場合の伸びの低下が小さいことがわかった。さらに、FeおよびOの含有率がそれぞれ0.1%を超えると伸びが大きく低下することがわかった。
以上の基礎実験および後述する実施例に示す試験等、本発明者らの検討の結果に基づき、本発明のチタン合金の組成を決定した。以下、本発明のチタン合金の組成の範囲および限定理由について説明する。
ZrおよびNb:それぞれ0.1%以上1.0%以下
工業的にNbを含有するチタン合金を製造する場合、偏析を抑制するために粉末状のNbが多くの場合に使用される。しかし、この粉末状のNbには不純物が含まれており、多く添加すると、特にO含有率の増加につながるため、Nbの含有率の最大値は1.0%とする。また、β相安定化元素であるNbの含有率が増加すると、高温での使用中にβ相が存在しやすくなる。β相は、α相よりも元素の拡散が容易であり、α相とβ相が共存していると、α単相である場合よりも耐熱性の低下が懸念されることからも、Nbの含有率は1.0%以下とする。Nbと同様にβ相安定化元素であるZrは、含有率を増加させるとNbとの複合添加において、α単相を維持できる最大Nb含有率が減少するため、Zrの含有率の最大値は1.0%とする。また、ZrおよびNbは、いずれも含有率が低すぎると耐酸化性の向上効果が小さいため、含有率の最小値はともに0.1%とする。
Feはチタン合金の加工性を低下させるため、Feの含有率は0.1%以下とする。後述の任意元素であるSiおよびAlの少なくとも一方を含有させる場合、これらの元素を含有させることにより加工性が低下するため、Feの含有率は0.07%以下とすることが望ましい。
Oはチタン合金の加工性を低下させるため、Oの含有率は0.1%以下とする。任意元素であるSiおよびAlの少なくとも一方を含有させる場合、これらの元素を含有させることにより加工性が低下するため、Oの含有率は0.06%以下とすることが望ましい。
Tiの一部に代えて、以下の任意元素のいずれかを含有させてもよい。
Siは、含有率が低くても耐酸化性向上の効果を発揮する。しかし、Siは加工性が大きく低下させるために、Siを含有させる場合、耐酸化性と加工性を両立させるため、含有率を0.3%未満とする。
Alは、含有率が低くても耐酸化性向上の効果を発揮する。しかし、Alは加工性を大きく低下する。そのため、Alを含有させる場合、耐酸化性と加工性を両立させるため、含有率を0.5%未満とする。
本願発明のチタン合金の製造方法は、従来のチタン合金と同様である。VAR溶解または電子ビーム溶解にてインゴットを製造する。このインゴットに対して鍛造、熱間圧延、焼鈍、脱スケール、冷間圧延および仕上げ焼鈍を順に施して板材とする。
1−1.試料
アーク溶解により、表1に示す組成の試験材を作製した。本発明例1〜5、7、8および13〜17は、いずれも本発明の規定を満足する組成であった。比較例1〜12は、以下の点で本発明の規定を満足しない組成であった。
熱間圧延および焼鈍の後、スケールを除去した板材を冷間圧延した際に、板材の端面におけるエッジ割れの有無を観察した。このとき、エッジ割れが全く生じなければ○(可)、長さ1mm以上のエッジ割れが生じれば×(不可)とした。
上記試験片から圧延方向に平行に、ASTMハーフサイズの引張試験片を採取し、降伏するまで0.2%/min、破断まで20%/minの歪速度で室温にて引張試験を実施した。
表面を粒度#600の研磨紙で研磨した試験片に大気中で600℃、100時間の酸化処理を施した。酸化処理前後の重量を比較して酸化増量を求めた。
評価項目は、冷間圧延性、引張強度、伸びおよび酸化増量とし、これらの結果を合金組成と併せて前記表1に示した。酸化増量により、耐酸化性を評価した。酸化増量が小さいほど耐酸化性が良好である。
前記表1に示すように、本発明例および比較例とも、全てエッジ割れが全く生じず、良好な冷間圧延性を有しており、評価は○であった。
前記表1に示すように、本発明例および比較例とも、概ね引張強度が高いほど伸びが小さい傾向であった。
図7は、本発明例および比較例の伸びと酸化増量との関係を示す図である。同図および前記表1からわかるように、本発明例は、いずれも伸びが良好であり、比較例と比較して、伸びに対して高い耐酸化性を有していた。ただし、同図中の本発明例には前記表1に記載の参考例も含む。
Claims (2)
- 質量%で、Zr:0.1%以上1.0%以下、Nb:0.1%以上1.0%以下、Fe:0.1%以下およびO:0.1%以下を含有し、残部がTiおよび不純物からなる耐熱チタン合金。
- 前記Tiの一部に代えて、質量%で、Si:0.3%未満またはAl:0.5%未満を含有する請求項1に記載の耐熱チタン合金。
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