JP2013053361A - 耐熱強度に優れた飛翔体用アルミニウム合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温での暴露時間の長時間化や温度の急速上昇に伴う耐熱性に優れたアルミニウム合金を提供する。
【解決手段】Zn:5.7〜7.0mass%、Mg:1.5〜3.0mass%、Cu:2.0〜3.0mass%、Zr:0.05〜0.2mass%、Fe:0.5mass%以下、Si:0.4mass%以下を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなる室温での引張強度が600MPa以上のアルミニウム合金であり、強度安定度が1以上であることを特徴とし高温での暴露時間の長時間化や温度の急速上昇に伴う耐熱性に優れた飛翔体の胴体あるいは羽根に用いられるアルミニウム合金。
【選択図】 なし
【解決手段】Zn:5.7〜7.0mass%、Mg:1.5〜3.0mass%、Cu:2.0〜3.0mass%、Zr:0.05〜0.2mass%、Fe:0.5mass%以下、Si:0.4mass%以下を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなる室温での引張強度が600MPa以上のアルミニウム合金であり、強度安定度が1以上であることを特徴とし高温での暴露時間の長時間化や温度の急速上昇に伴う耐熱性に優れた飛翔体の胴体あるいは羽根に用いられるアルミニウム合金。
【選択図】 なし
Description
本発明は高温強度に優れたアルミニウム合金に関するものであり、具体的には飛翔体の胴体あるいは羽根など急速に昇温し、高温環境にさらされる部材に関するものである。
飛翔体は室温から高温までの温度上昇が非常に早いため、従来の耐熱性合金に要求されていた耐クリープ特性のような長時間の高い温度での強度の安定性とは異なる特性が要求される。
アルミニウム合金の中で2000系(Al−Cu系)合金は耐熱性、耐クリープ特性に優れるため、AA2618合金に代表されるような合金は高温環境で使用される部材で多く使用されている。しかし、2000系合金は高温強度に優れるものの室温強度では7000系(Al−Zn−Mg−Cu系)合金の方が優れている。
そのため飛翔体の胴体あるいは羽根には2000系合金ではなく、AA7075合金のような7000系合金が用いられてきた。
また、飛翔体の胴体部の製造方法については文献1のように熱間での鍛造あるいは後方押出など熱間加工によって行われている。
特開平1−104424号公報
しかしながら、近年航続距離の長距離化や運搬時の容易性のために飛翔体の軽量化が求められている。そのため、高温での暴露時間の長時間化や温度の急速上昇に伴う耐熱性のさらなる向上が要求されている。
本発明はこのような課題に鑑みて発明されたものであり、7000系合金をベースに耐熱性を向上させ、室温および高温での強度増加により、飛翔体の軽量化を図るため開発されたものである。
前記課題を解決するため、第1の発明は、Zn:5.7〜7.0mass%(以下、単に%と記す)、Mg:1.5〜3.0%、Cu:2.0〜3.0%、Zr:0.05〜0.2%、Fe:0.5%以下、Si:0.4%以下を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなる室温での引張強度が600MPa以上のアルミニウム合金であり、強度安定度が1以上であることを特徴とした飛翔体の胴体あるいは羽根に用いられるアルミニウム合金である。
第2の発明は、Zn:5.7〜7.0%、Mg:1.5〜3.0%、Cu:2.0〜3.0%、Zr:0.05〜0.2%、Fe:0.5%以下、Si:0.4%以下を含有し、さらにMn、Cr、Ni、Vの少なくとも1種以上を合計で0.5%以下含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなる室温での引張強度が600MPa以上のアルミニウム合金であり、強度安定度が1以上であることを特徴とした飛翔体の胴体あるいは羽根に用いられるアルミニウム合金である。
第3の発明は、第1の発明もしくは第2の発明に記載のアルミニウム合金を室温から200℃まで急速昇温し、200℃での引張強度が330MPa以上であることを特徴とする飛翔体の胴体あるいは羽根に用いられるアルミニウム合金である。
本発明によれば、室温強度および高温強度に優れたアルミニウム素材の製造が可能となり、飛翔体などのように急速昇温し、高速で移動する物体の胴体や羽根などに用いることにより、高強度薄肉化による軽量化、航続距離の増加、構造設計の自由度の増加などの効果が得られる。
以下に本発明の限定理由について述べる。
本発明に用いられる合金は、7000系合金として知られるAl−Zn−MgあるいはAl−Zn−Mg−Cu系の熱処理型アルミニウム合金である。主な成分について説明する。
本発明に用いられる合金は、7000系合金として知られるAl−Zn−MgあるいはAl−Zn−Mg−Cu系の熱処理型アルミニウム合金である。主な成分について説明する。
Znは、溶体化処理によってマトリックス中に固溶し、自然時効および人工時効によって微細な析出物を形成し強度向上に寄与する。その効果は5.7%未満では不十分であり、7.0%を超えるとその効果が飽和するとともに、鋳造時に鋳塊割れが発生しやすくなる。
Mgは、Znと同様に溶体化処理によってマトリックス中に固溶し、自然時効および人工時効によって微細な析出物を形成し強度向上に寄与する。その効果は1.5%未満では不十分であり、3.0%を超えるとその効果が飽和するとともに、鋳造時に鋳塊割れが発生しやすくなる。
Cuは、マトリクスに固溶し強度を向上させる働きがあり、さらには析出物の均一核発生サイトとなる働きがあり強度の向上をもたらす。その効果は2.0%未満では不十分であり、3.0%を超えるとその効果が飽和するとともに、鋳造時に鋳塊割れが発生しやすくなる。
Zrは、アルミニウムと化合物を形成しマトリクス中に微細に分散することにより、再結晶の抑制および再結晶粒の粗大化防止により強度の向上をもたらす。さらにAl−Zrの化合物は高温でも熱的に安定であり高温強度の向上をもたらす。その効果は0.05%未満では不十分であり、0.2%を超えると飽和する。
Feは、通常アルミニウムに含まれる不可避的不純物であり、不溶性の金属間化合物を形成し伸びや靭性の低下をもたらし特性の劣化を引き起こすため少ないほうが望ましいが、不純物量の規制が厳しいと工業的規模での製造においてコストの増加を引き起こす。従って、特性とコストのバランスから0.5%以下とすることが好ましい。
Siは、Feと同様に通常アルミニウムに含まれる不可避的不純物であり、金属間化合物を形成し伸びの低下をもたらすため少ないほうが望ましいが、不純物量の規制が厳しいと工業的規模での製造においてコストの増加を引き起こす。従って、特性とコストのバランスから0.5%以下とすることが好ましい。
Mn、Cr、Ni、Vはアルミニウムと化合物を形成しマトリクス中に高温でも熱的に安定相として分散することにより高温強度の向上をもたらす。しかし、添加量の合計が0.5%を超えると鋳造時に巨大晶出物が発生しやすくなり、機械的特性の劣化を引き起こす。このため添加量の合計は0.5%以下とする。
その他の元素として例えばTiは鋳造時の結晶粒微細化の目的で一般的には添加される。添加量は特に規定するものではないがAA(Aluminum Association)規格などでは通常0.2%程度含有される。
その他元素についても特に規定するものではないがAA規格に準じて一般的には0.05%以下程度の含有であれば許容される。
本発明に係るアルミニウム合金の室温での引張強度は600MPa以上である。600MPaより低い場合、急速昇温後の高温での引張強度が低下するため強度安定度が1よりも小さくなってしまう。
強度安定度とは、室温での引張強度:TSRTを該室温での0.2%耐力:YSRTで除した値:TSRT/YSRTに対する急速昇温後の高温での引張強度:TShを該高温での0.2%耐力:YShで除した値:TSh/YShの比:TSh・YSRT/YSh・TSRTである。
強度安定度が1よりも小さくなると、高温で高速移動する飛翔体の胴体あるいは羽根が、その形状を維持することが困難になる。従って、強度安定度は1以上であることが望ましい。
本アルミニウム合金を急速昇温した場合、200℃での引張強度が330MPa以上であることが望ましい。330MPaよりも低いと、高温で高速移動する飛翔体の胴体あるいは羽根が、その形状を維持することが困難になる。
本発明合金の製造方法に関しては、常法によって前記合金鋳塊を溶体化処理、焼き入れ処理、熱間加工、時効処理によって製造される。この中で高い強度を得るためには時効処理は最終特性を大きく左右するため、温度は80℃から180℃で時間は4時間から1000時間の範囲で行われることが望ましい。
表1に示すA〜Kの7000系アルミニウム合金とL、Mの2000系アルミニウム合金をDC鋳造により、t:100mm×w:200mm×l:400mmの鋳塊を得た。それぞれ面削によりt80mmとした後、常法により7000系アルミニウム合金は470℃×24hr、2000系アルミニウム合金は530℃×24hrの均質化処理を行った。続いて熱間加工は、いずれも420℃で熱間圧延によりt20mmの熱間圧延板を得た。さらに溶体化処理として7000系アルミニウム合金は470℃×2hr、2000系アルミニウム合金は530℃×2hrの処理を行った後、80℃の温水焼入れを実施した。続いて人工時効処理として7000系アルミニウム合金は125℃×24hrのT6処理、2000系アルミニウム合金は185℃×12hrのT6処理を行った。
機械的特性の評価は圧延方向に引張り試験片を採取し、室温での機械的特性および200℃での高温強度を測定した。なお高温試験時の昇温条件は実際に飛翔体が受ける熱履歴を模擬し、40℃/minの急速加熱とし、5分保持後に引張り試験を開始した。
表2に室温および高温での機械的特性の一覧を示す。これより本発明においては室温強度で600MPaを超える非常に高い値が得られており、従来合金のK合金(AA7075)に比べて10%以上の強度向上が得られている。また高温強度においても10〜20%の向上が認められている。また一般的には耐熱強度に優れる2000系アルミニウム合金(合金L、M)に比較しても、室温および高温強度に著しく高い強度が得られている。
このように本発明によれば、飛翔体の胴体部や羽根用のアルミニウム部材として従来よりさらに室温強度および高温強度に優れた材料を得ることが可能となる。これによって飛翔体のさらなる軽量化、航続距離の向上などが可能となり産業上著しい効果が得られる。
Claims (3)
- Zn:5.7〜7.0mass%(以下、単に%と記す)、Mg:1.5〜3.0%、Cu:2.0〜3.0%、Zr:0.05〜0.2%、Fe:0.5%以下、Si:0.4%以下を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなる室温での引張強度が600MPa以上のアルミニウム合金であり、強度安定度が1以上であることを特徴とした飛翔体の胴体あるいは羽根に用いられるアルミニウム合金。
- Zn:5.7〜7.0%、Mg:1.5〜3.0%、Cu:2.0〜3.0%、Zr:0.05〜0.2%、Fe:0.5%以下、Si:0.4%以下を含有し、さらにMn、Cr、Ni、Vの少なくとも1種以上を合計で0.5%以下含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなる室温での引張強度が600MPa以上のアルミニウム合金であり、強度安定度が1以上であることを特徴とした飛翔体の胴体あるいは羽根に用いられるアルミニウム合金。
- 請求項1もしくは請求項2に記載のアルミニウム合金を室温から200℃まで急速昇温し、200℃での引張強度が330MPa以上であることを特徴とする飛翔体の胴体あるいは羽根に用いられるアルミニウム合金。
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