JP4688366B2 - 吸光度検出器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定波長におけるサンプルの吸光度を測定する吸光度検出器、特に発光部の光源としてLEDを用い、LEDの光量変化を補正できる簡便な吸光度検出器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
吸光光度法は、多数の物質の定量法として公定法にも用いられ、汎用性の高い測定方法として様々な分野で使用されている。このような吸光光度法の測定を行うためには、測定すべきサンプルによる光の吸収を検出するための吸光度検出器が必要である。
【0003】
吸光度検出器は、発光部及び受光部と、サンプルを入れるセル部とで構成され、発光部と受光部の測定光路上にセル部が設置されている。発光部は測定する波長によっても異なるが、可視光領域の波長を測定する場合にはタングステンランプやハロゲンランプが使用され、この光源の光を回析格子や分光フィルタにより分光して、一定波長の光をサンプルの入ったセル部に照射する。サンプルを透過した光は、フォトダイオードや光電子増倍管を用いた受光部で検出し、その光の透過率から吸光度が算出される。
【0004】
また、ある特定の物質を測定するための簡易的な専用検出器の場合には、測定光の波長を変更する必要がないため、発光部として高輝度発光ダイオード(LED)を用いた吸光度検出器が利用されている。ただし、発光部にLEDを用いた吸光度検出器においては、用いたLED固有の波長しか使用できないため、複数の波長を用いて測定を行いたい場合には、波長の異なる複数のLEDを設置する必要がある。即ち、複数のLEDは発光波長が異なるものを使用し、それぞれ異なる成分の吸光度測定に使用する。
【0005】
波長の異なる複数のLEDを設置した従来の吸光度検出器の一例として、LEDを2個使用した吸光度検出器を図4に示す。この吸光度検出器のセル部はサンプル3を入れる測定容器2と、測定容器2を収納する挿入管1とで構成され、挿入管1にはその中心軸を通るように光路1aと光路1bが設けてある。この挿入管1の同じ側に且つ長さ方向に沿って2個のLED4a、4bが配置され、挿入管1の光路1aを挟んで反対側にはLED4aと対をなすフォトダイオード5aが、光路1bを挟んで反対側にはLED4bと対をなすフォトダイオード5bがそれぞれ対向して設置されている。
【0006】
発光部であるLED4a、4bは、CPU12に接続した制御部13によってON/OFF及び発光量が制御される。受光部であるフォトダイオード5a、5bはアンプ部14に接続され、アンプ部14でフォトダイオード5a、5bの出力電流が電圧に変換される。この電気信号は更にA/D変換器15でデジタル変換され、CPU12で演算されて表示部16に測定結果が表示される。また、CPU12には、設定操作などのための操作キー17及びデータなどの記憶のためのメモリ18が接続されている。
【0007】
この吸光度検出器を用いて吸光度の測定を行う場合、LED4aの発光波長の吸光度を測定するときは、LED4bをOFFにし、LED4aのみをONにして発光させる。LED4aからの光は挿入管1の光路1aを通り、測定容器2に入ったサンプル3を通過してフォトダイオード5aに達する。フォトダイオード5aで発生した電流はアンプ部14、A/D変換器15、及びCPU12で処理され、サンプル3の光透過率が計算され、更にランベルト−ベールの法則により透過率から吸光度に換算される。
【0008】
同様にLED4bの発光波長の吸光度を測定するときは、LED4aをOFFにし、LED4bのみを発光させる。LED4bからの光は挿入管1の光路1bを通り、測定容器2に入ったサンプル3を通過してフォトダイオード5bに達する。フォトダイオード5bで発生した電流は上記と同様に処理され、LED4bの発光波長でのサンプル3の光透過率が計算され、更に透過率から吸光度に換算される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、吸光度検出器の発光部に用いる光源の発光量は温度や時間経過などにより変動するため、吸光度の測定値に誤差を与える要因になっている。このような場合には、光源の光強度の変動を補正するため、サンプルの入ったセル部を透過した光の強度を測定すると同時に、サンプルを透過していない光源からの直接光を測定する方式か、又はサンプルの入ったセル部に2つの光路を設け、サンプルを透過した光と透過していない光の両方の光強度を測定する2光路方式が採用される場合が多い。
【0010】
2光路方式の吸光度検出器の場合、光源からの光をハーフミラーなどによってサンプル用の光路と参照用の光路とに分ける方法が頻繁に用いられる。しかし、このような2光路方式は、構造が極めて複雑になるだけでなく、製造コストも非常に高くなるという欠点があった。特にLEDを光源に用いた簡易的な吸光度検出器の場合には、このような2光路方式の吸光度検出器では簡便で安価であるというメリットが完全に失われてしまう。
【0011】
このような事情から、従来のLEDを光源に用いた簡易的な吸光度検出器においては、LEDの光強度の変動を補正するために、サンプルの入ったセル部を透過した光の強度を測定すると同時に、参照光としてサンプルを透過していない光源からの直接光を測定する方式が採用されている。具体的には、図4に示すように、直接光測定用のフォトダイオードとして、LED4aに近接してフォトダイオード5cを、及びLED4bに近接してフォトダイオード5dを設置し、例えばLED4aの発光波長の吸光度を測定する場合、LED4aから光路1aを通ってサンプル3を透過した透過光をフォトダイオード5aで測定すると同時に、LED4aからの直接光を別のフォトダイオード5cで参照光として測定することにより、LED4aの光強度を補正している。
【0012】
しかしながら、このようなLEDを光源とする吸光度検出器では、異なる成分の吸光度測定に用いるため発光波長が異なる複数のLEDを設置しているのが通常であるため、LED4a、4bとそれぞれ対をなして設置した透過光測定用の複数のフォトダイオード5a、5bとは別に、参照光測定用として更に複数のフォトダイオード5c、5dをLED4a、4bの近傍に設置しなければならず、フォトダイオードの数が増えて構造が複雑になり、また製造コストも増加するという問題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、異なる成分の吸光度測定に用いるため、発光部の光源として発光波長が異なる複数のLEDを設置している吸光度検出器において、フォトダイオードの数を増やすことなく、複数のLEDについて温度や時間経過などにより変動する光量変化を補正することができ、簡単な構造で且つ安価な吸光度検出器を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明が提供する吸光度検出器は、サンプルを入れるセル部と、LEDからなる発光部と、フォトダイオードからなる受光部とを備えた吸光度検出器において、セル部を挟んで互いに対向するLEDとフォトダイオードを少なくとも2対備え、任意の対のLEDからフォトダイオードへの光の照射方向がこれに隣接する対との間で逆向きとなるように、任意の対のLEDとこれに隣接する対のフォトダイオードとをセル部の同じ側に近接して配置し、サンプルの吸光度を測定する際に任意の対のLEDのみを発光させ、当該LEDと同じ対のフォトダイオードでサンプルを透過した光を受光して透過光強度を測定すると同時に、当該LEDに近接して配置された隣接する対のフォトダイオードでサンプルを透過していない当該LEDからの光を参照光として受光し、参照光強度を測定して当該LEDの光量変化を補正することを特徴とする。
【0015】
上記本発明の吸光度検出器においては、任意の対のLEDとこれに隣接する対のフォトダイオードとを、セル部の長さ方向に沿って又はセル部の円周方向に沿って交互に、近接して配置したことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明においては、セル部を挟んで互いに対向するLEDとフォトダイオードの対を2対以上設置するとき、各対の配置を工夫して、任意の対のLEDとこれに隣接する対のフォトダイオードとをセル部の同じ側に近接して配置する。従って、任意の対とこれに隣接する対との間で、LEDからフォトダイオードへの光の照射方向が互いに逆向きになっている。これにより、ON操作で発光しているLEDからの直接光を、その発光しているLEDとは別のOFF状態のLEDと対をなすフォトダイオードで受光して、参照光としての光強度を測定するようにしたものである。
【0018】
本発明の吸光度検出器の代表的な一具体例について、図1を参照して更に詳しく説明する。図4に示す従来の吸光度検出器では、複数のLED4a、4b及びこれと対をなす複数のフォトダイオード5a、5b6は、それぞれ挿入管1の同じ側に長さ方向に沿って配置されている。これに対して、図1に示す本発明の吸光度検出器では、1対のLED6aとフォトダイオード7aに対して、これに隣接する対のLED6bとフォトダイオード7bを光の照射方向が逆向きになるように、即ちLED6aとフォトダイオード7b、及びLED6bとフォトダイオード7aを、それぞれ挿入管1の同じ側に且つ長さ方向に沿い近接して配置してある。
【0019】
この吸光度検出器を用いて吸光度の測定を行う場合、LED6aの発光波長の吸光度を測定するときは、LED6bはOFFにして、LED6aを発光させ、測定容器2に入ったサンプル3を通過した光は透過光としてフォトダイオード7aで受光し、同時にLED6aの光は同じ側に近接して配置した別の対のフォトダイオード7bに主に直接光として到達し、サンプル3の吸収の影響を受けない参照光として測定される。同様に、LED6bの発光波長の吸光度を測定するときには、LED6aをOFFにし、LED6bの光のうちサンプル3を通過した透過光はフォトダイオード7bで受光すると同時に、LED6bからの直接光を同じ側に近接して設置した別の対のフォトダイオード7aで受光する。
【0020】
何れの場合も、サンプル3を通過した透過光は、発光したLED6a又は6bとそれぞれ対をなすフォトダイオード7a又は7bで受光され、発生した電流はをアンプ部14で電圧変換され、A/D変換器15を経て、CPU12により透過光強度が電圧値として測定される。一方、発光したLED6a又は6bとは別の対をなすフォトダイオード7b又は7a(対をなすLED6b又は6aはOFF状態)により、サンプル3を通過していないLED6a又は6bの直接光が受光され、その参照光強度を同様に測定することによって、上記透過光強度ないしは電圧値を適正に補正することができる。
【0021】
このような構造を有する本発明の吸光度検出器によれば、発光しているLED(例えばLED6a)の参照光を測定するために、OFF状態で発光していないLED(例えばLED6b)と対をなすフォトダイオード(例えばフォトダイオード7b)を利用することができる。即ち、LEDと対をなすフォトダイオードは、そのLEDの透過光を受光するための本来の受光部として使用されるだけでなく、対をなすLEDがOFF状態のときには、別の対の発光しているLEDの参照光を受光するために利用される。
【0022】
従って、本発明の吸光度検出器では、参照光を測定するためにフォトダイオードを増やす必要がなく、本来的にLEDと対をなすべき数、即ちLEDと同数のフォトダイオードだけで、サンプルの吸光度測定用としての機能と、LEDの参照光測定用としての機能とを併せ持つことができる。このため、簡単な構造で常にLEDの参照光を測定することが可能になり、温度変動などによりLEDの光量が変動しても、光量を適切に補正することが可能である。
【0023】
尚、図1の具体例では2対のLEDとフォトダイオードを備えた吸光度検出器について説明したが、LEDとフォトダイオードは同数であれば、3対又はそれ以上であってもよい。例えば4対のLEDとフォトダイオードの場合、図2に示すように、LED6aとフォトダイオード7aの対と、LED6bとフォトダイオード7bの対と、LED6cとフォトダイオード7cの対と、LED6dとフォトダイオード7dの対とを、LEDからフォトダイオードへの光の照射方向が任意の対とこれに隣接する対との間で互いに逆向きとなるように、即ち挿入管1を挟んでLED6a、6cとフォトダイオード7b、7dが同じ側に、またLED6b、6dとフォトダイオード7a、7cが同じ側になるように、それぞれ挿入管1の長さ方向に沿って、LEDとフォトダイオードを近接して交互に配置すればよい。
【0024】
また、任意の対のLEDとこれに隣接する対のフォトダイオードとは、図1及び図2に示すように挿入管1の長さ方向に沿って交互に配置する以外に、挿入管1の円周方向に沿って交互に近接して配置することもできる。例えば、図3に示すように、LED8aとフォトダイオード9bを挿入管1の同じ側に、またLED8bとフォトダイオード9aとを同じ側に、それぞれ挿入管1の円周方向に沿い近接して交互に配置すればよい。このように挿入管1の円周方向に沿って複数のLED8a、8bとフォトダイオード9a、9bを配置すれば、光路11a、11bをほぼ同一水平面上に集中できるので、複数のLEDとフォトダイオードを挿入管の長さ方向に沿って配置した場合に比べてサンプル量が少なくて済み、装置全体の更なるコンパクト化が可能である。
【0025】
【実施例】
亜硝酸測定用の発光波長555nmのLEDと、アンモニア測定用の660nmのLEDとを備えた吸光度検出器について、図1に基づいて詳しく説明する。サンプル3の入った測定容器2を入れる挿入管1を横方向に貫通して、光路1aと光路1bが挿入管1の長さ方向に近接して設けてある。挿入管1を挟んで、光路1aの両側には555nmのピーク発光波長を有するLED6aとフォトダイオード7aが、及び光路1bの両側には660nmのピーク発光波長を有するLED6bとフォトダイオード7bが、それぞれ光の照射方向が逆向きになるように設置されている。即ち、LED6aとフォトダイオード7b、及びLED6bとフォトダイオード7aとは、それぞれ挿入管1の同じ側に、その長さ方向に沿い近接して配置されている。
【0026】
LED6a、6bはCPU12に接続された制御部13により、ON/OFF及び発光量が制御される。フォトダイオード7a、7bはアンプ部14に接続されており、フォトダイオード7a、7bの出力電流はアンプ部14で電圧に変換され、更にA/D変換器15でデジタル変換されてCPU12に送られる。CPU12には、測定結果を表示するための表示部16、設定などのための操作キー17、及びデータなどの記憶のためのメモリ18が接続されている。
【0027】
この吸光度検出器による測定操作を説明する。亜硝酸は下記の操作により測定する。最初に、参照用のサンプル3として測定容器2に純水を入れ、この測定容器2を挿入路1にセットする。続いて、LED6bはOFFにした状態で、制御部13によりLED6aに電流を流し、555nmの光を発光させる。LED6aの光は光路1aを通って測定容器2のサンプル3を通過し、更に光路1aを経てフォトダイオード7aに到達する。この透過光を受光したフォトダイオード7aで発生した電流は、アンプ部14により電圧変換され及びA/D変換器15でデジタル変換され、CPU12により電圧値RSとして測定される。同時に、LED6aの光は直接又は挿入管1の壁面で反射し、LED6aに近接して設置されたフォトダイオード7bに参照光として到達する。このとき、フォトダイオード7bで発生した電流が同様にアンプ部14、A/D変換器15を通って変換され、CPU12により電圧値RRとして測定する。
【0028】
次に、亜硝酸サンプルの測定を、例えばナフチルエチレンジアミン吸光光度法により行う。混合用の試験管に亜硝酸を含んだサンプル10mlを入れ、10g/lのスルファニルアミド塩酸溶液を1ml添加して良く振り混ぜ、5分間放置した後、1g/lの二塩化N−1−ナフチルエチレンジアンモニウム溶液1mlを加えて振り混ぜ、更に約20分間放置する。この溶液の一部をサンプル3として測定容器2に移し、挿入管1にセットする。続いて、上記参照用サンプルの場合と同様に、LED6bをOFFにして、LED6aから555nmの光を発光させる。LED6aのサンプル3を通過した透過光をフォトダイオード7aで受光し、同様の処理により電圧値SSを測定する。同時に、LED6aからフォトダイオード7bに直接到達した光を参照光として受光し、同様に処理して電圧値SRを測定する。
【0029】
上記の操作において、純水を測定した時の電圧値RSを透過率1として、亜硝酸サンプルの透過率を下記数式1により算出する。更に、求めた亜硝酸サンプルの透過率から、ランベルト−ベールの法則に従って、下記数式2により亜硝酸サンプルの吸光度を計算することができる。
【0030】
【数1】
亜硝酸サンプルの透過率=電圧値SS/電圧値RS×電圧値SR/電圧値RR
【0031】
【数2】
亜硝酸サンプルの吸光度=−log(亜硝酸サンプルの透過率)
【0032】
上記数式1において、電圧値SR/電圧値RRはLED6aの光量変化を補正するためのものであり、この補正を行わない場合には吸光度測定値に誤差が生じる。実際に、純水の透過光の電圧値RSが1000mVで、亜硝酸サンプルの透過光の電圧値SSが500mVであった場合、亜硝酸サンプルの吸光度は0.301になり、LEDの光量が変化しなければ正確な吸光度の測定が可能である。しかし、純水測定時のLEDの光量に比べ亜硝酸測定時の光量が10%低下したときには、電圧値SSは450mVになるため、吸光度は0.347となって10%以上の誤差が生じる結果となる。
【0033】
一方、上記と同じ条件でフォトダイオード7aにより透過光を測定すると同時に、フォトダイオード7bによりLED6aの光量を直接光として測定した場合には、参照用の純水を通過した光の電圧値RRを1000mVとすると、LEDの光量が10%低下した時の亜硝酸サンプルの電圧値SRは900mVとして検出され、数式1から透過率は0.5と計算される結果、亜硝酸サンプルの吸光度は0.301になり、光量が変化しても誤差は発生しない。このように、2対のLEDとフォトダイオードを用いて透過光と参照光の測定を行えば、温度や時間変化などによるLED光量の変化を無視することができる。
【0034】
具体的に、上記した図1の本発明による吸光度検出器を用いて、LEDの光量補正を行ないながら、測定時の環境温度を0℃、25℃、40℃に変化させて、3種類の濃度の亜硝酸サンプルについて吸光度をナフチルエチレンジアミン吸光光度法により測定した。比較のために、図4に示す従来の吸光度検出器を用い、LEDの光量補正を行わずに(フォトダイオード5c、5dを設置せず)、亜硝酸サンプルの吸光度を測定した。得られた結果を下記表1に示す。この結果から分かるように、従来例の吸光度検出器では環境温度の変化によりLED発光量が変動するため、吸光度測定値が大きく変動しているのに対して、本発明例の吸光度検出器では環境温度が変化しても吸光度測定値の変化が極めて少ない。
【0035】
【表1】
【0036】
また、アンモニアについては、同様に下記の操作により測定する。参照用のサンプル3として測定容器2に純水を入れ、挿入路1に測定容器2をセットする。続いて、LED6aをOFFにした状態で、LED6bをONにして660nmの光を発光させる。LED6bの光は光路1bを通って測定容器2のサンプル3を通過し、フォトダイオード7bに到達する。この透過光を受光したフォトダイオード7bで発生した電流をアンプ部14、A/D変換器15で変換し、CPU12により電圧値RSとして測定する。同時にLED6bの光は直接又は挿入管1の壁面で反射して、LED6bに近接して設置されたフォトダイオード7aに到達し、この参照光を受光したフォトダイオード7aで発生した電流を同様に処理して、CPU12により電圧値RRとして測定する。
【0037】
次に、アンモニアサンプルの測定を、例えばインドフェノール青吸光光度法により行う。50mlのメスフラスコにアンモニウムイオンを含んだサンプル25mlを入れ、ナトリウムフェノキシド溶液10mlを添加して良く振り混ぜ、次亜鉛素酸ナトリウム溶液(有効塩素10g/l)5mlを加え、水を標線まで加えた後、栓をして振り混ぜ、約30分間放置する。この溶液の一部をサンプル3として測定容器2に移し、挿入管1にセットする。続いて、上記と同様にLED6aをOFFにした状態で、LED6bをONにして660nmの光を発光させる。LED6bの光は光路1bを通って測定容器2のサンプル3を通過し、フォトダイオード7bで受光され、フォトダイオード7bで発生した電流をアンプ部14、A/D変換器15で変換して、CPU12により電圧値SSとして測定する。同時にLED6bからの直接光をフォトダイオード7aで受光し、同様に処理してCPU12により電圧値SRとして測定する。
【0038】
アンモニアサンプルの透過率及び吸光度の計算は亜硝酸サンプルの場合と同様であり、光量補正を行わない場合の誤差の発生、及びフォトダイオード7aでのLED6bからの直接光の測定による光量補正も同様である。
【0039】
具体的に、上記した図1の本発明による吸光度検出器を用いて、LEDの光量補正を行ないながら、測定時の環境温度を0℃、25℃、40℃に変化させて、3種類の濃度のアンモニアサンプルにおいて吸光度をインドフェノール青吸光光度法により測定した。比較のために、図4に示す従来の吸光度検出器を用い、LEDの光量補正を行わずに(フォトダイオード5c、5dを設置せず)、アンモニアサンプルの吸光度を測定した。得られた結果を下記表2に示す。従来例の吸光度検出器では温度の影響が顕著であるのに対して、本発明例の吸光度検出器ではLEDの光量補正により、環境温度の影響が極めて少ないことが分かる。
【0040】
【表2】
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、光源に2個以上のLEDを用いた吸光度検出器において、光源の各LEDと対をなすフォトダイオード以外にフォトダイオードの数を増やす必要がなく、簡単な構造で常にLEDの参照光を測定することができ、温度変動や時間経過などによりLEDの光量が変動しても、その光量変化を補正することにより精度良い吸光度の測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の吸光度検出器の一具体例を示す概略の断面図である。
【図2】図1の吸光度検出器の変形例を示す概略の断面図である。
【図3】本発明の吸光度検出器の他の具体例を示す概略の断面図である。
【図4】従来の吸光度検出器を示す概略の断面図である。
【符号の説明】
1 挿入管
2 測定容器
3 サンプル
4a、4b、6a、6b、6c、6d、8a、8b LED
5a、5b、7a、7b、7c、7d、9a、9b フォトダイオード
12 CPU
13 制御部
14 アンプ部
15 A/D変換器
16 表示部
17 操作キー
18 メモリ
Claims (2)
- サンプルを入れるセル部と、LEDからなる発光部と、フォトダイオードからなる受光部とを備えた吸光度検出器において、セル部を挟んで互いに対向するLEDとフォトダイオードを少なくとも2対備え、任意の対のLEDからフォトダイオードへの光の照射方向がこれに隣接する対との間で逆向きとなるように、任意の対のLEDとこれに隣接する対のフォトダイオードとをセル部の同じ側に近接して配置し、サンプルの吸光度を測定する際に任意の対のLEDのみを発光させ、当該LEDと同じ対のフォトダイオードでサンプルを透過した光を受光して透過光強度を測定すると同時に、当該LEDに近接して配置された隣接する対のフォトダイオードでサンプルを透過していない当該LEDからの光を参照光として受光し、参照光強度を測定して当該LEDの光量変化を補正することを特徴とする吸光度検出器。
- 任意の対のLEDとこれに隣接する対のフォトダイオードとを、セル部の長さ方向に沿って又はセル部の円周方向に沿って交互に、近接して配置したことを特徴とする、請求項1に記載の吸光度検出器。
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