JP4686839B2 - モノマー、ポリマーおよびそれを用いた眼用レンズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はモノマーおよびポリマーに関するもので、該モノマーおよびポリマーはコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズとして特に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来、眼用レンズ用モノマーとして、ケイ素基を有するモノマーが知られている。
【0003】
例えば、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートが眼用レンズ用モノマーとして広く用いられている。この3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートを重合して得られるポリマーは高酸素透過性という特長を有するが、弾性率が高いため、例えばコンタクトレンズとして使用した場合、装用感が悪いという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、それを重合して得られるポリマーが高酸素透過性で、かつ低い弾性率を有するモノマーおよびそれを用いたポリマー、眼用レンズ、コンタクトレンズを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は下記の構成を有する。
(1)下記一般式(a)で表されるモノマー。
【0006】
【化3】
【0007】
(Aはシロキサニル基を表す。
R1はHまたはメチル基を表す。
XはN−Y、OおよびSから選ばれた基を表す。
YはH、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基および置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基からなる群から選ばれた置換基を表す。
mおよびnはそれぞれ独立に1〜20の整数を表す。)
(2)上記(1)項に記載のモノマーを重合成分として含むことを特徴とするポリマー。
(3)上記(2)項に記載のポリマーを用いてなる眼用レンズ。
(4)上記(2)項に記載のポリマーを用いてなるコンタクトレンズ。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、上記式(a)における各置換基について説明する。
【0009】
Aはシロキサニル基を表す。
【0010】
本明細書におけるシロキサニル基とは、少なくとも1つのSi−O−Si結合を有する基を表す。シロキサニル基としては下記式(b)で表される置換基が原料の入手しやすさや合成の容易さの点で好ましく使用される。
【0011】
【化4】
【0012】
[式(b)中、A1 〜A11はそれぞれが互いに独立にH、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基のいずれかを表す。nは0〜200の整数を表し、a、b、cはそれぞれが互いに独立に0〜20の整数を表す。ただしn=a=b=c=0の場合は除く。]
式(b)中、A1からA11はそれぞれが独立にH、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を挙げることができる。これらの中で最も好ましいのはメチル基である。
【0013】
式(b)中、nは0〜200の整数であるが、好ましくは0〜50,さらに好ましくは0〜10である。a、b、cはそれぞれが互いに独立に0〜20の整数であるが、好ましくはa、b、cがそれぞれ互いに独立に0〜5の整数である。n=0の場合、好ましいa、b、cの組み合わせはa=b=c=1、a=b=1かつc=0である。
【0014】
式(b)で表される置換基の中で、工業的に比較的安価に入手できることから特に好適なものはトリス(トリメチルシロキシ)シリル基、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル基、トリメチルシロキシジメチルシリル基、ポリジメチルシロキサン基、ポリメチルシロキサン基、ポリ−コ−メチルシロキサン−ジメチルシロキサン基などである。
【0015】
式(a)中、XはN−Y、OおよびSから選ばれた基を表すが、原料入手の容易さの点からより好ましいのはN−YおよびSであり、スルホニル基のS原子との結合の強さも考慮すると最も好ましいのはN−Yである。
【0016】
式(a)中、XがN−Yの場合、YはH、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基および置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基からなる群から選ばれた置換基を表すが、その好適な例としてはH、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基などであり、中でも好ましいのはH、メチル基、エチル基、フェニル基であり、最も好ましいのはHである。
【0017】
mおよびnはそれぞれ互いに独立に1〜20の整数を表すが、高酸素透過性を得るためには、好ましくは1〜7であり、合成の容易さについても考慮に入れると、最も好ましくは3〜5である。
【0018】
本発明のポリマーは一般式(a)で表されるモノマーを単独で重合して得ることも、他のモノマーと共重合して得ることも可能である。共重合する場合の他のモノマーとしては、共重合可能であれば特に制限はなく、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリル基、ビニル基、および他の重合可能な炭素・炭素不飽和結合を有するモノマーを使用することができる。
【0019】
以下、その例をいくつか挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、メチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、N,N−ジメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、スチレンなどの芳香族ビニルモノマーなどである。
【0020】
本発明のポリマーにおいては、良好な機械物性が得られ、消毒液や洗浄液に対する良好な耐性が得られるという意味で、1分子中に2個以上の共重合可能な炭素炭素不飽和結合を有するモノマーを共重合成分として用いることが好ましい。1分子中に2個以上の共重合可能な炭素炭素不飽和結合を有するモノマーの共重合比率は0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましい。ただし、本発明のモノマー単独で重合する場合はその重量を、また他のモノマーと共重合する場合は本発明のモノマーと共重合モノマーの合計重量を100重量%とし、以下も同様である。
【0021】
本発明のポリマーにおける一般式(a)で表されるモノマーの(共)重合比率は、高酸素透過性と高親水性を両立させるという点から30〜100重量%、より好ましくは40〜99重量%、最も好ましくは50〜95重量%である。
【0022】
本発明のポリマーは、紫外線吸収剤や色素、着色剤などを含むものでもよい。また重合性基を有する紫外線吸収剤や色素、着色剤を共重合した形で含有してもよい。
【0023】
本発明のポリマーを重合により得る際は、重合をしやすくするために過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤や、光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度に対して最適な分解特性を有するものを選択して使用する。一般的には10時間半減期温度が40℃〜120℃のアゾ系開始剤および過酸化物系開始剤が好適である。光重合開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、および金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独または混合して用いられ、およそ1重量%くらいまでの量で使用される。
【0024】
本発明のポリマーを重合により得る際は、重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能であり特に制限はない。例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノールなどの各種アルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチルなどの各種エステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどの各種グリコールエーテル系溶剤であり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。
【0025】
本発明のポリマーの重合方法、成形方法としては通常の方法を使用することができる。たとえば一旦、丸棒や板状に成形し、これを切削加工等によって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、およびスピンキャスト法などである。
一例として本発明のポリマーをモールド重合法により得る場合について、次に説明する。
【0026】
モノマー組成物を一定の形状を有する2枚のモールドの空隙に充填する。そして光重合あるいは熱重合を行ってモールドの形状に賦型する。モールドは樹脂、ガラス、セラミックス、金属等で製作されているが、光重合の場合は光学的に透明な素材が用いられ、通常は樹脂またはガラスが使用される。ポリマーを製造する場合には、多くの場合、2枚の対向するモールドにより空隙が形成されており、その空隙にモノマー組成物が充填されるが、モールドの形状やモノマーの性状によってはポリマーに一定の厚みを与え、かつ、充填したモノマー組成物の液もれを防止する目的を有するガスケットを併用してもよい。続いて、空隙にモノマー組成物を充填したモールドは、紫外線のような活性光線を照射されるか、オーブンや液槽に入れて加熱されて、モノマーを重合する。光重合の後に加熱重合したり、逆に加熱重合後に光重合するなど、両者を併用する方法もあり得る。光重合の場合は、例えば水銀ランプや捕虫灯を光源とする紫外線を多く含む光を短時間(通常は1時間以下)照射するのが一般的である。熱重合を行う場合には、室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の温度まで高めていく条件が、ポリマーの光学的な均一性、品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。
【0027】
本発明のポリマーを用いてなる成形品は、種々の方法で改質処理を行うことができる。表面の水濡れ性を向上させる改質処理を行うことが好ましい。
【0028】
具体的な改質方法としては、電磁波(光を含む)照射、プラズマ照射、蒸着およびスパッタリングなどのケミカルベーパーデポジション処理、加熱、塩基処理、酸処理、その他適当な表面処理剤の使用、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。これらの改質手段の中で、簡便であり好ましいのは塩基および酸処理である。
【0029】
塩基処理または酸処理の一例としては、成形品を塩基性または酸性溶液に接触させる方法、成形品を塩基性または酸性ガスに接触させる方法等が挙げられる。そのより具体的な方法としては、例えば塩基性または酸性溶液に成形品を浸漬する方法、成形品に塩基性または酸性溶液または塩基性または酸性ガスを噴霧する方法、成形品に塩基性または酸性溶液をヘラ、刷毛等で塗布する方法、成形品に塩基性または酸性溶液をスピンコート法やディップコート法などを挙げることができる。最も簡便に大きな改質効果が得られる方法は、成形品を塩基性または酸性溶液に浸漬する方法である。
【0030】
成形品を塩基性または酸性溶液に浸漬する際の温度は特に限定されないが、通常−50℃〜300℃程度の温度範囲内で行われる。作業性を考えれば−10℃〜150℃の温度範囲がより好ましく、−5℃〜60℃が最も好ましい。
成形品を塩基性または酸性溶液に浸漬する時間については、温度によっても最適時間は変化するが、一般には100時間以内が好ましく、24時間以内がより好ましく、12時間以内が最も好ましい。接触時間が長すぎると、作業性および生産性が悪くなるばかりでなく、酸素透過性の低下や機械物性の低下などの悪影響が出る場合がある。
【0031】
塩基としてはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、各種炭酸塩、各種ホウ酸塩、各種リン酸塩、アンモニア、各種アンモニウム塩、各種アミン類およびポリエチレンイミン、ポリビニルアミン等の高分子量塩基などが使用可能である。これらの中では、低価格であることおよび処理効果が大きいことからアルカリ金属水酸化物が最も好ましい。
【0032】
酸としては硫酸、リン酸、塩酸、硝酸等の各種無機酸、酢酸、ギ酸、安息香酸、フェノール等の各種有機酸、およびポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸などの各種高分子量酸が使用可能である。これらの中では、処理効果が大きく他の物性への悪影響が少ないことから高分子量酸が最も好ましい。
【0033】
塩基性または酸性溶液の溶媒としては、無機、有機の各種溶媒が使用できる。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチルなどの各種エステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどの各種エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシドなどの各種非プロトン性極性溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶媒、およびフロン系溶媒などである。中でも経済性、取り扱いの簡便さ、および化学的安定性などの点で水が最も好ましい。溶媒としては、2種類以上の物質の混合物も使用可能である。
【0034】
本発明において使用される塩基性または酸性溶液は、塩基性または酸性物質および溶媒以外の成分を含んでいてもよい。
【0035】
成形品は、塩基処理または酸処理の後、洗浄により塩基性または酸性物質を除くことができる。
【0036】
洗浄溶媒としては、無機、有機の各種溶媒が使用できる。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチルなどの各種エステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどの各種エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシドなどの各種非プロトン性極性溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶媒、およびフロン系溶媒などである。
【0037】
洗浄溶媒としては、2種類以上の溶媒の混合物を使用することもできる。洗浄溶媒は、溶媒以外の成分、例えば無機塩類、界面活性剤、および洗浄剤を含有してもよい。
【0038】
該改質処理は、成形品全体に対して行ってもよく、例えば表面のみに行うなど成形品の一部のみに行ってもよい。表面のみに改質処理を行った場合には成形品全体の性質を大きく変えることなく表面の水濡れ性のみを向上させることができる。
【0039】
本発明のポリマーの引張弾性率は850kPa以下が好ましい。酸素透過性は、酸素透過係数[×10-11(cm2/sec)mLO2/(mL・hPa)]70以上が好ましい。
【0040】
本発明のポリマーは、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズとして特に好適である。
【0041】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
<測定方法>
本実施例における各種測定は、以下に示す方法で行った。
(1)プロトン核磁気共鳴スペクトル
日本電子社製のEX270型を用いて測定した。溶媒にクロロホルム−dを使用した。
(2)酸素透過係数
理化精機工業社製の製科研式フィルム酸素透過率系を用いて35℃の水中にてコンタクトレンズ状サンプルの酸素透過係数を測定した。
(3)引張弾性率
サンプルとして、コンタクトレンズ状サンプルから型抜きを用いて切り出した中央付近の幅5mm程度のサイズのアレイ型のフィルム状のものを使用し、(株)東洋ボールドウイン製のテンシロンRTM100型を用いて測定した。引張速度は100mm/minとし、つかみ間距離は5mmとした。
【0042】
実施例1
100mLのナスフラスコにメタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩24.63g(0.1mol)、塩化チオニル35.70g(0.3mol)を加え、90℃で3時間攪拌した。反応溶液からエバポレータを用いて減圧下で過剰の塩化チオニルを留去し、得られた高粘度の液体を酢酸エチルで希釈した。別途用意した200mLのナスフラスコに3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン23.59g(0.067mol)、トリエチルアミン6.75g(0.067mol)、酢酸エチル50mLを加えて0℃に冷却し、その溶液に先程の高粘度の溶液を攪拌しながら滴下した。反応溶液を室温で30分攪拌した後、沈殿をろ過し、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で4回、飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレータで減圧下溶媒を留去した。得られた液体をシリカゲルのショートカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製した。収量は28.71g、収率は79%であった。得られた液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し分析した結果、0.1ppm付近(27H)、0.5ppm付近(2H)、1.6ppm付近(2H)、1.9ppm付近(3H)、2.2ppm付近(2H)、3.1ppm付近(4H)、4.3ppm付近(2H)、5.6ppm付近(1H)、6.1ppm付近(1H)にピークが検出されたことから下式(M1)で表される化合物であることを確認した。
【0043】
【化5】
【0044】
実施例2
200mLのナスフラスコにアクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩11.62g(55mmol)、塩化チオニル19.63g(165mmol)、重合禁止剤としてBHT12.1mg(55mmol)を加え、90℃で3時間攪拌した。エバポレータを用いて過剰の塩化チオニルを留去し、得られた高粘度の液体を酢酸エチルで希釈した。別途用意した200mLのナスフラスコに3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン17.69g(50mmol)、トリエチルアミン5.57g(55mmol)、酢酸エチル50mLを加えて0℃に冷却し、その溶液に先程の高粘度の溶液を攪拌しながら滴下した。反応溶液を30分攪拌した後、沈殿をろ過し、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回、飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレータを用いて減圧下で溶媒を留去した。得られた液体を減圧下で加熱(3×10-3Pa、67℃)することにより低沸点の不純物を除去し、さらにシリカゲルのショートカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製した。収量は8.9 g、収率は34 %であった得られた液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し分析した結果、0.1ppm付近(27H)、0.5ppm付近(2H)、1.6ppm付近(2H)、2.2ppm付近(2H)、3.1ppm付近(4H)、4.3ppm付近(2H)、5.8ppm付近(1H)、6.1ppm付近(1H)、6.4ppm付近(1H)にピークが検出されたことから下式(M2)で表される化合物であることを確認した。
【0045】
【化6】
【0046】
実施例3
3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランの代わりに3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロパンチオールを用いて実施例1と同様の合成を行った。得られた液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し分析した結果、0.1ppm付近(27H)、0.5ppm付近(2H)、1.6ppm付近(2H)、1.9ppm付近(3H)、2.2ppm付近(2H)、2.4ppm付近(2H)、3.1ppm付近(2H)、4.3ppm付近(2H)、5.6ppm付近(1H)、6.1ppm付近(1H)にピークが検出されたことから下式(M3)で表される化合物であることを確認した。
【0047】
【化7】
【0048】
実施例4
3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランの代わりに3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロパンチオールを用いて実施例2と同様の合成を行った。得られた液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し分析した結果、0.1ppm付近(27H)、0.5ppm付近(2H)、1.6ppm付近(2H)、2.2ppm付近(2H)、3.1ppm付近(4H)、4.3ppm付近(2H)、5.8ppm付近(1H)、6.1ppm付近(1H)、6.4ppm付近(1H)にピークが検出されたことから下式(M4)で表される化合物であることを確認した。
【0049】
【化8】
【0050】
実施例5
(1)滴下ロート、塩化カルシウム乾燥管をつけた200mLのナスフラスコにアリルアルコール30g(0.52mol)を加え、0℃で撹拌しながらヘキサメチルジシラザン41.58g(0.26mol)を滴下した。反応溶液を室温で5時間撹拌した後、減圧下でアンモニアを除去した。得られた液体をそのまま次の反応に用いた。
(2)300mLのナスフラスコに上記(1)で得た液体57.43g(0.44mol)、トルエン100mL、BHT97mg(0.44mmol)、トリス(トリメチルシロキシ)シラン130.79g(0.44mol)、塩化白金酸(IV)六水和物228mg(0.44mol)を加え、80℃で24時間加熱した。反応溶液を酢酸エチルで抽出、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で溶媒を留去した。得られた留分に酢酸/メタノール1/1溶液を加え、室温で15分放置した。溶液を酢酸エチルで抽出、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で4回洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた留分を減圧蒸留し無色透明の液体を得た。この液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し分析した結果、0.1ppm付近(27H)、0.5ppm付近(2H)、1.6ppm付近(2H)、3.5ppm付近(2H)にピークが検出されたことから下式(M5)で表される化合物であることを確認した。
【0051】
【化9】
【0052】
(3)3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランの代わりに上記(2)で得られた化合物(M5)を用いて実施例1と同様の合成を行った。得られた液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し分析した結果、0.1ppm付近(27H)、0.5ppm付近(2H)、1.6ppm付近(2H)、1.9ppm付近(3H)、2.2ppm付近(2H)、3.1ppm付近(2H)、4.1ppm付近(2H)、4.3ppm付近(2H)、5.6ppm付近(1H)、6.1ppm付近(1H)にピークが検出されたことから下式(M6)で表される化合物であることを確認した。
【0053】
【化10】
【0054】
実施例6
3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランの代わりに上記実施例5の(2)で得られた化合物(M5)を用いて実施例2と同様の合成を行った。得られた液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し分析した結果、0.1ppm付近(27H)、0.5ppm付近(2H)、1.6ppm付近(2H)、3.1ppm付近(2H)、4.1ppm付近(4H)、4.3ppm付近(2H)、5.8ppm付近(1H)、6.1ppm付近(1H)、6.4ppm付近(1H)にピークが検出されたことから下式(M7)で表される化合物であることを確認した。
【0055】
【化11】
【0056】
実施例7
(1)アリルアルコールの代わりに4−ペンテン−1−オールを用いて上記実施例5の(1)、(2)と同様の合成を行った。得られた液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し分析した結果、0.1ppm付近(27H)、0.5ppm付近(2H)、1.6ppm付近(4H)、2.4ppm付近(2H)、3.4ppm付近(2H)にピークが検出されたことから下式(M8)で表される化合物であることを確認した。
【0057】
【化12】
【0058】
(2)3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランの代わりに上記(1)で得られた化合物(M8)を用いて実施例1と同様の合成を行った。得られた液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し分析した結果、0.1ppm付近(27H)、0.5ppm付近(2H)、1.6ppm付近(4H)、1.9ppm付近(3H)、2.2ppm付近(2H)、2.4ppm付近(2H)、3.1ppm付近(2H)、4.1ppm付近(2H)、4.3ppm付近(2H)、5.6ppm付近(1H)、6.1ppm付近(1H)にピークが検出されたことから下式(M9)で表される化合物であることを確認した。
【0059】
【化13】
【0060】
実施例8
3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランの代わりに上記実施例7の(1)で得られた化合物(M8)を用いて実施例2と同様の合成を行った。得られた液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し分析した結果、0.1ppm付近(27H)、0.5ppm付近(2H)、1.6ppm付近(4H)、1.9ppm付近(3H)、2.2ppm付近(2H)、2.4ppm付近(2H)、3.1ppm付近(2H)、4.1ppm付近(2H)、4.3ppm付近(2H)、5.8ppm付近(1H)、6.1ppm付近(1H)、6.4ppm付近(1H)にピークが検出されたことから下式(M10)で表される化合物であることを確認した。
【0061】
【化14】
【0062】
実施例9
実施例1で得た式(M1)の化合物(71.15重量部)、N,N−ジメチルアクリルアミド(35重量部)、トリエチレングリコールジメタクリレート(1重量部)、ダロキュア1173(CIBA社、0.2重量部)、ジグライム10重量部を混合し撹拌した。均一で透明なモノマー混合物が得られた。このモノマー混合物をアルゴン雰囲気下で脱気した。窒素雰囲気下のグローブボックス中で透明樹脂(ポリ4−メチルペンテン−1)製のコンタクトレンズ用モールドに注入し、捕虫灯を用いて光照射(1mW/cm2、10分間)して重合し、コンタクトレンズ状サンプルを得た。
【0063】
得られたレンズ状サンプルを水和処理した後、5重量%ポリアクリル酸(分子量約15万)水溶液に浸漬し、40℃で8時間改質処理を行った。改質処理後、精製水で十分洗浄し、バイアル瓶中のホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)に浸漬しバイアル瓶を密封した。該バイアル瓶をオートクレーブに入れ、120℃で30分間煮沸処理を行った。放冷後、レンズ状サンプルをバイアル瓶から取り出し、ホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)に浸漬した。
【0064】
得られたサンプルは透明で濁りがなかった。このサンプルを水和処理したときの酸素透過係数は79×10-11(cm2/sec)mLO2/(mL・hPa)、引張弾性率は262kPaであり、高い透明性、高酸素透過性および低い弾性率を有していた。
【0065】
実施例10〜16
実施例2〜9で得たモノマーを用いて、実施例9と同様の方法でコンタクトレンズ状サンプルを得た。得られたサンプルはいずれも透明で濁りがなかった。これらのサンプルを水和処理したときの酸素透過係数[×10-11(cm2/sec)mLO2/(mL・hPa)]および引張弾性率[kPa]は下表の通りであり、どのポリマーも高い透明性、酸素透過性および低い弾性率を有していた。
【0066】
比較例
メタクリル酸3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルを用い、実施例9と同様の方法でコンタクトレンズ状サンプルを得た。得られたサンプルは透明で濁りがなかった。このサンプルを水和処理した時の酸素透過係数[×10-11(cm2/sec)mLO2/(mL・hPa)]および引張弾性率[kPa]は下表の通りであった。
【0067】
【表1】
【0068】
【発明の効果】
本発明により、それを重合して得られるポリマーが高酸素透過性で、かつ低い弾性率を有するモノマーが提供される。
Claims (8)
- 一般式(a)において、シロキサニル基(A)がトリス(トリメチルシロキシ)シリル基、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル基、トリメチルシロキシジメチルシリル基から選ばれた置換基であることを特徴とする請求項1または2記載のモノマー。
- 一般式(a)において、XがN−Yを表すことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のモノマー。
- 一般式(a)において、Aがトリス(トリメチルシロキシ)シリル基、あるいはビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル基を表し、XがN−Yを表し、mおよびnがそれぞれ互いに独立に3〜5の整数を表すことを特徴とする請求項4に記載のモノマー。
- 請求項1〜5いずれかに記載のモノマーを重合成分として含むことを特徴とするポリマー。
- 請求項6記載のポリマーを用いてなる眼用レンズ。
- 請求項6記載のポリマーを用いてなるコンタクトレンズ。
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