JP5076256B2 - モノマー組成物、それを用いたポリマーおよび眼用レンズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モノマー組成物、それを用いたポリマーおよび眼用レンズに関するものである。本発明はコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズとして特に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
近年、高酸素透過性と高含水率を両立する眼用レンズ用の素材として、シリコーンポリマーセグメント、親水性ポリマーセグメント(ポリエチレングリコールなど)および重合性基を有するいわゆるマクロモノマータイプのものが利用されている(米国特許第5,760,100号公報、米国特許第5,776,999号公報など)。しかしながらマクロモノマータイプの素材は分子量が大きすぎるために精製が困難で品質が安定しないと言う問題があった。また、マクロモノマータイプの素材からは低弾性率のポリマーが得られにくいという問題もあった。
【0003】
一方、マクロモノマーではない低分子量のモノマーとしては3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランが眼用レンズ用素材として広く利用されている(特開昭60−142324号公報、特開昭54−24047号公報)。3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランは高酸素透過性を与えるという特長を有する。しかしながら3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランは親水性がほとんど無いために、それから得られるポリマーは低含水率であり眼用レンズとしては好ましくないものであった。また、3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランから得られるポリマーは弾性率が比較的高くソフトコンタクトレンズ用としては最適なものではなかった。
【0004】
一方、例えば、特公昭56−39450号公報および特公昭56−40324号公報には下記式(m1−2)で表されるモノマーが記載されている。
【0005】
【化1】
【0006】
このモノマーを重合して得られるポリマーは比較的高い酸素透過性を有し、かつ比較的低い弾性率を有するという特長を有する。しかしながら、近年眼用レンズ用ポリマーとしては、より長い時間の連続装用を可能にするためにより高い酸素透過性が要求されるようになっており、式(m1−2)のモノマーから得られる眼用レンズ用ポリマーの酸素透過性では不十分であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる課題を解決し、高酸素透過性、高含水率および低弾性率といった各種性能のバランスに優れたポリマーを与えることが可能なモノマー組成物を提供することを目的とする。また該モノマーからなるポリマーおよび眼用レンズを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のモノマー組成物、それを用いたポリマーおよび眼用レンズは、下記の構成を有する。
【0009】
「(1)Q、Zを以下のように定義したとき、Qが0.1以上、Zが1以上でありかつ分子量が700以下の下記式(m1−1)〜(m1−36)で表されるモノマー(M1)100重量部に対し、[表1]の「モノマー」欄に記載のモノマー(M2)10〜1000重量部、および2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルメタクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルメタクリレート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルメタクリレート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、およびN−アクリロイルピロリジンから選ばれる親水性モノマー(M3)10〜1000重量部を含むモノマー組成物。
Q=(モノマー1分子中のSi原子の質量)/(モノマーの分子量)、
Z=(モノマー1分子中のエーテル酸素の数)+(モノマー1分子中の水酸基の数)。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【表2】
(2)前記モノマー(M1)100重量部に対し、前記モノマー(M2)20〜500重量部、および前記親水性モノマー(M3)20〜500重量部を含む(1)に記載のモノマー組成物。
(3)(1)または(2)に記載のモノマー組成物からなるポリマー。
(4)(3)に記載のポリマーを用いてなる眼用レンズ。
(5)(3)に記載のポリマーを用いてなるコンタクトレンズ。」
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
本発明のモノマー組成物は下記の構成を有する。
【0012】
「Q、Zを以下のように定義したとき、Qが0.1以上、Zが1以上でありかつ分子量が700以下のモノマー(M1)100重量部に対し、Qが0.2以上、Z=0でありかつ分子量が700以下のモノマー(M2)10〜1000重量部、およびQ=0でありかつ分子量が700以下の親水性モノマー(M3)10〜1000重量部を含むモノマー組成物。Q=(モノマー1分子中のSi原子の質量)/(モノマーの分子量)、Z=(モノマー1分子中のエーテル酸素の数)+(モノマー1分子中の水酸基の数)」
本発明において、Qが大きいとケイ素原子の含有率が高くなるため酸素透過性が高くなる傾向があり、Qが小さいと酸素透過性が低くなる傾向がある。
【0013】
また、Zは親水性基であるエーテル酸素と水酸基の数の総和であるので、Zが大きいと親水性が高くなり、Zが小さいと親水性が小さくなる傾向がある。
【0014】
まず(M1)のモノマーの具体例を挙げると、下記式(m1−1)〜(m1−36)で表されるモノマーである。
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】
【化4】
【0018】
【化5】
【0019】
これらのモノマーのQ、Zの値を表1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
これらのモノマーはいずれもQが0.1以上であり、かつZが1以上である。
【0022】
(M1)のモノマーは本発明のモノマー組成物の重量基準であり、100重量部使用される。(M1)のモノマーは複数種類を同時に用いても良いが、その場合はそれらの合計重量が100重量部である。
【0023】
次に(M2)のモノマーの具体例を表2に挙げる。表2には各モノマーのQ、Zの値も示した。
【0024】
【表2】
【0025】
これらのモノマーはいずれもQが0.2以上であり、かつZ=0である。
【0026】
(M2)のモノマーは10〜1000重量部使用されるが、より好ましくは20〜500重量部である。(M2)のモノマーは複数種類を同時に用いても良いが、その場合はそれらの合計重量が上記範囲である。(M2)の量が少なすぎると酸素透過性が低下するために好ましくなく、(M2)の量が多すぎると親水性が低下するために好ましくない。
【0027】
次に(M3)の親水性モノマーの例を挙げる。
【0028】
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルメタクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルメタクリレート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルメタクリレート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジンなどである。
【0029】
これらの中でも、ポリマーの機械物性と親水性のバランスに優れた2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドンおよびN,N−ジメチルアクリルアミドが最も好ましい。
【0030】
(M3)のモノマーは10〜1000重量部使用されるが、より好ましくは20〜500重量部である。(M3)のモノマーは複数種類を同時に用いても良いが、その場合はそれらの合計重量が上記範囲である。(M3)の量が少なすぎると親水性が低下するために好ましくなく、(M3)の量が多すぎると酸素透過性が低下するために好ましくない。
【0031】
本発明において、(M1)〜(M3)のモノマーは分子量が700以下のものが使用される。分子量が700を超えるとモノマーの減圧蒸留による精製が困難になるため、安定した品質のモノマーを製造することが困難になり好ましくない。また(M1)が分子量の大きいマクロモノマータイプである場合は、得られるポリマーの弾性率が高くなる傾向があり好ましくない。
【0032】
本発明のポリマー組成物は、(M1)〜(M3)以外のモノマーを含有してもよい。その場合のモノマーとしては、共重合さえ可能であれば制限はなく、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリル基、ビニル基および他の共重合可能な炭素炭素不飽和結合を有するモノマーを使用することができる。
【0033】
以下、その例をいくつか挙げるがこれらに限定されるものではない。(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ビニル安息香酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールビス(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート、両末端に炭素炭素不飽和結合を有するシロキサンマクロマーなどの多官能(メタ)アクリレート類、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレートなどのハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどの芳香族ビニルモノマー、マレイミド類、酢酸ビニルなどのビニルエステル類などである。
【0034】
(M1)〜(M3)以外のモノマーの含有率は(M1)100重量部に対して、100重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましい。(M1)〜(M3)以外のモノマーの含有率が多すぎるとポリマーの酸素透過性、含水率および弾性率のいずれかに悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0035】
本発明のモノマー組成物においては、ポリマーの良好な機械物性が得られ、消毒液や洗浄液に対する良好な耐性が得られるという意味で、1分子中に2個以上の共重合可能な炭素炭素不飽和結合を有するモノマーを共重合成分として用いることが好ましい。1分子中に2個以上の共重合可能な炭素炭素不飽和結合を有するモノマーの共重合比率は(M1)100重量部に対して、50重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましい。
【0036】
本発明のモノマー組成物は、紫外線吸収剤や色素、着色剤などを含むものでもよい。また重合性基を有する紫外線吸収剤や色素、着色剤を含有してもよい。
【0037】
本発明のモノマー組成物の重合方法、成形方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、一旦、丸棒や板状等に重合、成形しこれを切削加工等によって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、およびスピンキャスト重合法などである。
【0038】
本発明のモノマー組成物の重合においては、重合をしやすくするために過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤や、光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度に対して最適な分解特性を有するものを選択して使用する。一般的には10時間半減期温度が40〜120℃のアゾ系開始剤および過酸化物系開始剤が好適である。光重合開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、および金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独または混合して用いられ、およそ10重量部くらいまでの量で使用される。
【0039】
本発明のモノマー組成物の重合においては重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能であり特に制限は無い。例を挙げれば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、安息香酸メチル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶剤、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロへキサン、エチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、石油系溶剤等各種のものであり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。
【0040】
本発明のモノマー組成物の重合方法、成形方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、一旦、丸棒や板状等に重合、成形しこれを切削加工等によって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、およびスピンキャスト重合法などである。
【0041】
一例として本発明のモノマー組成物をモールド重合法により重合する場合について、次に説明する。
【0042】
モノマー組成物を一定の形状を有する2枚のモールドの空隙に充填する。そして光重合あるいは熱重合を行ってモールドの形状に賦型する。モールドは、樹脂、ガラス、セラミックス、金属等で製作されているが、光重合の場合は光学的に透明な素材が用いられ、通常は樹脂またはガラスが使用される。ポリマーを製造する場合には、多くの場合、2枚の対向するモールドにより空隙が形成されており、その空隙にモノマー組成物が充填されるが、モールドの形状やモノマー組成物の性状によってはポリマーに一定の厚みを与えかつ充填したモノマー組成物の液モレを防止する目的を有するガスケットを併用してもよい。空隙にモノマー組成物を充填したモールドは、続いて紫外線のような活性光線を照射されるか、オーブンや液槽に入れて加熱されて重合される。光重合の後に加熱重合したり、逆に加熱重合後に光重合する両者を併用する方法もありうる。光重合の場合は、例えば水銀ランプや捕虫灯を光源とする紫外線を多く含む光を短時間(通常は1時間以下)照射するのが一般的である。熱重合を行う場合には、室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の温度まで高めて行く条件が、ポリマーの光学的な均一性、品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。
【0043】
本発明のポリマーは、種々の方法で改質処理を行うことができる。表面の水濡れ性を向上させるためには、該改質処理を行うことが好ましい。
【0044】
ポリマーの具体的な改質方法としては、電磁波(光を含む)照射、プラズマ照射、蒸着およびスパッタリングなどケミカルベーパーデポジション処理、加熱、塩基処理、酸処理、その他適当な表面処理剤の使用、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。これらの改質手段の中で、簡便であり好ましいのは塩基処理および酸処理である。
【0045】
塩基処理または酸処理方法の一例としては、ポリマーを塩基性または酸性溶液に接触させる方法、ポリマーを塩基性または酸性ガスに接触させる方法等が挙げられる。そのより具体的な方法としては、例えば塩基性または酸性溶液にポリマーを浸漬する方法、ポリマーに塩基性または酸性溶液または塩基性または酸性ガスを噴霧する方法、ポリマーに塩基性または酸性溶液をヘラ、刷毛等で塗布する方法、ポリマーに塩基性または酸性溶液をスピンコート法やディップコート法で塗布する方法などを挙げることができる。最も簡便に大きな改質効果が得られる方法は、ポリマーを塩基性または酸性溶液に浸漬する方法である。
【0046】
ポリマーを塩基性溶液または酸性溶液に浸漬する際の温度は特に限定されないが、通常−50℃〜300℃程度の温度範囲内で行われる。作業性を考えれば−10℃〜150℃の温度範囲がより好ましく、−5℃〜60℃が最も好ましい。
【0047】
ポリマーを塩基性または酸性溶液に浸漬する時間については、温度によっても最適時間は変化するが、一般には100時間以内が好ましく、24時間以内がより好ましく、12時間以内が最も好ましい。接触時間が長すぎると、作業性および生産性が悪くなるばかりでなく、酸素透過性の低下や機械物性の低下などの悪影響が出る場合がある。
【0048】
塩基としてはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、各種炭酸塩、各種ホウ酸塩、各種リン酸塩、アンモニア、各種アンモニウム塩、各種アミン類、およびポリエチレンイミン、ポリビニルアミン等の高分子量塩基などが使用可能である。これらの中では、低価格であることおよび処理効果が大きいことからアルカリ金属水酸化物が最も好ましい。
【0049】
酸としては、硫酸、燐酸、塩酸、硝酸などの各種無機酸、酢酸、ギ酸、安息香酸、フェノールなどの各種有機酸、およびポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリスルホメチルスチレンなどの高分子量酸が使用可能である。これらの中では、処理効果が大きく他の物性への悪影響が少ないことから高分子量酸が最も好ましい。
【0050】
塩基性または酸性溶液の溶媒としては、無機、有機の各種溶媒が使用できる。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチルなどの各種エステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどの各種エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシドなどの各種非プロトン性極性溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタントリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶媒、およびフロン系溶媒などである。中でも経済性、取り扱いの簡便さ、および化学的安定性などの点で水が最も好ましい。溶媒としては、2種類以上の物質の混合物も使用可能である。
【0051】
本発明において使用される塩基性または酸性溶液は、塩基性物質または酸性物質および溶媒以外の成分を含んでいてもよい。
【0052】
本発明において、ポリマーは、塩基または酸処理の後、洗浄により塩基性または酸性物質を除くことができる。
【0053】
洗浄溶媒としては、無機、有機の各種溶媒が使用できる。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチルなどの各種エステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどの各種エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシドなどの各種非プロトン性極性溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタントリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶媒、およびフロン系溶媒などである。一般的には水が最も好適である。
【0054】
洗浄溶媒としては、2種類以上の溶媒の混合物を使用することもできる。洗浄溶媒は、溶媒以外の成分、例えば無機塩類、界面活性剤、および洗浄剤を含有してもよい。
【0055】
該改質処理は、ポリマー全体に対して行っても良く、例えば表面のみに行うなどポリマーの一部のみに行ってもよい。表面のみに改質処理を行った場合にはポリマー全体の性質を大きく変えることなく表面の水濡れ性のみを向上させることができる。
【0056】
本発明のポリマーは、酸素透過性は、酸素透過係数が40×10-11(cm2/sec)[mLO2/(mL・hPa)]以上が好ましく、50×10-11(cm2/sec)[mLO2/(mL・hPa)]以上がより好ましく、60×10-11(cm2/sec)[mLO2/(mL・hPa)]以上が最も好ましい。酸素透過係数をこの範囲にすることにより、コンタクトレンズとして使用した場合に目に対する負担をより軽減することができ、連続装用が容易になる。
【0057】
含水率は、好ましくは15重量%〜60重量%であり、さらに好ましくは20重量%〜50重量%である。含水率を15%以上にすることにより、コンタクトレンズとして使用した場合に目の中での動きが良くなり連続装用がより容易になる。含水率が高すぎると酸素透過係数が小さくなるために好ましくない。
【0058】
弾性率は、65kPa〜2000kPaが好ましく、100kPa〜1400kPaがより好ましく、150kPa〜1000kPaが最も好ましい。弾性率が低すぎると軟らかすぎて形状保持性が悪くなり取り扱いが難しくなるために好ましくない。弾性率が高すぎると硬すぎてコンタクトレンズとして使用した場合に装用感が悪くなるために好ましくない。
【0059】
本発明のモノマー組成物、それを用いたポリマーおよび眼用レンズはコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズとして特に好適に用いられる。
【0060】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
〔測定方法〕
本実施例における各種測定は、以下に示す方法で行った。
(1)プロトン核磁気共鳴スペクトル
日本電子社製のEX270型を用いて測定した。溶媒にクロロホルム−dを使用し、クロロホルムのピークを内部標準(7.26ppm)とした。
(2)含水率
サンプルとしてコンタクトレンズ形状のものを使用した。サンプルを真空乾燥器で40℃、16時間乾燥し、サンプルの重量(Wd)を測定した。その後、純水に浸漬して40℃恒温槽に一晩以上おいて含水させた後、表面水分をキムワイプで拭き取って重量(Ww)を測定した。次式にて含水率を求めた。
【0061】
含水率(%)=100×(Ww−Wd)/Ww
(3)酸素透過係数
理化精機工業社製の製科研式フィルム酸素透過率計を用いて35℃の水中にてコンタクトレンズ状サンプルの酸素透過係数を測定した。なお、サンプルの膜厚は必要に応じて複数枚を重ね合わせることによって調整した。
(4)弾性率
規定の打抜型を用いてコンタクトレンズ形状のものから切り出したサンプル〔幅(最小部分)5mm、長さ14mm、厚さ0.2mm程度〕を使用し、オリエンテック社製のテンシロンRTM−100型を用いて測定した。引張速度は100mm/minとし、つかみ間距離は5mmとした。
〔合成例1〕
式(m1−7)で表される化合物の合成
【0062】
【化6】
【0063】
(1)滴下ロート、ジムロートコンデンサおよび撹拌翼を備えた500mL三ツ口フラスコに1,3−プロパンジオール(100g)および水酸化カリウム(86.7g)を入れ、室温で1時間程度撹拌した。滴下ロートに臭化アリル(159g)を入れ、撹拌しながら滴下した。滴下終了後、撹拌しながら60℃で3時間反応させた。ジエチルエーテル(250mL)を加えた後、塩をろ過で除き、ロータリーバキュームエバポレーターにより溶媒成分を留去した。再び塩が析出したので再度ろ過で除いた。減圧蒸留により精製し、3−アリロキシプロパノールを無色透明液体として得た。
(2)滴下ロートおよび撹拌翼を備えた300mL三ツ口フラスコに、(1)で合成した3−アリロキシプロパノール(15g)、トリエチルアミン(19.6g)およびテトラヒドロフラン(30mL)を入れた。この三ツ口フラスコを氷浴に浸漬し、撹拌しているところへ、メタクリル酸クロリド(20.2g)を約30分かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌を行った。析出した塩を吸引ろ過で除いた。ろ液に酢酸エチル(100mL)を加え、分液ロートに入れ、食塩水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水をこの順に用いて洗浄した。無水硫酸マグネシウムにより脱水処理を行った後、ロータリーバキュームエバポレーターで溶媒を留去した。減圧蒸留により精製し、3−アリロキシプロピルメタクリレートを無色透明液体として得た。
(3)塩化白金酸六水和物を同重量の2−プロパノールに溶かし、テトラヒドロフランで1.93×10-5mol/gに希釈した。以下この溶液を「触媒溶液」と呼ぶ。
【0064】
マグネット式回転子を備えた100mLナスフラスコに、(2)で合成した3−アリロキシプロピルメタクリレート(6.94g)、トルエン(12g)および触媒溶液(3.9g)を入れた。フラスコを水浴に漬けて冷却し、撹拌しながらトリクロロシラン(10.21g)を少しずつ加えた。発熱が治まったことを確認してからフラスコをセプタムで密栓し、室温で一晩静置した。ロータリーバキュームエバポレーターにより低沸点成分を除いた後、減圧蒸留により精製し、3−(3−メタクリロキシプロポキシ)プロピルトリクロロシランを無色透明液体として得た。
(4)マグネット式回転子を備えた200mLナスフラスコにヘキサン(2.4g)、メタノール(2.4g)および水(4.8g)を入れ、フラスコを氷浴に浸漬し、フラスコ内を激しく撹拌した。ここへ、(3)で合成した3−(3−メタクリロキシプロポキシ)プロピルトリクロロシラン(4.58g)およびメトキシトリメチルシラン(8.94g)からなる混合物を約10分間かけて滴下した。滴下終了後、室温において4時間撹拌を続けた。反応液は2層に分かれるので、分液ロートにより上層を分取した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(3回)および水(2回)をこの順に用いて洗浄した。無水硫酸ナトリウムにより脱水を行った後、ロータリーバキュームエバポレーターで溶媒を留去した。減圧蒸留により精製し、微黄色透明液体を得た。この液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し式(m1−7)で表される化合物であることを確認した。
〔合成例2〕
式(m1−10)で表される化合物の合成
【0065】
【化7】
【0066】
メタクリル酸クロリドのかわりにアクリル酸クロリドを使用する他は、合成例1と同様に行って微黄色透明液体を得た。この液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し式(m1−10)で表される化合物であることを確認した。
〔合成例3〕
式(m1−13)で表される化合物の合成
【0067】
【化8】
【0068】
(1)滴下ロート、ジムロートコンデンサおよび撹拌翼を備えた500mL三ツ口フラスコにジエチレングリコール(100g)および水酸化カリウム(62.2g)を入れ、室温で1時間程度撹拌した。滴下ロートに臭化アリル(114g)を入れ、撹拌しながら滴下した。滴下終了後、撹拌しながら60℃で3時間反応させた。ジエチルエーテル(250mL)を加えた後、塩をろ過で除き、ロータリーバキュームエバポレーターにより溶媒成分を留去した。再び塩が析出したので再度ろ過で除いた。減圧蒸留により精製し、ジエチレングリコールモノアリルエーテルを無色透明液体として得た。
(2)滴下ロートおよび撹拌翼を備えた300mL三ツ口フラスコに、(1)で合成したジエチレングリコールモノアリルエーテル(20g)、トリエチルアミン(20.7g)およびテトラヒドロフラン(30mL)を入れた。この三ツ口フラスコを氷浴に浸漬し、撹拌しているところへ、メタクリル酸クロリド(21.4g)を約5分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌を行った。析出した塩を吸引ろ過で除いた。ろ液に酢酸エチル(100mL)を加え、分液ロートに入れ、食塩水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水をこの順に用いて洗浄した。無水硫酸マグネシウムにより脱水処理を行った後、ロータリーバキュームエバポレーターで溶媒を留去した。減圧蒸留により精製し2−(2−アリロキシエトキシ)エチルメタクリレートを無色透明液体として得た。
(3)塩化白金酸六水和物を同重量の2−プロパノールに溶かし、テトラヒドロフランで1.93×10-5mol/gに希釈した。以下この溶液を「触媒溶液」と呼ぶ。
【0069】
マグネット式回転子を備えた100mLナスフラスコに、(2)で合成した2−(2−アリロキシエトキシ)エチルメタクリレート(13.63g)、トルエン(13g)および触媒溶液(6.6g)を入れた。フラスコを水浴に漬けて冷却し、撹拌しながらトリクロロシラン(17.22g)を少しずつ加えた。発熱が治まったことを確認してからフラスコをセプタムで密栓し、室温で一晩静置した。ロータリーバキュームエバポレーターにより低沸点成分を除いた後、減圧蒸留により精製し、3−[2−(2−メタクリロキシエトキシ)エトキシ]プロピルトリクロロシランを無色透明液体として得た。
(4)マグネット式回転子を備えた200mLナスフラスコにヘキサン(6.0g)、メタノール(6.0g)および水(12.0g)を入れ、フラスコを氷浴に浸漬し、フラスコ内を激しく撹拌した。ここへ、3−[2−(2−メタクリロキシエトキシ)エトキシ]プロピルトリクロロシラン(12.5g)およびメトキシトリメチルシラン(22.3g)からなる混合物を約10分間かけて滴下した。滴下終了後、室温において3.5時間撹拌を続けた。反応液は2層に分かれるので、分液ロートにより上層を分取した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(3回)および水(2回)をこの順に用いて洗浄した。無水硫酸ナトリウムにより脱水を行った後、ロータリーバキュームエバポレーターで溶媒を留去した。減圧蒸留により精製し、微黄色透明液体を得た。この液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し式(m1−13)で表される化合物であることを確認した。
〔合成例4〕
式(m1−25)で表される化合物の合成
【0070】
【化9】
【0071】
(1)200mLのナスフラスコにエチレングリコールモノアリルエーテル(60g)、トリエチルアミン(18.7g)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(21mg)を加え、α−ブロモメチルアクリル酸メチル(30g)を0℃で滴下した。反応溶液を100℃で24時間加熱した。反応溶液を濾過して沈殿を除去した後、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で溶媒を留去した。得られた液体を減圧蒸留し、透明液体を得た。
(2)50mLのナスフラスコに上記(1)で得た透明液体(8g)、トルエン(50mL)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(14mg)、トリクロロシラン(8.7g)、塩化白金酸(IV)六水和物(33mg)を加え、室温で2時間撹拌した。反応溶液の溶媒を減圧下で留去し、得られた留分を減圧蒸留し透明液体を得た。
(3)上記(2)で得られた液体(全量)をトリメチルメトキシシラン(38.8g)と混合したものを、水(100mL)、メタノール(50mL)、ヘキサン(50mL)の混合溶液に0℃で滴下した。反応溶液を室温で16時間撹拌した後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で溶媒を留去した。得られた液体を減圧蒸留し無色透明の液体を得た。この液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し式(m1−25)で表される化合物であることを確認した。
〔合成例5〕
式(m1−2)で表される化合物の合成
【0072】
【化10】
【0073】
冷却管、撹拌装置および滴下ロートを備えた200ml三ツ口フラスコに、グリシドキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(信越化学工業社製、101.0g)、4−t−ブチルカテコール(0.36g)および水酸化カリウム(1.95g)を入れ、ここへ窒素雰囲気下、室温で撹拌しながらメタクリル酸(51.7g)を約20分間かけて滴下した。滴下終了後撹拌しながら窒素雰囲気下100℃で9時間反応を行った。一晩放置した後、トルエン(500ml)を加え、不溶物をろ過で除いた。トルエン溶液を0.5M水酸化ナトリウム(約500ml)で5回洗浄後、さらに食塩水(飽和食塩水を5倍に希釈したもの)で3回洗浄した。無水硫酸ナトリウムを加えて脱水を行った。硫酸ナトリウムを濾過で除き、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(0.01g)および4−t−ブチルカテコール(0.01g)を加えた後、ロータリーバキュームエバポレーターによって溶媒を留去した。この液体のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し式(m1−2)で表される化合物であることを確認した。
〔比較合成例1〕
米国特許第5,776,999号公報の EXAMPLE A-1(第46欄)に記載の方法に従って、ポリジメチルシロキサン部位とポリエチレングリコール部位を有する分子量約4000のマクロモノマー(以下マクロモノマーAと呼ぶ)を得た。
〔実施例1〕
合成例1で得た式(m1−7)の化合物(100重量部)、3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(略称TRIS、100重量部)、N,N−ジメチルアクリルアミド(略称DMAA、128重量部)、トリエチレングリコールジメタクリレート(略称3G、3.3重量部)、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(商品名ダロキュア1173、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、1.6重量部)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(32.8重量部)を混合し撹拌した。均一で透明なモノマー混合物が得られた。このモノマー混合物をアルゴン雰囲気下で脱気した。窒素雰囲気のグローブボックス中で透明樹脂(ポリ4−メチルペンテン−1)製のコンタクトレンズ用モールドに注入し、捕虫灯を用いて光照射(1mW/cm2、10分間)して重合し、コンタクトレンズ状サンプルを得た。得られたサンプルを、大過剰量のイソプロピルアルコールに60℃、16時間浸漬した後、大過剰量の純水に24時間浸漬した。その後、清浄な純水に浸漬して保存した。得られたサンプルは透明で濁りが無かった。このサンプルの含水率は26%、酸素透過係数は71×10-11(cm2/sec)[mLO2/(mL・hPa)]、弾性率は480kPaであった。すなわち含水率は20重量%〜50重量%、酸素透過係数は60×10-11(cm2/sec)[mLO2/(mL・hPa)]以上、弾性率は150kPa〜1000kPaという好適な目標範囲であった。
〔実施例2〜11〕
表3に示したモノマー組成で実施例1と同様にしてコンタクトレンズ状サンプルを作成した。重合開始剤ダロキュア1173およびジエチレングリコールジメチルエーテルは実施例1と同じ量を使用した。得られたサンプルはいずれも透明で濁りが無かった。これらのサンプルの含水率、酸素透過係数および弾性率を表3に示した。いずれのサンプルも含水率は20重量%〜50重量%、酸素透過係数は60×10-11(cm2/sec)[mLO2/(mL・hPa)]以上、弾性率は150kPa〜1000kPaという好適な目標範囲であった。
〔比較例1〜7〕
表3に示したモノマー組成で実施例1と同様にしてコンタクトレンズ状サンプルを作成した。これらの重合開始剤ダロキュア1173およびジエチレングリコールジメチルエーテルは実施例1と同じ量を使用した。得られたサンプルはいずれも透明で濁りが無かった。これらのサンプルの含水率、酸素透過係数および弾性率を表3に示した。いずれのサンプルも含水率、酸素透過係数および弾性率のうち少なくとも1つが、含水率は20重量%〜50重量%、酸素透過係数は60×10-11(cm2/sec)[mLO2/(mL・hPa)]以上、弾性率は150kPa〜1000kPaという好適な目標範囲を外れていた。
【0074】
【表3】
【0075】
TRIS:3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
TRISA:3−アクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
TRISAAm:3−アクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば高酸素透過性、高含水率および低弾性率といった各種性能のバランスに優れたポリマーを与えることが可能なモノマー組成物を提供することができる。また該モノマーからなるポリマーおよび眼用レンズを提供することができる。
Claims (5)
- Q、Zを以下のように定義したとき、Qが0.1以上、Zが1以上でありかつ分子量が700以下の下記式(m1−1)〜(m1−36)で表されるモノマー(M1)100重量部に対し、[表1]の「モノマー」欄に記載のモノマー(M2)10〜1000重量部、および2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルメタクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルメタクリレート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルメタクリレート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、およびN−アクリロイルピロリジンから選ばれる親水性モノマー(M3)10〜1000重量部を含む眼用レンズ用のモノマー組成物。
Q=(モノマー1分子中のSi原子の質量)/(モノマーの分子量)
Z=(モノマー1分子中のエーテル酸素の数)+(モノマー1分子中の水酸基の数)
- 前記モノマー(M1)100重量部に対し、前記モノマー(M2)20〜500重量部、および前記親水性モノマー(M3)20〜500重量部を含む請求項1に記載のモノマー組成物。
- 請求項1または2に記載のモノマー組成物からなるポリマー。
- 請求項3に記載のポリマーを用いてなる眼用レンズ。
- 請求項3に記載のポリマーを用いてなるコンタクトレンズ。
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