JP4686513B2 - 板状チーズと、板状チーズ積層体およびその製造方法 - Google Patents

板状チーズと、板状チーズ積層体およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は板状チーズ、板状チーズ積層体およびその製造方法に関する。
通常、市場に流通している板状チーズ(いわゆるスライスチーズ)は、板状チーズを積層して厚板状の積層体として一体化してされているが、消費者が喫食する際には板状チーズを適宜剥離して食している。一般的には板状チーズは調理時あるいは喫食時等の消費時に室温下に置かれる。このような条件下においては、前記積層体から、板状チーズを1枚ずつ剥離することが難しい場合がある。そこで、前記積層体からの剥離を容易とするため、1枚ずつ交互に2mm程度の幅でずらして積層することや、1枚ずつフィルムで包装すること等の工夫が行われている(非特許文献1および非特許文献2参照)。これらは、消費者が、逐一チーズを切断する必要がないため、極めて利便性が高い。
一方、チーズを燻煙処理して得られるスモークチーズは公知であり、チーズを円筒状のケーシングに詰めて表面のみ(通常、表面から0.5mm以下)が燻煙処理されたチーズが知られている(非特許文献2参照)。
また、複数の板状チーズを調製し、調製した板状チーズの全面を燻煙処理し、全面を燻煙処理した複数の板状チーズを積層し、厚板状のスライススモークチーズとなすことにより製造される、全面にわたって燻煙処理されている板状チーズ、およびその積層体が知られている(特許文献1参照)。
特開2002−315505号公報 「食材ガイド’93 素材食品」サンケイ新聞データシステム・マーケティング局、平成5年5月、p.122、右欄4段「雪印スライスチーズ」の項 「チーズの本」株式会社淡交社、1989年7月8日、p.52,55各写真
しかしながら、各従来技術には次のような問題点であった。
(1)1枚ずつ交互にずらして積層することにより、ずらさない場合に比較して板状チーズの剥離は多少容易になるものの、消費時の温度が20℃を超えると、板状チーズがその周縁部を含めて軟らかくなり、周縁部を把持して剥離することが困難となるという問題点があった。
(2)1枚ずつフィルムで包装する場合は、製造工程が煩雑になることに加えて、前記と同様に消費時の温度が20℃を超えると、板状チーズが軟らかくなり、フィルムに結着してしまい剥離することが困難となるという問題点があった。
(3)特許文献1の全面にわたって燻煙処理されている板状チーズは、表面全体が燻煙処理され、硬化していることから、剥離性には問題はない。チーズの表面の水分活性が低下しているので、保存性が向上している。しかしながら、当該チーズは、1枚ずつ表面全体を燻煙処理しているため、薄いチーズの内奥まで燻煙が染み渡り、強い独特の風味を有し、チーズ全体の食感も硬くなる。このことから、燻煙処理を行わない通常のスライスチーズとは異なり、癖が強く、万人の嗜好に合致するものではないという問題点があった。さらに、特許文献1の製造方法では、板状チーズを一枚ずつ燻煙処理するため、同時に燻煙処理出来る枚数も限られ、製品の燻煙の程度にバラツキが大きく、同一品質の製品を大量生産することが困難との問題点があった。
そこで本発明では、板状チーズ積層体として一体化されているが、消費時に各板状チーズを容易に1枚ずつ分離でき、かつ燻煙してない通常のチーズとほぼ同等の風味と食感を維持した板状チーズおよびその積層体の提供を目的とする。また、板状チーズ積層体の大量生産に適した製造方法を提供することを目的とする。
本発明の板状チーズ積層体は、複数枚の板状チーズが積層されている板状チーズ積層体であって、前記各板状チーズは、積層方向に略直交する面の内、少なくとも一方の面が周縁部にのみ、燻煙処理された燻し部を有することを特徴とする。前記各板状チーズの燻し部が、隣接する他の板状チーズと接触しないように積層されていることが好ましく、前記各板状チーズは矩形状であって、1辺に添って前記燻し部を有することが好ましい。
本発明の板状チーズ積層体の製造方法は、本発明の前記板状チーズ積層体の製造方法であって、複数枚の板状チーズが積層した未処理積層体を得る積層工程と、前記未処理積層体を燻煙処理し、燻し部を形成する燻煙工程を有することを特徴とする。前記未処理積層体は、複数枚の板状チーズが互いにずれて積層されて、はみ出し部分が形成され、前記燻煙工程は、前記はみ出し部分に前記燻し部を形成することが好ましく、前記未処理積層体は、複数枚の矩形状の板状チーズが、交互にはみ出るように積層されていることがより好ましい。
そして、前記燻煙工程は、前記未処理積層体を、燻煙が透過しない保護材に挟んで燻煙処理をすることが好ましい。
本発明の板状チーズは、前記板状チーズ積層体を、前記各板状チーズ毎に剥離して得られることを特徴とする。
本発明の板状チーズおよびその積層体は、積層体として一体化されているが、消費時には各板状チーズを容易に1枚ずつ分離でき、かつ燻煙未処理品とほぼ同等の風味と食感を維持している。また、板状チース積層体の製造方法は、本発明の板状チーズ積層体を効率よく製造でき、大量生産に適している。
本発明の板状チーズ積層体および板状チーズについて、例を挙げて説明する。なお、本発明において百分率は、特にことわりのない限り質量%を示す。
本発明において「チーズ」とは、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード等、乳等省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)、公正競争規約の成分規格等において規定されたものの他、当該技術分野においてチーズが通常の意味を有する範囲のものを全て包含するものとする。また、一成分としてチーズを含有して加工された食品、例えば、プロセスチーズ、チーズフード等を主原料として、チーズの風味・食感を付与した各種食品等も包含するものとする。
(第1の実施形態)
本発明の板状チーズ積層体の第1の実施形態について、図1と図2を用いて説明する。図1は本実施形態の板状チーズ10の斜視図であり、図2は板状チーズ積層体30の断面図である。
図1に示すように、板状チーズ10は略正方形であり、側面部16と18、ならびに側面部16、18に対向した側面部16’および18’が燻煙されている。加えて、板状チーズ10の一方の面12には、辺20に添って、幅L1の燻し部14を有している。また、面12に対向する面12’にも、辺22に添って、幅L1の燻し部14’を有している。
図2に示すように、板状チーズ積層体30は、板状チーズ10が積層されて構成されている。板状チーズ積層体30において、各板状チーズ10は辺20、22の長さ方向と直角に、L1とほぼ同じ長さのL2ずつずれて積層している。これにより側面部18が隣接する板状チーズ10の側面部18’よりも長さL2だけはみ出し、側面部18’は隣接する板状チーズ10の側面部18よりL2だけ内側となる。これらはみ出た部分の表面が燻し部14、裏面が燻し部14’となっている。燻し部14、14’は隣接する板状チーズ10と接触していない。
本実施形態の板状チーズ10にあっては、燻し部14、14’が燻煙処理をしていない部分よりも硬くなるため、剥離する際における把持部として機能する。また、燻し部14、14’は垂れ下がりにくく、剥離するための隙間を板状チーズ積層体30に形成しているため、剥離の容易性を向上させることができる。さらに、燻し部14、14’以外に、広範囲に燻煙未処理部分が存在するため、全体としては燻煙未処理品とほぼ同等の風味と食感を維持することができる。
本実施形態における板状チーズ10の寸法は特に限定されることはなく、用途に合わせて決定することができる。各辺の長さと厚さとの関係において、1辺の長さを長くすると厚みを厚くしなければ、板状チーズ積層体10から各板状チーズ10を破損せずに剥がすことが困難となる。また、1辺の長さが短かければ、厚みを薄くしても、板状チーズ積層体30から各板状チーズ10を破損せずに剥離することができる。
一般には消費者が一食に使用するのに適度な厚さ・面積であることが好ましい。例えば、厚さ2〜3mmで、1辺の長さが10〜100mmである、いわゆるスライスチーズの形状とすることができる。また、厚さ3〜10mmで、1辺の長さが10〜70mmとなるようにスライスしたいわゆる「切れてるチーズ」のような形状とすることもできる。
燻し部14が形成されている範囲は特に限定されることはないが、燻煙前のチーズの風味の維持と外観と剥離のしやすさ等を考慮して設定することができる。
燻し部14の幅L1と、板状チーズ積層体30におけるはみ出した部分の長さL2とは、ほぼ同等である。L1は特に限定されることはなく、板状チーズの面積・厚さ・性状等と考慮して決定することが好ましい。一般的には、1mm未満であると剥離時の把持部として役割を充分に果たせず、2mm以上となると把持がより容易となる。一方、5mmを超えると、はみ出した部分が自重で垂れ下がり、他のチーズと接して結着してしまうことがある。従って、燻し部14、14’の幅L1は1〜5mmであることが好ましく、2〜5mmであることがさらに好ましい。
また、板状チーズ積層体30の形態におけるはみ出し部分の長さL2の好ましい範囲は、L1と同様である。
本発明の板状チーズ積層体30における板状チーズ10の積層枚数は特に限定されることはなく、板状チーズ10の1枚の厚みや大きさ、チーズの組成(水分、脂肪/タンパク質比率等)、製造機器、市場適正等を考慮して決定することができる。一般的には10枚〜50枚の板状チーズ10を積層して、板状チーズ積層体30とするのが通常である。
板状チーズ積層体30の高さは特に限定されることはなく、板状チーズ1枚の厚みや大きさ、チーズの組成(水分、脂肪/タンパク質比率等)、製造機器、市場適正等を考慮して決定することができる。一般的には、板状チーズ積層体30の高さが200mmを超えると、積層体全体の変形が起きる可能性がある。このため200mm以下であることが好ましい。
一般的には面積が広く、厚みの厚い板状チーズほど、板状チーズの枚数を多くし積層の高さを高くすることができる。逆に、面積が小さく厚みの薄いものほど枚数を少なくし高さを低くすることが好ましい。これらの事情を鑑み、積層体の変形防止に好ましい板状チーズの枚数、ならびに積層体の高さを設定することが好ましい。
本実施形態の板状チーズ10ならびに板状チーズ積層体30の製造方法を図3を用いて説明する。
まず、燻煙していない未処理板状チーズ110を得る。この板状チーズ110の製造方法は特に限定されることなく、公知の方法により製造することができる。例えば直方体形状のチーズ製品を調製し、これをピアノ線を用いた切断器等によって切断して略正方形の板状に加工することや、適切な厚さのシート状のチーズ製品を調製し、これを任意の形状に切断することによって調製できる。
次に複数枚の未処理積層体130を得る(積層工程)。図3に示すように、未処理積層体130は、未処理板状チーズ110が積層されて構成されている。未処理積層体130において、各未処理板状チーズ110は辺120、122の長さ方向と直角に、L1とほぼ同じ長さのL3ずつずらして積層する。これにより側面部118が隣接する未処理板状チーズ110の側面部118’よりも長さL3だけはみ出し、側面部118’は隣接する未処理板状チーズ110の側面部118よりL3だけ内側となる。これらはみ出た部分の表面114および裏面114’は隣接する未処理板状チーズ110と接触していない。こうして積層された未処理積層体130を得る。
次に未処理積層体130を燻煙する(燻煙工程)。図3に示すように、燻煙工程では未処理積層体130を保護材140で挟んで燻煙処理を行う。保護材140は未処理積層体130に接触面142で密着している。
燻煙処理では、露出部分が燻煙に晒されるので、未処理積層体130の表面114および裏面114’が燻し部14、14’となる。ただし、接触面142に接している未処理板状チーズ110の面(未処理積層体130の最表面及び最裏面)には燻し部14あるいは14’が形成されない。
保護材140は燻煙を透過しない素材であれば特に限定されず、例えばステンレス板、樹脂シート、陶磁器性いわゆるセラミック板等を挙げることができる。
保護材140の間には複数の未処理積層体130を挟んで、一度に燻煙処理することができる。複数の未処理積層体130を保護材140で挟むには、複数の未処理積層体130を1枚の保護材140の上に並べる。次いで、その上にもう1枚の保護材140を載せればよい。
前記保護材140に複数の未処理積層体130を並べる場合、その間隔は特に限定されるものではなく、燻煙が充分に流通できる間隔であれば良い。
燻煙処理方法においては、高温下での燻煙処理ではチーズが溶融してしまう。従って、燻煙処理方法は低温燻煙によって行うことが好ましい。低温燻煙の方法としては、公知の方法を採ることができる。この内、燻煙発生装置によって発生させた燻煙を燻煙室に導入して燻煙処理を行うジェネレーター方式が、板状チーズに与えるダメージが総じて少ないため、特に好ましい。
ジェネレーター方式で燻煙処理する場合は、燻煙の温度は10〜30℃の範囲、好ましくは20〜25℃の範囲が燻煙効率からいって好適である。また、燻煙処理の時間は、15〜180分が好ましい。板状チーズの中心部を未処理板状チーズの風味および食感に維持するため、過剰な燻煙を防止する観点から15〜90分の燻煙処理を行うことが好適である。なお、燻煙処理条件を変更することで、板状チーズの中心部のスライスチーズの風味および食感を適宜変更することも可能である。
当該燻煙処理は、外観上は、略正方形の板状チーズの周縁部が軽く着色する程度、即ち、板状チーズ表面に燻煙色を付ける程度となる条件で行えば良い。
燻煙材は、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、ブナ、なら、桜、リンゴ、クルミ、シラカバ等から1種または2種以上を選択して使用することができる。また、材料の形態も特に限定されることなく、例えば、おがくず状、チップ状、押し固めた固形状等を使用することができる。
本実施形態の板状チーズ積層体30の製造方法では、未処理積層体130のはみ出し部分の長さL3と同等の幅L1の燻し部14、14’を有する板状チーズ10が、燻し部14、14’において隣接する板状チーズ10と接することなくはみ出した板状チーズ積層体30を得ることができる。
また、板状チーズ積層体30と同形態の未処理積層体130を燻煙処理することにより、燻煙付着部分を容易に管理できるため、板状チーズ10における燻し部14、14’の領域のばらつきが抑えられ、歩留まり向上を図ることができる。
加えて、未処理積層体130を保護材140で挟むことで、未処理積層体130の最表面における未処理板状チーズの露出面全てが燻煙処理されて、規格外品発生による製造歩留まり低下を防止することができる。未処理積層体130を保護材140を用いずに燻煙した場合、未処理積層体130の積層数が10の場合、最表面層の2枚が規格外品となり、製造歩留まりは80%となる。同様に、未処理積層体130の積層数が50の場合では歩留まり96%となる。
(第2の実施形態)
本発明の板状チーズ積層体の第2の実施形態について、図4と図5を用いて説明する。図4は板状チーズ10aの斜視図であり、図5は最表面の板状チーズ10aを取り除いた板状チーズ積層体30aの斜視図である。
図4に示すように板状チーズ10aは略正方形であり、側面部16a、18aおよび側面部16a、18aに対向した側面部16a’と18a’が燻煙されている。加えて板状チーズ10aの一方の面12aには辺20aと24aに添って、幅L4の燻し部14aを有している。また、面12aに対向する面12a’にも、辺22a、26aに添って幅L4の燻し部14a’を有している。
図5に示すように、板状チーズ積層体30aは複数枚の板状チーズ10aが積層されて構成されている。板状チーズ積層体30aにおいて、各板状チーズ10aは辺20a、22aの長さ方向にL4とほぼ同じ長さのL5ずつずれ、さらに加えて辺24a、26aの長さ方向にL5ずつずれて積層している。これにより側面部16aと18aが隣接する板状チーズ10aの側面部16a’と18a’よりも長さL5分だけはみ出し、側面部16a’と18a’は隣接する板状チーズ10aの側面部16aと18aよりL5だけ内側となる。これらのはみ出た部分の表面が燻し部14aとなり、裏面が燻し部14a’となっている。燻し部14a、14a’は、隣接する板状チーズ10aと接してない。
本実施形態の板状チーズ10aにあっては、2辺にわたって形成される燻し部14a、14a’が、燻煙処理をしていない部分よりも硬くなるため、剥離する際における把持部として機能する。また、燻し部14a、14a’は垂れ下がりにくく、剥離するための隙間を板状チーズ積層体30aに形成しているため、剥離の容易性を向上させることができる。さらに、燻し部14a、14a’以外に、広範囲に燻煙未処理部分が存在するため、全体としては燻煙未処理品とほぼ同等の風味と食感を維持することができる。
板状積層体チーズ30aの高さ、および積層枚数は、第1の実施形態と同様である。燻し部14aの幅L4の好ましい範囲は、燻し部14における幅L1と同様である。また、板状チーズ積層体30aにおいて板状チーズ10aがはみ出した部分の長さL5の好ましい範囲は、板状チーズ積層体30におけるL2と同様である。
本実施形態の板状チーズ30aならびに板状チーズ積層体10aの製造方法を図6を用いて説明する。
第1の実施形態と同様に燻煙してない未処理板状チーズ110aを得る。次に図6に示すように未処理板状チーズ110aを積層して、燻煙してない未処理積層体130aを得る(積層工程)。未処理積層体130aにおいて、未処理板状チーズ110aは辺120a、122aの長さ方向に、L5とほぼ同じ長さのL6ずつずらし、加えて辺124a、126aの長さ方向に、L6ずつずらして積層する。これにより、側面部116aと118aが隣接する板状チーズ110aの側面部116a’と118a’よりも長さL6分だけはみ出し、側面部116a’と118a’は隣接する板状チーズ110aの側面部116aと118aよりL6だけ内側となる。これらはみ出た部分の表面および裏面は隣接する未処理板状チーズ110aと接触していない。こうして積層された未処理積層体130aを得て燻煙処理を行う。本実施形態においても、前述の第1の実施形態と同様に、図示しない保護材で未処理積層体130aを挟んで燻煙処理する。燻煙処理により、未処理積層体130aのはみ出た部分が燻し部14a、14a’となる。ただし、図示しない保護材に接している未処理板状チーズ110aの面(未処理積層体130aの最表面及び最裏面)には燻し部14aあるいは14a’が形成されない。これにより、板状チーズ積層体30aが得られる。
本実施形態の板状チーズ積層体30aの製造方法では、はみ出し部分の長さL6と同等の幅L4の燻し部14a、14a’を2辺にわたって有する板状チーズ10aが、燻し部14a、14a’において隣接する板状チーズ10aと接することなくはみ出した板状チーズ積層体30aを得ることができる。そして、得られた板状チーズ積層体30aは、特段の加工を加えることなく、燻し部14a、14a’が把持部となって、1枚ずつ容易に剥離できる。
(その他の実施形態)
本発明の板状チーズ積層体は上述の実施形態に限定されるではない。
第1の実施形態においては、L1、L2、L3の長さはほぼ等しく、また、第2の実施形態においてもL4、L5、L6の長さはほぼ等しくなっているが、燻し部の幅はこのような関係を有するものに限られない。例えば、燻煙工程後に板状チーズ積層体から板状チーズを剥離し、再度燻し部を揃えて積層させることにより、L2<L1(L5<L4)としてもよい。さらに、燻し部が全くはみ出しておらず、完全に重なり合っている状態(L2=0,L5=0)としても良い。かかる形態においても、燻し部は隣接する板状チーズとの接着能力が低いため、板状チーズ積層体から板状チーズを容易に剥離することができる。
また、燻し時のずれ幅が燻し部の幅より狭くてもよい(L3<L1,L6<L4)。さらに、燻し時のずれがない状態、すなわち、はみ出し部分がない状態(L3=0,L6=0)としてもよい。例えば、燻煙工程における燻し時間を長くする等により、板状チーズ同士の境界から燻煙を重なり部分までしみ込ませて、未処理積層体のはみ出し部の長さよりも、幅広い燻し部を形成することができる。
第1および第2の実施形態においては、略正方形の板状チーズを用いて、1辺あるいは2辺に添った燻し部を形成させている。しかし、前記燻し部の形状は特に限定されることはなく、板状チーズ同士の付着を防止し、剥離の際に把持部として機能するものであれば良い。例えば、前記積層工程において、略正方形の板状チーズの4角のうちの1角を任意の大きさで切り取り、切り取られた部分が重ならないように未処理板状チーズを積層する。そして未処理積層体を燻煙処理することで、板状チーズの1角に、隣接する板状チーズに接触しないはみ出し部分を形成させても良い。
第1の実施形態においては、各板状チーズ10は任意の1辺に対して平行方向に交互にはみ出して積層されており、第2の実施形態においては各板状チーズ10aは板状チーズ10aの対角線方向に交互にはみ出して積層されている。しかし、はみ出す方向は特に限定されず、無秩序な方向にはみ出していても良い。また、板状チーズ積層体の全ての各板状チーズが一方向にずれて積層され、全体が一方向に傾いた形状であっても良い。
また、第1および第2の実施形態においては板状チーズは略正方形であるが、形状は特に限定されず、長方形、多角形、円形、楕円形等であっても良い。例えば、楕円形の板状チーズを、隣接する楕円形の板状チーズに対して、各板状チーズを任意の角度で回転させながら積層することで、略三日月形状のはみ出し部が形成される。この未処理積層体を燻煙処理することで、前記のはみ出し部分が燻煙される。そして、燻し部の幅が端部と中心部で異なる形状の燻し部が、隣接した板状チーズに接触しないはみ出し部を形成しても良い。いずれの形態においても、板状チーズに形成された燻し部は、隣接する板状チーズと接触せず、板状チーズを容易に剥離することができる。なお、円形等、曲線状の外形を有する場合にも、燻し部の最大幅は、L1と同等であることが好ましい。
また、各板状チーズは、厚みが一定のものに限られず、例えば、円盤状等、平面状の側面を有さない形態でもよい。
第1および第2の実施形態の板状チーズ積層体は板状チーズ同士が接して積層されているが、各板状チーズ10と板状チーズ10の間には1枚毎に、又は単位枚数(例えば10枚)毎に、剥離を容易とするためのシートを挟み込んだり、各種剥離剤を板状チーズ10に塗布したりしても良い。前記シートとしては、例えば耐油紙やポリエチレンフィルム等が挙げられる。前記剥離剤としては、乾燥殺菌コーンスターチ等の多糖類等が挙げられる。
第1および第2の実施形態における燻煙処理の際には、未処理積層体を直接に保護材で挟んでいるが、必要に応じて前記保護材と未処理板状チーズの間に不織布等の緩衝素材を挟むことで不透過素材がチーズに張り付くことを防止しても良い。さらに、緩衝素材に塩素溶液を始めとする各種抗菌剤を染み込ませておくことで保存性を向上させることも可能となる。一方、各板状チーズの厚みが充分に厚い場合には、保護材で挟んだ後に未処理積層体を横倒しにして燻煙処理をすることもできる。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。下記の各試料について以下のように剥離性を評価した。
(剥離性比較テスト)
まず、各板状チーズ積層体各3ロットずつを10℃で1週間保管した後、20℃環境下で2時間30分間放置して、品温を20℃とした。その後、板状チーズを上から1枚ずつ20枚剥離し、板状チーズの形状を損なわずに剥離できたものを剥離可能枚数とした。以上の操作を2名の試験者が、それぞれ5個の板状チーズ積層体について行った。評価は、剥離可能枚数/20枚として評価した。評価結果を表1に記す。
(実施例1)
ゴーダチーズ(ニュージーランドデイリーボード社製)1800g(水分42.3%、固形分中脂肪29.0%)、およびチェダーチーズ(マレーゴールバン社製)660g(水分32.5%、固形分中脂肪37.4%)を、チョッパー(株式会社日本キャリア工業製)に投入し、ミンチ状に細断し、これにクエン酸三ナトリウム(食品添加物、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)9g、ピロリン酸ナトリウム(試薬特級、太平化学産業株式会社製)12g、ポリリン酸ナトリウム(試薬特級、太平化学産業株式会社製)60gを投入し、均一に混合した。
この混合物を、クスナー型チーズ溶融ケトル(東北大江工業株式会社製)に投入し、溶解水(添加水および直接加熱用蒸気を含む)460gを添加し、120rpmで攪拌しながら85℃に加熱し、その状態で240rpmで攪拌しながら3分間保持し、次いで回転数を120rpmに低下させて攪拌しながら−45kPaで2分間脱気し、乳化状態の良好な溶融チーズを得た。
この溶融チーズをポリエチレン製の袋に200gずつ充填し、のし棒によって展延し、厚さ2mmの薄板状に延ばした。その後、5℃冷蔵庫内にて一夜冷却した後、取り出して、70mm×70mmの略正方形に裁断し、板状チーズを調製した。
各々の厚さにおいて得られた32枚の板状チーズの各々に乾燥殺菌コーンスターチ3%溶液を霧吹きにて噴霧し、図3と同様に各板状チーズの1辺が交互に3mmの幅でずれるように積層し、厚さ64mmの積層体とした。以上の操作を繰り返し4個の未処理積層体を得た。得られた未処理積層体をそれぞれ2cm以上の間隔を開けて2×2列になるように整列した。各積層体の最上面および最下面にステンレス板が当接するように、当該ステンレス板で挟んだ後、スモークチャンバー(ドイツマウラー社製)内のトレイの上に載置し、燻煙材(サクラチップ、進誠産業株式会社製)を用いて24℃で1.5時間の燻煙処理を行った。
こうして得られた板状チーズ積層体を常法どおり包装して、板状チーズ積層体(1ロット分)を得た。
(実施例2)
前記溶融チーズを3mmの薄板状に伸ばした以外は、実施例1と同様の製造を行い、板状チーズ積層体を得た。得られた板状チーズ積層体を常法どおり包装して板状チーズ積層体(1ロット分)を得た。
(比較例1)
ゴーダチーズ(ニュージーランドデイリーボード社製)1800g(水分42.3%、固形分中脂肪29.0%)、およびチェダーチーズ660g(水分32.5%、固形分中脂肪37.4%)を、チョッパーに投入し、ミンチ状に細断し、これにクエン酸三ナトリウム9g、ピロリン酸ナトリウム12g、ポリリン酸ナトリウム60gを投入し、均一に混合した。
この混合物を、クスナー型チーズ溶融ケトルに投入し、溶解水460gを添加し、120rpmで攪拌しながら85℃に加熱し、その状態で240rpmで攪拌しながら3分間保持し、次いで回転数を120rpmに低下させて攪拌しながら−45kPaで2分間脱気し、乳化状態の良好な溶融チーズを得た。
得られた溶融チーズをポリエチレン製の袋に500g入れ、70mm×70mm×100mmの直方体状のチーズを得た。得られた直方体状のチーズをポリエチレン製の袋から取り出し、スモークチャンバー内のトレイの上に載置し、燻煙材を用いて24℃で1.5時間の燻煙処理を行った。燻煙処理後の直方体状のチーズを2mm厚にてスライスした。スライスしたチーズ32枚を各辺がずれないように積層し、厚さ64mmの積層体とした。以上の操作を繰り返し、4個の板状チーズ積層体を得た。得られた積層体を常法どおりに包装し、板状チーズ積層体(1ロット分)を得た。なお、燻煙の深さは0.4mmであり、実質的に板状チーズの表面部には燻し部はなかった。
(比較例2)
燻煙処理後の立方体状のチーズを3mm厚にてスライスした他は、比較例1と同様にして板状チーズ積層体を得た。得られた板状チーズ積層体を常法どおりに包装し、板状チーズ積層体(1ロット分)を得た。なお、燻煙の深さは0.4mmであり、実質的に板状チーズの表面部には燻し部はなかった。
Figure 0004686513
実施例1、2では、各板状チーズの周縁部の1辺に添って、燻煙処理時にはみ出させておいた3mmの幅の部分に燻し部が形成されており、燻し部は、燻煙処理前よりも硬化していた。表1に示すとおり、20℃の消費温度においても、実施例1、2では、燻し部を把持して各々の板状チーズを破損することなく剥がすことができた。また、中心部は燻煙処理前とほぼ同等の風味および食感を維持していた。剥離された各板状チーズの燻煙の程度のバラツキは小さく、原料に対する歩留まりは90%を超えていた。
これに対し、比較例1、2では、板状チーズの表面部に燻し部を有しないため、20℃の消費温度においては、完全な形状のまま全ての板状チーズを剥離することが出来なかった。
(実施例3)
ゴーダチーズ(オランダフリコ社製)1320g(水分41.0%、固形分中脂肪29.7%)、およびチェダーチーズ(オーストラリアワーナンブール社製)840g(水分34.1%、固形分中脂肪38.5%)を、チョッパーでミンチ状に細断し、これにクエン酸三ナトリウム53g、リン酸水素2ナトリウム・2水塩(試薬特級、太平化学産業株式会社製)14gを投入し、均一に混合した。
この混合物を、高速せん断型チーズ溶融ケトル(ドイツステファン社製)に投入し、溶解水(添加水および直接加熱用蒸気を含む)170gを添加した。その後、750rpmで攪拌しながら85℃に加熱し、その状態で750rpmで攪拌しながら1分間保持した後、−45kPaで1分間脱気し、乳化状態の良好な溶融チーズを得た。
この溶融チーズをポリエチレン製のポリエチレン製の袋に400gずつ充填し、のし棒によって展延し、厚さ6mmの薄板状に延ばした。その後、5℃冷蔵庫内にて一夜冷却した後、取り出して、90mm×90mmの略正方形に裁断し、板状チーズを調製した。
得られた16枚の板状チーズを、図3と同様に各板状チーズの1辺が交互に4mmの幅でずれるように積層し、厚さ96mmの積層体とした。この操作を繰り返し4個の積層体を得た。得られた未処理積層体をそれぞれ2cm以上の間隔を開けて2×2列になるように整列した。各積層体の最上面および最下面にステンレス板が当接するように、当該ステンレス板で挟んだ後、スモークチャンバー内のトレイの上に載置し、燻煙材を用いて24℃の温度設定にて0.5時間の燻煙処理を行った。こうして得られた板状チーズ積層体を常法どおり包装した。
実施例3で得られた板状チーズ積層体は、板状チーズが1枚ずつ交互に4mmの幅でずらして積層されており、略正方形の板状チーズの1辺に添って、4mmの幅で燻煙処理され硬化していた。また、20℃の消費温度においても、燻し部を把持して各々の板状チーズを剥がすことができ、中心部は燻煙処理前とほぼ同等の風味および食感を維持していた。また、剥離された各板状チーズの燻煙の程度のバラツキは小さく、原料に対する歩留まりは90%を超えていた。
本発明の第1の実施形態にかかる板状チーズ10の斜視図である。 本発明の第1の実施形態にかかる板状チーズ積層体30の断面図である。 本発明の第1の実施形態にかかる未処理積層体130を保護材に挟んだ状態の断面図である。 本発明の第2の実施形態にかかる板状チーズ10aの斜視図である。 本発明の第2の実施形態にかかる板状チーズ積層体30aの斜視図である。 本発明の第2の実施形態にかかる未処理積層体130aの斜視図である。
符号の説明
10、10a 板状チーズ
14、14a 燻し部
30、30a 板状チーズ積層体
130、130a 未処理積層体
140 保護材

Claims (8)

  1. 複数枚の板状チーズが積層されている板状チーズ積層体であって、前記各板状チーズは、積層方向に略直交する面の内、少なくとも一方の面が周縁部にのみ、燻煙処理された燻し部を有することを特徴とする、板状チーズ積層体。
  2. 前記各板状チーズの燻し部が、隣接する他の板状チーズと接触しないように積層されている請求項1に記載の板状チーズ積層体。
  3. 前記各板状チーズは矩形状であって、1辺に添って前記燻し部を有する、請求項1または2に記載の板状チーズ積層体。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の板状チーズ積層体の製造方法であって、複数枚の板状チーズが積層した未処理積層体を得る積層工程と、前記未処理積層体を燻煙処理し、燻し部を形成する燻煙工程を有する板状チーズ積層体の製造方法。
  5. 前記未処理積層体は、複数枚の板状チーズが互いにずれて積層されて、はみ出し部分が形成され、前記燻煙工程は、前記はみ出し部分に前記燻し部を形成する、請求項4に記載の板状チーズ積層体の製造方法。
  6. 前記未処理積層体は、複数枚の矩形状の板状チーズが、交互にはみ出るように積層されている、請求項5に記載の板状チーズ積層体の製造方法。
  7. 前記燻煙工程は、前記未処理積層体を、燻煙が透過しない保護材に挟んで燻煙処理をする、請求項4〜6のいずれか1項に記載の板状チーズ積層体の製造方法。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の板状チーズ積層体を、前記各板状チーズ毎に剥離して得られることを特徴とする板状チーズ。
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