JP4682453B2 - 固体成分含有液状組成物の塗布方法及び塗布装置 - Google Patents

固体成分含有液状組成物の塗布方法及び塗布装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体成分を液状組成物中に分散させた固体成分含有液状組成物を所望の箇所に塗布する塗布方法及び塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、固体成分を液状組成物中に分散させた固体成分含有液状組成物を所望の箇所に塗布する方法としては、固体成分と液状組成物とを撹拌して液状組成物中に固体成分を均一に分散させることにより固体成分含有液状組成物としこれを直ちに所望の箇所に塗布することが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に固体成分と液状組成物とは比重が異なるため、撹拌を停止すると固体成分が沈降してしまい均一に分散した状態を維持できず、これをそのまま塗布すると液状組成物が硬化したあとの特性がばらつきやすいという問題があった。具体的には、燃料電池の場合、セパレータ間の短絡を防止したり樹脂層の最低膜厚を確保したりその樹脂層に連続的に荷重がかかったときのクリープを防止したりするために固体成分としてビーズが分散された液状接着剤組成物が使用されるが、液状接着剤組成物におけるビーズの分散状態が不均一な場合はそのような作用効果が十分発揮されないという問題があった。
【0004】
このような問題を解決しようとすれば、固体成分含有液状組成物を定期的に撹拌して均一に分散した状態に戻すことが考えられるが、一旦撹拌を停止して固体成分が沈降してしまうと再撹拌しても均一に分散するまで時間がかかり、作業効率がよくないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、作業性が良好なうえ液状組成物が硬化したあとの特性が安定して得られる固体成分含有液状組成物の塗布方法及び塗布装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段、発明の実施の形態及び発明の効果】
上記課題を解決するため、本発明の第1は、固体成分を液状組成物中に分散させた固体成分含有液状組成物を所望の箇所に塗布する方法であって、前記液状組成物として前記固体成分と略同じ比重を持つものを選び、該液状組成物に前記固体成分を分散させて固体成分含有液状組成物としたあとこれを塗布することを特徴とする。
【0007】
この塗布方法では、固体成分の比重と液状組成物の比重が略同じなため、一旦固体成分と液状組成物とを撹拌して固体成分を液状組成物に均一に分散させれば、その後撹拌を停止したとしても長期にわたってその均一な分散状態が維持される。したがって、一旦分散させたあとは定期的な撹拌作業が不要なため作業性がよく、また、固体成分の分散状態が不均一になりにくいため塗布した固体成分含有液状組成物が硬化したあとは安定した特性が得られる。
【0008】
この塗布方法を実現する塗布装置の一例としては、固体成分を液状組成物中に分散させた固体成分含有液状組成物を所望の箇所に塗布する装置であって、前記固体成分と略同じ比重を持つ前記液状組成物に前記固体成分を分散させて得られる固体成分含有液状組成物を貯蔵する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクから供給された前記固体成分含有液状組成物を外部へ吐出する塗布ヘッドとを備えたものが挙げられる。
【0009】
本発明の第2は、固体成分を液状組成物中に分散させた固体成分含有液状組成物を所望の箇所に塗布する方法であって、前記液状組成物を相異なる組成の分割液に分けたうちの少なくとも一つの分割液が前記固体成分と略同じ比重を持つようにし、前記固体成分と略同じ比重を持つ分割液に前記固体成分を分散させて分散済分割液とし、塗布直前にこの分散済分割液とそれ以外の分割液とを混合して前記固体成分含有液状組成物としたあとこれを塗布するか又は各分割液を別々に塗布することを特徴とする。
【0010】
この塗布方法では、少なくとも一つの分割液が固体成分と略同じ比重を持つため、一旦固体成分とその分割液とを撹拌して固体成分をその分割液に均一に分散させて分散済分割液とすれば、その後撹拌を停止したとしても長期にわたって均一な分散状態が維持される。そして、塗布直前にこの分散済分割液とそれ以外の分割液とを混合して固体成分含有液状組成物としたあとこれを塗布するか、あるいは、各分割液を別々に塗布して塗布面上で各々を接触させる。このように、分散済分割液は、一旦分散させたあとは定期的な撹拌作業が不要なため作業性がよく、また、固体成分の分散状態が不均一になりにくいため塗布時に固体成分の含有量が変動しにくく、塗布面上で固体成分含有液状組成物が硬化したあとは安定した特性が得られる。
【0011】
この塗布方法を実現する塗布装置の一例としては、固体成分を液状組成物中に分散させた固体成分含有液状組成物を所望の箇所に塗布する装置であって、前記液状組成物を相異なる組成の分割液に分けたうちの前記固体成分と略同じ比重を持つ分割液に前記固体成分を分散させて得られる分散済分割液を貯蔵する第1タンクと、前記固体成分を分散させた分割液以外の分割液を貯蔵する第2タンクと、前記第1タンク及び前記第2タンクから供給された各分割液を混合して前記固体成分含有液状組成物とするミキサと、前記ミキサから供給された前記固体成分含有液状組成物を外部へ吐出する塗布ヘッドとを備えたものが挙げられる。また、別の例としては、固体成分を液状組成物中に分散させた固体成分含有液状組成物を所望の箇所に塗布する装置であって、前記液状組成物を相異なる組成の分割液に分けたうちの前記固体成分と略同じ比重を持つ分割液に前記固体成分を分散させて得られる分散済分割液を貯蔵する第1タンクと、前記固体成分を分散させた分割液以外の分割液を貯蔵する第2タンクと、前記第1タンクから供給された分割液を外部へ吐出する第1塗布ヘッドと、前記第2タンクから供給された分割液を外部へ吐出する第2塗布ヘッドとを備えたものが挙げられる。なお、第2タンクは、固体成分を分散させた分割液以外の分割液が複数の場合、それらの分割液をひとところに貯蔵する一つのタンクであってもよいし、それらの分割液を各々別々に貯蔵する複数のタンク群であってもよい。
【0012】
この塗布方法において、前記液状組成物を二つの相異なる組成の分割液に分けたうちの一方が前記固体成分と略同じ比重を持つようにしてもよい。こうすれば、塗布直前に二つの分割液を混合すればよいため、三つ以上の分割液を混合する場合に比べて手間がかからない。
【0013】
本発明の第1又は第2において、前記固体成分と略同じ比重の分割液を選ぶ際に前記固体成分を空洞化若しくは緻密化するか又は前記固体成分を軽量化若しくは重量化してもよい。こうすれば、固体成分の比重に液状組成物又はその分割液の比重を合わせることが難しい場合であっても、逆に固体成分の比重を液状組成物又はその分割液の比重に合わせることができる。
【0014】
ところで液状組成物が液状接着剤組成物の場合には、分割液の比重を次のようにして調整してもよい。即ち、液状接着剤組成物には、ベースポリマ(化学反応によって硬化するポリマ)のほかに、例えば樹脂強度を向上させるための充填剤(シリカのようなシランカップリング材等)や、ベースポリマの化学反応を起こさせて硬化させるための硬化剤(白金触媒、スズ触媒、亜鉛触媒のような触媒等)などが含まれるが、これらの比重はベースポリマに比べて比重が大きいため、複数の分割液に分ける際に特定の分割液のみにこれらの比重の大きな成分を添加すれば、その特定の分割液の比重を大きくすることができるし、逆に他の分割液の比重を小さくすることができる。また、比重が小さく蒸散しやすい溶剤(低分子溶剤等)を特定の分割液に便宜上添加することでその分割液の比重を小さくし、硬化反応の過程でこの溶剤を蒸散させてしまってもよい。
【0015】
本発明の第3は、固体成分を液状組成物中に分散させた固体成分含有液状組成物を所望の箇所に塗布する方法であって、前記液状組成物として前記固体成分を分散させたときに沈降しない程度の粘度を持つものを選び、該液状組成物に前記固体成分を分散させて固体成分含有液状組成物としたあとこれを塗布することを特徴とする。
【0016】
この塗布方法では、液状組成物は固体成分を分散させたときに沈降しない程度の粘度を持つため、一旦固体成分と液状組成物とを撹拌して固体成分を液状組成物に均一に分散させれば、その後撹拌を停止したとしても長期にわたってその均一な分散状態が維持される。したがって、一旦分散させたあとは定期的な撹拌作業が不要なため作業性がよく、また、固体成分の分散状態が不均一になりにくいため塗布した固体成分含有液状組成物が硬化したあとは安定した特性が得られる。
【0017】
この塗布方法を実現するための塗布装置の一例としては、固体成分を液状組成物中に分散させた固体成分含有液状組成物を所望の箇所に塗布する装置であって、前記固体成分を分散させたときに沈降しない程度の粘度を持つ前記液状組成物に前記固体成分を分散させて得られる固体成分含有液状組成物を貯蔵する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクから供給された前記固体成分含有液状組成物を外部へ吐出する塗布ヘッドとを備えたものが挙げられる。
【0018】
本発明の第4は、固体成分を液状組成物中に分散させた固体成分含有液状組成物を所望の箇所に塗布する方法であって、前記液状組成物を相異なる組成の分割液に分けたうちの少なくとも一つの分割液が前記固体成分を分散させたときに沈降しない程度の粘度を持つようにし、前記粘度を持つ分割液に前記固体成分を分散させて分散済分割液とし、塗布直前にこの分散済分割液とそれ以外の分割液とを混合して前記固体成分含有液状組成物としたあとこれを塗布するか又は各分割液を別々に塗布することを特徴とする。
【0019】
この塗布方法では、少なくとも一つの分割液は固体成分を分散させたときに沈降しない程度の粘度を持つため、一旦固体成分とその分割液とを撹拌して固体成分をその分割液に均一に分散させて分散済分割液とすれば、その後撹拌を停止したとしても長期にわたって均一な分散状態が維持される。そして、塗布直前にこの分散済分割液とそれ以外の分割液を混合して固体成分含有液状組成物としたあとこれを塗布するか、あるいは、各分割液を別々に塗布して塗布面上で各々を接触させる。このように、分散済分割液は、一旦分散させたあとは定期的な撹拌作業が不要なため作業性がよく、また、固体成分の分散状態が不均一になりにくいため塗布時に固体成分の含有量が変動しにくく、塗布面上で固体成分含有液状組成物が硬化したあとは安定した特性が得られる。
【0020】
この塗布方法を実現するための塗布装置の一例としては、固体成分を液状組成物中に分散させた固体成分含有液状組成物を所望の箇所に塗布する装置であって、液状組成物を相異なる組成の分割液に分けたうちの前記固体成分を分散させたときに沈降しない程度の粘度を持つ分割液に前記固体成分を分散させて得られる分散済分割液を貯蔵する第1タンクと、前記固体成分を分散させた分割液以外の分割液を貯蔵する第2タンクと、前記第1タンク及び前記第2タンクから供給された各分割液を混合して前記固体成分含有液状組成物とするミキサと、前記ミキサから供給された前記固体成分含有液状組成物を外部へ吐出する塗布ヘッドとを備えたものが挙げられる。また、別の例としては、固体成分を液状組成物中に分散させた固体成分含有液状組成物を所望の箇所に塗布する装置であって、液状組成物を相異なる組成の分割液に分けたうちの前記固体成分を分散させたときに沈降しない程度の粘度を持つ分割液に前記固体成分を分散させて得られる分散済分割液を貯蔵する第1タンクと、前記固体成分を分散させた分割液以外の分割液を貯蔵する第2タンクと、前記第1タンクから供給された分割液を外部へ吐出する第1塗布ヘッドと、前記第2タンクから供給された分割液を外部へ吐出する第2塗布ヘッドとを備えたものが挙げられる。なお、第2タンクは、固体成分を分散させた分割液以外の分割液が複数の場合、それらの分割液をひとところに貯蔵する一つのタンクであってもよいし、それらの分割液を各々別々に貯蔵する複数のタンク群であってもよい。
【0021】
この塗布方法において、前記液状組成物を二つの相異なる組成の分割液に分けたうちの一方が前記固体成分を分散させたときに沈降しない程度の粘度を持つようにしてもよい。こうすれば、塗布直前に二つの分割液を混合すればよいため、三つ以上の分割液を混合する場合に比べて手間がかからない。
【0022】
本発明の第3又は第4において、前記固体成分を分散させたときに沈降しない程度の粘度を持つ液は、粘度が10万〜100万cps(100〜1000Pa・s)であること、また、形状保持性(チキソ性)を有していることが好ましい。
【0023】
ところで液状組成物が液状接着剤組成物の場合には、分割液の比重を次のようにして調整してもよい。即ち、液状接着剤組成物には、前述のようにベースポリマのほかに充填剤や触媒(硬化剤)などが含まれるが、ベースポリマは一般に触媒がなければ硬化反応が進みにくいため複数の分割液に分ける際にベースポリマ含有の分割液と触媒含有の分割液に分け、このうち触媒含有の分割液は粘性が低いことが多いためベースポリマ含有の分割液に充填剤等を添加することで粘性を高くしてこちらに固体成分を分散させることが好ましい。
【0024】
本発明の第1〜第4において、固定成分や液状組成物は特に限定されるものではなく種々のものが利用可能であるが、固体成分がビーズで液状組成物が液状接着剤組成物であってもよい。また、前記固体成分含有液状組成物は特にどのような用途に用いられるものであってもよいが、燃料電池のセパレータ間に塗布されて該セパレータ間のシール材として用いられるものであってもよい。
【0025】
なお、本発明の第1〜第4において、「液状組成物」やそれを分割した「分割液」は、流動性をもつものであればよく、例えばオイルやペーストなどのように粘性の高い液体であってもよいし水などのように粘性の低い液体であってもよい。
【0026】
【実施例】
[実施例1]
図1は固体成分含有液状組成物の塗布装置の概略構成図である。この塗布装置10は、第1タンク11、第2タンク12、スタティックミキサ13及び塗布ヘッド14を備えている。第1タンク11には、内容物を撹拌するための撹拌用プロペラ11aが取り付けられ、また、スタティックミキサ13へ内容物を供給する第1供給ライン11bが下方に取り付けられている。第2タンク12には、スタティックミキサ13へ内容物を供給する第2供給ライン12bが下方に取り付けられている。スタティックミキサ13は、第1及び第2供給ライン11b,12bから供給される両内容物を混合しながら塗布ヘッド14へ供給するものであり、塗布ヘッド14は、スタティックミキサ13から供給される混合物を塗布面に吐出するものである。
【0027】
本実施例の固体成分含有液状組成物は、固体成分としてビーズを、液状組成物として液状接着剤組成物であるエポキシ変性シリコーン系接着剤を採用したものであり、燃料電池のセパレータ間に塗布されて両セパレータ間のシール材として用いられるものである。図2に示すように、燃料電池30は、電解質膜31と、電解質膜31の両面に塗布された触媒電極32,33と、触媒電極32,33の両側に配置されて燃料ガス(水素)や酸化ガス(空気)を触媒電極32,33に供給するガス拡散電極34,35と、燃料ガス流路37や酸化ガス流路38を形成すると共に隣接するセルの隔壁をなすセパレータ36,36と、セパレータ36,36間にて電解質膜31を挟み込み燃料ガスや酸化ガスのリークを防止したりここでの両ガスの混合を防止したりするシール材39とを備えており、本実施例の固体成分含有液状組成物はこのシール材39として用いられる。
【0028】
本実施例の固体成分含有液状組成物につき、ビーズとしては、ジビニルベンゼンを主成分とする比重1.19、粒径30〜100μmのものを使用した。また、エポキシ変性シリコーン系液状接着剤組成物は二つの液状分割液つまり第1液及び第2液に分割し、第1液としてはエポキシ系硬化剤及びシリコーン系主剤を含有する比重1.18、粘度4000〜10000cps(4〜10Pa・s)の液体を使用し、第2液としてはエポキシ系主剤及びシリコーン系硬化剤を含有する比重1.01、粘度12000〜22000cps(12〜22Pa・s)の液体を使用した。つまり、第1液としてビーズと略同じ比重のものを使用した。
【0029】
燃料電池30のセパレータ36,36間への塗布は塗布装置10を用いて行った。具体的には、第1液とビーズとを混合後のビーズ重量比が2〜5重量%となるように第1タンク11へ投入し、撹拌用プロペラ11aによりビーズが均一に第1液に分散するまで撹拌することにより分散済第1液とし、続いて第1タンク11内を図示しない真空ポンプで吸引することにより脱泡し、その後撹拌を停止して静置した。静置してから4時間が経過してもこの分散済第1液はビーズの分布状態に変わりはなく、分離・沈降は見られなかった。一方、第2液を第2タンク12へ投入した。塗布作業時には、スタティックミキサ13に第1供給ライン11bを介して分散済第1液を供給すると共に第2供給ライン12bを介して第2液を供給し、スタティックミキサ13で撹拌混合した混合物つまりビーズ含有液状接着剤組成物を塗布ヘッド14を介して塗布面である一方のセパレータ36上へ吐出した。接着時には、ビーズ含有液状接着剤組成物が塗布されたセパレータ36に他のセパレータ36を重ねて圧着した。この結果、セパレータ36の塗布面上でベースポリマの硬化反応が進み、これにより接着層(シール材39)が形成された。このとき接着層の膜厚はビーズの粒径によって確保された。
【0030】
分散済第1液の分散安定性につき、第1タンク11の撹拌を停止してから放置時間1時間ごとに塗布装置10による塗布及び接着を行い、その断面の顕微鏡観察を行って特定面積におけるビーズ数を測定したところ、少なくとも4時間経過するまではビーズ数は略同じであった。このように、攪拌を停止した分散済第1液を用いて接着層を形成しても接着層のビーズの分散状態は略均一になるため、セパレータ間の短絡を防止したり樹脂層の最低膜厚を確保したりその樹脂層に連続的に荷重がかかったときのクリープを防止したりするといった特性が安定して得られる。なお、脱泡性は、第1液の粘度が低いほど良好であった。
【0031】
[比較例1]
本比較例の固体成分含有液状組成物は、ビーズとしては、ガラス製で比重2.50、粒径30〜100μmのものを使用した。また、エポキシ変性シリコーン系液状接着剤組成物は二つの液状分割液つまり第1液及び第2液に分割し、第1液としてはエポキシ系硬化剤及びシリコーン系主剤を含有する比重1.16、粘度16000cps(16Pa・s)の液体を使用し、第2液としてはエポキシ系主剤及びシリコーン系硬化剤を含有する比重1.00、粘度9000cps(9Pa・s)の液体を使用した。つまり、第1液、第2液双方ともビーズよりも比重の小さいものを使用した。
【0032】
燃料電池30のセパレータ36,36間への塗布は塗布装置10を用いて行った。但し、図3に示すように、第2タンク12にも撹拌用プロペラ12aを取り付けた。具体的には、第1液とビーズとを混合後のビーズ重量比が2〜5重量%となるように第1タンク11へ投入し、撹拌用プロペラ11aによりビーズが均一に第1液に分散するまで撹拌することにより分散済第1液とし、第2液とビーズとを混合後のビーズ重量比が2〜5重量%となるように第2タンク12へ投入し、撹拌用プロペラ12aによりビーズが均一に第1液に分散するまで撹拌することにより分散済第2液とし、続いて両タンク11,12内を図示しない真空ポンプで吸引することにより脱泡し、その後撹拌を停止して静置した。静置してから数分で分散済第1液及び分散済第2液のいずれもビーズの分布状態が変化し、分離・沈降が見られた。なお、塗布作業は実施例1と同様にして行った。
【0033】
分散済第1液及び分散済第2液の分散安定性につき、両タンク11,12の撹拌を停止してから放置時間1時間ごとに塗布装置による塗布及び接着を行い、その断面の顕微鏡観察を行い、特定面積におけるビーズ数を測定したところ、時間経過に伴いビーズ数が増加した。両タンク11,12は下方から抜き出されてスタティックミキサ13及び塗布ヘッド14に供給するタイプのため、この結果は時間経過に伴いビーズが沈降したことを意味している。このように、攪拌を停止した分散済第1液及び分散済第2液を用いて接着層を形成すると接着層のビーズの分散状態は均一になりにくいため、セパレータ間の短絡を防止したり樹脂層の最低膜厚を確保したりその樹脂層に連続的に荷重がかかったときのクリープを防止したりするといった特性が安定して得られにくい。
【0034】
[実施例2]
図4は固体成分含有液状組成物の塗布装置の概略構成図である。この塗布装置20は、第1タンク21、第2タンク22、第1塗布ヘッド23及び第2塗布ヘッド24を備えている。第1タンク21には、内容物を撹拌するための撹拌用プロペラ21aが取り付けられ、また、第1塗布ヘッド23へ内容物を供給する第1供給ライン21bが下方に取り付けられている。第2タンク22には、第2塗布ヘッド24へ内容物を供給する第2供給ライン22bが下方に取り付けられている。第1塗布ヘッド23は、スクリーン版の枠内に第1タンク21から供給された内容物をのせてスキージを摺動することによりスキージによってその内容物をスクリーンを通過させて塗布面に塗布するものであり、第2塗布ヘッド24は、第2タンク22から供給された内容物をスプレーして塗布面に塗布するものである。
【0035】
本実施例の固体成分含有液状組成物は、ビーズとしては、ジビニルベンゼンを主成分とする比重1.19、粒径30μmのものを使用した。また、シリコーン系液状接着剤組成物は二つの液状分割液つまり第1液及び第2液に分割し、第1液としてはベースポリマを含む主剤と充填剤を含有する比重1.12、粘度800000〜1000000cps(800〜1000Pa・s)のペーストを使用し、第2液としては硬化剤(貴金属触媒)を含有する比重0.67、粘度測定不可(粘性が低すぎて測定不可)の液体を使用した。なお、第1液は形状保持性つまりチキソ性を有していた。
【0036】
燃料電池30のセパレータ36,36間への塗布は塗布装置20を用いて行った。即ち、第1液とビーズとを混合後のビーズ重量比が2〜5重量%となるように第1タンク21へ投入し、撹拌用プロペラ21aによりビーズが均一に第1液に分散するまで撹拌することにより分散済第1液とし、続いて第1タンク21内を図示しない真空ポンプで吸引することにより脱泡し、その後撹拌を停止して静置した。静置してから4時間が経過してもこの分散済第1液はビーズの分布状態に変わりはなく、分離・沈降は見られなかった。一方、第2液を第2タンク22へ投入した。塗布作業時には、第2塗布ヘッド24に第2供給ライン22bを介して第2液を供給して第2塗布ヘッド24から塗布面に第2液をスプレー噴射し、第1塗布ヘッド23に第1供給ライン21bを介して分散済第1液を供給して、第2液をスプレー噴射した箇所に第1塗布ヘッド23により分散済第1液をスクリーン印刷した。そして、塗布後のセパレータ36に他のセパレータ36を重ねて圧着した。この結果、塗布面上で分散済第1液と第2液とが接触して分散済第1液中のベースポリマの硬化反応が進み、これにより接着層(シール材39)が形成された。このとき接着層の膜厚はビーズの粒径によって確保された。なお、本実施例において、ビーズとしてAl23−B23−SiO2系ガラス製で比重2.40、粒径30μmのものを使用した場合も同様であった。
【0037】
分散済第1液の分散安定性につき、第1タンク11の撹拌を停止してから放置時間1時間ごとに塗布装置20による塗布及び接着を行い、その断面の顕微鏡観察を行って特定面積におけるビーズ数を測定したところ、少なくとも4時間経過するまではビーズ数は略同じであった。なお、本実施例において、ビーズとしてAl23−B23−SiO2系ガラス製で比重2.40、粒径30μmのものを使用した場合も同様の結果が得られた。このように、攪拌を停止した分散済第1液を用いて接着層を形成しても接着層のビーズの分散状態は略均一になるため、セパレータ間の短絡を防止したり樹脂層の最低膜厚を確保したりその樹脂層に連続的に荷重がかかったときのクリープを防止したりするといった特性が安定して得られる。
【0038】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、例えば、上記実施例1の第1液及び第2液を図3に示す塗布装置20を用いて別工程で塗布面に塗布してもよいし、あるいは、上記実施例2の第1液及び第2液を図1に示す塗布装置10を用いて混合後に塗布面に塗布してもよい。
【0039】
また、上記各実施例では液状組成物を二つの分割液に分けた場合について説明したが、三つ以上の分割液に分けてもよいし、あるいは、液状組成物を分割液に分けることなくその比重をビーズと略同じ比重にするかその粘度をビーズが沈降しない程度の値にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の塗布装置の概略構成図である。
【図2】燃料電池の概略構成を表す断面図である。
【図3】比較例1の塗布装置の概略構成図である。
【図4】実施例2の塗布装置の概略構成図である。
【符号の説明】
10・・・塗布装置、11・・・第1タンク、11a・・・撹拌用プロペラ、11b・・・第1供給ライン、12・・・第2タンク、12a・・・撹拌用プロペラ、12b・・・第2供給ライン、13・・・スタティックミキサ、14・・・塗布ヘッド、20・・・塗布装置、21・・・第1タンク、21a・・・撹拌用プロペラ、21b・・・第1供給ライン、22・・・第2タンク、22b・・・第2供給ライン、23・・・第1塗布ヘッド、24・・・第2塗布ヘッド、30・・・燃料電池、31・・・電解質膜、32・・・触媒電極、34・・・ガス拡散電極、36・・・セパレータ、37・・・燃料ガス流路、38・・・酸化ガス流路、39・・・シール材。

Claims (3)

  1. 固体成分であるビーズを液状接着剤組成物中に分散させた固体成分含有液状組成物を所望の箇所に塗布する方法であって、
    (a)前記液状接着剤組成物として前記ビーズを均一に分散するまで撹拌したあと撹拌を停止して静置し静置してから4時間が経過しても前記ビーズの分離・沈降が見られない性質を持ち、該性質を形状保持性(チキソ性)を有することにより発現し、化学反応によって硬化するベースポリマを含有する第1液と、前記ベースポリマの化学反応を起こさせて硬化させるための触媒を含有する第2液とからなるものを用意し、
    (b)前記第1液に前記ビーズを分散させて分散済第1液とし、前記第2液を所望の箇所に塗布したあと前記分散済第1液を前記所望の箇所に塗布する、
    固体成分含有液状組成物の塗布方法。
  2. 前記第1液は、前記静置しているときの粘度が10万〜100万cps(100〜1000Pa・s)である請求項1に記載の固体成分含有液状組成物の塗布方法。
  3. 前記固体成分含有液状組成物は燃料電池のセパレータ間に塗布されて該セパレータ間のシール材として用いられる請求項1又は2に記載の固体成分含有液状組成物の塗布方法。
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