JP4679203B2 - 樹脂製リング形状品の射出成形型 - Google Patents

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Description

この発明は、メタリック感を有する樹脂製リング形状品の射出成形型に関し、詳しくは光沢材の配向対策に関するものである。
特許文献1では、樹脂製リング形状品を射出成形する場合、キャビティ外周縁部のゲート近傍に、すなわち熱可塑性樹脂が合流する合流部から離れた箇所に熱可塑性樹脂の一部を導入する樹脂溜まり部を設けることにより、互いに逆向きに流れる熱可塑性樹脂の各々の先端部における圧力均衡を崩し、これにより、上記合流部で熱可塑性樹脂を複雑に絡み合わせて合流部においてリング形状品の剛性を向上させるようにしている。
ところで、特許文献1のように樹脂製リング形状品を射出成形する場合、キャビティに射出された熱可塑性樹脂がキャビティ内を互いに逆向きに流れて合流する合流部に熱可塑性樹脂の不完全融合によりウェルドラインが生じて意匠性が低下することになる。
特に、アルミ片等の光沢材を含有する熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出してメタリック感を有するリング形状品を成形する場合、熱可塑性樹脂は合流部で流れに乱れが生じ、これに伴い光沢材の配向にも乱れが生じてウェルドラインの発現が顕著となり、意匠性が著しく低下する。特許文献1のやり方では、合流部で熱可塑性樹脂が複雑に絡み合っているので、その傾向が増大する。
そこで、図13に示すように、例えば固定型aのパーティング面bにおける熱可塑性樹脂cの合流部d近傍に1個の樹脂溜まり部eを狭小部からなる導入路fを介してキャビティgに連通するように設け、上記合流部dで合流した熱可塑性樹脂cを上記導入路fから樹脂溜まり部eに導入して該熱可塑性樹脂cに流れを生じさせることにより、熱可塑性樹脂cに含有されている光沢材の配向の乱れを修正してウェルドラインの発現を抑制させることが考えられる。
特開2002−301742号公報(第2,5頁、図4)
しかし、図13に示すように、合流部d近傍に設けられた1個の樹脂溜まり部eに1個の導入路fから熱可塑性樹脂cを導入する場合、合流部dで生じた光沢材の配向の乱れを修正するため、合流後に合流部dの熱可塑性樹脂cに導入路fへ向けて十分な流れを生じさせるよう、樹脂溜まり部eの容積や導入路fの断面積を設定すると、導入路fへの熱可塑性樹脂cの流れが激しくなり、導入路f近傍で光沢材の配向が乱れ、製品面に黒筋状の痕が現れてしまい、ウェルドラインの発現を思うように抑制させることができない。
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、樹脂製リング形状品を射出成形する場合にウェルドラインの発現を抑制して、成形されたリング形状品の意匠性を向上させることである。
上記の目的を達成するため、この発明は、樹脂溜まり部と該樹脂溜まり部をキャビティに連通させる導入路との構造に工夫を凝らしたことを特徴とする。
具体的には、請求項1乃至7に記載の発明は、固定型と可動型とを備え、光沢材を含有する熱可塑性樹脂を上記固定型と可動型との間に形成されたリング形状のキャビティ内に互いに逆向きに流れて合流するように射出して樹脂製リング形状品を成形する射出成形型を前提とし、次のような解決手段を講じた。
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記固定型又は可動型のパーティング面における上記熱可塑性樹脂の合流部を境にその一方側近傍には、狭小部からなる複数個の導入路の一端が上記キャビティに連通するように互いに間隔をあけて設けられ、これら導入路の他端には、樹脂溜まり部が個別に連結されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、複数個の樹脂溜まり部の容積は、熱可塑性樹脂の充填がほぼ同時又は熱可塑性樹脂の合流部に遠い方が近い方よりも遅れて完了する大きさに形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、導入路の断面積は、熱可塑性樹脂の合流部に近い方が遠い方よりも大きく形成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、上記前提において、上記固定型又は可動型のパーティング面における上記熱可塑性樹脂の合流部を境にその一方側近傍には、狭小部からなる複数個の導入路の一端が上記キャビティに連通するように互いに間隔をあけて設けられ、これら導入路の他端には、共通の樹脂溜まり部が連結されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、導入路の断面積は、熱可塑性樹脂の合流部に近い方が遠い方よりも大きく形成されていることを特徴とする
請求項1に係る発明によれば、キャビティ内に射出された熱可塑性樹脂は、キャビティ内で互いに逆向きに流れ、両方の流れがぶつかり合う合流部では熱可塑性樹脂の流れに乱れが生じ、該熱可塑性樹脂に含有されている光沢材にも配向の乱れが生じるが、この光沢材の配向の乱れは、合流部で両方の熱可塑性樹脂の流れがぶつかり合った後、導入路から樹脂溜まり部へ熱可塑性樹脂を導入することで、合流部の熱可塑性樹脂に導入路へ向けて流れを生じさせて合流部で生じた光沢材の配向の乱れを修正し、ウェルドラインの発現を抑制する。しかも、複数の樹脂溜まり部にそれぞれ設けた導入路から、該樹脂溜まり部へ熱可塑性樹脂を導入するので、導入路への熱可塑性樹脂の流れは分散されて穏やかに流れ、導入路近傍での光沢材の配向の乱れは小さくなり、導入路近傍に現れる黒筋状の痕も抑制することができ、意匠性の高い樹脂製リング形状品を得ることができる。
請求項2に係る発明によれば、複数個の樹脂溜まり部に対して、熱可塑性樹脂をほぼ同時か熱可塑性樹脂の合流部に近い方から順に充填が完了するようにしたので、合流部で生じた光沢材の配向の乱れは、合流部の熱可塑性樹脂が合流部からより離れた導入路に向けて最後まで流れるので、その流れによってより綺麗に修正され、ウェルドラインの発現を確実に抑制して意匠性の高い樹脂製リング形状品を確実に得ることができる。
請求項3に係る発明によれば、複数個の樹脂溜まり部のうち合流部に最も近い樹脂溜まり部に断面積の大きい導入路から熱可塑性樹脂を多く導入することができるので、光沢材に配向の乱れが生じている合流部の熱可塑性樹脂に効率良く導入路に向けた流れを生じさせて光沢材の配向の乱れを確実に修正することができる。
請求項4に係る発明によれば、共通の樹脂溜まり部に複数個の導入路から熱可塑性樹脂を導入するので、樹脂溜まり部の容量がいっぱいになった時点で、複数個の導入路への熱可塑性樹脂の流入が同時に止まり、簡素な型構造でありながら請求項1及び2と同様にウェルドラインの発現を抑制して意匠性の高い樹脂製リング形状品を得ることができる。
請求項5に係る発明によれば、合流部に最も近く断面積の大きい導入路から1個の樹脂溜まり部に熱可塑性樹脂を多く導入することができるので、光沢材に配向の乱れが生じている合流部の熱可塑性樹脂に効率良く導入路に向けた流れを生じさせて光沢材の配向の乱れを確実に修正することができる
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図6は自動車のバンパー1を示し、該バンパー1の車幅方向両端部寄りには、フォグランプ3が装着されている。このフォグランプ3の外周縁部に実施の形態1に係る樹脂製リング形状品5が取り付けられている。このリング形状品5には光沢材が含有されていてメタリック感を醸し出している。
上記リング形状品5は図1乃至図3に示すような射出成形型7を用いて射出成形される。この射出成形型7は固定型9と可動型11とを備え、上記固定型9の4隅には4本のガイドピン13が1本ずつ互いに平行に突設されており、これらガイドピン13に上記可動型11が移動可能に支持されて図示しない駆動装置により固定型9に対して接離して成形型7を開閉し、型閉じ状態で固定型9と可動型11との間に略矩形のリング形状のキャビティ15が2個間隔をあけて形成されるようになっている。本例では、固定型9のパーティング面9aに形成された略矩形のリング形状の凹部により上記キャビティ15を構成している。
一方、上記可動型11のパーティング面11aには、リング形状品5の裏面凹部を形成するための凸条部17が上記キャビティ15の形状に対応して突設されているとともに、リング形状品5をフォグランプ3の外周縁部に取り付けるための係止爪形成用の凹部19が上記キャビティ15の外周縁部に対応するように所定の間隔をあけて複数個形成されている(図1仮想線、図3参照)。また、上記固定型9には、上記2個のキャビティ15間に対応位置するようにスプル21が形成されているとともに、上記可動型11にはランナー23及びゲート25が上記スプル21に連通するように形成され、型閉じ状態で上記ゲート25がキャビティ15に連通するようになっている(図1仮想線、図2参照)。そして、図示しない射出機から光沢材を含有する熱可塑性樹脂R(図5参照)を上記スプル21、ランナー23及びゲート25を経てキャビティ15内に射出してリング形状品5を成形するようになっている。
上記固定型9のパーティング面9aにおいて上記キャビティ15のゲート25と略対向するコーナー部には、狭小部からなる3個の断面矩形の導入27a〜29aの一端がキャビティ15に連通するように互いに間隔をあけて設けられ、これら導入路27a〜29aの他端には、樹脂溜まり部27〜29が個別に連結されている。これら樹脂溜まり部27〜29及び導入路27a〜29aの位置は、ゲート25からキャビティ15内に射出された熱可塑性樹脂Rが互いに逆向きに流れて合流する合流部31を境にその一方側近傍に接近した位置になるように設定されている。上記3個の樹脂溜まり部27〜29の容積は、図4にも示すように、合流部31に最も近い樹脂溜まり部27が一番大きい容積に、合流部31に最も遠い樹脂溜まり部29が一番小さい容積に、中間の樹脂溜まり部28が上記両樹脂溜まり部27,29の中間容積に設定されている。また、上記3個の樹脂溜まり部27〜29をキャビティ15に連通する導入路27a〜29aの断面積は、熱可塑性樹脂Rの合流部31に最も近い導入路27aが一番大きい断面積に、合流部31から最も遠い導入路29aが一番小さい断面積に、中間の導入路28aが上記導入路27a,29aの中間の断面積に設定されている。これにより、熱可塑性樹脂Rの充填が合流部31に近い方から遠い方に樹脂溜まり部27、樹脂溜まり部28及び樹脂溜まり部29の順に完了するようになっている。これらのことを実施の形態1の特徴としている。
次に、上記射出成形型7でリング形状品5を射出成形する手順について説明する。
まず、射出成形型7を型閉じし、光沢材を含有する熱可塑性樹脂Rを射出機のノズルからスプル21、ランナー23及びゲート25を経てキャビティ15内に射出する。このキャビティ15内に射出された熱可塑性樹脂Rは、互いに逆向きに流れて樹脂溜まり部27〜29に接近していく(図5(a)参照)。熱可塑性樹脂Rの2つの流れが図5(b)に示すように最接近すると、一方の流れ(図5(b)で右側から左側への流れ)がゲート25と略対向するコーナー部を越えて、該コーナー部に接近した位置で他方の流れ(図5(b)で上方から下方への流れ)と合流し、一方の流れと他方の流れがぶつかって、熱可塑性樹脂Rの光沢材の配向に乱れが生じる(図5(c)参照)。この間、熱可塑性樹脂Rの一方の流れ(図5(b)で右側から左側への流れ)は、樹脂溜まり部27〜29の横を通過する過程で各導入路27a〜29aから樹脂溜まり部27〜29に少しだけ流入し、樹脂溜まり部27〜29の空間部は大きく確保されている(図5(c)参照)。
次いで、上記合流した熱可塑性樹脂Rは、一方の熱可塑性樹脂Rが樹脂溜まり部27〜29に流入することでその流速が低下することもあって、上記他方の熱可塑性樹脂Rに押し戻され、樹脂溜まり部27〜29に導入路27a〜29aから導入され、光沢材の配向に乱れが生じている合流部31の熱可塑性樹脂Rに導入路27a〜29aへ向けて、全体的に穏やかな流れが生じ、光沢材の配向の乱れが修正される(図5(d)参照)。この際、合流部31に最も近くて容積が最も大きい樹脂溜まり部27に断面積が最も大きい導入路27aに熱可塑性樹脂Rが多く導入され、導入路27aに向けた大きな流れを生じさせて、合流部31における光沢材の配向の乱れが効果的に修正されるが、上記大きな流れによって導入路27aの近傍で製品に黒筋となる光沢材の配向に乱れが生じる。
しかし、上記導入路27a近傍に生じる光沢材の配向の乱れは、容積が上記樹脂溜まり部27より少し小さい隣の樹脂溜まり部28に断面積が上記導入路27aより少し小さい導入路28aから導入されて生じる熱可塑性樹脂Rの流れによって互いに修正される。導入路28a近傍にも導入の流れにより光沢材の配向に乱れが生じるが、導入の流れが導入路27aに比べ小さいので光沢材の配向の乱れは少なくなる(図5(e)参照)。
さらに、上記導入路28a近傍に生じる光沢材の配向の乱れは容積が最も小さい樹脂溜まり部29に断面積が最も小さい導入路29aから導入される熱可塑性樹脂Rの流れで互いに修正され、図5(f)に示すように、3個の樹脂溜まり部27〜29が全て熱可塑性樹脂Rで充填されると、キャビティ15内で生じた光沢材の配向の乱れはほとんど修正されて黒筋状となって残らない。これら3個の樹脂溜まり部27〜29に対する熱可塑性樹脂Rの充填は合流部31に近い方から順に充填される。なお、これら3個の樹脂溜まり部27〜29に対する熱可塑性樹脂Rの充填をほぼ同時に完了するようにしてもよい。
このように、この実施の形態1では、合流部31で生じる光沢材の配向の乱れは、合流部31で両方の熱可塑性樹脂Rの流れがぶつかり合った後、導入路27a〜29aから樹脂溜まり部27〜29へ熱可塑性樹脂Rを導入することで、合流部31の熱可塑性樹脂Rに導入路27a〜29aへ向けて流れを生じさせて合流部31で生じた光沢材の配向の乱れを修正し、ウェルドラインの発現を抑制する。しかも、3個の樹脂溜まり部27〜29にそれぞれ設けた導入路27a〜29aから該樹脂溜まり部27〜29へ熱可塑性樹脂Rを導入するので、導入路27a〜29aへの熱可塑性樹脂Rの流れは分散されて穏やかに流れ、導入路27a〜29a近傍での光沢材の配向の乱れは小さくなり、導入路27a〜29a近傍に現れる黒筋状の痕も抑制することができ、成形されたリング形状品5では光沢材の配向が一方向に整然と並んで意匠性の高いリング形状品5を得ることができる。
さらに、実施の形態1では、樹脂溜まり部27〜29に対する熱可塑性樹脂Rの充填を合流部31に近い方から順に完了するようにしたので、合流部31で生じた光沢材の配向の乱れは、合流部31の熱可塑性樹脂Rが合流部31からより離れた導入路29aに向けて最後まで流れるので、その流れによってより綺麗に修正され、ウェルドラインの発現を確実に抑制して意匠性の高いリング形状品5を確実に得ることができる。
また、この実施の形態1では、3個の樹脂溜まり部27〜29のうち合流部31に最も近い樹脂溜まり部27に断面積の最も大きい導入路27aから熱可塑性樹脂Rを多く導入するので、光沢材に配向の乱れが生じている合流部31の熱可塑性樹脂Rに効率良く導入路27a〜29aに向けた流れを生じさせて光沢材の配向の乱れを確実に修正することができる。
その後、キャビティ15内で熱可塑性樹脂Rが固化して略矩形のリング形状品5が成形される。このリング形状品5は、外周縁部に複数の係止爪5aが一体に突設されており(図3参照)、これら係止爪5aによってリング形状品5をフォグランプ3の外周縁部に取り付けるようにしている。また、上記リング形状品5のゲート25と略対向するコーナー部外周縁部には、樹脂溜まり部27〜29及び導入路27a〜29a内で固化した樹脂固形物が一体に突設されている(図示せず)。また、リング形状品5には、ゲート25、ランナー23及びスプル21内で固化したスプルランナー樹脂固形物33(図2参照)が付着形成されている。これら樹脂固形物は射出成形型7を型開きして上記リング形状品5を脱型した後、リング形状品5から切除される。
(実施の形態2)
図7乃至図9はこの発明の実施の形態2に係る射出成形型7を示す。この実施の形態2は、上記実施の形態1とは樹脂溜まり部及び導入路の形態が異なる他は実施の形態1と同様の型構造であるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその説明を省略し、以下、異なる点とリング形状品5の成形手段とを説明する。
すなわち、この実施の形態2では、固定型9のパーティング面9aにおいて上記キャビティ15のゲート25と略対向するコーナー部に、狭小部からなる2個の断面矩形の導入路35a,35bの一端がキャビティ15に連通するように互いに間隔をあけて設けられ、これら導入路35a,35bの他端には、1個の共通の樹脂溜まり部35が連結されている。この樹脂溜まり部35及び導入路35a,35bの位置は、ゲート25からキャビティ15内に射出された熱可塑性樹脂Rが互いに逆向きに流れて合流する合流部31を境にその一方側近傍に接近した位置になるように設定されている。上記導入路35a,35bの断面積は、熱可塑性樹脂Rの合流部31に近い方の導入路35aが大きい断面積に、合流部31から遠い方の導入路35bが小さい断面積に設定されている。
次に、上記射出成形型7でリング形状品5を射出成形する手順について説明する。
まず、射出成形型7を型閉じし、光沢材を含有する熱可塑性樹脂Rを射出機のノズルからスプル21、ランナー23及びゲート25を経てキャビティ15内に射出する。このキャビティ15内に射出された熱可塑性樹脂Rは、互いに逆向きに流れて樹脂溜まり部35に接近していく(図9(a)参照)。熱可塑性樹脂Rの2つの流れが図9(b)に示すように最接近すると、一方の流れ(図9(b)で右側から左側への流れ)がゲート25と略対向するコーナー部を越えて、該コーナー部に接近した位置で他方の流れ(図9(b)で上方から下方への流れ)と合流し、一方の流れと他方の流れがぶつかって、熱可塑性樹脂Rの光沢材の配向に乱れが生じる(図9(c)参照)。この間、熱可塑性樹脂Rの一方の流れ(図9(b)で右側から左側への流れ)は、樹脂溜まり部35の横を通過する過程で導入路35a,35bから樹脂溜まり部35に少しだけ流入し、樹脂溜まり部35の空間部は大きく確保されている(図9(c)参照)。
次いで、上記合流した熱可塑性樹脂Rは、一方の熱可塑性樹脂Rが樹脂溜まり部35に流入することでその流速が低下することもあって、上記他方の熱可塑性樹脂Rに押し戻され、樹脂溜まり部35に導入路35a,35bから導入され光沢材の配向に乱れが生じている合流部31の熱可塑性樹脂Rに、導入路35a,35bへ向けて分散された全体的に穏やかな流れが生じ、光沢材の配向の乱れが修正される(図9(d)参照)。この際、1個の樹脂溜まり部35に断面積の大きい導入路35aに熱可塑性樹脂Rが多く導入され、導入路35aに向けた大きな流れを生じさせて、合流部31における光沢材の配向の乱れが効果的に修正されるが、上記大きな流れによって導入路35aの近傍で製品に黒筋となる光沢材の配向に乱れが生じる。
しかし、上記導入路35a近傍に生じる光沢材の配向の乱れは、断面積が上記導入路35aより小さい隣の導入路35bから導入されて生じる熱可塑性樹脂Rの流れによって互いに修正され、キャビティ15内での光沢材の配向の乱れはさらに少なくなり、図9(d),(e)に示すように、導入路35a,35bから1個の樹脂溜まり部35に熱可塑性樹脂Rが完全に充填された時点で導入路35a,35bの導入は同時に止まり、互いに導入の流れによる光沢材の配向の乱れを打ち消し合った状態で終わるので、該熱可塑性樹脂Rの充填が完了する過程でキャビティ15内での光沢材の配向の乱れはほとんど修正されて残らない。
このように、この実施の形態2では、1個の樹脂溜まり部35に2個の導入路35a,35bから段階的に熱可塑性樹脂Rを導入するので、樹脂溜まり部35の容量がいっぱいになった時点で、2個の導入路35a,35bへの熱可塑性樹脂Rの流入が同時に止まり、簡素な型構造でありながら実施の形態1と同様にウェルドラインの発現を抑制して意匠性の高いリング形状品5を得ることができる。
また、この実施の形態2では、合流部31に近く断面積の大きい導入路35aから熱可塑性樹脂Rを1個の樹脂溜まり部35に多く導入することができるので、光沢材に配向に乱れが生じている合流部31の熱可塑性樹脂Rに効率良く導入路35a,35bに向けた流れを生じさせて光沢材の配向の乱れを確実に修正することができる。
参考例
図10乃至図12は参考例に係る射出成形型7を示す。この参考例は、上記実施の形態1とは樹脂溜まり部及び導入路の形態が異なる他は実施の形態1と同様の型構造であるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその説明を省略し、以下、異なる点とリング形状品5の成形手段とを説明する。
すなわち、この参考例では、固定型9のパーティング面9aにおいて上記キャビティ15のゲート25と略対向するコーナー部に、実施の形態2のように1個の樹脂溜まり部37を形成し、該樹脂溜まり部37を1個の薄肉状で幅広の狭小部からなる導入部37aを介してキャビティ15に連通するようにしている。この樹脂溜まり部37の位置は、ゲート25からキャビティ15内に射出された熱可塑性樹脂Rが互いに逆向きに流れて合流する合流部31近傍に接近した位置になるように設定されている。上記導入路37aの断面積は、熱可塑性樹脂の合流部31から離れるに従って次第に小さくなるよう設定され、合流部に近い箇所は、合流部から遠い箇所に比べて深く、その深さは上記合流部に近い箇所の深さをD1、合流部から遠い箇所の深さをD2とすると、D1>D2の関係になっている。
次に、上記射出成形型7でリング形状品5を射出成形する手順について説明する。
まず、射出成形型7を型閉じし、光沢材を含有する熱可塑性樹脂Rを射出機のノズルからスプル21、ランナー23及びゲート25を経てキャビティ15内に射出する。このキャビティ15内に射出された熱可塑性樹脂Rは、互いに逆向きに流れて樹脂溜まり部37に接近していく(図12(a)参照)。熱可塑性樹脂Rの2つの流れが図12(b)に示すように最接近すると、一方の流れ(図12(b)で右側から左側への流れ)がゲート25と略対向するコーナー部を越えて、該コーナー部に接近した位置で他方の流れ(図12(b)で上方から下方への流れ)と合流し、一方の流れと他方の流れがぶつかって熱可塑性樹脂Rの光沢材の配向に乱れが生じる(図12(c)参照)。この間、熱可塑性樹脂Rの一方の流れ(図12(b)で右側から左側への流れ)は、樹脂溜まり部37の横を通過する過程で導入路37aから樹脂溜まり部37に少しだけ流入し、樹脂溜まり部37の空間部は大きく確保されている(図12(c)参照)。
次いで、上記合流した熱可塑性樹脂Rは、一方の熱可塑性樹脂Rが樹脂溜まり部37に流入することでその流速が低下することもあって、上記他方の熱可塑性樹脂Rに押し戻され、樹脂溜まり部37に導入路37aから導入され光沢材の配向に乱れが生じている合流部31の熱可塑性樹脂Rに、連続した導入路37aへ向けて分散された全体的に穏やかな流れが生じ、光沢材の配向の乱れが修正される(図12(d)参照)。この際、合流部31に近くて導入路37aが深い箇所から、熱可塑性樹脂Rが樹脂溜まり部37に多く導入され、導入路37aに向けて大きな流れを生じさせて、合流部31における光沢材の配向の乱れを効果的に修正する。さらに、その流れは、連続する導入路27aによって合流部31から離れるほど小さく徐変されるので、熱可塑性樹脂Rの導入による導入路37aの近傍に、光沢材の配向の乱れが生じることがなく、キャビティ15内に光沢材の配向の乱れによる黒筋は残らない(図12(e)参照)。
このように、この参考例では、熱可塑性樹脂Rを薄肉状で幅広の導入路37aから樹脂溜まり部37に広範囲に亙って連続して導入するので、光沢材に配向の乱れが生じている合流部31の熱可塑性樹脂Rに効率良く導入路37aに向けた流れを生じさせて光沢材の配向の乱れを確実に修正することができるとともに導入路37aへの熱可塑性樹脂Rの流れは均一に分散されて穏やかに流れ、導入路37a近傍での光沢材の配向の乱れは小さくなり、導入路37a近傍に現れる黒筋状の痕が確実に抑制される。
また、この参考例では、幅広の導入路37aで合流部31に近くて断面積の大きい箇所から、熱可塑性樹脂Rを樹脂溜まり部37に多く導入することができるので、光沢材に配向の乱れが生じている合流部31の熱可塑性樹脂Rにさらに効率良く導入路37aに向けた流れを生じさせて、光沢材の配向の乱れをより一層確実に修正することができる。
この発明は、メタリック感を有する樹脂製リング形状品の射出成形型について有用である。
実施の形態1に係る射出成形型の固定型の正面図である。 図1のA−A線に相当する射出成形型の断面図である。 図1のB−B線に相当する射出成形型の断面図である。 実施の形態1において樹脂溜まり部及び導入路をキャビティ内から見た射出成形型の断面図である。 実施の形態1においてキャビティ内を流れる熱可塑性樹脂の挙動を示す概念図である。 バンパーの正面図である。 実施の形態2の図1相当図である。 実施の形態2の図4相当図である。 実施の形態2の図5相当図である。 参考例の図1相当図である。 参考例の図4相当図である。 参考例の図5相当図である。 図5(f)、図9(e)及び図12(e)に相当する従来例である。
5 リング形状品
7 射出成形型
9 固定型
9a,11a パーティング面
11 可動型
15 キャビティ
27,28,29 樹脂溜まり部
27a,28a,29a 導入路
31 合流部
35 樹脂溜まり部
35a,35b 導入路
37 樹脂溜まり部
37a 導入路
R 熱可塑性樹脂

Claims (5)

  1. 固定型と可動型とを備え、光沢材を含有する熱可塑性樹脂を上記固定型と可動型との間に形成されたリング形状のキャビティ内に互いに逆向きに流れて合流するように射出して樹脂製リング形状品を成形する射出成形型であって、
    上記固定型又は可動型のパーティング面における上記熱可塑性樹脂の合流部を境にその一方側近傍には、狭小部からなる複数個の導入路の一端が上記キャビティに連通するように互いに間隔をあけて設けられ、これら導入路の他端には、樹脂溜まり部が個別に連結されていることを特徴とする樹脂製リング形状品の射出成形型。
  2. 請求項1に記載の樹脂製リング形状品の射出成形型において、
    複数個の樹脂溜まり部の容積は、熱可塑性樹脂の充填がほぼ同時又は熱可塑性樹脂の合流部に遠い方が近い方よりも遅れて完了する大きさに形成されていることを特徴とする樹脂製リング形状品の射出成形型。
  3. 請求項1又は2に記載の樹脂製リング形状品の射出成形型において、
    導入路の断面積は、熱可塑性樹脂の合流部に近い方が遠い方よりも大きく形成されていることを特徴とする樹脂製リング形状品の射出成形型。
  4. 固定型と可動型とを備え、光沢材を含有する熱可塑性樹脂を上記固定型と可動型との間に形成されたリング形状のキャビティ内に互いに逆向きに流れて合流するように射出して樹脂製リング形状品を成形する射出成形型であって、
    上記固定型又は可動型のパーティング面における上記熱可塑性樹脂の合流部を境にその一方側近傍には、狭小部からなる複数個の導入路の一端が上記キャビティに連通するように互いに間隔をあけて設けられ、これら導入路の他端には、共通の樹脂溜まり部が連結されていることを特徴とする樹脂製リング形状品の射出成形型。
  5. 請求項4に記載の樹脂製リング形状品の射出成形型において、
    導入路の断面積は、熱可塑性樹脂の合流部に近い方が遠い方よりも大きく形成されていることを特徴とする樹脂製リング形状品の射出成形型
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