JP4677571B2 - 電子ビーム投影装置及びフォーカシング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子ビーム投影装置及びフォーカシング方法に関する。さらに詳しくは、電子ビームリソグラフィーでのフォーカシングを高い精度で行うことができる電子ビーム投影装置及びフォーカシング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
散乱/非散乱マスキングを用いた電子パターン形成としては、特開平3−101214号(米国特許5,079,112号)に記載されているSCALPELが公知である。
【0003】
図1に示す従来の装置40は、電子又は他のエネルギー源41、コンデンサーレンズ系42、転写パターンとしてブロッキング領域44及び透明領域45を有するマスク43、対物レンズ46、図示のように軸上開口48を有する後方焦点面フィルター47、投影レンズ系49、露光媒体50、重ね合わせ部53を構成する中間レンズ51及びステージ52を含む。装置40はさらに真空室54とエアロック55とを備え、後者は試料の交換用である。
【0004】
図2に別の従来の装置を示す。これは電子ビーム銃として図示した粒子源30を含み、電子ビーム31を発射する。コリメーターレンズ32は、最初に分岐した電子線を図中の符号33で示した平行な関係にする。走査偏向器34、35は電子走査、例えば連続的なx方向への走査を行う。第2の偏向器は、x方向での走査の間に、連続的に、又はステップ的にy方向での移動を行う。またここで例示するマスク36は、支柱37で分割されている。マスクを通過した後にパターンを含むビーム38は、ダイナミックなフォーカス/スティグメーター偏向器39、80の影響を受ける。偏向器81、82は、x及びy電子走査/ステップ送りの間に、隣り合った領域の位置合わせが正確になるようにする。
【0005】
投影レンズ83は、光軸の可変な偏向器84を有する。複数の開口86を含むマルチ開口フィルター85は、ウエハーステージ88の上方に配置されたウエハー87上にフォーカシングされた像を形成する。既に述べたように、マスク36は図示のように、支柱で分割された区間に対応したパターン領域で構成される。マスク36を通過する間にビームにパターン形成情報を付与する変調の作用に引き続いて、ビームは収束し、最終的には、開口フィルター85で規定された平面上あるいはその近傍で、クロスオーバー(又は像反転)に到達する。開口フィルター85は、望ましくない散乱放射を遮断するための電子イメージングの目的で、設けられている。これは同様に、他の「ノイズ」を遮断するのにも有効である。例えば、望ましくないフィーチャーエッジ散乱放射を遮断するのにもよい。開口86は、レンズ系の開口数(又は瞳孔)を規定するようにしてもよい。
【0006】
図1の装置は、コンデンサーレンズ系と投影レンズ系とを別々に備えている。これは、最小限の機械的な調整でフォーカシングを容易にする点で好ましい。さらに、投影レンズ系では複数個のレンズを使用することが好ましい。例えば、3個のレンズを用いることは、像の歪みやいろいろな収差を補正すること、また像の回転を制御することのために、有益である。
【0007】
従来例の投影レンズ49、43は他の要素を含んでいる。例えば、双方に共通の設計又は作用に起因する、対応する収差を内在的に打ち消すような、反対向きの偏光状態である2個の光学的に等価なレンズの組み合わせ(レンズダブレット)を、投影レンズ49、43は備えている。普通の使用に合致した形では、機能的な整形フィールドの生成を主要な目的としたハードウェアは、それ自体で「レンズ」と呼ばれる。
【0008】
図2においてレンズ39、80は、フォーカシングの補正のみならず収差のダイナミックな補正を行う。例えば、像面湾曲やウエハー高さの偏差の補正を行う。これらのレンズをダイナミックな調整の目的で用いることで、起こりがちなラグタイムを短縮して処理を速くすることができる。例えば、ダイナミックな収差補正には、装置/処理の欠陥に起因するエラーを補正するための付加的な偏向器を併用してもよい。またレンズ39、80は例として示したものであり、他の要素を含んでいてもよい。
【0009】
図3、4は、レンズ系を含むシステムの例を示している。以下に述べる図3、4は、従来の電子パターン形成に関係した基本原理について述べるための基礎となる概要を描くものである。
【0010】
図3に示す従来の単一のレンズ系では、電子ビーム、あるいは他のデリニエーティング(delineating) エネルギーを利用している。電子線1はマスク2に入射する。マスク2は、ブロッキング領域3及び透明領域4を含んでいる。透明領域4を通過したものは電子線1aとなり、ブロッキング領域3を通過したものは電子線1b,1cとなる。これらはレンズ5によって屈折され、射出する電子線は後方焦点面フィルター6に入射する。概略的に図示したように、電子線1aはフィルター開口7を通過し、転写された照射領域10及び非照射領域11からなる像9を形成する。限界散乱角度を越えて散乱された電子線1b,1cは、開口7を通過せず、吸収されるか、もしくはフィルター6の開口なしの部分8によって遮断される。
【0011】
図4に、像を形成するために散乱されたエネルギーを選択的に用いる従来のシステムを示す。ここでは散乱された電子線1b,1cは開口17を通り、通過した電子線1aはフィルター領域18で絞り込みされる。像19は像9のネガティブ像であり、複数の領域21を選択的に照射することにより形成される。領域20は照射を受けていない。この構成では、後方焦点面フィルターは吸収を行う。もちろん散乱、例えばブラッグ散乱などの形態を、他の構成で利用することも可能である。
【0012】
図1ないし4に示した投影システムは、オーダーとして4:1ないし5:1でマスクからウエハーへの倍率縮小を行っている。しかしこれらのシステムは、1:1とか他の倍率の場合にも、同様に適用可能である。
【0013】
図1ないし4に示したシステムは、可能な限り良好に像をウエハーにフォーカシングするように構成される。図5に単純化したシステムを示したが、最終目標は、マスク62にある像60をウエハー64にフォーカシングすることである。図5に示すレンズダブレット66、68に収差がないと仮定すれば、最適にフォーカシングされた像70はガウス平面72に形成される。しかし、色収差及び球面収差という最も顕著なものをはじめ、レンズダブレット66、68に存在する数種類の収差によって、最適にフォーカシングされる像面74はガウス平面72から外れることが多い。最適にフォーカシングされる像面74を決定する従来の手法は、最適にフォーカシングされる像面74の位置に対する色収差及び球面収差の効果を別々に分析することを中心としていた。これについて次に述べる。
【0014】
ビームをフォーカシングする精度を評価する従来の手法に、点広がり関数(PSF)がある。この手法は、マスク62面の中心の1個の点で5000個にのぼる進路に沿ってビームを発射し、ウエハー64面の中心での個々の進路の到達点を調べることからなる。
【0015】
最初の発射条件の例としては、12mradまで(10mradまで、あるいは8mradまで)の着地角度になるような電子の角度分布、また、電子の現実のエネルギー分布を用いた。後者は、マスク62(シリコン窒化物Six Ny 、厚み0.1μm)を通過する前後に広がる電子のエネルギーを分析することによって、実験的に求められた。図6に、電子エネルギー分布の例を示す。
【0016】
図6から分かるように、マスク62を電子が通過することによってエネルギーの広がりの変化がもたらされる。電子のかなりの部分(20%にのぼる)が、電子・プラズモンの非弾性衝突によってエネルギーを失う。図6でピークAは、エネルギーを失わずに薄膜を通過した電子を示し、その幅はビーム源の温度によって規定される。図6のピークBは、プラズモンとの非弾性衝突によって相当のエネルギーを失って薄膜を通過した電子を示す。図6に示したエネルギー分布は、電子パターン形成マスクに特徴的であり、膜厚は、SCALPEL(登録商標)マスク構造などのように、電子の平均自由行程よりも小さい。
【0017】
図6に示すデータは、発射点から投影レンズ系(a projection column) (図5における投影レンズダブレット66、68)を経て、下のウエハー64面までの電子の進路を計算するように開発されたシミュレーションソフトウェアによって処理できる。図5のレンズの3次及び5次の幾何学的収差により、ガウス平面72での像は点にはならない。分析の結果、(光軸上の対象/像に関して)色収差及び球面収差が最も重要な収差であることが分かっている。これらの収差は、ガウス平面上の像を代表する中心点の周りに、電子の進路が広がることを招いてしまうが、PSF分析によって、光軸の周りでの電子の進路の分布に関してフォーカシングの精度を、「立ち上がり距離」又は鮮鋭さとして算出することができる。PSF立ち上がり距離により、ウエハー64上のボケ、すなわち分解可能な最小のパターンサイズが規定されることが、これまで知られている。
【0018】
また、磁気レンズ及び電界レンズはいずれも、異なるエネルギーを有する電子に対して異なるフォーカシングを行うことが周知である。この現象は色収差と呼ばれており、光軸上同じ点から発射されながらエネルギーの異なる電子は、像空間の中の一点に結像されるわけではなくて、別々の点で光軸を横切り、理想的な像面又はガウス像面上で錯乱円を形成するに至る。言い換えれば色収差は、点である対象を二次元的な像に変えてしまう。このことは、光軸に対して異なる角度で発射された電子に対しても当てはまる。磁気レンズ及び電界レンズのいずれも、大きな角度の電子を小さな角度の電子よりもレンズ面の近傍においてフォーカシングする。従って、錯乱円を理想的な像面又はガウス像面に形成する。言い換えれば、球面収差もやはり、点である対象を二次元的な像に変えてしまう。
【0019】
錯乱円、すなわちボケが発生することに関して、色収差及び球面収差を独立して述べる。これを概算で算出するには、次式に示すように、個々の錯乱円の直径の和の求積法を用いることで可能である。
【0020】
[数1]
Dconf〜(Dchr2 +Dsh2 )0.5
【0021】
上述したようにPSF分析では、いかなる平面においても、ボケなど、現実の電子の分布を計算し、この分布が理想的な像、点形状のガウス像に近づくどうかを評価するものである。
【0022】
PSF分析は、錯乱円が最小になる像空間に平面を見いだすためにも用いられる。分析の基準は、一つの境界線が、発射された電子の総数の12%を表し、別の一つ境界線が、発射された電子の総数の88%を表すように描かれた境界線の間の半径方向の距離として設けられる(12/88基準)。同じ手順でまた、発射された電子の総数の20%と80%を表す境界線で、基準が設けられる(20/80基準)。図7に、球面収差のみを考慮した従来の12/88モデリングの結果を示す。
【0023】
図7から分かるように、ガウス平面(横軸上で0.00)でのビームのボケは45nmに達する。一方、ガウス平面から4μmだけ前方(横軸上で−4.00)では、ビームのボケは15nm(14.528nm)で最小となる。言い換えれば、フォーカシングはZ=−4μmの平面で最適となる。
【0024】
最適にフォーカシングされる平面の位置は、さらに図8に示した。ここでは、図7に対応してビームの横断面を図示している。ここでも、フォーカシングはZ=−4μmの平面で最適となる。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
同様に、色収差のみを考慮するならば、ビーム中で大部分の電子である速度の小さな電子によって、フォーカシングの精度が悪くなる。図9にこの状態を示す。上述したように、最適にフォーカシングされる平面は、ガウス平面から4μmだけ前方に位置する。図10に、対応したビームの横断面輪郭線を示す。この図から分かるように、PSF立ち上がり距離として算出されるビームの最小のボケは約60nm(58.868nm)である。図7ないし10に示した構成では、球面収差のみ、色収差のみのいずれかに有効であっても、最適にフォーカシングされる平面を正確には規定することができないという問題がある。
【0026】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、投影レンズ系の色収差の悪影響を容易に抑えることで、電子ビームリソグラフィーでのフォーカシングを高い精度で行うことができる電子ビーム投影装置及びフォーカシング方法を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の電子ビーム投影装置は、電子ビームを生成する電子ビーム源と、転写パターンを有し、電子ビーム源からの電子ビームが通過するマスクと、色収差及び球面収差を有し、マスクからの電子ビームをウエハーにフォーカシングする投影レンズ系(a projection column) と、ウエハーが載置され、球面収差の効果によって色収差の影響を相殺して、投影レンズ系によるフォーカシングが鮮鋭となる平面にウエハーを位置させるウエハーステージとを備えていることを特徴とするものである。
【0028】
なお、球面収差の係数が5〜150mmであることが好ましい。また、平面は、色収差のみによって決定される像面よりも投影レンズ系に4〜20μmだけ近接しているのがよい。
【0029】
さらに本発明の電子ビーム投影装置は、電子パターン形成機器(tool)に用いられ、マスクの厚みは、電子パターン形成機器の電子の平均自由行程よりも小さいことが好ましい。
【0030】
また、投影レンズ系は少なくとも1個のレンズを含む。さらに、少なくとも1個のレンズは投影ダブレットレンズを含むのがよい。
【0031】
さらに本発明のフォーカシング方法は、電子ビームを生成する電子ビーム源と、転写パターンを有し、電子ビーム源からの電子ビームが通過するマスクと、色収差及び球面収差を有し、マスクからの電子ビームをウエハーにフォーカシングする投影レンズ系とを備えている電子ビーム投影装置に用いられ、フォーカシング方法においては、色収差に基づいて、投影レンズ系の第1像面を決定し、球面収差を考慮して、第1像面をシフトさせることで投影レンズ系の第2像面を決定し、ウエハーを第2像面に配置し、色収差と球面収差との相殺によって、投影レンズ系によるフォーカシングを鮮鋭にすることを特徴とするものである。
【0032】
好ましい実施形態では、第2像面は、第1像面よりも投影レンズ系に4〜20μmだけ近接しているのがよい。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の電子パターン形成は散乱/非散乱マスキングを用いたものであり、特開平3−101214号(米国特許5,079,112号)に記載されているスカルペル(SCALPEL)、すなわち「投影角度制限付きでの散乱を用いる電子ビームリソグラフィー」(Scattering With Angular Limitation in Projection Electron-beam Lithography)に基づく。また、イオンパターン形成にも利用可能である。
【0034】
図11は、本発明の一つの実施形態に係る電子パターン形成システム100を示す。電子パターン形成システム100は、電子ビーム銃102、第1レンズ系104、ブランキング開口108、第2レンズ系110、マスク112、2個のレンズ116、118及び後方焦点面117を有する投影レンズダブレット114、及びウエハー120を備えている。(第1レンズ系104は、光学整形開口106を中央の平面に有し、後方焦点面117は開口117aが形成されている。)図12はマスク112、投影レンズダブレット114、ウエハー120を詳細に示している。ここでレンズ116は磁気シェル122、巻線124、及び少なくとも1個の偏向器126を備えている。開口128は2個のレンズ116、118の間に配置されている。図12はさらに、マスク112におけるサブフィールドと、ウエハー120におけるサブフィールドの関係を示している。
【0035】
図5に関連して述べたように、像が最もよくフォーカシングされる平面に図11のウエハー120を配置することを意図している。最適にフォーカシングされる像面74を決定する従来の手法は上に述べたように、球面収差及び色収差を別々に分析して減少させることを含んでいる。しかし、図11のような構成で最適にフォーカシングされる像面74を見いだすには、球面収差及び色収差の複合的な効果を考慮する必要がある。図11(及び図5)に示した構成で、最適にフォーカシングされる像面74は、球面収差及び色収差が個々に減少される位置とは現実には異なっている。図13に、球面収差及び色収差の複合的な効果を示す。図13から分かるように、ガウス平面上(横軸上で0.00)でのビームのボケは約120nmに達する。ガウス平面から8μmだけ前方(横軸上で−8.00)では、ビームのボケは約56nm(55.302nm)という最小値になる。言い換えれば、フォーカシングはZ=−8μmの平面で最適となる。
【0036】
最適にフォーカシングされる像面74の位置は図14にも示している。ここでは、図13との対応でビームの断面を示している。やはり、フォーカシングはZ=−8μmの平面で最適になっている。
【0037】
電子の進路に関する包括的な分析から得られたこれらの結果は、従来知られていないものであり、色収差に起因するビームのボケを球面収差の併用によって減少させるものである。一つの理由は、マスク112によってもたらされる上述の新たな電子エネルギー分布である。特に、マスク112を通過するビームは本質的には、2本のサブビームの和、すなわち高速のサブビーム及び低速のサブビームの和となる。このようなビームへの色収差の効果は、低速及び高速のサブビームに対して2個のはっきり異なる焦点を作り出す。これらの状況では、球面収差は積極的に有効な要因となり、2個の焦点の間で電子を再度分布させ、最適なフォーカシング、つまりビームの最小のボケを作り出す。従来の電子ビームリソグラフィー機器では、球面収差は、ビームのボケを大きくし、機器の解像度を下げるという点で、常に悪影響のある要因と考えられてきた。しかし上述の構成では、球面収差はビームのボケの全体を減少させ、機器の解像度を高めるはたらきがある。
【0038】
上述のように図5ないし10の従来例から導き出される共通の結論は、投影レンズ系の最適にフォーカシングされる像面74がガウス平面72から4μmだけ前方に位置し、ビームの最小のボケが(152 +602 )0.5 =62nmであることである。しかし既に言及したように、最適にフォーカシングされる像面74は、現実にはガウス平面72から4μmだけ前方に位置するわけではない。これは球面収差及び色収差の間の相互作用に起因する。これらの収差が組み合わせられたときの複合的な効果によって、最適にフォーカシングされる像面74は、それぞれの個々の収差に対しての最適にフォーカシングされる平面とは異なる位置になる。
【0039】
図11ないし14に示したようにウエハーは、ガウス平面より前側であって、個々の収差に対して最適にフォーカシングされる平面よりも投影レンズ系又は光学機器の近くに、位置するのがよい。
【0040】
図15及び16は、上述の球面収差及び色収差の間の相互作用を示している。図15の(A)〜(C)は点広がり関数(PSF)とレンズ収差との全体的な関係を示す。図15の(A)は対象面でのPSFを示す。図15の(B)は、収差のない、理想的なレンズ、レンズダブレット、又は投影レンズ系に関する像面でのPSFを示す。図15の(C)は、収差のある、現実のレンズ、レンズダブレット、又は投影レンズ系に関する像面でのPSFを示す。図16の(A)は、(20/80基準を用いた場合の)球面収差のみによるPSFの広がりを示す。図16の(B)は、(20/80基準を用いた場合の)色収差のみによるPSFの広がりを示す。図16の(C)は、(20/80基準を用いた場合の)球面収差及び色収差の複合的作用に伴うPSFの広がりを示す。球面収差を色収差に加算することにより、PSF曲線の再度の整形の結果として、20/80立ち上がり距離を短くすることができる。図16の(A)〜(C)に示すように、球面収差の色収差との加算によって、スロープを20/80範囲で急にするようにPSFの形態が形成される。これにより、電子ビームリソグラフィー機器でリソグラフィーの品質を良好にできる。
【0041】
本発明は次のように実施することもできる。まず、図9、10のように実施された分析と同様に、色収差のみを考慮して最適なフォーカシングされる像面を決定する分析を行う。次に、球面収差の効果を加味して、図13、14に示したように、球面収差及び色収差の組み合わせ効果を考慮した最適にフォーカシングされる像面を得る。ウエハーは、この後に新しい最適にフォーカシングされる像面に設置される。
【0042】
マスク112を通過した後の電子エネルギー分布はシステムから独立したものであるが、投影レンズダブレット116、118の球面収差の係数は、レンズの設計によって5〜150mmの範囲で変化させてもよい。シミュレーションによれば、好ましい球面収差の係数は5〜100mmの範囲にあることが分かる。この範囲内にあるときには、球面収差は、相対的に大きな要因となる色収差によって引き起こされるビームのボケを、減少させる効果がある。
【0043】
以上、図11に基づいて本発明を説明してきたが、本発明の原理は図1、2、5に図示した従来のシステムにも利用可能である。また、電子ソース、マスク又は薄膜、投影レンズ系、電子ソースからのビームがフォーカシングされるステージを備えている他のいかなるシステムにも利用可能である。たとえば図11では電子ビーム銃102を示したが、電子ソースは公知のいかなるタイプの電子ソースでもよい。さらに、図11は第1レンズ系104、ブランキング開口108、第2レンズ系110が描かれているが、これらは省略してもよい。また図11にはマスク112を図示したが、マスクに代えて、薄膜など同様の手段を用いてもよい。さらに図11はレンズ116、118を有する投影レンズダブレット114、それに(開口117aを有する)後方焦点面117を図示しているが、投影レンズダブレット114の代わりに、適当な数のレンズ、又は他の光学素子を用いてもよい。さらに、図11では電子をウエハー120にフォーカシングすることを意図しているが、電子をフォーカシングするのはいかなる物品上の平面でもよく、ウエハーには限られない。また上記の実施形態では、まず色収差の作用を考慮し、その後に球面収差の作用を考慮しているが、その代わりにこの順番を逆にしてもよい。
【0044】
この発明はその精神及び必須の特徴事項から逸脱することなく他のやり方で実施することができる。本明細書に記載した好ましい実施形態は例示的なものであり限定的なものではない。発明の範囲は添付の請求項によって示されており、それらの請求項の意味の中にはいるすべての変形例は本願発明に含まれるものである。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明の電子ビーム投影装置及びフォーカシング方法によれば、球面収差と色収差とを組み合わせ、色収差の悪影響が抑えられる。従って、電子ビームリソグラフィーで、投影レンズ系の収差の影響を減らしてフォーカシングの精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の電子パターン形成システムの構成の第1の例を示す説明図である。
【図2】従来の電子パターン形成システムの構成の第2の例を示す断面図である。
【図3】図1、2の構成の光学的な関係を概略的に示す図である。
【図4】図1、2の構成での、別の光学的な関係を概略的に示す図である。
【図5】従来の電子パターン形成システムの構成の第3の例を示す説明図である。
【図6】電子エネルギー分布の例を示すグラフである。
【図7】球面収差のみを考慮した点広がり関数を示すグラフである。
【図8】図7の状態での電子ビームの横断面を示すグラフである。
【図9】色収差のみを考慮した点広がり関数を示すグラフである。
【図10】図9の状態での電子ビームの横断面を示すグラフである。
【図11】本発明の一実施形態の電子パターン形成システムを示す図である。
【図12】図11のマスク、投影レンズダブレット、ウエハーを詳細に示す図である。
【図13】球面収差及び色収差の組み合わせを考慮した点広がり関数を示すグラフである。
【図14】図13の状態での電子ビームの横断面を示すグラフである。
【図15】(A)は対象面での点広がり関数を示すグラフであり、(B)は収差のない理想状態におけるレンズ系の像面での点広がり関数を示すグラフであり、(C)は収差のある現実の状態におけるレンズ系の像面での点広がり関数を示すグラフである。
【図16】(A)は点広がり関数の曲線形状が球面収差のみを考慮して調整される状態を示すグラフであり、(B)は点広がり関数の曲線形状が色収差のみを考慮して調整される状態を示すグラフであり、(C)は点広がり関数の曲線形状が球面収差及び色収差の組み合わせによって調整され、電子パターン形成システムのフォーカシングを鮮鋭にする状態を示すグラフである。
【符号の説明】
1,1a,1b,1c 電子線
3 ブロッキング領域
4 透明領域
74 最適にフォーカシングされる像面
100 電子パターン形成システム
102 電子ビーム銃
104 第1レンズ系
106 光学整形開口
108 ブランキング開口
110 第2レンズ系
112 マスク
114 投影レンズダブレット
116、118 レンズ
117 後方焦点面
117a 開口
120 ウエハー
122 磁気シェル
124 巻線
126 偏向器
128 開口
Claims (10)
- 電子ビームをウエハーに投影する電子ビーム投影装置において、
前記電子ビームを生成する電子ビーム源と、
転写パターンを有し、前記電子ビーム源からの前記電子ビームが通過するマスクと、
色収差及び球面収差を有し、前記マスクからの前記電子ビームを前記ウエハーにフォーカシングする投影レンズ系と、
前記ウエハーが載置され、前記球面収差の効果によって前記色収差の影響を相殺して、前記投影レンズ系によるフォーカシングが鮮鋭となる平面に前記ウエハーを位置させるウエハーステージとを備えていることを特徴とする電子ビーム投影装置。 - 前記球面収差の係数が5〜150mmであることを特徴とする請求項1記載の電子ビーム投影装置。
- 前記平面は、前記色収差のみによって決定される像面よりも前記投影レンズ系に4〜20μmだけ近接していることを特徴とする請求項1記載の電子ビーム投影装置。
- 電子パターン形成機器の一部に用いられ、前記マスクの厚みは、前記電子パターン形成機器の電子の平均自由行程よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の電子ビーム投影装置。
- 前記投影レンズ系は少なくとも1個のレンズを含むことを特徴とする請求項1記載の電子ビーム投影装置。
- 前記少なくとも1個のレンズは投影レンズダブレットを含むことを特徴とする請求項5記載の電子ビーム投影装置。
- 電子ビームを生成する電子ビーム源と、転写パターンを有し、前記電子ビーム源からの前記電子ビームが通過するマスクと、色収差及び球面収差を有し、前記マスクからの前記電子ビームをウエハーにフォーカシングする投影レンズ系とを備えている電子ビーム投影装置のためのフォーカシング方法において、
前記色収差に基づいて、前記投影レンズ系の第1像面を決定し、
前記球面収差を考慮して、前記第1像面をシフトさせることで前記投影レンズ系の第2像面を決定し、
前記ウエハーを前記第2像面に配置し、前記色収差と前記球面収差との相殺によって、前記投影レンズ系によるフォーカシングを鮮鋭にすることを特徴とするフォーカシング方法。 - 前記球面収差の係数が5〜150mmであることを特徴とする請求項7記載のフォーカシング方法。
- 前記第2像面は、前記第1像面よりも前記投影レンズ系に4〜20μmだけ近接していることを特徴とする請求項7記載のフォーカシング方法。
- 前記電子ビーム投影装置は電子パターン形成機器に用いられ、前記マスクの厚みは、前記電子パターン形成機器の電子の平均自由行程よりも小さいことを特徴とする請求項7記載のフォーカシング方法。
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