JP4676819B2 - 改質触媒の還元方法 - Google Patents

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Description

本発明は、原料ガスを改質触媒の存在下に水蒸気と反応させて水素リッチな改質ガスを生成する改質装置に設けられる改質触媒の還元方法に関する。
従来、原料ガスと水蒸気を改質触媒の存在下に水蒸気改質(以下、水蒸気改質を単に改質という。)し、水素リッチな改質ガスを生成する改質装置が知られている。改質装置で得られる水素リッチな改質ガスは燃料電池の燃料として好適に利用される。原料ガスとしてはメタン等の炭化水素、メタノール等の脂肪族アルコール類、或いはジメチルエーテル等のエーテル類、都市ガスなどが用いられる。改質装置においてメタンを原料ガスとして使用した場合の改質の反応式はCH+2HO→CO+4Hで示すことができ、好ましい改質反応温度は650〜750℃の範囲である。
改質装置の反応に必要な熱を供給する方式として外部加熱型と内部加熱型がある。外部加熱型の改質装置は外部に加熱部を設け、その熱源で原料ガスと水蒸気を反応させて改質ガスを生成する装置である。内部加熱型の改質装置はその供給側(上流側)に部分酸化反応層を設け、該部分酸化反応層で発生した熱を用いて下流側に配備した改質触媒層を改質反応温度まで加熱し、該加熱された改質触媒層で原料ガスを改質反応して水素リッチな改質ガスを生成するようになっている。部分酸化反応はCH+ 1/2O→CO+2Hで示すことができ、好ましい部分酸化反応の温度は250℃以上の範囲である。
内部加熱型の改質装置を改良した自己酸化内部加熱型の改質装置が特許文献1に記載されている。特許文献1の改質装置は予備改質室と主改質室を備え、予備改質室には原料―水蒸気混合物の供給部、改質触媒層および排出部が設けられ、主改質室には前記排出部に連通する供給部、酸素含有ガスの供給部、改質触媒と酸化触媒を混合した混合触媒層、シフト触媒層および排出部が設けられる。
そして原料ガスと水蒸気の混合物(以下、原料―水蒸気混合物という。)を予備改質室に供給すると、そこで改質触媒層により原料ガスの一部が改質(予備改質)され、生成した改質ガスと未反応の原料―水蒸気混合物が排出部から流出して主改質室に供給される。主改質室の混合触媒層では酸化反応による発熱により改質反応(主改質)が行われ、次いでシフト触媒層でCOを低減された改質ガスが排出部から排出するようになっている。
改質触媒層を構成する改質触媒は、NiO−SiO・AlなどのNi系触媒が使用され、さらにWO−SiO・AlやNiO−WO・SiO・Alなどの触媒も使用される。混合触媒層を構成する改質触媒は上記と同様なものが使用され、酸化触媒は白金(Pt)やパラジウム(Pd)等の貴金属触媒が仕様される。なお混合触媒における改質触媒に対する酸化触媒の混合割合は、改質すべき原料ガスの種類に応じて1〜5%程度の範囲で選択される。
改質触媒は安定性に優れた酸化物の形態で供給されるので、改質装置を運転する際にはそれを還元して活性化する必要がある。改質触媒を還元する方法は、例えば特許文献2,特許文献3に記載されている。特許文献2に記載された方法は、起動用燃焼器にメタノール等の原料ガスと空気を供給し、そこで燃焼により部分酸化することにより生成した水素を含む高温の還元ガスを改質装置に供給して改質触媒を還元している。
特許文献3に記載された方法は、酸化触媒を充填した改質装置を起動する際、前回の運転で活性の低下した改質触媒の活性を高めるために、改質装置の排出部から排出した改質ガスの一部を改質装置の供給部にリサイクルし、還元ガスに含まれる水素で活性の低下した改質触媒を還元処理している。
特開2004−175582号公報 特開2002−124286号公報 特開平7−267603号公報
しかし特許文献2の方法は混合触媒層を主体とする単一構造の改質装置に適用されるもので、特許文献1に記載されたような予備改質室と主改質室を組み合わせた改質装置にはそのまま適用することはできない。すなわち、特許文献1の改質装置は原料―水蒸気混合物を予備改質室に供給して予備改質し、その流出物を主改質室に供給してさらに改質するものであるが、予備改質室に設けた改質触媒層は主改質室からの熱供給により温度上昇して改質反応を行うようになっている。
そのため、特許文献2の起動用燃焼器で生成した還元ガスを起動時に予備改質室に供給しても、予備改質室には酸化触媒が存在しないので、そこでの酸化熱による温度上昇は期待できない。そして予備改質室における改質触媒層の加熱は還元ガスによるものだけになるので、その温度上昇は極めて緩やかであるから還元処理も十分に行われない。さらに予備改質室からの流出物の温度は還元ガスより低いので、主改質室の混合触媒層の温度上昇も不十分にならざるを得ない。従って実用的な還元処理を行うことは困難である。
一方、特許文献3には改質装置から流出する改質ガスの一部を改質装置の供給部にリサイクルすることだけしか開示されていないので、特許文献3の技術を特許文献1に記載されたような改質装置に適用することは不可能である。
そこで本発明は前記のような予備改質室と主改質室を備えた改質装置における改質触媒の効率的な還元方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決する本発明は、予備改質室と主改質室を備え、予備改質室には原料―水蒸気混合物の供給部、改質触媒層および排出部が設けられ、主改質室には前記排出部に連通する供給部、酸素含有ガス導入部、改質触媒と酸化触媒を混合した混合触媒層、シフト触媒層および排出部が設けられ、主改質室で発生する熱により予備改質室が加熱されるようになっている改質装置の触媒還元方法である。
そして本還元方法は、原料―水蒸気混合物を酸素含有ガスの存在下にプレヒータで燃焼して部分酸化し、前記部分酸化により生成した水素を含有する高温の還元ガスを前記主改質室の混合触媒層に供給してその温度を上昇させると共に、混合触媒層を構成する改質触媒を還元し、混合触媒層が自立的に部分酸化反応を進行できる温度に達した時点でプレヒータから混合触媒層への還元ガス供給を停止し、主改質室で生成した改質ガスの少なくとも一部を前記原料としてリサイクルし、改質ガスに含まれる水素により予備改質室における改質触媒を還元することを特徴とする(請求項1)。
上記還元方法において、前記シフト触媒層を混合触媒層の下流側に設け、混合触媒層から流出するガスにより還元することができる(請求項2)。
本発明の還元方法は、プレヒータで生成した水素を含有する高温の還元ガスを主改質室の混合触媒層に供給してその温度を上昇させ、混合触媒層を構成する改質触媒を還元しているので、主改質室における改質触媒は速やかに還元処理される。また上記還元処理の進行により主改質室での改質ガス生成も次第に活性化するが、その生成した改質ガスの少なくとも一部が予備改質室の原料としてリサイクルするので、改質ガスに含まれる水素と主改質室からの加熱によって予備改質室の改質触媒層も速やかに還元処理される。
上記還元方法において、前記シフト触媒層を混合触媒層の下流側に設け、混合触媒層から流出するガスにより還元するようにした場合は、混合触媒層を構成する改質触媒の還元処理に伴ってシフト触媒も還元処理できる。
次に本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は本発明の還元方法を実施する自己酸化内部加熱型の改質装置を含む改質システムのプロセスフロー図である。図1において、水蒸気発生手段2は燃焼部2aと吸引混合手段6を備えており、燃焼部2aには吸引混合手段6から供給される空気−燃料混合物を燃焼するバーナー(図示せず)が設けられる。吸引混合手段6は例えばエジェクタにより構成できるが、その詳細は後述する。
水蒸気発生手段2には水タンク10から水または純水を供給する配管108と、混合手段4へ水蒸気を供給する配管109aが接続される。なお混合手段4は例えば配管109aより若干口径の大きい合流管により構成することができる。また吸引混合手段6と同様なエジェクタにより構成することもできる。配管108には流量調整弁32が設けられ、配管109aには流量調整弁39が設けられる。これら流量調整弁は例えば空気圧式、油圧式または電動式などで駆動される遠隔操作可能なものであって、制御装置14により制御される。(以下に流量調整弁と記載されているときは、特に明記しないが、同様に遠隔操作可能とされ、制御装置14により制御される。)しかし流量調整弁32、39は電磁弁等の遠隔操作可能な開閉弁(以下に開閉弁と記載されているときは、特に明記しないが、同様に遠隔操作可能とされ、制御装置14により制御される。)であってもよい。さらに流量調整弁32または流量調整弁33を設ける代わりに、配管108または109aにポンプを設け、そのポンプの回転数操作や起動―停止操作を制御装置14で行うようにしてもよい。
さらに水蒸気発生手段2には水貯留部(水ドラム)の水位を検出する水位検出手段40と、水貯留部で発生する水蒸気の圧力を検出する圧力検出手段41が設けられ、各検出値に比例する電気信号(検出信号)が制御装置14に入力される。
制御装置14は水位検出手段40や圧力検出手段41の検出値、または他の操作盤等から操作指令を受けて各流量調整弁などを制御し、さらに本発明の特徴部分である改質装置における改質触媒の還元処理制御を行う。この制御装置14は例えばコンピュータ装置により構成される。コンピュータ装置は種々の制御動作を行うCPU(中央演算装置)、オペレーションシステム(OS)や制御プログラムを格納したROMやRAM等の記憶部、キーボードやマウス、もしくは操作盤などの入力部などにより構成され、さらに必要に応じてディスプレーやプリンタ等の出力部が附加される。なお制御装置14を本システムから離れた場所に設置し、通信回線を利用して前記制御を行うこともできる。
燃焼部2aには燃焼排ガスを排出する配管113が接続され、その配管113は熱交換手段13を経て配管114に連通し、その配管114の先端部は系外に開口する。熱交換手段13には燃料電池のアノード排ガスや改質ガス等のガス燃料、または液体燃料を供給する配管101aが接続され、配管101aは熱交換手段13を経て配管101bに連通し、その配管101bの先端部は吸引混合手段6に接続される。
燃焼部2aには更に配管112が接続される。配管112は流量調整弁34を介して空気圧縮機を備えた加圧空気供給系7から延長する配管102に連通する。配管112により供給される空気は、燃焼部2aの二次空気として、あるいは燃焼部2aの運転開始時などにおけるパージ用空気として利用される。すなわち運転開始信号(起動信号)により、制御装置14から流量調整弁34を開ける制御信号が設定された時間だけ出力され、それによって燃焼部2aの内部が空気パージされる。
貯留タンクを有する原料供給系8から延長する原料ガス供給用の配管111は脱硫装置9の入口側に接続され、脱硫装置9の出口側には脱硫された原料ガスが流出する配管103が接続される。配管103には遠隔操作可能な流量調整弁31が設けられ、流量調整弁31の下流側は前記熱交換手段13を経て配管109に連通し、配管109の先端部は混合手段4に接続される。
さらに前記吸引混合手段6には燃焼用の空気を供給する配管102bが接続され、その配管102bは後述する熱交換手段12を経て配管102aに連通する。配管102aには流量調整弁37が設けられ、配管102aの先端部は加圧空気供給系7に連通する。また燃料供給用の配管101aには原料ガス供給用の配管111から分岐した配管111aが接続され、その配管111aには遠隔操作可能な流量調整弁33aが設けられる。
改質装置1には混合手段4から流出する原料−水蒸気混合物を供給する配管104と、加圧空気などの加圧された酸素含有気体を供給する配管102dが接続される。配管102dは熱交換手段12を経て流量調整弁36を設けた配管102cに連通し、配管102cの先端部は前記加圧空気供給系7に接続される。そして改質装置1の上部に温度検出手段42および圧力検出手段43が設けられ、それらの測定信号は制御装置14に入力される。
改質装置1にはプレヒータ80が連結される。プレヒータ80はシステム起動時に改質装置1を迅速に改質反応温度に昇温し、または後述する混合触媒層を構成する改質触媒を還元するために設けられる。このプレヒータ80は内部に電熱ヒータが配置されると共に、白金(Pt)やパラジウム(Pd)等の酸化触媒が充填されている。プレヒータ80には混合手段4からの原料−水蒸気混合物を供給する配管81と、加圧空気供給系7からの酸素含有ガスを供給する配管82が接続され、それらは配管81,82にはそれぞれ流量調整弁83,84が設けられる。なお流量調整弁83は開閉弁であってもよい。
プレヒータ80内では供給される原料ガスの一部が燃焼により酸化触媒の存在下に酸素と反応して部分酸化し、水素を生成すると共にその酸化熱で残りの原料−水蒸気混合物が加熱される。そして高温の原料ガス、酸素含有ガスおよび生成した水素ガスの混合物が配管85から改質装置1に供給される。
改質装置1の排出部69に改質ガス排出用の配管105が接続され、配管105は熱交換手段12を経て配管106に接続され、配管106の先端部は酸化用の空気を混合する混合手段5に接続される。混合手段5の出口側はCO低減手段3に連結され、その出口側の配管107は燃料電池300への配管301と吸引混合手段6への配管302に分岐され、配管301,302にそれぞれ流量調整弁もしくは開閉弁で構成した流路切換弁303,304が設けられる。さらに配管302から混合手段4への配管302aが分岐され、配管302aに流量調整弁302bが設けられる。
前記CO低減手段3の酸化触媒としては、例えばPt,Pd等の貴金属触媒をセラミック粒子に担持したペレットタイプのものや、金属ハニカム構造体或いはセラミックハニカム構造体にPt,Pd等の貴金属触媒を担持したものを使用できる。CO低減手段3用の混合手段5には流量調整弁38を設けた加圧空気供給用の配管110が接続され、配管110の先端部は前記加圧空気供給系7に接続される。なお後述するように、改質手段1には予備改質室61aとそれに連通する主改質室62a(図3参照)が設けられるが、主改質室62aには混合触媒層72aが設けられ、その温度が前記温度検出手段42で検出される。
図2に燃焼部2aに燃料−空気混合物を供給する吸引混合手段6の構造例を示す。本実施形態では吸引混合手段6がエジェクタ20で構成される。エジェクタ20は固定部21と、固定部21から延長する内部ノズル構造体22および外部ノズル構造体23を備え、外部ノズル構造体23に開口部24,25および絞り部26が設けられる。
次にその作用を説明すると、内部ノズル構造体22に主流体である空気流を矢印のように供給したとき、空気流のベンチュリー効果により絞り部26部分が減圧状態になる。そして開口部24から副流体である燃料ガスを矢印のように供給すると、燃料ガスは吸引され空気流と均一に混合して開口部25から噴出する。従って、燃料ガスは特別な動力装置を用いなくても空気と均一に混合され、均質な燃料−空気混合物が得られる。
図3は前記改質器1の具体的構成を示す図である。改質装置1は横断面が略矩形で上下を閉鎖した縦長の外筒61と、横断面が略矩形で縦長の2つの内筒62を備えており、2つの内筒62は外筒61の内側に配置される。外筒61と内筒62の外側との空間と、内側の内筒62の内部空間が互いに連通して予備改質室61aを形成し、2つの内筒62間に主改質室62aが形成される。内筒62の側壁は耐食性を有し且つ伝熱性の良いステンレス等の金属で作られており、そのため予備改質室61aと主改質室62aは良好な伝熱性を有する隔壁62bで仕切られた状態になっている。
予備改質室61aの一方の端部(図3の下側)に原料−水蒸気混合物を供給する供給部68が設けられ、他方の端部(図3の上側)に排出部68aが設けられる。また予備改質室61aの内部には排出部68a側から順に多数の微小な貫通部を有する支持板73a,73c,73eが設けられ、支持板73aと73cの間に水蒸気改質を行う改質触媒層71aが充填され、支持板73cと73eの間に伝熱粒子層71bが充填されている。
主改質室62aの一方の端部(図3の上側)に予備改質室61aの排出部68aと連通する供給部69aが設けられると共に、その供給部69aに空気などの酸素含有ガスを導入する酸素含有ガス導入部63のマニホールド64,65が連通する。また主改質室62aの他方の端部(図3の下側)にマニホールド66を有する排出部69が設けられる。
さらに主改質室62aの内部には供給部69a側から順に多数の微小な貫通部を有する支持板73a,73b,73c,73d,73eが設けられる。なお図示の例では、予備改質室61aに設ける支持板73cは主改質室62aに設ける支持板73cと同じ高さになっているが、両者を互いに異なる高さで設けることもできる。
主改質室62aの支持板73aと73bの間に改質触媒と酸化触媒を混合した混合触媒層72aが充填され、支持板73bと73cの間に伝熱粒子層72bが充填され、支持板73cと73dの間に高温シフト触媒層72cが充填され、支持板73dと73eの間に低温シフト触媒層72dが充填される。そして高温シフト触媒層72cと低温シフト触媒層72dの両層でシフト触媒層72eが構成される。なお主改質室62aに配置した支持板73aと73bの間に存在する周囲壁は断熱壁70とされ、酸化触媒による酸化反応熱が該部分から直接予備改質室61a側に伝達することを防止している。
予備改質室61aに充填する改質触媒層71aは、原料ガスを水蒸気改質する触媒層であり、前述したようにNiO−SiO・AlなどのNi系改質反応触媒を仕様することができる。またWO−SiO・AlやNiO−WO・SiO・Alなどの改質触媒も使用できる。
混合触媒層72aを構成する主要成分である改質触媒は、前記予備改質室61aに充填する改質触媒と同様なものを使用できる。この改質触媒の使用量は、原料−水蒸気混合物が混合触媒層72aを通過する間に水蒸気改質反応が完了するに十分な値とされるが、その値は使用する原料ガスの種類により変化するので、最適な範囲を実験等により決定することが望ましい。
混合触媒層72aに均一に分散される酸化触媒は原料−水蒸気混合物中の原料ガスを部分酸化して水蒸気改質反応に必要な温度に昇温するものであり、前述のように白金(Pt)やパラジウム(Pd)等の貴金属触媒を使用することができる。改質触媒に対する酸化触媒の混合割合は、水蒸気改質すべき原料ガスの種類に応じて1〜5%程度の範囲で選択する。例えば原料ガスとしてメタンを使用する場合は3%±2%程度、メタノールの場合は2%±1%程度の混合割合とすることが望ましい。
予備改質室61aの伝熱粒子層71bと主改質室62aの伝熱粒子層72bは、隔壁62bを介して主改質室62aの熱エネルギーを効率よく予備改質室61aに伝達するために設けられる。すなわち主改質室62aに充填する伝熱粒子層72bは、混合触媒層72aからの高温流出物の熱エネルギーで予備改質室61aに充填する改質触媒層71a部分を加熱し、予備改質室61aに充填する伝熱粒子層71bは、発熱反応部であるシフト触媒層72eからの熱エネルギーで供給部68から流入する原料−水蒸気混合物を加熱し、それら両方の熱エネルギー伝達により予備改質室61aの改質触媒層71a部分における温度を水蒸気改質反応温度まで昇温する。なおこれら伝熱粒子層71bと伝熱粒子層72bを構成する伝熱粒子は、例えばアルミナ或いは炭化珪素等のセラミック粒子または金属ハニカム体構造で構成できる。
高温シフト触媒層72cと低温シフト触媒層72dの両層により構成されるシフト触媒層72eは、改質ガス中に含まれる一酸化炭素を酸化して水素を生成するものである。すなわち、改質ガスに残存する水蒸気と一酸化炭素の混合物をシフト触媒の存在下に水素と炭酸ガスにシフト変換して水素を発生させ、改質ガス中の水素濃度をより高くし、一酸化炭素濃度をそれに応じて低くする。
高温シフト触媒層72cや低温シフト触媒層72dを形成するシフト触媒としては、CuO−ZnO、Fe、Feまたは酸化銅の混合物等を使用することができる。しかし400℃以上で反応を行う場合にはCrを使用することが望ましい。
前記複数の隔壁62bは、前記供給部68および排出部69側の端部がa部分で互いに連結されて固定端となっており、それと反対側の端部は互いに連結されずに自由端になっている。そのため改質反応によって高温状態となる予備改質室61aと主改質室62a間に熱膨張差が生じたとき、特に主改質室62aの熱膨張が多い場合、その熱膨張による主改質室62aの伸張を前記自由端により吸収して歪みが発生することを防止できる。
次に、図1の水蒸気改質システムにおける平常時の運転方法について説明する。
(水蒸気発生操作)
水蒸気発生手段2の水貯留部(水ドラム)の水位は水位検出手段40で検出され、その検出値が予め設定された値より少ないときには、制御装置14から流量調整弁32を開ける制御信号が出力され、水貯留部の水位を常に所定範囲に維持する。制御装置14は水蒸気発生手段2の燃焼部2aのバーナーを起動する制御信号を出力すると共に、流量調整弁37,33(または33a)を制御して燃焼部2aへ所定流量の燃料−空気混合物を供給する。すなわち、制御装置14は圧力検出手段41からの水蒸気圧力検出値が予め設定された値になるように、吸引混合手段6へ加圧空気を流す配管102bの流量調整弁37を制御する。なお、流量調整弁39を開閉弁とし、運転時に制御装置14でそれを全開に制御しておき、制御装置14から燃焼部2aの燃料および空気量を制御して必要な水蒸気発生量を調整するように構成することもできる。
制御された空気流が吸引混合手段6に流入すると、その流量に対して所定割合で燃料が吸引して両者が均一に混合される。そのため燃料供給系統に特別な動力装置等の昇圧手段を設ける必要がない上に、均一混合により燃焼部2a内部では局部的に高温になる領域がなくなり、良好な燃焼進行によってNOxの発生は低く抑えられ、環境にやさしい燃焼排ガスを排出することができる。
吸引混合手段6を使用する場合には、制御装置14は燃料の最大許容流量が設定できるように流量調整弁33の弁開度を制御すればよいが、流量調整弁33の弁開度を空気流量にほぼ比例するように制御することもできる。また、吸引混合手段6に供給される加圧空気の圧力は常圧より僅かに高い値、例えば0.02MPa程度に設定することにより、吸引混合手段6に燃料ガスを吸引できるレベルの負圧を発生させることができる。
流量調整弁33を開けることにより、配管101aから燃料電池のアノード排ガス、都市ガス、プロパンガス、天然ガスなどのガス燃料、または灯油などの液体燃料が吸引混合手段6に供給される。また流量調整弁33aを開けることにより配管111からメタン、エタン、プロパン等の炭化水素、メタノール等のアルコール類、ジメチルエーテル等のエーテル類または残水素を含む燃料電池のアノード排ガスなどの原料ガスをガス燃料として吸引混合手段6に供給することもできる。
この流量調整弁33と33aの選択は、例えば制御装置14への燃料選択指令により行うことができる。燃焼部2aからの燃焼排ガスは配管113から熱交換手段13に供給され、そこで冷やされてから配管114により外部に排出される。一方、配管101aまたは111aから供給される燃料は熱交換手段13で加熱されてから吸引混合手段6に供給される。
(原料−水蒸気混合操作)
水蒸気発生手段2で発生した水蒸気は、流量調整弁39で流量調整されて混合手段4に供給されるが、その流量調整は制御装置14からの制御信号で行われる。すなわち制御装置14に設けた入力手段から改質手段1への原料供給流量の設定値を入力すると、制御装置14は流量調整弁39に所定の弁開度を維持する制御信号を出力する。好適な原料ガスと水蒸気の混合割合は、原料ガスに含まれている炭素Cを基準に表示すると、例えば炭化水素の場合はH2O/C=2.5〜3.5の範囲が好ましく、脂肪族アルコールの場合はH2O/C=2〜3の範囲が好ましい。
混合手段4には前記のように水蒸気流量に対して所定割合のメタン、エタン、プロパン等の炭化水素、メタノール等のアルコール類、ジメチルエーテル等のエーテル類または残留水素を含む燃料電池のアノード排ガス、さらには都市ガス、プロパンガス、天然ガスなどの原料ガスを配管109から混合する。そして混合手段4から均一な原料−水蒸気混合物が流出して改質手段1に供給される。
なお原料供給系8から供給される原料ガスは、配管111、脱硫装置9、流量調整弁31および熱交換手段13を経て配管109に流入する。そして原料ガスは制御装置14からの制御信号により所定開度に維持された流量調整弁31でその最大許容流量を制限され、熱交換手段13で所定温度に加熱されてから混合手段4に供給される。
(改質反応操作)
前記のように、混合手段4から配管104に流出した原料−水蒸気混合物は改質手段1の供給部68(図3)を経て予備改質室61a内に流入する。平常運転時においては、主改質室62aから隔壁62bを通して伝熱する熱エネルギーによって、予備改質室61aに充填された伝熱粒子層71bが昇温されているので、予備改質室61aに流入した原料−水蒸気混合物はその伝熱粒子層71bを通過する間に改質反応温度まで昇温する。
改質反応温度に達した原料−水蒸気混合物は、次いで改質触媒層71aを通過し、その間に原料−水蒸気混合物の一部が水蒸気改質反応して水素リッチな改質ガスに変換される。特にプロパン等の高炭素の炭化水素は高い収率でメタンに転化される。そして水素を含む改質ガスと反応しなかった残りの原料−水蒸気混合物が排出部68aから一体となって排出する。
予備改質室61aの排出部68aから排出した前記改質ガスと原料−水蒸気混合物は、主改質室62aの供給部69aから混合触媒層72aに流入する。その際、供給部69aには酸素含有ガス導入部63から酸素含有ガスとして空気が供給され、その空気は混合触媒層72aに流入する原料−水蒸気混合物等に混入する。
酸素含有ガス導入部63から供給される空気流量は制御装置14で制御される流量調整弁36によって調整される。すなわち、制御装置14には水蒸気流量を調整する流量調整弁35の制御情報が記憶されており、水蒸気流量は原料−水蒸気混合物の流量と相関関係にあるので、該制御情報から必要とする空気流量を算出して流量調整弁36に最適な制御信号を出力する。
上記のように原料−水蒸気混合物は混合触媒層72aに流入するが、その原料−水蒸気混合物を構成する原料ガスの一部は流入した空気中の酸素と反応して酸化(部分酸化)し、その反応熱により原料−水蒸気混合物を改質反応に必要なレベルまで昇温する。すなわち自己酸化加熱が行われる。なお混合触媒層72aにおける平均温度は水蒸気改質反応に適した温度、例えば650℃〜750℃程度、標準的には700℃前後の温度に維持される。
一方、混合触媒層72aにおける温度は、水蒸気改質反応に適した範囲にすることが重要であるが、それと共に、その下流側の伝熱粒子層72bとの境界における温度が所定レベルに維持できるように管理することも重要である。例えば伝熱粒子層72bとの境界における温度が650℃以上、好ましくは700℃以上になるように、酸化用の酸素含有気体を適切な量に制御することによって、混合触媒層72aにおける平均温度を管理すると、前記予備改質室61aにおける伝熱粒子層71bの温度は少なくとも500℃以上に維持することができ、それによって予備改質室61aの水蒸気改質反応を十分に促進できる。
水素リッチな改質ガスは混合触媒層72aからその下流側の伝熱粒子層72bに流入するが、その温度は650℃以上、好ましくは700℃以上の温度になるように運転することが望ましい。前記のように、流入した改質ガスが伝熱粒子層72bを通過する間に、その顕熱の一部が隔壁62bを通して予備改質室61aの伝熱粒子層71bに移動し、好適に設定された場合には、伝熱粒子層72bから下流側の高温シフト触媒層72cに流入する際の改質ガス温度は、シフト反応に適する500℃以下に下降させることもできる。
高温シフト触媒層72cに流入した改質ガスはシフト反応により含まれている一酸化炭素の殆どが炭酸ガスに変換される。すなわち前記のように、改質ガスに残存する水蒸気と一酸化炭素がシフト触媒の存在下に水素と炭酸ガスにシフト変換して水素を生成する。
次いで改質ガスは高温シフト触媒層72cからその下流側の低温シフト触媒層72dに流入し、そこで残存する一酸化炭素の大部分が水素に変換される。このように2段階のシフト反応を行うことにより、一酸化炭素を十分に低減できると共に、水素をより多く生成させることができる。高温シフト触媒層72cおよび低温シフト触媒層72dにおけるシフト反応は発熱反応であり、その反応熱の一部は前記のように隔壁62bを通して予備改質室61aの伝熱粒子層71bに移動する。
低温シフト触媒層72dを通過した改質ガスは、主改質室62aの排出部69から配管105(図1)に流出するが、通常、改質ガスの温度は180℃程度の高温であるので、熱交換手段12で冷却してから混合手段5に流入させる。混合手段5に流入した改質ガスは配管110から供給される空気と混合し、次いでCO低減手段3に流入する。CO低減手段3において改質ガスに残存する一酸化炭素が極めて微量なレベル(例えば1〜10ppm)まで低減され、配管107,配管303を経て燃料電池300に供給される。
前記配管110から混合手段5に供給される空気の流量は、制御装置14からの制御信号により流量調整弁38の開度を変化して調整される。すなわち制御装置14には水蒸気流量を調整する流量調整弁35の制御情報が記憶されており、水蒸気流量は改質ガス流量と相関関係にあるので、該制御情報から必要とする空気流量を算出して流量調整弁38に適正な制御信号を出力するように構成されている。
次に図4のフローチャートを参照して本発明の特徴部分である改質触媒の還元方法を説明する。先ずシステムの起動指令を受けると制御装置14は通常の起動スケジュールに従ってシステムを起動する。さらに制御装置14はプレヒータ80を起動して混合触媒層72aへの還元ガス供給体制を整える。
具体的には、先ずステップS1で水蒸気発生手段2を起動する。すなわち、燃焼部2aへの燃料および空気を所定比率で供給するように、制御手段14は流量調整弁34,37を制御する。水蒸気圧力が規定値まで上昇したことを圧力検出手段41で検出すると、制御装置14はステップS2で原料―水蒸気供給系を起動する。すなわち混合手段4への水蒸気および原料の供給を開始する。
次に制御装置14はステップS3でプレヒータ80を起動する。なおプレヒータ80の起動は原料―水蒸気混合物の供給と酸素含有気体の供給である
プレヒータ80で生成する還元ガスは、配管85から主改質室82aの混合触媒層72aに流入する。高温の還元ガスの流入により混合触媒層72aの温度が上昇するが、この温度上昇は混合触媒層72aを構成する酸化触媒で発生する酸化熱も寄与する。そして混合触媒層72aを構成する改質触媒はこの温度上昇と還元ガスに含まれる水素により還元される(ステップS4)。
改質触媒の還元が進行すると、予備改質室61aから供給される原料―水蒸気混合物の水蒸気改質反応も開始され、徐々に改質ガスの生成率が高まる。この改質ガスには水素が含まれるので、その水素は前記還元ガスの未反応水素とともに下流に設けられたシフト触媒層72eを構成するシフト触媒を還元する。
なお主改質室62aの排出部69に接続した配管105は、燃料電池300への配管301と水蒸気発生手段2への配管302に分岐されるが、起動時においては制御手段14からの制御信号により配管301の流量調整弁303が閉じられ、配管302の流量調整弁304が開けられている。そのため配管105から流出する改質ガスは配管302を経て水蒸気発生手段2の燃料としてリサイクルされる。
前記混合触媒層72aの温度(x)が自立的に部分酸化反応を進行できる温度(T)に達した時点(ステップS5)で、プレヒータ80を停止して混合触媒層72aへの還元ガス供給を終了する(ステップS6)。一方、制御装置14は主改質室62aの排出部69から水素リッチな改質ガスが流出した時点で流量調整弁304(または開閉弁)を閉じ、流量調整弁302b(または開閉弁)を開けて改質ガスを混合手段4にリサイクルする(ステップS7)。なお流量調整弁304(または開閉弁)を幾分開けておけば改質ガスの一部が混合手段4にリサイクルされる。
混合手段4に改質ガスの少なくとも一部をリサイクルすると、混合手段4からは水素を含有する原料―水蒸気混合物が予備改質室61aに供給され、その改質触媒層71aを構成する改質触媒を還元処理する(ステップS8)。なおその時点で改質触媒層71aは主改質室62a側からの熱移動により温度上昇しているので、還元作用は効率よく行われる。
予備改質室61aにおける改質触媒の還元処理は、予め実験的に求めた所定時間行うことにより達成できる。また、還元反応は発熱反応であるので、還元反応が進行中は温度上昇が認められるが、還元処理の終点では発熱反応はなくなり吸熱反応である改質反応のみとなって温度上昇はなくなるので、その温度変化を温度検出手段などで監視することによって、該還元処理の終点を検出もしくは判断することもできる。そこで改質触媒の還元処理が十分進行した時点で、制御手段14は流量調整弁302bを閉じ、流量調整弁304を開けて混合手段4への改質ガスリサイクルを停止する(ステップS9)。この停止によって起動時における各改質触媒の還元処理工程が終了する。
上記のように還元処理を含む軌道工程が終了したら平常運転に入る。すなわち制御装置14からの指令により流量調整弁304を閉じると共に流量調整弁303を開けて改質ガスを燃料電池300等の負荷設備に供給する。
本発明の改質触媒の還元方法は、自己酸化内部加熱型の改質装置における改質触媒を還元するために利用できる。
本発明の還元方法法を実施する自己酸化内部加熱型の改質装置を設けた改質システムのプロセスフロー図。 燃料−空気混合物を供給する吸引混合手段6の構造を示す断面図。 図1に示した改質装置1の具体的構成を示す図。 改質触媒を還元処理する手順を示すフローチャート。
符号の説明
1 改質装置
2 水蒸気発生手段
2a 燃焼部
3 CO低減手段
4 混合手段
6 吸引混合手段
7 加圧空気供給系
8 原料供給系
9 脱硫装置
10 水タンク
12,13 熱交換手段
14 制御装置
20 エジェクタ
21 固定部
22 内部ノズル構造体
23 外部ノズル構造体
24,25 開口部
26 絞り部
31〜39 流量調整弁
40 水位検出手段
41 圧力検出手段
42 温度検出手段
61 外筒
61a 予備改質室
62 内筒
62a 主改質室
62b 隔壁
63 酸素含有ガス導入部
64,65,66 マニホールド
68 供給部
68a 排出部
69 排出部
69a 供給部
70 断熱壁
71a 改質触媒層
71b 伝熱粒子層
72a 混合触媒層
72b 伝熱粒子層
72c 高温シフト触媒層
72d 低温シフト触媒層
72e シフト触媒層
73a〜73e 支持板
80 プレヒータ
81,82 配管
83,84 流量調整弁
85 配管
101a〜114 配管
300 燃料電池
301,302、302a 配管
302b、流量調整弁
303,304 流露切換弁

Claims (2)

  1. 予備改質室61aと主改質室62aを備え、予備改質室61aには原料―水蒸気混合物の供給部68、改質触媒層71aおよび排出部68aが設けられ、主改質室62aには前記排出部68aに連通する供給部69a、酸素含有ガス導入部63、改質触媒と酸化触媒を混合した混合触媒層72a、シフト触媒層72eおよび排出部69が設けられ、主改質室62aで発生する熱により予備改質室61aが加熱されるようになっている改質装置1における改質触媒の還元方法において、
    原料―水蒸気混合物を酸素含有ガスの存在下にプレヒータ80で燃焼して部分酸化し、前記部分酸化により生成した水素を含有する高温の還元ガスを前記主改質室62aの混合触媒層72aに供給してその温度を上昇させると共に、混合触媒層72aを構成する改質触媒を還元し、混合触媒層72aが自立的に部分酸化反応を進行できる温度に達した時点でプレヒータ80から混合触媒層72aへの還元ガス供給を停止し、主改質室62aで生成した改質ガスの少なくとも一部を前記原料としてリサイクルし、改質ガスに含まれる水素により予備改質室61aにおける改質触媒を還元することを特徴とする改質触媒の還元方法。
  2. 請求項1において、前記シフト触媒層72eは混合触媒層72aの下流側に設けられ、混合触媒層72aから流出するガスにより還元されることを特徴とする改質触媒の還元方法。
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