JP4674793B2 - 下塗り塗料組成物及び下塗り塗膜 - Google Patents
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しかし、これらの個別認証手段は、剥離、切断、消去などにより製品から除去できるという欠点があった。このため、製品から取り除くことのできない、即ち消失しない認証情報の開発が期待されていた。
ここで、上記情報化核酸とは、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)及びこれらの誘導体をいい、天然型でも人工型でも良いが、使用環境が厳しい下塗り塗料組成物中に含めることを考慮すると、構造的に安定している人工型を使用するのが好ましい。人工型においては天然型には存在しない結合様式の(例えばヌクレオシド同士の結合がリン酸エステル結合だけでなくチオリン酸エステル結合のような非天然型を含むなどの)配列を形成できる。
また、上記情報化核酸において、塩基配列部位が任意であるとは、検出可能な塩基配列である限り無作為に選択され得ることを示し、塩基配列部位が既知であるとは、個別認証に用いられる塩基配列が予め把握されていることを示す。
更に、上記塩基配列においてチミン同士が隣接しないことが好ましい。これより、チミンがダイマー化するのを抑制できる。
更に、単離や精製の利便性を高める観点から、5´位の水酸基をビオチン又は蛍光分子により誘導化することが好ましい。具体的には、ビチオンを用いるとアビジンというタンパク質を結合したカラムに選択的に吸着され易くなる。一方、フルオレセインなどの蛍光分子を用いると核酸自体が蛍光をもつようになるため、感度よく検出でき精製等が容易になる。このように、単離や精製の利便性を高めると、個別認証が極めて容易になる。
なお、上記情報化核酸としてRNAを用いるときは、安定性を向上させる観点から2´位の水酸基を上記保護基により誘導化することもできる。
また、このときは、上記増幅に用いられる部位として、両端にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に必要なプライマー対応部位を有することが好ましい。情報化核酸はプライマーを備えていなくても使用できるが、プライマーを備えることにより短時間で識別できるようになるからである。
かかるプライマー対応部位について、塩基数の下限は5以上であることが好ましい。より好ましくは10以上であることが良い。塩基数が5未満では、区別できる核酸の数が減少し、特に多くの製品(下塗り塗料組成物)が混在するときは識別に時間がかかってしまう。一方、塩基数の上限は100以下であることが好ましい。塩基数が100を超えるといずれかの位置の塩基を欠いた副生成物の比率が高くなり、精製に手間がかかるか、場合によっては精製困難となってしまう。
なお、情報化核酸としてRNAを用いるときは、逆転写酵素を用いて配列の相補的なDNAを得、このDNAを用いてPCR法を行うことができる。
例えば、図2に示すように、両端にプライマー対応部位を備えた情報化DNAであれば、中央にm個の塩基数の配列を置き(B1〜Bm)、この部分の配列情報を認証情報に対応させる。その両端には、それぞれl(エル)個、n個のプライマーに相補的な配列(X1〜Xl,P1〜Pn)を連結する。この部分が存在することにより初めてPCR法の採用が可能となる。情報化DNAはこの1本鎖のもの又はそれと相補的な配列のDNAと複合体を形成した2本鎖のものを情報素子として用いることができる。このプライマー対応部位の配列は、できるだけ相補的配列の結合が安定になり且つPCR法による増幅が円滑に進行するように工夫できる。
なお、上記樹脂固形分とは、下塗り塗料組成物が固化した下塗り塗膜を示す。
なお、本発明の下塗り塗料組成物には、上記下塗り塗料原料及び上記情報化核酸の他にも各種添加剤を含有することができる。例えば、有機顔料、無機顔料、分散剤、硬化促進剤などの各種添加剤を適宜含有できる。また、いわゆる中塗り塗料もここでは下塗り塗料に含める。
更に、上記微粒子の平均粒径は、0.01〜40μmであることが、情報化核酸の検出精度及び下塗り塗料原料への分散性などを良好とする観点から好適である。より好ましくは0.02〜10μm、特に好ましくは0.02〜5μmであることが良い。平均流径が0.01μmより小さいと検出精度が低下し易く、40μmより大きいと平滑性が低下し易い。
更にまた、上記微粒子の含有量は、上記樹脂固形分に対して0.5〜50%の割合であることが、情報化核酸の検出精度及び下塗り塗料原料への分散性などを良好とする観点から好適である。より好ましくは0.5〜20%であり、特に好ましくは0.5〜10%であることが良い。含有量が0.5%より少ないと、サンプリングされた下塗り塗膜中の微粒子の量が少な過ぎるために、検出の精度が低下する可能性がある。50%を超えると、付着性が低下し易い。
また、上記微粒子は、滅菌蒸留水中に分散させて懸濁液となし、この懸濁液に上記情報化核酸をそのまま、あるいは当該情報化核酸を滅菌蒸留水に溶解させた情報化核酸水溶液を加え、乾燥することによって製造することができる。このとき、上記情報化核酸については、一部を水溶液とすることなくそのままの状態で加え、残部を水溶液の状態で加えるようにしても何ら差し支えない。
なお、これら溶媒は1種のみに限定されず、2種以上の溶媒を併用することも可能である。また、これら溶媒は、情報化核酸と同時、あるいは情報化核酸を加えた後に添加しても、特に差し支えはない。
即ち、溶媒の添加量が少な過ぎると、溶媒添加による上記効果が十分に得られず、逆に多過ぎても、水との相溶性低下によって水が揮発せずに残り易くなり、上記効果が十分に得られないようになる傾向がある。
かかる下塗り塗膜は、上述した下塗り塗料組成物を任意の基材に配設し固化して成る。例えば、図3に示すように、下塗り塗膜1と第1ベースコート2とクリヤー塗膜3から成る積層塗膜が挙げられ、この下塗り塗膜1に、プライマー対応部位を備えた情報化DNAを含有できる。
また、下塗り塗膜の膜厚としては、特に限定されるものではないが、20〜30μm程度とすることが情報化核酸の検出精度及び塗膜の平滑性などの観点から好ましい。
なお、上記任意の基材としては、代表的には鉄、アルミ、銅などの各種金属材、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの各種有機材、石英、セラミックス(炭化カルシウム他)などの各種無機材が挙げられる。また、これらに下塗り塗料組成物を被覆する方法としては、公知慣用の方法が採用できる。例えば、はけ塗り法、吹付け法、静電塗装法、電着塗装法、粉体塗装法、更にはスパッタ法などが挙げられる。更に、上記下塗り塗膜は、情報化核酸が検出できる範囲で被覆されていれば良く、基材の全体又は一部に被覆できる。
このとき、塩基配列を決定するに当たり、下塗り塗料組成物又は下塗り塗膜から抽出される該情報化核酸のデータと、該情報化核酸のデータを少なくとも含む情報化核酸データベースとを対比することが望ましい。予め把握された情報化核酸のデータベースと比較することにより製品認証にかかる時間を大幅に減らすことが可能となる。
かかるデータベースに蓄えられるデータとしては、例えば電気泳動時間やゲル濾過した際の移動距離(これは、情報化核酸自体をコントロールレーンに流せば足りる)などを挙げることができる。
また、(2a)において94℃で30秒が特に好ましい。92℃で30秒より短いと増幅率が低下し、95℃で60秒より長いと、酵素が失活する。
更に、(2b)において40℃で30秒が特に好ましい。20℃で30秒より短いとプライマーとDNAの結合が困難になり、50℃で60秒より長いと、酵素が失活する。
また、(2c)において72℃で30秒が特に好ましい。70℃で30秒より短いと伸長が不十分になり、80℃で120秒より長いと酵素が失活する。
更に、(3)において72℃で7分が特に好ましい。70℃で1分より短いと伸長が不十分になり、80℃で10分より長いと時間の無駄になる。
更にまた、加熱サイクル(2a)〜(2c)の繰り返しは、30回が特に好ましく、20回より少ないと増幅率が低下し、50回より多いと時間の無駄になる。
同図に示すように、S1において、下塗り塗料組成物又は下塗り塗膜から情報化DNAを抽出する。S2において、凍結乾燥により濃縮する。S3において、2種類のプライマーとポリメラーゼを加える。S4において、PCRを繰り返すことによりDNAを増幅する。S5において、残った余分なプライマーを一本鎖DNA開烈酵素により分解する。S6において、二本鎖である情報化DNAをゲル濾過で精製する。S7において、シーケンサーにより配列決定を行う。
更にまた、例えば5´位を硫黄に置換した場合には、水で抽出したものを更に金(Au)をコーティングした担体のカラムを通すことで容易に分離をすることができる。
粒径が異なる情報化DNAを固定させた微粒子を、日本油脂社製のグレーの中塗り(商品名:ハイエピコNo.500)に攪拌しながら規定量を添加し、1時間攪拌した。
(1)平均粒径0.02μm:昭和電工(株)製 ZS−032(酸化亜鉛)
(2)平均粒径40μm:(株)マイクロン製 AW40−74(酸化アルミニウム)
(3)平均粒径60μm:(株)マイクロン製 AW50−74(酸化アルミニウム)
リン酸亜鉛処理した厚み0.8mm、70mm×150mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(商品名「パワートップU600M」、日本ペイント社製カチオン型電着塗料)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装した後、160℃で30分間焼き付けた。その後、日本油脂社製のグレーの中塗り(商品名:ハイエピコNo.500)を30μm塗装し、140℃で30分間焼き付けた。
(1)上記情報化核酸組成物の試験片をカッターを用いて、細かく裁断した。
(2)試験細片に滅菌蒸留水5mLを加え、マグネチックスターラーにより攪拌して、DNAを水層に抽出した。
(3)遠心機を用いて、試験細片と水層を分離し、水層を遠心エバポレータを用いて濃縮した。
(4)溶出回収したDNA溶液(5μL)、PCR buffer(5μL)、Taq polymerase(0.25μL)、滅菌蒸留水(24.75μL)、5μMのプライマー1(5μL)、5μMのプライマー2(5μL)、及び2mM dNTP(5μL)を混合した。
・プライマー1 …5´−TGCACGCACCGTGTACTC−3´
・プライマー2 …5´−CCGACCAACGTGTCCACT−3´
(5)94℃で5分間加熱後、[94℃で30秒→40℃で30秒→72℃で30秒]を30回繰り返した。
(6)72℃で7分処理後、4℃で保存した。
(7)1本鎖DNA開裂酵素(S1ヌクレアーゼ)を用いて、余分なプライマーを分解し、目的の2本鎖情報化DNAをゲル濾過で精製した。
(8)精製した情報化DNAに一種類のプライマー(プライマー1:5´−TGCACGCACCGTGTACTC−3´)及び蛍光標識した2,3−ジデオキシヌクレオシド三リン酸を混合した。
(9)上記工程(4)〜(6)と同様の操作を行った。
(10)ゲル濾過精製後、自動シーケンサーに供し、配列決定を行った。
表1及び表2に示すように、これらの工程を行い情報化DNAの検出を試みたところ、情報化DNAの識別が容易であったものを○、更にPCR処理が必要であったものを△とした。
50℃、相対湿度95%の雰囲気中に500時間放置後に取り出し、密着力を確認した。密着力は、塗膜をカッターナイフ(JIS K 5400の7.2(2)(e)に規定)で塗膜素地に達する直交する縦横11本ずつの平行線を2mmの間隔で引き、正方形の碁盤目を形成した。碁盤目状の塗膜の上にセロハンテープ(JIS Z 1522に規定)を密着させ上方に一気に引き剥がし、100個の碁盤目中の塗膜の残った碁盤目の数を測定した。この結果を表1及び表2に示す。
表面の状態を目視にて判断し、表1及び表2に示すように、表面が良好であるものを○、表面があれているものを△、表面がかなりあれているものを×とした。
これに対して、実施例13〜実施例18、参考例19、参考例20、実施例21及び実施例22の下塗り塗膜は、情報化DNAの含有量、微粒子の粒径及び使用量のいずれかが本発明の好適範囲を逸脱しているため、情報化DNAの識別性、耐湿性及び平滑性のいずれかが低下してしまうことがわかる。
2 ベースコート層
3 クリヤー層
Claims (5)
- 下塗り塗料原料に、任意且つ既知の塩基配列を有する部位を備える情報化核酸を含有して成る塗料組成物であって、
上記情報化核酸が、平均粒径が0.01〜40μmである微粒子に担持されていることを特徴とする下塗り塗料組成物。 - 上記情報化核酸が、樹脂固形分100gに対して0.5〜500μg含まれることを特徴とする請求項1に記載の下塗り塗料組成物。
- 上記微粒子の含有量が、樹脂固形分に対して0.5〜50%の割合であることを特徴とする請求項1又は2に記載の下塗り塗料組成物。
- 上記下塗り塗料原料が、親油性液体、親水性液体及び粉体から成る群より選ばれた少なくとも1種の状態であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の下塗り塗料組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の下塗り塗料組成物を固化して成ることを特徴とする下塗り塗膜。
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