JP4673798B2 - ダイナミックダンパ - Google Patents

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本発明は、振動体に弾性体を介して支持されたマスの共振により振動を低減するダイナミックダンパに関する。
ステアリングシャフトを介してステアリングホイールに伝達される振動を低減すべく、ステアリングホイールのボスプレート部に弾性部材を介してマスダンパ部材を支持してダイナミックダンパを構成し、マスダンパ部材を共振周波数で共振させることで振動を低減するものが、下記特許文献1により公知である。
実開平4−58479号公報
ところで、上記従来のものは、ダイナミックダンパが単一のマスダンパ部材しか備えていないため、低減可能な振動が、マスダンパ部材の共振周波数近傍の周波数の振動や、マスダンパ部材が共振する方向の振動に限られてしまい、ステアリングホイールに入力される周波数や方向が様々に異なる振動を充分に低減できないという問題があった。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、周波数や方向が様々に異なる振動体の振動を効果的に低減可能なダイナミックダンパを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、振動体に取り付けられる取付部材と、一側に凹部を有してコ字状に形成され、前記取付部材に第1弾性体を介して支持されたメインマスと、このメインマスの前記凹部内に第2弾性体を介して支持されたサブマスとを備え、前記第1弾性体が前記メインマスを前記取付部材に支持する方向と、前記第2弾性体が前記サブマスを前記メインマスに支持する方向とを相互に異ならせることで、前記メインマスおよび前記サブマスによる振動の減衰方向を相互に異ならせたことを特徴とするダイナミックダンパが提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記メインマスおよび前記サブマスの質量、あるいは前記第1弾性体および前記第2弾性体のばね定数の少なくとも一方を相互に異ならせることで、前記メインマスおよび前記サブマスによる振動の減衰周波数を相互に異ならせたことを特徴とするダイナミックダンパが提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記サブマスを、前記凹部の相互に対向する二つの側面にそれぞれ前記第2弾性体を介して支持し、それら第2弾性体の、前記サブマスを前記メインマスに支持する方向の軸線を、相互に所定距離だけずらしたことを特徴とするダイナミックダンパが提案される。
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記サブマスを複数個設け、各々のサブマスは少なくともその質量を相互に異ならせたことを特徴とするダイナミックダンパが提案される。
また請求項5に記載された発明によれば、請求項の構成に加えて、前記各サブマスは、それらを前記第2弾性体を介して前記メインマスに支持する方向を相互に異ならせたことを特徴とするダイナミックダンパが提案される。
、実施の形態のボスプレート部16は本発明の振動体に対応する。
請求項1の構成によれば、取付部材にコ字状に形成されたメインマスを、第1弾性体を介して支持するとともに、メインマスの凹部内に第2弾性体を介してサブマスを支持し、第1弾性体がメインマスを取付部材に支持する方向と、第2弾性体がサブマスをメインマスに支持する方向とを相互に異ならせることで、メインマスおよびサブマスによる振動の減衰方向を相互に異ならせたので、方向が異なる様々の振動を有効に低減することができ、しかも取付部材を振動体に取り付けるだけでメインマスおよびサブマスの組み付けを同時に完了することができるので、ダイナミックダンパの組付工数が削減される。またコ字状のメインマスの凹部内にサブマスを収納したので、ダイナミックダンパ全体をコンパクト化することができる。
また請求項2の構成によれば、メインマスおよびサブマスの質量、あるいは第1弾性体および第2弾性体のばね定数の少なくとも一方を相互に異ならせることで、メインマスおよびサブマスによる振動の減衰周波数を相互に異ならせたので、周波数が異なる様々の振動を有効に低減することができる。
また請求項3の構成によれば、第2弾性体の、サブマスをメインマスに支持する方向の軸線を同軸上に配置せず、所定距離だけ故意にずらすことで、サブマスの共振周波数の調整範囲を更に広げることができる。
また請求項4の構成によれば、複数のサブマスの共振周波数を容易に異ならせることができるので、より広い周波数領域の振動を低減することができる。
また請求項5の構成によれば、より広い周波数領域の振動だけでなく、更に多方向の振動をも低減することができる。
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1〜図4は本発明の実施の形態を示すもので、図1は自動車の車室前部の斜視図、図2は図1の2方向拡大矢視図、図3は図2の3−3線拡大断面図、図4はダイナミックダンパの斜視図である。
図1〜図3に示すように、運転席シートの前方に配置されたステアリングホイール11の内部に運転席用のエアバッグモジュール12およびダイナミックダンパ13が収納される。ステアリングホイール11は、ステアリングシャフト14の後端にナット15で固定されたボスプレート部16と、ボスプレート部16に固定されたフロントカバー17と、フロントカバー17の後面にボルト18…で固定されたリヤカバー19と、フロントカバー17から放射状に延びる複数のスポーク部20…と、スポーク部20…の外周に連なるステアリングホイール本体部21とを備える。
エアバッグモジュール12は、折り畳んだエアバッグ22と、エアバッグ22を膨張させる高圧ガスを発生するインフレータ23とを備えており、インフレータ23がリテーナ24を介して前記ボルト18…でフロントカバー17およびリヤカバー19に共締めされる。ダイナミックダンパ13は板状のボスプレート部16の上部後面に固定される。
図4に示すように、ダイナミックダンパ13は、平板状の取付部材31と、この取付部材31にラバー製の2個の第1弾性体32,32を介して接続されたコ字状の金属ブロックよりなるメインマス33と、メインマス33の凹部33aにラバー製の2個の第2弾性体34,34を介して接続された直方体状の金属ブロックよりなるサブマス35とで構成されており、取付部材31がボルト36,36およびナット37,37でステアリングホイール11のボスプレート部16に固定される。
角柱状に形成された第1弾性体32,32の軸線L1,L1の方向、即ち第1弾性体32,32がメインマス33を取付部材31に支持する方向はステアリングシャフト14の長手方向と平行であり、同じく角柱状に形成された第2弾性体34,34の軸線L2,L2の方向、即ち第2弾性体34,34がサブマス35をメインマス33に支持する方向はステアリングホイール11の回転面の方向と平行である。
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
エンジンからの振動や路面からの振動がステアリングシャフト14を介してステアリングホイール11に入力されると、ステアリングホイール11の振動が運転者の手に伝わって不快感を与える問題があるが、ステアリングシャフト14に固定された取付部材31に設けたダイナミックダンパ13が前記振動を低減することで、運転者の不快感を和らげることができる。
即ち、取付部材31に第1弾性体32,32を介して接続されたメインマス33は、第1弾性体32,32のばね定数とメインマス33の質量とにより定まる固有振動数を持ち、その固有振動数の近傍の周波数を持つ振動がボスプレート部16から入力されると、メインマス33が共振することで前記振動を打ち消して低減する。またサブマス35にはボスプレート部16の振動が取付部材31、第1弾性体32,32、メインマス33および第2弾性体34,34を介して伝達される。このとき、サブマス35は第2弾性体34,34のばね定数とサブマス35の質量とにより定まる固有振動数を持ち、その固有振動数の近傍の周波数を持つ振動が入力されると、サブマス35が共振することで前記振動を打ち消して低減する。
メインマス33は主として第1弾性体32,32の軸線L1,L1方向の振動、つまりステアリングシャフト14の長手方向の振動を効果的に吸収する。またサブマス35は第2弾性体34,34の軸線L2,L2方向の振動、つまりステアリングホイール11の回転面内の一方向(前後方向)の振動を効果的に吸収する。このように、第1弾性体32,32の軸線L1,L1の方向、即ち第1弾性体32,32がメインマス33を取付部材31に支持する方向と、第2弾性体34,34の軸線L2,L2の方向、即ち第2弾性体34,34がサブマス35をメインマス33に支持する方向とを相互に異ならせることで、メインマス33およびサブマス35による振動の減衰方向を相互に異ならせることができる。
メインマス33の質量はサブマス35の質量に比べてかなり大きいため、第1弾性体32,32および第2弾性体34,34のばね定数がほぼ同じ場合には、メインマス33の固有振動数はサブマス35の固有振動数よりも低くなり、従ってメインマス33比較的に低い周波数の振動を減衰し、サブマス35は比較的に高い周波数の振動を減衰することになる。
メインマス33およびサブマス35の固有振動数、つまり低減可能な振動数は、メインマス33およびサブマス35の質量と、第1、第2弾性体32,32;34,34のばね定数とを変化させることで任意に調整することができる。
以上のように、メインマス33およびサブマス35を組み合わせたことにより、単一のマスを用いる場合に比べて広い周波数領域の振動を低減できるだけでく、異なる方向の振動も同時に低減することができる。しかもメインマス33およびサブマス35が共通の取付部材31にマウントされているため、取付部材31をステアリングホイール11のボスプレート部16に固定するだけで組み付けを完了することができ、メインマス33およびサブマス35を別個にマウントする場合に比べて組付工数を削減することができる。またコ字状のメインマス33の凹部33a内にサブマス35を収納したので、ダイナミックダンパ13全体をコンパクト化することができる。
次に、図5に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
第2の実施の形態は、サブマス35の支持の仕方が第1の実施の形態と異なっている。第1の実施の形態ではメインマス33の凹部33aの一つの側面に2個の第2弾性体34,34を介してサブマス35を支持しているが、第2の実施の形態ではメインマス33の凹部33aの相互に対向する二つの側面にそれぞれ第2弾性体34,34を介してサブマス35を支持している。第2弾性体34,34の軸線L3,L3の方向、即ち第2弾性体34,34がサブマス35をメインマス33に支持する方向は第1の実施の形態の第2弾性体34,34の軸線L2,L2の方向、即ち第1の実施の形態の第2弾性体34,34がサブマス35をメインマス33に支持する方向に対して90°ずれており、サブマス35はステアリングホイール11の回転面内の左右方向の振動を効果的に吸収する。
第2の実施の形態によれば第1の実施の形態の作用効果に加えて、2個の第2弾性体34,34の、サブマス35をメインマス33に支持する方向の軸線L3,L3を同軸上に配置せず、所定距離だけ故意にずらすことで、サブマス35の共振周波数の調整範囲を更に広げることができる。
次に、図6に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
第1の実施の形態は単一のサブマス35を備えているが、第3の実施の形態は前記サブマス35を質量の異なる2個のサブマス35A,35Bに分割し、それぞれのサブマス35A,35Bを各1個の第2弾性体34,34でメインマス33の凹部33aに支持したものである。
第3の実施の形態によれば第1の実施の形態の作用効果に加えて、2個のサブマス35A,35Bの共振周波数を容易に異ならせることができるので、より広い周波数領域の振動を低減することができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施の形態では本発明のダイナミックダンパをステアリングホイール11の防振に適用しているが、ステアリングホイール11の防振以外の任意の用途に適用することができる。
またメインマス33およびサブマス35,35A,35Bの共振周波数を変化させるには、メインマス33およびサブマス35,35A,35Bの形状や材質を変えて質量を異ならせる方法や、第1、第2弾性体32,32;34,34の形状や材質や方向やマスに対する支持位置を変えてばね定数を異ならせる方法が考えられる。第1、第2弾性体32,32;34,34を変更する方法は、メインマス33やサブマス35,35A,35Bを変更する方法に比べて手軽であり、小幅な変更で振動の伝達状態を容易に変更することができる。
また第3の実施の形態において、2個のサブマス35A,35Bの軸線の方向、即ち2個のサブマス35A,35Bを2個の第2弾性体34,34を介してメインマス33に支持する方向を相互に異ならせても良く、このようにすれば更に多方向の振動を低減することができる。
また第3の実施の形態において、サブマスの個数3個以上に増加させれば、更に広い周波数領域の振動や、更に多方向の振動を低減することができる。
自動車の車室前部の斜視図 図1の2方向拡大矢視図 図2の3−3線拡大断面図 ダイナミックダンパの斜視図 第2の実施の形態に係るダイナミックダンパの斜視図 第3の実施の形態に係るダイナミックダンパの斜視図
16 ボスプレート部(振動体)
31 取付部材
32 第1弾性体
33 メインマス
34 第2弾性体
35 サブマス
35A サブマス
35B サブマス
L3 第2弾性体の軸線

Claims (5)

  1. 振動体(16)に取り付けられる取付部材(31)と、一側に凹部(33a)を有してコ字状に形成され、前記取付部材(31)に第1弾性体(32)を介して支持されたメインマス(33)と、このメインマス(33)の前記凹部(33a)内に第2弾性体(34)を介して支持されたサブマス(35,35A,35B)とを備え、
    前記第1弾性体(32)が前記メインマス(33)を前記取付部材(31)に支持する方向と、前記第2弾性体(34)が前記サブマス(35,35A,35B)を前記メインマス(33)に支持する方向とを相互に異ならせることで、前記メインマス(33)および前記サブマス(35,35A,35B)による振動の減衰方向を相互に異ならせたことを特徴とするダイナミックダンパ。
  2. 前記メインマス(33)および前記サブマス(35,35A,35B)の質量、あるいは前記第1弾性体(32)および前記第2弾性体(34)のばね定数の少なくとも一方を相互に異ならせることで、前記メインマス(33)および前記サブマス(35,35A,35B)による振動の減衰周波数を相互に異ならせたことを特徴とする、請求項1に記載のダイナミックダンパ。
  3. 前記サブマス(35)を、前記凹部(33a)の相互に対向する二つの側面にそれぞれ前記第2弾性体(34)を介して支持し、それら第2弾性体(34)の、前記サブマス(35)を前記メインマス(33)に支持する方向の軸線(L3)を、相互に所定距離だけずらしたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のダイナミックダンパ。
  4. 前記サブマス(35A,35B)を複数個設け、各々のサブマス(35A,35B)は少なくともその質量を相互に異ならせたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のダイナミックダンパ。
  5. 前記各サブマス(35A,35B)は、それらを前記第2弾性体(34)を介して前記メインマス(33)に支持する方向を相互に異ならせたことを特徴とする、請求項4に記載のダイナミックダンパ。
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