以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1,図2には、本発明の第一の実施形態としての自動車用制振装置10が示されている。この制振装置10は、振動部材としての自動車のフレーム部材12に対して取り付けられている。なお、以下の説明において、上下方向とは、車両上下方向となる図2中の上下方向を言うものとする。また、左右方向とは、車両左右方向となる図1中の上下(図2中の左右)方向を言うものとする。
より詳細には、制振装置10は、ロッド部材としての金属ロッド14を備えている。金属ロッド14は、略一定の円形断面で直線的に延びる中実の円形棒状とされており、本実施形態では、鉄等の金属を材料として形成された高剛性の部材とされている。また、金属ロッド14は、後述するフレーム部材12よりも充分に短い所定長さで延びていると共に、フレーム部材12に比して充分に軽量とされている。
なお、金属ロッド14は、後述するフレーム部材12の長手方向での長さに対して、10分の1以上の長さとされることが望ましい。本実施形態では、金属ロッド14の長さがフレーム部材12の長さの10分の1とされている。
さらに、金属ロッド14の固有振動数は、フレーム部材12の固有振動数とは異なる振動数とされており、特に、金属ロッド14の共振が、自動車の乗室内環境に悪影響(振動や異音等)を及ぼさないことが望ましい。
また、金属ロッド14の長手方向の複数箇所には、それぞれ連結体16が取り付けられている。連結体16は、支持ゴムとしての連結ゴム弾性体18と、連結ゴム弾性体18をフレーム部材12に取り付けるための取付金具20を備えている。
連結ゴム弾性体18は、略板形状を有しており、装着状態における車両左右方向一方の側(図2中、左側)の端面が円弧状の湾曲面とされていると共に、他方の側(図2中、右側)の端面が上下方向および前後方向に広がる略平坦な面とされている。また、連結ゴム弾性体18の略中央部分には、厚さ方向で貫通する嵌着孔22が形成されている。この嵌着孔22は、金属ロッド14の直径よりも僅かに小さな内径を有する円形の貫通孔とされている。
そして、連結ゴム弾性体18は、嵌着孔22に金属ロッド14が押し込まれて嵌着されることにより、金属ロッド14の長手方向両端部分にそれぞれ取り付けられている。特に本実施形態では、連結ゴム弾性体18の取付け部分において、金属ロッド14の外周面が嵌着孔22の内周面に対して接着されている。
なお、金属ロッド14に対する連結ゴム弾性体18の接着は、金属ロッド14と嵌着孔22の重ね合せ面に接着剤を塗布する等して実現することも可能であるが、本実施形態では、連結ゴム弾性体18の成形時に金属ロッド14を加硫接着せしめることにより実現されている。以上より明らかなように、本実施形態では、連結ゴム弾性体18が金属ロッド14を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されている。
また、連結ゴム弾性体18には、取付金具20が組み付けられている。取付金具20は、薄肉の金属板によって形成されており、連結ゴム弾性体18における湾曲面で構成された側の側面および上下両端面に重ね合わされた状態で、連結ゴム弾性体18に対して組み付けられている。また、取付金具20の上下両端部には、上下方向外側に向かって延び出す一対の固定片24が一体形成されている。この固定片24には、それぞれ厚さ方向で貫通するボルト孔25が形成されている。なお、取付金具20は、連結ゴム弾性体18に対して接着されていても良いし、非接着で組み付けられていても良い。本実施形態では、連結ゴム弾性体18の外周面が取付金具20に対して接着されている。
このように、連結体16は、金属ロッド14の長手方向両端部にそれぞれ一つが取り付けられており、もって、本実施形態に係る自動車用の制振装置10が構成されている。
そして、連結体16の取付金具20が、フレーム部材12に対して取り付けられることにより、制振装置10がフレーム部材12に取り付けられるようになっている。即ち、取付金具20の固定片24に形成されたボルト孔25に対して、取付ボルト26が挿通されると共に、取付ボルト26がフレーム部材12に形成されて内周面に雌ねじを形成された螺着穴27に対して螺着されることにより、取付金具20がフレーム部材12に対して固定される。なお、フレーム部材12は、自動車のメインフレームを構成する部材であって、本実施形態では、図1,2に示されているように、略コの字形の断面で直線的に延びる鋼材によって形成されている。
そして、フレーム部材12と取付金具20の間に連結ゴム弾性体18が予圧縮された状態で介装されることにより、連結ゴム弾性体18の中央部分を貫通する金属ロッド14が、連結ゴム弾性体18を介して弾性的にフレーム部材12に対して取り付けられるようになっている。これにより、制振装置10がフレーム部材12に対して装着されている。なお、このような制振装置10のフレーム部材12への装着状態において、金属ロッド14は、その長手方向がフレーム部材12の長手方向と平行になるように、フレーム部材12に沿って配設されている。
このように本発明に従う構造とされた自動車用の制振装置10が、自動車のフレーム部材12に対して取り付けられた状態で、フレーム部材12に対して一次共振周波数の振動(基本振動)が入力されると、フレーム部材12が共振状態となって、図3に示されているように、二点を節とする曲げ変形が積極的に生ぜしめられる。なお、図3には、本発明に係る制振装置10を装着したフレーム部材12がモデル的に示されており、初期状態のフレーム部材12が実線で示されていると共に、共振による変形状態のフレーム部材12が、一方の変形限界位置において一点鎖線で示されていると共に、他方の変形限界位置において二点鎖線で示されている。また、図3では、分かり易さのために、フレーム部材12や連結ゴム弾性体18の変形が誇張されて示されている。更に、本実施形態では、フレーム部材12において、共振による曲げ変形の節となる部分に、それぞれ連結ゴム弾性体18が取り付けられている。
ここにおいて、フレーム部材12が長手方向で曲げ変形せしめられると、図3に示されているように、フレーム部材12における長手方向で離隔した任意の二点間の距離が変化せしめられる。例えば、フレーム部材12における各連結ゴム弾性体18の取付け部分間の距離:lは、フレーム部材12の変形によって、lよりも短い距離:l’に変化せしめられる。このように、フレーム部材12における各連結ゴム弾性体18の取付け部分間の距離は、フレーム部材12の周期的な変形に伴って周期的に変化せしめられるようになっており、各連結ゴム弾性体18の取付け部分が、初期状態から相互に接近する方向に変位せしめられるようになっている。
なお、本実施形態では、連結ゴム弾性体18が取付金具20によってフレーム部材12に組み付けられていることにより、連結ゴム弾性体18のフレーム部材12に対する取付け位置がフレーム部材12の長手方向で位置決めされている。それ故、各連結ゴム弾性体18のフレーム部材12への取付け部分間の距離が、フレーム部材12の変形に応じて変化せしめられるようになっている。
一方、フレーム部材12の共振時において、フレーム部材12とは異なる固有振動数を有する金属ロッド14は、実質的に変形していない状態に維持される。従って、金属ロッド14における各連結ゴム弾性体18の取付け部分間の距離が、初期状態の長さであるlに維持される。このようなフレーム部材12の共振状態下における金属ロッド14の実質的な非変形状態を実現するために、好ましくは、金属ロッド14の固有振動数が、フレーム部材12の固有振動数よりも小さくされる。より好適には、金属ロッド14の固有振動数がフレーム部材12の固有振動数よりも小さくされると共に、金属ロッド14の固有振動数を自然数倍した金属ロッド14の倍振動が、フレーム部材12の固有振動数と同一とならないようになっている。
なお、本実施形態では、連結ゴム弾性体18が金属ロッド14に対して接着されていることから、金属ロッド14の実質的な非変形状態下では、連結ゴム弾性体18に応力が及ぼされた場合にも、連結ゴム弾性体18の取付け部分間の距離がlに維持されるようになっている。
そして、フレーム部材12が共振時に曲げ変形せしめられると、各連結ゴム弾性体18のフレーム部材12への取付け部分間の離隔距離が周期的に変化せしめられると共に、金属ロッド14への取付け部分間の離隔距離が略一定に維持されることから、連結ゴム弾性体18のフレーム部材12への取付け部分と、金属ロッド14への取付け部分の相対的な距離が、初期状態(振動の非入力状態)におけるそれらの相対距離である図3中のL0 に対して変化せしめられる。これにより、フレーム部材12と金属ロッド14の間に介装された連結ゴム弾性体18は、フレーム部材12の共振振動による変形に伴って弾性変形せしめられるようになっている。
なお、このような連結ゴム弾性体18の弾性変形は、図3に示されたモデル図からも容易に理解することが出来る。即ち、フレーム部材12が図3において一点鎖線で示された如く変形せしめられると、連結ゴム弾性体18のフレーム部材12への取付け部分と、金属ロッド14への取付け部分の相対距離は、L0 よりも短いL1 に変化せしめられる。一方、フレーム部材12が図3において二点鎖線で示された如く変形せしめられると、連結ゴム弾性体18のフレーム部材12への取付け部分と、金属ロッド14への取付け部分の相対距離は、L0 よりも長いL2 に変化せしめられる。従って、連結ゴム弾性体18は、相対距離の変化に応じてL1 からL2 の範囲で伸縮変形せしめられる。
そして、連結ゴム弾性体18が弾性変形せしめられると、連結ゴム弾性体18に入力された力学的エネルギーが、連結ゴム弾性体18の内部摩擦によって熱エネルギーに変換される。これにより、フレーム部材12の振動エネルギーが熱エネルギーとして大気中に発散されて、フレーム部材12に対して減衰力が及ぼされるようになっている。従って、制振装置10をフレーム部材12に対して装着することにより、共振時におけるフレーム部材12の振動が低減されて、車室内における振動や異音等を改善することが出来る。
しかも、連結ゴム弾性体18の内部摩擦を利用して減衰力が得られるようになっていることから、連結ゴム弾性体18を含む制振装置10の表面状態の変化(水や埃の付着等)による制振効果の低下を回避することが出来て、目的とする制振効果を安定して得ることが出来る。
特に本実施形態では、フレーム部材12の長手方向での自由長の1/10という、充分な長さをもって金属ロッド14が形成されている。これにより、フレーム部材12の共振状態において、フレーム部材12の変形に伴う各連結ゴム弾性体18のフレーム部材12側端部間の距離が、充分に大きく変化せしめられる。それ故、連結ゴム弾性体18の弾性変形量を充分に大きく取ることが出来て、内部摩擦によるエネルギー損失を利用した制振効果を有効に得ることが出来る。
また、本実施形態では、連結ゴム弾性体18と取付金具20が接着されていることから、金属ロッド14と取付金具20の相対距離が変化することにより、それら金属ロッド14と取付金具20の間に介装された連結ゴム弾性体18が弾性変形せしめられて、内部摩擦による減衰効果が発揮されるようになっている。なお、連結ゴム弾性体18と取付金具20が非接着とされている場合には、フレーム部材12の変形に伴う連結ゴム弾性体18と取付金具20の滑り摩擦によっても、フレーム部材12に対して減衰力を及ぼすことが出来る。
次に、図4,5には、前記第一の実施形態に係る制振装置10の制振効果をシミュレーションによって算出した結果が示されている。なお、シミュレーションでは、フレーム部材12の長さを4000mmとして、フレーム部材12の一方の端部から1850mmの位置に一方の連結体16(幅30mm)を設けると共に、フレーム部材12の他方の端部から1000mmの位置に他方の連結体16を設けて、それら連結体16によって金属ロッド14の両端部を支持せしめた構造において、フレーム部材12の振動を算出した。また、図4,図5においては、制振装置10の非装着状態におけるフレーム部材12の振動のシミュレーション結果が破線によって示されていると共に、制振装置10の装着状態におけるシミュレーション結果が実線によって示されている。
すなわち、図4には、フレーム部材12の一方の端部における振動を算出した結果が示されている。これによれば、前記実施形態に従う構造とされた自動車用の制振装置10をフレーム部材12に対して装着することにより、10Hz程度の低周波数域から40Hz程度の高周波数域に亘る広い周波数域において、フレーム部材12の共振による振動を効果的に低減せしめ得ることが確認された。特に、振幅が大きい低周波数域の振動に対しても、有効な制振効果が発揮されることから、乗り心地の向上を有利に実現出来るものと考えられる。
一方、図5には、フレーム部材12の長手方向略中央部分における振動を算出した結果が示されている。これによれば、前記実施形態に従う構造とされた自動車用制振装置10をフレーム部材12に装着することによって、フレーム部材12において問題となると考えられる10Hz程度の低周波数域における共振振動と、40〜50Hz程度の高周波数域における共振振動が、何れも効果的に低減せしめられることがシミュレーションによって確認された。
また、図6には、本発明の第二の実施形態としての制振装置28がフレーム部材12に装着された状態がモデル的に示されている。なお、本実施形態に係る制振装置28およびフレーム部材12は、実質的に前記第一の実施形態と同一の構造を有していることから、ここでは具体的な構造の説明を省略する。
すなわち、本実施形態に従う構造とされた制振装置28では、金属ロッド14が連結ゴム弾性体18に対して非接着で嵌め付けられている。より詳細には、金属ロッド14の外径が連結ゴム弾性体18に形成された嵌着孔22の内径よりも小さくされており、嵌着孔22に対して金属ロッド14を押し込むことにより、嵌着孔22の内周面が金属ロッド14の外周面に対して密着せしめられて、金属ロッド14が連結ゴム弾性体18に対して組み付けられるようになっている。なお、連結ゴム弾性体18の外周面は取付金具20に接着されていても良い。
これにより、金属ロッド14の連結ゴム弾性体18への嵌め付け状態において、金属ロッド14が連結ゴム弾性体18に対して長手方向における密接状態での相対変位を許容されている。
このような構造とされた制振装置28がフレーム部材12に対して取り付けられて、フレーム部材12が共振により曲げ変形せしめられることにより、連結ゴム弾性体18のフレーム部材12への取付け部分間の距離が変化せしめられると、連結ゴム弾性体18の金属ロッド14への取付け部分が、金属ロッド14の長手方向で金属ロッド14に対して相対変位せしめられる。
すなわち、本実施形態では、金属ロッド14が連結ゴム弾性体18に対して非接着で嵌め付けられていることから、複数の連結ゴム弾性体18のフレーム部材12側端部における離隔距離(フレーム部材12の長手方向での離隔距離)が、フレーム部材12の変形によって変化せしめられると、図6に一点鎖線および二点鎖線で示されているように、金属ロッド14への連結部分において連結ゴム弾性体18が、連結ゴム弾性体18に及ぼされる応力によって、金属ロッド14に対して長手方向内側に距離:dだけ滑り変位せしめられる。なお、各連結ゴム弾性体18が金属ロッド14に対して長手方向内側に距離:dだけ滑り変位することにより、金属ロッド14の両端部に設けられた一対の連結ゴム弾性体18,18間の距離がlからl’’に変化せしめられる。
そして、金属ロッド14と連結ゴム弾性体18の連結部分における滑り摩擦によって、フレーム部材12の振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて外部に放出されることにより、振動エネルギーが低減されて目的とする制振効果が発揮されるようになっている。
なお、金属ロッド14と連結ゴム弾性体18の相対的な滑り変位に基づいて目的とする減衰を有効に得るためには、金属ロッド14と連結ゴム弾性体18の間の摩擦係数が安定して所定の値に維持されることが必要となる。そこで、例えば、金属ロッド14と連結ゴム弾性体18の連結部分を外部から隔てるカバー等を設けて、埃や水等がそれらの部材間に入り込むのを防ぐことにより、摩擦係数の維持を有利に実現して、目的とする制振効果をより安定して得ることが出来るようにしても良い。
また、図7には、本発明の第三の実施形態としての自動車用制振装置30が示されている。この自動車用制振装置30は、自動車のラダーフレーム(梯子形フレーム)32に対して装着されている。なお、図7に示された制振装置30およびラダーフレーム32は、何れも概略である。
より詳細には、制振装置30は、ロッド部材としての金属ロッド34と、金属ロッド34をラダーフレーム32に取り付ける連結体16を含んで構成されている。なお、連結体16については、前記第一の実施形態と実質的に同一の構造を有していることから、ここでは説明を省略する。
金属ロッド34は、鉄等の金属を材料として形成されたロッドであって、略一定の円形断面を有している。また、金属ロッド34は、それぞれ直線的に延びて相互に平行とされた第一の端部36と第二の端部38が、それらに対して直交する方向に延びる中央部40によって直列的に連接された構造を有しており、図7に示されているように、平面視で逆向きの略コの字形状を呈している。換言すれば、金属ロッド34は、長さ方向の第二の箇所において、略直角に屈曲せしめられた形状を有している。なお、このような金属ロッド34は、例えば、棒材を所定の位置で加工して屈曲せしめたり、第一の端部36と第二の端部38と中央部40をそれぞれ別体とされた棒材として準備して、それらを溶接等の手段によって直列的に連接せしめること等によって、実現することが出来る。
かかる金属ロッド34は、前記第一の実施形態に示された連結体16によって、自動車のラダーフレーム32に取り付けられている。ラダーフレーム32は、従来から一般的に知られているものであって、車両左右方向で離隔して略車両前後方向に延びる一対の主材42が、略車両左右方向に延びる複数の横材44によって相互に連結された構造を有している。
そして、金属ロッド34の第一の端部36と第二の端部38が、ラダーフレーム32の一対の主材42の対向面に対して、連結体16によってそれぞれ弾性的に連結されていると共に、金属ロッド34の中央部40が、ラダーフレーム32の横材44に対して、連結体16によって弾性的に連結されている。要するに、金属ロッド34は、ラダーフレーム32の一対の主材42の対向間に配設されており、連接された各直線部分がそれぞれ主材42又は横材44に対して弾性的に取り付けられている。なお、本実施形態では、図7に示されているように、中央部40がその両端部分を連結体16によって弾性支持されていると共に、第一の端部36と第二の端部38がその両端部分と略中央部分をそれぞれ連結体16によって弾性支持されている。
このような制振装置30のラダーフレーム32への装着状態において、ラダーフレーム32に振動が入力されてラダーフレーム32が共振状態で積極的に変形せしめられると、前記第一の実施形態と同様に、連結ゴム弾性体18の弾性変形による内部摩擦や、連結ゴム弾性体18と金属ロッド34の滑り摩擦に基づいて、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて発散されることにより、有効な制振効果が発揮されるようになっている。
しかも、本実施形態では、金属ロッド34が屈曲せしめられており、金属ロッド34の第一の端部36と第二の端部38と中央部40が、それぞれ連結体16でラダーフレーム32に対して弾性支持されている。これにより、ラダーフレーム32に対して車両前後方向での曲げ変形が及ぼされた場合のみならず、左右方向での曲げ変形や捻り変形等がラダーフレーム32に及ぼされた場合にも、何れも有効な制振効果を得ることが出来る。
また、図8には、本発明の第四の実施形態としての自動車用制振装置46が示されている。なお、図8には、本実施形態に係る自動車用の制振装置46と、それが取り付けられる振動部材としての制振対象部材48が、概略的に示されている。また、本実施形態において、前記第一の実施形態と実質的に同一の部材乃至部位については、同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
すなわち、本実施形態に係る制振装置46は、相互に異なる方向に向かって延びるように配設されて、中央部分で相互に交差せしめられた一対の金属ロッド14に対して、各金属ロッド14の両端部分に連結体16が取り付けられた構造とされている。要するに、本実施形態に係る制振装置46は、金属ロッド14が相互に交差するように、前記第一の実施形態に係る制振装置10を二つ配設した構造とされている。
また、本実施形態における制振対象部材48は、略板形状とされており、図8に示されているように、一方の面上に制振装置46が取り付けられている。なお、制振装置46の制振対象部材48への装着は、前記第一の実施形態と同様のボルト固定によって実現されることから、ここでは説明を省略する。
このようにして制振対象部材48の一つの面上に制振装置46が装着された状態で、制振対象部材48に対して、制振対象部材48の固有振動数に近い振動数の振動荷重が入力されて、制振対象部材48が共振状態で変形せしめられると、連結ゴム弾性体18の弾性変形による内部摩擦や、各金属ロッド14と連結ゴム弾性体18の滑り変位による滑り摩擦に基づいて、有効な制振効果が発揮される。
しかも、制振対象部材48の一つの面上において、二本の金属ロッド14が相互に異なる方向に延びるように配置されており、各金属ロッド14がそれぞれ連結ゴム弾性体18によって制振対象部材48に連結されている。これにより、少なくとも各金属ロッド14が延びる異なる2方向での制振対象部材48の共振振動に対して、何れも有効な制振効果を得ることが出来る。
このような本実施形態に従う構造とされた制振装置46からも明らかなように、ロッド部材は必ずしも一つでなくても良く、別体とされた複数のロッド部材を採用することも出来る。
また、図9には、本発明の第五の実施形態としての自動車用制振装置50が示されている。この本実施形態に係る制振装置50は、金属ロッド52と連結体54を備えている。なお、図9においては、制振装置50のフレーム部材12に対する装着状態の断面図において、要部が示されている。
より詳細には、金属ロッド52は、円形断面の棒形状を有しており、鉄等の金属材料で形成された高剛性の部材とされている。また、金属ロッド52の長手方向両端部分には、板状の固定部56が一体形成されている。更に、固定部56には、中央部分を厚さ方向で貫通するボルト孔58が形成されている。なお、図中では必ずしも明らかではないが、固定部56は金属ロッド52の両端部に設けられており、それら一対の固定部56が同一平面上(図9における紙面に対して直交する方向で左右に広がる平面上)で広がるように設けられている。
また、連結体54は、ロッド取付金具60とフレーム取付金具62を連結ゴム弾性体64で相互に連結した構造を有している。ロッド取付金具60は、厚肉の矩形板形状を有しており、中央部分には上端面に開口して内周面に雌ねじが刻設された円形のボルト穴66が形成されている。また、フレーム取付金具62は、薄肉の矩形板形状を有しており、外周部分を厚さ方向に貫通する複数の取付孔68が形成されている。
そして、これらロッド取付金具60とフレーム取付金具62は、同一中心軸上で厚さ方向に所定距離を隔てて配置されると共に、それらロッド取付金具60とフレーム取付金具62の間に連結ゴム弾性体64が介装されることにより弾性的に連結されている。連結ゴム弾性体64は、図9に示されているように、ブロック形状を有するゴム弾性体であって、一方の端面にロッド取付金具60が重ね合わされて加硫接着されていると共に、他方の端面にフレーム取付金具62が重ね合わされて加硫接着されている。以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、連結ゴム弾性体64が、ロッド取付金具60とフレーム取付金具62を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されている。
このような構造とされた連結体54は、金属ロッド52とフレーム部材12の間に配設される。即ち、連結体54のロッド取付金具60が、金属ロッド52に一体形成された固定部56に対して重ね合わされて、ボルト孔58を挿通するボルト70がボルト穴66に螺着されることにより相互に固定されると共に、連結体54のフレーム取付金具62がフレーム部材12に対して重ね合わされて、取付孔68に挿通されたボルト72が螺着穴27に螺着されることにより相互に固定される。これにより、金属ロッド52とフレーム部材12が連結ゴム弾性体64を介して弾性的に連結されている。
なお、このような金属ロッド52とフレーム部材12の連結方法は、あくまでも例示であって、限定されるものではない。例えば、ロッド取付金具60やフレーム部材12にそれぞれ貫通孔を形成して、ボルト70,72に対してナットを螺着せしめることにより、取付金具60,62が金属ロッド52やフレーム部材12に取り付けられるようにしても良い。
このような本実施形態に従う構造の自動車用制振装置50においても、前記第一の実施形態に示された制振装置10と同様に、連結ゴム弾性体64の弾性変形による内部摩擦に基づいて、フレーム部材12の振動エネルギーが熱エネルギーとして発散されることにより、フレーム部材12に減衰力が及ぼされるようになっている。なお、本実施形態では、フレーム部材12の共振による変形に基づいて、ロッド取付金具60とフレーム取付金具62が相対的に変位せしめられることにより、連結ゴム弾性体64が弾性変形せしめられるようになっている。
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記第一の実施形態においては、金属ロッド14の両端部がそれぞれ連結体16によって振動部材12に連結されているが、例えば、金属ロッド14の両端部がそれぞれ連結体16によって振動部材12に連結されていると共に、金属ロッド14の長手方向中間部分が連結体16によって振動部材12に連結されていても良い。このように金属ロッド14の長手方向中間部分を連結体16で振動部材12に対して連結することによって、中間部分に取り付けられた連結体16の連結ゴム弾性体18における内部摩擦や滑り摩擦によっても、有効な減衰効果を得ることが出来る。
なお、金属ロッド14は、その両端部が連結体16で支持されていなくても良く、例えば、金属ロッド14における長さ方向中間部分の複数箇所が、連結体16でフレーム部材12に弾性連結されることにより、金属ロッド14がフレーム部材12に支持されるようになっていても良い。
また、ロッド部材は、必ずしも円形断面を有する棒状(円柱形状)ではなくても良く、多角形断面を有する棒状(角柱形状)や異形断面を有する棒状等であっても良い。更に、ロッド部材は、必ずしも鉄等の金属を材料として形成されていなくても良く、充分な剛性を有していれば、合成樹脂等を材料として形成されていても良い。
更にまた、ロッド部材は、必ずしも直線的に延びていなくても良く、全長に亘って湾曲していたり、前記第三の実施形態に示された金属ロッド34のように、長さ方向中間部分で折り曲げられていても良い。
また、本発明に係る制振装置は、必ずしも自動車のメインフレームにのみ採用されるものではなく、自動車のサブフレームやその他各種の自動車を構成する部材に装着されて、振動低減効果を発揮し得るものである。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。