本発明は、(a)ポリシロキサン、(b)キノンジアジド化合物、(c)溶剤、(d)一般式(1)で表される化合物を含有する感光性シロキサン組成物である。本発明を以下に説明する。
(R1、R2、R3は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基のいずれかを表し、R1とR2は互いに結合して環構造を形成してもよい。)
本発明で用いる(a)ポリシロキサンの構造は特に制限されないが、好ましい態様としては、一般式(2)で表されるオルガノシランの1種以上を混合、反応させることによって得られるポリシロキサンが挙げられる。
R4は水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表し、複数のR4はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R5は水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表し、複数のR5はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。nは0から3の整数を表す。
一般式(2)のR4で挙げられたアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも置換基を有していてもよく、また置換基を有していない無置換体であってもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基が挙げられる。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基が挙げられる。
一般式(2)のR5で挙げられたアルキル基、アシル基はいずれも置換基を有していてもよく、また置換基を有していない無置換体であってもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基が挙げられる。アシル基の具体例としては、アセチル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基が挙げられる。
一般式(2)のnは0から3の整数を表す。n=0の場合は4官能性シラン、n=1の場合は3官能性シラン、n=2の場合は2官能性シラン、n=3の場合は1官能性シランである。
一般式(2)で表されるオルガノシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシランなどの4官能性シラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどの2官能性シラン、トリメチルメトキシシラン、トリn−ブチルエトキシシランなどの1官能性シランが挙げられる。
これらのオルガノシランのうち、硬化膜の耐クラック性と硬度の点から3官能性シランが好ましく用いられる。また、これらのオルガノシランは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の(a)ポリシロキサンは、シリカ粒子が共重合されたポリシロキサンを用いても良い。シリカ粒子の共重合方法としては、前述のオルガノシランから合成されたポリシロキサンとシリカ粒子を反応させる方法、もしくは前述のオルガノシランとシリカ粒子を反応させてポリシロキサンを得る方法が挙げられる。ポリシロキサン中にシリカ粒子が組み込まれ、ポリシロキサンの少なくとも一部に化学的に結合(シリカ粒子と共有結合)していることにより、ポリシロキサンの流動性を低下させ、熱硬化時のパターンだれが抑えられ、熱硬化後のパターン解像度が向上する。
ポリシロキサンとシリカ粒子を反応させる方法においては、シリカ粒子は組成物中独立した成分として含まれているが、プリベークや硬化時加熱によって、ポリシロキサン中に組み込まれていく。
用いられるシリカ粒子の数平均粒子径は、好ましくは2nm〜200nmであり、さらに好ましくは5nm〜70nmである。2nmより小さいとパターン解像度の向上が十分ではなく、200nmより大きいと硬化膜が光散乱し透明性が低下する。ここで、シリカ粒子の数平均粒子径は、比表面積法換算値を用いる場合には、シリカ粒子を乾燥後、焼成し、得られた粒子の比表面積を測定した後に、粒子を球と仮定して比表面積から粒子径を求め、数平均として平均粒子径を求める。用いる機器は特に限定されないが、アサップ2020(Micromeritics社製)などを用いることができる。
シリカ粒子はアルコキシシランの1種または2種以上を水、有機溶媒および塩基(好ましくは、アンモニア)の存在下で加水分解、重縮合させる方法などにより得られる。有機溶媒に分散したシリカ粒子は水性シリカ粒子分散媒である水を有機溶媒で置換することで得られる。分散媒の置換は水性シリカ粒子に有機溶媒を添加し、蒸留などの手段で水を留去させる方法等が挙げられる。溶媒の種類によっては低級アルコールを添加し、シリカ粒子の表面が一部エステル化される場合もある。ポリシロキサンやキノンジアジド化合物との相溶性の点から、有機溶媒に分散したシリカ粒子が好ましい。
シリカ粒子の具体例としては、イソプロパノールを分散剤とした粒子径12nmのIPA−ST、メチルイソブチルケトンを分散剤とした粒子径12nmのMIBK−ST、イソプロパノールを分散剤とした粒子径45nmのIPA−ST−L、イソプロパノールを分散剤とした粒子径100nmのIPA−ST−ZL、プロピレングリコールモノメチルエーテルを分散剤とした粒子径15nmのPGM−ST(以上商品名、日産化学工業(株)製)、γ−ブチロラクトンを分散剤とした粒子径12nmのオスカル101、γ−ブチロラクトンを分散剤とした粒子径60nmのオスカル105、ジアセトンアルコールを分散剤とした粒子径120nmのオスカル106、分散溶液が水である粒子径5〜80nmのカタロイド−S(以上商品名、触媒化成工業(株)製)、プロピレングリコールモノメチルエーテルを分散剤とした粒子径16nmのクォートロンPL−2L−PGME、γ−ブチロラクトンを分散剤とした粒子径17nmのクォートロンPL−2L−BL、ジアセトンアルコールを分散剤とした粒子径17nmのクォートロンPL−2L−DAA、分散溶液が水である粒子径18〜20nmのクォートロンPL−2L、GP−2L(以上商品名、扶桑化学工業(株)製)、粒子径が100nmであるシリカ(SiO2)SG−SO100(商品名、共立マテリアル(株)製)、粒子径が5〜50nmであるレオロシール(商品名、(株)トクヤマ製)などが挙げられる。また、これらのシリカ粒子は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、用いるシリカ粒子の表面が反応性基を有していると、ポリシロキサンとシリカ粒子の結合を容易にし、膜の強度が高まる点から好ましい。反応性基として、シラノール、アルコール、フェノールなどの水酸基、ビニル基、アクリル基、エチニル基、エポキシ基、アミノ基等が挙げられる。シリカ粒子と反応性基を有するアルコキシシランと反応させることで、表面に反応性基を有するシリカ粒子が得ることができる。もちろん本発明の効果を損なわない限り、メチル基、フェニル基などの反応性基を持たない置換基を有するシリカ粒子を用いてもよい。
シリカ粒子を用いる場合の混合比率は特に制限されないが、Si原子モル数で、ポリマー全体のSi原子モル数に対して1〜50%が好ましい。シリカ粒子が50%より多いと、ポリシロキサンとキノンジアジド化合物との相溶性が悪くなり、硬化膜の透明性が低下する。
なお、ポリマー全体のSi原子モル数に対するシリカ粒子のSi原子モル比はIRにおいてSi−C結合由来のピークとSi−O結合由来のピークの積分比から求めることができる。ピークの重なりが多く求められない場合は、1H−NMR、13C−NMR、IR、TOF−MSなどにより粒子以外のモノマーの構造を決定し、さらに元素分析法において発生する気体と残存する灰(すべてSiO2と仮定する)の割合から求めることができる。
また、ポリシロキサン中において、膜の耐クラック性と硬度を両立させる点から、ポリシロキサン中にあるフェニル基の含有率はSi原子に対して20〜70モル%が好ましく、さらに好ましくは35〜55モル%である。フェニル基の含有率が70モル%より多いと硬度が低下し、フェニル基含有率が20モル%より少ないと耐クラック性が低下する。フェニル基の含有率は、例えば、ポリシロキサンの29Si−核磁気共鳴スペクトルを測定し、そのフェニル基が結合したSiのピーク面積とフェニル基が結合していないSiのピーク面積の比から求めることができる。
また、本発明で用いるポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、好ましくはGPCで測定されるポリスチレン換算で1000〜100000、さらに好ましくは2000〜50000である。Mwが1000より小さいと塗膜性が悪くなり、100000より大きいとパターン形成時の現像液への溶解性が悪くなる。アルカリ水溶液に可溶のポリシロキサンは好ましくは2000〜50000、ポリシロキサンの重量平均分子量は好ましくは5000〜100000が好ましい。Mwが5000よりも小さいと熱によるパターンだれが発生する温度が低くなってしまう場合がある。
また、シリカ粒子を用いた場合、シリカ粒子がポリシロキサンと均質化していることが好ましい。シリカ粒子が均質化していると硬化膜の硬度が向上し、現像時にプリベーク膜からシリカ粒子の析出を防ぐ。ここでいう「均質化している」とはシリカ粒子のシリカ成分とマトリックスのポリシロキサンが反応し、ポリシロキサン中にシリカ粒子が密度一定で組み込まれていることを指す。その状態は、透過型電子顕微鏡(以下、TEMと記述)でシリカ粒子とポリシロキサンの境界部分を観察することによって確認することができる。均質化している場合、TEM観察にてシリカ粒子とポリシロキサンとの境界線が観察されない。また、均質化した系は、同量のシリカ粒子をポリシロキサンに添加した系より高解像となる点からも均質化することが好ましい。
本発明におけるポリシロキサンは、上述のオルガノシランを加水分解および部分縮合させることにより得られる。加水分解および部分縮合には一般的な方法を用いることができる。例えば、混合物に溶媒、水、必要に応じて触媒を添加し、加熱攪拌する。攪拌中、必要に応じて蒸留によって加水分解副生物(メタノールなどのアルコール)や縮合副生物(水)を留去してもよい。
シリカ粒子を結合させる場合のポリシロキサンの製造方法としては、オルガノシランに溶媒、水必要に応じて触媒を添加してオルガノシランの加水分解し、シリカ粒子と加水分解されたオルガノシランを部分縮合させることにより得られる。シリカ粒子はオルガノシランとはじめから共存させておいてもよいし、オルガノシランを加水分解、重合させてポリシロキサンとしてからシリカ粒子を加えてさらに加熱してもよいが、好ましくは相溶性の点からオルガノシランの加水分解直後に滴下する方法が挙げられる。
上記の反応溶媒としては特に制限は無いが、通常は後述する(c)溶剤と同様のものが用いられる。溶媒の添加量はオルガノシランもしくはオルガノシランとシリカ粒子の合計量100重量%に対して10〜1000重量%が好ましい。また加水分解反応に用いる水の添加量は、加水分解性基1モルに対して0.5〜2モルが好ましい。
必要に応じて添加される触媒に特に制限はないが、酸触媒、塩基触媒が好ましく用いられる。酸触媒の具体例としては塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂が挙げられる。塩基触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を有するアルコキシシラン、イオン交換樹脂が挙げられる。触媒の添加量はオルガノシランまたは/かつ直鎖状ポリシロキサンの混合物100重量%に対して0.01〜10重量%が好ましい。
また、塗膜性、貯蔵安定性の点から、加水分解、部分縮合後のポリシロキサン溶液には副生成物のアルコールや水、触媒が含まれないことが好ましい。必要に応じてこれらの除去を行ってもよい。除去方法は特に制限されない。好ましくはアルコールや水の除去方法としては、ポリシロキサン溶液を適当な疎水性溶剤で希釈した後、水で数回洗浄して得られた有機層をエバポレーターで濃縮する方法を用いることができる。また、触媒の除去方法としては、上記の水洗浄に加えてあるいは単独でイオン交換樹脂で処理する方法を用いることができる。
本発明の感光性シロキサン組成物は、(b)キノンジアジド化合物を含有する。キノンジアジド化合物を含有する感光性シロキサン組成物は、露光部が現像液で除去されるポジ型を形成する。用いるキノンジアジド化合物の添加量は特に制限されないが、好ましくは(a)ポリシロキサンに対して3〜10重量%である。さらに好ましくは4〜10重量%である。キノンジアジド化合物の添加量が3重量%より少ない場合、露光部と未露光部との溶解コントラストが低すぎて、現実的な感光性を有さない。また、さらに良好な溶解コントラストを得るためには4重量%以上が好ましい。一方、キノンジアジド化合物の添加量が10重量%より多い場合、ポリシロキサンとキノンジアジド化合物との相溶性が悪くなることによる塗布膜の白化が起こったり、熱硬化時に起こるキノンジアジド化合物の分解による着色が顕著になるために、硬化膜の無色透明性が低下する。
用いるキノンジアジド化合物は特に制限されないが、好ましくはフェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステル結合した化合物であり、当該化合物のフェノール性水酸基のオルト位、およびパラ位がそれぞれ独立して水素、もしくは一般式(3)で表される置換基のいずれかである化合物が用いられる。
R6〜R8はそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、フェニル基、置換フェニル基のいずれかを表す。また、R6とR7、R6とR8、R7とR8で環を形成してもよい。
一般式(3)で表される置換基において、R6〜R8はそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、フェニル基、置換フェニル基のいずれかを表す。アルキル基は置換基を有していてもよく、また置換基を有していない無置換体であってもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基、2−カルボキシエチル基が挙げられる。また、フェニル基に置換する置換基としては、水酸基が挙げられる。また、R6とR7、R6とR8、R7とR8で環を形成してもよく、具体例としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、フルオレン環が挙げられる。
フェノール性水酸基のオルト位、およびパラ位が上記以外、例えばメチル基の場合、熱硬化によって酸化分解が起こり、キノイド構造に代表される共役系化合物が形成され、硬化膜が着色して無色透明性が低下する。なお、これらのキノンジアジド化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物と、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドとの公知のエステル化反応により合成することができる。
フェノール性水酸基を有する化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる(商品名、本州化学工業(株)製)。
ナフトキノンジアジドスルホン酸としては、4−ナフトキノンジアジドスルホン酸あるいは5−ナフトキノンジアジドスルホン酸を用いることができる。4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物はi線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適している。また、5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物は広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適している。露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を選択することが好ましい。4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を混合して用いることもできる。
ナフトキノンジアジド化合物の分子量は、好ましくは300〜1500、さらに好ましくは350〜1200である。ナフトキノンジアジド化合物の分子量が1500より多いと、4〜10重量%の添加量ではパターン形成ができなくなる可能性がある。一方、ナフトキノンジアジド化合物の分子量が300より小さいと、無色透明性が低下する可能性がある。
本発明の感光性シロキサン組成物は(c)溶剤を含有する。溶剤は特に制限されないが、好ましくはアルコール性水酸基を有する化合物および/またはカルボニル基を有する環状化合物が用いられる。これらの溶剤を用いると、ポリシロキサンとキノンジアジド化合物とが均一に溶解し、組成物を塗布製膜しても膜は白化することなく、高透明性が達成できる。
アルコール性水酸基を有する化合物は特に制限されないが、好ましくは大気圧下の沸点が110〜250℃である化合物である。沸点が250℃より高いと膜中の残存溶剤量が多くなり熱硬化時の膜収縮が大きくなり、良好な平坦性が得られなくなる。一方、沸点が110℃より低いと、塗膜時の乾燥が速すぎて膜表面が荒れるなど塗膜性が悪くなる。
アルコール性水酸基を有する化合物の具体例としては、アセトール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールが挙げられる。これらの中でも、さらにカルボニル基を有する化合物が好ましく、特にジアセトンアルコールが好ましく用いられる。これらのアルコール性水酸基を有する化合物は、単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
カルボニル基を有する環状化合物は特に制限されないが、好ましくは大気圧下の沸点が150〜250℃である化合物である。沸点が250℃より高いと膜中の残存溶剤量が多くなり熱硬化時の膜収縮が大きくなり、良好な平坦性が得られなくなる。一方、沸点が150℃より低いと、塗膜時の乾燥が速すぎて膜表面が荒れるなど塗膜性が悪くなる。
カルボニル基を有する環状化合物の具体例としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、炭酸プロピレン、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンが挙げられる。これらの中でも、特にγ−ブチロラクトンが好ましく用いられる。これらのカルボニル基を有する環状化合物は、単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上述のアルコール性水酸基を有する化合物とカルボニル基を有する環状化合物は、単独でも、あるいは各々混合して用いても良い。混合して用いる場合、その重量比率は特に制限されないが、好ましくはアルコール性水酸基を有する化合物/カルボニル基を有する環状化合物=(99〜50)/(1〜50)、さらに好ましくは(97〜60)/(3〜40)である。アルコール性水酸基を有する化合物が99重量%より多い(カルボニル基を有する環状化合物が1重量%より少ない)と、ポリシロキサンとキノンジアジド化合物との相溶性が悪く、硬化膜が白化して透明性が低下する。また、アルコール性水酸基を有する化合物が50重量%より少ない(カルボニル基を有する環状化合物が50重量%より多い)と、ポリシロキサン中の未反応シラノール基の縮合反応が起こり易くなり、貯蔵安定性が悪くなる。
また、本発明の感光性シロキサン組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の溶剤を含有してもよい。その他の溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシ−1−ブチルアセテートなどのエステル類、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類が挙げられる。
溶剤の添加量は、ポリシロキサンに対して、好ましくは100〜1000重量%の範囲である。
本発明の感光性シロキサン組成物は(d)一般式(1)で表される化合物を含有する。一般式(1)で表される化合物は溶解促進剤として機能し、感光性シロキサン組成物の高感度化に寄与する。さらに一般式(1)で表される化合物を含有する感光性シロキサン組成物は、200℃〜280℃の熱処理後に、高透明性と耐薬品性を有する硬化膜を得ることができる。
R1、R2、R3は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基のいずれかを表す。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。また、アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基が挙げられる。またR1とR2が結合して環構造を形成してもよく、脂環式構造であるシクロペンタン環、シクロヘキサン環などが挙げられる。
一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸i−プロピル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジi−プロピル、以下に示す化合物が挙げられる。
この中でも、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルおよび次に示される化合物が特に好ましい。
一般式(1)で表される化合物の含有量は、シロキサンポリマー100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましい。さらに好ましくは0.1〜10重量部である。0.1重量部よりも少ないと高感度化を発現しない場合がある。また、20重量部よりも多いと露光部だけではなく未露光部も現像液に対する溶解速度が大きくなるため、露光部と未露光部との溶解速度差が小さくなり、未露光部の残膜率が大きく低下してしまう。なお、本発明における残膜率とは組成物を基板上に塗布し、プリベークした後に現像を行い、プリベーク後の膜厚(I)、現像後の未露光部膜厚(II)とすると、(II)×100/(I)で算出される。
溶解促進剤として従来使用されるフェノール基を有する低分子化合物は200℃〜280℃の加熱によりフェノール基がキノイド構造に変化すると推定される。キノイド構造は350〜450nmの光を吸収するため、可視光の透過率低下の原因となる。またヒドロキシイミド化合物が有するヒドロキシイミド基は、200℃〜280℃の加熱でキノイド構造に変化する事がないため、硬化膜にしたときの透明性は良好であるが、溶剤に接触に接触すると硬化膜に残存しているヒドロキシイミド化合物がしみ出し、硬化膜にひずみ、クラック等が発生する。しかしながら一般式(1)で表される化合物は、2個のカルボニル基に対してα位となる水素を有する構造であるため、フェノール性水酸基を有する化合物と同程度の酸性度を示し、他方大気圧下の沸点が110℃〜180℃と低いため、200℃〜280℃加熱により揮発、飛散し、硬化膜には残存しない。このような機能を有しているため、フェノール基を有する低分子化合物と同様に溶解促進剤としての効果が期待でき、さらにフェノール基を有する低分子化合物やヒドロキシイミド化合物では得られなかった硬化膜の透明性、耐溶剤性を得ることができる。
さらに、本発明の感光性シロキサン組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、熱酸発生剤を用いても良い。
好ましく用いられる熱酸発生剤の具体例としては、SI−60、SI−80、SI−100、SI−110、SI−145、SI−150、SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−145L、SI−150L、SI−160L、SI−180L(いずれも、三新化学工業(株)製)、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ベンゾイルオキシフェニルメチルスルホニウム、これらのメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩が挙げられる。より好ましくは4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ベンゾイルオキシフェニルメチルスルホニウム、これらのメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩である。なお、これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱酸発生剤の好ましい添加量はシロキサンポリマー100重量部に対して0.01〜10重量部であり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。0.01重量部より少ないとシロキサンポリマーの架橋促進剤としての機能が十分に発揮されず低硬度の膜となり、10重量部より多いと、感度の低下やクラックの発生、透明性の低下を引き起こす。
さらに、本発明の感光性シロキサン組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、増感剤を含有してもよい。このときの増感剤は熱処理により気化する、および/または膜に残存した場合においても、光照射によって退色する増感剤が好ましい。
上記の熱処理により気化する、および/または光照射によって退色する増感剤の具体例としては、3,3’−カルボニルビス(ジエチルアミノクマリン)などのクマリン、9,10−アントラキノンなどのアントラキノン、ベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、アセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、ベンズアルデヒドなどの芳香族ケトン、ビフェニル、1,4−ジメチルナフタレン、9−フルオレノン、フルオレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、アントラセン、9−フェニルアントラセン、9−メトキシアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス(4−メトキシフェニル)アントラセン、9,10−ビス(トリフェニルシリル)アントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン(DPA、川崎化成(株)製)、9,10−ジブトキシアントラセン(DBA、川崎化成(株)製)、9,10−ジペンタオキシアントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ビス(トリメチルシリルエチニル)アントラセンなどの縮合芳香族などが挙げられる。
これらの増感剤の中で、熱処理により気化する増感剤は、好ましくは熱処理により昇華、蒸発、熱分解による熱分解物が昇華または蒸発する増感剤である。また、増感剤の気化温度としては、好ましくは130℃〜400℃、さらに好ましくは150℃〜250℃である。増感剤の気化温度が130℃より低いと、増感剤がプリベーク中に気化して露光プロセス中に存在しなくなり高感度化が達成されない。また、プリベーク中の気化を極力抑えるためには、増感剤の気化温度は150℃以上が好ましい。一方、増感剤の気化温度が400℃より高いと、増感剤が熱硬化時に気化せず硬化膜中に残存して、無色透明性が低下する。また、熱硬化時に完全に気化させるためには、増感剤の気化温度は250℃以下が好ましい。
一方、光照射によって退色する増感剤は、透明性の点から可視光領域における吸収が光照射によって退色する増感剤が好ましい。また、さらに好ましい光照射によって退色する化合物は、光照射によって二量化する化合物である。光照射によって二量化することによって、分子量が増大して不溶化するので、耐薬品性向上、耐熱性向上、透明硬化膜からの抽出物の低減という効果が得られる。
また、増感剤は高感度を達成できるという点、光照射によって二量化して退色するという点からアントラセン系化合物が好ましく、さらに、9,10位が水素であるアントラセン系化合物は熱に不安定であるので、9,10−二置換アントラセン系化合物であることが好ましい。さらに、増感剤の溶解性の向上と光二量化反応の反応性の点から一般式(4)で表される9,10−ジアルコキシアントラセン系化合物であることが好ましい。
一般式(4)のR9〜R16は、それぞれ独立して水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アシル基、およびこれら列挙した有機基がその他の有機基で置換された有機基を表す。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基が挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基が挙げられる。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アクリロキシプロピル基、メタクリロキシプロピル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基が挙げられる。アシル基の具体例としては、アセチル基が挙げられる。化合物の気化性、光二量化の反応性の点から、R9〜R16は水素、または炭素数は1〜6までの有機基であることが好ましい。さらに好ましくは、R9、R12、R13、R16は水素であることが好ましい。
一般式(4)のR17、R18は炭素数1〜20のアルコキシ基がその他の有機基で置換された有機基を表す。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基が挙げられるが、化合物の溶解性と光二量化による退色反応の点から、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましい。
増感剤を用いる場合、ポリシロキサンに対して0.001〜5重量%、さらに好ましくは0.005〜1重量%の範囲で添加するのが好ましい。この範囲を外れると、透明性が低下したり、感度が低下したりするので注意を要する。
さらに、本発明の感光性シロキサン組成物は熱架橋性化合物を含有してもよい。熱架橋性化合物は熱硬化時にポリシロキサンを架橋する化合物であり、架橋によりポリシロキサン骨格中に取り込まれる化合物である。熱架橋性化合物を含有することによって硬化膜の架橋度が高くなる。これによって硬化膜の耐溶剤性が向上する。
熱架橋性化合物は熱硬化時にポリシロキサンを架橋し、ポリシロキサン骨格中に取り込まれる化合物であれば特に制限されないが、好ましくは一般式(5)で表される基、エポキシ構造、オキセタン構造の群から選択される構造を2個以上有する化合物が挙げられる。上記構造の組み合わせは特に限定されないが、選択される構造は同じものであることが好ましい。
R19は水素、炭素数1〜10のアルキル基のいずれかを表す。なお、化合物中の複数のR19はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
一般式(5)で表される基を2個以上有する化合物において、R19は水素、炭素数1〜10のアルキル基のいずれかを表す。なお、化合物中の複数のR19はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基が挙げられる。
一般式(5)で表される基を2個以上有する化合物の具体例としては、以下のようなメラミン誘導体や尿素誘導体(商品名、三和ケミカル(株)製)、およびフェノール性化合物(商品名、本州化学工業(株)製)が挙げられる。
エポキシ構造を2個以上有する化合物の具体例としては、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト80MF、エポライト4000、エポライト3002(以上商品名、共栄社化学工業(株)製)、デナコールEX−212L、デナコールEX−214L、デナコールEX−216L、デナコールEX−850L、デナコールEX−321L(以上、商品名、ナガセケムテックス(株)製)、GAN、GOT、EPPN502H、NC3000、NC6000(以上商品名、日本化薬(株)製)、エピコート828、エピコート1002、エピコート1750、エピコート1007、YX8100−BH30、E1256、E4250、E4275(以上、商品名、ジャパンエポキシ(株)製)、エピクロンEXA−9583、HP4032、エピクロンN695、HP7200(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、テピックS、テピックG、テピックP(以上商品名、日産化学工業(株)製)、エポトートYH−434L(商品名、東都化成(株)製)などが挙げられる。
オキセタン構造を2個以上有する化合物の具体例としては、OXT−121、OXT−221、OX−SQ−H、OXT−191、PNOX−1009、RSOX(以上、商品名、東亜合成(株)製)、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP(以上、商品名、宇部興産(株)製)などが挙げられる。
なお、上記の熱架橋性化合物は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱架橋性化合物の添加量は特に制限されないが、好ましくはポリシロキサン100重量%に対して0.1〜10重量%の範囲である。熱架橋性化合物の添加量が0.1重量%より少ない場合、ポリシロキサンの架橋が不十分で効果が少ない。一方、熱架橋性化合物の添加量が10重量%より多い場合、硬化膜の無色透明性が低下したり、組成物の貯蔵安定性が低下する。
本発明の感光性シロキサン組成物は必要に応じて、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤、消泡剤などの添加剤を含有することもできる。
本発明の感光性シロキサン組成物を用いた硬化膜の形成方法について説明する。本発明の感光性シロキサン組成物をスピンナー、ディッピング、スリットなどの公知の方法によって下地基板上に塗布し、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置でプリベークする。プリベークは、50〜150℃の範囲で30秒〜30分間行い、プリベーク後の膜厚は、0.1〜15μmとするのが好ましい。
プリベーク後、ステッパー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、パラレルライトマスクアライナー(PLA)などの紫外可視露光機を用い、10〜4000J/m2程度(波長365nm露光量換算)を所望のマスクを介してパターニング露光する。また、本発明の感光性シロキサン組成物は、PLAによる露光での感度が100〜4000J/m2であることが好ましい。感度が4000J/m2より低いと、パターン形成時の放射線露光時間が長くなるために生産性が低下したり、放射線露光量が多くなるために下地基板からの反射量が多くなりパターン形状が悪化する。
前記のPLAによるパターニング露光での感度は、例えば以下の方法により求められる。組成物をシリコンウェハにスピンコーターを用いて任意の回転数でスピンコートし、ホットプレートを用いて115℃で2分間プリベークし、膜厚4μmの膜を作製する。作製した膜をPLA(キヤノン(株)製PLA−501F)を用いて、超高圧水銀灯を感度測定用のグレースケールマスクを介して露光した後、自動現像装置(滝沢産業(株)製AD−2000)を用いて2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で任意の時間パドル現像し、次いで水で30秒間リンスする。形成されたパターンにおいて、10μmのラインアンドスペースパターンを1対1の幅で解像する露光量を感度として求める。
パターニング露光後、現像により露光部が溶解し、ポジ型のパターンを得ることができる。現像方法としては、シャワー、ディッピング、パドルなどの方法で現像液に5秒〜10分間浸漬することが好ましい。現像液としては、公知のアルカリ現像液を用いることができる。具体的例としてはアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩などの無機アルカリ、2−ジエチルアミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、コリン等の4級アンモニウム塩を1種あるいは2種以上含む水溶液等が挙げられる。
現像後、水でリンスすることが好ましく、つづいて50〜150℃の範囲で乾燥ベークを行うこともできる。
その後、ブリーチング露光を行うことが好ましい。ブリーチング露光を行うことによって、膜中に残存する未反応のキノンジアジド化合物が光分解して、膜の光透明性がさらに向上する。ブリーチング露光の方法としては、PLAなどの紫外可視露光機を用い、100〜4000J/m2程度(波長365nm露光量換算)を全面に露光する。
その後、この膜をホットプレート、オーブンなどの加熱装置で150〜450℃の範囲で1時間程度熱硬化する。解像度は、好ましくは10μm以下である。
本発明の感光性シロキサン組成物は、波長400nmでの膜厚3μmあたりの透過率が95%以上である硬化膜が形成可能であり、さらに好ましくは98%以上を有する。光透過率が95%より低いと、液晶表示素子のTFT基板用平坦化膜として用いた場合、バックライトが通過する際に色変化が起こり、白色表示が黄色味を帯びる。
前記の波長400nmでの膜厚3μmあたりの透過率は、以下の方法により求められる。組成物をテンパックスガラス板にスピンコーターを用いて任意の回転数でスピンコートし、ホットプレートを用いて115℃で2分間プリベークする。その後、ブリーチング露光として、PLAを用いて、膜全面に超高圧水銀灯を6000J/m2(波長365nm露光量換算)露光し、オーブンを用いて空気中250℃で1時間熱硬化して膜厚3μmの硬化膜を作製する。得られた硬化膜の紫外可視吸収スペクトルを(株)島津製作所製MultiSpec−1500を用いて測定し、波長400nmでの透過率を求める。
この硬化膜は表示素子におけるTFT用平坦化膜、半導体素子における層間絶縁膜、あるいは光導波路におけるコアやクラッド材等に好適に使用される。
本発明の素子は、表示素子、半導体素子、あるいは光導波路材が挙げられる。また、本発明の素子は、上述の本発明の高解像度、高硬度、高透明性、高耐熱性の硬化膜を有するので、特に、TFT用平坦化膜として用いた液晶ディスプレイや有機EL表示素子は画面の明るさと信頼性に優れている。
以下に本発明をその実施例を用いて説明するが、本発明の様態はこれらの実施例に限定されるものではない。また実施例等で用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて、以下に示す。
DAA:ジアセトンアルコール
EDM:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
HPE:2−ヒドロキシプロピオン酸エチル
GBL:γ−ブチロラクトン 。
合成例1 ポリシロキサン溶液(i)の合成
500mLの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを74.91g(0.65mol)、フェニルトリメトキシシランを69.41g(0.35mol)、ジアセトンアルコール(DAA)を150.36g仕込み、室温で攪拌しながら水55.8gにリン酸0.338g(仕込みモノマーに対して0.2重量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを70℃のオイルバスに浸けて1時間攪拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌した(内温は100〜110℃)。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計115g留出した。得られたポリシロキサンのDAA溶液に、ポリマー濃度が33重量%となるようにDAAを加えてポリシロキサン溶液(i)を得た。なお、得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は6000であった。
合成例2 ポリシロキサン溶液(ii)の合成
500mLの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを63.39g(0.55mol)、フェニルトリメトキシシランを69.41g(0.35mol)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを24.64g(0.1mol)、DAAを150.36g仕込み、室温で攪拌しながら水55.8gにリン酸0.338g(仕込みモノマーに対して0.2重量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを70℃のオイルバスに浸けて1時間攪拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌した(内温は100〜110℃)。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計115g留出した。得られたポリシロキサンのDAA溶液に、ポリマー濃度が33重量%となるようにDAAを加えてポリシロキサン溶液(ii)を得た。なお、得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は5000であった。
合成例3 ポリシロキサン溶液(iii)の合成
メチルトリメトキシシラン23.84g(0.175モル)、フェニルトリメトキシシラン99.15g(0.50モル)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン12.32g(0.05モル)、シリカ粒子DAA溶剤分散液クォートロンPL−2L−DAA(扶桑化学工業(株)製:固形分26.4重量%)を62.58g(シラン原子数で27.5モル)、DAA209.47gを500mLの三口フラスコに仕込み、室温で攪拌しながら水40.05gにリン酸0.181gを溶かしたリン酸水溶液を30分かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて30分攪拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから45分加熱攪拌した(内温は100〜110℃)。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計89g留出した。得られたポリシロキサンのDAA溶液が、ポリマー濃度が33重量%となるようにDAAを加えてポリシロキサン溶液(iii)を得た。Si原子に対するフェニル基含有率は50モル%であった。得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は5500であった。
合成例4 キノンジアジド化合物(iv)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.23g(0.05mol)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド37.62g(0.14mol)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.58g(0.154mol)を系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、エステル化率93%の下記構造のキノンジアジド化合物(iv)を得た。
合成例5 キノンジアジド化合物(V)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−HPA(商品名、本州化学工業(株)製)15.32g(0.05mol)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド30.90g(0.115mol)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン13.03g(0.127mol)を系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、エステル化率93%の下記構造のキノンジアジド化合物(V)を得た。
合成例6 アクリル樹脂溶液(vi)の合成
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5g、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)200gを500mLの三口フラスコに仕込んだ。引き続きスチレン25g、メタクリル酸20g、メタクリル酸グリシジル45g、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート10gを仕込み、室温でしばらく攪拌した後、フラスコ内を窒素置換した。その後、フラスコを70℃のオイルバスに浸けて、5時間加熱攪拌した。得られたアクリル樹脂のEDM溶液が、ポリマー濃度が33重量%となるようにEDMを加えてアクリル樹脂溶液(vi)を得た。なお、得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は15000であった。
合成例7 ノボラック樹脂の溶液(vii)の合成例
冷却管と撹拌装置を装着した2Lのセパラブルフラスコに、m−クレゾール172.8g(1.6モル)、2.3−ジメチルフェノール36.6g(0.3モル)、3.4−ジメチルフェノール12.2g(0.1モル)、37重量%ホルムアルデヒド水溶液12.6g(ホルムアルデヒド:1.5モル)、シュウ酸2水和物12.6g(0.1モル)及びメチルイソブチルケトン554gを加え、30分撹拌した後、1時間静置した。2層に分離した上層をデカンテーションによって除去し、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル(HPE)を加え、残存メチルイソブチルケトン、水を減圧濃縮によって除去し、ノボラック樹脂のHPE溶液を得た。得られたノボラック樹脂のHPE溶液に、ポリマー濃度が33重量%となるようにHPEを加えてノボラック樹脂のHPE溶液(vii)を得た。
また実施例等で用いる化合物の構造を以下に示す。
MtrisPC(商品名、本州化学(株)製)はフェノール性水酸基を有する化合物、NHIはN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ヒドロキシイミド(東京化成工業(株)製)である。環状化合物のCPOは1,3−シクロペンタンジオン(東京化成工業(株)製)、MAcAcは3−メチル−2,4−ペンタンジオン(東京化成工業(株)製)、EACEは3−エチル−2,4−ペンタンジオン(シグマアルドリッチジャパン(株)製)を表し、一般式(1)で表される化合物である。
実施例1
黄色灯下にてキノンジアジド化合物(iv)0.4654g(8重量部)、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート(三新化学工業(株)製)0.0291g(0.5重量部)を、組成物全体のDAA/γ−ブチロラクトン(GBL)の重量比が70/30になるように、DAAを7.1743g、GBL3.4828gに溶解させ、ポリシロキサン(i)溶液17.6281g(固形分を100重量部とする)、シリコーン系界面活性剤であるBYK−333(BYK−Chemie社製)のGBL1%溶液を0.1g(50ppm)、アセチルアセトン0.1163g(2重量部)を加え、撹拌した。次いで0.2μmのフィルターでろ過を行い、感光性シロキサン組成物を得た。得られた組成物を組成物1とする。
作製した組成物1をテンパックスガラス板(旭テクノガラス板(株)製)、およびシリコンウェハにスピンコーター(ミカサ(株)製1H−360S)を用いて任意の回転数でスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて115℃で2分間プリベークし、膜厚4μmのプリベーク膜を作製した。作製したプリベーク膜をパラレルライトマスクアライナー(以下PLAという)(キヤノン(株)製PLA−501F)を用いてg線+h線+i線(約350nm〜450nmの波長を持つ光)をグレースケールマスクを用いて最大i線露光量で20から2000J/m2照射した。なおグレースケールマスクとはマスク上から2000J/m2露光することにより、マスク下に1%(20J/m2)から100%(2000J/m2)までを段階的に一括で露光することができるマスクのことである。その後、自動現像装置(AD−2000、滝沢産業(株)製)を用いて2.38wt%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液であるELM−D(三菱ガス化学(株)製)で80秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスした。その後、ブリーチング露光として、PLA−501F(キヤノン(株)製)を用いて、膜全面に超高圧水銀灯を6000J/m2(波長365nm露光量換算)露光した。その後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて90℃で2分間ソフトベークし、次いでオーブン(タバイエスペック(株)製IHPS−222)を用いて空気中220℃で1時間キュアして硬化膜を作製した。得られた硬化膜をパターン付きキュア膜とする。
評価結果を表2に示す。なお、表中の評価は以下の方法で行った。なお、下記の(1)、(2)、(3)、(4)の評価は、基板はシリコンウェハを用い、(5)の評価はテンパックスガラス板を用いて行った。
(1)膜厚測定
大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM−602を用いて、屈折率1.50でプリベーク膜及び、硬化膜の厚さを測定した。
(2)残膜率
残膜率は組成物をシリコンウェハ上に塗布し、表1に記載の各実施例、比較例にあるプリベーク温度でプリベークした後に現像を行い、プリベーク後の膜厚(I)、現像後の未露光部膜厚(II)とすると、
残膜率(%)=(II)×100/(I)で算出される。
(3)感度
露光、現像後、10μmのラインアンドスペースパターンを1対1の幅に形成する露光量(以下、これを最適露光量という)を感度とした。
(4)解像度
最適露光量における現像後に得られた最小パターン寸法を現像後解像度とし、キュア後の最小パターン寸法をキュア後解像度とした。
(5)光透過率の測定
MultiSpec−1500((株)島津製作所製)を用いて、まずテンパックスガラス板のみを測定し、その紫外可視吸収スペクトルをリファレンスとした。次に上記のようにテンパックスガラス上に形成された各プリベーク膜を、2.38wt%テトラメチルアンモニウム水溶液で23℃60秒間シャワー現像し、PLA(PLA−501F、キャノン(株)製)でi線換算で6000J/m2照射した。ホットプレート上で90℃2分間ソフトベークを行い、さらにオーブンにて220℃1時間キュアして、ガラス上に硬化膜を形成した。これをサンプルとし、サンプルを用いてシングルビームで測定し、3μmあたりの波長400nmでの光透過率を求め、リファレンスとの差異を硬化膜の透過率とした。
(6)耐溶剤性
パターン付きキュア膜をモノエタノールアミン/ジメチルスルホキシド=70/30(重量比)中に65℃で10分間浸漬した後、5分間純水リンスを行い、水を窒素ブローで除去した。40μmの抜きのスクエアーパターンの4つのエッジ部(各角の頂点から半径1μm以内)について、浸漬前後のクラックの発生有無をラムダエースSTM−602(大日本スクリーン製造(株)製)を用いて目視にて評価し、4つのエッジ部に確認されたクラックの総本数を耐溶剤性の指標とした。
(7)耐熱性
上記(5)の光透過率の測定で得られた各硬化膜を、アルミセルに約100mg入れ、熱重量測定装置TGA−50(島津製作所(株)製)を用い、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/分で400℃まで加熱し、重量減少を測定、昇温前の重量から5%減少した時点の温度を5%重量減少温度とし耐熱性の指標とした。
実施例2、3、5、6、比較例1〜5
表1に記載の組成に基づき、実施例1と同様にして感光性シロキサン組成物を得た。実施例1と同様に得られた組成物の評価を行った。なお、比較例4のみプリベークの条件を115℃2分間から、90℃2分間に変更した。
実施例4
アセチルアセトンをCPO0.5815g(10重量部)/アセチルアセトン0.5815g(10重量部)に、キノンジアジド化合物(iv)をキノンジアジド化合物(v)0.5815g(10重量部)に、DAA7.1743gを6.5732gに、ポリシロキサン溶液(i)を15.2242g(86.4重量部)(シラン原子数で72.5モル%)に換え、さらに、シリカ粒子DAA溶剤分散液クォートロンPL−2L−DAA(扶桑化学工業(株)製:固形分26.4重量%)を3.005g(シラン原子数で27.5モル%)添加、熱酸発生剤のベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートを用いなかった以外は実施例1と同様に行い、感光性シロキサン組成物を得た。得られた組成物を組成物4とする。実施例1と同様に得られた組成物4の評価を行った。
組成物1〜11の各組成比を表1に、実施例1〜6、比較例1〜5の結果を表2に示した。