JP4668753B2 - 多層パイプ - Google Patents
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ところが、かかる樹脂製のパイプの場合は、かかる樹脂に充分な酸素バリア性がないため、パイプ内の温水に酸素が多量に侵入して、熱交換器やポンプ等の金属製の部品を腐蝕させる恐れがある。
そこで、かかる酸素の侵入を防止するために、ガスバリア性に優れたエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記する)を用いた多層パイプが提案されてきた。
(1)多層パイプを設置する際に、拡張治具を用いてパイプの内径を広げて、パイプ同士やポンプなどに接続する作業を低温下や乾燥雰囲気下で行った場合に、内径を広げる際にEVOH層にクラックを生じて、ガスバリア性が低下することがある。(耐延伸変形性の不足)。
(2)多層パイプには、温水が流れる場合とそうでない場合とで温度変化が生じるのであるが、その温度変化によるポリオレフィン系樹脂の収縮(寸法変化)にEVOHが追従できず、長期間の使用中にEVOH層にクラックが発生し、酸素バリア性が低下することがある。特に多層パイプの極度に曲がった部位において、クラックが発生しやすくなる(熱収縮追随性の不足)。
本発明においては、上記の構造単位(1)を0.1〜30モル%含有すること、さらに酸化防止剤を含有し、その含有量が0.01〜3重量%であること、さらに、酸化防止剤がアミド基含有酸化防止剤であること、ホウ素化合物をホウ素換算で0.001〜1重量部含有すること等が好ましい実施態様である。
なお、上記の(2)式で示される化合物は、イーストマンケミカル社から、上記(3)式で示される化合物はイーストマンケミカル社やアクロス社の製品を市場から入手することができる。
また、共重合体中にエチレンを導入する方法としては通常のエチレン加圧重合を行えばよく、その導入量はエチレンの圧力によって制御することが可能であり、目的とするエチレン含有量により一概にはいえないが、通常は25〜80kg/cm2の範囲から選択される。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.05〜7(重量比)程度の範囲から選択される。
また、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒や圧力により40℃〜沸点程度の範囲から選択することが好ましい。
また、ケン化時の圧力は目的とするエチレン含有量により一概に言えないが、2〜7kg/cm2の範囲から選択され、このときの温度は80〜150℃、好ましくは100〜130℃から選択される。
このようにして1,2−グリコール結合量が調整されたEVOHに関しては、1,2−グリコール結合量は重量平均で算出しても差し支えなく、またそのエチレン含有量についても重量平均で算出させても差し支えないが、正確には後述する1H−NMRの測定結果より、エチレン含有量、1,2−グリコール結合量を算出することができる。
構造単位(1)を有するEVOHと構造単位が異なるEVOHとしては、例えばエチレン構造単位とビニルアルコール構造単位のみからなるEVOHや、EVOHの側鎖に2−ヒドロキシエトキシ基などの官能基を有する変性EVOHを挙げることができる。
また、エチレン含有量が異なるものを用いる場合、その構造単位は同じであっても異なっていても良いが、そのエチレン含有量差は1モル%以上(さらには2モル%以上、特には2〜20モル%)であることが好ましい。かかるエチレン含有量差が大きすぎると透明性が不良となる場合があり、好ましくない。
また、異なる2種以上のEVOH(ブレンド物)の製造方法は特に限定されず、例えばケン化前のEVAの各ペーストを混合後ケン化する方法、ケン化後の各EVOHのアルコールまたは水とアルコールの混合溶媒に溶解させた溶液を混合する方法、各EVOHをペレット状、または粉体で混合した後、溶融混練する方法などが挙げられる。
酢酸の含有量としてはEVOH100重量部に対して0.001〜1重量部(さらには0.005〜0.2重量部、特には0.010〜0.1重量部)とすることが好ましく、かかる含有量が0.001重量部未満ではその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に1重量部を越えるとパイプのガスバリア性が低下したり、成形時の安定性が低下する傾向にあり好ましくない。
かかる乾燥方法としては、種々の乾燥方法を採用することが可能である。例えば、実質的にペレット状のEVOHが、機械的にもしくは熱風により撹拌分散されながら行われる流動乾燥や、実質的にペレット状のEVOHが、撹拌、分散などの動的な作用を与えられずに行われる静置乾燥が挙げられ、流動乾燥を行うための乾燥器としては、円筒・溝型撹拌乾燥器、円管乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器等が挙げられ、また、静置乾燥を行うための乾燥器として、材料静置型としては回分式箱型乾燥器が、材料移送型としてはバンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型乾燥器等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。流動乾燥と静置乾燥を組み合わせて行うことも可能である。
なお、酸化防止剤として、構造、組成、分子量などの異なる酸化防止剤(B)を併せて2種類以上用いる場合は、その総重量が上記の範囲にあればよい。
[内側]ポリオレフィン系樹脂層/接着性樹脂層/EVOH層[外側]の層構成からなる多層パイプは、共押出法または押出コーティング法(予め成形したポリオレフィン系樹脂からなるパイプ上に接着性樹脂およびEVOH(A)あるいはその樹脂組成物を共押出コーティング又は順次押出コーティングする)により生産上好適に製造することができる。
[内側]ポリオレフィン系樹脂層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/ポリオレフィン系樹脂層[外側]の層構成からなる多層パイプは、一般的に共押出法により生産上好適に製造することができる。
a層が20μm未満では得られる多層パイプのガスバリア性が低下し、またその厚み制御が不安定となり、逆に1000μmを越えると得られる多層パイプの耐低温クラック性が劣り、かつ経済的でなく好ましくなく、またb層が100μm未満では得られる多層パイプの剛性が不足し、逆に10000μmを越えると得られる多層パイプの柔軟性が低下するとともに、重量が必要以上に大きくなり、かつ経済的でなく好ましくなく、接着性樹脂層が10μm未満では得られる多層パイプの層間接着性が不足し、またその厚み制御が不安定となり、逆に1000μmを越えると重量が必要以上に大きくなり、かつ経済的でなく好ましくない。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは、特に断わりのない限り、重量基準を意味する。
下記の方法によりEVOH(A1)組成物を得た。
冷却コイルを持つ1m3の重合缶に酢酸ビニルを500kg、メタノール100kg、アセチルパーオキシド500ppm(対酢酸ビニル)、クエン酸20ppm、および3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを14kgを仕込み、系を窒素ガスで一旦置換した後、次いでエチレンで置換して、エチレン圧が35kg/cm2となるまで圧入して、攪拌した後、67℃まで昇温して、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを15g/分で全量4.5kgを添加しながら重合し、重合率が50%になるまで6時間重合した。その後、重合反応を停止してエチレン含有量29モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を得た。
1.0〜1.8ppm:メチレンプロトン(図1の積分値a)
1.87〜2.06ppm:メチルプロトン
3.95〜4.3ppm:構造(I)のメチレン側のプロトン+未反応の3,4−ジア セトキシ−1−ブテンのプロトン(図1の積分値b)
4.6〜5.1ppm:メチンプロトン+構造(I)のメチン側のプロトン(図1の積 分値c)
5.2〜5.9ppm:未反応の3,4−ジアセトキシ−1−ブテンのプロトン(図1 の積分値d)
5.2〜5.9ppmに4つのプロトンが存在するため、1つのプロトンの積分値はd/4、積分値bはジオールとモノマーのプロトンが含まれた積分値であるため、ジオールの1つのプロトンの積分値(A)は、A=(b−d/2)/2、積分値cは酢酸ビニル側とジオール側のプロトンが含まれた積分値であるため、酢酸ビニルの1つプロトンの積分値(B)は、B=1−(b−d/2)/2、積分値aはエチレンとメチレンが含まれた積分値であるため、エチレンの1つのプロトンの積分値(C)は、C=(a−2×A−2×B)/4=(a−2)/4と計算し、構造単位(1)の導入量は、100×{A/(A+B+C)} =100×(2×b−d)/(a+2)より算出した。
下記の方法によりEVOH(A2)組成物を得た。 重合例1において、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの替わりに3,4−ジアセトキシ−1−ブテンと3−アセトキシ−4−オール−1−ブテンと1,4−ジアセトキシ−1−ブテンの70:20:10の混合物を用いた以外は同様に行い、エチレン含有量が29モル%で側鎖に1,2−グリコール結合を有する構造単位の導入量が2.0モル%のEVOH(A2)組成物を得た。このEVOH共重合体のMFRは3.7g/10分で、ホウ酸含0.015重量部(ホウ素換算)リン酸二水素カルシウム0.005重量部(リン酸根換算)含有のEVOH組成物であった。
上記の重合例1で得られたEVOH(A1)組成物および酸化防止剤[N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルエチルアミド)、チバスペシャルティケミカルズ社製『イルガノックス1098』]を重量比100:0.45となるように二軸押出機のホッパーに供給し、230℃にて溶融混練し、ペレット化を行い、目的とするEVOH組成物を得た。
得られた多層パイプ(長さ5m)の一端をアルミニウム板と混合型エポキシ系接着剤で密栓し、もう一端を酸素透過量測定装置(MOCON社製『OXTRAN10/50』)に接続して、温度40℃、外側湿度50%RH、内側湿度100%RHの条件下で酸素透過度を測定した。
得られた多層パイプを40℃の真空乾燥機内で2日間放置して、EVOH層を乾燥させ、パイプの両端部3cmを、20℃の温度下で拡張治具にて内径が30mmになるまで拡張させた後、ガスバリア性の評価法と同様に酸素透過度の測定を行った。
得られた多層パイプを長さ500mmに切断し、L字型に曲げられるように固定ジグの付いた恒温槽中に多層パイプをL字状に設置し、温度を5℃〜95℃の間で、16サイクル/日で繰り返し変化させ、クラックが折り曲げ部に完全に発生するまでのサイクル数を測定して、下記の基準により評価した。
○・・・>5000サイクル
△・・・2000〜5000サイクル
×・・・<2000サイクル
上記の多層パイプの成形を連続して12時間行ったのち、全ての押出機の吐出停止させ、そのまま1時間放置した。その間押出機、ダイスの温度はそのまま維持した。1時間後再スタートさせてからの異物、スジ等が消え製品取りが可能となるまでの時間を測定した。
実施例1において、EVOH(A1)組成物の代わりにEVOH(A2)組成物を用いた以外は同様に行ってEVOH組成物を作製し、さらにそれを用いたパイプを作製し、同様に評価を行った。
実施例1において、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤ペンタエリスリチル-テトラキス(3−(3,5−ジーt―ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、チバスペシャルティケミカルズ社製『イルガノックス1010』を用いた以外は同様に行ってEVOH組成物を作製し、さらにそれを用いたパイプを作製し、同様に評価を行った。
実施例1において、酸化防止剤を添加せずにEVOH(A1)組成物を用いてパイプを作製し、同様に評価を行った。
実施例1において、EVOH(A1)組成物の代わりに側鎖に1,2−グライコールを有する構造単位(1)を含有しないエチレンコンテント29モル%、ケン化度99.8モル%、MFR=4.0のEVOH(A3)を使用した以外は同様にEVOH組成物を作製し、さらにそれを用いたパイプを作製し、同様に評価した。
実施例1において、EVOH(A1)組成物の代わりにEVOH(A3)とエムスジャパン社製『グリロンCF6S』(ナイロン6/12の共重合体)の重量比90/10の溶融混合物を用いてEVOH組成物を作製し、さらにそれを用いたパイプを作製し、同様に評価を行った。
Claims (17)
- 構造単位(1)のR1〜R4がそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数3〜8の環状炭化水素基又は芳香族炭化水素基のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の多層パイプ。
- 構造単位(1)のR1〜R4がいずれも水素原子であることを特徴とする請求項1または2記載の多層パイプ。
- 構造単位(1)のXが炭素数6以下のアルキレンであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の多層パイプ。
- 構造単位(1)のnが0であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の多層パイプ。
- 構造単位(1)が共重合によりエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の分子鎖中に導入されたものであることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の多層パイプ。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の分子鎖中に構造単位(1)を0.1〜30モル%含有することを特徴とする請求項6記載の多層パイプ。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、ビニルエステル系モノマーおよびエチレンの共重合体をケン化して得られたものであることを特徴とする請求項5〜7いずれか記載の多層パイプ。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、ビニルエステル系モノマーおよびエチレンの共重合体をケン化して得られたものであることを特徴とする請求項5〜8いずれか記載の多層パイプ。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)がホウ素化合物をエチレン−ビニルアルコール共重合体100重量部に対してホウ素換算で0.001 〜1重量部含有していることを特徴とする請求項1〜9いずれか記載の多層パイプ。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が酸化防止剤を含有していることを特徴とする請求項1〜10いずれか記載の多層パイプ。
- 酸化防止剤の含有量がエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100重量部に対して0.01〜3重量部であることを特徴とする請求項11記載の多層パイプ。
- 酸化防止剤(B)がアミド基含有酸化防止剤であることを特徴とする請求項11または12記載の多層パイプ。
- [内側]ポリオレフィン系樹脂層/接着性樹脂層/エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)含有層[外側]の層構成を有することを特徴とする請求項1〜13いずれか記載の多層パイプ。
- [内側]ポリオレフィン系樹脂層/接着性樹脂層/エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)含有層/接着性樹脂層/ポリオレフィン系樹脂層[外側]の層構成を有することを特徴とする請求項1〜14いずれか記載の多層パイプ。
- ポリオレフィン系樹脂が架橋ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項14または15記載の多層パイプ。
- 温水循環用パイプに用いられることを特徴とする請求項1〜16いずれか記載の多層パイプ。
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