JP2020075491A - 多層パイプおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エチレン−ビニルアルコール共重合体とともに酸化防止剤を含有し、かつ高湿度下での熱処理を経てもガスバリア性を維持できる、多層パイプおよびその製造方法の提供。【解決手段】多層パイプは、中心軸周りに、シラン架橋されたポリオレフィン(a)を含む層(A)と、接着樹脂(b)を含む層(B)と、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下EVOHと略す)(c)および酸化防止剤(d)を含む層(C)とをこの順で積層し、層(C)において、EVOH(c)が、15〜50モル%のエチレン単位含有量および90モル%以上のケン化度を有し、酸化防止剤(d)が、EVOH(c)100質量部に対して、0.1〜5質量部含有されており、酸化防止剤(d)が下記式[式中、SPは酸化防止剤(d)の溶解度パラメータであり、MWは酸化防止剤(d)の分子量を表す]で表される関係を満たす。【選択図】なし

Description

本発明は、多層パイプおよびその製造方法に関する。
エチレン−ビニルアルコール共重合体は、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性、耐油性などの多岐に亘る優れた特性を有し、様々な成形品への利用が提案されている。
このようなエチレン−ビニルアルコール共重合体の特性を活かした用途として、例えば、住宅や建築物の床下に配置される床暖房用パイプがある。床暖房用パイプは温水循環パイプの1種であり、例えば、ポリオレフィンおよびエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む多層構造体から構成されている。床暖房用パイプの製造においては、例えば、架橋性ポリオレフィンが用いられることがある。高湿度下で熱処理を施すことによりポリオレフィン成分を架橋して、得られるパイプに適切な耐熱性を付与できる。
例えば、特許文献1には、シラン架橋ポリエチレン等の架橋ポリエチレンからなる内層と、エチレン−ビニルアルコール共重合体等からなるガスバリア層と、それらの外周部に位置する低密度ポリエチレン等からなる保護層とを含む多層構造体で構成される多層パイプが記載されている。該多層パイプによれば、架橋ポリエチレンを共押出した場合に起こる各層の比率ムラに起因する酸素透過防止性能や層間ラミネート強度の低下を抑制できる。
特許文献2には、水架橋ポリエチレンからなる層とエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる層を含む温水循環用パイプが記載されている。また、内部を通過する温水が高温である場合でも劣化を防止し、長期間使用できるようにこれらの層が酸化防止剤を含有していてもよいことが記載されている。
特許文献3には、架橋ポリオレフィンからなる層、接着層、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる層を含む多層パイプが記載されている。該多層パイプには、エチレン−ビニルアルコール共重合体の層に酸化防止剤を含有していてもよいことが記載されている。
特許文献4には、シラン架橋ポリエチレン等のポリオレフィンを含む層と、接着層と、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のガスバリア層とを含む、多層樹脂管が記載されている。また、該多層樹脂管が、水素ガスを主成分とした気体や液体を供給するための管として用いることが想定されており、優れた機械的強度を有することが記載されている。
上記のような多層パイプでは、シラン架橋性(すなわち、未架橋の)ポリオレフィンを用いて多層構造体であるパイプが予備的に成形され、その後、この予備的に成形されたパイプが所定の湿度および温度条件下(例えば、100%RHおよび82℃のような高湿度下での熱処理)に曝すことにより、当該ポリオレフィンの架橋を促して層内にシラン架橋ポリオレフィンが形成される。
特開2006−289964号公報 特開昭61−83035号公報 特開平8−224836号公報 特開2007−283582号公報
しかし、上記特許文献1〜4の多層パイプは、高湿度下での熱処理に曝されて製造された場合、ガスバリア性が低下することが指摘されている。特に、上記特許文献にも記載のように、多層パイプを温水循環パイプとして用いる場合、耐久性を向上させる目的で、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層に酸化防止剤を含有させることがある。このような酸化防止剤は、上記高湿度下での熱処理を経てブリードアウトし、得られるパイプに適切なガスバリア性を付与することができない場合がある。
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、エチレン−ビニルアルコール共重合体とともに酸化防止剤を含有し、かつ高湿度下での熱処理を経てもガスバリア性を維持できる、多層パイプおよびその製造方法を提供する。
本発明は、中心軸周りに、シラン架橋されたポリオレフィン(a)を含む層(A)と、接着樹脂(b)を含む層(B)と、エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)および酸化防止剤(d)を含む層(C)とをこの順で積層して含む、多層パイプであって、
該層(C)において、
該エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)が、15モル%〜50モル%のエチレン単位含有量および90モル%以上のケン化度を有し、
該酸化防止剤(d)が、該エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)100質量部に対して、0.1質量部〜5質量部の割合で含有されており、
該酸化防止剤(d)が下記式(I):
Figure 2020075491
[式中、SPは該酸化防止剤(d)の溶解度パラメータであり、MWは該酸化防止剤(d)の分子量を表す]
で表される関係を満たす、多層パイプである。
1つの実施形態では、上記酸化防止剤(d)は以下の式(I’)で表される関係を満たす:
Figure 2020075491
1つの実施形態では、上記層(A)と上記層(B)とは互いに密着して積層され、かつ該層(B)と上記層(C)とは互いに密着して積層されている。
1つの実施形態では、上記層(C)は、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)100質量部に対して、10ppm〜1000ppmの共役ポリエン化合物(e)を含有する。
1つの実施形態では、上記層(A)は最内層または最外層として配置されている。
1つの実施形態では、上記層(A)に含まれる上記シラン架橋されたポリオレフィン(a)は、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を、湿度80%RH以上かつ50℃以上の水蒸気、または50℃以上の熱水に曝してシラン架橋することで得られるものである。
本発明はまた、中心軸周りに、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を含む層(A’)と、接着樹脂(b)を含む層(B)と、エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)および酸化防止剤(d)を含む層(C)とをこの順で積層して含む、多層パイプであって、
該層(A’)が最内層または最外層として配置されており、
該層(C)において、
該エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)が、15モル%〜50モル%のエチレン単位含有量および90モル%以上のケン化度を有し、
該酸化防止剤(d)が、該エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)100質量部に対して、0.1質量部〜5質量部の割合で含有されており、
該酸化防止剤(d)が下記式(I):
Figure 2020075491
[式中、SPは該酸化防止剤(d)の溶解度パラメータであり、MWは該酸化防止剤(d)の分子量を表す]
で表される関係を満たす、多層パイプである。
1つの実施形態では、上記酸化防止剤(d)は以下の式(I’)で表される関係を満たす:
Figure 2020075491
1つの実施形態では、上記層(A’)と上記層(B)とは互いに密着して積層され、かつ該層(B)と上記層(C)とは互いに密着して積層されている。
1つの実施形態では、上記層(C)は、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)100質量部に対して、10ppm〜1000ppmの共役ポリエン化合物(e)を含有する。
本発明はまた、上記多層パイプに含まれるシラン架橋性ポリオレフィン(a’)をシラン架橋する工程を含む、多層パイプの製造方法である。
1つの実施形態では、上記シラン架橋する工程は、上記多層パイプに含まれる上記シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を、湿度80%RH以上かつ50℃以上の水蒸気、または50℃以上の熱水に曝すことで行われる。
本発明はまた、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)と酸化防止剤(d)とを含む多層パイプの耐熱性を向上させる際に、該多層パイプからの該酸化防止剤(d)のブリードアウトを防止する方法であって、
上記多層パイプを用いて、該多層パイプ内の該シラン架橋性ポリオレフィン(a’)をシラン架橋する工程、
を包含する、方法である。
1つの実施形態では、上記シラン架橋する工程は、上記多層パイプに含まれる上記シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を、湿度80%RH以上かつ50℃以上の水蒸気、または50℃以上の熱水に曝すことで行われる。
本発明によれば、高湿度での熱処理によって酸化防止剤がブリードアウトすることを防止できる。また当該パイプを構成する層内にエチレン−ビニルアルコール共重合体と酸化防止剤とが適切に共存し、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層での層間剥離や微細なクラックの発生を抑制または低減できることから、パイプのガスバリア性を維持できる。
本発明の第1の多層パイプの一例を示す模式図であって、(i)は、当該多層パイプの平面図であり、(ii)は(i)に示す第1の多層パイプの側面図である。 図1の(i)に示す本発明の第1の多層パイプのA−A方向断面図である。 本発明の第1の多層パイプの他の例を示す模式図であって、当該第1の多層パイプの断面図である。 本発明の第2の多層パイプ(未架橋のパイプ)の例を説明するための模式断面図であって、(i)は、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を含む層(A’)が最内層に配置されている多層パイプの断面図であり、(ii)は、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を含む層(A’)が最外層に配置されている多層パイプの断面図である。
[第1の多層パイプ]
まず、本発明の第1の多層パイプの一例について、図1を用いて説明する。本発明の第1の多層パイプは、シラン架橋されたポリオレフィンを含む多層パイプであり、例えば、図1の(i)および(ii)に示すように、中心軸80の周りに沿って中空部分90が形成された耐熱性のパイプ本体95を有する多層パイプ(架橋パイプ)である。中心軸80との直交する断面は、例えば、円、楕円、または多角形のいずれかの形態から構成される中空部分と、円、楕円、または多角形のいずれかの形態から構成される外形との組み合わせなどにより構成されている。
本発明の第1の多層パイプ100は、中心軸80周りに配置された積層構造を有し、シラン架橋されたポリオレフィン(a)を含む層(A)と、接着樹脂(b)を含む層(B)と、エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)および酸化防止剤(d)を含む層(C)とをこの順で積層して備える。
(1)層(A)
層(A)に含まれるシラン架橋されたポリオレフィン(a)は、例えば、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を水(例えば、熱水または水蒸気)の作用により架橋して得られるポリオレフィンである。シラン架橋されたポリオレフィン(a)は、1つの実施形態では55%以上、他の実施形態では55%以上90%以下、別の実施形態では50%以上85%以下のゲル分率を有する。
シラン架橋性ポリオレフィン(a’)は、ポリオレフィンに、シラン化合物がグラフト化されたポリオレフィンである。
シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を構成し得るポリオレフィンは、例えば、当該ポリオレフィンの質量全体を基準として、炭素数2〜12のα−オレフィン単位を好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有する単独重合体、および共重合体、ならびにそれらの組み合わせなどである。α−オレフィン単位の例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、1−ヘキセン、および1−オクテン、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を構成するポリオレフィンとしては、例えばエチレンの単独重合体;エチレン単位を50%より多いモル比で含むエチレン単位とエチレン以外のα−オレフィン単位との共重合体;およびプロピレンの単独重合体;プロピレン単位を50%より多いモル比で含むプロピレン単位とプロピレン以外のα−オレフィン単位との共重合体;ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を構成するポリオレフィンは上記α−オレフィン単位に、当該α−オレフィン以外の他の単量体単位を含む共重合体であってもよい。他の単量体単位の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、および酢酸ビニル、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
本発明の第1の多層パイプにおいて、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を構成するポリオレフィンとしては、例えば汎用性に富むとの理由から、ポリエチレンであることが好ましく、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、および超低密度ポリエチレン、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を構成し得るシラン化合物は、ポリオレフィンに対して反応性を有する基とシラノール縮合により架橋を構築し得るアルコキシ基とを有する化合物であり、例えば、ビニルシラン化合物、アミノシラン化合物、エポキシシラン化合物、アクリルシラン化合物、ポリスルフィドシラン化合物、およびメルカプトシラン化合物、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。ビニルシラン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、およびビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランなどが挙げられる。アミノシラン化合物の例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、およびN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。エポキシシラン化合物の例としては、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。アクリルシラン化合物の例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。ポリスルフィドシラン化合物の例としては、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドおよびビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドなどが挙げられる。メルカプトシラン化合物の例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよび3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
層(A)に含まれるシラン架橋されたポリオレフィン(a)は、上記シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を後述するような高湿度下で熱処理することで、シラノール縮合反応を通じてシラン架橋させて得ることができる。
層(A)は、上記シラン架橋されたポリオレフィン(a)が有する耐熱性を損なわない範囲で、シラン架橋されたポリオレフィン(a)以外に他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、および充填剤などの他の添加剤、ならびにシラン架橋されたポリオレフィン(a)のシラン架橋を得る際に使用した遊離ラジカル発生剤およびシラノール縮合触媒などが挙げられる。
紫外線吸収剤の例としては、エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、および2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、ならびそれらの組み合わせなどが挙げられる。
可塑剤の例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、およびリン酸エステル、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
帯電防止剤の例としては、ペンタエリスリトールモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、およびカーボワックス、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
着色剤の例としては、酸化チタン、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、およびベンガラ、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
充填剤の例としては、グラスファイバー、アスベスト、ウォラストナイト、およびケイ酸カルシウム、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
これらの他の成分のうち、遊離ラジカル発生剤およびシラノール縮合触媒は、上記シラン架橋性ポリオレフィン(a’)からシラン架橋性ポリオレフィン(a’)を得る際のシラノール縮合反応に使用され得る成分である。
本発明の第1の多層パイプにおける層(A)の厚みは、例えば、100μm〜20,000μmが好ましく、200μm〜5,000μmがより好ましく、300μm〜3,000μmがさらに好ましい。層(A)が上記範囲であると、本発明の第1のパイプは良好な機械強度を有し、かつ層(A)の全体において略均質なシラン架橋を有し得る。
(2)層(B)
層(B)は、上記層(A)と後述する層(C)との間に配置されており、主に接着樹脂(b)を含有する。
接着樹脂(b)は、不飽和カルボン酸またはその誘導体による変性ポリオレフィンから構成されている。不飽和カルボン酸またはその誘導体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸などの一塩基酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ハイミック酸などの二塩基酸、およびこれらの無水物;などが挙げられる。接着樹脂(b)において、不飽和カルボン酸またはその誘導体はこれらの1つまたはそれ以上が組み合わせて使用され得る。
接着樹脂(b)を構成するポリオレフィンの例としては、炭素数2〜12のα−オレフィン単位を好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有する単独重合体、および共重合体、ならびにそれらの組み合わせなどである。α−オレフィン単位の例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、1−ヘキセン、および1−オクテン、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
接着樹脂(b)を構成するポリオレフィンの好ましい例としては、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン、炭素数2〜12のα−オレフィンとこれと共重合し得るビニル単量体(例えば、酢酸ビニルのような脂肪酸ビニルエステル;およびアクリル酸エチルのようなアクリル酸エステル)との共重合体、ならびに水架橋ポリオレフィン(例えば、架橋度55%以上)などが挙げられる。不飽和カルボン酸またはその誘導体による変性ポリオレフィンの変性度(すなわち、不飽和カルボン酸またはその誘導体が化学的に結合した量)は、好ましくは0.005質量%〜5質量%、より好ましくは0.01質量%〜2質量%である。当該変性ポリオレフィンと、未変性のポリオレフィンとのブレンド物を使用してもよい。
層(B)は、上記接着樹脂(b)による他の層との接着性を妨げない範囲において、接着樹脂(b)以外に他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば上述した紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、および充填剤などが挙げられる。
本発明の第1の多層パイプにおける層(B)の厚みは、例えば、5μm〜200μmが好ましく、10μm〜100μmがより好ましく、20μm〜80μmがさらに好ましい。層(B)が上記範囲であると、層(B)は、他の層との積層構造を形成した際に当該他の層との間で良好な接着性を発揮できる。
(3)層(C)
(エチレン−ビニルアルコール共重合体(c))
層(C)に含まれるエチレン−ビニルアルコール共重合体(c)(以下、EVOH(c)と称することがある)は、主構造単位として、エチレン単位およびビニルアルコール単位を有する共重合体であり、例えばエチレンとビニルエステルとの共重合により得られるエチレン−ビニルエステル共重合体をケン化で得られる。EVOH(c)の一例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるものが挙げられる。
本発明におけるEVOH(c)は、15モル%〜50モル%、好ましくは22モル%〜34モル%のエチレン単位含有量(エチレン−ビニルアルコール共重合体中の単量体単位の総数に対するエチレン単位の数の割合)を有する。エチレン単位含有量が15モル%を下回ると(すなわち、ビニルアルコール単位の含有量が大きすぎると)、EVOH(c)は酸化による劣化を生じ易くなる。エチレン単位含有量が50モル%を上回ると(すなわち、ビニルアルコール単位の含有量が少なすぎると)、EVOH(c)のガスバリア性が低下する。
本発明におけるEVOH(c)はまた、90モル%以上、好ましくは96モル%以上、より好ましくは99モル%以上のケン化度(すなわち、エチレン−ビニルアルコール共重合体中のビニルアルコール単位およびビニルエステル単位の総数に対するビニルアルコール単位の数の割合)を有する。ケン化度が上記範囲にあると、EVOH(c)は優れたガスバリア性を有するとともに、たとえ温水循環パイプの用途において高温下に曝されることがあったとしても、EVOH(c)のカルボン酸の脱離を抑止または低減することができる。
本発明におけるEVOH(c)は、例えば5モル%以下の範囲において他の重合性単量体単位を含有していてもよい。重合性単量体としては、例えばα−オレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、および4−メチル−1−ペンテン)、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸)、アルキルビニルエーテル、N−(2−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミドおよびその4級化物、N−ビニルイミダゾールおよびその4級化物、N−ビニルピロリドン、N,N−ブトキシメチルアクリルアミド、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、およびビニルジメチルメトキシシラン、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
さらに、本発明におけるEVOH(c)はまた、所定のメルトインデックス(MI;190℃、2160g荷重下で測定)を有していることが好ましい。メルトインデックスは、好ましくは0.1g/10分〜100g/10分、より好ましくは0.5g/10分〜50g/10分、さらに好ましく、1g/10分〜30g/10分である。メルトインデックスが上記範囲であると、層(C)を構成するEVOH(c)の溶融成形性が向上し、層(C)が最外層として使用される場合においても優れた外観を有する多層パイプを提供できる。
(酸化防止剤(d))
層(C)に含まれる酸化防止剤(d)は、酸化防止能を有し、下記式(I):
Figure 2020075491
[式中、SPは該酸化防止剤(d)の溶解度パラメータであり、MWは該酸化防止剤(d)の分子量を表す]で表される関係を満たす。ここで、溶解度パラメータSPは、対象となる酸化防止剤(d)について、Fedorsの推算法(R.F.Fedors: Polym.Eng.Sci.,14〔2〕,147−154(1974))に従い、酸化防止剤(d)を構成する置換基の凝集エネルギー密度とモル体積を用いて式(II):
Figure 2020075491
[式中、SPは該酸化防止剤(d)の溶解度パラメータであり、Ecoh、Vはそれぞれ該酸化防止剤(d)を構成する置換基の凝集エネルギー密度(cal/mol)とモル体積(cm/mol)を表す]から算出できる。
上記式(I)に示される関係式が0.450を上回ると、多層パイプに使用した際にパイプの外表面または内表面から酸化防止剤(d)がブリードアウトすることがある。その結果、多層パイプに対して所望の酸化防止能を提供できず、パイプの外観を低下させる場合がある。
さらに、上記酸化防止剤(d)は下記式(I’):
Figure 2020075491
[式中、SPおよびMWは上記に定義した通りである]で表される関係を満たすことが好ましい。
本発明に用いられ得る酸化防止剤(d)は、上記式(I)または(I’)に表される関係を満たす限りにおいて、例えば9〜13、好ましくは10.5〜12.5の溶解度パラメータの値を有する。溶解度パラメータが上記範囲にあると、酸化防止剤(d)はEVOH(c)に分散し易く、分散不良による多層パイプの外観の低下を生じにくい。また、上記とは独立して、本発明に用いられ得る酸化防止剤(d)は、上記式(I)または(I’)に表される関係を満たす限りにおいて、例えば、500〜1200、好ましくは550〜800の分子量を有する化合物から構成される。酸化防止剤(d)の分子量が上記範囲であると、より少量の添加で酸化劣化を効果的に防止することができ、経済性に優れる。
本発明に用いられ得る酸化防止剤(d)としては、例えばヒンダードフェノール基を有する化合物が挙げられる。ヒンダードフェノール基を有する化合物は、それ自身が熱安定性に優れ、酸化劣化の原因である酸素ラジカルを捕捉する能力を有することが知られている。そのため、層(C)の酸化劣化を効果的に防止できる。
酸化防止剤(d)として使用可能な市販の酸化防止剤の例としては以下が挙げられる:
Figure 2020075491
本発明において、酸化防止剤(d)の含有量は、上記EVOH(c)100質量部に対して、0.1質量部〜5質量部が好ましく、0.3質量部〜2質量部がより好ましい。酸化防止剤(d)の含有量が0.1質量部を下回ると、酸化または熱の劣化によって生じる生成物(例えば、酸素ラジカル)を効果的に捕捉できず、多層パイプにおける層(C)の劣化を充分に防止できないことがある。酸化防止剤(d)の含有量が5質量部を上回ると、層(C)内で酸化防止剤(c)が適切に分散できず、得られる多層パイプの外観を低下させる場合がある。
(共役ポリエン化合物(e))
本発明において、層(C)は、共役ポリエン化合物(e)を含有していてもよい。層(C)が共役ポリエン化合物(e)を含有することで、多層パイプにおいて層(C)の酸化劣化が抑制され、力学的な強度低下やガスバリア性の低下を遅延できる場合がある。共役ポリエン化合物(e)は、炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合とが交互に配置された構造を有し、炭素−炭素二重結合の数が2つ以上である、いわゆる共役二重結合を有する化合物である。共役ポリエン化合物(e)の例としては、2つの炭素−炭素二重結合と1つの炭素−炭素単結合とが交互に配置された構造を有する共役ジエン、3つの炭素−炭素二重結合と2つの炭素−炭素単結合とが交互に配置された構造を有する共役トリエン、およびそれ以上の数の炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合とが交互に配置された構造を有する共役ポリエン化合物、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
共役する炭素−炭素二重結合の数が8つ以上である場合、多層パイプが共役ポリエン化合物自体の色で着色することがある。このような着色を予め防止する観点から、共役する炭素−炭素二重結合の数が7つ以下のポリエン化合物を用いることが好ましい。
共役ポリエン化合物(e)はまた、2つ以上の炭素−炭素二重結合からなる上記共役二重結合が互いに共役することなく1分子中に複数組含まれるものであってもよく、例えば桐油のように共役トリエンが同一分子内に3個ある化合物であってもよい。また、共役ポリエン化合物(e)はその他の官能基(例えば、カルボキシル基およびその塩、水酸基、エステル基、カルボニル基、エーテル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、ジアゾ基、ニトロ基、スルホン基およびその塩、スルホニル基、スルホキシド基、スルフィド基、チオール基、リン酸基およびその塩、フェニル基、ハロゲン原子、二重結合、ならびに三重結合)を有していてもよい。
本発明において、共役ポリエン化合物(e)の分子量は好ましくは1000以下であり、より好ましくは500以下であり、さらに好ましくは300以下である。共役ポリエン化合物の分子量が1000を上回ると、上記EVOH(c)に均一に分散することが困難となり、得られる多層パイプの外観が損なわれる場合がある。
共役ポリエン化合物(e)としては、例えば、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、フルベン、トロポン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、センブレン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、アビエチン酸などの2つの炭素−炭素二重結合を有する共役ジエン;1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロールなどの3つの炭素−炭素二重結合を有する共役トリエン;およびシクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸などの4つまたはそれ以上の炭素−炭素二重結合を有する共役ポリエン;ならびにそれらの組み合わせ;などが挙げられる。特に、工業的に広範に使用されている、衛生上の安全性や入手が容易である、高温下で酸化され難いなどの理由から、共役ポリエン化合物(e)として、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、およびミルセン(例えば、β−ミルセン)、ならびにそれらの組み合わせなどが好ましく、ソルビン酸およびソルビン酸塩ならびにそれらの混合物がより好ましい。
層(C)に含まれ得る共役ポリエン化合物(e)の含有量は、上記EVOH(c)100質量部に対して、好ましくは10ppm〜1000ppm、より好ましくは20ppm〜500ppmである。共役ポリエン化合物(e)の含有量が10ppmを下回ると、得られる多層パイプにおいて、層(C)が酸化劣化によって力学的な強度低下を招き、ガスバリア性を低下させる原因となり得るクラックが発生し易くなる場合がある。共役ポリエン化合物(e)の含有量が1000ppmを上回ると、得られる多層パイプの外観を損なう場合がある。
(リン酸化合物(f))
本発明において、層(C)はリン酸化合物(f)を含有していてもよい。リン酸化合物(f)が層(C)に含まれていると、層(C)に含まれるEVOH(c)の溶融成形性や熱安定性が改善され、層(C)におけるゲル状物の発生や着色を低減できる。
上記リン酸化合物(f)としては、例えばリン酸、亜リン酸、およびそれらの塩、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられ、当該リン酸塩は、第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれであってもよい。リン酸塩を構成するカチオンの種類としては、例えばアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンが挙げられる。リン酸化合物(f)のより具体的な例としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、およびリン酸水素二カリウム、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられ、リン酸、リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸二水素カリウムが好ましい。
層(C)に含まれ得るリン酸化合物(f)の含有量は、上記EVOH(c)100質量部に対して、リン元素換算で好ましくは0.0002質量部〜0.02質量部、より好ましくは0.0003質量部〜0.015質量部、さらに好ましくは0.0005質量部〜0.01質量部である。リン酸化合物(f)の含有量が上記範囲にあると、層(C)においてゲル状物の発生や着色を効果的に抑制できる。
(ホウ素化合物(g))
本発明において、層(C)は、ホウ素化合物(g)を含有していてもよい。ホウ素化合物(g)が層(C)に含まれていると、層(C)を構成する樹脂組成物の溶融粘性が改善され、酸化防止剤(d)のブレンドに際し分散性が改善される。
上記ホウ素化合物(g)としては、例えばオルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などのホウ酸類;ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどのホウ酸エステル;上記各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などのホウ酸塩;および水素化ホウ素類;ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。中でもオルトホウ酸が好ましい。
層(C)に含まれ得るホウ素化合物(g)の含有量は、上記EVOH(c)100質量部に対して、ホウ素元素換算で、好ましくは0.002質量部〜0.2質量部、より好ましくは0.005質量部〜0.1質量部である。ホウ素化合物(g)の含有量が上記範囲にあると、酸化防止剤(d)が均一に分散した層(C)を有する多層パイプを製造できる。
(滑剤(h))
本発明において、層(C)は、滑剤(h)を含有していてもよい。滑剤(h)は、溶融成形の際の吐出安定性やロングラン性を高め、層(C)の厚みが均質な第1の多層パイプを製造できる。
滑剤(h)としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸;高級脂肪酸のアルミニウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、バリウム塩などの高級脂肪酸金属塩;高級脂肪酸のメチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、オクチルエステルなどの高級脂肪酸エステル;飽和脂肪酸アミド(例えば、ステアリン酸アミドおよびベヘニン酸アミド)、不飽和脂肪酸アミド(例えば、オレイン酸アミドおよびエルカ酸アミド)、ビス脂肪酸アミド(例えば、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、およびエチレンビスラウリン酸アミド)などの高級脂肪酸アミド;500〜10,000の分子量を有する低分子量ポリエチレンもしくは低分子量ポリプロピレンまたはその酸変性品などの低分子量ポリオレフィン;高級アルコール;エステルオリゴマー;およびフッ化エチレン樹脂;ならびにそれらの組み合わせなど;が挙げられる。中でも高級脂肪酸および/またはその金属塩、エステル、あるいはアミドが好ましい。
層(C)に含まれ得る滑剤(h)の含有量は、上記EVOH(c)100質量部に対して、好ましくは0.001質量部〜0.05質量部、より好ましくは0.005質量部〜0.03質量部である。滑剤(h)の含有量が上記範囲にあると、層(C)の厚みが均質な第1の多層パイプを製造できる。
層(C)は、当該層(C)に含有される上記EVOH(c)および酸化防止剤(d)に悪影響を与えない範囲において、さらに他の成分を含有していてもよい。他の成分の例としては、上述の紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、および充填剤などが挙げられる。
本発明の第1の多層パイプにおける層(C)の厚みとしては、例えば5μm〜1000μmが好ましく、10μm〜500μmがより好ましく、15μm〜150μmがさらに好ましく、15μm〜50μmが特に好ましい。層(C)が上記範囲にあると、層(C)は酸化劣化によるクラックが発生せず、適切なガスリア性を発揮できる。
本発明においては、積層構造を構成する層間に適切な強度を付与できることから、上記層(A)と上記層(B)とが互いに密着して積層され、かつ該層(B)と上記層(C)とが互いに密着して積層されていることが好ましい。
本発明の第1の多層パイプは、図2および図3のいずれに示す形態を有していてもよい。
図2は、図1の(i)に示す本発明の第1の多層パイプのA−A方向断面図である。
図2では、第1の多層パイプ100は、中心軸80周りに、中空部分90を介して中心から円周方向に向かって層(A)110、層(B)120、および層(C)130の順で積層され、当該層(C)130、層(B)120、および層(A)110によってパイプ本体95を構成する。図2に示す実施形態では、層(A)が最も内側(最内層)に配置されている。
図3は、本発明の第1の多層パイプの他の例を示す模式図であって、当該第1の多層パイプの断面図である。
図3では、第1の多層パイプ200は、中心軸80周りに、中空部分90を介して中心から円周方向に向かって層(C)230、層(B)220、および層(A)210の順で積層され、当該層(C)230、層(B)220、および層(A)210によってパイプ本体295を構成する。図3に示す実施形態では、層(A)が最も外側(最外層)に配置されている。
本発明の第1の多層パイプは、温水循環パイプ(例えば、住宅や建築物の床下に配置される床暖房用パイプ)としてそのまま施工して使用できる。
[第2の多層パイプ]
本発明の第2の多層パイプは、図1に示す第1の多層パイプと同様の外観を有する、中心軸の周りに沿って中空部分が形成された多層パイプ(未架橋のパイプ)である。本発明の第2の多層パイプは、それ自体充分な耐熱性を有しておらず、後述のような高湿度下での熱処理に曝すことにより、積層構造の一部がシラン架橋を経て耐熱性を付与できる、耐熱性を付与する前の多層パイプを指して言う。本発明の第2の多層パイプは、例えば、半製品のパイプである。
第2の多層パイプは、上記第1の多層パイプ(耐熱性多層パイプ)と同様に、中心軸80との直交する断面が、例えば、円、楕円、円、または多角形のいずれかの形態から構成される中空部分と、円、楕円、または多角形のいずれかの形態から構成される外形との組み合わせなどにより構成されている。
本発明の第2の多層パイプは、中心軸周りに配置された積層構造を有し、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を含む層(A’)と、接着樹脂(b)を含む層(B)と、EVOH(c)および酸化防止剤(d)を含む層(C)とをこの順で積層して備える。
(1)層(A’)
層(A’)に含まれるシラン架橋性ポリオレフィン(a’)は、上記第1の多層パイプの層(A)に含まれるシラン架橋されたポリオレフィン(a)の材料として記載したものと同様である。すなわち、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)は、ポリオレフィンに、シラン化合物がグラフト化されたポリオレフィンである。
層(A’)は、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)以外に他の成分を含有していてもよい。他の成分の例としては、遊離ラジカル発生剤、シラノール縮合触媒、ならびに上述したような他の添加剤(例えば、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、および充填剤など)が挙げられる。
遊離ラジカル発生剤としては、例えばジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、およびクメンハイドロパーオキサイド、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
シラノール縮合触媒としては、例えばジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクタエート、ジオクチル錫ジオクタエート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、酢酸第一錫、カプリル酸第一錫、ビスネオデカン酸錫、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、およびテトラ−i−プロポキシチタン、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
層(A’)におけるこれら他の成分の含有量は、上記シラン架橋性ポリオレフィン(a’)がシラン架橋することによって発揮し得る耐熱性を損なわない範囲において当業者によって適切な量が選択され得る。
本発明の第2の多層パイプにおける層(A’)の厚みは、例えば100μm〜20,000μmが好ましく、200μm〜5,000μmがより好ましく、300μm〜3,000μmがさらに好ましい。層(A’)が上記範囲にあると、層(A’)の全体において略均質なシラン架橋を形成できる。
(2)層(B)および層(C)
本発明の第2の多層パイプにおいて、層(B)および層(C)は、上記第1の多層パイプを構成する層(B)および層(C)と同様である。
本発明の第2の多層パイプにおける層(B)の厚みは、例えば5μm〜200μmが好ましく、10μm〜100μmがより好ましく、20μm〜80μmがさらに好ましい。層(B)が上記範囲にあると、層(B)を他の層と積層した際に当該他の層との間で良好な接着性を発揮できる。さらに本発明の第2の多層パイプにおける層(C)の厚みは、例えば5μm〜1000μmが好ましく、10μm〜500μmがより好ましく、15μm〜150μmがさらに好ましい。層(C)の厚みが上記範囲にあると、酸化劣化によるクラックが発生することなく、適切なガスリア性を発揮できる。
本発明においては、積層構造を構成する層間に適切な強度を付与できることから、上記層(A’)と上記層(B)とが互いに密着して積層され、かつ該層(B)と上記層(C)とが互いに密着して積層されていることが好ましい。
本発明の第2の多層パイプは、図4の(i)および(ii)のいずれに示す形態を有していてもよい。
図4は、本発明の第2の多層パイプの例を説明するための模式断面図である。
図4の(i)に示す第2の多層パイプ300は、中心軸80周りに、中空部分90を介して中心から円周方向に向かって層(A’)310、層(B)320、および層(C)330の順で積層され、当該層(A’)310、層(B)320、および層(C)330によってパイプ本体395を構成する。図4の(i)に示す実施形態では、層(A)が最も内側(最内層)に配置されている。
これに対し、図4の(ii)に示す第2の多層パイプ400は、中心軸80周りに、中空部分90を介して中心から円周方向に向かって層(C)430、層(B)420、および層(A’)410の順で積層され、当該層(C)430、層(B)420、および層(A’)410によってパイプ本体495を構成する。図4の(ii)に示す実施形態では、層(A’)が最も外側(最外層)に配置されている。
本発明の第2の多層パイプは、温水循環パイプ(例えば、住宅や建築物の床下に配置される床暖房用パイプ)を作製するための半製品として使用され得る。また、後述する通り、本発明の第2の多層パイプから上記第1の多層パイプ(耐熱性多層パイプ)を製造できる。
本発明の第2の多層パイプの製造方法は、特に限定されないが、層(A’)、層(B)、および層(C)を構成する材料を、それぞれ予め当業者に周知の混合手段(例えば、リボンブレンダー、高速ミキサーコニーダー、ミキシングロール、押出機、インテンシブミキサーなど)を用いて混合し、層(A’)または層(C)のための単層パイプの製造ラインに、残りの層(B)および層(C)、または層(B)および層(A’)を成形するための共押出コーティング設備を付加した多層パイプの製造ラインを用いて製造できる。また、樹脂層の種類に対応する数の押出機を使用し、該押出機内で溶融された樹脂を円形の多層ダイスを用いて、重ねあわせた層状態で同時押出成形する、共押出成形ラインを用いて製造することもできる。本発明の第2の多層パイプの製造のために、当該製造ラインに設定される条件は、当業者によって適宜選択され得る。
[第1の多層パイプの製造方法]
次に、本発明の第2の多層パイプを用いて、本発明の第1の多層パイプ(耐熱性多層パイプ)を製造するための方法について説明する。
本発明の製造方法では、上記第2の多層パイプに含まれるシラン架橋性ポリオレフィン(a’)をシラン架橋することにより、多層パイプに耐熱性を付与できる。
このシラン架橋は、第2の多層パイプを構成する層(A’)内のシラン架橋性ポリオレフィン(a’)を、高湿度下で熱処理することで行うことができる。シラン架橋性ポリオレフィン(a’)の高湿度下での熱処理としては、例えばシラン架橋性ポリオレフィン(a’)を、湿度80%RH以上かつ50℃以上の水蒸気に曝すこと、および50℃以上の熱水に曝すことが挙げられる。
高湿度下での熱処理としては、例えば図4の(i)に示すように、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を含有する層(A’)310が多層パイプ300の最内層を構成している場合には、中空部分90内のみに水蒸気または熱水を通す方法、多層パイプ300を所定温度かつ所定湿度のチャンバー内に入れて水蒸気に曝す方法、または多層パイプ300を所定温度の熱水に浸漬する方法などがあり、多層パイプ300を所定温度かつ所定湿度のチャンバー内に入れて水蒸気に曝す方法、または、多層パイプ300を所定温度の熱水に浸漬する方法が好ましい。上記方法を採ることで、生産性を上げられるだけでなく、多層パイプの内層と外層の温度差などに起因するクラックの発生を防ぎ、適切なガスバリア性を発揮できる。あるいは、図4の(ii)に示すように、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を含有する層(A’)410が多層パイプ400の最外層を構成している場合には、多層パイプ400を所定温度かつ所定湿度のチャンバー内に入れて水蒸気に曝す方法、または多層パイプ400を所定温度の熱水に浸漬する方法などが挙げられる。
このような高湿度下での熱処理を通じて、層(A’)内のシラン架橋性ポリオレフィン(a’)がシラノール縮合反応を生じ、シラン架橋ポリオレフィン(a)を得ることができる。
本発明の第1の多層パイプの上記製造方法は、第1の多層パイプの製造を行う工場だけでなく、温水循環パイプの施工を行う住宅またはビルなどの建築現場においても行うことができる。例えば後者の場合は、本発明の第2の多層パイプを用いて温水循環パイプのための仮の施工が行われる。その後、取り付けられた多層パイプの内部または外周に対して、上記高湿度下での熱処理を行い、層(A’)内のシラン架橋性ポリオレフィン(a’)をシラン架橋することで、所望の耐熱性多層パイプを建築現場において製造できる。
このように、本発明の第2の多層パイプを用いることで、層(A’)内に含まれるシラン架橋性ポリオレフィン(a’)をシラン架橋して多層パイプの耐熱性を向上させる際に、当該多層パイプの層(C)内に含まれる酸化防止剤(d)がブリードアウトすることを防止できる。これにより、層(C)内のEVOH(c)が熱劣化して所望でないアルデヒドを生成し、層(C)に、多層パイプのクラックの原因となるボイドや気泡が発生することを抑制できるため、品質が高められた耐熱性多層パイプを提供することが可能となる。
本発明の第1の多層パイプは、温水循環パイプ(例えば、住宅や建築物の床下に配置される床暖房用パイプ)などの、内部に高温の流体が通過するパイプとして使用され、クラックの発生を抑制するとともに優れたガスバリア性を提供できる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1〜9、13〜15)
表2に示す配合量でEVOHペレットと酸化防止剤をドライブレンドし、30mmφの同方向二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−30N」)を用いて220℃の押出温度でブレンドしペレット化することで、層(C)を構成する樹脂材料を得た。層(A’)、層(B)および層(C)のそれぞれについて、表2に示す材料を用い、これを押出機で溶融させた個々の溶融樹脂を円形の多層ダイスに供給し、多層ダイスから共押出することで未架橋の多層パイプを得た。ただし、実施例15については、EVOH100質量部に対して、ソルビン酸50ppmをさらに加えた。各材料の単位時間当たりの吐出量は層(A’)を構成する樹脂が225g/分、層(B)を構成する樹脂が8.66g/分、層(C)を構成する樹脂が17.0g/分(実施例1〜9)、17.3g/分(実施例13および14)、パイプの引き取り速度は3.0m/分であった。得られた未架橋の多層パイプは、中心軸周りに層(A’)、層(B)および層(C)がこの順で積層され、かつ層(A’)が最も内側に配置された、内径50mm、肉厚0.55mmの未架橋の多層パイプであった。また、各層の厚みは層(A’)500μm、層(B)20μm、および層(C)30μmであった。
次いで、この未架橋の多層パイプを、80℃かつ480mBarの飽和水蒸気(湿度100%RH)を封入したオートクレーブ内に8時間静置して(シラン架橋(1))、層(A’)のシラン架橋性ポリオレフィンのシラン架橋を行うことにより、シラン架橋された多層パイプ(架橋パイプ)(E1〜E9、E13およびE15)を得た。
(実施例10)
層(A’)、層(B)および層(C)のそれぞれについて、表2に示す材料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、中心軸周りに層(A’)、層(B)および層(C)がこの順で積層され、かつ層(A’)が最も内側に配置された未架橋の多層パイプを得た。
次いで、この未架橋の多層パイプを、90℃かつ相対湿度95%RHの恒温室内に12時間静置して(シラン架橋(2))、層(A’)のシラン架橋性ポリオレフィンのシラン架橋を行うことにより、シラン架橋された多層パイプ(架橋パイプ)(E10)を得た。
(実施例11)
層(A’)、層(B)および層(C)のそれぞれについて、表2に示す材料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、中心軸周りに層(A’)、層(B)および層(C)がこの順で積層され、かつ層(A’)が最も内側に配置された未架橋の多層パイプを得た。
次いで、この未架橋の多層パイプを、70℃の熱水中に30時間浸漬して(シラン架橋(3))、層(A’)のシラン架橋性ポリオレフィンのシラン架橋を行うことにより、シラン架橋された多層パイプ(架橋パイプ)(E11)を得た。
(実施例12)
層(A’)、層(B)および層(C)のそれぞれについて、表2に示す材料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、中心軸周りに層(A’)、層(B)および層(C)がこの順で積層され、かつ層(A’)が最も内側に配置された未架橋の多層パイプを得た。
次いで、この未架橋の多層パイプに90℃の熱水を19時間通水した後、乾燥して(シラン架橋(4))、層(A’)のシラン架橋性ポリオレフィンのシラン架橋を行うことにより、シラン架橋された多層パイプ(架橋パイプ)(E12)を得た。
(比較例1〜5)
層(A’)、層(B)および層(C)のそれぞれについて、表2に示す材料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、中心軸周りに層(A’)、層(B)および層(C)がこの順で積層され、かつ層(A’)が最も内側に配置された未架橋の多層パイプを得た。
次いで、この未架橋の多層パイプを80℃かつ480mBarの飽和水蒸気(湿度100%RH)を封入したオートクレーブ内に8時間静置して(シラン架橋(1))、層(A’)のシラン架橋性ポリオレフィンのシラン架橋を行うことにより、シラン架橋された多層パイプ(架橋パイプ)を得た(CE1〜5)。
Figure 2020075491
実施例1〜15および比較例1〜5で得られた多層パイプ(架橋パイプ)E1〜E15およびCE1〜CE5をそれぞれ以下の点について評価した。
(酸素バリア性)
得られた多層パイプ(架橋パイプ)の一端をシリコーンゴム栓および接着剤を用いて完全に密封し、他方の開放端に酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製OX−TRAN−10/50A)を接続することにより、酸素バリア性を測定した。得られた結果を表3に示す。
(熱安定性)
表2に示すエチレン−ビニルアルコール共重合体および酸化防止剤を用いて、上記で得られた多層パイプ(架橋パイプ)E1〜E15およびCE1〜CE5のそれぞれを構成する層(C)に相当するフィルム(厚み100μm)を作製した。
ISO 2578:1993に準じて、各フィルムを120℃、130℃、および140℃の3点で熱処理し、各温度で熱処理したサンプルの破断伸度が熱処理をしていないサンプルの引張伸度の1/4に低下するまでの熱処理時間を求め、アレニウスプロットから80℃で引張伸度が1/4に低下するまでの時間を熱安定性の指標として算出した。得られた結果を表3に示す。
(ブリードアウト量)
得られた多層パイプ(架橋パイプ)を20℃のエタノール浴に30秒間浸漬し、層(C)の表面に付着した粉体を洗浄除去し、この洗浄に用いたエタノール液を回収した。次いで、得られたエタノール液からエタノールを留去し、残渣(ブリードアウトした酸化防止剤)の質量を測定し、以下の計算式により、多層パイプ(架橋パイプ)の作製の際にブリードアウトした酸化防止剤の割合x(質量%)を算出した:
x=m/(w×a×c)
(式中、mは回収した残渣(酸化防止剤)の質量であり、wは得られた多層パイプの単位長さ当たりの質量であり、aは多層パイプ(架橋パイプ)に占めるエチレン−ビニルアルコール共重合体の質量分率(質量%)であり、cは多層パイプ(架橋パイプ)におけるEVOHに対する酸化防止剤の質量分率(質量%)である)。得られた結果を表3に示す。
なお、上記において、多層パイプに占めるEVOHの質量分率a(質量%)は、EVOHおよび酸化防止剤を含む層(C)を成形する際の、当該層(C)を構成する材料の単位時間あたりの吐出量X(kg/分)と当該層(C)を構成する材料中に含まれるEVOHの質量分率a’(質量%)との積を、パイプの引き取り速度L(m/分)で除することにより得られた、多層パイプの単位長さ当たりに含まれるEVOH単位の質量a’X/L(kg/m)を、パイプの単位長さ当たりの乾燥質量W(kg/m)で除した値a’X/(LW)として算出した。これらの値も表3に示す。
Figure 2020075491
表2および表3に示すように、実施例1〜15で得られた多層パイプ(架橋パイプ)E1〜E15はいずれも、使用した酸化防止剤およびシラン架橋の条件が相違していたにも関わらず、層(C)の表面において酸化防止剤のブリードアウトが全く観察されず、優れた酸素バリア性および熱安定性を有するものであった。これに対し、比較例1〜5で得られた多層パイプ(架橋パイプ)CE1〜CE5では酸化防止剤のブリードアウトを生じ、実施例1〜15と比較して酸素バリア性および熱安定性が著しく低下した。実施例1〜15および比較例1〜5において、このようなブリードアウト、酸素バリア性および熱安定性が良好であったかどうかは、使用した酸化防止剤の溶解度パラメータ(SP)と分子量(MW)とが、例えば以下の式(I):
Figure 2020075491
を満たすか否かによって相違を生じていることがわかる。
本発明によれば、クラックの発生を抑制するとともにかつ優れたガスバリア性を有する多層パイプを提供できる。本発明の多層パイプは、例えば樹脂成形分野、建築分野において有用である。
80 中心軸
90 中空部分
95,295,395,495 パイプ本体
100,200 第1の多層パイプ
110,210 層(A)
120,220,320,420 層(B)
130,230,330,430 層(C)
300,400 第2の多層パイプ
310,410 層(A’)

Claims (14)

  1. 中心軸周りに、シラン架橋されたポリオレフィン(a)を含む層(A)と、接着樹脂(b)を含む層(B)と、エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)および酸化防止剤(d)を含む層(C)とをこの順で積層して含む、多層パイプであって、
    該層(C)において、
    該エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)が、15モル%〜50モル%のエチレン単位含有量および90モル%以上のケン化度を有し、
    該酸化防止剤(d)が、該エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)100質量部に対して、0.1質量部〜5質量部の割合で含有されており、
    該酸化防止剤(d)が下記式(I):
    Figure 2020075491
    [式中、SPは該酸化防止剤(d)の溶解度パラメータであり、MWは該酸化防止剤(d)の分子量を表す]
    で表される関係を満たす、多層パイプ。
  2. 前記酸化防止剤(d)が以下の式(I’):
    Figure 2020075491
    で表される関係を満たす請求項1に記載の多層パイプ。
  3. 前記層(A)と前記層(B)とが互いに密着して積層され、かつ該層(B)と前記層(C)とが互いに密着して積層されている、請求項1または2に記載の多層パイプ。
  4. 前記層(C)が、前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)100質量部に対して、10ppm〜1000ppmの共役ポリエン化合物(e)を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の多層パイプ。
  5. 前記層(A)が最内層または最外層として配置されている、請求項1〜4のいずれかに記載の多層パイプ。
  6. 前記層(A)に含まれる前記シラン架橋されたポリオレフィン(a)が、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を、湿度80%RH以上かつ50℃以上の雰囲気下、または50℃以上の熱水または水蒸気に曝してシラン架橋することで得られるものである、請求項1〜5のいずれかに記載の多層パイプ。
  7. 中心軸周りに、シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を含む層(A’)と、接着樹脂(b)を含む層(B)と、エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)および酸化防止剤(d)を含む層(C)とをこの順で積層して含む、多層パイプであって、
    該層(A’)が最内層または最外層として配置されており、
    該層(C)において、
    該エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)が、15モル%〜50モル%のエチレン単位含有量および90モル%以上のケン化度を有し、
    該酸化防止剤(d)が、該エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)100質量部に対して、0.1質量部〜5質量部の割合で含有されており、
    該酸化防止剤(d)が下記式(I):
    Figure 2020075491
    [式中、SPは該酸化防止剤(d)の溶解度パラメータであり、MWは該酸化防止剤(d)の分子量を表す]
    で表される関係を満たす、多層パイプ。
  8. 前記酸化防止剤(d)が以下の式(I’):
    Figure 2020075491
    で表される関係を満たす、請求項7に記載の多層パイプ。
  9. 前記層(A’)と前記層(B)とが互いに密着して積層され、かつ該層(B)と前記層(C)とが互いに密着して積層されている、請求項7または8に記載の多層パイプ。
  10. 前記層(C)が、前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(c)100質量部に対して、10ppm〜1000ppmの共役ポリエン化合物(e)を含有する、請求項7〜9のいずれかに記載の多層パイプ。
  11. 請求項7〜10のいずれかに記載の多層パイプに含まれるシラン架橋性ポリオレフィン(a’)をシラン架橋する工程を含む請求項1〜6のいずれかに記載の多層パイプの製造方法。
  12. 前記シラン架橋する工程が、前記多層パイプに含まれる前記シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を、湿度80%RH以上かつ50℃以上の雰囲気下、または50℃以上の熱水または水蒸気に曝すことで行われる、請求項11に記載の多層パイプの製造方法。
  13. シラン架橋性ポリオレフィン(a’)と酸化防止剤(d)とを含む多層パイプの耐熱性を向上させる際に、該多層パイプからの該酸化防止剤(d)のブリードアウトを防止する方法であって、
    請求項7〜10のいずれかに記載の多層パイプを用いて、該多層パイプ内の該シラン架橋性ポリオレフィン(a’)をシラン架橋する工程、
    を包含する、方法。
  14. 前記シラン架橋する工程が、前記多層パイプに含まれる前記シラン架橋性ポリオレフィン(a’)を、湿度80%RH以上かつ50℃以上の雰囲気下、または50℃以上の熱水または水蒸気に曝すことで行われる、請求項13に記載の方法。
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