JP2021181548A - 樹脂組成物、成形体及び多層パイプ - Google Patents

樹脂組成物、成形体及び多層パイプ Download PDF

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Yoshikazu Yamazaki
健太郎 吉田
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Abstract

【課題】EVOHを使用した多層パイプの製造工程において、EVOH樹脂組成物が溶融押出された後に急冷を受けた場合であっても、得られる多層パイプの層間剥離を抑制することができ、さらに色相及び熱安定性にも優れる樹脂組成物を提供する。【解決手段】エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、カリウム塩(B)及び酸化防止剤(C)を含有する樹脂組成物であって、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン含有量が15〜60モル%、けん化度が85モル%以上であり、カリウム塩(B)が、pKaが4〜6であるカルボン酸のカリウム塩であり、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)に対するカリウム塩(B)の含有量がカリウム換算で200〜1000ppmであり、酸化防止剤(C)がエステル結合もしくはアミド結合を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤であり、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100質量部に対する酸化防止剤(C)の含有量が0.1〜4質量部である樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物、成形体及び多層パイプに関する。
従来、温水循環によるフロアーヒーティングには、金属製パイプが主として使われてきた。温水循環パイプは施工時にコンクリート内に埋められて、床下に設置される場合が多く、一度設置されるとその後の補修が困難であり、さらに通常は約50年の長期にわたる耐久性が要求される。かかる厳しい条件下では、金属製のパイプに比べて安価で、パイプ腐食の心配のないプラスチック製パイプが好ましく使用される。プラスチック製パイプ材料として、ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリブテン等が使用されている。
一方で、係るプラスチック製パイプをフロアーヒーティングに使用すると、熱交換器、ポンプ等の金属製部分が酸素により腐食するという問題が生じていた。この腐食の原因は、大気中の酸素が、プラスチック製パイプ壁を通して温水中に浸透、溶解するためと考えられた。そこで、アルミニウムを中間層とする多層ポリエチレンパイプが使用されたが、温度変化に起因すると考えられるアルミニウム層の亀裂が発生するために、酸素の浸透による腐食の問題を解決するには至っていなかった。
この解決策として、ガスバリア性樹脂とポリエチレンからなる様々な多層パイプが使用された。中でもエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略称することがある)を使用した多層パイプは優れた酸素バリア性、機械強度を有しており、今日、温水循環パイプとして幅広く使用されている。例えば、EVOH層を中間層として含む温水循環用パイプ(特許文献1)や、EVOH層を最外層に有する温水循環用パイプ(特許文献2)が知られている。
特開昭63−286459号公報 特開平4−227744号公報
しかしながら、EVOHを使用した多層パイプにおいて、層間剥離が問題となることがあった。調査の結果、EVOHを使用した多層パイプが製造工程において溶融押出後に急冷を受ける場合に層間接着強度が低下することで、得られる多層パイプの層間剥離が発生しやすいことが見出された。特に、EVOH層を最外層として有する多層パイプの場合には特に強い急冷を受けることで、層間接着強度の低下によって、得られる多層パイプの層間剥離の懸念が大きいことが見出された。
本発明は上記のような事情に基づいてなされたものであり、その第一の目的は、EVOHを使用した多層パイプの製造工程において、EVOH樹脂組成物が溶融押出された後に急冷を受けた場合であっても、得られる多層パイプの層間剥離が抑制されるEVOH樹脂組成物を提供することである。
また、本発明の第二の目的は、さらに色相及び熱安定性にも優れ、樹脂組成物の優れた色相及び熱安定性と、得られる多層パイプの層間剥離の抑制を高いレベルで両立できる樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、EVOHの樹脂組成と様々な条件における層間接着強度の相関を広く検討した結果、従来から層間接着強度の改善に広く使用されてきたナトリウム塩は、急冷条件における層間接着強度の低下幅が大きい一方で、カリウム塩を用いることで、急冷条件における層間接着強度の低下を抑制できることを見出した。また、カリウム塩を用いることで、樹脂組成物の色相と層間接着強度を高いレベルで両立することができることを見出した。ナトリウムとカリウムは同じアルカリ金属類に属するが、このような特性の違いを有することは大きな驚きであった。カリウム塩を構成するアニオン種や、樹脂組成物の熱水抽出液のpHを特定することで上記特性をさらに向上できることを見出し、発明を完成させた。すなわち、上記課題は、
[1]エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、カリウム塩(B)及び酸化防止剤(C)を含有する樹脂組成物であって、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン含有量が15〜60モル%、けん化度が85モル%以上であり、カリウム塩(B)が、pKaが4〜6であるカルボン酸のカリウム塩であり、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)に対するカリウム塩(B)の含有量がカリウム換算で200〜1000ppmであり、酸化防止剤(C)がエステル結合もしくはアミド結合を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤であり、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100質量部に対する酸化防止剤(C)の含有量が0.1〜4質量部である樹脂組成物;
[2]カリウム塩(B)が酢酸カリウムである、[1]の樹脂組成物;
[3]樹脂組成物からなる層を有する多層フィルムについて、実施例に記載の評価条件で測定される層間接着強度が450g/15mm以上である、[1]又は[2]の樹脂組成物;
[4]エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物からなる層を有する多層フィルムについて、実施例に記載の評価条件で測定される層間接着強度が450g/15mm以上である樹脂組成物;
[5]さらに共役ポリエン化合物(D)を含有し、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100質量部に対する共役ポリエン化合物(D)の含有量が0.001〜0.15質量部である、[1]〜[4]のいずれかの樹脂組成物;
[6]樹脂組成物10gを純水50mlに入れ、95℃で8時間抽出して得られる抽出液の20℃におけるpHが4.0〜5.5である、[1]〜[5]のいずれかの樹脂組成物;
[7][1]〜[6]のいずれかの樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する成形体;
[8][1]〜[6]のいずれかの樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する多層パイプ;
[9][1]〜[6]のいずれかの樹脂組成物からなる層を最外層として有する多層パイプ;
[10][1]〜[6]のいずれかの樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する多層パイプの製造方法であって、多層パイプを構成する各層をダイから吐出した直後に、10〜50℃の水又は空気で冷却する工程を含む、多層パイプの製造方法;
を提供することで解決される。
本発明の樹脂組成物は、EVOHを使用した多層パイプの製造工程において、EVOH樹脂組成物が溶融押出された後に急冷を受けた場合であっても、得られる多層パイプの層間剥離を抑制することができる。また、さらに色相及び熱安定性にも優れ、樹脂組成物の優れた色相及び熱安定性と、得られる多層パイプの層間剥離の抑制を高いレベルで両立することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現するものとして具体的な材料(化合物等)を例示する場合があるが、本発明はこのような材料を使用した態様に限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
<EVOH(A)>
EVOH(A)は、本発明の樹脂組成物の主成分である。EVOH(A)は、主構造単位として、エチレン単位及びビニルアルコール単位を有する共重合体である。EVOH(A)は、通常、エチレンとビニルエステルとを重合し、得られるエチレン−ビニルエステル共重合体をけん化して得られる。なお主成分とは、本発明の樹脂組成物を構成する樹脂中のEVOH(A)の含有量が70質量%以上であることを示し、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が特に好ましく、99質量%以上であってもよい。EVOH(A)の含有量をこの範囲とすることで、得られる樹脂組成物のガスバリア性が優れたものとなる。
なお、樹脂組成物のガスバリア性は公知の方法で測定できる。例えば、樹脂組成物を用いて厚み20μmの単層フィルムを得た上で、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製MOCON OX−TRAN2/20)を用い、温度20℃、酸素供給側及びキャリアガス側の湿度85%RH、酸素圧力1気圧、キャリアガス圧力1気圧の条件下で酸素透過速度[単位:cc・20μm/(m・day・atm)]を測定する方法が挙げられる。キャリアガスとしては2体積%の水素ガスを含む窒素ガスを使用することができる。なお、単層フィルムの押出条件としては以下の条件であってもよい。また、単層フィルムの厚みは、引取りロール速度を変えることによって調整できる。
押出機:東洋精機製作所製1軸押出機
スクリュー径:20mmφ(L/D=20、圧縮比=3.5、フルフライト型)
スクリュー回転数:40rpm
押出温度:C1/C2/C3/ダイ=190/220/220/220℃
引取りロール温度:80℃
EVOH(A)のエチレン単位含有量、即ちEVOH(A)中の単量体単位の総数に対するエチレン単位の数の割合は15〜60モル%の範囲である。EVOH(A)のエチレン単位含有量の下限は20モル%が好ましく、23モル%がより好ましい。一方、EVOH(A)のエチレン単位含有量の上限は55モル%が好ましく、50モル%がより好ましい。EVOH(A)のエチレン単位含有量が15モル%未満の場合、高湿度下でのガスバリア性が低下し、溶融成形性も悪化することがある。EVOH(A)のエチレン単位含有量が60モル%を超えると十分なガスバリア性が得られないことがある。
EVOH(A)のけん化度、即ちEVOH(A)中のビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の総数に対するビニルアルコール単位の数の割合は85モル%以上である。EVOH(A)のけん化度の下限は95モル%が好ましく、99モル%がより好ましい。一方、EVOH(A)のけん化度の上限は100モル%が好ましく、99.99モル%がより好ましい。EVOH(A)のけん化度が85モル%未満の場合、十分なガスバリア性が得られないことがあり、さらに熱安定性が不十分となるおそれもある。
EVOH(A)は、エチレン単位含有量の異なる2種類以上のEVOHの混合物であってもよい。この場合、エチレン単位含有量が最も離れたEVOH同士のエチレン単位含有量の差が30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、15モル%以下がさらに好ましい。同様に、EVOH(A)は、けん化度の異なる2種類以上のEVOHの混合物であってもよい。この場合、最も離れたEVOH同士のけん化度の差は7%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。熱成形性及びガスバリア性が、より高いレベルで両立された樹脂組成物を所望する場合は、エチレン単位含有量が24モル%以上34モル%未満であり、けん化度が99モル%以上のEVOH(A−1)と、エチレン単位含有量が34モル%以上50モル%未満であり、けん化度が99モル%以上のEVOH(A−2)とを、配合質量比(A−1/A−2)が60/40〜90/10となるように混合し、EVOH(A)として使用することが好ましい。EVOH(A)のエチレン単位含有量及びけん化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
EVOH(A)のJIS K 7210:2014に準拠したメルトフローレート(以下、単に「MFR」と略称することがある)(温度210℃、荷重2160g)の下限は0.1g/10分が好ましく、0.5g/10分がより好ましく、1g/10分がさらに好ましい。一方、EVOH(A)のMFRの上限は50g/10分が好ましく、30g/10分がより好ましく、15g/10分がさらに好ましい。EVOH(A)のMFRをこの範囲の値とすることで、得られる樹脂組成物の溶融成形性が向上する。
EVOH(A)は、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の単量体単位を共重合単位として含有できる。前記単量体の例としては、例えばプロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、その塩、その部分又は完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸又はその塩;不飽和チオール類;ビニルピロリドン類が挙げられる。EVOH(A)中のエチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の単量体単位の含有量は、通常5モル%以下であり、2モル%以下が好ましく、1モル%以下がより好ましい。
EVOHは、通常エチレン−ビニルエステル共重合体をけん化することによって合成され、一般にはビニルエステルとしては酢酸ビニルが用いられる。また、エチレンと酢酸ビニルを共重合する際に、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)も併用することもできる。
エチレンとビニルエステルの重合は溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合のいずれであっても良く、また連続式、回分式のいずれであってもよいが、例えば、回分式の溶液重合の場合の重合条件は次の通りである。
溶媒:アルコール類が好ましいが、その他エチレン、ビニルエステル及びエチレン−ビニルエステル共重合体を溶解し得る有機溶剤(ジメチルスルホキシド等)を用いることができる。アルコール類としてはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等を用いることができ、特にメチルアルコールが好ましい。
触媒:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メチル−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等のアゾニトリル系開始剤及びイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエイト、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤等が用いられる。
温度:20〜90℃、好ましくは40℃〜70℃。
時間:2〜15時間、好ましくは3〜11時間。
重合率:仕込みビニルエステルに対して10〜90%、好ましくは30〜80%。
重合後の溶液中の樹脂分:5〜85%、好ましくは20〜70%。
なお、エチレンとビニルエステル以外にこれらと共重合し得る単量体を少量共存させることも可能である。共重合し得る単量体としては、例えばプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン等のα−オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸又はその無水物、塩、あるいはモノ又はジアルキルエステル等;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等のビニルシラン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
所定時間の重合後、所定の重合率に達した後、必要に応じて重合禁止剤を添加し、未反応のエチレンガスを蒸発除去した後、未反応酢酸ビニルを追い出す。エチレンを蒸発除去したエチレン−酢酸ビニル共重合体から未反応の酢酸ビニルを追い出す方法としては、例えばラシヒリングを充填した塔の上部から該共重合体溶液を一定速度で連続的に供給し、塔下部よりメタノール等の有機溶剤蒸気を吹き込み塔頂部よりメタノール等の有機溶剤と未反応酢酸ビニルの混合蒸気を留出させ、塔底部より未反応酢酸ビニルを除去した該共重合体溶液を取り出す方法等が採用される。
未反応の酢酸ビニルを除去した該共重合体溶液にアルカリ触媒を添加し、該共重合体中の酢酸ビニル成分をけん化する。けん化方法は連続式、回分式いずれも可能である。アルカリ触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラート等が用いられる。例えば、回分式の場合のけん化条件は次の通りである。
該共重合体溶液濃度:10〜50%。
反応温度:30〜60℃。
触媒使用量:0.02〜0.6当量(酢酸ビニル成分当り)。
時間:1〜6時間。
また、けん化工程の後に、酢酸等の酸を添加して残存するアルカリ触媒を中和することも一般に行われる。
造粒の操作としては、例えば(1)EVOHを含む溶液を低温の貧溶媒中に押出して析出させるか、又は凝固させその直後又はさらに冷却固化させた後にカットする方法、(2)EVOHの溶液を水蒸気と接触させて予めEVOHの含水樹脂組成物を得た後、当該含水樹脂組成物をカットする方法が挙げられる。これらの方法で得られたEVOHの含水ペレット中の含水量は、EVOH100質量部に対して、50〜200質量部が好ましく、70〜150質量部がより好ましい。
<カリウム塩(B)>
本発明の第一の実施態様においては、樹脂組成物はpKaが4〜6であるカルボン酸のカリウム塩(B)を含有する。本発明の樹脂組成物はカリウム塩(B)を含有することで、多層パイプの製造工程において、前記樹脂組成物が溶融押出された後に急冷を受けた場合でも十分な層間接着性を発現することができ、また樹脂組成物の色相と、得られる多層パイプの層間剥離の抑制を両立させることができる。
その理由は、ナトリウムイオンと比べてカリウムイオンはEVOH中での運動性が大きく、より効率的に層間接着反応を促進できるものと推測され、特に急冷を受けた場合の層間接着性に顕著に優れる。また、後述するカルボン酸との含有比率を制御することで、得られる樹脂組成物の色相や溶融成形性をさらに改善することができる。
カリウム塩(B)の含有量はエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)に対して、カリウム換算で200〜1000ppmである。該含有量が200ppmより少ないと、層間接着強度が不十分となり、得られる多層パイプの層間剥離の抑制が不十分となる場合がある。一方、該含有量が1000ppmより多いと、色相が悪化する場合がある。該含有量の下限は250ppmが好ましい。一方、該含有量の上限は500ppmが好ましい。
カリウム塩(B)のカルボン酸のpKaは4〜6の範囲にある必要がある。カリウム塩(B)のカルボン酸のpKaが上記範囲であることで、層間接着強度が十分なものとなり、また、得られる樹脂組成物のpH緩衝能力が高まり、酸性物質や塩基性物質に対する着色耐性が改善される場合がある。多価酸の場合は、少なくとも1つの酸のpKaが4〜6の範囲にあればよい。このような条件を満たすカリウム塩(B)のカルボン酸としては、酢酸(pKa=4.76)、プロピオン酸(pKa=4.85)、アクリル酸(pKa=4.25)、シュウ酸(pKa2=4.27)、コハク酸(pKa1=4.20)、フマル酸(pKa2=4.44)、リンゴ酸(pKa2=5.13)、グルタル酸(pKa1=4.30、pKa2=5.40)、アジピン酸(pKa1=4.43、pKa2=5.41)、ピメリン酸(pKa1=4.71)、フタル酸(pKa2=5.41)、イソフタル酸(pKa2=4.46)、テレフタル酸(pKa1=3.51、pKa2=4.82)、クエン酸(pKa2=4.75)、酒石酸(pKa2=4.40)、グルタミン酸(pKa2=4.07)等が挙げられる。中でも、安全性、ハンドリング性、経済性の点から酢酸カリウム又はクエン酸が好ましく、酢酸カリウムがさらに好ましい。
<酸化防止剤(C)>
本発明の第一の実施態様においては、樹脂組成物はエステル結合もしくはアミド結合を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)を含有する。本発明の樹脂組成物は酸化防止剤(C)を含有することで、熱安定性が向上し、長期に渡って安定した物性を維持することができる。特に、後述する多層パイプを温水循環パイプとしてコンクリート内や地中に敷設し、長期に渡って使用する際に、多層パイプを構成する樹脂組成物の酸化劣化を効果的に抑制できる。
酸化防止剤(C)の含有量はエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100質量部に対して0.1〜4質量部である。該含有量が0.1質量部より少ないと、熱安定性が不十分となる場合がある。また、該含有量が4質量部より多いと、得られる樹脂組成物の色相や溶融成形性が低下したり、酸化防止剤(C)のブリードアウトが問題となったりする場合がある。該含有量の下限は0.3質量部が好ましい。一方、該含有量の上限は2質量部が好ましい。
酸化防止剤(C)は、少なくとも1つのヒンダードフェノール基を有する。ヒンダードフェノール基とは、フェノールのヒドロキシル基が結合した炭素に隣接する炭素の少なくとも1つに嵩高い置換基が結合したものをいう。嵩高い置換基としては、炭素原子1〜10のアルキル基が好ましく、t−ブチル基がより好ましい。酸化防止剤(C)は、エステル結合又はアミド結合を有する必要がある。エステル結合を有する酸化防止剤(C)としては、ヒンダードフェノール基を有する脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステルが挙げられ、アミド結合を有する酸化防止剤(C)としては、ヒンダードフェノール基を有する脂肪族カルボン酸と脂肪族アミンとのアミドが挙げられる。中でも、EVOH(A)中での分散性が良好で、酸化防止性能を効率的に発現する観点から、酸化防止剤(C)がアミド結合を有することが好ましい。
酸化防止剤(C)は室温付近において固体状態であることが好ましい。酸化防止剤(C)のブリードアウトを抑制する観点からは、酸化防止剤(C)の融点又は軟化温度は50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。EVOH(A)との混合を容易にする観点からは、酸化防止剤(C)の融点又は軟化温度は200℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。
また、酸化防止剤(C)のブリードアウトを抑制する観点からは、酸化防止剤(C)の分子量は200以上が好ましく、400以上がより好ましく、600以上がさらに好ましい。一方、該分子量は、通常、2000以下である。
酸化防止剤(C)の具体的な構造としては、BASF社からイルガノックス1010として市販されているペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、イルガノックス1076として市販されている3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、イルガノックス1035として市販されている2,2’−チオジエチルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、イルガノックス1135として市販されている3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸オクタデシル、イルガノックス245として市販されているビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)、イルガノックス259として市販されている1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、イルガノックス1098として市販されているN,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]が挙げられる。中でも、イルガノックス1098として市販されているN,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、及びイルガノックス1010として市販されているペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]が好ましく、前者がより好ましい。
<共役ポリエン化合物(D)>
本発明の樹脂組成物は、さらに共役ポリエン化合物(D)を含有してもよい。本発明の樹脂組成物は共役ポリエン化合物(D)を含有することで、熱安定性が向上し、長期に渡って安定した物性を維持することができる。
共役ポリエン化合物(D)の含有量はエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100質量部に対して0.001〜0.15質量部が好ましい。該含有量が0.001質量部より少ないと、熱安定性が不十分となる場合がある。また、該含有量が0.15質量部より多いと、得られる樹脂組成物の色相や溶融成形性が低下する場合がある。該含有量の下限は0.003質量部がより好ましい。一方該含有量の上限は0.10質量部がより好ましい。
共役ポリエン化合物(D)は、炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる構造であって、炭素−炭素二重結合の数が2個以上である、いわゆる共役二重結合を有する化合物である。2個の炭素−炭素二重結合と1個の炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役ジエン、3個の炭素−炭素二重結合と2個の炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役トリエン、あるいはそれ以上の数の炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役ポリエン化合物であっても良い。ただし、共役する炭素−炭素二重結合の数が8個以上になると共役ポリエン化合物自身の色により着色する可能性があるので、共役する炭素−炭素二重結合の数が7個以下であるポリエン化合物であることが好ましい。また、2個以上の炭素−炭素二重結合からなる上記共役二重結合が互いに共役せずに1分子中に複数組あってもよい。例えば、桐油のように共役トリエンが同一分子内に3個ある化合物も本発明の共役ポリエン化合物(D)に含まれる。さらに、共役二重結合に加えてその他の官能基、例えばカルボキシル基及びその塩、水酸基、エステル基、カルボニル基、エーテル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、ジアゾ基、ニトロ基、スルホン基及びその塩、スルホニル基、スルホキシド基、スルフィド基、チオール基、リン酸基及びその塩、フェニル基、ハロゲン原子、二重結合、三重結合等の各種の官能基を有していてもよい。
EVOH(A)への分散性を向上する観点から、共役ポリエン化合物(D)の分子量は1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましい。
共役ポリエン化合物(D)の具体例としては、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、フルベン、トロポン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、センブレン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、アビエチン酸等の炭素−炭素二重結合2個の共役構造よりなる共役ジエン;1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール等の炭素−炭素二重結合3個の共役構造からなる共役トリエン;シクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の炭素−炭素二重結合4個以上の共役構造からなる共役ポリエン等が挙げられる。かかるポリエン化合物は2種類以上のものを併用することもできる。中でも、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、β−ミルセン等のミルセン及びその混合物が好ましく、食品添加剤としても広く工業的に使用されており、衛生性や入手性の観点、また高温での酸化劣化の抑制にも有効である点からソルビン酸、ソルビン酸エステル及びソルビン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、EVOH(A)、カリウム塩(B)、酸化防止剤(C)及び共役ポリエン化合物(D)以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えばカリウム以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンや遷移金属イオン、カルボン酸、リン酸化合物、ホウ素化合物、酸化促進剤、酸化防止剤(C)以外の酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、乾燥剤、充填剤、顔料、染料、加工助剤、難燃剤、及び防曇剤等が挙げられる。特に、色相や溶融成形性を改善する観点からは、カルボン酸やリン酸化合物を含むことが好ましい。また、マテリアルリサイクル性を改善する観点からは、アルカリ土類金属イオンを含むことが好ましい。さらに、溶融粘度や機械物性を改善する観点からは、ホウ素化合物を含むことが好ましい。本発明の樹脂組成物中の他の成分の含有量は、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
<アルカリ土類金属イオン>
本発明の樹脂組成物はアルカリ土類金属イオンをさらに含有してもよい。アルカリ土類金属イオンの含有量の下限は10ppmが好ましい。一方、アルカリ土類金属イオンの含有量の上限は200ppmが好ましい。本発明の樹脂組成物はアルカリ土類金属イオンの含有量をこの範囲とすることで、増粘・架橋挙動を抑制し、それによるゲル及びブツの発生が抑制される場合がある。
アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムのイオンが挙げられるが、着色等の影響が小さく、工業的に入手し易い点からはマグネシウム又はカルシウムのイオンが好ましい。少量の含有量でゲル及びブツの発生を効果的に抑制する観点では、マグネシウムイオンが特に好ましいが、色相と両立させる観点では、カルシウムイオンが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ土類金属イオンを与えるアルカリ土類金属塩としては、例えばマグネシウム及びカルシウム等の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、金属錯体が挙げられる。中でも、酢酸マグネシウム及び酢酸カルシウムが、入手容易である点からより好ましい。
<カルボン酸>
本発明の樹脂組成物はカルボン酸をさらに含有してもよい。カルボン酸の含有量の下限は50ppmが好ましく、100ppmがより好ましい。一方、カルボン酸の含有量の上限は400ppmが好ましく、350ppmがより好ましい。カルボン酸の含有量が50ppm未満の場合、着色耐性が不十分となる場合がある。一方、カルボン酸の含有量が400ppmを超える場合、層間接着強度が不十分となったり、臭気が問題になったりする場合がある。カルボン酸の含有量は、樹脂組成物10gを純水50mlで95℃、8時間抽出した後、得られる抽出液をフェノールフタレインを指示薬とし、水酸化ナトリウム水溶液で滴定することで求められる。なお、カルボン酸の含有量として、前記抽出液中に塩として存在するカルボン酸は考慮しない。また、本発明の樹脂組成物が、カルボン酸以外の酸性化合物を含有する場合には、滴定による測定値からそれらの酸性化合物の寄与分を差し引くことで樹脂組成物中のカルボン酸の含有量を求めることができる。
カルボン酸のpKaは4〜6が好ましい。カルボン酸のpKaが上記範囲であると、得られる樹脂組成物のpH緩衝能力が高まり、溶融成形性をさらに改善するとともに、酸性物質や塩基性物質による着色をさらに改善できる。
カルボン酸は、1価カルボン酸であってもよく、多価カルボン酸であってもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
1価カルボン酸とは、分子内に1つのカルボキシル基を有する化合物である。pKaが4〜6の範囲にある1価カルボン酸としては、例えば酢酸(pKa=4.76)、プロピオン酸(pKa=4.85)、アクリル酸(pKa=4.25)等が挙げられる。中でも、安全性が高く、入手及び取扱いが容易であることから酢酸が好ましい。これらのカルボン酸は水酸基、アミノ基、ハロゲン原子等の置換基をさらに有していてもよい。
多価カルボン酸とは、分子内に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物である。この場合、少なくとも1つのカルボキシル基のpKaが4〜6の範囲にあることが好ましく、例えば、シュウ酸(pKa2=4.27)、コハク酸(pKa1=4.20)、フマル酸(pKa2=4.44)、リンゴ酸(pKa2=5.13)、グルタル酸(pKa1=4.30、pKa2=5.40)、アジピン酸(pKa1=4.43、pKa2=5.41)、ピメリン酸(pKa1=4.71)、フタル酸(pKa2=5.41)、イソフタル酸(pKa2=4.46)、テレフタル酸(pKa1=3.51、pKa2=4.82)、クエン酸(pKa2=4.75)、酒石酸(pKa2=4.40)、グルタミン酸(pKa2=4.07)、アスパラギン酸(pKa=3.90)等が挙げられる。
カルボン酸が多価カルボン酸であると、高温下での着色耐性をさらに改善できる場合がある。多価カルボン酸は、3個以上のカルボキシル基を有することも好ましい。この場合、着色耐性をより効果的に向上できる場合がある。
<リン酸化合物>
本発明の樹脂組成物は、リン酸化合物をさらに含有してもよい。リン酸化合物の含有量の下限は、リン酸根換算で5ppmが好ましい。一方、リン酸化合物の含有量の上限は、リン酸根換算で100ppmが好ましい。この範囲でリン酸化合物を含有することにより、着色耐性や溶融成形性が改善される場合がある。
リン酸化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等が用いられる。リン酸塩は第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれであってもよい。リン酸塩のカチオン種も特に限定されない。
<ホウ素化合物>
本発明の樹脂組成物は、ホウ素化合物をさらに含有してもよい。ホウ素化合物の含有量の下限は、ホウ素元素換算で15ppmが好ましい。一方、ホウ素化合物の含有量の上限は、ホウ素元素換算で300ppmが好ましい。この範囲でホウ素化合物を含有することにより、溶融粘度が向上するとともに機械物性が改善される場合がある。
ホウ素化合物としては、例えばホウ酸、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素が挙げられる。具体的には、オルトホウ酸(H3BO3)、メタホウ酸、四ホウ酸等のホウ酸;ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル等のホウ酸エステル;前記ホウ酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、ホウ砂等のホウ酸塩等が挙げられる。中でもオルトホウ酸が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)以外の熱可塑性樹脂をさらに含有してもよい。EVOH(A)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば各種ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体、ポリオレフィンと無水マレイン酸との共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、又はこれらを不飽和カルボン酸もしくはその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィン等)、各種ポリアミド(ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6/66共重合体、ナイロン11、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド等)、各種ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリレート及び変性ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。本発明の樹脂組成物中の前記熱可塑性樹脂の含有量は30質量%未満であり、20質量%未満が好ましく、10質量%未満がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下であってもよい。
<樹脂組成物>
本発明の第一の実施態様においては、該樹脂組成物10gを純水50mlに入れ、95℃で8時間抽出して得られる抽出液の20℃におけるpHが4.0〜5.5であることが好ましい。該pHが上記範囲であることで、樹脂組成物の色相及び溶融成形性、並びに得られる多層パイプの層間剥離の抑制を高いレベルで両立させることができる。該pHは上記したカリウム塩(B)、カリウム以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、カルボン酸、リン酸化合物等の種類と量により制御することができる。
本発明の第二の実施態様においては、樹脂組成物は、YI(イエローインデックス)が24未満であり、かつ、樹脂組成物からなる層を有する多層フィルムについて、後述する実施例に記載の評価条件で測定される層間接着強度が450g/15mm以上である。これにより、得られる多層パイプは外観と層間剥離の抑制に優れ、特に、EVOH層を最外層として有する多層パイプに好ましく使用することができる。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、第一の実施態様においては最終的に、EVOH(A)、カリウム塩(B)及び酸化防止剤(C)が上述の範囲で含有されている限り何ら制限はないが、後述する本発明の製造方法によって製造することが好ましい。
本発明の第一の実施態様において、樹脂組成物にカリウム塩(B)を含有させる方法は特に限定されないが、例えば、カリウム塩(B)が溶解している溶液にEVOH(A)を含む含水ペレットを浸漬する方法が好ましい。その際、該EVOH(A)の形状は、粉末、粒状、球状、円柱形ペレット状等の任意の形状であってよい。上記溶液中のカリウム塩(B)の濃度は、特に限定されるものではない。また溶液の溶媒は特に限定されないが、取扱い上の容易さ及び環境への影響等から水溶液が好ましい。浸漬時間はEVOH(A)の形態によって異なるが、1〜10mm程度のペレットの場合には1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。上記のように溶液に浸漬して処理した場合、最後に乾燥を行うことで、揮発分0.3%未満の樹脂組成物が得られる。一方、本発明の樹脂組成物に酸化防止剤(C)を含有させる方法も特に限定されないが、例えば、EVOH(A)を溶融して酸化防止剤(C)を混合する方法が好ましい。酸化防止剤(C)は粉末等固体状態のまま、又は溶融物として配合してもよく、溶液に含まれる溶質又は分散液に含まれる分散質として配合してもよい。溶液及び分散液としては、それぞれ水溶液及び水分散液が好適である。溶融混練は、例えばニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の既知の混合装置又は混練装置を用いることができる。溶融混練時の温度範囲は、使用するEVOH(A)の融点等に応じて適宜調節でき、通常、150〜300℃が採用される。共役ポリエン化合物(D)、アルカリ土類金属イオン、カルボン酸、リン酸化合物、ホウ素化合物等の他の成分も上記いずれかの方法にて含有させることができる。
本発明の樹脂組成物は、例えば上述したEVOH(A)の造粒工程で得られたEVOHの含水ペレットを乾燥することで得られる。本発明の樹脂組成物の揮発分は、0.5質量%未満が好ましく、0.3質量%未満がさらに好ましい。含水ペレットの乾燥方法としては、例えば静置乾燥や流動乾燥が挙げられる。これらの乾燥方法は単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。乾燥処理は連続式、バッチ式いずれの方法で行っても良い。複数の乾燥方法を組み合わせて行う場合は、各乾燥方法について連続式、バッチ式を自由に選択できる。乾燥中の酸素によるペレットの劣化を低減できる観点から、乾燥を低酸素濃度あるいは無酸素状態で行うことも好ましい。乾燥温度は通常、150℃未満である。
<成形体>
本発明の樹脂組成物は種々の溶融成形方法により、多様な成形体に加工できる。こうして得られる成形体も本発明の一態様である。本発明の成形体としては、例えば単層構造の成形体や、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する多層成形体が挙げられる。成形方法としては、例えば押出成形、熱成形、異形成形、中空成形、回転成形、射出成形が挙げられる。本発明の成形体の用途は、例えばフィルム、シート、容器、ボトル、タンク、パイプ、ホース等が好適なものとして挙げられる。特に、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する多層パイプが本発明の好適な実施態様である。
本発明の樹脂組成物から得られる成形体の好適な態様は、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する多層成形体である。前記多層構造体が、さらにEVOH(A)以外の他の熱可塑性樹脂から得られる層を含むことが好ましい。また、前記多層構造体が、さらに接着性樹脂から得られる層を含むことも好ましい。前記多層成形体の層構造としては、特に限定されないが、本発明の樹脂組成物から得られる層をE、接着性樹脂から得られる層をAd、他の熱可塑性樹脂から得られる層をTで表わした場合、以下の層構成が例示できる。ここで、接着性樹脂としては不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィンが好適に用いられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、中でもポリエチレンが好適であり、特に高密度ポリエチレンが好適である。またこのような多層成形体において、他の熱可塑性樹脂及び/又は接着性樹脂は、多層成形体のスクラップで代用することもできる。また他のポリオレフィン成形体のスクラップを混合して使用することもできる。
2層 Ad/E
3層 T/Ad/E、Ad/E/Ad、E/Ad/E
4層 T/Ad/E/Ad、Ad/E/Ad/E
5層 E/Ad/T/Ad/E、T/Ad/E/Ad/T、Ad/E/Ad/E/Ad、T/Ad/E/Ad/E
6層 T/Ad/E/Ad/E/Ad
7層 T/Ad/E/Ad/E/Ad/T
この多層成形体を製造する方法としては、特に限定されない。例えば、本発明の樹脂組成物から得られる成形体に他の熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、本発明の樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、本発明の樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共射出する方法、本発明の樹脂組成物からなる成形体と他の基材のフィルム又はシートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられる。
<多層パイプ>
本発明の多層パイプは、上記樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する。本発明の多層パイプは、上記樹脂組成物が主としてEVOH(A)から構成されているため、ガスバリア性に優れており、また、酸化防止剤(C)を含む、第一の実施態様では高温下でのEVOH(A)の酸化劣化が抑制されているため、高温で長期間使用された場合でも、上記樹脂組成物からなる層に酸化劣化による物性低下が発生しにくい。このような特性を活かして、本発明の多層パイプは温水循環用パイプ及び地域冷暖房用の断熱多層パイプとして好適に使用される。
多層パイプの層構成としては、上記多層成形体の層構成を採用することができる。多層パイプが温水循環用パイプとして用いられる場合には、上記樹脂組成物からなる層を最外層とするT/Ad/Eの3層構成が一般的に採用される。このような層構成の多層パイプは、既存の架橋ポリオレフィン等単層パイプの製造ラインに、本発明の樹脂組成物と接着性樹脂の共押出コーティング設備を付加することにより製造することができる。
本発明の樹脂組成物からなる層の両側にポリオレフィン層等を設けて、該樹脂組成物層を中間層として使用することは、該樹脂組成物層の傷付き防止等に有効である。一方、多層パイプを温水循環用パイプとして用いる場合には、通常床下に埋設されるため、物理的な衝撃による本発明の樹脂組成物からなる層の傷付き等のリスクは比較的小さいため、ガスバリア性を重視する観点からは、該樹脂組成物層を最外層に配することが望ましい。EVOH(A)のガスバリア性は湿度依存性を示し、高湿度条件下ではバリア性が低下する。そのため、主としてEVOH(A)から構成される本発明の樹脂組成物からなる層を最外層とすることで、当該樹脂組成物層が、水と接触するパイプ内表面より最も離れた位置に配置され、ガスバリア性能がさらに向上する。一方で、一般的にEVOH(A)層を最外層に配する場合、空気と直接接触するため、酸化劣化の影響を受けやすい。このような環境下において、高温下でも酸化劣化しにくい本発明の樹脂組成物からなる層を最外層に配することにより、樹脂組成物が溶融押出された後に急冷を受けた場合でも、得られる多層パイプの層間剥離が抑制され、また良好なガスバリア性を有しつつ酸化劣化による機械物性の低減を抑制した多層パイプが提供できるという本発明の効果がより有効に発揮される。
<成形体及び多層パイプの製造方法>
以下、多層パイプの製造方法について説明するが、この製造方法の一部又は全部は他の成形体(フィルム、シート等)にも適用することができる。
本発明の多層パイプの製造方法は特に限定されないが、(1)架橋ポリオレフィン等の単層パイプの上に本発明の樹脂組成物と接着性樹脂を共押出コーティングすることにより製造する方法、(2)樹脂層の種類に対応する数の押出機を使用し、この押出機内で溶融された樹脂の流れを重ねあわせた層状態で同時押出成形する、いわゆる共押出成形により実施する方法等が挙げられる。(1)の場合、単純に単層パイプ上に本発明の樹脂組成物と接着性樹脂の溶融したフィルムをコートすることができるが、パイプとコート層の間の接着力が不十分な場合がある。その対策として、コート前にコートするパイプの表面をフレーム処理及び/又はコロナ放電処理することで、長期間使用する際にコート層の剥離に起因するガスバリア性の低下を抑制できる。
多層パイプの製造方法は、成形直後に10〜50℃の水又は空気で冷却を行う工程を含むことが好ましい。すなわち、溶融成形後、本発明の樹脂組成物からなる層が固化する前に10〜50℃の水又は空気で冷却することにより、該樹脂組成物層を固化させることが望ましい。水又は空気の温度が低すぎると、続く二次加工工程において多層パイプを屈曲させる場合に、屈曲部の本発明の樹脂組成物からなる層に歪みによるクラックが生じやすい。歪みによるクラックが生じやすくなる原因の詳細は明らかでないが、成形物中の残留応力が影響しているものと推測される。この観点から、水又は空気の温度は15℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。一方、水又は空気の温度が高すぎる場合、二次加工の際に屈曲部の本発明の樹脂組成物からなる層に歪みによるクラックを生じやすい。この原因の詳細も十分に解明されていないが、本発明の樹脂組成物からなる層の結晶化度が高くなりすぎるためと推定される。上記の観点から、水又は空気の温度は40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。本発明の樹脂組成物は、多層パイプの製造工程において、樹脂組成物が溶融押出された後に急冷を受けた場合にも、層間接着性が低下しにくく、得られる多層パイプの層間剥離が抑制されるため、該冷却工程への適用性が特に高い。こうして得られた多層パイプを二次加工することにより、各種形状の多層パイプを得ることができる。二次加工法としては、公知の二次加工法を適宜用いることができるが、例えば多層パイプを80〜160℃に加熱した後、所望の形に変形させた状態で、1分〜2時間固定することにより加工する方法が挙げられる。
本発明の多層パイプは、製造工程において、EVOH樹脂組成物が溶融押出された後に急冷を受けた場合でも、層間剥離が抑制され、また、優れた外観特性と熱安定性を有しているため、特に樹脂組成物層を最外層として有する多層パイプに好ましく使用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。なお、本実施例における各分析及び評価は以下の方法で行った。
(1)EVOHのエチレン単位含有量及びけん化度
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)、添加剤としてトリフルオロ酢酸(TFA)を含む重ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)に溶解し、500MHzのH−NMR(日本電子株式会社 「GX−500」)を用いて80℃で測定し、エチレン単位、ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位のピーク強度比よりエチレン単位含有量及びけん化度を求めた。
(2)金属イオン、リン酸化合物、及びホウ素化合物の含有量
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の0.5gをテフロン(登録商標)製圧力容器に入れ、ここに濃硝酸5mLを加えて室温で30分間分解させた。分解後に、前記容器に蓋をしてから、湿式分解装置により150℃で10分間、次いで180℃で5分間加熱することでさらに分解を行い、その後室温まで冷却した。この処理液を50mLのメスフラスコに移し純水でメスアップした。この溶液をPerkinElmer社製ICP発光分光分析装置「Avio500」により測定することで、樹脂組成物中の金属イオンの含有量を定量した。なお、リン酸化合物やホウ素化合物の含有量も同様の方法で定量することができる。
(3)熱水抽出液のpH
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物10gと純水50mLを共栓付き100mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付け、95℃で8時間撹拌した。得られた抽出液を20℃まで冷却した後、pHを測定した。
(4)カルボン酸の含有量
(3)で得られた抽出液に対して、フェノールフタレインを指示薬として、0.02モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定することにより、カルボン酸の含有量を定量した。
(5)黄色度(YI)
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の黄色度(YI)を、分光測色計(HunterLab社製LabScan XE Sensor)を用いて測定し、以下の基準で判定を行った。なお、YI値は対象物の黄色みを表す指標であり、YI値が高いほど黄色度が強く、一方、YI値が低いほど黄色度が弱く、着色が少ないことを表す。
判定:基準
A:18未満
B:18以上21未満
C:21以上24未満
D:24以上27未満
E:27以上
(6)層間接着性
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物、直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製「ノバテックLL−UF943」、以下LLDPEと略記する)及び接着性樹脂(デュポン社製「バイネルCXA417E10」を上記LLDPEで7質量%に希釈したもの、以下Adと略記する)を用い、3種5層の多層フィルム(LLDPE/Ad/樹脂組成物/Ad/LLDPE=50μm/10μm/10μm/10μm/50μm)を製膜した。押出機及び押出条件、使用したダイは下記の通りとした。
押出機:
樹脂組成物:単軸押出機(東洋精機製作所製ME型CO−EXT)
口径20mmφ、L/D20、フルフライトスクリュー
供給部/圧縮部/計量部/ダイ=175/210/220/220℃
LLDPE:単軸押出機(プラスチック工学研究所製GT−32−A)
口径32mmφ、L/D28、フルフライトスクリュー
供給部/圧縮部/計量部/ダイ=150/200/210/220℃
Ad: 単軸押出機(テクノベル製SZW20GT−20MG−STD)
口径20mmφ、L/D20、フルフライトスクリュー
供給部/圧縮部/計量部/ダイ=150/200/220/220℃
ダイ:300mm幅3種5層用コートハンガーダイ(プラスチック工学研究所製)
フィルム引取速度:4m/分
なお、ダイから吐出された多層フィルムの冷却は、以下の2通りの方法でそれぞれ行った。
徐冷:ダイから吐出された多層フィルムを70℃の冷却ロールに接触させて冷却した。
急冷:ダイから吐出された直後の多層フィルムに、1cm離れた位置から20℃の圧縮空気(0.3MPa)を吹き付けて冷却後、70℃の冷却ロールに接触させて冷却した。
それぞれの条件について、製膜開始後15分を経過したときに得られた多層フィルムを、23℃、50%RHにて調湿した後、押出方向に沿って長さ150mm、幅15mmの試料を切り取り、株式会社島津製作所製オートグラフDCS−50M型引張試験機にて、23℃、50%RHの雰囲気下、引張速度250mm/分にてT型剥離モードで剥離したときの剥離強度を測定し、以下の基準で判定を行った。
判定:基準
A:550g/15mm以上
B:500g/15mm以上550g/15mm未満
C:450g/15mm以上500g/15mm未満
D:400g/15mm以上450g/15mm未満
E:400g/15mm未満
(7)熱安定性
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を用い、単軸押出機(東洋精機製作所社製「D2020」、口径20mmφ、L/D20)を用いて、以下の条件で厚み100μmの単層フィルムを得た。
スクリュー径:20mmφ(L/D=20、圧縮比=3.5、フルフライト型)
スクリュー回転数:100rpm
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=180/220/220/250℃
ダイ:300mm幅コートハンガーダイ
引取りロール温度:80℃
引取り速度:約1.5m/分(厚みを100μmとするために適宜調整)
得られた単層フィルムを、大気下において150℃の温度で所定時間加熱処理した後、23℃、50%RHにて調湿し、押出方向に沿って長さ150mm、幅15mmの試料を切り取り、株式会社島津製作所製オートグラフDCS−50M型引張試験機にて、23℃、50%RHの雰囲気下、引張速度250mm/分にて引張伸度を測定した。加熱処理時間を変えたこと以外は同様にして複数のサンプルを測定した。また、加熱処理を行わなかったサンプルについても測定した。各測定結果から引張伸度の経時変化を評価し、引張伸度が加熱処理を行わなかったサンプルの1/4になる時間を求め、熱安定性を以下の基準で評価した。
判定:基準
A:180時間以上
B:150時間以上180時間未満
C:120時間以上150時間未満
D:90時間以上120時間未満
E:90時間未満
[実施例1]
エチレン含有量32モル%、けん化度99.95モル%、融点182℃、揮発分110質量%の含水EVOHペレットを酢酸カリウム、酢酸及びリン酸を含有する水溶液に25℃で6時間浸漬し攪拌した。なお、浸漬処理における水溶液の酢酸カリウム、酢酸及びリン酸の濃度は、得られる樹脂組成物中の含有量がそれぞれ表1の通りとなるように調整した。浸漬処理後、水溶液と含水ペレットを遠心脱水することで分離して脱液した後、熱風乾燥機に入れて80℃で3時間、次いで110℃で35時間乾燥を行うことで揮発分0.3質量%以下とし、乾燥ペレットを得た。なお、含水EVOHペレット及び乾燥ペレットの揮発分は、ハロゲン水分率分析装置(メトラー・トレド社製「HX204」)を用い、乾燥温度180℃、乾燥時間20分、サンプル量10gの条件で重量測定法により測定した。
次に、該乾燥ペレットにアミド結合を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製「イルガノックス1098」、融点160℃、分子量637)及びソルビン酸(分子量112)を添加し、日本製鋼所製二軸押出機「TEX30α」(スクリュー径30mm)に供給し、スクリュー構成としてL(スクリュー長)/D(スクリュー径)=3である順ズラシニーディングディスクを有するスクリューを用いて、溶融温度220〜230℃、押出速度20kg/hrの条件で溶融混練を行い、ストランドを得た。得られたストランドを冷却槽で冷却固化した後に切断し、本発明の樹脂組成物を得た。なお、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及びソルビン酸の添加量は、得られる樹脂組成物中の含有量がそれぞれ表1の通りとなるように調整した。得られた樹脂組成物について上記の各種分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2〜17、比較例1〜5]
得られる樹脂組成物の組成が表1に記載の通りとなるように各原料の種類及び配合量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例14で得られた樹脂組成物は実施例1で得られた樹脂組成物と比べ、ガスバリア性が優れていたが、一方で着色耐性や熱安定性は低下した。また、実施例15で得られた樹脂組成物は実施例1で得られた樹脂組成物と比べ、着色耐性や熱安定性が優れていたが、一方ではガスバリア性は低下した。
Figure 2021181548
[実施例18]
高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックHD HE421、密度0.956g/cc、MFR0.14g/10分(温度190℃、荷重2160g))を1台目の押出機に、実施例1で得られた樹脂組成物を2台目の押出機に、更に接着性樹脂として三井化学株式会社製アドマーNF518を3台目の押出機に入れ、3種3層の円形ダイを用いて、外径20mmの多層パイプを押出成形し、直後に40℃に調整した冷却水槽を通して冷却して固化させた。多層パイプの層構成は樹脂組成物層が最外層であり、樹脂組成物層/接着性樹脂層/高密度ポリエチレン層=100μm/100μm/2000μmであった。得られた多層パイプは層間接着、ガスバリア性、外観及び熱安定性に優れ、温水循環用パイプとして好ましく使用することができた。

Claims (10)

  1. エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、カリウム塩(B)及び酸化防止剤(C)を含有する樹脂組成物であって、
    エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン含有量が15〜60モル%、けん化度が85モル%以上であり、
    カリウム塩(B)が、pKaが4〜6であるカルボン酸のカリウム塩であり、
    エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)に対するカリウム塩(B)の含有量がカリウム換算で200〜1000ppmであり、
    酸化防止剤(C)がエステル結合もしくはアミド結合を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤であり、
    エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100質量部に対する酸化防止剤(C)の含有量が0.1〜4質量部である樹脂組成物。
  2. カリウム塩(B)が酢酸カリウムである、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 樹脂組成物からなる層を有する多層フィルムについて、実施例に記載の評価条件で測定される層間接着強度が450g/15mm以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を含有する樹脂組成物であって、
    樹脂組成物からなる層を有する多層フィルムについて、実施例に記載の評価条件で測定される層間接着強度が450g/15mm以上である樹脂組成物。
  5. さらに共役ポリエン化合物(D)を含有し、
    エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100質量部に対する共役ポリエン化合物(D)の含有量が0.001〜0.15質量部である、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 樹脂組成物10gを純水50mlに入れ、95℃で8時間抽出して得られる抽出液の20℃におけるpHが4.0〜5.5である、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する成形体。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する多層パイプ。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物からなる層を最外層として有する多層パイプ。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する多層パイプの製造方法であって、
    多層パイプを構成する各層をダイから吐出した直後に、10〜50℃の水又は空気で冷却する工程を含む、多層パイプの製造方法。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023190814A1 (ja) * 2022-03-30 2023-10-05 三菱ケミカル株式会社 エチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物及びその製造方法、それを用いた溶融成形用材料、ぺレット、並びに多層構造体及びその製造方法

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