JP6653726B2 - 樹脂組成物、多層構造体、熱成形容器及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)、PO(B)、及び不飽和アルデヒド(C)を含有する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物に対し、前記不飽和アルデヒド(C)の含有量が0.01ppm以上100ppm以下である樹脂組成物である。ここで、「ppm」は、樹脂組成物全体中の該当成分の質量割合であり、1ppmは0.0001質量%である。前記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分として、ホウ素化合物、リン化合物、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸塩、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、熱安定剤、ハイドロタルサイト化合物等を含有してもよい。以下、各成分について説明する。
EVOH(A)は、エチレンとビニルエステルとの共重合体をけん化したエチレン−ビニルアルコール共重合体である。
本発明で用いられるポリオレフィン(B)は、たとえば、ポリエチレン(低密度、直鎖状低密度、中密度、高密度など);エチレンと1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン類またはアクリル酸エステルを共重合したエチレン系共重合体;ポリプロピレン;プロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン類を共重合したプロピレン系共重合体;ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、上述のポリエチレン、エチレン系共重合体、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体、ポリ(1−ブテン)またはポリ(4−メチル−1−ペンテン)に無水マレイン酸を作用させた変性ポリオレフィン;アイオノマー樹脂などを含んでいる。中でも、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体などのポリプロピレン系樹脂、またはポリエチレン、エチレン系共重合体などのポリエチレン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン(B)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。特に、本発明の樹脂組成物からなる層を有する多層構造体を食品包装材として用いる場合には、二次加工性に優れる観点から、ポリエチレン系樹脂が好ましく用いられる。
前記樹脂組成物は、不飽和アルデヒド(C)を必須として含有する。不飽和アルデヒド(C)を含む樹脂組成物は、溶融成形によるゲル状ブツ、ストリーク等の欠陥の発生を抑制することができ、外観性に優れる。
アクロレイン、クロトンアルデヒド、メタクロレイン、2−メチルブテナール、2−ヘキセナール、2,6−ノナジエナール、2,4−ヘキサジエナール、2,4,6−オクタトリエナール、5−メチル−2−ヘキセナール、シクロペンテニルアルデヒド、シクロヘキセニルアルデヒド等の分子内に炭素−炭素二重結合を有するアルデヒド;
プロピオルアルデヒド、2−ブチン−1−アール、2−ペンチン−1−アール等の炭素−炭素三重結合を有するアルデヒドなどの不飽和脂肪族アルデヒド;
シンナムアルデヒド、ジフェニルアクロレイン等の不飽和芳香族アルデヒドなどが挙げられる。
酸変性ポリオレフィンは、前記樹脂組成物に添加することにより、前記樹脂組成物中のEVOH(A)のミクロの領域での凝集を抑制する。
脂肪酸金属塩は、樹脂組成物に添加することにより外観性、機械的強度(耐衝撃性)に優れる多層構造体や熱成形容器を製造することができる。
前記樹脂組成物は、ホウ素化合物、リン化合物、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸塩、共役ポリオレフィン、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、ハイドロタルサイト化合物等を含有してもよい。前記樹脂組成物は、これらの成分を2種以上含有してもよい。上記これらの任意成分の合計含有量としては、樹脂組成物中の1質量%以下が好ましい。
ホウ素化合物は、溶融成形時のゲル化を抑制すると共に押出成形機等のトルク変動(加熱時の粘度変化)を抑制するものである。
オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等のホウ酸類;ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等のホウ酸エステル;
上記ホウ酸類のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、ホウ砂等のホウ酸塩;
水素化ホウ素類などが挙げられる。これらの中でも、ホウ酸類が好ましく、オルトホウ酸(以下、「ホウ酸」ともいう)がより好ましい。
リン化合物は、ストリーク、フィッシュアイ等の欠陥の発生及び着色を抑制すると共に、ロングラン性を向上させるものである。
前記記載の脂肪酸金属塩に加えて、脂肪族カルボン酸を添加してもよい。脂肪族カルボン酸としては、炭素数1〜26の飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、炭素数1〜12の飽和脂肪族カルボン酸がより好ましく、炭素数1〜9の飽和脂肪族カルボン酸がさらに好ましく、酢酸が特に好ましい。
前記記載の脂肪酸金属塩に加えて、脂肪族カルボン酸塩を添加してもよい。脂肪族カルボン酸塩としては、炭素数1〜9の飽和脂肪族カルボン酸塩が好ましく、酢酸塩がより好ましい。さらに前記脂肪族カルボン酸と脂肪族カルボン酸塩の両方を用いてもよく、酢酸及び酢酸塩の両方を用いることがより好ましく、酢酸及び酢酸ナトリウムを用いることがさらに好ましい。
共役ポリエン化合物は、溶融成形時の酸化劣化を抑制するものである。ここで、共役ポリエン化合物とは、炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる構造を有し炭素−炭素二重結合の数が2個以上である、いわゆる共役二重結合を有する化合物である。この共役ポリエン化合物は、共役二重結合を2個有する共役ジエン、3個有する共役トリエン、又はそれ以上の数を有する共役ポリエンであってもよい。また、共役二重結合が互いに共役せずに1分子中に複数組あってもよい。例えば、桐油のように共役トリエン構造が同一分子内に3個ある化合物も共役ポリエン化合物に含まれる。
イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩等の共役ジエン化合物;
1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール、フルベン、トロポン等の共役トリエン化合物;
シクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の共役ポリエン化合物などが挙げられる。共役ポリエン化合物(III)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤としては、たとえば、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、たとえば、エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オキトシキベンゾフェノン等が挙げられる。
可塑剤としては、たとえば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、たとえば、ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール(商品名:カーボワックス)等が挙げられる。
滑剤としては、たとえば、エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等が挙げられる。
着色剤(「顔料」とも言う)は、特に限定されないが、目的とする多層構造体の色に応じて各種有機系顔料や無機系顔料が採用される。有機系顔料としては、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料及びフタロシアニン系顔料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。無機系顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、カーボンブラック、鉛系顔料、カドミウム系顔料、コバルト系顔料、鉄系顔料、クロム系顔料、群青及び紺青等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。
充填剤としては、たとえば、グラスファイバー、バラストナイト、ケイ酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト等が挙げられる。
ハイドロタルサイトは、溶融成形時樹脂組成物中に存在するハロゲンイオンによるEVOHの劣化を抑制する。ハイドロタルサイトとしては、MxAly(OH)2x+3y−2z(R)z・aH2O(MはMg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Pb、Snからなる群より選ばれるすくなくとも1つの元素を表わし、RはCO3またはHPO4を表わし、x、y、zは正数であり、aは0または正数であり、2x+3y−2z>0である)で示される複塩であるハイドロタルサイトを好適なものとして挙げることができる。
これらのハイドロタルサイト中、MとしてはMg、CaまたはZnがより好ましく、これらの2つ以上の組み合わせがさらに好ましい。これらハイドロタルサイトの中でも特に好適なものとしては次のようなものが例示できる。
Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O
Mg8Al2(OH)20CO3・5H2O
Mg5Al2(OH)14CO3・4H2O
Mg10Al2(OH)22(CO3)2・4H2O
Mg6Al2(OH)16HPO4・4H2O
Ca6Al2(OH)16CO3・4H2O
Zn6Al2(OH)16CO3・4H2O
Mg3ZnAl2(OH)12CO3・2.7H2O
Mg6Zn2Al2(OH)20CO3・1.6H2O
Mg5Zn1.7Al3.3(OH)20(CO3)1.65・4.5H2O
前記樹脂組成物の製造方法としては、EVOH(A)、PO(B)、及び不飽和アルデヒド(C)を均一にブレンドできる方法であれば特に限定されない。
(1)エチレンとビニルエステルとを共重合させる工程、及び
(2)工程(1)により得られた共重合体をケン化する工程
を備える製造方法により得ることができる。
上記工程(1)において特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法、
上記工程(2)において特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法、
上記工程(2)により得られたEVOH(A)に特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法、
上記工程(2)により得られたEVOH(A)とポリオレフィン(B)とをブレンドする際に特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法、
これらの方法を併用する方法等が挙げられる。
本発明の多層構造体は、上記樹脂組成物を溶融成形して得られた層を少なくとも1層及び他の成分からなる層を有するものであれば、その層構成及び層の総数、層の厚みや比率、他の層に用いられる樹脂の種類、接着性樹脂の有無及びその種類等は特に限定されない。
多層構造体の各層間は接着性樹脂を介して積層されていてもよく、接着性樹脂層として使用される接着性樹脂としては、たとえば、上記の酸変性ポリオレフィンが好適である。
上記多層構造体を用いて成形品を成形する方法としては、たとえば、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。これらの成形は、通常、EVOH(A)の融点以下の温度範囲で行われる。これらの中で、真空圧空成形法が好ましい。真空圧空成形法は、多層構造体を加熱し、真空と圧空を併用して成形する方法である。前記成形品は、上述の多層構造体を用いて真空圧空成形法により形成されることで、容易かつ確実に製造することができ、その結果、外観性及び耐衝撃性により優れる。
メトラー・トレド社のハロゲン水分率分析装置「HR73」を用い、乾燥温度180℃、乾燥時間20分、サンプル量約10gの条件で、含水EVOHペレットの含水率を測定した。以下に示す含水EVOHの含水率は、EVOHの乾燥質量基準の質量%である。
核磁気共鳴装置(超伝導核磁気共鳴装置「Lambda500」、日本電子株式会社製)を用い、DMSO−d6を測定溶媒として、1H−NMRにより求めた。
50質量%の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)の水溶液200mgに、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)50mL、酢酸11.5mL及びイオン交換水8mLを加え、DNPH溶液を調製した。測定ペレット1gをこのDNPH溶液20mLに加え、35℃にて1時間攪拌し溶解させた。この溶液にアセトニトリルを加えて樹脂分を析出させ沈降させた後、濾過して得られた溶液を濃縮し、抽出サンプルを得た。この抽出サンプルを下記条件の高速液体クロマトグラフィーにて定量分析することで、不飽和アルデヒド(C)を定量した。なお、定量に際しては、それぞれの不飽和アルデヒド(C)をDNPH調製溶液と反応させて得た標品を用いて作成した検量線を使用した。
(測定条件)
カラム:TSKgel ODS−80Ts(東ソー製)
移動相:水/アセトニトリル=52:48(体積比)
検出器:PDA(360nm)
乾燥樹脂組成物ペレットを凍結粉砕により粉砕し、呼び寸法0.150mm(100メッシュ)のふるい(JIS規格Z8801−1〜3準拠)によって粗大粒子を除去して得た粉砕物10gをソックスレー抽出器に充填し、クロロホルム100mLを用いて48時間抽出処理した。この抽出液中の共役ポリエン化合物の量を高速液体クロマトグラフィーにて定量分析することで、共役ポリエン化合物の量を定量した。なお、定量に際しては、それぞれの共役ポリエン化合物の標品を用いて作成した検量線を使用した。
乾燥EVOHペレット、樹脂組成物または回収操作を行った樹脂組成物を凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕物を、呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS Z8801−1〜3準拠)で分けた。上記ふるいを通過した粉砕物粉末10gとイオン交換水50mLを共栓付き100mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付けて、95℃で10時間撹拌した。得られた溶液2mLを、イオン交換水8mLで希釈した。上記希釈した溶液を、横河電機株式会社製イオンクロマトグラフィー「ICS−1500」を用い、下記測定条件に従ってカルボン酸イオンの量を定量することで、脂肪族カルボン酸(及び脂肪族カルボン酸イオン)の量を算出した。なお、定量に際しては各カルボン酸を用いて作成した検量線を用いた。
カラム :IonPAC ICE−AS1(9φ×250mm、DIONEX社製、検出器 電気伝導度検出器)
溶離液 :1.0mmol/L オクタンスルホン酸水溶液
測定温度 :35℃
溶離液流速 :1mL/min.
分析量:50μL
乾燥EVOHペレット、樹脂組成物または回収操作を行った樹脂組成物0.5gをアクタック製のふっ素樹脂製耐圧容器に仕込み、和光純薬工業製の精密分析用硝酸5mLをさらに加えた。30分放置後、ラプチャーディスク付きキャップリップにて容器に蓋をし、アクタック社製マイクロウェーブ高速分解システム「スピードウェーブ MWS−2」にて150℃10分、次いで180℃10分処理し、樹脂を分解させた。樹脂の分解が完了できていない場合は、処理条件を適宜調節した。得られた分解物を10mLのイオン交換水で希釈し、すべての液を50mLのメスフラスコに移し取り、イオン交換水で定容し、分解物溶液を得た。
上記得られた分解物溶液を、パーキンエルマージャパン製ICP発光分光分析装置「Optima 4300 DV」を用い、以下に示す各観測波長で定量分析することで、金属イオン、リン酸化合物及びホウ素化合物の量を定量した。リン酸化合物の量は、リン元素を定量しリン元素換算質量として算出した。ホウ素化合物の含有量は、ホウ素元素換算質量として算出した。
Na :589.592nm
K :766.490nm
Mg :285.213nm
Ca :317.933nm
P :214.914nm
B :249.667nm
Si :251.611nm
Al :396.153nm
Zr :343.823nm
Ce :413.764nm
W :207.912nm
Mo :202.031nm
<合成例>
250Lの加圧反応槽を用いて以下の条件でエチレン−酢酸ビニル共重合体の重合を実施した。
酢酸ビニル83.0kg、
メタノール26.6kg、
2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(2.5g/Lメタノール溶液)の供給量 1119.5mL/hr
重合温度 60℃
重合槽エチレン圧力 3.6MPa
重合時間 5.0時間
得られた共重合体における酢酸ビニルの重合率は約40%であった。この共重合反応液にソルビン酸を添加した後、追出塔に供給し、塔下部からのメタノール蒸気の導入により未反応酢酸ビニルを塔頂より除去して、エチレン−酢酸ビニル共重合体の41%メタノール溶液を得た。このエチレン−酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量は32mol%であった。このエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液をケン化反応器に仕込み、苛性ソーダ/メタノール溶液(80g/L)を、共重合体中のビニルエステル成分に対して0.4当量となるように添加し、メタノールを加えて共重合体濃度が20%になるように調整した。この溶液を60℃に昇温し、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約4時間反応させた。この溶液を円形の開口部を有する金板から水中に押し出して析出させ、切断することで直径約3mm、長さ約5mmのペレットを得た。得られたペレットを遠心分離機で脱液し、さらに大量の水を加え脱液する操作を繰り返した。
上記脱液したペレット20kgを、180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒に入れ、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液に不飽和アルデヒド(C)を添加し、さらに1時間攪拌して不飽和アルデヒド(C)を完全に溶解させ、EVOH溶液を得た。この溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させた。このストランドをペレタイザーに導入して多孔質のEVOH樹脂組成物チップを得た。得られた多孔質のEVOH樹脂組成物チップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄を行った。この洗浄液とEVOH樹脂組成物チップを分離して脱液した後、熱風乾燥機に入れて80℃で4時間乾燥を行い、さらに100℃で16時間乾燥を行って、ペレットを得た。得られたEVOH樹脂組成物(A)中の各成分の含有量を上記の方法により定量した。
<実施例1>
EVOH樹脂組成物(A)5.5部、ポリオレフィン(B)としてポリエチレン87部(株式会社プライムポリマー製 HZ8200B。以下HDPEと称する。)、酸変性ポリオレフィン(D)(三井化学株式会社製 アドマーGT−6A。以下ADと称する。)7.5部、脂肪酸金属塩0.15部を混合し、必要に応じて不飽和アルデヒド(C)を添加して混合物を得た。
下記に示すペレタイズ条件にて、上記混合物を溶融混練し表1に示す組成を持つ樹脂組成物(以下樹脂組成物(E)と称する。)をそれぞれ20kg得た。得られた樹脂組成物を再度溶融混練し、混練機から取り出す操作を繰り返し、溶融混練の回数(以下、回収回数と称する。)が5回、10回の樹脂組成物(E)もそれぞれ20kg得た。なお、樹脂組成物(E)の溶融混練温度は通常のEVOHの混練温度条件が150℃から250℃程度であることに対して、通常より高温側の250℃で実施した。不飽和アルデヒド(C)の含有量は、上記の方法により定量した。また、脂肪酸金属塩は、混合物を調整する際の質量を持って含有量とした。
(ペレタイズ条件)
押出機:株式会社東洋精機製作所製二軸押出機「ラボプラストミル」
スクリュー径:25mmφ
スクリュー回転数:100rpm
フィーダー回転数:100rpm
シリンダー、ダイ温度設定:C1/C2/C3/C4/C5/D
=180℃/230℃/250℃/250℃/250℃/250℃
表1に記載の混合物を作成し、実施例1と同様に樹脂組成物を作成した。
共押出成形装置を用い、上記EVOH樹脂組成物(A)、ポリオレフィン(B)(ポリエチレン)、カルボン酸変性ポリオレフィン(D)(三井化学アドマー社の「QF−500」)、及び樹脂組成物(E)を別々の押出機に仕込み、全層厚みが1000μmの4種6層となる多層シート(層構成:ポリオレフィン(B)層300μm/カルボン酸変性ポリオレフィン(D)50μm/EVOH(A)層50μm/カルボン酸変性ポリオレフィン(D)50μm/樹脂組成物(E)層400μm/ポリオレフィン(B)層150μm)を作製した。
<各押出機及び押出条件>
EVOH樹脂組成物(A)の押出機:単軸スクリュー、直径40mm、L/D=26、温度170℃〜210℃
ポリオレフィン(B)の押出機:単軸、スクリュー直径40mm、L/D=22、温度160℃〜210℃
樹脂組成物(E)の押出機:単軸スクリュー、直径65mm、L/D=22、温度200℃〜240℃
カルボン酸変性ポリオレフィン(D)の押出機:単軸スクリュー、直径40mm、L/D=26、温度160℃〜220℃ )
<共押出シート成形装置の成形条件>
フィードブロック型ダイ(巾600mm)、温度255℃
共押出成形装置にて得られた多層シート(共押出成形装置の立ち上げから30分後、24時間後を採取)を15cm角に裁断し、浅野製作所社のバッチ式熱成形試験機にてシート温度150℃の条件で、カップ状(金型形状70φ×70mm、絞り比S=1.0)に熱成形(圧空:5kg/cm2、プラグ:45φ×65mm、シンタックスフォーム、プラグ温度:150℃、金型温度:70℃)することで熱成形容器を作製した。
<実施例1〜5、比較例1及び2>
上記EVOH樹脂組成物(A)、ポリエチレン樹脂(株式会社プライムポリマー製 HZ8200B)、接着性樹脂(三井化学株式会社製 アドマーGT−6A)、及び上記樹脂組成物(E)を用い、鈴木製工所製ブロー成形機TB−ST−6Pにて210℃、金型内温度15℃で20秒間冷却して、全層厚み700μm((内側)ポリオレフィン(B)層240μm/接着性樹脂(D)層40μm/EVOH(A)層40μm/接着性樹脂(D)層40μm/樹脂組成物(E)層100μm/ポリオレフィン(B)層240μm(外側))の4種6層となる3Lのブロー成形容器を成形した。この容器の底面直径は100mm、高さは400mmであった。ここで、樹脂組成物(E)は、回収回数1回、5回、10回の樹脂組成物をそれぞれ樹脂組成物(E)として使用した。
<外観評価>
回収回数が10回目の樹脂組成物を樹脂組成物(E)層に使用してブロー成形した3L容器について、目視にてスジ及び着色を下記基準にて評価し、外観性の評価とした。
「良好(A)」:スジは認められなかった。
「やや良好(B)」:スジが確認された。
「不良(C)」:多数のスジが確認された。
「良好(A)」:無色
「やや良好(B)」:黄変
「不良(C)」:激しく黄変
回収回数1、5、10回の樹脂組成物を樹脂組成物(E)層に使用してブロー成形した3L容器に、プロピレングリコールを2.5L充填し、開口部をポリエチレン40μm/アルミ箔12μm/ポリエチレンテレフタレート12μm構成のフィルムで熱シールして蓋をした。このタンクを−40℃で3日間冷却し、開口部が上になるように6mの高さから落下させ、破壊した個数で評価した(n=10)。
(耐衝撃性の評価基準)
「良好(A)」:3個未満
「やや良好(B)」:3個〜6個未満
「不良(C)」:6個以上
ブロー成形容器を該容器側面と直角の方向にミクロトームで丁寧に切断し、さらにメスを用いて樹脂組成物層を取り出した。露出した断面に減圧雰囲気下で白金を蒸着した。白金が蒸着された断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて10000倍に拡大して写真撮影した。この写真中のEVOHの粒子20個程度を含む領域を選択し、該領域中に存在する各々の粒子像の粒径を測定し、その平均値を算出して、これを分散粒子径とした。なお、各々の粒子の粒径については、写真中に観察される粒子の長径(最も長い部分)を測定し、これを粒径とした。なお、上記フィルムまたはシートの切断は押出方向に垂直に行い、切断面に対して、垂直方向からの写真撮影を行った。
(平均分散粒子径の評価基準)
「良好(A)」:1.5μm未満
「やや良好(B)」:2.5μm未満
「不良(C)」:2.5μm以上
Claims (9)
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、ポリオレフィン(B)、及び不飽和アルデヒド(C)を含有し、前記不飽和アルデヒド(C)がクロトンアルデヒドであり、前記クロトンアルデヒドの含有量が0.1ppm以上3ppm以下であり、
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の平均分散粒子径が2.5μm未満であり、
脂肪酸の亜鉛塩をさらに含有する樹脂組成物。 - 前記脂肪酸の亜鉛塩の含有量が50ppm以上4,000ppm以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 酸変性ポリオレフィンをさらに含有する、請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる層及び他の成分からなる層を有する多層構造体。
- 他の成分からなる層が、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)からなる層及びポリオレフィン(B)からなる層である、請求項4に記載の多層構造体。
- 請求項4または請求項5に記載の多層構造体からなる熱成形容器。
- ブロー成形体である請求項6に記載の熱成形容器。
- 請求項4または5に記載の多層構造体を熱成形する工程を含む熱成形容器の製造方法。
- 前記熱成形がブロー成形法である請求項8に記載の熱成形容器の製造方法。
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