JP6653726B2 - 樹脂組成物、多層構造体、熱成形容器及びその製造方法 - Google Patents

樹脂組成物、多層構造体、熱成形容器及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリオレフィン及び不飽和アルデヒドを含有する樹脂組成物、この樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する多層構造体、及び多層構造体からなる熱成形容器とその製造方法に関する。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」と略すことがある)は、溶融成形が可能でガスバリア性に優れる材料として広く用いられている。例えば、EVOHは、溶融成形により形成されるフィルムやシートの材料として用いられる。このシート等からなるEVOH層は、ポリオレフィン系樹脂等を主成分とする熱可塑性樹脂層と積層されることで包装材として用いられている。このようなEVOH層を含む包装材は、熱成形することで包装容器として利用される。かかる包装容器は、EVOH層を含むことで酸素バリア性に優れるため、酸素バリア性が要求される用途、例えば食品、化粧品、医化学薬品、トイレタリー等の種々の分野で広く使用されている。このとき、上記各種成形品を得る際に発生する端部や不良品等を回収し、溶融成形してポリオレフィン層とEVOH層を含む多層構造体の少なくとも1層として再使用する場合がある。このような回収技術は、廃棄物削減や経済性の点で有用であり、広く採用されている。
しかしながら、ポリオレフィン層とEVOH層を含む多層構造体の回収物を再使用する際には、溶融成形時の熱劣化によりゲル化を起こしたり、劣化物が押出機内に付着したりして、長期間の連続溶融成形を行うことが困難であった。また、このような劣化物が押出機内に付着すると、得られる成形品において、凹凸が発生するという問題があった。さらに、多層構造体の回収物の再使用を繰り返すにつれ、これらの問題が顕著になった。
このような問題を解決する方策として、たとえば、特許文献1には、ポリオレフィン;エチレン含有率が20〜65モル%で酢酸ビニル成分のけん化度が96モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物;炭素数8〜22の高級脂肪酸金属塩、エチレンジアミン四酢酸金属塩及びハイドロタルサイトから選ばれる少なくとも1種の化合物;並びにエチレン含有率が68〜98モル%で酢酸ビニル成分のけん化度が20%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物;からなる樹脂組成物が記載されている。さらに、炭素数8〜22の高級脂肪酸金属塩としては、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸などの高級脂肪酸と、カルシウム、マグネシウム、亜鉛との金属塩が好適であると記載されている。この樹脂組成物は優れた相容性を有しており、この樹脂組成物を用いて得られた成形物の表面には波模様の発生がなく、外観が美麗であるとされている。しかしながら、特許文献1の実施例に記載されているステアリン酸カルシウムを配合した樹脂組成物は、スクリューへの付着物を生じることがあり、得られる成形品において凹凸を生じることがあった。
特許文献2には、マグネシウム、カルシウム、亜鉛から選ばれる少なくとも1種を10〜500ppm含有し、エチレン含有量が10〜60モル%で酢酸ビニル成分のけん化度が95モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を中間層とし、少なくとも両最外層に熱可塑性樹脂を積層した積層体の粉砕物をリグラインド層(回収層)に用いることを特徴とする燃料容器の製造方法が記載されている。ここでは、リグラインド層に用いる積層体の中間層に、脂肪酸金属塩を配合したエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物が用いられている。脂肪酸金属塩としてはマグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩から選ばれる少なくとも1種が用いられている。また、脂肪酸としては、低級脂肪酸及び/又は高級脂肪酸が用いられている。この製造方法によれば、溶融成形性、機械的特性などに優れた燃料容器が得られるとされている。しかしながら、特許文献2の実施例に記載されたステアリン酸亜鉛の配合量では、積層体の溶融成形時に劣化物がスクリューに付着し、得られる成形品において、凹凸が生じる問題があった。
さらに、上記文献の技術では、回収物の再利用を複数回行った場合の成形不良や成形不良に伴う耐衝撃性の低下を抑制するという観点では未だ不十分である。
また、EVOHの製造法として、EVOHの重合工程において、エチレン及び酢酸ビニルに加えてクロトンアルデヒドを共存させる方法が知られている(特許文献3参照)。この製造法によれば、重合中にクロトンアルデヒドを共存させることで、重合缶内部のスケール付着を抑制することができる。その結果、この製造法により得られるEVOHのフィルムは、スケールの混入に起因するフィッシュアイの発生を減らすことができるとされている。
しかし、重合時に添加したクロトンアルデヒドは、重合工程及びけん化工程で部分的に消費される。また、クロトンアルデヒドは、水への溶解度が18.1g/100g(20℃)(The MERCK INDEX 14th 2006)と高い。一方、EVOHの製造法は、通常、けん化後の中和により生成する酢酸ナトリウムを水洗浄する工程を含む。そのため、重合時に添加したクロトンアルデヒドは、EVOH製造時の水洗工程において略完全に除去され、EVOHフィルム等の製品中には残留し難い。従って、上記製造法は、熱成形における熱安定性や長時間運転特性(ロングラン性)の改善等の不飽和アルデヒドの添加効果は未知である。
以上のように、樹脂組成物の回収再利用を複数回繰り返した場合の外観不良の改善と、耐衝撃性の低下を抑制することは従来技術では困難であった。
特開平3−72542号公報 特開2001−348017号公報 特開2007−31725号公報
本発明は、熱成形における欠陥の発生が抑制され、かつ外観に優れると共に十分な強度を有する樹脂組成物及び熱成形容器を提供することを目的とする。さらに、本発明は、このような特性を有する熱成形容器を提供でき、かつロングラン性に優れる製造方法を提供することを目的とする。また、この樹脂組成物を含むシート端部やスクラップ等を繰り返し回収して得られる回収物を多層構造体中の層とした場合、回収物中のEVOHの熱劣化や凝集が起こらず、他の熱可塑性樹脂との相容性の悪化がなく、得られた多層容器の耐衝撃性の低下を抑制する。
上記課題を解決するためになされた発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)(以下、「EVOH(A)」ともいう)、ポリオレフィン(B)(以下、「PO(B)」ともいう)、及び不飽和アルデヒド(C)を含有し、前記不飽和アルデヒド(C)の含有量が0.01ppm以上100ppm以下である樹脂組成物である。
本発明の樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分を含有することで、熱成形装置を長時間運転しても装置内のコゲの発生を効果的に抑制することができ、連続運転時間を延長させることが可能となる。またこの樹脂組成物を含むシート端部やスクラップ等を繰り返し回収した場合でも耐衝撃性に優れた多層容器を提供する。前記樹脂組成物が上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、たとえば、EVOH(A)と、PO(B)と、不飽和アルデヒド(C)とを、上記特定含有量でそれぞれ含有させることで、これら各成分の含有効果が相乗的に発揮され、結果として、連続運転時間を延長させることが可能となる。
上記不飽和アルデヒド(C)としては不飽和脂肪族アルデヒドが好ましい。この不飽和脂肪族アルデヒドとしては、クロトンアルデヒド、2,4−ヘキサジエナール及び2,4,6−オクタトリエナールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。当該熱成形容器は、EVOH層(A)が不飽和アルデヒド(C)として特定の物質を含有することで、外観に優れかつ十分な強度を有する。さらに、不飽和アルデヒド(C)の下限未満では、長期連続運転時に得られた多層容器の耐衝撃性の低下が抑制できない。また、不飽和アルデヒド(C)の含有量が上限を超えると、不飽和アルデヒド(C)同士の縮合やEVOHと不飽和アルデヒド(C)同士の縮合物と反応し、増粘することによりEVOHが凝集し、結果として耐衝撃性が低下する原因となる。
前記樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィンをさらに含有していてもよい。酸変性ポリオレフィンを前記樹脂組成物に添加することにより、前記樹脂組成物中のEVOH(A)のミクロの領域での凝集を抑制する。
前記樹脂組成物は、脂肪酸金属塩をさらに含有していてもよい。脂肪酸金属塩を含有すると外観性、機械的強度(耐衝撃性)に優れる多層構造体や熱成形容器を製造することができるので好ましい。
前記多層構造体は、前記樹脂組成物からなる層及び他の成分からなる層を有する。前記樹脂組成物からなる層及び他の成分からなる層を有する多層構造体は、良好な外観性、耐衝撃性を有するので好ましい。
前記多層構造体は、他の成分からなる層が、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)からなる層及びポリオレフィン(B)からなる層であるのが好ましい。上述の特性を有する樹脂組成物から形成した層と、他の成分からなる層とを備えることで、外観性、耐衝撃性、加工特性、及び経済性に優れる。
本発明の熱成形容器は、前記多層構造体からなることが好ましい。前記熱成形容器は、ブロー成形体であることが好ましい。前記熱成形容器は、前記多層構造体を熱成形する工程により製造されることが好ましく、熱成形がブロー成形法であることが好ましい。前記多層構造体を熱成形、とくにブロー成形法により成形することで、外観性及び耐衝撃性に優れる。
以上説明したように、本発明の前記樹脂組成物は、EVOH(A)、PO(B)及び不飽和アルデヒド(C)を含有することで、熱成形における欠陥の発生が抑制され、かつ外観に優れると共に十分な強度を有する熱成形容器を提供する。さらに、本発明は、このような特性を有する熱成形容器を提供でき、かつロングラン性に優れる製造方法を提供する。またこの樹脂組成物を含むシート端部やスクラップ等を繰り返し回収した場合でも、回収物中のEVOHの熱劣化を抑制し、POとの相容性を維持・向上させることで外観性、機械的強度(耐衝撃性)に優れる多層構造体や熱成形容器を製造することができる。外観性、耐衝撃性及び加工特性に優れるため、前記樹脂組成物、多層構造体は、ボトル、カップ、トレー、燃料容器など各種熱成形容器や包装材料の成形材料として好適である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)、PO(B)、及び不飽和アルデヒド(C)を含有する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物に対し、前記不飽和アルデヒド(C)の含有量が0.01ppm以上100ppm以下である樹脂組成物である。ここで、「ppm」は、樹脂組成物全体中の該当成分の質量割合であり、1ppmは0.0001質量%である。前記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分として、ホウ素化合物、リン化合物、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸塩、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、熱安定剤、ハイドロタルサイト化合物等を含有してもよい。以下、各成分について説明する。
<EVOH(A)>
EVOH(A)は、エチレンとビニルエステルとの共重合体をけん化したエチレン−ビニルアルコール共重合体である。
上記ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられ、酢酸ビニルが好ましい。これらのビニルエステルは、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
EVOH(A)は、エチレン単位及びビニルエステル単位以外の単量体に由来する他の構造単位を含んでいてもよい。このような単量体としては、例えばビニルシラン系化合物、その他の重合性化合物が挙げられる。上記他の構造単位の含有量としては、EVOH(A)の全構造単位に対して、0.0002モル%以上0.2モル%以下が好ましい。
上記ビニルシラン系化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好ましい。
上記その他の重合性化合物としては、例えばプロピレン、ブチレン等の不飽和炭化水素; (メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸;N−ビニルピロリドン等のビニルピロリドンなどが挙げられる。
EVOH(A)のエチレン単位含有量としては、通常20モル%以上60モル%以下であり、24モル%以上55モル%以下が好ましく、27モル%以上45モル%以下がより好ましく、27モル%以上42モル%以下がさらに好ましく、27モル%以上38モル%以下が特に好ましい。エチレン含有量が20モル%未満であると、溶融押出時の熱安定性が低下してゲル化しやすくなり、ストリーク、フィッシュアイ等の欠陥が発生し易くなるおそれがある。特に、一般的な溶融押出時の条件よりも高温又は高速の条件下で長時間運転を行うとゲル化する可能性が高くなる。一方、エチレン含有量が60モル%を超えると、ガスバリア性等が低下し、EVOH(A)が有する有利な特性を十分に発揮できないおそれがある。
EVOH(A)のビニルエステルに由来する構造単位のけん化度としては、80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95モル%がより好ましく、98%以上がさらに好ましく、99%以上が特に好ましい。このけん化度が85%未満であると、熱安定性が不十分となるおそれがある。
<ポリオレフィン(PO)(B)>
本発明で用いられるポリオレフィン(B)は、たとえば、ポリエチレン(低密度、直鎖状低密度、中密度、高密度など);エチレンと1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン類またはアクリル酸エステルを共重合したエチレン系共重合体;ポリプロピレン;プロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン類を共重合したプロピレン系共重合体;ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、上述のポリエチレン、エチレン系共重合体、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体、ポリ(1−ブテン)またはポリ(4−メチル−1−ペンテン)に無水マレイン酸を作用させた変性ポリオレフィン;アイオノマー樹脂などを含んでいる。中でも、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体などのポリプロピレン系樹脂、またはポリエチレン、エチレン系共重合体などのポリエチレン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン(B)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。特に、本発明の樹脂組成物からなる層を有する多層構造体を食品包装材として用いる場合には、二次加工性に優れる観点から、ポリエチレン系樹脂が好ましく用いられる。
本発明中の樹脂組成物中のEVOH(A)とPO(B)の割合は、EVOH(A)0.1〜99.9質量%、PO(B)0.1〜99.9質量%の範囲が好ましく、EVOH(A)の含有量は多層容器における耐衝撃強度の観点から30質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
<不飽和アルデヒド(C)>
前記樹脂組成物は、不飽和アルデヒド(C)を必須として含有する。不飽和アルデヒド(C)を含む樹脂組成物は、溶融成形によるゲル状ブツ、ストリーク等の欠陥の発生を抑制することができ、外観性に優れる。
ここで、不飽和アルデヒド(C)とは、分子内に炭素−炭素二重結合もしくは三重結合を有するアルデヒドをいう。この不飽和アルデヒド(C)としては、例えば、
アクロレイン、クロトンアルデヒド、メタクロレイン、2−メチルブテナール、2−ヘキセナール、2,6−ノナジエナール、2,4−ヘキサジエナール、2,4,6−オクタトリエナール、5−メチル−2−ヘキセナール、シクロペンテニルアルデヒド、シクロヘキセニルアルデヒド等の分子内に炭素−炭素二重結合を有するアルデヒド;
プロピオルアルデヒド、2−ブチン−1−アール、2−ペンチン−1−アール等の炭素−炭素三重結合を有するアルデヒドなどの不飽和脂肪族アルデヒド;
シンナムアルデヒド、ジフェニルアクロレイン等の不飽和芳香族アルデヒドなどが挙げられる。
不飽和アルデヒド(C)としては、これらの中で、不飽和脂肪族アルデヒドが好ましく、分子内に炭素−炭素二重結合を有するアルデヒドがより好ましく、クロトンアルデヒド、2,4−ヘキサジエナール、2,4,6−オクタトリエナールがさらに好ましく、中でも水への溶解性が高く、沸点が100℃付近のクロトンアルデヒドは、例えば洗浄工程や乾燥工程で必要に応じて過剰分を除去または不足分を追加することが容易であるので、特に好ましい。不飽和アルデヒド(C)のアルデヒド部分を含めた炭素数としては、3〜10が好ましく、4〜8がより好ましく、4、6、8がさらに好ましい。
前記樹脂組成物中における不飽和アルデヒド(C)の含有量の下限としては、0.01ppmであり、0.05ppmが好ましく、0.1ppmがより好ましい。一方、不飽和アルデヒド(C)の含有量の上限としては、100ppmであり、50ppmが好ましい。不飽和アルデヒド(C)の含有量が上記下限未満だと、溶融成形において経時的なゲル状ブツの発生の増加を抑制することが不十分となる。一方、不飽和アルデヒド(C)の含有量が上記上限を超えると、溶融成形時に不飽和アルデヒド同士の縮合やEVOHと不飽和アルデヒド同士の縮合物との架橋が起こり、フィッシュアイやスジの発生を誘発するおそれがあり、さらに樹脂組成物からなる多層構造体が着色し易くなるおそれがある。
前記樹脂組成物は、特に、樹脂組成物を含むシート端部やスクラップ等を繰り返し回収した場合でも、EVOH(A)の熱劣化による増粘を抑制する優れた効果を発揮する。具体的には、不飽和アルデヒド(C)を添加することで、ポリオレフィン(B)との樹脂組成物において、繰り返し回収時のEVOHの分散性を改善し、その結果として得られる成形品の機械強度、すなわち耐衝撃性の低下を抑制する効果が得られる。
<酸変性ポリオレフィン>
酸変性ポリオレフィンは、前記樹脂組成物に添加することにより、前記樹脂組成物中のEVOH(A)のミクロの領域での凝集を抑制する。
前記酸変性ポリオレフィンは、たとえば、不飽和カルボン酸又はその誘導体を化学結合で導入したオレフィン系重合体を挙げることができ、具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン等の無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィン;無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィンとビニル系単量体の共重合体の無水マレイン酸グラフト変性物が挙げられる。これらのオレフィン系重合体は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸変性ポリオレフィンは、樹脂組成物に対して1質量%から20質量%の範囲が好ましく、3質量%から15質量%の範囲がより好ましく、5質量%から10質量%の範囲がさらに好ましい。
<脂肪酸金属塩>
脂肪酸金属塩は、樹脂組成物に添加することにより外観性、機械的強度(耐衝撃性)に優れる多層構造体や熱成形容器を製造することができる。
前記脂肪酸金属塩としては、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの炭素数10〜26の高級脂肪酸の金属塩、特に周期律表第1族、第2族または第3族の金属塩、たとえばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が挙げられる。また、上記した脂肪酸の亜鉛塩を用いることもできる。これらの中で、カルシウム塩、マグネシウム塩などの周期律表第2族の金属塩が好ましい。
脂肪酸金属塩は、樹脂組成物に対して50ppm以上10,000ppm以下が好ましく、100ppm以上8,000ppm以下がより好ましく、150ppm以上5,000ppm以下がさら好ましく、200ppm以上4,000ppm以下が特に好ましい。
<任意成分>
前記樹脂組成物は、ホウ素化合物、リン化合物、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸塩、共役ポリオレフィン、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、ハイドロタルサイト化合物等を含有してもよい。前記樹脂組成物は、これらの成分を2種以上含有してもよい。上記これらの任意成分の合計含有量としては、樹脂組成物中の1質量%以下が好ましい。
(ホウ素化合物)
ホウ素化合物は、溶融成形時のゲル化を抑制すると共に押出成形機等のトルク変動(加熱時の粘度変化)を抑制するものである。
上記ホウ素化合物としては、例えば
オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等のホウ酸類;ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等のホウ酸エステル;
上記ホウ酸類のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、ホウ砂等のホウ酸塩;
水素化ホウ素類などが挙げられる。これらの中でも、ホウ酸類が好ましく、オルトホウ酸(以下、「ホウ酸」ともいう)がより好ましい。
樹脂組成物中におけるホウ素化合物の含有量の下限としては、100ppmが好ましく、150ppmがより好ましい。ホウ素化合物の含有量の上限としては、5,000ppmが好ましく、4,000ppmがより好ましく、3,000ppmがさらに好ましい。ホウ素化合物の含有量が上記下限未満であると、押出成形機等のトルク変動を十分に抑制することができないおそれがある。一方、ホウ素化合物の含有量が上記上限を超えると、溶融成形時にゲル化を起こし易くなり多層構造体や熱成形容器の外観が悪化するおそれがある。
(リン化合物)
リン化合物は、ストリーク、フィッシュアイ等の欠陥の発生及び着色を抑制すると共に、ロングラン性を向上させるものである。
上記リン化合物としては、たとえば、リン酸、亜リン酸等の各種リン酸、リン酸塩等が挙げられる。上記リン酸塩としては、第1リン酸塩、第2リン酸塩及び第3リン酸塩のいずれの形でもよい。また、そのカチオン種も特に限定されない。リン酸塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましく、リン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウムがより好ましく、リン酸2水素ナトリウム、リン酸水素2カリウムがさらに好ましい。
(脂肪族カルボン酸)
前記記載の脂肪酸金属塩に加えて、脂肪族カルボン酸を添加してもよい。脂肪族カルボン酸としては、炭素数1〜26の飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、炭素数1〜12の飽和脂肪族カルボン酸がより好ましく、炭素数1〜9の飽和脂肪族カルボン酸がさらに好ましく、酢酸が特に好ましい。
脂肪族カルボン酸の含有量としては、50ppm以上10,000ppm以下が好ましく、100ppm以上8,000ppm以下がより好ましく、150ppm以上5,000ppm以下がさらに好ましく、200ppm以上4,000ppm以下が特に好ましい。脂肪族カルボン酸の含有量が50ppm未満であると、十分な着色防止の効果を得られないため、当該樹脂組成物から形成される成形品に黄変が見られる場合がある。当該樹脂組成物は、脂肪族カルボン酸の含有量が10,000ppmを超えると、溶融成形時、特に長時間に及ぶ溶融成形時にゲル化し易くなり、成形品の外観が不良となる場合がある。
(脂肪族カルボン酸塩)
前記記載の脂肪酸金属塩に加えて、脂肪族カルボン酸塩を添加してもよい。脂肪族カルボン酸塩としては、炭素数1〜9の飽和脂肪族カルボン酸塩が好ましく、酢酸塩がより好ましい。さらに前記脂肪族カルボン酸と脂肪族カルボン酸塩の両方を用いてもよく、酢酸及び酢酸塩の両方を用いることがより好ましく、酢酸及び酢酸ナトリウムを用いることがさらに好ましい。
脂肪族カルボン酸塩の含有量としては、50ppm以上10,000ppm以下が好ましく、100ppm以上8,000ppm以下がより好ましく、150ppm以上5,000ppm以下がさらに好ましく、200ppm以上4,000ppm以下が特に好ましい。脂肪族カルボン酸塩の含有量が50ppm未満であると、十分な着色防止の効果を得られないため、当該樹脂組成物から形成される成形品に黄変が見られる場合がある。当該樹脂組成物は、脂肪族カルボン酸塩の含有量が10,000ppmを超えると、溶融成形時、特に長時間に及ぶ溶融成形時にゲル化し易くなり、成形品の外観が不良となる場合がある。
(共役ポリエン化合物)
共役ポリエン化合物は、溶融成形時の酸化劣化を抑制するものである。ここで、共役ポリエン化合物とは、炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる構造を有し炭素−炭素二重結合の数が2個以上である、いわゆる共役二重結合を有する化合物である。この共役ポリエン化合物は、共役二重結合を2個有する共役ジエン、3個有する共役トリエン、又はそれ以上の数を有する共役ポリエンであってもよい。また、共役二重結合が互いに共役せずに1分子中に複数組あってもよい。例えば、桐油のように共役トリエン構造が同一分子内に3個ある化合物も共役ポリエン化合物に含まれる。
共役ポリエン化合物の共役二重結合の数としては、7個以下が好ましい。当該樹脂組成物は、共役二重結合を8個以上有する共役ポリエン化合物を含有すると、多層体ひいては熱成形容器の着色が起こる可能性が高くなる。
共役ポリエン化合物は、共役二重結合に加えて、カルボキシル基及びその塩、水酸基、エステル基、カルボニル基、エーテル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、ジアゾ基、ニトロ基、スルホン基及びその塩、スルホニル基、スルホキシド基、スルフィド基、チオール基、リン酸基及びその塩、フェニル基、ハロゲン原子、非共役二重結合、三重結合等のその他の官能基を有していてもよい。
共役ポリエン化合物としては、例えば
イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩等の共役ジエン化合物;
1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール、フルベン、トロポン等の共役トリエン化合物;
シクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の共役ポリエン化合物などが挙げられる。共役ポリエン化合物(III)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
共役ポリエン化合物の炭素数としては4〜30が好ましく、4〜10がより好ましい。例示した共役ジエン化合物のうち、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、ミルセン、これらのうちの2以上の混合物が好ましく、ソルビン酸、ソルビン酸塩、これらの混合物がより好ましい。ソルビン酸、ソルビン酸塩及びこれらの混合物は、高温での酸化劣化の抑制効果が高く、また食品添加剤としても広く工業的に使用されているため衛生性や入手性の観点からも好ましい。
上記共役ポリエン化合物の分子量は、通常1,000以下であり、500以下が好ましく、300以下がより好ましい。上記共役ポリエン化合物の分子量が1,000を超えると、樹脂組成物中への共役ポリエン化合物の分散状態が悪化し、溶融成形後の外観が悪化するおそれがある。
樹脂組成物における共役ポリエン化合物の含有量の下限としては、0.01ppmが好ましく、0.1ppmがより好ましく、0.5ppmがさらに好ましく、1ppmが特に好ましい。上記含有量の上限としては、1,000ppmが好ましく、800ppm以下がより好ましく、500ppm以下がさらに好ましい。共役ポリエン化合物の含有量が上記下限未満であると、溶融成形時の酸化劣化を抑制する効果を十分に得られないおそれがある。一方、共役ポリエン化合物の含有量が上記上限を超えると、樹脂組成物のゲル化を促進するおそれがある。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、たとえば、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、たとえば、エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オキトシキベンゾフェノン等が挙げられる。
(可塑剤)
可塑剤としては、たとえば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等が挙げられる。
(帯電防止剤)
帯電防止剤としては、たとえば、ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール(商品名:カーボワックス)等が挙げられる。
(滑剤)
滑剤としては、たとえば、エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等が挙げられる。
(着色剤)
着色剤(「顔料」とも言う)は、特に限定されないが、目的とする多層構造体の色に応じて各種有機系顔料や無機系顔料が採用される。有機系顔料としては、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料及びフタロシアニン系顔料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。無機系顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、カーボンブラック、鉛系顔料、カドミウム系顔料、コバルト系顔料、鉄系顔料、クロム系顔料、群青及び紺青等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。
(充填剤)
充填剤としては、たとえば、グラスファイバー、バラストナイト、ケイ酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト等が挙げられる。
(ハイドロタルサイト)
ハイドロタルサイトは、溶融成形時樹脂組成物中に存在するハロゲンイオンによるEVOHの劣化を抑制する。ハイドロタルサイトとしては、MAl(OH)2x+3y−2z(R)z・aHO(MはMg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Pb、Snからなる群より選ばれるすくなくとも1つの元素を表わし、RはCOまたはHPOを表わし、x、y、zは正数であり、aは0または正数であり、2x+3y−2z>0である)で示される複塩であるハイドロタルサイトを好適なものとして挙げることができる。
これらのハイドロタルサイト中、MとしてはMg、CaまたはZnがより好ましく、これらの2つ以上の組み合わせがさらに好ましい。これらハイドロタルサイトの中でも特に好適なものとしては次のようなものが例示できる。
MgAl(OH)16CO・4H
MgAl(OH)20CO・5H
MgAl(OH)14CO・4H
Mg10Al(OH)22(CO・4H
MgAl(OH)16HPO・4H
CaAl(OH)16CO・4H
ZnAl(OH)16CO・4H
MgZnAl(OH)12CO・2.7H
MgZnAl(OH)20CO・1.6H
MgZn1.7Al3.3(OH)20(CO1.65・4.5H
なお、前記樹脂組成物のゲル発生防止対策として、上記ハイドロタルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等の熱安定剤の1種又は2種以上を0.01質量%〜1質量%添加することができる。
[樹脂組成物の製造方法]
前記樹脂組成物の製造方法としては、EVOH(A)、PO(B)、及び不飽和アルデヒド(C)を均一にブレンドできる方法であれば特に限定されない。
不飽和アルデヒド(C)を樹脂分に対して上記特定の含有量で、樹脂組成物中に均一にブレンドさせる方法としては、例えば
(1)エチレンとビニルエステルとを共重合させる工程、及び
(2)工程(1)により得られた共重合体をケン化する工程
を備える製造方法により得ることができる。
樹脂組成物中に特定量の不飽和アルデヒド(C)を含有させる方法としては、特に限定されないが、例えば
上記工程(1)において特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法、
上記工程(2)において特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法、
上記工程(2)により得られたEVOH(A)に特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法、
上記工程(2)により得られたEVOH(A)とポリオレフィン(B)とをブレンドする際に特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法、
これらの方法を併用する方法等が挙げられる。
なお、上記工程(1)において特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法、又は上記工程(2)において特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法を採用する場合には、上記工程(1)における重合反応、上記工程(2)におけるケン化反応を阻害しない範囲で添加する必要がある。
これらの方法の中で、樹脂組成物中の不飽和アルデヒド(C)の含有量調節の容易性の観点からは、工程(2)により得られたEVOH(A)に特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法、工程(2)により得られたEVOH(A)とポリオレフィン(B)とをブレンドする際に特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法が好ましく、工程(2)により得られたEVOH(A)に特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法がより好ましい。
上記EVOH(A)に特定量の不飽和アルデヒド(C)を添加する方法としては、たとえば不飽和アルデヒド(C)を予めEVOH(A)に配合してペレットを造粒する方法、エチレン−ビニルエステル共重合体のケン化後にペーストを析出させる工程で析出させたストランドに不飽和アルデヒド(C)を含浸させる方法、析出させたストランドをカットした後に不飽和アルデヒド(C)を含浸させる方法、乾燥樹脂組成物のチップを再溶解したものに不飽和アルデヒド(C)を添加する方法、EVOH(A)及び不飽和アルデヒド(C)の2成分をブレンドしたものを溶融混練する方法、押出機の途中からEVOH(A)の溶融物に不飽和アルデヒド(C)をフィードし含有させる方法、EVOH(A)の一部に不飽和アルデヒド(C)を高濃度で配合して造粒したマスターバッチを作成しEVOH(A)とドライブレンドして溶融混練する方法等が挙げられる。
これらのうち、EVOH(A)中に微量の不飽和アルデヒド(C)をより均一に分散することができる観点からは、不飽和アルデヒド(C)を予めEVOH(A)に配合してペレットを造粒する方法が好ましい。具体的には、EVOH(A)を水/メタノール混合溶媒等の良溶媒に溶解させた溶液に、不飽和アルデヒド(C)を添加し、その混合溶液をノズル等から貧溶媒中に押出して析出及び/又は凝固させ、それを洗浄及び/又は乾燥することにより、EVOH(A)に不飽和アルデヒド(C)が均一に混合されたペレットを得ることができる。
前記樹脂組成物は、たとえば、EVOH(A)及び不飽和アルデヒド(C)を含有する樹脂組成物と、酸変性ポリオレフィン及び/又は脂肪酸金属塩を混合する方法により、たとえば、溶融混練装置を用いて、各成分を溶融混練することにより得ることができる。ブレンドの方法は、特に限定されないが、リボンブレンダー、高速ミキサーコニーダー、ミキシングロール、押出機、インテンシブミキサー等を用いることができる。
これらの中でも、後述する実施例で示しているように、一般的には、樹脂を溶融ブレンドする際に用いられる単軸又は二軸スクリュー押出機が最も好適である。添加順序としては、特に限定されず、EVOH(A)及び不飽和アルデヒド(C)を含有する樹脂成分、PO(B)及び脂肪酸金属塩を同時に又は適当な順序で押出機へ投入し溶融混練させる方法が好適に採用される。また、任意成分を溶融混練時に添加してもよい。
[多層構造体]
本発明の多層構造体は、上記樹脂組成物を溶融成形して得られた層を少なくとも1層及び他の成分からなる層を有するものであれば、その層構成及び層の総数、層の厚みや比率、他の層に用いられる樹脂の種類、接着性樹脂の有無及びその種類等は特に限定されない。
他の成分からなる層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)からなる層、及びポリオレフィン(B)からなる層であることが好ましい。
他の成分からなる層を構成するポリオレフィン(B)としては、たとえば、前記ポリオレフィン(B)に例示したものが挙げられ、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体などのポリプロピレン系樹脂、またはポリエチレン、エチレン系共重合体などのポリエチレン系樹脂が好ましい
多層構造体は、フィルム、シート、テープ、カップ、トレイ、チューブ、ボトル、パイプ等の任意の成形品に成形できる。ここでフィルムとは、通常300μm未満の厚みを有するものをいい、シートとは、通常300μm以上の厚みを有するものをいう。
多層構造体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、たとえば押出ラミネート法、ドライラミネート法、押出ブロー成形法、共押出ラミネート法、共押出成形法、共押出パイプ成形法、共押出ブロー成形法、共射出成形法、溶液コート法等が挙げられる。汎用性の観点からは、共押出成形及び共射出成形が好ましい。共押出成形又は共射出成形するときには、EVOH(A)、ポリオレフィン(B)、他の熱可塑性樹脂、接着性樹脂等をそれぞれ個別に熱成形装置に供給することがより好ましい。
多層構造体を製造する方法としては、これらの中で、共押出ラミネート法、共押出成形法がより好ましく、共押出成形法がさらに好ましい。上記樹脂組成物層と他の成分からなる層とが上記方法により積層されることで、容易かつ確実に製造することができ、その結果、良好な外観性、耐衝撃性及び加工特性を効果的に達成することができる。
<接着性樹脂>
多層構造体の各層間は接着性樹脂を介して積層されていてもよく、接着性樹脂層として使用される接着性樹脂としては、たとえば、上記の酸変性ポリオレフィンが好適である。
[成形品の製造方法]
上記多層構造体を用いて成形品を成形する方法としては、たとえば、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。これらの成形は、通常、EVOH(A)の融点以下の温度範囲で行われる。これらの中で、真空圧空成形法が好ましい。真空圧空成形法は、多層構造体を加熱し、真空と圧空を併用して成形する方法である。前記成形品は、上述の多層構造体を用いて真空圧空成形法により形成されることで、容易かつ確実に製造することができ、その結果、外観性及び耐衝撃性により優れる。
溶融成形温度としては、EVOH(A)の融点等により異なるが、150℃〜250℃程度が好ましい。EVOH(A)の成形温度が250℃を越えると、EVOHの熱劣化が加速し、繰り返し回収時に熱劣化による外観不良や耐衝撃性の低下を誘発する。
各層の押出成形は、単軸スクリューを備えた押出機を所定の温度で運転することにより行われる。バリア層を形成する押出機の温度は、例えば170℃〜210℃とされ、樹脂組成物層を形成する押出機の温度は、例えば200℃〜240℃とされ、他の成分からなる層を形成する押出機の温度は、例えば200℃〜240℃とされ、接着剤層を形成する押出機の温度は、例えば160℃〜220℃の温度とされる。
また、多層構造体は目的の形状に合わせて2次加工してもよい。2次加工としては、延伸、熱成形、ブロー成形などの方法が挙げられる。延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法等が挙げられる。二軸延伸する場合には、同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。熱成形としては、真空成形、圧空成形、真空空圧成形等により、フィルム状またはシート状の多層構造体をカップやトレイ状に成形する方法が挙げられる。また、ブロー成形としては、パリソン状の多層構造体をブローによりボトル、チューブ状に成形する方法が挙げられる。
上記溶融成形等により得られた成形品は、さらに必要に応じて、曲げ加工、真空成形、ブロー成形、プレス成形等の2次加工成形を行って、目的とする成形品にしてもよい。
上記成形品は上述の性質を有する樹脂組成物から形成される層を備えているので、熱成形容器、たとえば食品包装容器又は燃料容器に好適に用いることができる。
本発明の多層構造体からなる熱成形容器は、目的に合わせて成形し、必要に応じてヒートシールを行い容器とし、その容器内に内容物を充填して輸送、保存に使用することができる。内容物としては、食品、非食品のいずれも使用することができ、乾燥物、水分を含むもの、油分を含むもののいずれであっても構わない。また、多層構造体からなる容器をボイル処理、レトルト処理に供することもでき、その場合にはポリプロピレンが両外層に使われているもの、またはEVOH層が厚いものが好適に用いられる。
(1)含水EVOHペレットの含水率の測定
メトラー・トレド社のハロゲン水分率分析装置「HR73」を用い、乾燥温度180℃、乾燥時間20分、サンプル量約10gの条件で、含水EVOHペレットの含水率を測定した。以下に示す含水EVOHの含水率は、EVOHの乾燥質量基準の質量%である。
(2)EVOH(A)のエチレン含有量及びけん化度
核磁気共鳴装置(超伝導核磁気共鳴装置「Lambda500」、日本電子株式会社製)を用い、DMSO−dを測定溶媒として、H−NMRにより求めた。
(3)不飽和アルデヒド(C)の定量
50質量%の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)の水溶液200mgに、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)50mL、酢酸11.5mL及びイオン交換水8mLを加え、DNPH溶液を調製した。測定ペレット1gをこのDNPH溶液20mLに加え、35℃にて1時間攪拌し溶解させた。この溶液にアセトニトリルを加えて樹脂分を析出させ沈降させた後、濾過して得られた溶液を濃縮し、抽出サンプルを得た。この抽出サンプルを下記条件の高速液体クロマトグラフィーにて定量分析することで、不飽和アルデヒド(C)を定量した。なお、定量に際しては、それぞれの不飽和アルデヒド(C)をDNPH調製溶液と反応させて得た標品を用いて作成した検量線を使用した。
(測定条件)
カラム:TSKgel ODS−80Ts(東ソー製)
移動相:水/アセトニトリル=52:48(体積比)
検出器:PDA(360nm)
(4)共役ポリエン化合物の定量
乾燥樹脂組成物ペレットを凍結粉砕により粉砕し、呼び寸法0.150mm(100メッシュ)のふるい(JIS規格Z8801−1〜3準拠)によって粗大粒子を除去して得た粉砕物10gをソックスレー抽出器に充填し、クロロホルム100mLを用いて48時間抽出処理した。この抽出液中の共役ポリエン化合物の量を高速液体クロマトグラフィーにて定量分析することで、共役ポリエン化合物の量を定量した。なお、定量に際しては、それぞれの共役ポリエン化合物の標品を用いて作成した検量線を使用した。
(5)脂肪族カルボン酸(脂肪酸塩、脂肪族カルボン酸塩の脂肪族カルボン酸イオン)の定量
乾燥EVOHペレット、樹脂組成物または回収操作を行った樹脂組成物を凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕物を、呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS Z8801−1〜3準拠)で分けた。上記ふるいを通過した粉砕物粉末10gとイオン交換水50mLを共栓付き100mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付けて、95℃で10時間撹拌した。得られた溶液2mLを、イオン交換水8mLで希釈した。上記希釈した溶液を、横河電機株式会社製イオンクロマトグラフィー「ICS−1500」を用い、下記測定条件に従ってカルボン酸イオンの量を定量することで、脂肪族カルボン酸(及び脂肪族カルボン酸イオン)の量を算出した。なお、定量に際しては各カルボン酸を用いて作成した検量線を用いた。
(測定条件)
カラム :IonPAC ICE−AS1(9φ×250mm、DIONEX社製、検出器 電気伝導度検出器)
溶離液 :1.0mmol/L オクタンスルホン酸水溶液
測定温度 :35℃
溶離液流速 :1mL/min.
分析量:50μL
(6)金属イオンの定量
乾燥EVOHペレット、樹脂組成物または回収操作を行った樹脂組成物0.5gをアクタック製のふっ素樹脂製耐圧容器に仕込み、和光純薬工業製の精密分析用硝酸5mLをさらに加えた。30分放置後、ラプチャーディスク付きキャップリップにて容器に蓋をし、アクタック社製マイクロウェーブ高速分解システム「スピードウェーブ MWS−2」にて150℃10分、次いで180℃10分処理し、樹脂を分解させた。樹脂の分解が完了できていない場合は、処理条件を適宜調節した。得られた分解物を10mLのイオン交換水で希釈し、すべての液を50mLのメスフラスコに移し取り、イオン交換水で定容し、分解物溶液を得た。
上記得られた分解物溶液を、パーキンエルマージャパン製ICP発光分光分析装置「Optima 4300 DV」を用い、以下に示す各観測波長で定量分析することで、金属イオン、リン酸化合物及びホウ素化合物の量を定量した。リン酸化合物の量は、リン元素を定量しリン元素換算質量として算出した。ホウ素化合物の含有量は、ホウ素元素換算質量として算出した。
Na :589.592nm
K :766.490nm
Mg :285.213nm
Ca :317.933nm
P :214.914nm
B :249.667nm
Si :251.611nm
Al :396.153nm
Zr :343.823nm
Ce :413.764nm
W :207.912nm
Mo :202.031nm
[EVOHの合成]
<合成例>
250Lの加圧反応槽を用いて以下の条件でエチレン−酢酸ビニル共重合体の重合を実施した。
酢酸ビニル83.0kg、
メタノール26.6kg、
2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(2.5g/Lメタノール溶液)の供給量 1119.5mL/hr
重合温度 60℃
重合槽エチレン圧力 3.6MPa
重合時間 5.0時間
得られた共重合体における酢酸ビニルの重合率は約40%であった。この共重合反応液にソルビン酸を添加した後、追出塔に供給し、塔下部からのメタノール蒸気の導入により未反応酢酸ビニルを塔頂より除去して、エチレン−酢酸ビニル共重合体の41%メタノール溶液を得た。このエチレン−酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量は32mol%であった。このエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液をケン化反応器に仕込み、苛性ソーダ/メタノール溶液(80g/L)を、共重合体中のビニルエステル成分に対して0.4当量となるように添加し、メタノールを加えて共重合体濃度が20%になるように調整した。この溶液を60℃に昇温し、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約4時間反応させた。この溶液を円形の開口部を有する金板から水中に押し出して析出させ、切断することで直径約3mm、長さ約5mmのペレットを得た。得られたペレットを遠心分離機で脱液し、さらに大量の水を加え脱液する操作を繰り返した。
[EVOH樹脂組成物の調製]
上記脱液したペレット20kgを、180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒に入れ、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液に不飽和アルデヒド(C)を添加し、さらに1時間攪拌して不飽和アルデヒド(C)を完全に溶解させ、EVOH溶液を得た。この溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させた。このストランドをペレタイザーに導入して多孔質のEVOH樹脂組成物チップを得た。得られた多孔質のEVOH樹脂組成物チップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄を行った。この洗浄液とEVOH樹脂組成物チップを分離して脱液した後、熱風乾燥機に入れて80℃で4時間乾燥を行い、さらに100℃で16時間乾燥を行って、ペレットを得た。得られたEVOH樹脂組成物(A)中の各成分の含有量を上記の方法により定量した。
[樹脂組成物の調製]
<実施例1>
EVOH樹脂組成物(A)5.5部、ポリオレフィン(B)としてポリエチレン87部(株式会社プライムポリマー製 HZ8200B。以下HDPEと称する。)、酸変性ポリオレフィン(D)(三井化学株式会社製 アドマーGT−6A。以下ADと称する。)7.5部、脂肪酸金属塩0.15部を混合し、必要に応じて不飽和アルデヒド(C)を添加して混合物を得た。
下記に示すペレタイズ条件にて、上記混合物を溶融混練し表1に示す組成を持つ樹脂組成物(以下樹脂組成物(E)と称する。)をそれぞれ20kg得た。得られた樹脂組成物を再度溶融混練し、混練機から取り出す操作を繰り返し、溶融混練の回数(以下、回収回数と称する。)が5回、10回の樹脂組成物(E)もそれぞれ20kg得た。なお、樹脂組成物(E)の溶融混練温度は通常のEVOHの混練温度条件が150℃から250℃程度であることに対して、通常より高温側の250℃で実施した。不飽和アルデヒド(C)の含有量は、上記の方法により定量した。また、脂肪酸金属塩は、混合物を調整する際の質量を持って含有量とした。
(ペレタイズ条件)
押出機:株式会社東洋精機製作所製二軸押出機「ラボプラストミル」
スクリュー径:25mmφ
スクリュー回転数:100rpm
フィーダー回転数:100rpm
シリンダー、ダイ温度設定:C1/C2/C3/C4/C5/D
=180℃/230℃/250℃/250℃/250℃/250℃
<実施例2〜5、比較例1及び2>
表1に記載の混合物を作成し、実施例1と同様に樹脂組成物を作成した。
[多層構造体の作製]
共押出成形装置を用い、上記EVOH樹脂組成物(A)、ポリオレフィン(B)(ポリエチレン)、カルボン酸変性ポリオレフィン(D)(三井化学アドマー社の「QF−500」)、及び樹脂組成物(E)を別々の押出機に仕込み、全層厚みが1000μmの4種6層となる多層シート(層構成:ポリオレフィン(B)層300μm/カルボン酸変性ポリオレフィン(D)50μm/EVOH(A)層50μm/カルボン酸変性ポリオレフィン(D)50μm/樹脂組成物(E)層400μm/ポリオレフィン(B)層150μm)を作製した。
<各押出機及び押出条件>
EVOH樹脂組成物(A)の押出機:単軸スクリュー、直径40mm、L/D=26、温度170℃〜210℃
ポリオレフィン(B)の押出機:単軸、スクリュー直径40mm、L/D=22、温度160℃〜210℃
樹脂組成物(E)の押出機:単軸スクリュー、直径65mm、L/D=22、温度200℃〜240℃
カルボン酸変性ポリオレフィン(D)の押出機:単軸スクリュー、直径40mm、L/D=26、温度160℃〜220℃ )
<共押出シート成形装置の成形条件>
フィードブロック型ダイ(巾600mm)、温度255℃
[熱成形容器の作製]
共押出成形装置にて得られた多層シート(共押出成形装置の立ち上げから30分後、24時間後を採取)を15cm角に裁断し、浅野製作所社のバッチ式熱成形試験機にてシート温度150℃の条件で、カップ状(金型形状70φ×70mm、絞り比S=1.0)に熱成形(圧空:5kg/cm、プラグ:45φ×65mm、シンタックスフォーム、プラグ温度:150℃、金型温度:70℃)することで熱成形容器を作製した。
[ブロー成形容器の製造]
<実施例1〜5、比較例1及び2>
上記EVOH樹脂組成物(A)、ポリエチレン樹脂(株式会社プライムポリマー製 HZ8200B)、接着性樹脂(三井化学株式会社製 アドマーGT−6A)、及び上記樹脂組成物(E)を用い、鈴木製工所製ブロー成形機TB−ST−6Pにて210℃、金型内温度15℃で20秒間冷却して、全層厚み700μm((内側)ポリオレフィン(B)層240μm/接着性樹脂(D)層40μm/EVOH(A)層40μm/接着性樹脂(D)層40μm/樹脂組成物(E)層100μm/ポリオレフィン(B)層240μm(外側))の4種6層となる3Lのブロー成形容器を成形した。この容器の底面直径は100mm、高さは400mmであった。ここで、樹脂組成物(E)は、回収回数1回、5回、10回の樹脂組成物をそれぞれ樹脂組成物(E)として使用した。
(7)ブロー成形容器の評価
<外観評価>
回収回数が10回目の樹脂組成物を樹脂組成物(E)層に使用してブロー成形した3L容器について、目視にてスジ及び着色を下記基準にて評価し、外観性の評価とした。
(スジの評価基準)
「良好(A)」:スジは認められなかった。
「やや良好(B)」:スジが確認された。
「不良(C)」:多数のスジが確認された。
(着色の評価基準)
「良好(A)」:無色
「やや良好(B)」:黄変
「不良(C)」:激しく黄変
<耐衝撃性評価>
回収回数1、5、10回の樹脂組成物を樹脂組成物(E)層に使用してブロー成形した3L容器に、プロピレングリコールを2.5L充填し、開口部をポリエチレン40μm/アルミ箔12μm/ポリエチレンテレフタレート12μm構成のフィルムで熱シールして蓋をした。このタンクを−40℃で3日間冷却し、開口部が上になるように6mの高さから落下させ、破壊した個数で評価した(n=10)。
(耐衝撃性の評価基準)
「良好(A)」:3個未満
「やや良好(B)」:3個〜6個未満
「不良(C)」:6個以上
(8)樹脂組成物(E)層に含まれるEVOHの分散粒子径
ブロー成形容器を該容器側面と直角の方向にミクロトームで丁寧に切断し、さらにメスを用いて樹脂組成物層を取り出した。露出した断面に減圧雰囲気下で白金を蒸着した。白金が蒸着された断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて10000倍に拡大して写真撮影した。この写真中のEVOHの粒子20個程度を含む領域を選択し、該領域中に存在する各々の粒子像の粒径を測定し、その平均値を算出して、これを分散粒子径とした。なお、各々の粒子の粒径については、写真中に観察される粒子の長径(最も長い部分)を測定し、これを粒径とした。なお、上記フィルムまたはシートの切断は押出方向に垂直に行い、切断面に対して、垂直方向からの写真撮影を行った。
(平均分散粒子径の評価基準)
「良好(A)」:1.5μm未満
「やや良好(B)」:2.5μm未満
「不良(C)」:2.5μm以上
Figure 0006653726
表1に示すように、本発明のブロー成形容器は比較例に比べ、スジの発生及び着色が抑制され、外観性に優れることがわかった。また、本発明のブロー成形容器は、繰り返し回数10回行った樹脂組成物を含む多層容器において耐衝撃性に優れていた。本発明のブロー成形容器は、繰り返し回収性に優れた樹脂組成物を用いることで、繰り返し回収時のEVOH成分の熱劣化による増粘を防止し、樹脂組成物中のEVOH成分の凝集を抑制し、耐衝撃性の低下することを防ぐ効果を示すことがわかった。
本発明は、熱成形における欠陥の発生が抑制され、かつ外観に優れると共に十分な強度を有する樹脂組成物及び熱成形容器を提供することができる。また、この樹脂組成物を含むシート端部やスクラップ等を繰り返し回収して得られる回収物を多層構造体中の層とした場合、回収物中のEVOHの熱劣化や凝集は起こらず、他の熱可塑性樹脂との相容性の悪化はなく、得られた多層容器の耐衝撃性の低下を抑制する。従って、前記樹脂組成物、多層構造体及び成形品は、食品包装材用、燃料容器用等の各種包装材の成形材料として好適である。

Claims (9)

  1. エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、ポリオレフィン(B)、及び不飽和アルデヒド(C)を含有し、前記不飽和アルデヒド(C)がクロトンアルデヒドであり、前記クロトンアルデヒドの含有量が0.1ppm以上3ppm以下であり、
    前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の平均分散粒子径が2.5μm未満であり、
    脂肪酸の亜鉛塩をさらに含有する樹脂組成物。
  2. 前記脂肪酸の亜鉛塩の含有量が50ppm以上4,000ppm以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 酸変性ポリオレフィンをさらに含有する、請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる層及び他の成分からなる層を有する多層構造体。
  5. 他の成分からなる層が、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)からなる層及びポリオレフィン(B)からなる層である、請求項に記載の多層構造体。
  6. 請求項または請求項に記載の多層構造体からなる熱成形容器。
  7. ブロー成形体である請求項に記載の熱成形容器。
  8. 請求項またはに記載の多層構造体を熱成形する工程を含む熱成形容器の製造方法。
  9. 前記熱成形がブロー成形法である請求項に記載の熱成形容器の製造方法。
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