JP6454462B2 - 樹脂組成物、多層シート、包装材及び容器 - Google Patents
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Description
当該樹脂組成物は、異なるエチレン単位含有量を有する2種のEVOH(A)及びEVOH(B)、並びに飽和ケトン(C)を含有する。また、当該樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、ホウ素化合物、共役ポリエン化合物、酢酸類、リン化合物等の任意成分を含有していてもよい。以下に、各成分について説明する。
EVOH(A)は、エチレンとビニルエステルとの共重合体をケン化したエチレンとビニルアルコール共重合体である。
EVOH(B)は、EVOH(A)と同様にエチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得られるエチレン−ビニルアルコール共重合体である。
本発明の樹脂組成物は、飽和ケトン(C)を含有するため、ロングラン時のフローマーク、着色及び臭気が抑制され、かつ加熱延伸性に優れるので、外観性に優れ、フローマークが抑制された成形体を成形することができる。ここで、飽和ケトン(C)とは分子内のカルボニル基以外の部分に不飽和結合を含まないケトンをいう。飽和ケトン(C)は、カルボニル基以外の部分に不飽和結合を含まない限りは、直鎖状のケトンであっても、分枝状のケトンであっても、分子内に環構造を有するケトンであってもよい。飽和ケトン(C)の分子内のカルボニル基の数は、1であっても2以上であってもよい。
(ホウ素化合物)
ホウ素化合物は、溶融成形時のゲル化を抑制すると共に押出成形機等のトルク変動(加熱時の粘度変化)を抑制するものである。
オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等のホウ酸類;ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等のホウ酸エステル;
上記ホウ酸類のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、ホウ砂等のホウ酸塩;
水素化ホウ素類などが挙げられる。これらの中でも、ホウ酸類が好ましく、オルトホウ酸がより好ましい。
共役ポリエン化合物は、溶融成形時の酸化劣化を抑制するものである。ここで、共役ポリエン化合物とは、炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる構造を有し炭素−炭素二重結合の数が2個以上である、いわゆる共役二重結合を有する化合物である。この共役ポリエン化合物は、共役二重結合を2個有する共役ジエン、3個有する共役トリエン、又はそれ以上の数を有する共役ポリエンであってもよい。また、上記共役二重結合が互いに共役せずに1分子中に複数組あってもよい。例えば、桐油のように共役トリエン構造が同一分子内に3個ある化合物も上記共役ポリエン化合物に含まれる。
イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩等の共役ジエン化合物;
1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール、フルベン、トロポン等の共役トリエン化合物;
シクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の共役ポリエン化合物などが挙げられる。上記共役ポリエン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酢酸類は、成形品の着色を防止すると共に防止溶融成形時のゲル化を抑制するものである。この酢酸類は、酢酸及び酢酸塩を含む。酢酸類としては、酢酸及び酢酸塩を併用することが好ましく、酢酸及び酢酸ナトリウムを併用することがより好ましい。
リン化合物は、ストリーク、フィッシュアイ等の欠陥の発生及び着色を抑制すると共に、ロングラン性を向上させるものである。このリン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸等のリン酸塩等が挙げられる。
当該樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含有していてもよい。その他の任意成分としては、例えばアルカリ金属又はその塩、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、熱安定剤、他の樹脂、高級脂肪族カルボン酸の金属塩等が挙げられる。当該樹脂組成物は、これらの任意成分を2種以上含有してもよく、任意成分の合計含有量としては、当該樹脂組成物中の1質量%以下が好ましい。
当該樹脂組成物の製造方法としては、EVOH(A)、EVOH(B)及び飽和ケトン(C)を均一にブレンドできる方法であれば特に限定されない。EVOH(A)及びEVOH(B)は、例えばエチレンとビニルエステルとを共重合させる工程(以下、「工程(1)」ともいう)、及びこの工程(1)により得られる共重合体をケン化する工程(以下、「工程(2)」ともいう)を備える製造方法により得ることができる。
当該樹脂成形体は、当該樹脂組成物から形成される。この樹脂成形体としては、例えばフィルム、シート、容器、パイプ、ホース、繊維、包装材等が挙げられる。フィルムとは、通常300μm未満の厚みを有するものをいい、シートとは、通常300μm以上の厚みを有するものをいう。当該樹脂成形体は、例えば溶融成形により形成され、必要に応じて、二次加工成形を行うことで形成される。この溶融成形の方法としては、例えば押出成形、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形、射出ブロー成形等が挙げられる。溶融成形温度としては、EVOH(A)の融点等により異なるが、150℃〜270℃程度が好ましい。上記二次加工成形としては、例えば曲げ加工、真空成形、ブロー成形、プレス成形等が挙げられる。
高密度、中密度又は低密度のポリエチレン;
酢酸ビニル、アクリル酸エステル、又はブテン、ヘキセン等のα−オレフィン類を共重合したポリエチレン;
アイオノマー;
ポリプロピレンホモポリマー;
エチレン、ブテン、ヘキセン等のα−オレフィン類を共重合したポリプロピレン;
ゴム系ポリマーをブレンドした変性ポリプロピレン等のポリオレフィン類;
これらの樹脂に無水マレイン酸を付加又はグラフトした樹脂;
ポリエステルなどが挙げられる。
X−110≦Y≦X−10 ・・・(2)
S=(容器の深さ)/(容器の開口部に内接する最大径の円の直径)
・・・ (3)
すなわち、絞り比(S)とは、容器の最深部の深さの値を、多層シートの平面に形成された凹部(開口部)の形状に接する最も大きい内接円の直径の値で除した値である。この円の直径は、例えば凹部の形状が円である場合にはその直径、楕円である場合にはその短径、長方形である場合にはその短辺の長さがそれぞれ内接する最大径の円の直径になる。
メトラー・トレド社のハロゲン水分率分析装置「HR73」を用い、乾燥温度180℃、乾燥時間20分、サンプル量約10gの条件で、含水EVOHペレットの含水率を測定した。以下に示す含水EVOHの含水率は、EVOHの乾燥質量基準の質量%である。
核磁気共鳴装置(日本電子社の「JNM−GX−500型」)を用い、DMSO−d6を測定溶媒として、1H−NMRにより求めた。
乾燥EVOHペレットを凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕EVOHを、呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS Z8801−1〜3準拠)で分けた。上記ふるいを通過したEVOH粉末10gとイオン交換水50mLを共栓付き100mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付けて、95℃で10時間撹拌した。得られた溶液2mLを、イオン交換水8mLで希釈した。この希釈溶液を、横河電機社のイオンクロマトグラフィー「ICS−1500」を用い、下記測定条件に従ってカルボン酸イオンの量を定量することで、カルボン酸及びカルボン酸イオンの量を算出した。なお、定量に際してはモノカルボン酸又は多価カルボン酸を用いて作成した検量線を用いた。
カラム :DIONEX社の「IonPAC ICE−AS1(9φ×250mm、電気伝導度検出器)」
測定温度 :35℃
溶離液流速 :1mL/min.
分析量:50μL
乾燥EVOHペレット0.5gをアクタック製のテフロン(登録商標)製耐圧容器に仕込み、和光純薬工業社の精密分析用硝酸5mLをさらに加えた。30分放置後、ラプチャーディスク付きキャップリップにて容器に蓋をし、アクタック社のマイクロウェーブ高速分解システム「スピードウェーブ MWS−2」にて150℃10分、次いで180℃10分処理し、乾燥EVOHペレットを分解させた。乾燥EVOHペレットの分解が完了できていない場合は、処理条件を適宜調節した。得られた分解物を10mLのイオン交換水で希釈し、すべての液を50mLのメスフラスコに移し取り、イオン交換水で定容し、分解物溶液を得た。
K :766.490nm
Mg :285.213nm
Ca :317.933nm
P :214.914nm
B :249.667nm
Si :251.611nm
Al :396.153nm
Zr :343.823nm
Ce :413.764nm
W :207.912nm
Mo :202.031nm
乾燥樹脂組成物ペレットを凍結粉砕により粉砕し、呼び寸法0.150mm(100メッシュ)のふるい(JIS規格Z8801−1〜3準拠)によって粗大粒子を除去して得た粉砕物10gをソックスレー抽出器に充填し、クロロホルム100mLを用いて48時間抽出処理した。この抽出液中の共役ポリエン化合物の量を高速液体クロマトグラフィーにて定量分析することで、共役ポリエン化合物の量を定量した。なお、定量に際しては、それぞれの共役ポリエン化合物の標品を用いて作成した検量線を使用した。
[合成例1]
250Lの加圧反応槽を用いて以下の条件で重合を実施し、エチレン−酢酸ビニル共重合体を合成した。
(仕込み量)
酢酸ビニル:83.0kg
メタノール:17.4kg
2,2’−アゾビスイソブチルニトリル:66.4g
重合温度 :60℃
(重合条件)
重合槽エチレン圧力:3.9MPa
重合時間 :3.5時間
上記重合における酢酸ビニルの重合率は36%であった。得られた共重合反応液にソルビン酸を添加した後、追出塔に供給し、塔下部からのメタノール蒸気の導入により未反応酢酸ビニルを塔頂より除去して、エチレン−酢酸ビニル共重合体の41質量%メタノール溶液を得た。このエチレン−酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量は32モル%であった。このエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液をケン化反応器に仕込み、苛性ソーダ/メタノール溶液(80g/L)を、共重合体中のビニルエステル単位に対して0.4当量となるように添加し、さらにメタノールを加えて共重合体濃度が20質量%になるように調整した。この溶液を60℃に昇温し、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約4時間反応させた。この溶液を円形の開口部を有する金板から水中に押し出して析出させ、切断することで、直径約3mm、長さ約5mmのペレットを得た。このペレットを遠心分離機で脱液した後、さらに大量の水を加えてから脱液する操作を繰り返し行って洗浄し、EVOH(A)のペレットを得た。得られたEVOH(A)のケン化度は99.95モル%であった。
また、上記同様にして、下記表1に示す所定のエチレン含有量のEVOH(A)(ケン化度:99.95モル%)を合成した。
アセトンを、EVOHに対して0.5ppm含有するように、上記重合時に供給した以外は合成例1と同様にして重合、ケン化、ペレット化及び洗浄を行ってペレットを得た。得られたEVOH(A)のケン化度は99.95モル%であった。
[合成例3]
上記合成例1のEVOH(A)の合成方法と同様にして、エチレン含有量が44モル%でケン化度が99.95モル%のEVOH(B)のペレットを合成した。
また、これと同様にして、下記表1に示す所定のエチレン含有量のEVOH(B)(ケン化度は99.95モル%)を合成した。
上記合成例2のEVOH(A)の合成方法と同様にして、エチレン含有量が44モル%でケン化度が90モル%のEVOH(B)のペレットを合成した。
上記合成例3で得られたエチレン含有量が44モル%でケン化度が99.95モル%のEVOH(B)とエポキシプロパンとを用い、東芝機械社の「TEM−35BS」(37mmφ、L/D=52.5)を使用して、バレルC2及びC3が200℃、バレルC4〜C15が240℃、回転数が400rpmの条件下、エポキシプロパンをC9から圧入することにより、変性EVOH(B)を合成した。得られた変性EVOH(B)の変性度は、全ビニルアルコール単位に対して8モル%であった。
[実施例1〜10、14及び15並びに比較例2〜4]
上記合成例1又は合成例2で得られたEVOH(A)のペレット20kgを、180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒中に加え、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液に所定量のアセトン及びソルビン酸を添加し、さらに1時間攪拌してアセトンを完全に溶解させて樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させた。このストランドをペレタイザー導入して多孔質の樹脂チップを得た。得られたチップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄した。この洗浄液とチップとを分離して脱液した後、熱風乾燥機を用いて80℃で4時間乾燥を行い、さらに100℃で16時間乾燥を行い、アセトン含有EVOH(A)ペレットを得た。得られたペレットにおける各成分の含有量を上記定量方法により定量し、EVOH(A)における含有量とした。同様に上記合成例3、合成例4で得られたEVOH(B)についても同様の方法により、アセトン含有EVOH(B)ペレットを得た。この際、予め上記定量方法を用いEVOH(B)のアセトン含有量を測定し、本方法でアセトンの添加量、浸漬処理用水溶液の各成分の濃度を調節することにより、EVOH(A)とEVOH(B)との合計質量に対するアセトンの含有量が表1に記載の通りとなるように調製した。
上記合成例1で得られたEVOH(A)のペレット20kgを、180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒中に加え、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液に所定量のアセトン及びソルビン酸を添加し、さらに1時間攪拌してアセトンを完全に溶解させて樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させた。このストランドをペレタイザーに導入して多孔質の樹脂チップを得た。得られたチップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄した。この洗浄液とチップとを分離して脱液した後、熱風乾燥機を用いて80℃で4時間乾燥を行い、さらに100℃で16時間乾燥を行い、アセトン含有EVOH(A)ペレットを得た。得られたペレットにおける各成分の含有量を上記定量方法により定量し、EVOH(A)における含有量とした。同様に上記合成例5で得られた変性EVOH(B)についても同様の方法により、アセトン含有EVOH(B)ペレットを得た。この際、予め上記定量方法を用いEVOH(B)のアセトン含有量を測定し、本方法でアセトンの添加量、浸漬処理用水溶液の各成分の濃度を調節することにより、EVOH(A)とEVOH(B)の合計質量に対するアセトンの含有量が表1に記載の通りとなるように、上記同様に樹脂組成物ペレットを調製した。
上記実施例1においてアセトンの代わりにメチルエチルケトンを用いた以外は実施例1と同様にしてメチルエチルケトンを含む樹脂組成物ペレットを調製した。
上記実施例1においてアセトンの代わりに2−ヘキサノンを用いた以外は、実施例1と同様して2−ヘキサノンを含む樹脂組成物ペレットを調製した。
上記合成例2で得られたペレット20kgを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄した。この洗浄液とチップとを分離して脱液した後、熱風乾燥機を用いて80℃で4時間乾燥を行い、さらに100℃で16時間乾燥を行って、EVOH(A)ペレットを得た。同様に上記合成例4で得られたEVOH(B)についても同様の方法で処理した後、上記同様に樹脂組成物ペレットを調製した。
このようにして得られた各樹脂組成物について、以下の方法を用いて評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
50質量%の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)の水溶液200mgに、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)50mL、酢酸11.5mL及びイオン交換水8mLを加え、DNPH溶液を調製した。測定ペレット1gをこのDNPH溶液20mLに加え、35℃にて1時間攪拌し溶解させた。この溶液にアセトニトリルを加えて樹脂分を析出させ沈降させた後、濾過して得られた溶液を濃縮し、抽出サンプルを得た。この抽出サンプルを下記条件の高速液体クロマトグラフィーにて定量分析することで、飽和ケトン(C)を定量した。定量に際しては、それぞれの飽和ケトン(C)の標品をDNPH溶液と反応させて作成した検量線を使用した。なお、飽和ケトン(C)の検出下限は、0.01ppmであった。
カラム:TSKgel ODS−80Ts(東ソー社)
移動相:水/アセトニトリル=52:48(体積比)
検出器:PDA(360nm)、TOF−MS
樹脂組成物の試料ペレット20gを100mLガラス製サンプル管に入れ、アルミホイルで口部を蓋をした後、熱風乾燥機内で220℃で30分間加熱した。乾燥機から取り出し、室温で30分間放冷した後、サンプル管を2〜3回振り混ぜた後、アルミホイルの蓋を取り臭気を評価した。試料ペレットの臭気の強さを以下のような基準で判定した。
A: 臭気を感じない
B: 弱い臭気を感じる
C: 明らかに臭気を感じる
単軸押出装置(東洋精機製作所社の「D2020」、D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)を用い、上記得られた各樹脂組成物ペレットから厚さ150μmの単層フィルムを作製した。成形条件を以下に示す。
押出温度:210℃
スクリュー回転数:100rpm
ダイス幅:15cm
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:0.9m/分
上記条件で連続運転して単層フィルムを作製し、運転開始から8時間後に作製された各フィルムについて外観を目視評価した。フローマーク抑制性は、フローマークが観測されない場合は「A(良好)」と、フローマークが小さく又は発生頻度が小さい場合は「B(やや良好)」と、フローマークが大きくかつ発生頻度が大きい場合は「C(不良)」と評価した。
上記成形において、8時間後に得られたフィルムを目視にて着色を観察し、下記基準により評価した。
「A(良好)」:無色
「B(やや良好)」:黄変
「C(不良)」:著しく黄変
上記得られたフィルムを東洋精機社のパンタグラフ式二軸延伸装置にて80℃で30秒間予熱後、延伸倍率3×3倍で同時二軸延伸を行い、延伸フィルムを得た。加熱延伸性は、得られた延伸フィルムを目視で観察し、下記基準により評価した。
「A(良好)」:クラックが全く発生しなかった
「B(やや良好)」:局所的にクラックが発生した
「C(不良)」:全体的にクラックが発生した
[実施例16]
下記に示す4種7層共押出キャスト製膜設備を使用し、上記得られた樹脂組成物を用いて共押出製膜試験を実施した。
押出機(1):一軸、スクリュー直径65mm、L/D=22、外層ポリオレフィン用
押出機(2):一軸、スクリュー直径40mm、L/D=26、ポリオレフィン用
押出機(3):一軸、スクリュー直径40mm、L/D=22、接着性樹脂用
押出機(4):一軸、スクリュー直径40mm、L/D=26、上記樹脂組成物用
押出機(1)、押出機(2)にポリプロピレン(以下、PP、PP’と略称することがある)を、押出機(3)に無水マレイン酸変性ポリプロピレン系の接着性樹脂(三井化学社の「ADMER QF−500」)を、押出機(4)に実施例3で得た樹脂組成物(a)をそれぞれフィードして共押出製膜を行った。押出温度は、押出機(1)を200℃〜250℃、押出機(2)を200℃〜250℃、押出機(3)を160℃〜250℃、押出機(4)を170℃〜250℃、フィードブロック及びダイは250℃に設定した。製膜した多層シートの構成及び各層厚みは、PP/PP’/接着性樹脂/(a)/接着性樹脂/PP’/PP=30/15/2.5/5/2.5/15/30μmのトータル厚み100μmの4種7層の対象構成とした。
上記実施例16で用いた樹脂組成物を比較例1で得た樹脂組成物に置き換えた以外は実施例16と同様に共押出製膜試験を行い、製膜開始から10時間後のシートをサンプリングし、外観を観察したところ、EVOHの凝集による外観不良及び流動異常によるフローマークが多数観察される多層シートが得られた。
[実施例17]
以下の押出成形の条件で、実施例3で得られた樹脂組成物、ポリオレフィン(a)、ポリオレフィン(a’)、カルボン酸変性ポリオレフィン(b)を別々の押出機に仕込み(a)/(a’)/(b)/樹脂組成物/(b)/(a’)/(a)(各層厚み:200μm/225μm/25μm/100μm/25μm/225μm/200μm)の構成を有する全層厚み1,000μmの4種7層の多層シートを共押出シート成形装置により得た。
各押出機の押出条件
ポリオレフィン(a)の押出機:一軸、スクリュー直径65mm、L/D=22、温度200℃〜240℃ (ポリプロピレン)
実施例3で得られた樹脂組成物の押出機:一軸、スクリュー直径40mm、L/D=26、温度170℃〜210℃
カルボン酸変性ポリオレフィン(b)の押出機:一軸、スクリュー直径40mm、L/D=26、温度160℃〜220℃ (無水マレイン酸変性ポリプロピレン系の接着性樹脂(三井化学社の「ADMER QF−500」)
ポリオレフィン(a’)の押出機:一軸、スクリュー直径40mm、L/D=22、温度160℃〜210℃ (ポリプロピレン)
共押出シート成形装置の成形条件
フィードブロック型ダイ(巾600mm)、温度240℃
実施例14で得られた多層シートを熱成形機(浅野製作所社)にて、温度を150℃にして、カップ形状(金型形状70φ×70mm、絞り比S=1.0)に熱成形した。(熱成形条件:圧縮空気圧力:5kg/cm2(0.5MPa)、プラグ:45φ×65mm、シンタックスフォーム、プラグ温度:150℃、金型温度:70℃)。得られたカップ容器は、外観性に優れ、フローマークが抑制されていた。また、以下に示す方法で、カップ容器を切断してその断面を観察したところ、樹脂組成物層の連続性を認めた。
得られる各容器について、以下の方法を用いて評価した。評価結果を表2に示す。
上記得られたカップ容器を切断し、切断面を顕微鏡で観察し、本発明の樹脂組成物からなる層の連続性を評価した。樹脂組成物層の連続性が保持されている場合を「A(良好)」と、樹脂組成物層の連続性が失われている場合を「B(不良)」とした。
酸素透過度は、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社の「MOCON OX−TRAN2/20」)を用いて測定した。具体的には、測定装置にカップ容器をセットし、温度20℃、湿度65%RH(ASTM D3985)にて測定した。酸素バリア性は、0.8mL/(m2・day・atm)未満の場合は「A(良好)」と、0.8mL/(m2・day・atm)以上の場合は「B(不良)」とした。
実施例1で得られたEVOH(A)ペレットのみを用い、実施例16と同様にして樹脂組成物ペレットを多層シートとし、実施例18と同様にして、この多層シートをカップ容器とした。このカップ容器を切断しその断面を観察したところ、容器のコーナー部分で樹脂組成物層の連続性が失われていた。また、容器の酸素透過度は、実施例18に比べて顕著に上昇した。
実施例1で得られたEVOH(B)ペレットのみを用い、実施例16と同様にして樹脂組成物ペレットを多層シートとし、実施例18と同様にして、この多層シートをカップ容器とした。このカップ容器を切断しその断面を観察したところ、容器のコーナー部分で樹脂組成物層の連続性が失われていた。また、容器の酸素透過度は、実施例18に比べて顕著に上昇した。
比較例1で得られたEVOH(A)ペレットのみを用い、実施例16と同様にして樹脂組成物ペレットを多層シートとし、実施例18と同様にして、この多層シートをカップ容器とした。このカップ容器を切断しその断面を観察したところ、容器のコーナー部分で樹脂組成物層の連続性が失われていた。また、容器の酸素透過度は、実施例18に比べて顕著に上昇した。
比較例1で得られたEVOH(B)ペレットのみを用い、実施例16と同様にして樹脂組成物ペレットを多層シートとし、実施例18と同様にして、この多層シートをカップ容器とした。このカップ容器を切断しその断面を観察したところ、容器のコーナー部分で樹脂組成物層の連続性が失われていた。また、容器の酸素透過度は、実施例18に比べて顕著に上昇した。
実施例3で得られたEVOH(A)ペレット50質量%と、EVOH(B)ペレット50質量%とを混合し、ドライブレンド後、二軸押出機(東洋精機製作所社の「2D25W」、25mmφ,ダイ温度220℃,スクリュー回転数100rpm)を用い、窒素雰囲気下で押出しペレット化を行い樹脂組成物ペレットを得た。実施例16と同様にして、樹脂組成物ペレットを多層シートとし、さらに実施例18と同様にして、カップ容器とした。このカップ容器を切断し、その断面を観察したところ、樹脂組成物層の連続性は認められたが、実施例18に比べてカップ容器の酸素バリア性は顕著に低下した。
比較例1で得られたEVOH(A)ペレット50質量%と、EVOH(B)ペレット50質量%とを混合し、ドライブレンド後、二軸押出機(東洋精機製作所社の「2D25W」、25mmφ,ダイ温度220℃,スクリュー回転数100rpm)を用い、窒素雰囲気下で押出しペレット化を行い樹脂組成物ペレットを得た。実施例16と同様にして、樹脂組成物ペレットを多層シートとし、さらに実施例18と同様にして、カップ容器とした。このカップ容器を切断し、その断面を観察したところ、樹脂組成物層の連続性は認められたが、実施例18に比べてカップ容器の酸素バリア性は顕著に低下した。
Claims (9)
- エチレン含有量が20モル%以上50モル%以下のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、エチレン含有量が30モル%以上60モル%以下のエチレン−ビニルアルコール共重合体(B)及び飽和ケトン(C)を含有し、
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)のエチレン含有量からエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン含有量を減じた値が8モル%以上であり、
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン−ビニルアルコール共重合体(B)に対する質量比(A/B)が60/40以上95/5以下であり、
上記飽和ケトン(C)の樹脂分に対する含有量が0.3ppm以上100ppm未満である樹脂組成物。 - 上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の融点と上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)の融点との差が15℃以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 上記飽和ケトン(C)の炭素数が3から8である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂組成物。
- 上記飽和ケトン(C)が、アセトン、メチルエチルケトン及び2−ヘキサノンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の樹脂組成物。
- 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成されるバリア層と、
このバリア層の少なくとも一方の面に積層される熱可塑性樹脂層と
を備える多層シート。 - 上記バリア層と熱可塑性樹脂層とが共押出成形法により積層される請求項6に記載の多層シート。
- 請求項6又は請求項7に記載の多層シートを加熱延伸成形法により成形してなる包装材。
- 請求項6又は請求項7に記載の多層シートを真空圧空成形法により成形してなる容器。
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