JP5879043B2 - 合わせガラス用中間膜及びこれを用いた合わせガラス - Google Patents

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Description

本発明は、着色した合わせガラス用中間膜において、接着性に優れ、外観不良が防止された合わせガラス用中間膜、及びこの合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
従来から、二枚の透明基板の間に中間膜として透明接着樹脂膜を介在させた合わせガラスが知られている。合わせガラスでは、中間膜の存在により、耐貫通性等が向上している。したがって、例えば自動車の合わせガラスは、盗難や侵入等を目的として破壊されても窓の開放を自由にすることができないため、防犯用ガラスとしても有用である。また外部からの衝撃に対し、破損したガラスの破片は中間膜に貼着したままとなるので、飛散を防止することも可能である。
近年では、用途が多様化するのに伴って、合わせガラスにはプライバシー保護性や意匠性が要求される場合も生じ、無色透明の合わせガラスだけでなく、合わせガラスに様々な色彩を付して意匠性や機能性を向上させた合わせガラスが知られている。このような着色合わせガラスは、例えば、建築物の外装材、内装材の窓や仕切り、プライバシー保護用のガラス、さらにスクリーン、照明器具、家具などに使用されている。着色された合わせガラスとしては、安価に製造できることから、着色した中間膜をガラス板の間に介在させたものが用いられている。
合わせガラスにおける中間膜としては、耐湿性及び遮音性に優れ、安価であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」とも言う)を含む樹脂膜が知られており、これに有機過酸化物等の架橋剤を添加して架橋させることにより、ガラス板との接着一体化が行われる。中間膜を着色するための着色剤としては、炭酸カルシウムや酸化チタン等の無機微粒子が一般に用いられている(特許文献1)。
特開平06−305786
しかしながら、特許文献1に記載の着色した合わせガラス用中間膜は、有機過酸化物等で架橋しても接着力が充分に高いとは言えない場合があり、また、無機微粒子の影響で色ムラが生ずる場合があるため、更なる改善が求められている。
従って、本発明の目的は、着色した合わせガラス用中間膜であって、初期接着力が高く、その初期接着力が長期に亘り維持された合わせガラス用中間膜を提供することにある。また、外観不良を防止した合わせガラス用中間膜を提供することにある。更に、この合わせガラス用中間膜を用いることにより耐久性が向上した合わせガラスを提供することにある。
本発明者は、上記目的を解決するため、種々の添加剤について検討を行った結果、上記目的は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、無機微粒子、架橋剤及び架橋助剤を含む合わせガラス用中間膜であって、更に酸変性ポリオレフィンを含み、前記酸変性ポリオレフィンの含有量が前記エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.5〜1.0質量部であり、前記架橋助剤の含有量が前記エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.5〜2質量部であり、酸変性ポリオレフィンの酸価が10〜60mgKOH/gであり、前記架橋剤がt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートであり、前記無機微粒子が炭酸カルシウム又は酸化チタンであり、前記架橋助剤がトリアリルイソシアヌレートであることを特徴とする合わせガラス用中間膜により達成することができることを見出した。
本発明の好ましい実施態様は以下の通りである。
(1)前記架橋助剤が、トリアリルイソシアヌレートである。
また、上記目的は、上記合わせガラス用中間膜を用いたことを特徴とする合わせガラスによっても達成される。
酸変性ポリオレフィンを添加することで、中間膜内で凝集する傾向にあった無機微粒子の分散性を向上させることができる。これにより、接着力が向上し、色ムラを防止することが可能となる。また、架橋剤及び架橋助剤を用いてEVAを高度に架橋させることで、EVAの劣化の原因となるラジカルの発生を防止することができる。これにより、合わせガラスを長期間に亘り使用した場合であっても高い接着力を維持することができると共に、中間膜の黄変を防止することが可能となる。従って、本発明の合わせガラス用中間膜によれば耐久性に優れ、外観性が向上した合わせガラスを提供することができる。
合わせガラスの概略断面図である。 接着力の評価方法である、180°ピール試験法を説明するための概略断面図である。
上述したように、本発明の合わせガラス用中間膜は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、無機微粒子、架橋剤及び架橋助剤を含み、更に酸変性ポリオレフィンを含むことを特徴とする。以下、本発明の合わせガラス用中間膜を詳細に説明する。
[酸変性ポリオレフィン]
酸変性ポリオレフィンをエチレン−酢酸ビニル共重合体に配合することにより混練に時間をかけることなく無機微粒子を均一に分散させることができる。本発明に使用する酸変性ポリオレフィンは、酸により変性したポリオレフィンであればどのようなものを用いてもよい。例えば、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸若しくはその無水物との反応生成物が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−メチル−4−ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンの単独重合体や上記α−オレフィン同士の共重合体、あるいはこれら単独重合体と共重合体の混合物等が挙げられる。不飽和カルボン酸若しくはその無水物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、アクリル酸及びこれらの無水物が挙げられる。この中でも特に無水マレイン酸が好ましい。
酸変性ポリオレフィンは、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して1.2質量部以下、好ましくは0.1〜1.0質量部、特に0.1〜0.5質量部の量で用いる。0.1質量部より少ないと分散効果が得られない場合があり、1.2質量部より多いと透明基板との接着力が十分に得られない場合がある。例示した酸変性ポリオレフィンは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸変性ポリオレフィンとしては、特に、酸価が10mgKOH/g以上、好ましくは10〜60mgKOH/gであるものを使用することが好ましい。10mgKOH/g未満であると効果が得られない場合があり、60mgKOH/gより高いと酸基の影響により中間膜の物性が低下する可能性がある。なお、酸価は、JIS K0070に従い、酸変性ポリオレフィン1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として求められる値である。
また、酸変性ポリオレフィンの分子量は、重量平均分子量が500〜5000、好ましくは1500〜3000であることが好ましい。重量平均分子量は、GPCにより求めた溶出曲線を標準ポリスチレンに換算することにより求めることができる。
[架橋剤]
本発明において架橋剤は、エチレン−酢酸ビニル共重合体の架橋構造を形成することができるものである。架橋剤は、有機過酸化物又は光重合開始剤を用いることが好ましい。なかでも、接着力、耐湿性、耐貫通性の温度依存性が改善された中間膜が得られることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
前記有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
前記有機過酸化物としては、樹脂の加工温度・貯蔵安定性の観点から例えば、ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、スクシニックアシドパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル+ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシド、tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサン、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、等が挙げられる。
ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが好ましく、調製条件、成膜温度、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して適宜選択できる。使用可能なベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤は1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
有機過酸化物として、特に、2,5−ジメチル−2,5ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートが好ましい。これにより、優れた接着性を有する合わせガラス用中間膜が得られる。
前記有機過酸化物の含有量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜3質量部であることが好ましい。前記有機過酸化物の含有量は、少ないと得られる中間膜の接着性が低下する恐れがあり、多くなると共重合体との相溶性が悪くなる恐れがある。
また、光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤でも使用することができるが、配合後の貯蔵安定性の良いものが望ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタ−ルなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレ−トなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系又は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種単独または2種以上の混合で使用することができる。
前記光重合開始剤の含有量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましい。
[架橋助剤]
本発明において、架橋助剤とは、架橋剤によるエチレン−酢酸ビニル共重合体の架橋反応を促進し、エチレン−酢酸ビニル共重合体のゲル分率を向上させる化合物をいう。ゲル分率を向上させることにより、合わせガラス用中間膜の接着性を向上させることができるだけでなく、長期間の使用において熱や光によりラジカルが発生するのを防止し、中間膜の黄変を防止することができる。
架橋助剤は従来から公知のものを使用することができ、特に限定されない。例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等に複数のアクリル酸あるいはメタクリル酸をエステル化したエステルやトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等を用いることができる。耐熱性を特に向上させることができる点からトリアジン環を有するトリアリルイソシアヌレート又はトリアリルシアヌレートが好ましい。
架橋助剤は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して6質量部以下、好ましくは0.1〜5質量部、特に0.5〜2.5質量部の範囲で添加する。この量より少ないと架橋促進効果が得られない場合があり、この量より多いと過剰の架橋助剤が中間膜に残存する結果となり、品質が低下する場合がある。上述の架橋助剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
[無機微粒子]
無機微粒子は着色したい色に応じて選択すればよく、特に限定されない。例えば、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸石灰粉、炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、石膏、アスベスト、クレー、シリカ粉、微粉ケイ酸、珪藻土、タルク、カオリナイト、ドロマイト、二酸化ケイ素、ガラスビーズ、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、亜鉛華、鉛白、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトポン、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、カーボンブラック、黒鉛、鉄黒、ミネラルブラック、珪酸亜鉛、硫化亜鉛カドミウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウム、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、鉛粉、亜鉛末、カドミウムスルフォセレナイド、カドミウムマーキュリー、アイアンオキサイド、ウルトラマリンレッド、クロム錫、ウルトラマリンピンク、ウルトラマリンバイオレット、マンガニーズバイオレット、カドミウムサルファイド、クロムイエロー、モリブデートオレンジ、チタニウムピグメント、セラミックイエロー、コバルトアルミネート、クロム・コバルト・アルミニウム、ウルトラマリンブルー、ウルトラマリングリーン、クロムグリーン、クロミウムオキサイド、セラミックブラックを用いることができる。
合わせガラスを着色する場合にはプライバシー保護等の目的で乳白色に着色することが多いが、この場合には上記無機微粒子の中でも炭酸カルシウム及び酸化チタンが好ましく用いられる。
前記無機微粒子の含有量は、合わせガラスの用途にもよるが、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、一般に0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部、特に3〜7質量部である。この量より少ないと着色目的が達成できない場合があり、この量より多いと中間膜の加工性が低下する場合がある。
無機微粒子の平均粒子径は、0.01〜10μm、特に0.1〜5μmとするのが好ましい。無機微粒子の平均粒子径が10μmを超えると、加熱加圧時の中間膜の流動に無機
微粒子がついていくのが困難となり、色ムラが発生し易くなる恐れがある。また、着色剤の平均粒子径が0.01μm未満であると無機微粒子が凝集し易くなる恐れがある。
なお、本発明において、無機微粒子の平均粒子径は、中間膜の断面を透過型電子顕微鏡により倍率100万倍程度で観測し、少なくとも100個の無機微粒子の面積円相当径を求めた数平均値とする。
[エチレン−酢酸ビニル共重合体]
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVAとも言う)を主成分とすることで、安価であり、耐貫通性や耐久性に優れる合わせガラス用中間膜を形成することができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量は、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の質量を基準として20〜35質量%、さらに22〜30質量%、特に24〜28質量%とするのが好ましい。酢酸ビニルの含有量が20質量%未満であると、高温で加工性が低下する恐れがあり、35質量%を超えると、合わせガラスにした場合の耐衝撃性及び耐貫通性が不足する傾向がある。
本発明の合わせガラス用中間膜は、エチレン−酢酸ビニル共重合体に加えて、さらにポリビニルアセタール系樹脂(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール(PVB樹脂)、変性PVB)、塩化ビニル樹脂を副次的に使用しても良い。その場合、特にPVBが好ましい。
[接着向上剤]
本発明の合わせガラス用中間膜は、加工性及び耐久性の観点から優れた接着力を有するのが好ましい。そのために、接着向上剤をさらに含んでいても良い。接着向上剤としては、シランカップリング剤を用いることができる。これにより、優れた接着力を有する合わせガラス用中間膜を形成することが可能となる。前記シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。なかでも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましく挙げられる。
前記シランカップリング剤の含有量はエチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.1〜0.7質量部、特に0.3〜0.65質量部であることが好ましい。
[その他]
本発明の合わせガラス用中間膜は、膜の種々の物性(機械的強度等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整のため、必要に応じて、可塑剤などの各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に多塩基酸のエステル、多価アルコールのエステルが使用される。その例としては、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネートを挙げることができる。可塑剤は一種用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。可塑剤の含有量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して5質量部以下の範囲が好ましい。
アクリロキシ基含有化合物及びメタクリロキシ基含有化合物としては、一般にアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体であり、例えばアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルやアミドを挙げることができる。エステル残基の例としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等の直鎖状のアルキル基、シクロヘキシル基、テトラヒドルフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプオピル基を挙げることができる。アミドの例としては、ジアセトンアクリルアミドを挙げることができる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルも挙げることができる。
エポキシ含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(エチレンオキシ)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテルを挙げることができる。
前記アクリロキシ基含有化合物、前記メタクリロキシ基含有化合物、または前記エポキシ基含有化合物は、それぞれエチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対してそれぞれ一般に0.5〜5.0質量部、特に1.0〜4.0質量部含まれていることが好ましい。
更に、本発明の合わせガラス用中間膜は、紫外線吸収剤、光安定剤および老化防止剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤を含むことにより、照射された光などの影響によってエチレン−酢酸ビニル共重合体が劣化し、合わせガラス用中間膜が黄変するのを抑制することができる。紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく挙げられる。なお、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の配合量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
また、光安定剤を含むことによっても、照射された光などの影響によってエチレン−酢酸ビニル共重合体の劣化し、合わせガラス用中間膜が黄変するのを抑制することができる。光安定剤としてはヒンダードアミン系と呼ばれる光安定剤を用いることが好ましく、例えば、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63LA−63p、LA−67、LA−68(いずれも(株)ADEKA製)、Tinuvin744、Tinuvin 770、Tinuvin 765、Tinuvin144、Tinuvin 622LD、CHIMASSORB 944LD(BASFジャパン社製)、UV−3034(B.F.グッドリッチ社製)等を挙げることができる。なお、上記光安定剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
老化防止剤としては、例えばN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。
上述した本発明の合わせガラス用中間膜を形成するには、公知の方法に準じて行えばよい。例えば、上記の各材料をスーパーミキサー(高速流動混合機)、ロールミル等を用いて公知の方法で混合した組成物を通常の押出成形、又はカレンダ成形(カレンダリング)等により成形してシート状物を得る方法により製造することができる。また、前記組成物を溶剤に溶解させ、この溶液を適当な塗布機(コーター)で適当な支持体上に塗布、乾燥して塗膜を形成することによりシート状物を得ることもできる。尚、製膜時の加熱温度は、架橋剤が反応しない或いはほとんど反応しない温度とすることが好ましい。例えば、50〜90℃、特に40〜80℃とするのが好ましい。また、この方法以外にも、EVA、無機微粒子及び酸変性ポリオレフィンを予め混合してマスターバッチを作製し、次いでこのマスターバッチと更にEVA及び他の成分とを混合して上述のように押出成形等を行い中間膜を製造することもできる。合わせガラス用中間膜の厚さは、特に制限されないが、50μm〜5mmの範囲であればよい。
[合わせガラス]
本発明の合わせガラスは、本発明の合わせガラス用中間膜を用いていれば良い。上記のように本発明の合わせガラス用中間膜は長期間使用しても高い接着力を維持することができ、黄変が生じないので、耐久性の高い合わせガラスを提供することができる。本発明の合わせガラスを製造するには、例えば、図1に示したように、本発明の合わせガラス用中間膜22を2枚のガラス板21A及び21Bの間に狭持して、得られた積層体を脱気した後、加熱下に押圧する方法などが用いられる。これらの工程は、例えば、真空袋方式、ニップロール方式等を用いて行われる。これにより、合わせガラス用中間膜22が硬化して、合わせガラス用中間膜22とガラス板21A及び21Bとを接着一体化することができる。製造条件としては、例えば、上記積層体を80〜120℃の温度で予備圧着し、100〜150℃(特に130℃付近)で10分〜1時間加熱処理することによりEVAを架橋させる。また、加熱処理は加圧下で行ってもよい。このとき、積層体を1.0×103Pa〜5.0×107Paの圧力で加圧しながら行うのが好ましい。架橋後の冷却は一般に室温で行われるが、特に、冷却は速いほど好ましい。
本発明におけるガラス板は透明基板であれば良く、例えば、グリーンガラス、珪酸塩ガラス、無機ガラス板、無着色透明ガラス板などのガラス板の他、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンブチレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のプラスチック製の基板又はフィルムを用いてもよい。耐候性、耐衝撃性等の点でガラス板が好ましい。ガラス板の厚さは、1〜20mm程度が一般的である。合わせガラスにおいて両側に配置されるそれぞれのガラス板は、同一のもの用いてもよく、異なる基材を組み合わせて用いてもよい。基材の強度と合わせガラスの用途とを考慮して、組み合わせを決定する。
本発明の合わせガラスは、建築物や乗り物(自動車、鉄道車両、船舶)用のガラス、建築物内のプライバシー保護用ガラス、冷蔵庫や保温装置などのような各種装置や家具の扉や壁部など、種々の用途に使用することができる。
以下、本発明を実施例により説明する。なお、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
(実施例1〜7、比較例1〜4)
表1に示す配合で各材料をロールミルに供給し、70℃において混練して合わせガラス用中間膜組成物を調製した。前記合わせガラス用中間膜組成物を70℃においてカレンダ成形し、放冷後、合わせガラス用中間膜(0.4mm)を得た。
次に、ガラス板(3mm)/上記合わせガラス用中間膜(0.4mm)/ガラス板(3mm)の順で積層し、得られた積層体を真空ラミネータにて90℃の温度で30分間仮圧着した後、オーブンに入れ、温度135℃の条件で45分架橋させて合わせガラスを得た。なお、本実施例で使用した酸変性ポリオレフィンの酸価は60mgKOH/g、重量平均分子量は1500である。また、炭酸カルシウムの平均粒子径は、1.5μmである。
(評価方法)
(1)初期接着力
上記合わせガラス用中間膜の初期接着力を180°ピール試験(JIS K 6584、1994年)により評価した。180°ピール試験は、具体的には、下記手順に従って図2に示すように行った。
1枚のガラス板3mmと合わせガラス用中間膜(0.4mm)を積層して上記と同様に架橋させて得た積層体について、図2に示すように、ガラス基板21と合わせガラス用中間膜23との間の一部を剥離して、合わせガラス用中間膜23を180°折り返して引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ)を用いて引っ張り速度100mm/分時の引き剥がし力をガラス接着力[N/cm]として測定した。
(2)耐熱性(黄変度)
上記で作製した合わせガラスを85℃環境下において1000時間放置した。放置前後の黄色度(YI)を測定し、その差から黄変度(ΔYI)を得た。YI値はJIS−K−7105−6(1981)に準拠して、SMカラーメーター(スガ試験機社製)を用いて測定した。
(3)耐湿熱性(接着力低下率)
上記合わせガラスを、85℃85%RH環境下において1000時間放置し、放置後の接着力を(1)と同様に測定した。初期接着力を100としたときの接着力の低下率を算出し、接着力低下率(%)を得た。
Figure 0005879043
(評価結果)
実施例1〜7において、酸変性ポリオレフィン及び架橋助剤を配合した合わせガラス用中間膜は初期接着力が高く、黄変度及び接着力低下率が低いことが示された。特に、酸変性ポリオレフィンを0.2〜1.0質量部、架橋助剤を0.5〜5質量部配合した実施例1〜5については各評価いずれにおいても顕著な効果が示された。一方、酸変性ポリオレフィンを添加しなかった比較例2は接着力低下率が大きいことが認められた。また、架橋助剤を添加しなかった比較例3及び4は、黄変度及び接着力低下率が大きいことが認められた。
以上により、EVA、無機微粒子、架橋剤、架橋助剤及び酸変性ポリオレフィンを含む合わせガラス用中間膜は、長期間に亘り高い接着力を維持することができ、また黄変を防止することができることが示された。
本発明の合わせガラス用中間膜を合わせガラスに使用することで、耐久性に優れた着色合わせガラスを提供することができる。
21、21A、21B 透明基板
22、23 合わせガラス用中間膜

Claims (2)

  1. エチレン−酢酸ビニル共重合体、無機微粒子、架橋剤及び架橋助剤を含む合わせガラス用中間膜であって、更に酸変性ポリオレフィンを含み、
    前記酸変性ポリオレフィンの含有量が前記エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.5〜1.0質量部であり、
    前記架橋助剤の含有量が前記エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.5〜2質量部であり、
    酸変性ポリオレフィンの酸価が10〜60mgKOH/gであり、
    前記架橋剤がt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートであり、
    前記無機微粒子が炭酸カルシウム又は酸化チタンであり、
    前記架橋助剤がトリアリルイソシアヌレートであることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
  2. 請求項に記載の合わせガラス用中間膜を用いたことを特徴とする合わせガラス。
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