JP4800173B2 - 合わせガラスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エチレン−極性モノマー共重合体を主成分とする中間膜を用いた合わせガラスの製造方法に関し、特に優れた外観特性を保持することが可能な合わせガラスの製造方法に関する。
従来から、二枚の透明基板の間に中間膜として接着樹脂層を介在させた構造を有する合わせガラスが知られている。合わせガラスでは、中間膜の存在により、耐貫通性等が向上している。したがって、例えば自動車の合わせガラスは、盗難や侵入等を目的として破壊されても窓の開放を自由にすることができないため、防犯用ガラスとしても有用である。また外部からの衝撃に対し、破損したガラスの破片は中間膜に貼着したままとなるので、その飛散を防止している。
このような合わせガラスは、航空機、自動車のフロントガラスやサイドガラス、建築物の窓ガラス、ショーウィンドウ、水槽、プールの覗き窓、OA関連機器、事務機器、および、電気・電子機器など種々の用途に用いられている。したがって、合わせガラスは、耐貫通性や割れたガラスの飛散防止などの安全性を確保するとともに、高度な外観特性を有することが必要とされている。
また、用途が多様化するのに伴って、合わせガラスにはプライバシー保護性及び意匠性が要求される場合も生じ、無色透明の合わせガラスだけでなく、着色された合わせガラスが必要とされる場合もある。着色された合わせガラスとしては、安価に製造できることから、着色した中間膜を透明基板の間に介在させたものなどが用いられている(特許文献1)。
このような合わせガラスを製造するには、一般的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及び架橋剤などを含む樹脂組成物を押出成形等により成膜した後、二枚の透明基板の間に挟持させ、得られた積層体を脱気しながら加熱して仮圧着を行った後、オートクレーブ中でEVAを架橋させる本接着を行う方法が用いられている(特許文献2〜4)。
特開平06−305786号公報 特開2002−187746号公報 特開2002−046217号公報 特開2002−068785号公報
このような合わせガラスは、数十年以上とも言われるほど長期間に亘って、温度や湿度の変化が激しい外気に曝されるなど、過酷な環境下で使用される。しかしながら、従来の合わせガラスでは、使用条件によっては、ガラス端部で中間膜による接着力が経時的に低下して透明基板と中間膜とが剥離したり、ボルトなどの取付器具用の穴が形成された場合には前記穴の周辺に流れ模様が発生したりする。また、合わせガラスの端部において透明基板と中間膜とが剥離すると、中央部に向かって透明基板と中間膜との剥離がさらに進む。このような剥離や流れ模様の発生は、合わせガラス表面の外観特性を著しく低下させる。
したがって、本発明は、製造後から長期間に亘り優れた外観特性を保持することができる合わせガラスの製造方法を提供することを目的とする。
従来の合わせガラスの製造方法では、仮圧着工程において圧力が積層体の端部に集中するため、合わせガラスの端部において透明基板が中間膜側に向かって変形し、これにより中間膜の厚さが薄くなる問題があった。これにより合わせガラスの端部に生じた残存歪(残存応力)は、特に使用環境における温度差が大きいと経時的に回復し、合わせガラスの端部で透明基板と中間膜との剥離が生じる。また、合わせガラスに取付器具用の穴を開けた場合には、穴周辺の中間膜が穴の内部へ流動し、これにより流れ模様が発生する。
本発明者等は、このような知見に着目して種々の検討を行った結果、合わせガラス用中間膜を二枚の透明基板で挟んだ積層体を融着させる際の加熱処理を3工程で行い、各工程において加熱温度及び圧力を所定の範囲内に設定することにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、エチレン−極性モノマー共重合体及び架橋剤を含む合わせガラス用中間膜を二枚の透明基板で挟み、これにより得られた積層体を加熱処理することにより融着させる合わせガラスの製造方法であって、
前記エチレン−極性モノマー共重合体の融点をTm(℃)としたとき、
前記積層体を、真空下、Tm〜Tm+25(℃)の温度で加熱処理する予備圧着工程と、
前記予備圧着工程後に前記積層体を、前記予備圧着工程よりも真空度を下げ、Tm+20(℃)〜Tm+45(℃)の温度で加熱処理する仮接着工程と、
前記仮接着工程後に前記積層体を、常圧下、Tm+30(℃)〜Tm+60(℃)の温度で加熱処理する本接着工程と、を含み、
前記予備圧着工程における加熱処理の温度(T1)、前記仮接着工程における加熱処理の温度(T2)及び記本接着工程における加熱処理の温度(T3)が、T1<T2<T3の関係を満たすことを特徴とする合わせガラスの製造方法により上記課題を解決する。
本発明の製造方法の好ましい態様を以下に列記する。
(1)前記仮接着工程における真空度は、前記予備圧着工程における真空度よりも150〜760mmHg低い。
(2)前記予備圧着工程における加熱処理を、400mmHg以上の真空度で行う。
(3)前記予備圧着工程において、前記積層体を10〜760mmHg/分の減圧速度で減圧する。これにより、合わせガラス用中間膜の流動を抑制して、より確実に脱気することができる。
(4)前記仮接着工程における加熱処理を、0〜200mmHgの真空度で行う。
(5)合わせガラス用中間膜の流動をより抑制するために、前記仮接着工程の後、前記積層体を50℃以下に冷却してから前記本接着工程を行う。
(6)前記予備圧着工程、前記仮接着工程及び前記本接着工程における加熱処理を、それぞれ10分以上行う。
(7)前記エチレン−極性モノマー共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体である。
(8)前記エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して24〜35質量部である。
(9)前記合わせガラス用中間膜が、着色剤をさらに含む。外観特性を保持する観点から、このような合わせガラスの製造に本発明の方法が用いられるのが特に好ましい。
(10)前記合わせガラス用中間膜が、ガラスビーズ、チタン白、及び炭酸カルシウムよりなる群から選択される少なくとも一種の白色着色剤をさらに含む。
(11)前記透明基板の厚さが、2〜20mmである。外観特性を保持する観点から、このような合わせガラスの製造に本発明の方法が用いられるのが特に好ましい。
本発明の方法によれば、合わせガラスの形成に用いられる積層体の加熱融着において、透明基板の端部における変形及び合わせガラス用中間膜の流動を抑制することができる。したがって、本発明の方法により得られる合わせガラスは、各層間の剥離が生じず、取付部材用の穴が形成されていても流れ模様の発生がなく、製造後から長期間に亘って優れた外観特性を保持することができる。さらに、透明基板と合わせガラス用中間膜との高い接着性を維持することができ、耐久性にも優れる。
本発明の方法は、流れ模様が特に発生し易い着色剤を含む合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの製造方法として好ましく用いられる。
本発明の合わせガラスの製造方法は、エチレン−極性モノマー共重合体及び架橋剤を含む合わせガラス用中間膜を二枚の透明基板で挟み、これにより得られた積層体を、予備圧着工程、仮接着工程及び本接着工程の3工程において加熱処理することにより、合わせガラス用中間膜と透明基板とを融着させる。特に本発明の方法では、予備圧着工程、仮接着工程及び本接着工程の各工程において、加熱処理温度及び圧力を所定の範囲内とすることを特徴とする。
高温になるほどエチレン−極性モノマー共重合体の架橋反応が進行し、合わせガラス用中間膜が軟化又は溶融する。これは、合わせガラスの端部において透明基板の変形によって中間膜が薄くなったり、取付器具用の穴の内部へ中間膜が流動したりする原因となる。したがって、本発明の方法では、予備圧着工程、仮接着工程及び本接着工程において、加熱処理温度を上昇させるとともに積層体にかかる圧力を低減させることによって、合わせガラス用中間膜が軟化又は溶融して接着性を発現する際に積層体に過剰な圧力がかかるのを抑制することができる。
このように本発明の方法により製造された合わせガラスは、取付器具用の穴が形成された場合であっても流れ模様の発生がなく、さらに長期間に亘る使用においても透明基板と中間膜の剥離が生じず、製造後から長期間に亘り優れた外観特性を保持することが可能である。
なお、本発明において、合わせガラスにおける「ガラス」とは透明基板全般を意味するものであり、したがって「合わせガラス」とは透明基板に中間膜を挟持してなるものを意味する。
本発明の方法を以下、順を追ってより詳細に説明する。
本発明の方法では、透明基板/合わせガラス用中間膜/透明基板の順となるように、上述した合わせガラス用中間膜を二枚の透明基板で挟むことにより得られた積層体を、予備圧着工程、仮接着工程及び本接着工程でそれぞれ加熱処理することにより、合わせガラス用中間膜と透明基板とを融着させる。
(予備圧着工程)
積層体中に気泡が存在すると、透明基板と合わせガラス用中間膜との接着性を低減させる恐れがある。したがって、まず、予備圧着工程では、積層体中、特に合わせガラス用中間膜中に含まれる気泡を脱気させて透明基板と合わせガラス用中間膜との圧着を行う。
具体的には、前記エチレン−極性モノマー共重合体の融点をTm(℃)としたとき、前記積層体を、真空下、Tm〜Tm+25(℃)の温度で加熱処理する。
本発明において、後に行う仮接着工程における加熱処理を当該予備圧着工程よりも低い真空度で行うが、好ましくは前記仮接着工程における真空度が前記予備圧着工程における真空度よりも好ましくは150〜760mmHg、より好ましくは300〜760mmHg低くして行う。これにより、上述した透明基板の変形や合わせガラス中間膜の流動を抑制することができる。したがって、これらを考慮して、予備接着工程の加熱処理における真空度を設定するのが好ましい。
予備圧着工程における加熱処理は、好ましくは400mmHg以上、より好ましくは400〜760mmHg、特に好ましくは600〜760mmHgの真空度で行う。これにより、合わせガラス用中間膜の流動を抑制しつつ、積層体の脱気を十分に行うことができる。
予備圧着工程では、急激に減圧を行うと積層体の脱気を十分に行えないだけでなく、合わせガラス用中間膜が流動する恐れがある。したがって、積層体を、好ましくは10〜760mmHg/分、より好ましくは100〜400mmHg/分の減圧速度で減圧して上記減圧雰囲気とするのがよい。
また、予備圧着工程では、積層体の加熱処理温度は、Tm〜Tm+25(℃)の温度で加熱処理を行うが、好ましくはTm〜Tm+15(℃)、より好ましくはTm〜Tm+10(℃)の温度で加熱処理を行うのが好ましい。これにより、合わせガラス用中間膜が適度に軟化して、脱気とともに合わせガラス用中間膜と透明基板との圧着をすることが可能となる。
積層体を加熱処理する際の昇温速度は、好ましくは0.5〜10℃/分、より好ましくは1〜5℃/分とするのがよい。これにより、合わせガラス用中間膜の流動をより確実に抑制することができる。
予備圧着工程においては、減圧と同時に昇温させて積層体に加熱処理を行ってもよいが、より確実に脱気を行うには、真空度400mmHg以上とした後にTm〜Tm+25(℃)の温度まで昇温させて加熱処理を実施するのが好ましい。
加熱処理時間は、10分以上、好ましくは10〜60分間、行えばよい。これにより、積層体を十分に脱気して、透明基板と合わせガラス用中間膜との接着性を向上させることができる。
本発明の方法では、各工程において積層体を減圧雰囲気下に設置するには加熱を同時に行える公知の減圧装置を用いて行えばよい。具体的には、真空ラミネーター、オートクレーブの他、ゴム袋などのゴムや樹脂のシートやフィルムなど気体非透過性の柔軟な膜からなる容器に、積層体を収容し、オーブンに入れる手段などを用いることができる。
なお、本発明では、各工程において規定する加熱処理温度とは、積層体における透明基板表面の温度とする。また、真空度とは、真空の度合いを常圧(760mmHg)との差で示す値とする。
エチレン−極性モノマー共重合体の融点(Tm)は、示差走査熱量計(セイコー電子株式会社製 DSC−220C)を用いて測定した値とする。
(仮接着工程)
本発明の方法では、上述した予備圧着工程後、前記積層体を、前記予備圧着工程よりも真空度を下げ、Tm+20(℃)〜Tm+45(℃)の温度範囲内で且つ予備圧着工程よりも高い温度となるように加熱処理する仮接着工程を実施する。予備接着工程後にこのような真空度及び温度で加熱処理することにより、予備接着工程よりも合わせガラス用中間膜を、流動を抑制しつつさらに軟化させて、合わせガラスと透明基板との特に端部における接着性を向上させることができる。
仮接着工程における加熱処理は、前記予備圧着工程よりも低い真空度で行われる。具体的には、仮接着工程における加熱処理は、好ましくは0〜200mmHg、より好ましくは50〜150mmHg、特に好ましくは50〜100mmHgの真空度で行われる。これにより、合わせガラス用中間膜の流動を十分に抑制することができる。なお、真空度0とは、常圧(760mmHg)を意味する。
また、仮接着工程では、Tm+20(℃)〜Tm+45(℃)の温度で、積層体の加熱処理を行うが、好ましくはTm+25(℃)を超えてTm+40(℃)以下、特に好ましくはTm+25(℃)を超えてTm+35(℃)以下の温度で加熱処理を行うのが好ましい。これにより、合わせガラス用中間膜が適度に軟化して、透明基板との接着性を向上させることが可能となる。
仮接着工程では、予備圧着工程よりも高い温度で積層体の加熱処理を行う。このとき、積層体を加熱処理する際の昇温速度は、好ましくは0.1〜5℃/分、より好ましくは0.5〜2℃/分とするのがよい。これにより、合わせガラス用中間膜の流動をより確実に抑制することができる。
加熱処理時間は、10分以上、好ましくは10〜60分間、行えばよい。これにより、透明基板と合わせガラス用中間膜との接着性をさらに向上させることができる。
(本接着工程)
本発明の方法では、上述の通りに仮接着工程を実施した後、前記積層体を常圧下、Tm+30(℃)〜Tm+60(℃)の温度で且つ前記仮接着工程における加熱処理温度よりも高い温度で加熱処理する本接着工程を実施する。これにより、合わせガラス用中間膜中に含まれる架橋剤、架橋助剤などの各主成分との反応が生じて合わせガラス用中間膜が架橋硬化することができる。上記2工程では減圧などにより合わせガラス用中間膜と透明基板とは加圧により物理的に接着されているだけであるが、本接着工程により合わせガラス用中間膜と透明基板とを化学反応によってより強く接着することができる。また、架橋反応が進行するほどの高温下での合わせガラス用中間膜は粘度が低下して、流動しやすい状態となっている。したがって、仮接着工程における積層体の加熱処理は上記温度範囲及び常圧下で行うことにより、合わせガラス用中間膜の流動を抑制することができる。
本接着工程において、Tm+30(℃)〜Tm+60(℃)の温度で加熱処理するが、好ましくはTm+45(℃)を超えてTm+58(℃)以下、特に好ましくはTm+50(℃)〜Tm+55(℃)の温度で加熱処理を行うのが好ましい。これにより、エチレン−極性モノマー共重合体の架橋密度が向上し、架橋硬化後の合わせガラス用中間膜と透明基板との接着性を向上させることができる。
本接着工程における加熱処理の実施は、仮接着工程の後、前記積層体の温度を50℃以下、特に15〜30℃に冷却してから行うのが好ましい。これにより、本接着工程における合わせガラス用中間膜の流動をより高く防止することができる。
さらに、前記冷却後、本接着工程における加熱処理を実施する際には、積層体をゆっくり加熱するのが好ましい。これにより、合わせガラス用中間膜の流動をより高く防止することができる。具体的には、0.5〜10℃/分、好ましくは1〜5℃/分の昇温速度で積層体を加熱するのが好ましい。
加熱処理時間は、10分以上、好ましくは10〜60分間、行えばよい。これにより、エチレン−極性モノマー共重合体の架橋反応を十分に進行させ、高い接着性を発揮させることができる。
なお、本発明の方法において「常圧」とは、積極的に加圧又は減圧操作を施していない状態をいう。オートクレーブ中などで強制的に熱風を吹き込むことにより大気圧よりも圧力が高くなっている状態であっても「常圧」に含まれるものとする。
(合わせガラス用中間膜)
本発明の方法に用いられる合わせガラス用中間膜は、エチレン−極性モノマー共重合体及び架橋剤を含む。このような合わせガラス用中間膜としては、従来公知のものであれば特に制限なく用いられる。
(エチレン−極性モノマー共重合体)
前記エチレン−極性モノマー共重合体の極性モノマーとしては、不飽和カルボン酸、その塩、そのエステル、そのアミド、ビニルエステル、一酸化炭素などを例示することができる。より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸、これら不飽和カルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属の塩やマグネシウム、カルシウム、亜鉛などの多価金属の塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、一酸化炭素、二酸化硫黄などの一種又は二種以上などを例示することができる。
エチレン−極性モノマー共重合体としてより具体的には、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、前記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部又は全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−アクリル酸nブチル共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸nブチル−メタクリル酸共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸エステル−不飽和カルボン酸共重合体及びそのカルボキシル基の一部又は全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体のようなエチレン−ビニルエステル共重合体などを代表例として例示することができる。
なかでも、エチレン−極性モノマー共重合体として、最も好ましくは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられる。これにより、安価であり、接着性及び柔軟性に優れる合わせガラス用中間膜とすることができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量は、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して24〜26質量部とするのが好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量が24質量部未満であると圧延加工性が低下して、合わせガラス用中間膜の接着性などを向上させるための架橋硬化を十分に行えない恐れがあった。一方、圧延加工性を向上させるために、エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量を特に24質量部以上に高くすると、エチレン−酢酸ビニル共重合体の溶融粘度が高くなり、合わせガラス用中間膜の流動を乱すことによって、外観特性の低下、特に取付器具用の穴が形成された場合に穴の周辺に流れ模様が顕著に発生し易い問題があった。しかしながら、本発明の方法によれば、酢酸ビニルの含有量が24〜26質量部のエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む合わせガラス用中間膜を用いても、優れた圧延加工性を有し、流れ模様の発生が抑制された合わせガラスを製造することが可能となる。
(架橋剤)
本発明に用いられる合わせガラス用中間膜は、エチレン−極性モノマー共重合体の他に、架橋剤を少なくとも含む。これにより、エチレン−極性モノマー共重合体の架橋密度を向上させることができ、優れた接着力を発現することが可能となる。
前記架橋剤としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生する有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
前記有機過酸化物としては、樹脂の加工温度・貯蔵安定性の観点から例えば、ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、スクシニックアシドパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル+ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキサシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサネート、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシド、tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、等が挙げられる。
また、前記ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。また、架橋剤は1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
架橋剤として、特に好ましくは、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートが挙げられる。この有機過酸化物であれば、エチレン−極性モノマー共重合体の架橋密度を向上させることができる。
前記合わせガラス用中間膜における架橋剤の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、好ましくは0.1〜5.0質量部、より好ましくは0.3〜3.0質量部である。架橋剤の含有量は、多すぎると共重合体との相溶性が悪くなる恐れがある。
(架橋助剤)
さらに、本発明に用いられる合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、架橋助剤を含んでいてもよい。前記架橋助剤は、エチレン−極性モノマー共重合体のゲル分率を向上させ、合わせガラス用中間膜の機械的強度を向上させるために組成物に添加することができる。この目的に供される架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)としては、公知のものとしてトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等も挙げることができる。なかでも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。これらの架橋助剤は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、一般に10質量部以下、好ましくは0.1〜5質量部で使用される。
(着色剤)
本発明に用いられる合わせガラス用中間膜は、着色剤をさらに含むのが好ましい。従来から種々の用途に合わせて合わせガラスを着色することが行われていた。しかしながら、着色剤を含むあわせガラス用中間膜では、着色剤が合わせガラス用中間膜の流動を乱すことによって、外観特性の低下、特に取付器具用の穴が形成された場合に穴の周辺に流れ模様が顕著に発生し易い問題があった。したがって、本発明の製造方法はこのような合わせガラス用中間膜に着色剤を用いて、着色された合わせガラスを製造するために用いられるのが有用である。
前記着色剤は、無機系及び有機系のいずれのものであってもよい。この着色剤としては、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、アスベスト、クレー、シリカ粉、微粉ケイ酸、珪藻土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、亜鉛華、鉛白、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトポン、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、ミネラルブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、珪酸亜鉛、硫化亜鉛カドミウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウム、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、鉛粉、亜鉛末、アントラキノンレッド、イソインドリノンレッド、ディス・アゾ・レッド、ジアニシジンレッド、RKアンタンスロンレッド、ピランスロンオレンジ、GRペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、フラバンスロンイエロー、アントラピリミジンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カドミウムスルフォセレナイド、カドミウムマーキュリー、アイアンオキサイド、ウルトラマリンレッド、クロム錫、ウルトラマリンピンク、ウルトラマリンバイオレット、マンガニーズバイオレット、カドミウムサルファイド、クロムイエロー、モリブデートオレンジ、チタニウムピグメント、セラミックイエロー、コバルトアルミネート、クロム・コバルト・アルミニウム、ウルトラマリンブルー、ウルトラマリングリーン、クロムグリーン、クロミウムオキサイド、セラミックブラックを挙げることができる。前記着色剤は、1種類のみでも2種類以上を組み合わせても用いることができる。
なかでも、白色、特に乳白色に着色された合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスにおいて、外観特性の低下が発生し易い。したがって、本発明の方法においては、ガラスビーズ、チタン白、及び炭酸カルシウムよりなる群から選択される少なくとも一種の白色着色剤を含む合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの製造方法として特に有用である。
前記着色剤の含有量は、前記エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部とすればよい。
また、前記着色剤をエチレン−極性モノマー共重合体に添加する方法としては、直接添加しても、又はエチレン−極性モノマー共重合体に高濃度の着色剤を添加した組成物(マスターバッチ)をエチレン−極性モノマー共重合体と混合して(マスターバッチ法)もよい。
(その他の添加剤)
本発明に用いられる合わせガラス用中間膜は、膜の種々の物性(機械的強度、接着性、透明度等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整、特に機械的強度の改良のため、必要に応じて、可塑剤、接着向上剤などの各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
前記可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に多塩基酸のエステル、多価アルコールのエステルが使用される。その例としては、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネートを挙げることができる。可塑剤は一種用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。可塑剤の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して5質量部以下の範囲が好ましい。
前記接着向上剤は、シランカップリング剤を用いることができる。前記シランカップリング剤の例として、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。また前記接着向上剤の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。
さらに、本発明に用いられる合わせガラス用中間膜は、紫外線吸収剤、光安定剤および老化防止剤を含んでいてもよい。
前記紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく挙げられる。なお、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の配合量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
前記光安定剤としてはヒンダードアミン系と呼ばれる光安定剤を用いることが好ましく、例えば、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63LA−63p、LA−67、LA−68(いずれも株式会社ADEKA製)、Tinuvin744、Tinuvin 770、Tinuvin 765、Tinuvin144、Tinuvin 622LD、CHIMASSORB 944LD(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、UV−3034(B.F.グッドリッチ社製)等を挙げることができる。なお、上記光安定剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
前記老化防止剤としては、例えばN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。
合わせガラス用中間膜の厚さは、0.2〜1.6mmが好ましく、特に0.3〜1.3mmが好ましい。
(合わせガラス用中間膜の製造)
合わせガラス用中間膜は、上述したエチレン−極性モノマー共重合体及び架橋剤などの各種成分を含む組成物を、公知の方法を用いて、シート状に形成することにより製造される。例えば、前記組成物を、通常の押出成形、又はカレンダ成形(カレンダリング)等により成形してシート状物を得る方法により製造することができる。また、前記組成物を溶剤に溶解させ、この溶液を適当な塗布機(コーター)で適当な支持体上に塗布、乾燥して塗膜を形成することによりシート状物を得ることもできる。
製膜時の加熱温度は、架橋剤が反応しない或いはほとんど反応しない温度とすることが好ましい。例えば、50〜90℃、特に40〜80℃とするのが好ましい。
(透明基板)
合わせガラスに用いられる透明基板としては、特に限定されないが、例えば珪酸塩ガラス、無機ガラス板、無着色透明ガラス板などのガラス板の他、プラスチックフィルムを用いてもよい。前記プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンアフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンブチレートフィルムを挙げることができ、PETフィルムが好ましい。
本発明の合わせガラスの層構成としては、例えば、透明基板−中間膜−透明基板、透明基板−中間膜−ポリカーボネート膜−中間膜−透明基板とすることができる。中間膜の両側に配置されるそれぞれの透明基板は、同一の透明基板を用いてもよく、異なる透明基板を組み合わせて用いてもよい。透明基板の強度と合わせガラスの用途とを考慮して、透明基板の組み合わせを決定するのが好ましい。
透明基板の厚さは、1〜20mm程度が一般的である。しかしながら、透明基板の厚さが厚いほど、製造工程における透明基板の変形が大きく、合わせガラスの端部で透明基板と中間膜との剥離を招きやすくなる。したがって、本発明の方法は厚さが2〜20mm、特に5〜15mmと比較的、厚い透明基板を用いた合わせガラスの製造に有用である。
本発明の方法により得られる合わせガラスは、優れた外観特性を製造後から長期間に亘って保持することができることから、以下のような用途に好適に使用することができる。すなわち、自動車の嵌め込みガラス、サイドガラス及びリヤガラス、鉄道車両、例えば普通車両、急行車両、特急車両及び寝台車両等の乗客出入り用開閉ドアの扉ガラス、窓ガラス及び室内ドアガラス、ビル等の建物における窓ガラス及び室内ドアガラス等、室内展示用ショーケース及びショーウィンド、水槽などである。しかしながら、用途がこれらに限定されるわけでなない。
以下、本発明を実施例により説明する。本発明は、以下の実施例により制限されるものではない。
(実施例1)
1.合わせガラス用中間膜の作製
下記配合;
EVA(EVA100質量部に対して酢酸ビニル(VA)の含有量25質量部、融点(Tm)
78℃)100質量部、
架橋剤(tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート;日本油脂株式会社製 パーブチル(登録商標)E)2.5質量部、
架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート;日本化成株式会社 TAIC(登録商標))2質量部、
着色剤(CaCO3) 5質量部
シランカップリング剤:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、SZ6030)0.5質量部、
紫外線吸収剤:2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン(BASFジャパン社製、2ビナール3049)0.2質量部、
を、ロールミルに供給し、80℃で、混練して組成物を調製した。上記で調製したEVAフィルム形成用組成物を、カレンダロール温度80℃、加工速度5m/分で、カレンダ成形し、放冷することにより、合わせガラス用中間膜(厚さ0.4mm、大きさ2200mm(幅)×100mm)を製膜した。
2.予備圧着工程
洗浄乾燥した2枚の直径25mmの円形の取付部材用の穴を有するガラス板(厚さ8mm、大きさ300mm×300mm)の間に、前記合わせガラス用中間膜を挟んだ。これにより積層体を得、取付部材用穴の内部に露出している合わせガラス用中間膜のみを切り取った。次に、積層体をゴムバックに入れ、100mmHg/分の減圧速度で8分間かけて減圧することにより760mmHgの真空度とした後、オーブンに入れ25℃から2℃/分の昇温速度で30分かけて昇温させ、透明基板表面の温度が80℃に達してから60分間、加熱処理を行った。
3.仮接着工程
上記予備圧着工程を実施した後、続けて、100mmHg/分の昇圧速度で8分かけて常圧まで昇圧して減圧操作を停止するとともに、1.5℃/分の昇温速度で20分かけて昇温させて透明基板表面の温度が110℃に達してから30分間、加熱処理を行った。
4.本接着工程
上記仮接着工程を実施した後、常圧下で、3℃/分の昇温速度で40分かけて昇温させ、透明基板表面の温度が135℃に達してから30分間、保持することにより積層体の加熱処理を行った。その後、オーブン内から前記積層体を取り出すことにより、合わせガラスを得た。
(実施例2〜7及び比較例1)
EVAにおける酢酸ビニルの含有量、予備圧着工程及び仮接着工程における加熱処理における圧力及び温度を、それぞれ表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。
(比較例2)
実施例1と同様にして作製した合わせガラス用中間膜を、洗浄乾燥した2枚の直径25mmの円形の取付部材用の穴を有するガラス板(厚さ8mm、大きさ800mm×1200mm)の間に挟んだ。これにより積層体を得、取付部材用穴の内部に露出している合わせガラス用中間膜のみを切り取った。次に、積層体をゴム袋に入れて真空脱気し、760mmHgの減圧雰囲気下、80℃の温度で予備圧着した。更に、これをオートクレーブに入れ、常圧下、ガラス表面の温度が135℃に達してから30分間、加熱処理して、合わせガラスを得た。
(評価)
1.合わせガラス用中間膜の流動性
上記で作製した合わせガラスについて製造工程における合わせガラス用中間膜の流動性を評価するため、各実施例及び比較例において、合わせガラスの製造に用いた積層体を作製する際に合わせガラス用中間膜の片面に、隣接する線同士の間隔が5mmとなるように格子状の線を引いて合わせガラスを作製した。そして、製造した合わせガラスの取付部材用の穴周辺の線の変形を目視により観察することで、合わせガラス用中間膜の流動性を測定し、外観特性を評価した。結果を表1に示す。
表1において格子線の最大ずれ量が3.0mm以下のものを「○」とし、格子線の最大ずれ量が3.0mmを超えるものを「×」とした。
2.板厚偏差
上記で作製した各合わせガラスの中央及び端部の厚さを、マイクロメーターにより測定し、その差を求めた。結果を表1に示す。板厚偏差が大きいほど、合わせガラスの端部において透明基板が合わせガラス用中間膜側に向かって湾曲し、長期に亘る使用において透明基板の剥離を招く要因となる。
Figure 0004800173

Claims (12)

  1. エチレン−極性モノマー共重合体及び架橋剤を含む合わせガラス用中間膜を二枚の透明基板で挟み、これにより得られた積層体を加熱処理することにより融着させる合わせガラスの製造方法であって、
    前記エチレン−極性モノマー共重合体の融点をTm(℃)としたとき、
    前記積層体を、真空下、Tm〜Tm+25(℃)の温度で加熱処理する予備圧着工程と、
    前記予備圧着工程後に前記積層体を、前記予備圧着工程よりも真空度を下げ、Tm+20(℃)〜Tm+45(℃)の温度で加熱処理する仮接着工程と、
    前記仮接着工程後に前記積層体を、常圧下、Tm+30(℃)〜Tm+60(℃)の温度で加熱処理する本接着工程と、を含み、
    前記予備圧着工程における加熱処理の温度(T1)、前記仮接着工程における加熱処理の温度(T2)及び記本接着工程における加熱処理の温度(T3)が、T1<T2<T3の関係を満たすことを特徴とする合わせガラスの製造方法。
  2. 前記仮接着工程における真空度は、前記予備圧着工程における真空度よりも150〜760mmHg低いことを特徴とする請求項1に記載の合わせガラスの製造方法。
  3. 前記予備圧着工程における加熱処理を、400mmHg以上の真空度で行うことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
  4. 前記予備圧着工程において、10〜760mmHg/分の減圧速度で減圧することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
  5. 前記仮接着工程における加熱処理を、0〜200mmHgの真空度で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
  6. 前記仮接着工程の後、前記積層体を50℃以下に冷却してから前記本接着工程を行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
  7. 前記予備圧着工程、前記仮接着工程及び前記本接着工程における加熱処理を、それぞれ10分以上行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
  8. 前記エチレン−極性モノマー共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項1〜7のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
  9. 前記エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して24〜26質量部である請求項8に記載の合わせガラスの製造方法。
  10. 前記合わせガラス用中間膜が、着色剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
  11. 前記合わせガラス用中間膜が、ガラスビーズ、チタン白、及び炭酸カルシウムよりなる群から選択される少なくとも一種の白色着色剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
  12. 前記透明基板の厚さが、2〜20mmである請求項1〜11のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
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