JP4800173B2 - 合わせガラスの製造方法 - Google Patents
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前記エチレン−極性モノマー共重合体の融点をTm(℃)としたとき、
前記積層体を、真空下、Tm〜Tm+25(℃)の温度で加熱処理する予備圧着工程と、
前記予備圧着工程後に前記積層体を、前記予備圧着工程よりも真空度を下げ、Tm+20(℃)〜Tm+45(℃)の温度で加熱処理する仮接着工程と、
前記仮接着工程後に前記積層体を、常圧下、Tm+30(℃)〜Tm+60(℃)の温度で加熱処理する本接着工程と、を含み、
前記予備圧着工程における加熱処理の温度(T1)、前記仮接着工程における加熱処理の温度(T2)及び記本接着工程における加熱処理の温度(T3)が、T1<T2<T3の関係を満たすことを特徴とする合わせガラスの製造方法により上記課題を解決する。
積層体中に気泡が存在すると、透明基板と合わせガラス用中間膜との接着性を低減させる恐れがある。したがって、まず、予備圧着工程では、積層体中、特に合わせガラス用中間膜中に含まれる気泡を脱気させて透明基板と合わせガラス用中間膜との圧着を行う。
本発明の方法では、上述した予備圧着工程後、前記積層体を、前記予備圧着工程よりも真空度を下げ、Tm+20(℃)〜Tm+45(℃)の温度範囲内で且つ予備圧着工程よりも高い温度となるように加熱処理する仮接着工程を実施する。予備接着工程後にこのような真空度及び温度で加熱処理することにより、予備接着工程よりも合わせガラス用中間膜を、流動を抑制しつつさらに軟化させて、合わせガラスと透明基板との特に端部における接着性を向上させることができる。
本発明の方法では、上述の通りに仮接着工程を実施した後、前記積層体を常圧下、Tm+30(℃)〜Tm+60(℃)の温度で且つ前記仮接着工程における加熱処理温度よりも高い温度で加熱処理する本接着工程を実施する。これにより、合わせガラス用中間膜中に含まれる架橋剤、架橋助剤などの各主成分との反応が生じて合わせガラス用中間膜が架橋硬化することができる。上記2工程では減圧などにより合わせガラス用中間膜と透明基板とは加圧により物理的に接着されているだけであるが、本接着工程により合わせガラス用中間膜と透明基板とを化学反応によってより強く接着することができる。また、架橋反応が進行するほどの高温下での合わせガラス用中間膜は粘度が低下して、流動しやすい状態となっている。したがって、仮接着工程における積層体の加熱処理は上記温度範囲及び常圧下で行うことにより、合わせガラス用中間膜の流動を抑制することができる。
本発明の方法に用いられる合わせガラス用中間膜は、エチレン−極性モノマー共重合体及び架橋剤を含む。このような合わせガラス用中間膜としては、従来公知のものであれば特に制限なく用いられる。
前記エチレン−極性モノマー共重合体の極性モノマーとしては、不飽和カルボン酸、その塩、そのエステル、そのアミド、ビニルエステル、一酸化炭素などを例示することができる。より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸、これら不飽和カルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属の塩やマグネシウム、カルシウム、亜鉛などの多価金属の塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、一酸化炭素、二酸化硫黄などの一種又は二種以上などを例示することができる。
本発明に用いられる合わせガラス用中間膜は、エチレン−極性モノマー共重合体の他に、架橋剤を少なくとも含む。これにより、エチレン−極性モノマー共重合体の架橋密度を向上させることができ、優れた接着力を発現することが可能となる。
さらに、本発明に用いられる合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、架橋助剤を含んでいてもよい。前記架橋助剤は、エチレン−極性モノマー共重合体のゲル分率を向上させ、合わせガラス用中間膜の機械的強度を向上させるために組成物に添加することができる。この目的に供される架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)としては、公知のものとしてトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等も挙げることができる。なかでも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。これらの架橋助剤は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、一般に10質量部以下、好ましくは0.1〜5質量部で使用される。
本発明に用いられる合わせガラス用中間膜は、着色剤をさらに含むのが好ましい。従来から種々の用途に合わせて合わせガラスを着色することが行われていた。しかしながら、着色剤を含むあわせガラス用中間膜では、着色剤が合わせガラス用中間膜の流動を乱すことによって、外観特性の低下、特に取付器具用の穴が形成された場合に穴の周辺に流れ模様が顕著に発生し易い問題があった。したがって、本発明の製造方法はこのような合わせガラス用中間膜に着色剤を用いて、着色された合わせガラスを製造するために用いられるのが有用である。
本発明に用いられる合わせガラス用中間膜は、膜の種々の物性(機械的強度、接着性、透明度等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整、特に機械的強度の改良のため、必要に応じて、可塑剤、接着向上剤などの各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
合わせガラス用中間膜は、上述したエチレン−極性モノマー共重合体及び架橋剤などの各種成分を含む組成物を、公知の方法を用いて、シート状に形成することにより製造される。例えば、前記組成物を、通常の押出成形、又はカレンダ成形(カレンダリング)等により成形してシート状物を得る方法により製造することができる。また、前記組成物を溶剤に溶解させ、この溶液を適当な塗布機(コーター)で適当な支持体上に塗布、乾燥して塗膜を形成することによりシート状物を得ることもできる。
合わせガラスに用いられる透明基板としては、特に限定されないが、例えば珪酸塩ガラス、無機ガラス板、無着色透明ガラス板などのガラス板の他、プラスチックフィルムを用いてもよい。前記プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンアフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンブチレートフィルムを挙げることができ、PETフィルムが好ましい。
1.合わせガラス用中間膜の作製
下記配合;
EVA(EVA100質量部に対して酢酸ビニル(VA)の含有量25質量部、融点(Tm)
78℃)100質量部、
架橋剤(tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート;日本油脂株式会社製 パーブチル(登録商標)E)2.5質量部、
架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート;日本化成株式会社 TAIC(登録商標))2質量部、
着色剤(CaCO3) 5質量部
シランカップリング剤:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、SZ6030)0.5質量部、
紫外線吸収剤:2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン(BASFジャパン社製、2ビナール3049)0.2質量部、
を、ロールミルに供給し、80℃で、混練して組成物を調製した。上記で調製したEVAフィルム形成用組成物を、カレンダロール温度80℃、加工速度5m/分で、カレンダ成形し、放冷することにより、合わせガラス用中間膜(厚さ0.4mm、大きさ2200mm(幅)×100mm)を製膜した。
洗浄乾燥した2枚の直径25mmの円形の取付部材用の穴を有するガラス板(厚さ8mm、大きさ300mm×300mm)の間に、前記合わせガラス用中間膜を挟んだ。これにより積層体を得、取付部材用穴の内部に露出している合わせガラス用中間膜のみを切り取った。次に、積層体をゴムバックに入れ、100mmHg/分の減圧速度で8分間かけて減圧することにより760mmHgの真空度とした後、オーブンに入れ25℃から2℃/分の昇温速度で30分かけて昇温させ、透明基板表面の温度が80℃に達してから60分間、加熱処理を行った。
上記予備圧着工程を実施した後、続けて、100mmHg/分の昇圧速度で8分かけて常圧まで昇圧して減圧操作を停止するとともに、1.5℃/分の昇温速度で20分かけて昇温させて透明基板表面の温度が110℃に達してから30分間、加熱処理を行った。
上記仮接着工程を実施した後、常圧下で、3℃/分の昇温速度で40分かけて昇温させ、透明基板表面の温度が135℃に達してから30分間、保持することにより積層体の加熱処理を行った。その後、オーブン内から前記積層体を取り出すことにより、合わせガラスを得た。
EVAにおける酢酸ビニルの含有量、予備圧着工程及び仮接着工程における加熱処理における圧力及び温度を、それぞれ表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。
実施例1と同様にして作製した合わせガラス用中間膜を、洗浄乾燥した2枚の直径25mmの円形の取付部材用の穴を有するガラス板(厚さ8mm、大きさ800mm×1200mm)の間に挟んだ。これにより積層体を得、取付部材用穴の内部に露出している合わせガラス用中間膜のみを切り取った。次に、積層体をゴム袋に入れて真空脱気し、760mmHgの減圧雰囲気下、80℃の温度で予備圧着した。更に、これをオートクレーブに入れ、常圧下、ガラス表面の温度が135℃に達してから30分間、加熱処理して、合わせガラスを得た。
1.合わせガラス用中間膜の流動性
上記で作製した合わせガラスについて製造工程における合わせガラス用中間膜の流動性を評価するため、各実施例及び比較例において、合わせガラスの製造に用いた積層体を作製する際に合わせガラス用中間膜の片面に、隣接する線同士の間隔が5mmとなるように格子状の線を引いて合わせガラスを作製した。そして、製造した合わせガラスの取付部材用の穴周辺の線の変形を目視により観察することで、合わせガラス用中間膜の流動性を測定し、外観特性を評価した。結果を表1に示す。
上記で作製した各合わせガラスの中央及び端部の厚さを、マイクロメーターにより測定し、その差を求めた。結果を表1に示す。板厚偏差が大きいほど、合わせガラスの端部において透明基板が合わせガラス用中間膜側に向かって湾曲し、長期に亘る使用において透明基板の剥離を招く要因となる。
Claims (12)
- エチレン−極性モノマー共重合体及び架橋剤を含む合わせガラス用中間膜を二枚の透明基板で挟み、これにより得られた積層体を加熱処理することにより融着させる合わせガラスの製造方法であって、
前記エチレン−極性モノマー共重合体の融点をTm(℃)としたとき、
前記積層体を、真空下、Tm〜Tm+25(℃)の温度で加熱処理する予備圧着工程と、
前記予備圧着工程後に前記積層体を、前記予備圧着工程よりも真空度を下げ、Tm+20(℃)〜Tm+45(℃)の温度で加熱処理する仮接着工程と、
前記仮接着工程後に前記積層体を、常圧下、Tm+30(℃)〜Tm+60(℃)の温度で加熱処理する本接着工程と、を含み、
前記予備圧着工程における加熱処理の温度(T1)、前記仮接着工程における加熱処理の温度(T2)及び記本接着工程における加熱処理の温度(T3)が、T1<T2<T3の関係を満たすことを特徴とする合わせガラスの製造方法。 - 前記仮接着工程における真空度は、前記予備圧着工程における真空度よりも150〜760mmHg低いことを特徴とする請求項1に記載の合わせガラスの製造方法。
- 前記予備圧着工程における加熱処理を、400mmHg以上の真空度で行うことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
- 前記予備圧着工程において、10〜760mmHg/分の減圧速度で減圧することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
- 前記仮接着工程における加熱処理を、0〜200mmHgの真空度で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
- 前記仮接着工程の後、前記積層体を50℃以下に冷却してから前記本接着工程を行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
- 前記予備圧着工程、前記仮接着工程及び前記本接着工程における加熱処理を、それぞれ10分以上行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
- 前記エチレン−極性モノマー共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項1〜7のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
- 前記エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して24〜26質量部である請求項8に記載の合わせガラスの製造方法。
- 前記合わせガラス用中間膜が、着色剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
- 前記合わせガラス用中間膜が、ガラスビーズ、チタン白、及び炭酸カルシウムよりなる群から選択される少なくとも一種の白色着色剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
- 前記透明基板の厚さが、2〜20mmである請求項1〜11のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法。
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