JP4668577B2 - 薄膜電子部品用セラミック基板及びその製造方法並びにこれを用いた薄膜電子部品 - Google Patents
薄膜電子部品用セラミック基板及びその製造方法並びにこれを用いた薄膜電子部品 Download PDFInfo
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Description
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、特に高い精度の平坦面を確実且つ容易に、更には安価に得ることができる薄膜電子部品用セラミック基板及びその製造方法並びにこれを用いた薄膜電子部品を提供することを目的とする。
(1)基部用セラミック基板の表面に形成されたガラス層を加熱加圧処理して該基部用セラミック基板の表面部にガラスが拡散されてなる緻密ガラスセラミック混合層を形成し、平坦化研磨により該緻密ガラスセラミック混合層を表出させてなる薄膜電子部品用セラミック基板であって、
上記加熱加圧処理は、等方加圧により700℃以上且つ1MPa以上で行い、
上記基部用セラミック基板の上記緻密ガラスセラミック混合層を除く残部には、ガラスが含有されない、
又は、上記基部用セラミック基板の上記緻密ガラスセラミック混合層を除く残部には、ガラスが含有され、且つ、該残部に含有されるガラス量は、上記緻密ガラスセラミック混合層に含有されるガラス量より少ないことを特徴とする薄膜電子部品用セラミック基板(以下、「本発明の薄膜電子部品用セラミック基板」ともいう)。
(2)上記ガラス層を構成するガラスは、軟化点が750℃以上である上記(1)に記載の薄膜電子部品用セラミック基板。
(3)上記ガラス層を構成するガラスは、屈伏点が700℃以上である上記(1)又は(2)に記載の薄膜電子部品用セラミック基板。
(4)上記ガラス層を構成するガラスは、Si、Al、B、Ca及びOを主成分とする上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載の薄膜電子部品用セラミック基板。
(5)配線パターンを内部に備える上記(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載の薄膜電子部品用セラミック基板。
(6)上記緻密ガラスセラミック混合層は、ポアを有さないものである上記(1)乃至(5)のうちのいずれかに記載の薄膜電子部品用セラミック基板。
(7)上記(1)乃至(6)のうちのいずれに記載の薄膜電子部品用セラミック基板を備えることを特徴とする薄膜電子部品。
(8)上記薄膜電子部品用セラミック基板上に、キャパシタ用導体層とキャパシタ用誘電体層とが積層されてなるキャパシタ部を備え、該キャパシタ部は、対向する2層の該キャパシタ用導体層間に該キャパシタ用誘電体層が配置されるように、該キャパシタ用導体層と該キャパシタ用誘電体層とが交互に積層されてなる上記(7)に記載の薄膜電子部品。
(9)表面に端面が露出された内部配線パターンを備える基部用セラミック基板の該表面にガラス層を形成するガラス層形成工程と、
該ガラス層に加熱加圧処理を施し、該基部用セラミック基板の表面部にガラスが拡散されてなる緻密ガラスセラミック混合層を形成する加熱加圧処理工程と、
平坦に研磨しながら該緻密ガラスセラミック混合層及び該内部配線パターンを露出させる平坦化研磨工程と、をこの順に備え、
上記加熱加圧処理は、等方加圧により700℃以上且つ1MPa以上で行い、
上記基部用セラミック基板の上記緻密ガラスセラミック混合層を除く残部には、ガラスが含有されない、
又は、上記基部用セラミック基板の上記緻密ガラスセラミック混合層を除く残部には、ガラスが含有され、且つ、該残部に含有されるガラス量は、上記緻密ガラスセラミック混合層に含有されるガラス量より少ないことを特徴とする薄膜電子部品用セラミック基板の製造方法。
加熱加圧処理を700℃以上且つ1MPa以上で行うので、特に高い精度の平坦面が得られ、信頼性の高い薄膜電子部品を安定して得ることができる。
ガラス層を構成するガラスの軟化点が750℃以上である場合は、特に高い精度の平坦面が得られ、信頼性の高い薄膜電子部品を安定して得ることができる。また、これを用いて薄膜電子部品を形成する際に通常加えられる作業温度においても平坦性が保持されるため、信頼性の高い薄膜電子部品を安定して得ることができる。
ガラス層を構成するガラスの屈伏点が700℃以上である場合は、特に高い精度の平坦面が得られ、信頼性の高い薄膜電子部品を安定して得ることができる。また、これを用いて薄膜電子部品を形成する際に通常加えられる作業温度においても平坦性が保持されるため、信頼性の高い薄膜電子部品を安定して得ることができる。
ガラス層を構成するガラスがSi、Al、B、Ca及びOを主成分とする場合は、特に高い精度の平坦面が得られ、また、グレーズ面に直接導体層を形成でき、信頼性の高い薄膜電子部品を安定して得ることができる。
配線パターンを内部に備える場合は、得られる薄膜電子部品上に別の電子部品を搭載することができるなど、部品の小型化に寄与する薄膜電子部品用セラミック基板とすることができる。
上記基部用セラミック基板の上記緻密ガラスセラミック混合層を除く残部には、ガラスが含有されない、又は、ガラスが含有されても緻密ガラスセラミック混合層に含有されるガラス量より少ないので、薄膜電子部品要セラミック基板として十分な機械的強度を得ることができる。
緻密ガラスセラミック混合層がポアを有さないものである場合は、特に高い精度の平坦面を有するため、信頼性の高い薄膜電子部品を安定して得ることができる。また、信頼性の高い薄膜電子部品を安価に得ることができる。
本発明の薄膜電子部品は、高い精度の平坦面を有する基板が用いられているため、精度及び信頼性に優れる。
本発明の薄膜電子部品用セラミック基板上に、所定のキャパシタ部を備える薄膜電子部品によると、安定した電気特性を発揮でき、短絡等を生じず、高い信頼性を有するキャパシタ機能を有するものとすることができる。
本発明の薄膜電子部品用セラミック基板の製造方法によれば、確実且つ容易に高い精度の平坦面を有する薄膜電子部品用セラミック基板を得ることができる。
[1]薄膜電子部品用セラミック基板
第1参考発明に係る薄膜電子部品用セラミック基板は、基部用セラミック基板を備え、基部用セラミック基板は、表面部にガラスを含有する緻密ガラスセラミック混合層を備えることを特徴とする。
基部用セラミック基板を構成するセラミック成分は特に限定されないが、耐熱性及び機械的強度に優れるものが好ましい。このようなセラミック成分のうち主となるセラミック成分(以下、単に「主セラミック成分」という。通常、全体に対して40質量%以上含有される。)としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、シリカ及びマグネシア等が挙げられる。これらのなかでもアルミナが好ましい。優れた絶縁性、耐熱性、機械的強度及び熱安定性等を備え、汎用性が高く、且つ安価に得られるからである。
主セラミック成分としてアルミナが含有される場合、その含有量は特に限定されないが、緻密ガラスセラミック混合層を除き、更には、内部配線パターン等を備える場合はこれらを除くセラミック部分全体を100質量%とした場合に40質量%以上(より好ましくは70〜99質量%、更に好ましくは85〜98質量%)であることが好ましい。40質量%以上であれば、アルミナの備える上記性質を十分に発揮させることができる。
また、素基板にガラスが含有される場合、その含有量は、通常、素基板全体を100体積%とした場合にガラスは40体積%以下(より好ましくは20体積%以下、更に好ましくは15体積%以下)である。更に、ガラスを含有する素基板を用いて形成された基部用セラミック基板においては、緻密ガラスセラミック混合層を除く基部用セラミック基板の残部に含有されるガラスの含有量は、緻密ガラスセラミック混合層に含有されるガラスよりも少ないものである。また、素基板に含有されるガラスは、緻密ガラスセラミック混合層を構成するガラスに比べて、屈伏点が高い(例えば、100℃以上高い)ものであることが好ましく、更には、軟化点も高い(例えば、100℃以上高い)ことが好ましい。これにより、第1参考発明の薄膜電子部品用セラミック基板をキャパシタ用の基板として用いた場合においても、高温における製造工程に耐えられ、十分な機械的強度を発揮でき、高い耐久性を有する薄膜電子部品を得ることができる。
更に、この混合層は、混合層の表面部だけでなく、混合層全体にポアを有さないものとすることができる。ポアを有さないとは、異なる少なくとも10箇所以上の積層方向の断面における任意の100μm四方の領域に長径0.2μm以上のポアが認められないものである。即ち、混合層内にポアを有さない極めて緻密な層である。但し、「積層方向の断面」とは、基板用セラミック基板に対して混合層が積層されている方向に垂直な断面であり、また、「観察」は、通常2000倍以上に拡大した像において行うものである。
この混合層は、基部用セラミック基板の一面のみに形成されていてもよく、基部用セラミック基板の両面に形成されていてもよい。
更には、ガラス全体を100質量%とした場合に、SiをSiO2換算で50〜70質量%(より好ましくは55〜65質量%)、且つ、AlをAl2O3換算で3〜15質量%(より好ましくは5〜10質量%)含有するものとすることができ、更に加えて、BをB2O3換算で10〜30質量%(より好ましくは15〜25質量%)、CaをCaO換算で3〜20質量%(より好ましくは5〜15質量%)含有するものとすることができる。
また、このガラスの軟化点は特に限定されないが、750℃以上(より好ましくは800℃以上、通常1200℃以下)であることが好ましい。本薄膜電子部品用セラミック基板を用いた薄膜電子部品を製造する際に加えられる作業温度は、通常、700℃程度が最も高いものである。このため、軟化点が750℃以上であれば混合層表面の平坦性を十分に保持できるからである。
更に、配線パターンの形状は特に限定されず、また、このビア配線の形状も特に限定されないが、通常、積層方向に各層を貫通する円柱形状である。また、その直径も特に限定されないが、例えば、50〜200μmとすることができる。
また、上記のビア配線以外にも、薄膜電子部品を構成する電極層と同様に平面方向に形成された配線パターンを備えることもできる。即ち、例えば、通常の導通用配線、抵抗用配線、インダクタンス用配線、及び、ボンディングパッド等が挙げられる。
基部用セラミック基板の緻密ガラスセラミック混合層を除く残部には、ガラスが含有されない、
又は、基部用セラミック基板の緻密ガラスセラミック混合層を除く残部には、ガラスが含有され、且つ、残部に含有されるガラス量は、緻密ガラスセラミック混合層に含有されるガラス量より少ないことを特徴とする。
また、この表面粗さとは関係なく、素基板として焼成されたセラミック基板をそのまま用いてもよいが、セラミック特有の反り等に起因する起伏を除去する程度に研磨して平面だしを行ったのち用いることが好ましい。
更に、混合層を形成する以前の基部用セラミック基板(素基板)の形状及び大きさは特に限定されない。また、その厚さも特に限定されないが、通常、200μm以上(好ましくは200〜2000μm、より好ましくは300〜1000μm)である。200μm以上であれば、薄膜電子部品用セラミック基板に十分な機械的強度を付与できる。
上記「混合層」は、第1参考発明に係る薄膜電子部品用セラミック基板における「緻密ガラスセラミック混合層」をそのまま適用できる。
ガラス層を構成するガラスは、第1参考発明に係る薄膜電子部品用セラミック基板の「混合層を構成するガラス」をそのまま適用できる。また、このガラス層の形状及び大きさは特に限定されない。また、その厚さも特に限定されず、所望(厚さ等)の混合層が形成できるガラス量が含有されればよいが、例えば、1〜300μmとすることができる。更に、50μmの混合層を形成する場合には、焼付け後のガラス層の厚さは10μm以上あることが好ましい。このガラス層の形成方法も特に限定されないが、例えば、後述するガラス粉末を含有する層を焼付けて得ることができる。
このガラス粉末を含有する層の形成方法は特に限定されない。例えば、素基板の表面にガラス粉末を含有するペースト(以下、単に「ガラスペースト」という)を塗布して得ることができる。また、ガラス粉末を分散させたスラリー中に素基板を載置してガラス粉末を沈降堆積させた後、スラリー内から取り出し、乾燥させて得ることができる。更に、ガラス粉末を直接振りかける等してガラス粉末のみからなる層を形成して得ることができる。これらの方法のなかでも、ガラスペーストを塗布して得ることが作業性等の面から好ましい。
このガラスペーストの粘度は特に限定されないが、例えば、1〜1000Pa・s(より好ましくは20〜500Pa・s)とすることができる。
ガラスペーストを塗布する方法は特に限定されず、ガラスペーストの粘度及び性状等により適宜選択することが好ましい。例えば、前記のようにガラスペーストの粘度が1〜1000Pa・sである場合には、スクリーン印刷、ドクターブレード法及びカーテンコータ印刷等により塗布することができる。これらのなかではスクリーン印刷及びドクターブレード法が好ましい。また、粘度が上記粘度範囲の下限値未満である場合には、スピンコート、ディップコート及び吹き付け塗布(インクジェット法及びサーマル法等を含む)等により行うこともできる。
また、ガラス層を加熱加圧処理する際には、ほぼ固化状態のガラス層に対して加熱加圧処理を施してもよいが、予めガラス層を予備加熱して流動性を有する状態にしておくことが好ましい。この流動性を有する状態にすることによりガラス層内からボイドを効果的に出すことができる。流動性を有する状態とは、通常、ガラス層を構成するガラスの軟化点から50℃低い温度(この温度を「Ts−50」とする)より高い温度(この温度は「Ts−50以上の温度」である)で加熱されている状態をいうものとする。
この加熱加圧処理前の予備加熱は、前述のガラス粉末を含有する層を用いる場合、ガラス粉末を含有する層を焼付けてガラス層とする工程と、連続的に行ってもよく別工程で行ってもよい。更に、予備加熱は、加熱加圧処理と連続的に行ってもよく別工程で行ってもよい。
更に、加熱加圧処理を行う時間は特に限定されないが、通常、3分以上である。また、120分以下(更には60分以下、特に30分以下)とすることができる。より長時間に渡り処理を施してもよいが、通常、比較的短時間で混合層は形成されていると考えられる。
この平坦化研磨における研磨方法は特に限定されず、機械研磨であってもよく、化学機械研磨であってもよく、化学研磨であってもよい。これらのなかでは、機械研磨及び化学機械研磨が好ましい。
配線パターンは、一端が本薄膜電子部品用セラミック基板の表面のうちの緻密ガラスセラミック混合層の表面に露出され、且つ、他端が本薄膜電子部品用セラミック基板の他の表面に露出されていることを特徴とする。
上記「配線パターン」は、一端が本薄膜電子部品用セラミック基板の表面のうちの混合層の表面に露出され、且つ、他端が本薄膜電子部品用セラミック基板の他の表面に露出されている。即ち例えば、本薄膜電子部品用セラミック基板が一面にのみ混合層を備える場合には、配線パターンの他端は、基部用セラミック基板の裏面側の表面に露出してもよく、基部用セラミック基板の側面に露出してもよい。更に、本薄膜電子部品用セラミック基板がその両面に混合層を備える場合には、配線パターンの他端は、裏面側の混合層表面に露出することができる。即ち、配線パターンは、薄膜電子部品用セラミック基板を表裏に貫通して形成されていてもよく、混合層を備える表面側と基部用セラミック基板の側面とに連通して形成されていてもよい。配線パターンは、この他の点においては、前記第1参考発明に係る薄膜電子部品用セラミック基板における「配線パターン」をそのまま適用できる。
本発明の薄膜電子部品は、本発明の薄膜電子部品用セラミック基板を備えることを特徴とする。
上記「薄膜電子部品用セラミック基板」は、前記本発明の薄膜電子部品用セラミック基板をそのまま適用できる。この薄膜電子部品用セラミック基板の全体の厚さは特に限定されないが、通常、200〜2000μm(好ましくは300〜1000μm)である。
本発明の薄膜電子部品としては、薄膜キャパシタ及び薄膜キャパシタを搭載した電子部品ユニット等が挙げられる。
即ち、薄膜キャパシタ及び薄膜キャパシタを搭載した電子部品ユニットである。
上記「キャパシタ用導体層」は、キャパシタ部を構成する導体層である。このキャパシタ用導体層は、後述するキャパシタ用誘電体層を介して対向する導電性薄膜であり、1層のみからなってもよく、2層以上からなってもよい。また、通常、キャパシタ用導体層とキャパシタ用誘電体層との積層部分は、その最下層及び最上層はキャパシタ用導体層である。このキャパシタ用導体層は導電性を有すればよく(例えば、10μΩ・cm以下)、その材料は特に限定されないが、例えば、白金、金、銅、銀、ニッケル、チタン、モリブデン、クロム、コバルト及びタングステン等を用いることができる。これらの材料は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、キャパシタ用導体層の形状及び大きさは特に限定されず、更に、その厚さも特に限定されないが、通常、1μm以下である。これらの導体層材料及びキャパシタ用導体層の厚さ等は、所望の抵抗及び生産性等に応じて、更には、生産コストに応じて適宜選択することが好ましい。
更に、キャパシタ用誘電体層の形成方法は特に限定されないが、例えば、CSD法を用いる。即ち、目的とするキャパシタ用誘電体層を構成することとなる金属元素を含む誘電体原料を、形成面に塗布し、その後、熱処理してキャパシタ用誘電体層を得る方法である。このCSD法において用いる誘電体原料は特に限定されないが、目的とするキャパシタ用誘電体層を構成する金属元素を含有する金属有機化合物を含有することが好ましい。この有機金属化合物としては、アルコキシド、酢酸化合物及びシュウ酸化合物等を用いることができる。上記アルコキシドとしては、例えば、チタンイソプロポキシド等のチタンアルコキシド類、金属バリウムをアルコール系有機溶媒に溶解させて得られるバリウムアルコキシド類、ストロンチウム−n−ブトキシド等のストロンチウムアルコキシド類等が挙げられる。これらのアルコキシドは、純水を所定量加えて重合させたものを用いてもよい。また、アルコール系有機溶媒としては、エタノールとアセチルアセトンとの混合溶媒、2―エトキシエタノール、及び、その他目的とする金属種とキレートを形成できる化学種を含有するアルコール系有機溶媒が挙げられる。
また、上記の誘電体原料は、加熱等により均一化した後、塗布することができる。更に、この誘電体原料の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、スピンコート、ディップコート及び吹き付け塗布(インクジェット法及びサーマル法等を含む)等を用いることができる。得られた誘電体層は、必要に応じてエッチング等によりパターンニングを行いキャパシタ用誘電体層とすることができる。
前記第1参考発明及び本発明に係る薄膜電子部品用セラミック基板のうち配線パターンを備えるもの、並びに、第2参考発明に係る薄膜電子部品用セラミック基板を得る方法は特に限定されないが、各々本発明の製造方法で得ることができる。
即ち、薄膜電子部品用セラミック基板は、基部用セラミック基板がセラミック製であるため、未焼成体を得る際に未焼成体を積層形成し、各層にパターンニング及び配線形成等を施し、その後、焼成することにより内部に配線パターンを有する基板を容易に得ることができる。このことはガラス基板及び単結晶基板に比べると大きな利点である。しかし、上記の混合層内には、セラミック層と同じように未焼成段階で未焼成配線パターンをパターンニングすることが困難である。このため、特殊な方法を用いて製造する必要がある。
上記基部用セラミック基板の上記緻密ガラスセラミック混合層を除く残部には、ガラスが含有されない、
又は、上記基部用セラミック基板の上記緻密ガラスセラミック混合層を除く残部には、ガラスが含有され、且つ、該残部に含有されるガラス量は、上記緻密ガラスセラミック混合層に含有されるガラス量より少ないことを特徴とする。
上記「ガラス層形成工程」は、表面に端面が露出された内部配線パターンを備える基部用セラミック基板(素基板)の表面にガラス層を形成する工程である。
上記「加熱加圧処理工程」は、ガラス層に加熱加圧処理を施し、基部用セラミック基板の表面部にガラスを含有する混合層を形成する工程である。
上記「平坦化研磨工程」は、平坦に研磨しながら混合層及び内部配線パターンを露出させる工程である。
これらの工程については、前記本発明に係る薄膜電子部品用セラミック基板における各々の方法をそのまま適用できる。
[1]薄膜電子部品用セラミック基板の作製(内部配線パターンを備えないもの)
(1)基部用セラミック基板の作製
平均粒径が3〜5μmであるアルミナ粉末(Al2O3純度90%以上)と、Al2O3、SiO2及びCaOを主成分とするフラックス粉末(焼結助剤)とを用意し、混合粉末全体を100質量%とした場合に、アルミナ粉末が90〜95質量%、フラックス粉末が5〜10質量%となるように混合して混合粉末を得た。この混合粉末を用いて得られたスラリーを、ドクターブレード法により厚さ200μmのシート形状に成形した後、所望の大きさに裁断して未焼成シートを得た。この未焼成シートを3枚積層して厚さ600μmの基部用未焼成セラミックシートを得た。この基部用未焼成セラミックシートを焼成し、緻密ガラスセラミック混合層が形成される前の基部用セラミック基板(素基板)を得た。この基部用セラミック基板(素基板)の表面粗さを、触針式表面粗さ計(東京精密社製、形式「SURFCOM 1400D」)を用いて測定したところ、Raが0.24μmであり、Ryが5.7μmであった。
テルピネオール(溶剤)にアクリル系樹脂(バインダ)を溶解させたのちガラス粉末を混合してガラスペーストを得た。ガラス粉末には、Si、B、Al及びCaの各々SiO2換算、B2O3換算、Al2O3換算及びCaO換算による合計量を100mol%とした場合に、Siが55〜65mol%、Bが15〜25mol%、Alが5〜15mol%、Caが5〜15mol%含有される平均粒径約3μmのガラス粉末を用いた。このガラスペーストをスクリーン印刷により基部用セラミック基板(素基板)上に塗布し、乾燥させた後、大気雰囲気中1000℃で焼付けを行った。この焼付けを行ったガラス層を表面に有する基部用セラミック基板(素基板)を、断面が観察できるように切断し、この断面の一部を200倍に拡大して得た画像を図3に示した。
得られた平坦化研磨後の混合層の表面粗さを、上記触針式表面粗さ計を用いて測定したところ、Raが0.009μmであり、Ryが0.11μmであった。また、この平坦化研磨を行った混合層表面を2000倍に拡大して得た画像を図6に示した。
この結果より、基部用セラミック基板(素基板)表面は、Raが0.24μmであり、Ryが5.7μmと共に大きい。また、この基部用セラミック基板(素基板)を研磨してもその表面粗さは、Raで0.078μm及びRyで0.97μmまでしか平坦性を向上させることができなかった。図3より、基部用セラミック基板{素基板(2')}内には多くの黒い粒状に認められるポア(22)が存在し、このポアはその表面部にも認められることが分かる。即ち、基部用セラミック基板(素基板)はこのポアに起因して表面粗さを十分に低減し難い。
即ち、本発明によると、ポアを多く有する上記の汎用セラミック基板を素基板として用いても、少なくとも88%以上表面粗さを低減できていることが分かる。
以下、図2を用いて配線パターン(21)を有する薄膜電子部品用セラミック基板(1)の作製について説明する。
(1)基部用セラミック基板{素基板(2')}の作製
上記[1](1)と同様にして、厚さ600μmの基部用未焼成セラミックシートを得た。得られた基部用未焼成セラミックシートにCO2レーザーを用いて直径120μm(焼成後直径100μm)のビアホールを形成した。次いで、タングステン粉末、エチルセルロース(バインダ)及びブチルカルビトール(溶剤)を主成分とする導電性穴埋め剤(焼成後、内部配線パターンとなる)を調製し、先に形成したビアホール内に印刷充填した。その後、これまでに得られた未焼成体を所望の大きさに裁断した後、焼成し、表裏に貫通する配線パターン(21)を有する基部用セラミック基板{素基板(2')}を得た。
上記[1](2)と同様にして得られたガラスペーストを同様にして塗布し、乾燥させ、乾燥厚さ250μmのガラスペーストからなるガラスペースト層(31)を形成した。その後、このガラスペースト層(31)を、N2−H2−H2Oからなる非酸化性雰囲気中1000℃で焼付けてガラス化し、厚さ100μmのガラス層(32)を形成した。次いで、上記[1](2)と同様にしてHIP処理して混合層(33)を形成し、基部用セラミック基板(2)を作製した。その後、上記[1](2)と同様に平坦化研磨を行い、本発明の配線パターン(21)を有し、表面粗さRa0.01μm以下且つRy0.2μm以下の混合層(33)を備える薄膜電子部品用セラミック基板(1)を得た。
以下、図7〜10を用いて薄膜キャパシタ(100)の作製について説明する。尚、図8〜10は、図7の薄膜キャパシタ(100)の右側半分を説明するものである。また、焼成前後における符号は便宜上同じとした。下記(1−a)〜(1−d)については図8を参照、下記(1−e)〜(1−i)については図9を参照、下記(1−j)〜(1−m)については図10を参照。
(1−b)次いで、このキャパシタ用導体層(4)をパターンニングするために、キャパシタ用導体層のエッチングを要しない部分にエッチングレジスト(5)を形成した。
(1−c)その後、イオンミリングを用いてエッチングを行い、キャパシタ用導体層(4)のパターンニングを行った後、エッチングレジスト(5)を除去した。
(1−d)次いで、チタンイソプロポキシドと、ストロンチウム−n−ブトキシドと、金属バリウムとを2−エトキシエタノールに溶解させて得られた誘電体原料(6)を、パターンニングしたキャパシタ用導体層(4)を有する基板表面にスピンコート塗布した。その後、塗布した誘電体原料(6)を乾燥した後、700℃で熱処理を行い、厚さ0.2μmのキャパシタ用誘電体層(6)を得た。
(1−e)得られたキャパシタ用誘電体層(6)をパターンニングするために、キャパシタ用誘電体層のエッチングを要しない部分にエッチングレジスト(7)を形成した。
(1−g)次いで、パターンニングされたキャパシタ用誘電体層(6)の表面に、0.2μmの白金からなるキャパシタ用導体層(8)をスパッタリングにより形成した。このキャパシタ用導体層(8)はキャパシタ内において主として上部電極となるものである。
(1−h)その後、このキャパシタ用導体層(8)をパターンニングするために、キャパシタ用導体層のエッチングを要しない部分(キャパシタ部を形成しない側の薄膜電子部品用セラミック基板裏面側もエッチングレジストにより保護した)にエッチングレジスト(9)を形成した。
(1−i)次いで、イオンミリングを用いてエッチングを行い、キャパシタ用導体層(8)のパターンニングを行った後、エッチングレジスト(9)を除去した。
(1−k)次いで、ソルダーレジスト層(10)のパターンニングを行った(このパターンニングによりビア導体の表面を表出させた)。
(1−l)その後、上記(1−k)で表出されたビア導体(21)の表面に、無電解めっき法により、ニッケル−金めっき層(11)を形成した。
(1−m)次いで、上記(1−l)で形成されたニッケル−金めっき層(11)の表面にハンダボール(12)を形成して、薄膜キャパシタ(100)を得た。
以下、図11〜16を用いて上記[3]と異なる薄膜電子部品(101)の作製(薄膜キャパシタの作製)について説明する。但し、図11は図12へ、図12は図13へ、図13は図14へ、図14は図15へ、図15は図16へ、各々続く工程である。
上記[2](1)と同様にして得た基部用セラミック基板{素基板(2')}の表裏両面に、上記[1](2)と同様にして得られたガラスペーストを同様にして塗布し、乾燥させ、表裏面側とも、乾燥厚さが250μmであるガラスペースト層(31)を形成した。その後、このガラスペースト層(31)を、N2−H2−H2Oからなる非酸化性雰囲気中1000℃で焼付けてガラス化し、厚さ100μmのガラス層(32)を形成した。
上記[1](2)と同様にしてHIP処理して混合層(33)を形成し、基部用セラミック基板(2)とした。
その後、上記[1](2)と同様に表面側のみの平坦化研磨を行い、本発明の配線パターン(21)を有し、表面粗さRa0.01μm以下且つRy0.2μm以下の混合層(33)を備える薄膜電子部品用セラミック基板(1)を得た。
上記(3)までに得られた薄膜電子部品用セラミック基板(1)の表面に、感光性レジストをスピンコーティングし、その後、パターンニングして、キャパシタ用導体層のパターンニング用のフォトレジスト層(51)を形成した。
上記(4)で得られた薄膜電子部品用セラミック基板(1)の表面側に、0.02μmのタンタルからなるキャパシタ用導体下層(4b)をスパッタリングにより形成した。その後、0.2μmの白金からなるキャパシタ用導体上層(4a)をスパッタリングにより形成した。即ち、キャパシタ用導体層(4)は、キャパシタ用導体下層(4b)とキャパシタ用導体上層(4a)とからなる。
上記(5)を行った後に不要となったフォトレジスト層(51)を剥離液で完全に除去した。
上記(6)でパターンニングされたキャパシタ用導体層上に、SiO2層(13)をプラズマCVD法を用いて層状に形成した。
上記(5)と同様にして、タンタルからなるキャパシタ用導体下層(8b)と、白金からなるキャパシタ用導体上層(8a)とからなるキャパシタ用導体層(8)を形成した。
上記(8)で形成されたキャパシタ用導体層(8)をパターンニングするために、キャパシタ用導体層のエッチングを要しない部分にエッチングレジスト(9)を形成した。
上記(9)で形成されたキャパシタ用導体層(8)を、イオンミリングを用いてエッチングを行い、キャパシタ用導体層(8)のパターンニングを行った。
上記(10)で用いたエッチングレジスト(9)を除去した。
チタンイソプロポキシドと、ストロンチウム−n−ブトキシドと、金属バリウムとを2−エトキシエタノールに溶解させて得られた誘電体原料(6)を、パターンニングしたキャパシタ用導体層(8)を有する基板表面にスピンコート塗布した。その後、塗布した誘電体原料(6)を乾燥した後、700℃で熱処理を行い、厚さ0.2μmのキャパシタ用誘電体層(6)を得た。
上記(7)で得られたSiO2層(13)及び上記(12)で得られたキャパシタ用誘電体層(6)をパターンニングするために、キャパシタ用誘電体層のエッチングを要しない部分にエッチングレジスト(7)を形成した。
バッファードフッ酸を用いてSiO2層(13)及びキャパシタ用誘電体層(6)をエッチングして、各々の層のパターンニングを行った。尚、このパターンニング工程はイオンミリング法にて行うこともできる。
上記(14)を経た後に、SiO2層及びキャパシタ用誘電体層のエッチングレジスト(7)を除去した。
上記(15)を経た薄膜電子部品用セラミック基板(1)の表面側に後述するキャパシタ用導体層(14)の形成を要しない部分を保護するためのレジスト層(15)を形成した。
上記(16)を経た薄膜電子部品用セラミック基板(1)の表面側に、白金からなるキャパシタ用導体上層(14)を形成した。
上記(17)で用いたレジスト層(15)を除去することで、キャパシタ用導体層(14)のパターンニングを行った。
表面側の薄膜積層部を保護テープにて保護した後(図示しない)、上記(2)で形成された裏面側のグレーズ層(34)を上記(3)と同様にして研磨を行って除去し、緻密ガラスセラミック混合層(33)を表出させると共に、裏面側表面から配線パターン(21)を露出させた。
上記(19)で得られた薄膜電子部品用セラミック基板(1)の裏面に、後述する裏面側のハンダボール(12)の接続性を向上させるためのハンダボール接続パターン(17)を形成するためのレジスト層(16)を形成した。
上記(20)を経た薄膜電子部品用セラミック基板(1)の裏面側にスパッタリングにより、白金からなるハンダボール接続パターン(17)を堆積した。
上記(21)を行った後に不要となったレジスト層(16)を溶剤で完全に除去した。
上記(19)で形成した保護テープを剥離した後、上記(22)を経た薄膜電子部品用基部用セラミック基板の表面側にハンダボールの形成を要する部分がパターンニングにより選択的に除去されたソルダーレジスト層(10)を形成した。
尚、裏面側においては、上記(19)でグレーズ層(34)を研磨除去することで露出され、且つ、上記(21)においてハンダボール接続パターン(17)で覆われなかった部位の緻密ガラスセラミック混合層(33)がソルダーレジストとして機能する。このため、表面側と同様なソルダーレジスト層を形成する必要がない。
上記(23)を経た薄膜電子部品用基部用セラミック基板の表面側の上記レジスト層(10)が形成されていない部分と、裏面側のハンダボール接続パターン(17)表面とに、各々ハンダボール(12)を形成して、薄膜キャパシタ(101)を得た。
Claims (9)
- 基部用セラミック基板の表面に形成されたガラス層を加熱加圧処理して該基部用セラミック基板の表面部にガラスが拡散されてなる緻密ガラスセラミック混合層を形成し、平坦化研磨により該緻密ガラスセラミック混合層を表出させてなる薄膜電子部品用セラミック基板であって、
上記加熱加圧処理は、等方加圧により700℃以上且つ1MPa以上で行い、
上記基部用セラミック基板の上記緻密ガラスセラミック混合層を除く残部には、ガラスが含有されない、
又は、上記基部用セラミック基板の上記緻密ガラスセラミック混合層を除く残部には、ガラスが含有され、且つ、該残部に含有されるガラス量は、上記緻密ガラスセラミック混合層に含有されるガラス量より少ないことを特徴とする薄膜電子部品用セラミック基板。 - 上記ガラス層を構成するガラスは、軟化点が750℃以上である請求項1に記載の薄膜電子部品用セラミック基板。
- 上記ガラス層を構成するガラスは、屈伏点が700℃以上である請求項1又は2に記載の薄膜電子部品用セラミック基板。
- 上記ガラス層を構成するガラスは、Si、Al、B、Ca及びOを主成分とする請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の薄膜電子部品用セラミック基板。
- 配線パターンを内部に備える請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の薄膜電子部品用セラミック基板。
- 上記緻密ガラスセラミック混合層は、ポアを有さないものである請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の薄膜電子部品用セラミック基板。
- 請求項1乃至6のうちのいずれに記載の薄膜電子部品用セラミック基板を備えることを特徴とする薄膜電子部品。
- 上記薄膜電子部品用セラミック基板上に、キャパシタ用導体層とキャパシタ用誘電体層とが積層されてなるキャパシタ部を備え、該キャパシタ部は、対向する2層の該キャパシタ用導体層間に該キャパシタ用誘電体層が配置されるように、該キャパシタ用導体層と該キャパシタ用誘電体層とが交互に積層されてなる請求項7に記載の薄膜電子部品。
- 表面に端面が露出された内部配線パターンを備える基部用セラミック基板の該表面にガラス層を形成するガラス層形成工程と、
該ガラス層に加熱加圧処理を施し、該基部用セラミック基板の表面部にガラスが拡散されてなる緻密ガラスセラミック混合層を形成する加熱加圧処理工程と、
平坦に研磨しながら該緻密ガラスセラミック混合層及び該内部配線パターンを露出させる平坦化研磨工程と、をこの順に備え、
上記加熱加圧処理は、等方加圧により700℃以上且つ1MPa以上で行い、
上記基部用セラミック基板の上記緻密ガラスセラミック混合層を除く残部には、ガラスが含有されない、
又は、上記基部用セラミック基板の上記緻密ガラスセラミック混合層を除く残部には、ガラスが含有され、且つ、該残部に含有されるガラス量は、上記緻密ガラスセラミック混合層に含有されるガラス量より少ないことを特徴とする薄膜電子部品用セラミック基板の製造方法。
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