JP4664569B2 - 表面欠陥の封止方法及び封止装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力プラントなどの構造部材に表面欠陥が発生した場合に構造部材の健全性を回復するために表面欠陥を封止する方法及び表面欠陥封止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、原子炉の構造物などの部材に欠陥が発生した場合には、その構造部材全体を交換するか補強金具を取付ける等の処置が施されている。また、欠陥自体の補修方法としては、欠陥部を機械加工または放電加工で削除後、TIG溶接やレーザ溶接によって肉盛補修する方法や欠陥部表面のみを溶接する封止方法が検討されている。
【0003】
従来の表面欠陥の封止方法は、図6に示すように、レンズ等で成形されたレーザビーム27を表面欠陥14が発生している構造部材29の表面に照射し、レーザ溶融部28に溶加材としてフィラーワイヤ10を供給して表面欠陥14の表面を溶融して封止する方法である。この従来の方法では、表面欠陥14の内部に水や酸化物等の汚染物質が混入していない場合には、表面欠陥部表面を溶融して表面欠陥14を封止することが可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の従来封止方法においては、表面欠陥内に水や酸化物等の汚染物質が混入している場合、レーザによる加熱によってそれらの混入物が気化する。そのため、レーザ補修部の溶融金属を吹き飛ばしてピットが発生し、そのピットが残ることにより表面欠陥が封止されないことがある。
【0005】
そこで本発明は、表面欠陥の内部に水や酸化物等の汚染物質が混入していてもピット等を残すことなく良好に表面欠陥を封止することのできる表面欠陥の封止方法及び封止装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の表面欠陥の封止方法は、部材の表面において水中に開口部を有する表面欠陥に対して、施工ヘッドの一方の端部に互いに近接して固定された第1の熱照射源と第2の熱照射源からレーザ光を出射し、前記施工ヘッド内に設けられた同一のレンズ系により第1の熱スポットと第2の熱スポットを形成して共通の軌跡上で走査し、前記第1の熱スポットによって前記開口部を有する表面欠陥部位を加熱して当該表面欠陥内の水を除去し、この水が除去された当該表面欠陥の開口部を前記第2の熱スポットによって溶融封止することを特徴とする。
請求項2の発明は、前記表面欠陥に対して、施工ヘッドの出射口から噴出されるシールドガスによって気相空間を形成することを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、前記第1の熱スポットによる熱量は前記第2の熱スポットによる熱量よりも高いことを特徴とする。
請求項4の発明は、前記第1の熱スポットの熱量は前記第2の熱スポットの熱量の1.5倍から4倍であることを特徴とする。
請求項5の発明は、前記第2の熱スポットに溶加材を供給して肉盛溶接を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項6の表面欠陥封止装置は、施工ヘッドの一方の端部に接続されレーザ光を出射する第1の熱照射源と第2の熱照射源と、前記施工ヘッド内に設けられ第1の熱スポットと第2の熱スポットを形成する一つのレンズ系と、前記施工ヘッドのもう一方の端部に設けられた出射孔と、を有する表面欠陥封止装置であって、前記第1の熱照射源と第2の熱照射源は前記施工ヘッドの軌跡の方向に対して並列に配置されるとともに、前記第1の熱スポットによって開口部を有する表面欠陥部位を加熱して当該表面欠陥内の水を除去し、この水が除去された当該表面欠陥の開口部を前記第2の熱スポットによって溶融封止することを特徴とする。
【0009】
請求項7の表面欠陥封止装置は、施工ヘッドの一方の端部に接続されレーザ光を出射する第1の熱照射源と、前記第1の熱照射源と直交するように前記施工ヘッドに接続されレーザ光を出射する第2の熱照射源と、前記施工ヘッド内に設けられ第1の熱スポットと第2の熱スポットを形成するレンズ系と、前記施工ヘッドのもう一方の端部に設けられた出射孔と、を有する表面欠陥封止装置であって、前記レンズ系は、第1の熱照射源から出射するレーザ光を透過し第2の熱照射源から出射するレーザ光を反射するダイクロイックミラーと、前記ダイクロイックミラーで合成されたレーザービームを成形するレンズとを有し、前記第1の熱スポットによって開口部を有する表面欠陥部位を加熱して当該表面欠陥内の水を除去し、この水が除去された当該表面欠陥の開口部を前記第2の熱スポットによって溶融封止することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の表面欠陥の封止方法及び封止装置を説明する。
本発明の第1の実施の形態の表面欠陥の封止方法は、図1に示すように、施工ヘッド30に接続された第1の光ファイバー1と第2の光ファイバー2から出射された第1のレーザビーム3と第2のレーザビーム4を施工ヘッドケーシング30a内に設けられた同一のレンズ系5を介して、先行レーザビーム(第1の熱スポット)6および後続レーザビーム(第2の熱スポット)7として、構造部材29上の表面欠陥を含む被施工部8に水中で照射する。
【0011】
すなわち、先行レーザビーム6と後続レーザビーム7は、被施工部8上を共通の軌跡上で走査される。熱照射源である第1の光ファイバー1と第2の光ファイバー2は、前記軌跡の方向に対して並列になるように、施工ヘッド30に固定されている。後続レーザビーム照射部9には、図示しないフィラーワイヤ送給装置から送給されるフィラーワイヤ10が溶加材として供給される。
【0012】
ここで、先行レーザビーム6のレーザ出力(熱量)は後続レーザビーム7のレーザ出力(熱量)の2倍に設定されている。また、先行レーザビーム6と後続レーザビーム7が出射されるレーザビーム出射口11からはシールドガス12が噴出しており、先行レーザビーム6および後続レーザビーム7の照射部には気相空間13が形成される。シールドガス12としては、Ar、He、N2等の不活性ガスが使用される。
【0013】
本実施の形態の表面欠陥の封止方法においては、図2(a)に示すように、表面欠陥14が発生している被施工部8の表面に先行レーザビーム6および後続レーザビーム7が共通の軌跡で照射され、それぞれ先行レーザビームによる溶融層15と後続レーザビームによる溶融層16を形成しながら走査方向に進む。ここで、構造部材29は水中にあるので、表面欠陥14の内部には水17が浸入している。
【0014】
このような状態で、図2(b)に示すように先行レーザビーム6が表面欠陥14を通過すると、先行レーザビーム6によって100℃以上に加熱された領域の水17は蒸発するため、先行レーザビームによる溶融層15は吹き飛ばされてピット18が形成される。次に、図2(c)に示すようにピット18を後続レーザビーム7が通過して、ピット18の表面を加熱し溶融して、後続レーザビームによる溶融層16によって封止する。
【0015】
本実施の形態によれば、先行レーザビーム6の加熱効果によって、先行レーザビームによる溶融層15にピット18が形成されるものの、表面欠陥14内の水分や汚染物質が除去される。被施工部8上の先行レーザビーム6および後続レーザビーム7が照射される部位には気相空間13が形成されているため、再びピット18内に水が浸入することはなく、後続レーザビーム7によって容易にピット18が封止される。
【0016】
また、先行レーザビーム6のレーザ出力(熱量)を後続レーザビーム7のレーザ出力(熱量)よりも高い値、現実的には1.5倍から4倍に設定すると、先行レーザビーム6による水分や汚染物質の除去効果は後続レーザビーム7の熱影響範囲より広範囲に及ぶため、効果的な表面欠陥の封止が可能となる。さらに、後続レーザビーム照射部9に、溶加材としてフィラーワイヤー10を供給することによってピット18の封止がさらに確実となる。
【0017】
次に、本発明の第2の実施の形態の表面欠陥の封止方法を図3を用いて説明する。すなわち、第1の光ファイバー1と第2の光ファイバー2から出射された第1のレーザビーム3と第2のレーザビーム4はそれぞれ先行レーザビームレンズ系19と後続レーザビームレンズ系20によって成形及び屈折されて、先行レーザビーム6及び後続レーザビーム7として、被施工部8に照射される。先行レーザビームレンズ系19は、先行レーザビーム6が被施工部8に集光されるように構成されている。
【0018】
本実施の形態によれば、第1の光ファイバー1と第2の光ファイバー2から出射された第1のレーザビーム3と第2のレーザビーム4をそれぞれ異なるレンズ系19,20を用いて成形することによって、被施工部8での先行レーザビーム6と後続レーザビーム7のビーム径を異らせることが可能となる。ここで、先行レーザビーム6の集光度を高くすることによって、熱量を増加させ、深い溶け込みが得られるキーホール溶接が可能となる。こうして、先行レーザビームによる溶融層15を深くすることによって表面欠陥内の水及び汚染物質を十分に除去して、後続レーザビームによる溶融層16によって表面欠陥を封止することができる。
【0019】
次に、本発明に係る表面欠陥の封止方法の第3の実施の形態を図4を用いて説明する。すなわち、第1の光ファイバー1と第2の光ファイバー2を直交するように配置し、それぞれの光ファイバーに波長が異なるレーザ光を伝送する。第1の光ファイバー1及び第2の光ファイバー2から出射される第1のレーザビーム3と第2のレーザビーム4はそれぞれ第1のレンズ21と第2のレンズ22を介してダイクロイックミラー23に伝送される。ダイクロイックミラー23は第1のレーザビーム3を透過し、第2のレーザビーム4を反射するように誘電体多層膜がコーティングされている。
【0020】
ダイクロイックミラー23によって合成された2波長のレーザビームは第3のレンズ24によって成形されて、先行レーザビーム6及び後続レーザビーム7として被施工部8に照射される。このとき、第1の光ファイバー1の中心軸と第1のレンズ21の中心軸を変位させることによって、先行レーザビーム6と後続レーザビーム7の照射位置を調節できる。
【0021】
本実施の形態によれば、第1のレンズ21と第2のレンズ22の曲率を適宜選定することによって被施工部8での先行レーザビーム6と後続レーザビーム7のビーム径を変化させることが可能である。こうして、先行レーザビーム6をより強く集光させることによって、熱量を増加させ、深い溶け込みの溶融層が形成できる。さらに、ダイクロイックミラー23で2波長のレーザビーム3,4を合成することで一部のレンズ系を共有することが可能となり、コンパクトな構成となる。
【0022】
次に、本発明に係る表面欠陥の封止方法の第4の実施の形態を図5を用いて説明する。すなわち、前記第1,2,3の実施の形態における先行レーザビーム6の代わりに、アーク電極25から被施工部8に対してアーク(第1の熱スポット)26を発生させて、アーク加熱を行った後、後続レーザビーム(第2の熱スポット)7によって封止を行う。
【0023】
本実施の形態によれば、先行する大入熱のアーク26によって、広範囲に加熱し、表面欠陥内の水分及び汚染物質を広範囲に除去することが可能となり、後続レーザビーム7による封止が容易となる。
【0024】
なお、上記各実施の形態においては水中でのレーザ作業について説明したが、表面欠陥の内部に水や酸化物等の汚染物質が混入した状態であればいかなるレーザ作業にも適用することができる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の表面欠陥の封止方法によれば、表面欠陥の内部に水や酸化物等の汚染物質が混入していてもピット等を残すことなく良好に表面欠陥を封止することのできる表面欠陥の封止方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の表面欠陥の封止方法を説明する断面図。
【図2】上記第1の実施の形態の表面欠陥の封止方法の作用を説明する図。
【図3】本発明の第2の実施の形態の表面欠陥の封止方法を説明する断面図。
【図4】本発明の第3の実施の形態の表面欠陥の封止方法を説明する断面図。
【図5】本発明の第4の実施の形態の表面欠陥の封止方法を説明する断面図。
【図6】従来の表面欠陥の封止方法を説明する図。
【符号の説明】
1…第1の光ファイバー、2…第2の光ファイバー、3…第1のレーザビーム、4…第2のレーザビーム、5…レンズ系、6…先行レーザビーム(第1の熱スポット)、7…後続レーザビーム(第2の熱スポット)、8…被施工部、9…後続レーザビーム照射部、10…フィラーワイヤ、11…レーザビーム出射口、12…シールドガス、13…気相空間、13a…気泡、14…表面欠陥、15…先行レーザビームによる溶融層、16…後続レーザビームによる溶融層、17…水、18…ピット、19…先行レーザビームレンズ系、20…後続レーザビームレンズ系、21…第1のレンズ、22…第2のレンズ、23…ダイクロイックミラー、24…第3のレンズ、25…アーク電極、26…アーク(第1の熱スポット)、27…レーザビーム、28…レーザ溶接部、29…構造部材、30…施工ヘッド、30a…施工ヘッドケーシング。
Claims (7)
- 部材の表面において水中に開口部を有する表面欠陥に対して、施工ヘッドの一方の端部に互いに近接して固定された第1の熱照射源と第2の熱照射源からレーザ光を出射し、前記施工ヘッド内に設けられた同一のレンズ系により第1の熱スポットと第2の熱スポットを形成して共通の軌跡上で走査し、前記第1の熱スポットによって前記開口部を有する表面欠陥部位を加熱して当該表面欠陥内の水を除去し、この水が除去された当該表面欠陥の開口部を前記第2の熱スポットによって溶融封止することを特徴とする表面欠陥の封止方法。
- 前記表面欠陥に対して、施工ヘッドの出射口から噴出されるシールドガスによって気相空間を形成することを特徴とする請求項1記載の表面欠陥の封止方法。
- 前記第1の熱スポットによる熱量は前記第2の熱スポットによる熱量よりも高いことを特徴とする請求項1又は2記載の表面欠陥の封止方法。
- 前記第1の熱スポットの熱量は前記第2の熱スポットの熱量の1.5倍から4倍であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の表面欠陥の封止方法。
- 前記第2の熱スポットに溶加材を供給して肉盛溶接を行うことを特徴とする請求項1記載の表面欠陥の封止方法。
- 施工ヘッドの一方の端部に接続されレーザ光を出射する第1の熱照射源と第2の熱照射源と、前記施工ヘッド内に設けられ第1の熱スポットと第2の熱スポットを形成する一つのレンズ系と、前記施工ヘッドのもう一方の端部に設けられた出射孔と、を有する表面欠陥封止装置であって、
前記第1の熱照射源と第2の熱照射源は前記施工ヘッドの軌跡の方向に対して並列に配置されるとともに、前記第1の熱スポットによって開口部を有する表面欠陥部位を加熱して当該表面欠陥内の水を除去し、この水が除去された当該表面欠陥の開口部を前記第2の熱スポットによって溶融封止することを特徴とする表面欠陥封止装置。 - 施工ヘッドの一方の端部に接続されレーザ光を出射する第1の熱照射源と、前記第1の熱照射源と直交するように前記施工ヘッドに接続されレーザ光を出射する第2の熱照射源と、前記施工ヘッド内に設けられ第1の熱スポットと第2の熱スポットを形成するレンズ系と、前記施工ヘッドのもう一方の端部に設けられた出射孔と、を有する表面欠陥封止装置であって、
前記レンズ系は、第1の熱照射源から出射するレーザ光を透過し第2の熱照射源から出射するレーザ光を反射するダイクロイックミラーと、前記ダイクロイックミラーで合成されたレーザービームを成形するレンズとを有し、前記第1の熱スポットによって開口部を有する表面欠陥部位を加熱して当該表面欠陥内の水を除去し、この水が除去された当該表面欠陥の開口部を前記第2の熱スポットによって溶融封止することを特徴とする表面欠陥封止装置。
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