<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る第1の実施の形態を図1乃至図3に沿って説明する。図1は第1の実施の形態に係る無段変速機を示すスケルトン図、図2は第1の実施の形態に係る無段変速機の速度線図、図3は第1の実施の形態に係る無段変速機の係合表である。
まず、第1の実施の形態に係る無段変速機11の構成を図1に沿って説明する。無段変速機(IVT;infinitely variable transmission)11は、図1に示すように、大まかに、ミッションケース5内における一軸上にあって、入力側から出力側へ順に、入力軸2と、トロイダル式無段変速装置(以下、「バリエータ」という)10と、動力循環機構(以下、「動力循環プラネタリギヤ」という)20と、反転ギヤ機構30と、ハイクラッチ(ハイ係合要素)Hと、リバースクラッチ(後進用係合要素)Rと、ロークラッチ(前進用係合要素、ロー係合要素)Lと、出力軸9とを備えて構成されている。
バリエータ10は、フルトロイダル式からなり、入力軸2上に連結された2個の入力ディスク11A,11Bと、外周側が後述するサンギヤS1及びサンギヤS2とキャリヤCR3とに連結された出力ディスク12と、2個の入力ディスク11A,11B及び1個の出力ディスク12の間に挟持されるパワーローラ14A,14Bと、を有して構成されている。入力ディスク11A,11B及び出力ディスク12は、それぞれ対向するように円形の一部を形成する円弧状の凹溝11a,12aを有しており、2列のパワーローラ14A,14Bを挟んでダブルキャビティ13A,13Bを構成して、入力ディスク同士のスラスト力を打消す構成からなる。
パワーローラ14A,14Bは、環状のダブルキャビティ13A,13Bにおける周方向の略々均等な位置に複数個(例えば1つのキャビティに3個)配置されており、不図示の球面軸受、レバー等からなるリンク機構を油圧制御により押圧駆動される。また、入力ディスク11A,11Bは、例えばL字状のブロックと該ブロック上に設置された油圧ピストンとにより閉ループ的に押圧され、パワーローラ14A,14Bを挟持すると共に、その挟持圧が油圧により制御される。そして、上記リンク機構の押圧制御と入力ディスク11A,11Bの挟持圧とにより、パワーローラ14A,14Bが自律的に傾斜することで、入力ディスク11A,11Bと出力ディスク12との接触半径が変更されて無段に連続して変速する。本バリエータ10にあっては、入力ディスク11A,11Bに対して出力ディスク12が反転するので、速度比は−(マイナス)になる。
動力循環プラネタリギヤ20は、シンプソン型からなり、シングルピニオンプラネタリギヤSP1とシングルピニオンプラネタリギヤSP2とを備えて構成されている。シングルピニオンプラネタリギヤSP1は、1つのピニオンP1を回転自在に支持するキャリヤCR1と、該ピニオンP1に噛合するサンギヤS1と、該ピニオンP1に噛合するリングギヤR1とを有して構成されており、また同様に、シングルピニオンプラネタリギヤSP2は、1つのピニオンP2を回転自在に支持するキャリヤCR2と、該ピニオンP2に噛合するサンギヤS2と、該ピニオンP2に噛合するリングギヤR2とを有して構成されている。そして、サンギヤS1とサンギヤS2とが連結されて1つの回転要素を構成すると共に、リングギヤR1とキャリヤCR2とが連結されて1つの回転要素を構成し、つまり動力循環プラネタリギヤ20は、リングギヤR2(入力回転要素)、サンギヤS1及びサンギヤS2(無段変速回転要素)、キャリヤCR1(前進用循環回転要素)、リングギヤR1及びキャリヤCR2(後進用循環回転要素)、の4つの回転要素により構成されている。
上記動力循環プラネタリギヤ20のリングギヤR2は、上記入力軸2に連結されており、つまり入力ディスク11A,11B、リングギヤR2には、エンジン等の駆動源(不図示)の回転がそのまま伝達される。なお、本無段変速機1は、詳しくは後述するようにギヤニュートラル状態を得ることができるので、トルクコンバータ等を設ける必要はなく、入力軸2に直接エンジンを接続することができる。
上記動力循環プラネタリギヤ20のサンギヤS1及びサンギヤS2は、上記出力ディスク12の外周側に接続されている。また、上記リングギヤR1及びキャリヤCR2は、ロークラッチLに接続されて、該ロークラッチLが係合することにより出力軸9に接続され、上記キャリヤCR1は、リバースクラッチRに接続されて、該リバースクラッチRが係合することにより出力軸9に接続される。
反転ギヤ機構30は、2つのピニオンP3,P4を回転自在に支持するキャリヤCR3と、該ピニオンP3に噛合するサンギヤS3と、該ピニオンP4に噛合するリングギヤR3とを有するダブルピニオンプラネタリギヤDP3により構成されている。このうちのキャリヤCR3は、上記出力ディスク12の外周側に接続されており、リングギヤR3は、ミッションケース5に接続されて回転が常時固定されている。そして、上記サンギヤS3は、ハイクラッチHに接続されて、該ハイクラッチHが係合することにより出力軸9に接続される。
次に、上記無段変速機11の作用について図1を参照しつつ図2及び図3に沿って説明する。
例えば無段変速機11を搭載した車輌の後進時においては、不図示のシフトレバーや油圧制御装置による油圧制御に基づき該無段変速機11がリバースモードに制御され、図3に示すように、リバースクラッチRが係合制御される。すると、図1及び図2に示すように、エンジン出力軸に連結している入力軸2の正転回転INが、バリエータ10の入力ディスク11A,11B、及び動力循環プラネタリギヤ20のリングギヤR2に伝達される。このうち入力ディスク11A,11Bに入力された入力軸2の正転回転はバリエータ10で反転されつつ変速され、出力ディスク12より無段変速反転回転としてのバリエータ出力回転Voutが出力されて、サンギヤS1及びサンギヤS2に入力される。
サンギヤS1及びサンギヤS2にバリエータ出力回転Voutが入力されると、動力循環プラネタリギヤ20において、リングギヤR2に入力される入力軸2の正転回転INとサンギヤS1及びサンギヤS2に入力されるバリエータ出力回転Voutとがトルク循環により合成され、キャリヤCR1が、正転回転の変速比幅よりも逆転回転の変速比幅が大きい変速比幅を有し、少なくとも後述の前進用循環回転OutLよりも逆転回転の変速比幅が大きい後進用循環回転(即ちリバース出力回転)OutRによって回転される。このキャリヤCR1の後進用循環回転OutRは、バリエータ10の変速制御によって、ニュートラル位置(即ち0)から逆転回転の変速比幅の間に制御され、リバースクラッチRを介して出力軸9に出力される。
このリバースモードにおいては、後進用循環回転OutRにニュートラル状態となる変速比が含まれるように設定されているので、バリエータ10を制御し、バリエータ出力回転Voutを対応する変速比に制御することで、キャリヤCR1の回転がギヤニュートラル状態となり、つまりリバースモードの出力回転OutRがニュートラル状態となる。この状態においては、エンジン回転数(入力軸2の正転回転IN)と出力軸9の回転とが無関係となるので、例えばシフトレバーをリバースレンジに切換えた際にバリエータ10の変速比をこのギヤニュートラル状態に合せた後にリバースクラッチRを係合することで、回転数差を吸収することが不要であり、トルクコンバータ等の回転数差を吸収する装置を設ける必要がない。
そして、このギヤニュートラル状態より例えば車速やアクセル開度に応じてバリエータ10の変速比を大きくしていくと(図2中のバリエータ出力回転Voutを下方側にシフトしていくと)、出力軸9の出力回転OutRは、逆転回転側に増速していき、つまり後進側に増速されていく。
一方、車輌の前進発進時においては、不図示のシフトレバーや油圧制御装置による油圧制御に基づき該無段変速機11がローモードに制御され、図3に示すように、ロークラッチLが係合制御される。すると、図1及び図2に示すように、同様に入力軸2の正転回転INが、入力ディスク11A,11B、及びリングギヤR2に伝達されると共に、出力ディスク12よりバリエータ出力回転Voutが、サンギヤS1及びサンギヤS2に入力される。
サンギヤS1及びサンギヤS2にバリエータ出力回転Voutが入力されると、動力循環プラネタリギヤ20において、リングギヤR2に入力される入力軸2の正転回転INとサンギヤS1及びサンギヤS2に入力されるバリエータ出力回転Voutとがトルク循環により合成され、リングギヤR1及びキャリヤCR2が、逆転回転の変速比幅よりも正転回転の変速比幅が大きい変速比幅であって、好ましくはニュートラル位置(即ち0)から正転回転の変速比幅だけを有する前進用循環回転(即ちローモード出力回転)OutLによって回転される。このリングギヤR1及びキャリヤCR2の前進用循環回転OutLは、ロークラッチLを介して出力軸9に出力される。
このローモードにおいても、前進用循環回転OutLにニュートラル状態となる変速比が含まれるように設定されているので、バリエータ10を制御し、バリエータ出力回転Voutを大きくする(図2中下方側にする)ことで、リングギヤR1及びキャリヤCR2の回転がギヤニュートラル状態となり、つまりローモード時の出力回転OutLがニュートラル状態となる。上記リバースモードと同様に、この状態においては、エンジン回転数(入力軸2の正転回転IN)と出力軸9の回転とが無関係となるので、例えばシフトレバーをローレンジに切換えた際にバリエータ10の変速比をこのギヤニュートラル状態に合せた後にロークラッチLを係合することで、回転数差を吸収することが不要であり、トルクコンバータ等の回転数差を吸収する装置を設ける必要がない。
そして、このギヤニュートラル状態より例えば車速やアクセル開度に応じてバリエータ10の変速比を小さくしていくと(図2中のバリエータ出力回転Voutを上方側にシフトしていくと)、出力軸9の出力回転OutLは、正転回転側に増速していき、つまり前進側に増速されていく。
つづいて、上述のローモード状態で出力軸9の出力回転OutLが増速されていき(バリエータ10の変速比が小さくされていき)、図2中の破線で示すシンクチェンジSCの変速比に達して例えば車速やアクセル開度に応じて変速判断がなされると、不図示の油圧制御装置による油圧制御に基づき、図3に示すように、ロークラッチLが解放されると共にハイクラッチHが係合され、無段変速機11はハイモード状態にされる。
すると、図1及び図2に示すように、このハイモード状態においても同様に、入力軸2の正転回転INが、バリエータ10の入力ディスク11A,11B、及び動力循環プラネタリギヤ20のリングギヤR2に伝達され、出力ディスク12よりバリエータ出力回転Voutが出力される。このバリエータ出力回転Voutは、反転ギヤ機構30のキャリヤCR3に入力される。該キャリヤCR3にバリエータ出力回転Voutが入力されると、反転ギヤ機構30において、ミッションケース5に回転が固定されたリングギヤR3を介してキャリヤCR3のバリエータ出力回転Voutが僅かに増速されつつ反転される形でサンギヤS3が反転回転し、ハイクラッチHを介して該サンギヤS3の回転がハイモードの出力回転OutHとして出力軸9に出力される。
なお、このハイモード状態にあって、動力循環プラネタリギヤ20においては、リングギヤR2に入力軸2の正転回転INが入力され、サンギヤS1及びサンギヤS2にバリエータ出力回転Voutが入力されるため、リングギヤR1及びキャリヤCR2、キャリヤCR1が、上記ローモード時や上記リバースモード時と同様に回転するが、ロークラッチL及びリバースクラッチRが解放されているため、空転状態となる。
上記シンクチェンジSC時におけるローモード状態とハイモード状態との切換えにおいては、バリエータ10の変速比(バリエータ出力回転Vout)が最も小さくなる同じ変速比で切換えが行われるように各ギヤのギヤ比が設定されている。つまりローモード状態においては、バリエータ10の変速比が小さく変速されていくと出力回転OutLが増速され、シンクチェンジSCを境に、ハイモード状態においては、反対にバリエータ10の変速比が大きく変速されていくと出力回転OutHが増速されていく(即ち、上記ローモードの低変速比範囲に比して高い範囲の高変速比範囲となる)。
以上のような構成・作用を有する無段変速機11によると、動力循環プラネタリギヤ20を、入力軸2の正転回転INを入力し得るリングギヤR2、バリエータ出力回転Voutを入力するサンギヤS1及びサンギヤS2、該リングギヤR2と該サンギヤS1及び該サンギヤS2とによって、逆転回転の変速比幅よりも正転回転の変速比幅が大きな変速比幅を有する前進用循環回転OutLにより回転するリングギヤR1及びキャリヤCR2、該リングギヤR2と該サンギヤS1及び該サンギヤS2とによって、前進用循環回転OutLよりも逆転回転の変速比幅が大きな後進用循環回転OutRにより回転するキャリヤCR1、の4つの回転要素により構成し、ロークラッチLによりリングギヤR1及びキャリヤCR2の回転を出力軸9に出力自在にすると共に、リバースクラッチRによりキャリヤCR1の回転を出力軸9に出力自在にするように構成したので、キャリヤCR1の後進用循環回転OutRによって後進用の変速比幅を十分に得ることができるものでありながら、例えば従来のように動力循環プラネタリギヤを3つの回転要素で構成し、そのうちの1つの回転要素によって後進用の変速比幅と前進用の変速比幅とを有するように動力循環するものよりも、リングギヤR1及びキャリヤCR2の前進用循環回転OutLによって前進用の変速比幅を大きくすることが可能となる。
また、特にローモード時に、動力循環プラネタリギヤ20におけるリングギヤR2とサンギヤS1及びサンギヤS2とのトルク合成にあって、従来の3つの回転要素で構成された動力循環プラネタリギヤよりも、リングギヤR1及びキャリヤCR2の歯数比をリングギヤR2側(即ち図2の左方側)に近づけることができ、リングギヤR1及びキャリヤCR2に対して伝達するトルク分担の割合としてリングギヤR2からのトルク伝達を大きくすることができるので、バリエータ10(サンギヤS1及びサンギヤS2)が担持するトルク容量を小さくすることができ、リバースモードに比して圧倒的に使用量が多いローモードにおけるバリエータ10の負荷を軽減することができて、バリエータ10の耐久性向上を図ることができる。
また、ローモードにおける前進用の変速比幅を大きくする必要がない場合、即ち従来のように動力循環プラネタリギヤの1つの回転要素によって後進用の変速比幅と前進用の変速比幅とを有するように構成したものと同等の前進用の変速比幅で足りる場合にあっては、バリエータ10の無段変速の変速比幅(即ちVoutの幅)を小さくすることができる。これにより、特にフルトロイダル式のバリエータ10にあっては、パワーローラ14A,14Bの傾斜角度の幅を小さくすることができ、該バリエータ10の径方向の大きさをコンパクト化することができる。
更に、パワーローラ14A,14Bの傾斜角度の幅を小さくすることができることで、入出力ディスク11A,11B,12とパワーローラ14A,14Bとの接触部分の、両ディスク11A,11B,12の中心(即ち入力軸2)からの最小半径を大きくすることができ、例えば同トルクを伝達する場合における接触部分の接線力(トルク/接触半径、モーメント)を小さくすることができて、バリエータ10の挟持力を低減することができ、それによって、バリエータ10の耐久性向上を図ることもできる。
また、ローモードにおける変速比幅(即ちOutL)を大きくすることができるので、反転ギヤ機構30の再反転する際の変速比を大きくして、ハイモードの出力回転OutHも大きくすることができ、搭載される車輌の高速走行等における燃費向上を図ることができる。また、無段変速機11としての変速比全体を大きくすることができるので、出力軸9に接続されるディファレンシャル装置(不図示)の減速比を大きくすることも可能となり、無段変速機11の出力トルクを小さくすることができるため、無段変速機11を小型化することができる。
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した、本発明に係る第2の実施の形態を図4乃至図6に沿って説明する。図4は第2の実施の形態に係る無段変速機を示すスケルトン図、図5は第2の実施の形態に係る無段変速機の速度線図、図6は第2の実施の形態に係る無段変速機の係合表である。なお、本第2の実施の形態においては、一部変更部分を除き、第1の実施の形態と同様な部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図4に示すように、第2の実施の形態に係る無段変速機12は、図1に示した第1の実施の形態に係る無段変速機11に比して、動力循環プラネタリギヤ20及び反転ギヤ機構30の構成を変更し、ロークラッチLとリバースクラッチRとの軸方向配置位置を入れ替えたものである。また、反転ギヤ機構30を介して動力循環プラネタリギヤ20の前進用循環回転要素の回転を固定するオーバードライブクラッチ(オーバードライブ係合要素)ODを設けると共に、該オーバードライブクラッチODに並列配置されたワンウェイクラッチF−2と、ハイモードの出力回転要素(サンギヤS3)及びローモードの出力回転要素(キャリヤCR1)の間に配置されたワンウェイクラッチF−1と、の2つのワンウィクラッチを設けたものである。
詳細には、動力循環プラネタリギヤ20は、ラビニヨ型のプラネタリギヤセットPSにより構成されており、ショートピニオンP1及びロングピニオンP2を回転自在に支持するキャリヤCR1と、該ピニオンP1に噛合するリングギヤR1と、該ピニオンP2に噛合するサンギヤS1と、該ピニオンP2に噛合するリングギヤR2とを有して構成されている。つまり、動力循環プラネタリギヤ20は、リングギヤR2(入力回転要素)、サンギヤS1(無段変速回転要素)、キャリヤCR1(前進用循環回転要素)、リングギヤR1(後進用循環回転要素)、の4つの回転要素により構成されている。
上記動力循環プラネタリギヤ20のリングギヤR2は、上記入力軸2に連結されており、サンギヤS1は、出力ディスク12の外周側に接続されている。また、キャリヤCR1は、ロークラッチLに接続されて、該ロークラッチLが係合することにより出力軸9に接続され、上記リングギヤR1は、リバースクラッチRに接続されて、該リバースクラッチRが係合することにより出力軸9に接続される。
反転ギヤ機構30は、1つのピニオンP3を回転自在に支持するキャリヤCR3と、該ピニオンP3に噛合するサンギヤS3と、該ピニオンP3に噛合するリングギヤR3とを有するシングルピニオンプラネタリギヤSP3により構成されている。このうちのリングギヤR3は、上記出力ディスク12の外周側に接続されており、キャリヤCR3は、ミッションケース5に接続されて回転が常時固定されている。そして、上記サンギヤS3は、ハイクラッチHに接続されて、該ハイクラッチHが係合することにより出力軸9に接続される。
また、上記キャリヤCR3と上記キャリヤCR1との間には、オーバードライブクラッチODが介在されており、該オーバードライブクラッチODと並列配置される形で、キャリヤCR3の回転よりもキャリヤCR1の回転が低くなることを規制するワンウェイクラッチF−2が配設されている。更に、サンギヤS3とハイクラッチHとを接続する部材と、キャリヤCR1とロークラッチLとを接続する部材との間、即ちサンギヤS3とキャリヤCR1との間には、キャリヤCR1の回転がサンギヤS3の回転よりも高くならないように、言い換えると、サンギヤS3の回転がキャリヤCR1の回転よりも低くならないように規制するための、ワンウェイクラッチF−1が配設されている。
なお、本実施の形態において、オーバードライブクラッチODは、キャリヤCR3を介してミッションケース5にキャリヤCR1を係止させる「ブレーキ」としての役目を有するものであるが、後述の第3の実施の形態のようにキャリヤCR3が空転するような構成であっても構わないため、「クラッチ」という。
次に、上記無段変速機12の作用について図4を参照しつつ図5及び図6に沿って説明する。
例えば無段変速機12を搭載した車輌の後進時においては、不図示のシフトレバーや油圧制御装置による油圧制御に基づき該無段変速機12がリバースモードに制御され、図6に示すように、リバースクラッチRが係合制御される。すると、図4及び図5に示すように、入力軸2の正転回転INが、バリエータ10の入力ディスク11A,11B、及び動力循環プラネタリギヤ20のリングギヤR2に伝達され、また、出力ディスク12よりバリエータ出力回転Voutが、サンギヤS1に入力される。
サンギヤS1にバリエータ出力回転Voutが入力されると、動力循環プラネタリギヤ20において、リングギヤR2に入力される入力軸2の正転回転INとサンギヤS1に入力されるバリエータ出力回転Voutとがトルク循環により合成され、リングギヤR1が、正転回転の変速比幅よりも逆転回転の変速比幅が大きい変速比幅を有し、少なくとも後述の前進用循環回転OutLよりも逆転回転の変速比幅が大きい後進用循環回転OutRによって回転される。このリングギヤR1の後進用循環回転OutRは、バリエータ10の変速制御によって、ニュートラル位置(即ち0)から逆転回転の変速比幅の間に制御され、リバースクラッチRを介して出力軸9に出力される。
このリバースモードにおいては、第1の実施の形態と同様に、後進用循環回転OutRにニュートラル状態となる変速比が含まれるように設定されているので、バリエータ10を制御し、バリエータ出力回転Voutを対応する変速比に制御することで、リングギヤRの回転をギヤニュートラル状態にすることができる。そして、このギヤニュートラル状態より例えば車速やアクセル開度に応じてバリエータ10の変速比を大きくしていくと(図5中のバリエータ出力回転Voutを下方側にシフトしていくと)、出力軸9の出力回転OutRは、逆転回転側に増速していき、つまり後進側に増速されていく。
一方、車輌の前進発進時においては、不図示のシフトレバーや油圧制御装置による油圧制御に基づき該無段変速機12がローモードに制御され、図6に示すように、ロークラッチLが係合制御される。すると、図4及び図5に示すように、同様に入力軸2の正転回転INが、入力ディスク11A,11B、及びリングギヤR2に伝達されると共に、出力ディスク12よりバリエータ出力回転Voutが、サンギヤS1に入力される。
サンギヤS1にバリエータ出力回転Voutが入力されると、動力循環プラネタリギヤ20において、リングギヤR2に入力される入力軸2の正転回転INとサンギヤS1に入力されるバリエータ出力回転Voutとがトルク循環により合成され、キャリヤCR1が、逆転回転の変速比幅よりも正転回転の変速比幅が大きい変速比幅であって、ニュートラル位置(即ち0)から正転回転の変速比幅だけを有する前進用循環回転OutLによって回転される。このキャリヤCR1の前進用循環回転OutLは、ロークラッチLを介して出力軸9に出力される。
このローモードにおける前進用循環回転OutLは、ニュートラル状態となる変速比が最も小さくなるように設定されているので、バリエータ10を制御し、バリエータ出力回転Voutを最大にする(図5中下方側の最下端にする)ことで、キャリヤCR1の回転がギヤニュートラル状態となり、つまりローモード時の出力回転OutLがニュートラル状態となる。そして、このギヤニュートラル状態より例えば車速やアクセル開度に応じてバリエータ10の変速比を小さくしていくと(図5中のバリエータ出力回転Voutを上方側にシフトしていくと)、出力軸9の出力回転OutLは、正転回転側に増速していき、つまり前進側に増速されていく。
つづいて、上述のローモード状態で出力軸9の出力回転OutLが増速されていき(バリエータ10の変速比が小さくされていき)、図5中の破線で示すシンクチェンジSCの変速比に達して例えば車速やアクセル開度に応じて変速判断がなされると、不図示の油圧制御装置による油圧制御に基づき、図6に示すように、ロークラッチLが解放されると共にハイクラッチHが係合され、無段変速機12はハイモード状態にされる。
すると、図4及び図5に示すように、このハイモード状態においても同様に、入力軸2の正転回転INが、バリエータ10の入力ディスク11A,11B、及び動力循環プラネタリギヤ20のリングギヤR2に伝達され、出力ディスク12よりバリエータ出力回転Voutが出力される。このバリエータ出力回転Voutは、反転ギヤ機構30のリングギヤR3に入力される。該リングギヤR3にバリエータ出力回転Voutが入力されると、反転ギヤ機構30において、ミッションケース5に回転が固定されたキャリヤCR3を介してバリエータ出力回転Voutが僅かに増速されつつ反転される形でサンギヤS3が反転回転し、ハイクラッチHを介して該サンギヤS3の回転がハイモード時の出力回転OutHとして出力軸9に出力される。
なお、このハイモード状態にあって、動力循環プラネタリギヤ20においては、リングギヤR2に入力軸2の正転回転INが入力され、サンギヤS1にバリエータ出力回転Voutが入力されるため、キャリヤCR1、リングギヤR1が、上記ローモード時や上記リバースモード時と同様に回転するが、ロークラッチL及びリバースクラッチRが解放されているため、空転状態となる。
上記シンクチェンジSC時におけるローモード状態とハイモード状態との切換えにおいては、バリエータ10の変速比(バリエータ出力回転Vout)が最も小さくなる同じ変速比で切換えが行われるように各ギヤのギヤ比が設定されている。つまりローモード状態においては、バリエータ10の変速比が小さく変速されていくと出力回転OutLが増速され、シンクチェンジSCを境に、ハイモード状態においては、反対にバリエータ10の変速比が大きく変速されていくと出力回転OutHが増速されていく(即ち、上記ローモードの低変速比範囲に比して高い範囲の高変速比範囲となる)。
ところで、このシンクチェンジSCの変速比に達する状態は、バリエータ10の変速比が最も小さくなる状態であって、つまりパワーローラ14A,14Bが最も傾斜した状態である。例えばローモード時におけるシンクチェンジSCの変速比の状態から、車輌が降坂路を走行する等して、駆動車輪を介して出力軸9に加速方向のトルクが加わると、ロークラッチLを介してキャリヤCR1が増速され、それに伴いサンギヤS1が減速されて、つまりバリエータ10の出力ディスク12が更に変速比が小さくなる方向に減速される虞がある。
また反対に、例えばハイモード時におけるシンクチェンジSCの変速比の状態から、車輌が登坂路を走行する等して、駆動車輪を介して出力軸9に減速方向のトルクが加わると、ハイクラッチHを介してサンギヤS3が減速され、キャリヤCR3を介してリングギヤR3が減速されて、つまりバリエータ10の出力ディスク12が更に変速比が小さくなる方向に減速される虞がある。このようにバリエータ10の変速比が最も小さい状態から出力ディスク12に減速方向に力が加わると、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等を生じてしまう虞がある。
しかしながら、サンギヤS3(の回転をハイクラッチHに伝達する部材)とキャリヤCR1(の回転をロークラッチLに伝達する部材)との間にはワンウェイクラッチF−1が配設されており、動力循環プラネタリギヤ20のキャリヤCR1の回転が、反転ギヤ機構30のサンギヤS3の回転よりも上回らないように規制されている。従って、ローモード時にあってシンクチェンジSCの変速比に到達した状態では、キャリヤCR1の回転が、ハイモードの出力回転OutHの最も低い回転状態となったサンギヤS3の回転より高くになることが規制され、反対に、ハイモード時にあってシンクチェンジSCの変速比に到達した状態では、サンギヤS3の回転が、ローモードの出力回転OutLの最も高い回転状態となったキャリヤCR1の回転よりも低くなることが規制される。つまり、出力ディスク12の入力ディスク11A,11Bに対する変速比がシンクチェンジSC時の変速比よりも小さくなることが防止され(バリエータ10において設定された最低変速比よりも小さくなることが防止され)、これによって、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等が防止される。
ついで、例えば上述のハイモード状態で不図示の制御部により略々一定速度の高速走行が所定時間継続する等の条件が判断されると、オーバードライブ段への変速が判断され、バリエータ10がオーバードライブ段の変速比に、特に本実施の形態においてはバリエータ10の最高変速比に変速制御されると共に(或いは既にバリエータ10が最高変速比になっている状態で)、図6に示すように、オーバードライブクラッチODが係合制御され、無段変速機12はオーバードライブモード状態にされる。
すると、図4及び図5に示すように、入力軸2の正転回転INが、動力循環プラネタリギヤ20のリングギヤR2に入力され、反転ギヤ機構30のキャリヤCR3を介して動力循環プラネタリギヤ20のキャリヤCR1がミッションケース5に対して回転固定される。リングギヤR2の入力軸2の正転回転INは、回転が固定されたキャリヤCR1を介してサンギヤS1に出力され、サンギヤS1は、バリエータ10の最高変速比と同じ変速比にて回転される。更に、該サンギヤS1の回転は、反転ギヤ機構30のリングギヤR3に入力され、回転が固定されたキャリヤCR3を介してサンギヤS3に出力され、バリエータ10の最高変速比と同じ変速比のオーバードライブ段の出力回転として出力され、ハイクラッチHを介して出力軸9より出力される。即ち、動力循環プラネタリギヤ20においてバリエータ10の最高変速比と同じ変速段が形成され、該動力循環プラネタリギヤ20と反転ギヤ機構30とによって、ハイモードの最高変速比と同じ変速比のオーバードライブ段が形成される。
このようにオーバードライブ段が形成された状態にあっては、ハイクラッチHの係合状態が維持されるが、入力軸2から、動力循環プラネタリギヤ20、反転ギヤ機構30、ハイクラッチH、出力軸9までの伝達経路が形成され、つまりバリエータ10を迂回した伝達経路が形成されるため、バリエータ10によって動力伝達を行うことが不要となる。これにより、バリエータ10の挟持圧を緩めることが可能となり、バリエータ10がトルク伝達を行うことによる各種の損失が低減され、変速が不要となる走行状態における車輌の燃費向上が図られる。
その後、不図示の制御部により例えば変速が必要となる条件等が判断されると、ハイモードへの移行が判断され、オーバードライブクラッチODが解放制御されて、上述したハイモードの状態に復帰される。なお、オーバードライブモード状態にあっても、バリエータ10は、最高変速比の状態に維持されており、バリエータ10の挟持圧を強めて動力伝達を行い得るように制御するだけで、ハイモードへの移行が完了する。
ところで、上記ハイモード状態にあって最も変速比が大きくなる状態にあっては、バリエータ10の変速比が最も大きくなる状態であって、同様にパワーローラ14A,14Bが最も傾斜した状態である。例えばこのハイモード状態において最も大きくなった変速比の状態から、車輌が降坂路を走行する等して、駆動車輪を介して出力軸9に加速方向のトルクが加わると、ハイクラッチHを介してサンギヤS3が加速され、キャリヤCR3を介してリングギヤR3が加速されて、つまりバリエータ10の出力ディスク12が更に変速比が大きくなる方向に加速される虞がある。
また、例えばローモード時におけるニュートラル状態から、車輌が登坂路に停車している場合等により、駆動車輪を介して出力軸9に逆転方向のトルクが加わると、ロークラッチLを介してキャリヤCR1が減速され、入力軸2の正転回転INとなるリングギヤR2を介してサンギヤS1が加速されて、つまりバリエータ10の出力ディスク12が更に変速比が大きくなる方向に加速される虞がある。
更に、例えばリバースモード時にあって最も変速比が大きくなる状態から、車輌が降坂路等を走行する等して、駆動車輪を介して出力軸9に逆転方向のトルクが加わると、リバースクラッチRを介してリングギヤR1が減速され、入力軸2の正転回転INとなるリングギヤR2を介してサンギヤS1が加速されて、つまりバリエータ10の出力ディスク12が更に変速比が大きくなる方向に加速される虞がある。このようにバリエータ10の変速比が最も大きい状態から出力ディスク12に加速方向に力が加わった場合にあっても、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等を生じてしまう虞がある。
しかしながら、上述のようにオーバードライブクラッチODと並列配置されたワンウェイクラッチF−2が備えられており、ミッションケース5に接続されたキャリヤCR3を介してキャリヤCR1の逆転回転が規制されている。即ち、キャリヤCR1の逆転回転が規制されていることで、サンギヤS1及びリングギヤR3の回転がバリエータ出力回転Voutの最高変速比よりも高くならないように規制される。つまり、出力ディスク12の無段変速回転Voutが、バリエータ10において設定された最高変速比よりも大きくなることが防止され、これによって、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等が防止される。
従って、本無段変速機12にあっては、上記2つのワンウェイクラッチF−1,F−2を備えていることによって、バリエータ10において最低変速比から最高変速比の変速範囲を越えることが規制され(つまり上限と下限との双方が規制され)、バリエータ10におけるパワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等の防止が確実に図れる。
以上のように本第2の実施の形態に係る無段変速機12によると、キャリヤCR1の変速比幅(即ちOutL)が、逆転回転の変速比幅よりも正転回転の変速比幅が大きく、そのキャリヤCR1をオーバードライブクラッチODにより係止するので、つまりバリエータ10の変速比を大きくした状態を動力循環プラネタリギヤ20だけによって形成することができ、オーバードライブ段としての変速比を大きくすることができる。特に本無段変速機12のように、キャリヤCR1の変速比幅がニュートラルから正転回転の変速比幅だけに設定されていることで、バリエータ10の変速比を最大変速比にした状態を動力循環プラネタリギヤ20だけによって形成することができ、つまりオーバードライブ段としての変速比をハイモードの変速比幅における最大変速比にすることができる。
また、キャリヤCR1の逆転回転を規制するワンウェイクラッチF−2を備えているので、バリエータ10の変速比が最大変速比を超えることを防止することができ、これにより、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や入出力ディスク11A,11B,12からの飛び出し等を防止することができる。
また、本無段変速機12は、上述のようにローモードにおける前進用の変速比幅を大きくすることができるので、ハイモードの出力回転OutHを増速側に設定することがでる。例えばバリエータ出力回転Voutをあまり増速せずに反転するだけである場合(例えば従来は反転ギヤ機構の変速比が1.1程度となる)は、反転ギヤ機構の各ギヤ径に制限が生じるため、ダブルピニオンプラネタリギヤを用いることになってしまうが、本無段変速機12にあっては、バリエータ出力回転Voutに対してハイモードの出力回転OutHを増速反転することになるので、シングルピニオンプラネタリギヤSP3を用いることができる。これにより、ハイモード時の伝達経路における噛合箇所を減らすことができ、伝達効率を向上することができる。
なお、これ以外の構成・作用効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
<第3の実施の形態>
ついで、上記第2の実施の形態を一部変更した、本発明に係る第3の実施の形態を図7乃至図9に沿って説明する。図7は第3の実施の形態に係る無段変速機を示すスケルトン図、図8は第3の実施の形態に係る無段変速機の速度線図、図9は第3の実施の形態に係る無段変速機の係合表である。なお、本第3の実施の形態においては、一部変更部分を除き、第2の実施の形態と同様な部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図7に示すように、第3の実施の形態に係る無段変速機13は、図4に示した第2の実施の形態に係る無段変速機12に比して、動力循環プラネタリギヤ20の構成を変更し、また、ハイクラッチHに代えて反転ギヤ機構30のキャリヤCR3の回転を係止自在にするハイブレーキ(ハイ係合要素)Hを配設し、更に、ワンウェイクラッチF−1を無くしたものである。
動力循環プラネタリギヤ20は、第2の実施の形態と同様にラビニヨ型のプラネタリギヤセットPSにより構成されているが、ロングピニオンP1とショートピニオンP2との内外径方向の位置を入れ替え、それら2つのピニオンP1,P2を回転自在に支持するキャリヤCR1と、該ピニオンP1に噛合するサンギヤS1と、該ピニオンP2に噛合するサンギヤS2と、該ピニオンP1に噛合するリングギヤR1とにより構成されている。
そのうちのサンギヤS2(入力回転要素)が入力軸2に接続され、サンギヤS1(無段変速回転要素)がバリエータ10の出力ディスク12に接続され、リングギヤR1(前進用循環回転要素)がロークラッチL及びオーバードライブクラッチOD並びにワンウェイクラッチF−2に接続され、そして、キャリヤCR1(後進用循環回転要素)がリバースクラッチRに接続されている。このように構成された無段変速機13は、動力循環プラネタリギヤ20において、サンギヤS2の入力軸2の正転回転INとサンギヤS1のバリエータ出力回転Voutとによって、リングギヤR1が前進用循環回転OutLにより回転し、キャリヤCR1が後進用循環回転OutRによって回転する。
従って、図9に示すように、リバースクラッチRが係合されたリバースモードにあっては、図7及び図8に示すように、動力循環されたキャリヤCR1の後進用循環回転OutRが出力軸9に出力され、図9に示すように、ロークラッチLが係合されたローモードにあっては、図7及び図8に示すように、動力循環されたリングギヤR1の前進用循環回転OutLが出力軸9に出力される。
また、図9に示すように、ハイブレーキHが係合されたハイモードにあっては、図7及び図8に示すように、バリエータ出力回転Voutが反転ギヤ機構30により再反転されつつ増速されたハイモード出力回転OutHが出力軸9に出力され、図9に示すように、ハイブレーキH及びオーバードライブクラッチODが係合されたオーバードライブモードにあっては、図7及び図8に示すように、動力循環プラネタリギヤ20においてバリエータ10の最高変速比と同じ変速比が形成され、サンギヤS1からリングギヤR3に伝達された回転が反転されてサンギヤS3からオーバードライブ段の出力回転として出力軸9に出力される。
なお、本第3の実施の形態に係る無段変速機13においては、サンギヤS3が出力軸9に連結されており、ハイブレーキHを解放したリバースモード及びローモードの際に、反転ギヤ機構30のキャリヤCR3に空転回転が生じる。即ち、図8中の二点鎖線に示すように、リバースモードにあっては、サンギヤS3が後進用循環回転OutRによって回転すると共にリングギヤR3がバリエータ出力回転Voutによって回転するため、キャリヤCR3は、矢印IRで示す変速比幅により空転する。また、ローモードにあっては、サンギヤS3が前進用循環回転OutLによって回転すると共にリングギヤR3がバリエータ出力回転Voutによって回転するため、キャリヤCR3は、矢印ILで示す変速比幅により空転する。
また、本第3の実施の形態に係る無段変速機13においては、ローモード及びリバースモードにあってハイブレーキHが解放されるため、ハイモード時のみワンウェイクラッチF−2が作動することになる。
なお、これ以外の構成・作用効果は、第1の実施の形態を引用して説明した第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
<第4の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した、本発明に係る第4の実施の形態を図10乃至図12に沿って説明する。図10は第4の実施の形態に係る無段変速機を示すスケルトン図、図11は第4の実施の形態に係る無段変速機の速度線図、図12は第4の実施の形態に係る無段変速機の係合表である。なお、本第4の実施の形態においては、一部変更部分を除き、第1の実施の形態と同様な部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図10に示すように、第4の実施の形態に係る無段変速機14は、図1に示した第1の実施の形態に係る無段変速機11に比して、ハイモード状態にあってバリエータ出力回転Voutを反転せず、ローモード状態にあって前進用循環回転OutLを反転ギヤ機構40により反転するように構成したものである。
詳細には、動力循環プラネタリギヤ20は、ラビニヨ型のプラネタリギヤセットPSにより構成されており、ショートピニオンP1及びロングピニオンP2を回転自在に支持するキャリヤCR1と、該ピニオンP1に噛合するリングギヤR1と、該ピニオンP2に噛合するサンギヤS1と、該ピニオンP2に噛合するリングギヤR2とを有して構成されている。
そのうちのリングギヤR2(入力回転要素)が入力軸2に接続され、サンギヤS1(無段変速回転要素)がバリエータ10の出力ディスク12に接続され、キャリヤCR1(前進用循環回転要素)が反転ギヤ機構40のサンギヤS3に接続され、そして、リングギヤR1(後進用循環回転要素)がリバースクラッチRに接続されている。このように構成された無段変速機14は、動力循環プラネタリギヤ20において、サンギヤS2の入力軸2の正転回転INとサンギヤS1のバリエータ出力回転Voutとによって、キャリヤCR1が前進用循環回転OutLにより回転し、リングギヤR1が後進用循環回転OutRによって回転する。
また、反転ギヤ機構40は、2つのピニオンP3,P4を回転自在に支持するキャリヤCR3と、該ピニオンP3に噛合するサンギヤS3と、該ピニオンP4に噛合するリングギヤR3とを有するダブルピニオンプラネタリギヤDP3によって構成されており、リングギヤR3がローブレーキ(ロー係合要素)Lによりミッションケース5に対して回転係止自在に構成されていると共に、キャリヤCR3が出力軸9に連結され、かつハイクラッチHを介してバリエータ10の出力ディスク12に接続されるように構成されている。なお、本無段変速機14は、前進用として逆転回転を出力軸9より出力し、後進用として正転回転を出力軸9より出力するものであるが、その出力軸9の回転は図示を省略したディファレンシャル装置によって第1乃至第3の実施の形態とは逆回転に反転される形で左右駆動車輪に分配されることになる。
このように構成された無段変速機14は、図12に示すように、リバースクラッチRが係合されたリバースモードにあって、図10及び図11に示すように、動力循環されたリングギヤR1の後進用循環回転OutRが出力軸9に出力されるが、この際、バリエータ10の変速比(出力回転Vout)が制御されて、該リングギヤR1の回転が、ニュートラル状態から正転回転の変速比幅(図11中の上方側)となるように変速される。
一方、図12に示すように、ローブレーキLが係合されたローモードにあっては、図10及び図11に示すように、動力循環されたキャリヤCR1の前進用循環回転OutLが反転ギヤ機構40のサンギヤS3に入力され、ローブレーキLによってミッションケース5に対して回転が係止されたリングギヤR3を介してキャリヤCR3よりローモード出力回転OutL’として出力軸9に出力される。
また、図12に示すように、ハイクラッチHが係合されたハイモードにあっては、図10及び図11に示すように、出力ディスク12より出力されたバリエータ出力回転Voutが、ハイクラッチHを介して反転ギヤ機構40のキャリヤCR3に入力され、そのまま出力軸9に出力される。
なお、本第4の実施の形態に係る無段変速機14においては、キャリヤCR3が出力軸9に連結されており、ローブレーキLを解放したリバースモード及びハイモードの際に、反転ギヤ機構40のリングギヤR3に空転回転が生じる。即ち、図11中の二点鎖線に示すように、リバースモードにあっては、キャリヤCR3が後進用循環回転OutRによって回転すると共にサンギヤS3がキャリヤCR1の前進用循環回転OutLによって回転するため、リングギヤR3は、矢印IRで示す変速比幅により空転する。また、ハイモードにあっては、サンギヤS3が前進用循環回転OutLによって回転すると共にキャリヤCR3がハイモード出力回転OutH(即ちバリエータ出力回転Vout)によって回転するため、リングギヤR3は、矢印IHで示す変速比幅により空転する。
以上説明した本第4の実施の形態に係る無段変速機14は、ハイモード状態にあってバリエータ出力回転Voutを増速しないため、ローモード状態における前進用の変速比幅を大きくしても、無段変速機14としての最高変速比は大きくならないが、ハイモードの際に動力循環プラネタリギヤ20だけでなく、反転ギヤ機構40においても歯車の噛合いによる動力伝達がなくなるので、無段変速機14の伝達効率を向上させることができる。
なお、これ以外の構成・作用効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
なお、以上説明した第1乃至第4の実施の形態においては、無段変速装置としてフルトロイダル式無段変速装置を用いたものを一例に説明したが、勿論、ハーフトロイダル式無段変速装置を用いてもよく、更に、これらに限らず、例えばベルト式無段変速装置等、無段変速し得るものであれば、どのようなものであってもよい。
また、第2及び第3の実施の形態において説明したオーバードライブ係合要素を係合する条件、即ちハイモードからオーバードライブモードに切換える条件は、どのような条件であってもよいことはいうまでもない。