<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る第1の実施の形態を図1乃至図3に沿って説明する。図1は第1の実施の形態に係る無段変速機を示すスケルトン図、図2は第1の実施の形態に係る無段変速機の速度線図、図3は第1の実施の形態に係る無段変速機の係合表である。なお、図3において、「○」は係合状態を示し、「×」は解放状態を示すものである。
第1の実施の形態に係る無段変速機(IVT;infinitely variable transmission)11は、図1に示すように、大まかに、ミッションケース5内における一軸上にあって、入力側から出力側へ順に、入力軸2と、増速変速機構(増速プラネタリギヤ)601と、無段変速機構501と、オーバードライブ係合要素(オーバードライブクラッチ)C2と、出力軸9とが備えられて構成されている。該無段変速機構501には、無段変速装置(バリエータ)10と、動力循環機構(動力循環プラネタリギヤ)201と、反転ギヤ機構301と、ロー・ハイ切換え機構としてのロー係合要素C1及びハイ係合要素B1と、を備えて構成されている。
まず、無段変速機11において無段変速を行うための無段変速機構501の部分について説明する。無段変速機構501にあって、無段変速装置10は、図1に示すように、フルトロイダル式無段変速装置からなり、詳しくは後述する増速プラネタリギヤ601のキャリヤCR0を介して入力軸2上に連結された入力ディスク(無段変速装置の入力部)11Aと、該入力ディスク11Aに接続された入力回転伝達軸3及び後述のキャリヤCR1を介して入力軸2に連結された入力ディスク11Bと、内周側において出力回転伝達軸16に連結された出力ディスク12と、2個の入力ディスク11A,11B及び1個の出力ディスク12の間に挟持されるパワーローラ14A,14Bと、を有して構成されている。入力ディスク11A,11B及び出力ディスク12は、それぞれ対向するように円形の一部を形成する円弧状の凹溝11a,12aを有しており、2列のパワーローラ14A,14Bを挟んでダブルキャビティ13A,13Bを構成して、入力ディスク同士のスラスト力を打消す構成からなる。
パワーローラ14A,14Bは、環状のダブルキャビティ13A,13Bにおける周方向の略々均等な位置に複数個(例えば1つのキャビティに3個)配置されており、不図示の球面軸受、レバー等からなるリンク機構を油圧制御により押圧駆動される。また、入力ディスク11A,11Bは、例えばL字状のブロックと該ブロック上に設置された油圧ピストンとにより閉ループ的に押圧され、パワーローラ14A,14Bを挟持すると共に、その挟持圧が油圧により制御される。そして、上記リンク機構の押圧制御と入力ディスク11A,11Bの挟持圧とにより、パワーローラ14A,14Bが自律的に傾斜することで、入力ディスク11A,11Bと出力ディスク12との接触半径が変更されて、無段に連続して変速する。なお、本バリエータ10にあっては、入力ディスク11A,11Bに対して出力ディスク12が反転するので、速度比は−(マイナス)になる。
動力循環プラネタリギヤ201は、連結された2個のピニオンP1,P2と該ピニオンP1に噛合するピニオンP3とを回転自在に支持するキャリヤCR1と、ピニオンP1に噛合するサンギヤS1と、ピニオンP2に噛合するサンギヤS2と、ピニオンP3に噛合するリングギヤR1とを有して構成されている。それらピニオンP1,P2は、共通のピニオンシャフトに回転自在に軸支される一体構造からなり、いわゆるステップピニオンを形成している。これらピニオンP1,P2,P3を軸支するキャリヤCR1は、上記入力軸2の回転を前側の入力ディスク11Aを介して伝達する入力回転伝達軸3に連結されていると共に、後側の入力ディスク11Bに連結されている。つまり入力ディスク11A,11B、キャリヤCR1には、エンジン等の駆動源(不図示)の回転がそのまま伝達される。なお、本無段変速機1は、詳しくは後述するようにギヤニュートラル状態を得ることができるので、トルクコンバータ等を設ける必要はなく、入力軸2に直接エンジンを接続することができる。
上記サンギヤS1は、上記出力ディスク12の回転を伝達する出力回転伝達軸16に接続されており、入力軸2の回転がバリエータ10により無段変速されたバリエータ出力回転Voutが伝達される。また、上記サンギヤS2は、詳しくは後述する反転ギヤ機構301のサンギヤS3に接続されている。更に、上記リングギヤR1は、ロー・ハイ切換え機構としてのロー係合要素(以下、「ロークラッチ」という)C1を介して反転ギヤ機構301のキャリヤCR3に接続されている。
上記反転ギヤ機構301は、リングギヤR3と、ピニオンP4,P5を回転自在に支持するキャリヤCR3と、サンギヤS3とを有するダブルピニオンプラネタリギヤからなる。該リングギヤR3は、ロー・ハイ切換え機構としてのハイ係合要素(以下、「ハイブレーキ」という)B1によってケース5に対して回転が係止自在となっており、また、サンギヤS3は、上述のようにサンギヤS2に連結されている。そして、上記キャリヤCR3は、上述のようにロークラッチC1を介して上記リングギヤR1に接続自在となっていると共に、出力軸9に常時連結されている。
ついで、オーバードライブ段を形成するオーバードライブ変速機構部分について説明する。図1に示すように、バリエータ10の入力ディスク11Aの前側には、増速プラネタリギヤ601が配設されている。該増速プラネタリギヤ601は、ピニオンP0を回転自在に支持すると共に上記入力軸2及び入力ディスク11Aに接続されたキャリヤ(入力回転要素)CR0と、該ピニオンP0に噛合すると共にケース5に対して常時固定されたリングギヤ(回転固定要素)R0と、該ピニオンP0に噛合するサンギヤ(増速回転要素)S0とを有するシングルピニオンプラネタリギヤにより構成されている。
また、該サンギヤS0には、上記無段変速機構501の内周側、即ち、バリエータ10、動力循環プラネタリギヤ201、及び反転ギヤ機構301の内周側を通って出力軸9まで延設された増速回転伝達軸(増速伝達部材)4が連結されている。そして、該増速回転伝達軸4と出力軸9との間には、オーバードライブクラッチC2が配設されており、増速回転伝達軸4と出力軸9との回転伝達を接・断し得るように構成されている。
次に、上記無段変速機11の作用について図1を参照しつつ図2及び図3に沿って説明する。
例えば無段変速機11を搭載した車輌の発進時又は後進時においては、不図示のシフトレバーや油圧制御装置による油圧制御に基づき該無段変速機11がローモードに制御されると、図3に示すように、ロークラッチC1が係合制御されると共に、ハイブレーキB1及びオーバードライブクラッチC2が解放制御される。すると、図1及び図2に示すように、エンジン出力軸に連結している入力軸2の回転が、増速プラネタリギヤ601のキャリヤCR0、バリエータ10の入力ディスク11A,11B、及び動力循環プラネタリギヤ201のキャリヤCR1に伝達される。このうち入力ディスク11A,11Bに入力された入力軸2の回転はバリエータ10で変速され、出力ディスク12よりバリエータ出力回転Voutが出力されて、出力回転伝達部材16を介してサンギヤS1に入力される。
サンギヤS1にバリエータ出力回転Voutが入力されると、動力循環プラネタリギヤ201において、キャリヤCR1に入力される入力軸2の回転とサンギヤS1に入力されるバリエータ出力回転Voutとがトルク循環により合成され、リングギヤR1より出力される。このリングギヤR1の出力回転は、バリエータ10の変速比の幅に応じて、減速の逆転回転からニュートラル位置(GNポイント)を介して減速の正転回転までの幅に変速された出力回転となる(即ち、後述のハイモードの変速比の範囲に比して低い範囲の低変速比範囲となる)。そして、このリングギヤR1の出力回転は、ロークラッチC1を介して反転ギヤ機構301のキャリヤCR3に入力され、該キャリヤCR3に連結された出力軸9に出力される。
以上のような伝達経路を形成するローモード時においては、バリエータ出力回転Vout(バリエータ10の変速比)が、図2中の一点鎖線で示すギヤニュートラル状態GNである際に、リングギヤR1の回転がニュートラル状態となり、つまりローモード時の出力回転OutLがニュートラル状態となる。上述したように、この状態においては、エンジン回転数(入力軸2の回転)と出力軸9の回転とが無関係となるので、例えば走行レンジに切換える際にバリエータ10の変速比をギヤニュートラル状態GNに合せた後にロークラッチC1を係合することで、回転数差を吸収することが不要であり、トルクコンバータ等の回転数差を吸収する装置を設ける必要がない。
ここで、例えば不図示のシフトレバーがリバース(R)レンジであって、このギヤニュートラル状態GNより例えば車速やアクセル開度に応じてバリエータ10の変速比を大きくしていくと(図2中のバリエータ出力回転Voutを下方側にシフトしていくと)、出力軸9の出力回転OutLは、逆転回転側に増速していき、つまり後進側に増速されていく。
また反対に、例えば不図示のシフトレバーがドライブ(D)レンジであって、ギヤニュートラル状態GNより例えば車速やアクセル開度に応じてバリエータ10の変速比を小さくしていくと(図2中のバリエータ出力回転Voutを上方側にシフトしていくと)、出力軸9の出力回転OutLは、正転回転側に増速していき、つまり前進側に増速されていく。
つづいて、上述のローモード状態で出力軸9の出力回転OutLが増速されていき(バリエータ10の変速比が小さくされていき)、図2中の破線で示すシンクチェンジSCの変速比に達して例えば車速やアクセル開度に応じて変速判断がなされると、図3に示すように、不図示の油圧制御装置による油圧制御に基づきロークラッチC1が解放されると共にハイブレーキB1が係合され、無段変速機11はハイモード状態にされる。
すると、図1及び図2に示すように、このハイモード状態においても同様に、入力軸2の回転が増速プラネタリギヤ601のキャリヤCR0、バリエータ10の入力ディスク11A,11B、及び動力循環プラネタリギヤ201のキャリヤCR1に伝達され、出力ディスク12よりバリエータ出力回転Voutが出力されて、サンギヤS1に入力される。サンギヤS1にバリエータ出力回転Voutが入力されると、動力循環プラネタリギヤ201において、入力軸2の回転とバリエータ出力回転Voutとがトルク循環により合成されつつ、サンギヤS1とピニオンP1のギヤ比(S1/P1)及びサンギヤS2とピニオンP2のギヤ比(S2/P2)に基づき、バリエータ出力回転Voutより僅かな増速回転としてサンギヤS2から出力される。そして、このサンギヤS2の出力回転は、反転ギヤ機構301のサンギヤS3に入力され、ハイブレーキB1により回転が固定されたリングギヤR3によって回転が反転されて、キャリヤCR3よりハイモードの出力回転OutHとして出力軸9に出力される。
上記シンクチェンジSC時におけるローモード状態とハイモード状態との切換えにおいては、バリエータ10の変速比(バリエータ出力回転Vout)が最も小さくなる同じ変速比で切換えが行われるように各ギヤのギヤ比が設定されている。つまりローモード状態においては、バリエータ10の変速比が小さく変速されていくと出力回転OutLが増速され、シンクチェンジSCを境に、ハイモード状態においては、反対にバリエータ10の変速比が大きく変速されていくと出力回転OutHが増速されていく(即ち、上記ローモードの低変速比範囲に比して高い範囲の高変速比範囲となる)。
ついで、例えば上述のハイモード状態で不図示の制御部により略々一定速度の高速走行が所定時間継続する等の条件が判断されると、オーバードライブ段への変速が判断され、バリエータ10がオーバードライブ段の変速比に、特に本実施の形態においてはバリエータ10の最高変速比に変速制御されると共に(或いは既にバリエータ10が最高変速比になっている状態で)、図3に示すように、オーバードライブクラッチC2が係合制御され、無段変速機11はオーバードライブモード状態にされる。
すると、図1及び図2に示すように、増速プラネタリギヤ601において、リングギヤR0、キャリヤCR0のピニオンP0、及びサンギヤS0のギヤ比に基づき、キャリヤCR0の入力軸2の回転が、回転が固定されているリングギヤR0を介してサンギヤS0よりバリエータ10の最高変速比と同じ変速比の増速回転として増速回転伝達軸4より出力され、該増速回転伝達軸4からオーバードライブクラッチC2を介して出力軸9より出力される。即ち、増速プラネタリギヤ601、増速回転伝達軸4、及びオーバードライブクラッチC2によって、ハイモード時の高変速比範囲内における最高変速比と同じ変速比のオーバードライブ段が形成される。
このようにオーバードライブ段が形成された状態にあって、無段変速機構501においては、ハイブレーキB1の係合状態が維持され、上述したハイモード状態の伝達経路が形成されたままの状態が維持されるが、上記増速プラネタリギヤ601、増速回転伝達軸4、及びオーバードライブクラッチC2によって入力軸2から出力軸9までの伝達経路が形成され、つまりバリエータ10を迂回した伝達経路が形成されるため、バリエータ10によって動力伝達を行うことが不要となる。これにより、バリエータ10がトルク伝達を行うことによる各種の損失が低減され、変速が不要となる走行状態における車輌の燃費向上が図られる。
以上説明した無段変速機11は、オーバードライブクラッチC2を係合することによって、増速プラネタリギヤ601及び増速回転伝達軸4をオーバードライブ段の伝達経路とした、つまりバリエータ10を含む無段変速機構501を迂回した伝達経路を形成するように構成されているので、増速プラネタリギヤ601のギヤ比が独立した形となって無段変速機構501の変速比に影響することがなく、増速プラネタリギヤ601のギヤ比を自由に設定できる。これにより、例えば動力循環プラネタリギヤ201を用いてオーバードライブ段を形成するものに比して、オーバードライブ段の変速比の設定自由度を上げることができ、オーバードライブ段としての変速比を大きく設定することができて、例えば高速走行等において必要とされるオーバードライブ段として適切な変速比を得ることができる。
また、本無段変速機11においては、オーバードライブ段として適切な変速比を得ることができるものでありながら、オーバードライブ段の伝達経路(増速プラネタリギヤ601及び増速回転伝達軸4)が無段変速機構501に対して独立しているため、バリエータ10の無段変速回転Voutを増速変速し、その分バリエータ10の出力トルクが増大することを不要にできるので、バリエータ10の回転数が相対的に減速されて該バリエータ10が伝達するトルクが増加することもなく、バリエータ10の耐久性に悪影響を与えることを防止することができる。
更に、本無段変速機11は、例えば一般的な有段変速機におけるオーバードライブ変速機構等を配設してオーバードライブ段の変速比を得るものではなく、上記増速プラネタリギヤ601及び増速回転伝達軸4によってオーバードライブ段として適切な変速比を得ることができるので、例えばクラッチやブレーキの掴み換え変速等を行うこともなく、バリエータ10をオーバードライブ段の変速比に合せて変速制御した状態でオーバードライブクラッチC2を係合するだけで、変速ショックが生じることはなく、無段変速機11としてドライバに違和感を与えることを防止することができる。
また、本無段変速機11は、入力軸2、増速プラネタリギヤ601、バリエータ10、及び出力軸9を一軸上に配置し、増速回転伝達軸4を、バリエータ10を含む無段変速機構501の内周側を通って出力軸9に接続するように構成したので、例えばFR車輌のようなエンジン縦置きの(駆動源の出力軸方向が車輌進行方向に対する縦向きとなる)車輌に用いて好適とすることができる。
更に、本無段変速機11は、増速プラネタリギヤ601の変速比、即ちオーバードライブ段の変速比を、バリエータ10の変速比に基づくハイモードの高変速比範囲内(本実施の形態ではハイモードにおける最高変速比)に設定したので、バリエータ10の無段変速制御によってハイモードにおける変速比をオーバードライブ段の変速比に合わせた後、オーバードライブクラッチC2を係合させることで、変速ショックを生じることなく、オーバードライブ段に変速することができる。
また、本無段変速機11のオーバードライブクラッチC2は、増速回転伝達軸4と出力軸9との間を接・断するクラッチからなるので、ローモード時及びハイモード時にあってオーバードライブクラッチC2を解放することにより、増速回転伝達軸4やサンギヤS0及びリングギヤR0に出力軸9からの回転が逆入力されることを防ぐことができる。これにより、バリエータ10の無段変速によって生じる出力軸9の回転数変化によって増速回転伝達軸4の回転数変化が生じることが防止でき、つまりバリエータ10に増速回転部材4等のイナーシャ(慣性力)が作用することを防止することができる。
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した、本発明に係る第2の実施の形態を図4乃至図6に沿って説明する。図4は第2の実施の形態に係る無段変速機を示すスケルトン図、図5は第2の実施の形態に係る無段変速機の速度線図、図6は第2の実施の形態に係る無段変速機の係合表である。なお、本第2の実施の形態においては、一部変更部分を除き、第1の実施の形態と同様な部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図4に示すように、第2の実施の形態に係る無段変速機12は、図1に示した第1の実施の形態に係る無段変速機11に比して、無段変速機構502の動力循環プラネタリギヤ202及び反転ギヤ機構301の構成を変更し、また、オーバードライブ係合要素としてクラッチを無くし、リングギヤR0の回転を固定自在なブレーキB1を備えて構成したものである。
詳細には、図4に示すように、無段変速機構502の動力循環プラネタリギヤ202は、互いに噛合するピニオンP1,P2を回転自在に支持するキャリヤCR1と、ピニオンP1に噛合するサンギヤS1と、ピニオンP2に噛合するリングギヤR1とを有するダブルピニオンプラネタリギヤによって構成されている。このうち、キャリヤCR1は、上記入力軸2の回転を前側の入力ディスク11Aを介して伝達する入力回転伝達軸3に後側の入力ディスク11Bと共に連結されており、入力軸2の回転が入力される。また、上記サンギヤS1は、出力ディスク12の外周側に連結され、該出力ディスク12の回転を伝達する出力回転伝達軸16に接続されており、入力軸2の回転がバリエータ10により無段変速されたバリエータ出力回転Voutが伝達される。更に、上記リングギヤR1は、ロー・ハイ切換え機構としてのロー係合要素(以下、「ロークラッチ」という)C1を介して出力軸9に接続されている。
上記反転ギヤ機構302も、リングギヤR2と、ピニオンP3,P4を回転自在に支持するキャリヤCR2と、サンギヤS2とを有するダブルピニオンプラネタリギヤからなる。該リングギヤR3は、ロー・ハイ切換え機構としてのハイ係合要素(以下、「ハイブレーキ」という)B2によってケース5に対して回転が係止自在となっており、また、キャリヤCR2は、上述の出力回転伝達軸16を介して出力ディスク12に連結されている。そして、該サンギヤS2は、出力軸9に常時連結されている。
一方、増速プラネタリギヤ602は、第1の実施の形態と同様に、サンギヤS0、キャリヤCR0、リングギヤR0を有するシングルピニオンプラネタリギヤからなるが、リングギヤR0が、オーバードライブブレーキB1によってケース5に対して回転が係止自在となっている。また、サンギヤS0に接続された増速回転伝達軸4は、その後側において、出力軸9に常時連結されている。
次に、上記無段変速機12の作用について図4を参照しつつ図5及び図6に沿って説明する。
第1の実施の形態と同様に、車輌の発進時又は後進時において、不図示のシフトレバーや油圧制御装置による油圧制御に基づき該無段変速機12がローモードに制御されると、図6に示すように、ロークラッチC1が係合制御されると共に、ハイブレーキB2及びオーバードライブブレーキB1が解放制御される。すると、図4及び図5に示すように、入力軸2の回転が、増速プラネタリギヤ602のキャリヤCR0、バリエータ10の入力ディスク11A,11B、及び動力循環プラネタリギヤ202のキャリヤCR1に伝達される。このうち入力ディスク11A,11Bに入力された入力軸2の回転はバリエータ10で変速され、出力ディスク12よりバリエータ出力回転Voutが出力されて、出力回転伝達部材16を介してサンギヤS1に入力される。
サンギヤS1にバリエータ出力回転Voutが入力されると、動力循環プラネタリギヤ202において、キャリヤCR1に入力される入力軸2の回転とサンギヤS1に入力されるバリエータ出力回転Voutとがトルク循環により合成され、リングギヤR1より出力される。このリングギヤR1の出力回転は、ロークラッチC1を介してそのまま出力軸9に出力され、つまり、減速の逆転回転からニュートラル位置(GNポイント)を介して減速の正転回転までの幅に変速された出力回転となる(低変速比範囲)。これにより、第1の実施の形態と同様に、ニュートラル位置(GNポイント)を挟んで、リバース(R)レンジ及びドライブ(D)レンジの低変速比が達成される。
また、上述のローモード状態で出力軸9の出力回転OutLが増速されていき、図5中の破線で示すシンクチェンジSCの変速比に達して例えば車速やアクセル開度に応じて変速判断がなされると、図6に示すように、不図示の油圧制御装置による油圧制御に基づきロークラッチC1が解放されると共にハイブレーキB2が係合され、無段変速機12はハイモード状態にされる。
すると、図4及び図5に示すように、このハイモード状態においても同様に、バリエータ10の入力ディスク11A,11Bの入力軸2の回転に基づき、出力ディスク12よりバリエータ出力回転Voutが出力されて、出力回転伝達軸16を介して反転ギヤ機構302のキャリヤCR2に入力される。すると、ハイブレーキB1により回転が固定されたリングギヤR2によって回転が反転されて、サンギヤS2よりハイモードの出力回転OutH(高変速比範囲)として出力軸9に出力される。
ついで、例えば上述のハイモード状態で不図示の制御部により略々一定速度の高速走行が所定時間継続する等の条件が判断されると、オーバードライブ段への変速が判断され、バリエータ10がオーバードライブ段の変速比に、特に本実施の形態においてはバリエータ10の最高変速比に変速制御されると共に(或いは既にバリエータ10が最高変速比になっている状態で)、図6に示すように、オーバードライブブレーキB1が係合制御され、無段変速機12はオーバードライブモード状態にされる。
すると、図4及び図5に示すように、増速プラネタリギヤ602において、リングギヤR0の回転がオーバードライブブレーキB1によってケース5に対して係止され、各ギヤ比に基づき、キャリヤCR0の入力軸2の回転が、回転が固定されているリングギヤR0を介してサンギヤS0よりバリエータ10の最高変速比と同じ変速比の増速回転として増速回転伝達軸4より出力され、該増速回転伝達軸4介して出力軸9より出力される。即ち、増速プラネタリギヤ602、増速回転伝達軸4、及びオーバードライブブレーキB1によって、ハイモード時の高変速比範囲内における最高変速比と同じ変速比のオーバードライブ段が形成される。
このようにオーバードライブ段が形成された状態にあっては、第1の実施の形態と同様に、上記増速プラネタリギヤ602、増速回転伝達軸4、及びオーバードライブブレーキB2によって入力軸2から出力軸9までの伝達経路が形成され、つまりバリエータ10を迂回した伝達経路が形成されるため、バリエータ10によって動力伝達を行うことが不要となる。これにより、バリエータ10がトルク伝達を行うことによる各種の損失が低減され、変速が不要となる走行状態における車輌の燃費向上が図られる。
なお、本第2の実施の形態における無段変速機12においては、増速回転伝達軸4が常時出力軸9に連結されているため、オーバードライブモード以外、即ちローモード時やハイモード時にあって、増速プラネタリギヤ602のサンギヤS0に常時出力軸9の回転が逆入力される。そのため、該サンギヤS0には、ローモード時の出力回転OutL及びハイモード時の出力回転OutHが入力され、図5に示すように、リングギヤR0が、入力軸2の回転となるキャリヤCR0を介して、図中破線で示す回転数範囲Niにおいて空転される。しかしながら、その分、増速回転伝達軸4がローモード時やハイモード時にあっても、オーバードライブ段の変速比に基づく高回転にはならず、出力軸9の回転と同回転となって、総じて低回転に抑えられる。これにより、最も中心側を通る増速回転伝達部材4と、その外周側に配置される部材(特にバリエータ10、動力循環プラネタリギヤ202、反転ギヤ機構302、ロークラッチC1の油圧サーボ等を支持するベアリングやブッシュ、それらの間をシールするシールリング、等)との間に大きな相対回転が生じることが防止される。
以上説明した無段変速機12は、オーバードライブブレーキB1を係合することによって、増速プラネタリギヤ602及び増速回転伝達軸4をオーバードライブ段の伝達経路とした、つまりバリエータ10を含む無段変速機構502を迂回した伝達経路を形成するように構成されているので、増速プラネタリギヤ602のギヤ比が独立した形となって無段変速機構502の変速比に影響することがなく、増速プラネタリギヤ602のギヤ比を自由に設定できる。これにより、例えば動力循環プラネタリギヤ202を用いてオーバードライブ段を形成するものに比して、オーバードライブ段の変速比の設定自由度を上げることができ、オーバードライブ段としての変速比を大きく設定することができて、例えば高速走行等において必要とされるオーバードライブ段として適切な変速比を得ることができる。
また、本無段変速機12においては、オーバードライブ段として適切な変速比を得ることができるものでありながら、オーバードライブ段の伝達経路(増速プラネタリギヤ602及び増速回転伝達軸4)が無段変速機構502に対して独立しているため、バリエータ10の無段変速回転Voutを増速変速し、その分バリエータ10の出力トルクが増大することを不要にできるので、バリエータ10の回転数が相対的に減速されて該バリエータ10が伝達するトルクが増加することもなく、バリエータ10の耐久性に悪影響を与えることを防止することができる。
更に、本無段変速機12は、例えば一般的な有段変速機におけるオーバードライブ変速機構等を配設してオーバードライブ段の変速比を得るものではなく、上記増速プラネタリギヤ602及び増速回転伝達軸4によってオーバードライブ段として適切な変速比を得ることができるので、例えばクラッチやブレーキの掴み換え変速等を行うこともなく、バリエータ10をオーバードライブ段の変速比に合せて変速制御した状態でオーバードライブクラッチC2を係合するだけで、変速ショックが生じることはなく、無段変速機12としてドライバに違和感を与えることを防止することができる。
また、本無段変速機12は、入力軸2、増速プラネタリギヤ602、バリエータ10、及び出力軸9を一軸上に配置し、増速回転伝達軸4を、バリエータ10を含む無段変速機構502の内周側を通って出力軸9に接続するように構成したので、例えばFR車輌のようなエンジン縦置きの(駆動源の出力軸方向が車輌進行方向に対する縦向きとなる)車輌に用いて好適とすることができる。
更に、本無段変速機12は、増速プラネタリギヤ602の変速比、即ちオーバードライブ段の変速比を、バリエータ10の変速比に基づくハイモードの高変速比範囲内(本実施の形態ではハイモードにおける最高変速比)に設定したので、バリエータ10の無段変速制御によってハイモードにおける変速比をオーバードライブ段の変速比に合わせた後、オーバードライブブレーキB1を係合させることで、変速ショックを生じることなく、オーバードライブ段に変速することができる。
また、本無段変速機12のオーバードライブブレーキB1は、リングギヤR0の回転を固定自在なブレーキからなるので、増速回転伝達軸4が常時増速プラネタリギヤ602の変速比(即ちオーバードライブ段の変速比)によって高回転となることを防止することができ、特に増速回転伝達軸4が、バリエータ10、動力循環プラネタリギヤ202、及び反転ギヤ機構302等の内周側を通すように配置されているため、該増速回転伝達軸4と、その外周側に配置された部材との間に大きな相対回転が生じることを防止することができ、それら部材間の摩擦損失による伝達効率の低下や摩擦による耐久性低下等を防止することができる。
<第3の実施の形態>
ついで、上記第2の実施の形態を一部変更した、本発明に係る第3の実施の形態を図7乃至図9に沿って説明する。図7は第3の実施の形態に係る無段変速機を示すスケルトン図、図8は第3の実施の形態に係る無段変速機の速度線図、図9は第3の実施の形態に係る無段変速機の係合表である。なお、本第3の実施の形態においては、一部変更部分を除き、第1及び第2の実施の形態と同様な部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図7に示すように、第3の実施の形態に係る無段変速機13は、図4に示した第2の実施の形態に係る無段変速機12に比して、ハイブレーキB2の代わりに、反転ギヤ機構303のサンギヤS2と出力軸9との間にハイクラッチ(ロー・ハイ切換え機構としてのハイ係合要素)C1を配設し、また、オーバードライブブレーキB1の変わりに、増速回転伝達軸4と出力軸9との間にオーバードライブクラッチ(オーバードライブ係合要素)C3を配設したものである。なお、第2の実施の形態におけるロークラッチC1は、第3の実施の形態におけるロークラッチC2と同じものである。
また、本第3の実施の形態に係る無段変速機13においては、動力循環プラネタリギヤ203の出力ギヤであるリングギヤR0からロークラッチC2まで回転を伝達する部材と、反転ギヤ機構303の出力ギヤであるサンギヤS2からハイクラッチC1に回転を伝達する部材と、の間にワンウェイクラッチF1を配設し、更に、増速回転伝達軸4と出力軸9との間にワンウェイクラッチF2を配設したものである。
次に、このように構成された上記無段変速機13の作用について図7を参照しつつ図8及び図9に沿って説明する。
第2の実施の形態と同様に、車輌の発進時又は後進時において、不図示のシフトレバーや油圧制御装置による油圧制御に基づき該無段変速機13がローモードに制御されると、図9に示すように、ロークラッチC2が係合制御されると共に、ハイクラッチC1及びオーバードライブクラッチC3が解放制御される。すると、図7及び図8に示すように、入力軸2の回転が、増速プラネタリギヤ603のキャリヤCR0、バリエータ10の入力ディスク11A,11B、及び動力循環プラネタリギヤ203のキャリヤCR1に伝達される。このうち入力ディスク11A,11Bに入力された入力軸2の回転はバリエータ10で変速され、出力ディスク12よりバリエータ出力回転Voutが出力されて、出力回転伝達部材16を介してサンギヤS1に入力される。
サンギヤS1にバリエータ出力回転Voutが入力されると、動力循環プラネタリギヤ203において、キャリヤCR1に入力される入力軸2の回転とサンギヤS1に入力されるバリエータ出力回転Voutとがトルク循環により合成され、リングギヤR1より出力される。このリングギヤR1の出力回転は、ロークラッチC2を介してそのまま出力軸9に出力され、つまり、減速の逆転回転からニュートラル位置(GNポイント)を介して減速の正転回転までの幅に変速された出力回転となる(低変速比範囲)。これにより、第2の実施の形態と同様に、ニュートラル位置(GNポイント)を挟んで、リバース(R)レンジ及びドライブ(D)レンジの低変速比が達成される。
また、上述のローモード状態で出力軸9の出力回転OutLが増速されていき、図8中の破線で示すシンクチェンジSCの変速比に達して例えば車速やアクセル開度に応じて変速判断がなされると、図9に示すように、不図示の油圧制御装置による油圧制御に基づきロークラッチC2が解放されると共にハイクラッチC1が係合され、無段変速機13はハイモード状態にされる。
すると、図7及び図8に示すように、このハイモード状態においても同様に、バリエータ10の入力ディスク11A,11Bの入力軸2の回転に基づき、出力ディスク12よりバリエータ出力回転Voutが出力されて、出力回転伝達軸16を介して反転ギヤ機構303のキャリヤCR2に入力される。すると、常時ケース5に対して回転が固定されたリングギヤR2によって回転が反転されて、サンギヤS2よりハイモードの出力回転OutH(高変速比範囲)が出力され、ハイクラッチC1を介して出力軸9に出力される。
ついで、例えば上述のハイモード状態で不図示の制御部により略々一定速度の高速走行が所定時間継続する等の条件が判断されると、オーバードライブ段への変速が判断され、バリエータ10がオーバードライブ段の変速比に、特に本実施の形態においてはバリエータ10の最高変速比に変速制御されると共に(或いは既にバリエータ10が最高変速比になっている状態で)、図9に示すように、オーバードライブクラッチC3が係合制御され、無段変速機13はオーバードライブモード状態にされる。
すると、図7及び図8に示すように、増速プラネタリギヤ603において、各ギヤ比に基づき、キャリヤCR0の入力軸2の回転が、回転が固定されているリングギヤR0を介してサンギヤS0よりバリエータ10の最高変速比と同じ変速比の増速回転として増速回転伝達軸4より出力され、該増速回転伝達軸4からオーバードライブクラッチC3を介して出力軸9より出力される。即ち、増速プラネタリギヤ603、増速回転伝達軸4、及びオーバードライブクラッチC3によって、ハイモード時の高変速比範囲内における最高変速比と同じ変速比のオーバードライブ段が形成される。
このようにオーバードライブ段が形成された状態にあっては、第1の実施の形態と同様に、上記増速プラネタリギヤ603、増速回転伝達軸4、及びオーバードライブクラッチC3によって入力軸2から出力軸9までの伝達経路が形成され、つまりバリエータ10を迂回した伝達経路が形成されるため、バリエータ10によって動力伝達を行うことが不要となる。これにより、バリエータ10がトルク伝達を行うことによる各種の損失が低減され、変速が不要となる走行状態における車輌の燃費向上が図られる。
ついで、ワンウェイクラッチF1の作用について説明する。本無段変速機13の変速比が、上述したシンクチェンジSCの変速比に達する状態は、バリエータ10の変速比が最も小さくなる状態であって、つまりパワーローラ14A,14Bが最も傾斜した状態である。例えばローモード時におけるシンクチェンジSCの変速比の状態から、車輌が降坂路を走行する等して、駆動車輪を介して出力軸9に加速方向のトルクが加わると、ロークラッチC2を介してリングギヤR1が増速され、キャリヤCR1を介してサンギヤS1が減速されて、つまりバリエータ10の出力ディスク12が更に変速比が小さくなる方向に減速される虞がある。
反対に、例えばハイモード時におけるシンクチェンジSCの変速比の状態から、車輌が登坂路を走行する等して、駆動車輪を介して出力軸9に減速方向のトルクが加わると、ハイクラッチC1を介してサンギヤS2が減速され、リングギヤR2を介してキャリヤCR2が減速されて、つまりバリエータ10の出力ディスク12が更に変速比が小さくなる方向に減速される虞がある。このようにバリエータ10の変速比が最も小さい状態から出力ディスク12に減速方向に力が加わると、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等を生じてしまう虞がある。
しかしながら、本第3の実施の形態における無段変速機13にあっては、上述のようにワンウェイクラッチF1が配設されており、動力循環プラネタリギヤ203のリングギヤR1の回転が、反転ギヤ機構303のサンギヤS2の回転よりも上回らないように規制されている。従って、ローモード時にあってシンクチェンジSCの変速比に到達した状態では、リングギヤR1の回転が、ハイモードの出力回転OutHの最も低い回転状態となったサンギヤS2の回転より高くになることが規制され、反対に、ハイモード時にあってシンクチェンジSCの変速比に到達した状態では、サンギヤS2の回転が、ローモードの出力回転OutLの最も高い回転状態となったリングギヤR1の回転よりも低くなることが規制される。つまり、出力ディスク12の入力ディスク11A,11Bに対する変速比がシンクチェンジSC時の変速比よりも小さくなることが防止され(バリエータ10において設定された最低変速比よりも小さくなることが防止され)、これによって、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等が防止される。
ついで、ワンウェイクラッチF2の作用について説明する。本無段変速機13の変速比が、ハイモードにあって最も変速比が大きくなる状態にあっては、バリエータ10の変速比が最も大きくなる状態であって、同様にパワーローラ14A,14Bが最も傾斜した状態である。例えばハイモード時において最も大きくなった変速比の状態から、車輌が降坂路を走行する等して、駆動車輪を介して出力軸9に加速方向のトルクが加わると、ハイクラッチC1を介してサンギヤS2が加速され、リングギヤR2を介してキャリヤCR2が加速されて、つまりバリエータ10の出力ディスク12が更に変速比が大きくなる方向に加速される虞がある。このようにバリエータ10の変速比が最も大きい状態から出力ディスク12に加速方向に力が加わった場合にあっても、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等を生じてしまう虞がある。
しかしながら、本第3の実施の形態における無段変速機13にあっては、上述のようにワンウェイクラッチF2が配設されており、出力軸9の回転が、増速回転伝達軸4の回転よりも上回らないように規制されている。本第3の実施の形態においては、増速プラネタリギヤ603のリングギヤR0が常時ケース5に固定され、つまり増速回転伝達軸4が常時オーバードライブ段の変速比によって回転されている。従って、ハイモード時にあって最も大きい変速比に到達した状態から、出力軸9の回転が、オーバードライブ段の変速比(即ちハイモードの出力回転OutHの最も高い回転状態)となった増速回転伝達軸4の回転よりも高くなることが規制される。つまり、出力ディスク12の入力ディスク11A,11Bに対する変速比が、バリエータ10において設定された最高変速比よりも大きくなることが防止され、これによって、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等が防止される。
従って、本第3の実施の形態における無段変速機13にあっては、上記2つのワンウェイクラッチF1,F2を備えていることによって、バリエータ10において最低変速比から最高変速比の変速範囲を越えることが規制され(つまり上限と下限との双方が規制され)、バリエータ10におけるパワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等の防止が確実に図れる。
以上説明した無段変速機13は、オーバードライブクラッチC3を係合することによって、増速プラネタリギヤ603及び増速回転伝達軸4をオーバードライブ段の伝達経路とした、つまりバリエータ10を含む無段変速機構503を迂回した伝達経路を形成するように構成されているので、増速プラネタリギヤ603のギヤ比が独立した形となって無段変速機構503の変速比に影響することがなく、増速プラネタリギヤ603のギヤ比を自由に設定できる。これにより、例えば動力循環プラネタリギヤ203を用いてオーバードライブ段を形成するものに比して、オーバードライブ段の変速比の設定自由度を上げることができ、オーバードライブ段としての変速比を大きく設定することができて、例えば高速走行等において必要とされるオーバードライブ段として適切な変速比を得ることができるものでありながら、特に上記ワンウェイクラッチF2を配設して、バリエータ10の最高変速比を規制するために、オーバードライブ段の変速比をハイモード時の最高変速比に設定することも可能とすることができる。
また、本無段変速機13においては、オーバードライブ段として適切な変速比を得ることができるものでありながら、オーバードライブ段の伝達経路(増速プラネタリギヤ603及び増速回転伝達軸4)が無段変速機構503に対して独立しているため、バリエータ10の無段変速回転Voutを増速変速し、その分バリエータ10の出力トルクが増大することを不要にできるので、バリエータ10の回転数が相対的に減速されて該バリエータ10が伝達するトルクが増加することもなく、バリエータ10の耐久性に悪影響を与えることを防止することができる。
更に、本無段変速機13は、例えば一般的な有段変速機におけるオーバードライブ変速機構等を配設してオーバードライブ段の変速比を得るものではなく、上記増速プラネタリギヤ603及び増速回転伝達軸4によってオーバードライブ段として適切な変速比を得ることができるので、例えばクラッチやブレーキの掴み換え変速等を行うこともなく、バリエータ10をオーバードライブ段の変速比に合せて変速制御した状態でオーバードライブクラッチC3を係合するだけで、変速ショックが生じることはなく、無段変速機13としてドライバに違和感を与えることを防止することができる。
また、本無段変速機13は、入力軸2、増速プラネタリギヤ603、バリエータ10、及び出力軸9を一軸上に配置し、増速回転伝達軸4を、バリエータ10を含む無段変速機構503の内周側を通って出力軸9に接続するように構成したので、例えばFR車輌のようなエンジン縦置きの(駆動源の出力軸方向が車輌進行方向に対する縦向きとなる)車輌に用いて好適とすることができる。
更に、本無段変速機13は、増速プラネタリギヤ603の変速比、即ちオーバードライブ段の変速比を、バリエータ10の変速比に基づくハイモードの高変速比範囲内(本実施の形態ではハイモードにおける最高変速比)に設定したので、バリエータ10の無段変速制御によってハイモードにおける変速比をオーバードライブ段の変速比に合わせた後、オーバードライブブレーキB1を係合させることで、変速ショックを生じることなく、オーバードライブ段に変速することができる。
また、本無段変速機13のオーバードライブクラッチC3は、増速回転伝達軸4と出力軸9との間を接・断するクラッチからなるので、ローモード時及びハイモード時にあってオーバードライブクラッチC3を解放することにより、増速回転伝達軸4やサンギヤS0及びリングギヤR0に出力軸9からの回転が逆入力されることを防ぐことができる。これにより、バリエータ10の無段変速によって生じる出力軸9の回転数変化によって増速回転伝達軸4の回転数変化が生じることが防止でき、つまりバリエータ10に増速回転部材4等のイナーシャ(慣性力)が作用することを防止することができる。
更に、本無段変速機13は、増速プラネタリギヤ603の変速比が、ハイモードの最高変速比に設定され、かつ出力軸9と増速回転伝達軸4との間に介在し、出力軸9の回転が増速回転伝達軸4の回転を上回ることを規制するワンウェイクラッチF2を備えたので、増速回転伝達軸4が常時ハイモードの最高変速比によって回転されるため、例えばハイモード時にあって出力軸9に外部からの駆動力(例えば降坂路による車輌加速力等)が加わり、出力軸9の回転が最高変速比を上回ろうとしても、ワンウェイクラッチF2が係合して、出力軸9の回転が最高変速比を上回ることを防止することができる。それにより、バリエータ10の変速比が設定された変速比幅を超えてしまうこと防止することができ、例えばバリエータ10においてパワーローラの過傾斜や飛び出し等が生じることを防止することができる。
なお、以上説明した第1乃至第3の実施の形態においては、無段変速装置としてフルトロイダル式無段変速装置を用いたものを一例に説明したが、勿論、ハーフトロイダル式無段変速装置を用いてもよく、更に、ベルト式無段変速装置を用いて、例えばFF車輌のような駆動源の出力軸方向が車輌進行方向に対する横置きとなる車輌に適用しても本発明の適用範囲内である。
また、以上説明した第1乃至第3の実施の形態においては、動力循環機構として、ステップピニオンを有するプラネタリギヤやダブルピニオンプラネタリギヤを用いたものを説明したが、これらに限らず、動力循環し得る機構であれば、どのようなものを用いてもよい。
更に、以上説明した第1乃至第3の実施の形態においては、反転ギヤ機構として、ダブルピニオンプラネタリギヤを用いたものを説明したが、これに限らず、ステップピニオンを有するプラネタリギヤ、シングルピニオンプラネタリギヤ等、回転を反転し得る機構であれば、どのようなものを用いてもよい。
また、以上説明した第1乃至第3の実施の形態において説明したオーバードライブ係合要素を係合する条件、即ちハイモードからオーバードライブモードに切換える条件は、どのような条件であってもよいことはいうまでもない。