以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の説明の前提となる技術の形態における無段変速機の概念図である。
図において、11はトロイダル式の無段変速機(IVT)、12はトロイダル式の無段変速装置(バリエータ)、13はギヤ機構としてのプラネタリギヤ機構であり、前記無段変速機11は、無段変速装置12とプラネタリギヤ機構13をと組み合わせることによって形成される。なお、前記トロイダル式の無段変速装置12としては、ハーフトロイダル式及びフルトロイダル式の無段変速装置を使用することができ、本技術の形態においては、フルトロイダル式の無段変速装置が使用される。
前記無段変速装置12は、回転自在に、かつ、互いに対向させて配設されるとともに、入力軸16と連結され、前方(図において左方)及び後方(図において右方)に配設された二つの入力回転体としての入力ディスク17、該各入力ディスク17間において、各入力ディスク17と対向させて回転自在に配設され、第1の伝動軸としての中空軸18と連結された出力回転体としての出力ディスク19、並びに前記各入力ディスク17及び出力ディスク19によって挟持された中間転動体としての2列のパワーローラ20を備える。
前記入力軸16は、車両駆動源としての図示されないエンジンの出力軸と図示されないダンパ装置を介して連結され、エンジンを駆動することによって発生させられた回転が伝達される。なお、車両駆動源として、前記エンジンに代えてモータ等を使用することができる。
前記各入力ディスク17及び出力ディスク19は、それぞれ対向する円形の一部を構成する円弧状の凹溝17a、19aを備え、各パワーローラ20を挟むことによって、二つのキャビティを備えたダブルキャビティを形成する。したがって、入力ディスク17同士のスラスト力を打ち消すことができる。なお、本技術の形態においては、フルトロイダル式の無段変速装置が使用されるので、各パワーローラ20の傾転中心が各キャビティの中心に置かれる。
前記パワーローラ20は、無段変速装置12の中心軸に対して直角の方向にシフトさせることによって傾斜させられ、パワーローラ20と入力ディスク17及び出力ディスク19との各接触半径が変更され、無段変速装置12は、入力軸16を介して入力ディスク17に入力された回転を、無段に連続して変速し、出力ディスク19から中空軸18に出力する。なお、入力ディスク17に正方向の回転が入力されると、出力ディスク19が反転させられ、出力ディスク19から逆方向の回転が出力されるので、無段変速装置12によって得られた変速比は負の値を採る。
前記プラネタリギヤ機構13は、無段変速装置12の入出力機構として使用される第1の差動回転装置としてのギヤユニット21、並びに増速機構及び反転機構として使用される第2の差動回転装置としてのギヤユニット22を備える。前記ギヤユニット21は、無段変速装置12に対する回転の入出力を行い、前記ギヤユニット22は、ギヤユニット21から伝達された回転を増幅して出力軸23に出力する。
そのために、前記ギヤユニット21は、ステップピニオンプラネタリギヤとダブルピニオンギヤとが複合されたプラネタリギヤから成り、第1の入力要素として機能するサンギヤS1、第1の出力要素として機能するサンギヤS2、サンギヤS1と対向させて配設され、固定要素及び第2の出力要素として機能するリングギヤR1、前記サンギヤS1と噛(し)合するピニオンP1a、該ピニオンP1a及びリングギヤR1と噛合するピニオンP1b、前記サンギヤS2と噛合するピニオンP2、並びにピニオンP1a、P1b、P2を回転自在に支持し、第2の入力要素として機能するキャリヤCR1を備える。該キャリヤCR1は、サンギヤS1、S2及びリングギヤR1を連結する連結要素としても機能する。前記ピニオンP1a、P2によってロングピニオンが、ピニオンP1bによってショートピニオンが構成される。
また、前記ギヤユニット22は、ダブルプラネタリギヤから成り、第1の入力要素として機能するサンギヤS3、該サンギヤS3と対向させて配設され、固定要素として機能するリングギヤR3、前記サンギヤS3と噛合するピニオンP3a、該ピニオンP3a及びリングギヤR3と噛合するピニオンP3b、並びに第2の入力要素及び出力要素として機能し、ピニオンP3a、P3bを回転自在に支持するキャリヤCR3を備える。該キャリヤCR3は、サンギヤS3及びリングギヤR3を連結する連結要素としても機能する。
そして、前記サンギヤS1は、中空軸18を介して出力ディスク19と連結され、無段変速装置12によって変速され、出力された出力速度noの回転がサンギヤS1に伝達される。また、前記キャリヤCR1は、後方の入力ディスク17と直接連結されるとともに、入力軸16を介してエンジン及び前方の入力ディスク17と間接的に連結され、エンジンから伝達された入力速度niの回転が、前記入力軸16を介してキャリヤCR1に伝達され、さらに、後方の入力ディスク17に伝達される。
また、前記サンギヤS2は、第2の伝動軸としての中空軸26を介してサンギヤS3と連結され、発生させられた回転をサンギヤS3に伝達する。そして、リングギヤR1は、オーバドライブ(OD)モード用の摩擦係合要素としてのブレーキB1を介して、無段変速機11を収容する固定部材としてのケース10と連結されるとともに、無段用の、かつ、ローモード用の摩擦係合要素としてのクラッチC1を介してキャリヤCR3及び出力軸23と連結される。
前記リングギヤR3は無段用の、かつ、ハイモード用の摩擦係合要素としてのブレーキB2を介してケース10と連結され、前記入力軸16は直結モード用の摩擦係合要素としてのクラッチC2を介して出力軸23と連結される。該出力軸23は、差動装置としての図示されないディファレンシャル装置と連結され、出力軸23に伝達された回転がディファレンシャル装置に伝達され、左右の駆動軸に分配されて駆動輪に伝達される。なお、前記クラッチC2によって第1の摩擦係合要素が、ブレーキB1によって第2の摩擦係合要素が構成される。
前記クラッチC1、C2及びブレーキB1、B2を係脱させるために、アクチュエータとしての図示されない油圧サーボが配設され、クラッチC1、C2及びブレーキB1、B2並びに各油圧サーボによってモード設定要素が構成される。
次に、前記構成の無段変速機11の動作について説明する。
図2は本発明の説明の前提となる技術の形態における無段変速機の作動表を示す図、図3は本発明の説明の前提となる技術の形態における変速線図である。なお、図3において、横軸にプラネタリギヤ機構13(図1)の各要素の入出力関係を表す位置を、縦軸に各要素の回転速度を採ってある。該回転速度は、零(0)の値を採る基準線より上方において正の値を、基準線より下方において負の値を採る。
この場合、変速線図は、ギヤユニット21におけるサンギヤS1、S2、リングギヤR1及びキャリヤCR1の各要素の回転状態を示す入出力機構変速線部51、並びにギヤユニット22におけるサンギヤS3、リングギヤR3及びキャリヤCR3の各要素の回転状態を示す増速機構変速線部52を備える。
そして、前記入出力機構変速線部51において、サンギヤS1、S2、リングギヤR1、及びピニオンP1a、P2の各歯数をZs1、Zs2、Zr1、Zp1、Zp2とし、サンギヤS1とキャリヤCR1との間の距離を表す値を1としたとき、サンギヤS2とキャリヤCR1との間の距離を表す値λ1は、
λ1=(Zs1/Zp1)・(Zp2/Zs2)
になり、リングギヤR1とキャリヤCR1との間の距離を表す値λ2は、
λ2=Zs1/Zr1
になる。
また、前記ギヤユニット22において、サンギヤS3及びリングギヤR3の各歯数をZs3、Zr3とし、サンギヤS2とキャリヤCR3との間の距離を表す値を1としたとき、リングギヤR3とキャリヤCR3との間の距離を表す値λ3は、
λ3=Zs3/Zr3
になる。
そして、操作者である運転者が、所定の図示されない操作部を操作して所定のモードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、図示されない制御部のモード設定処理手段は、モード設定処理を行い、図示されない油圧回路において、所定の油圧サーボに油圧を供給し、クラッチC1、C2及びブレーキB1、B2を選択的に係合させることによって、パーキング・ニュートラル(P、N)モード、ローモード、ハイモード、直結モード及びオーバドライブ(OD)モードを選択し、設定する。
すなわち、前記モード設定処理手段は、図2に示されるように、クラッチC1、C2及びブレーキB1、B2をいずれも解放することによってパーキング・ニュートラルモードを、クラッチC1を係合させることによってローモードを、ブレーキB2を係合させることによってハイモードを、クラッチC2及びブレーキB2を係合させることによって直結モードを、ブレーキB1、B2を係合させることによってオーバドライブモードを設定する。
ところで、運転者が前記操作部を操作してローモードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、クラッチC1が係合させられ、クラッチC2及びブレーキB1、B2が解放される。そして、前記エンジンの出力軸と連結された入力軸16を介して、エンジンからの入力速度niの回転がキャリヤCR1に伝達される。同時に、無段変速装置12に前記入力速度niの回転が伝達され、無段変速装置12によって変速され、反転させられた回転が出力ディスク19から出力され、中空軸18を介してサンギヤS1に伝達される。このとき、出力ディスク19の出力速度noは、図3に示される範囲Rnoで変化させられる。
その結果、ギヤユニット21において、キャリヤCR1は入力速度niで回転させられ、サンギヤS1は出力速度noで回転させられ、入力速度niの回転と出力速度noの回転とが合成され、リングギヤR1の回転が、クラッチC1及びキャリヤCR3を介して出力軸23に出力速度NLの回転として出力され、前記出力軸23が出力速度NLと等しい出力速度NOで回転させられる。このとき、リングギヤR1の回転速度nrは、図3に示される範囲Rnrで変化させられ、出力速度NL、NOは回転速度nrと同じ値になる。
ところで、入力速度niに対する出力速度noの比を無段変速装置12の変速比γとしたとき、前記無段変速装置12において、パワーローラ20の傾きが変更されるのに伴って、変速比γが変化させられ、図3に示されるように、変速比γが負の方向において小さいアンダードライブ側の変速状態Budと、変速比γが負の方向において大きいオーバドライブ側の変速状態Bodとの間で変速状態が変化する。
そして、無段変速装置12の変速状態がBudからオーバドライブ側に変化して、出力速度noが前記範囲Rno内で負の方向において高くなり、それに伴って、回転速度nrが範囲Rnr内で低くなる。その結果、出力速度NL、NOも低くなり、入力速度niに対する出力速度NOの比で表される無段変速機11の出力変速比ηは正の方向において小さくなり、車両を前進させる際の駆動輪の回転速度、すなわち、前進出力速度が低くなり、前進方向の車速が低くなる。
続いて、無段変速装置12がギヤニュートラル状態Bgnに置かれると、回転速度nrが零になり、トルクを無限に発散する状態が形成される。これに伴って、出力速度NL、NO、出力変速比η及び車速がいずれも零になる。
さらに、パワーローラ20の傾きが変更され、変速比γが負の方向において更に大きくされ、無段変速装置12の変速状態が更にオーバドライブ側に変化すると、回転速度nr及び出力速度NL、NOが負の方向において高くなり、出力変速比ηが負の方向において大きくなる。その結果、車両を後進させる際の回転速度、すなわち、後進出力速度が高くなり、後進方向の車速が高くなる。
次に、運転者が前記操作部を操作してハイモードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、ブレーキB2が係合させられ、クラッチC1、C2及びブレーキB1が解放される。
これに伴って、図3に示されるように、ギヤユニット22において、リングギヤR3が固定される。そして、前述されたように、前記入力軸16を介して、エンジンからの入力速度niの回転がキャリヤCR1及び無段変速装置12に伝達され、無段変速装置12によって変速され、反転させられた出力速度noの回転が、出力ディスク19から出力され、中空軸18を介してサンギヤS1に伝達される。このとき、出力ディスク19の出力速度noは、図3に示される範囲Rnoで変化させられる。
ところで、本技術の形態においては、前記値λ1が1より大きくされる。したがって、前記サンギヤS2の回転速度は前記出力速度noより負の方向に高くされる。なお、値λ1を1とし、サンギヤS2の回転速度と出力速度noとを等しくすることができる。
そして、サンギヤS2、S3が一体に連結されているので、サンギヤS2の回転がサンギヤS3に伝達され、ギヤユニット22に入力されると、ギヤユニット22においてリングギヤR3が固定されているので、サンギヤS3に伝達された回転が増速させられ、かつ、反転させられて、キャリヤCR3の回転が、出力軸23に出力速度NHとして出力され、出力軸23は前記出力速度NHと等しい出力速度NOで回転させられる。このとき、キャリヤCR3の回転速度ncrは、図3に示される範囲Rncrで変化させられ、出力速度NH、NOは回転速度ncrと同じ値になる。
そして、前記無段変速装置12において、パワーローラ20の傾きが変更され、アンダードライブ側の変速状態Budからオーバドライブ側の変速状態Bodに変化すると、出力速度noが負の方向において高くなり、それに伴って、回転速度ncr及び出力速度NH、NOが正の方向において高くなる。その結果、出力変速比ηが正の方向において大きくなり、車両を前進させる際の前進出力速度が高くなり、前進方向の車速が高くなる。
ところで、前記構成の無段変速機11においては、無段変速装置12を変速状態Bud、Bod間で変化させるのに伴って、広範囲の出力変速比ηで変速を行うことができるので、エンジンを効率の高い領域で駆動することができ、減速時に燃料カットを行う時間を長くすることができ、例えば、車両を市街地で走行させる際の燃費を向上させることができるが、車両を郊外、高速道路等で定常走行させる際には、無段変速装置12の伝達効率がプラネタリギヤ機構から成る変速装置の伝達効率より低いので、燃費を向上させることが困難である。
そこで、本技術の形態においては、前述されたように、直結モード及びオーバドライブモードを選択することができるようになっている。
そのために、入力軸16と出力軸23との間に所定のクラッチを配設し、該クラッチを係脱させることによって入力軸16と出力軸23とを選択的に直接連結することができるようにし、前記ギヤユニット22におけるサンギヤS3、リングギヤR3及びキャリヤCR3の三つの要素のうちの一つの要素、本技術の形態においては、リングギヤR3を固定することによって、無段変速装置12の変速状態を変速状態Bodの近傍に固定し、値の大きい所定の出力変速比ηを達成することができるようにしている。
そして、運転者が前記操作部を操作して直結モードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、クラッチC2及びブレーキB2が係合させられ、クラッチC1及びブレーキB1が解放される。
これに伴って、前記エンジンの出力軸と連結された入力軸16を介して、エンジンからの入力速度niの回転が、無段変速装置12を介することなく、クラッチC2を介して直接出力軸23に伝達される。そして、出力変速比ηは1になる。
このとき、入力速度niの回転がキャリヤCR3にも伝達され、ギヤユニット22において、リングギヤR3が固定されるので、サンギヤS3の回転速度が決まり、サンギヤS2の回転速度が決まる。したがって、無段変速装置12は図3に示される変速状態Bf1に固定される。その結果、無段変速装置12の変速比γを所定の値γ1で固定して、中速の速度範囲において車両を郊外で定常走行させることができるので、燃費を向上させることができる。
また、運転者が前記操作部を操作してオーバドライブモードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、ブレーキB1、B2が係合させられ、クラッチC1、C2が解放される。
これに伴って、前記エンジンの出力軸と連結された入力軸16を介して、エンジンからの入力速度niの回転がキャリヤCR1に伝達された状態で、リングギヤR1が固定されるので、回転速度nrが零になり、その結果、無段変速装置12は図3に示される変速状態Bf2に固定され、出力ディスク19の出力速度noは、図3に示される範囲Rno内の所定の値に固定される。
それに伴って、サンギヤS2の回転がサンギヤS3に伝達され、ギヤユニット22に入力されると、ギヤユニット22においてリングギヤR3が固定されているので、サンギヤS3に伝達された回転が反転させられて、キャリヤCR3の回転が、出力軸23に出力速度NHとして出力され、出力軸23は前記出力速度NHと等しい出力速度NOで回転させられる。このとき、キャリヤCR3の回転速度ncrは、図3に示される範囲Rncr内の所定の値に固定され、出力速度NL、NOは回転速度ncrと同じ値になる。
このように、ギヤユニット22の各要素のうちの一つの要素、本技術の形態においては、リングギヤR3を固定することによって、無段変速装置12の変速比γを値γ1より大きい所定の値γ2で固定して、無段変速装置12を介することなく、入力速度niに対応させて増速された一定の出力速度NL、NOで出力軸23を回転させることができ、高速の速度範囲において車両を高速道路で定常走行させることができるので、燃費を向上させることができる。なお、前記値γ1によって第1の変速比が、値γ2によって第2の変速比が構成される。
ところで、直結モード及びオーバドライブモードが選択される際のいずれも、ブレーキB2が係合させられるようになっている。そこで、直結モードからオーバドライブモードに変更する場合、モード設定処理手段は、リングギヤR3を固定した状態で、まず、クラッチC2を解放し、パワーローラ20の傾きを変更し、変速状態をBf1からBod側に変化させ、変速状態がBf2になると、ブレーキB1を係合させる。したがって、クラッチC2の解放及びブレーキB1の係合に伴って、変速状態が変化しないので、変速ショックが発生するのを防止することができる。また、オーバドライブモードから直結モードに変更する場合、モード設定処理手段は、リングギヤR3を固定した状態で、まず、ブレーキB1を解放し、パワーローラ20の傾きを変更し、変速状態をBf2からBud側に変化させ、変速状態がBf1になると、クラッチC2を係合させる。したがって、ブレーキB1の解放及びクラッチC2の係合に伴って、変速状態が変化しないので、変速ショックが発生するのを防止することができる。
また、直結モード及びオーバドライブモードにおいて、変速比γは、変速状態Budの変速比と変速状態Bodの変速比との間の値γ1、γ2を採り、出力変速比ηは、アンダードライブ側の最小変速比とオーバドライブ側の最大変速比との間の値を採るので、ローモード又はハイモードにおける所定の変速状態から直結モードの変速状態Bf1又はオーバドライブモードの変速状態Bf2に移行したときの変速比γ及び出力変速比ηの値は変化しない。したがって、モードの変化に伴って発生する変速ショックを抑制することができる。
さらに、直結モード及びオーバドライブモードにおいて、無段変速装置12を介さない動力伝達経路が形成されるので、無段変速装置12の使用頻度が低くなり、無段変速装置12の耐久性を向上させることができる。
また、本技術の形態においては、直結モード及びオーバドライブモードにおいて、無段変速装置12を介さず動力が伝達されるので、無段変速機11において発生する損失を少なくすることができる。すなわち、無段変速装置12においては、パワーローラ20に厚みがあるので、パワーローラ20の外周縁には表側及び裏側の両側にエッジ部が形成され、パワーローラ20、入力ディスク17及び出力ディスク19の回転に伴って、前記各エッジと凹溝17a、19aの表面との間にわずかな速度差が発生し、すべりが発生して、スピンロスの損失が生じる。また、ハーフトロイダル式の無段変速装置の場合には、パワーローラ20を支持する軸に対してパワーローラ20が傾くと、前記軸にスラスト力が発生し、スラスト軸受による損失が生じる。さらに、無段変速装置12を作動させる場合、パワーローラ20の押付圧、エンロード圧等によって油圧回路のオイルポンプに損失が生じる。ところが、本技術の形態においては、直結モード及びオーバドライブモードにおいて、無段変速装置12が使用されないので、無段変速機11において発生する損失をその分小さくすることができる。
また、本技術の形態においては、ギヤユニット22において、リングギヤR3が固定され、キャリヤCR3は回転させられるようになっているので、潤滑用の油を遠心力を利用してピニオンP3a、P3bに供給することができる。したがって、キャリヤCR3の潤滑を円滑に行うことができる。
ところで、本技術の形態においては、ローモード、ハイモード、直結モード及びオーバドライブモードを選択することができるように、クラッチC1、C2及びブレーキB1、B2を配設する必要があるので、部品点数が多いだけでなく、無段変速機11の寸法が大きくなり、車両への搭載性が低下してしまう。
そこで、部品点数を少なくすることができ、無段変速機11の寸法を小さくすることができ、車両への搭載性を向上させることができるようにした本発明の第1の実施の形態について説明する。なお、前記技術の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同技術の形態の効果を援用する。
図4は本発明の第1の実施の形態における無段変速機の概念図である。
この場合、ギヤ機構としてのプラネタリギヤ機構13は、無段変速装置12の入出力機構として使用される第1の差動回転装置としてのギヤユニット31、及び増速機構として使用される第2の差動回転装置としてのギヤユニット32を備える。前記ギヤユニット31は、無段変速装置12に対する回転の入出力を行い、前記ギヤユニット32は、ギヤユニット31から伝達された回転を増幅して出力軸23に出力する。
前記ギヤユニット31は、ダブルプラネタリギヤから成り、第1の入力要素として機能するサンギヤS1、該サンギヤS1と対向させて配設され、第1の出力要素として機能するリングギヤR1、前記サンギヤS1と噛合するピニオンP1a、該ピニオンP1a及びリングギヤR1と噛合するピニオンP1b、並びに第2の入力要素及び第2の出力要素として機能し、ピニオンP1a、P1bを回転自在に支持するキャリヤCR1を備える。該キャリヤCR1は、サンギヤS1及びリングギヤR1を連結する連結要素としても機能する。
また、前記ギヤユニット32は、SS−CC型プラネタリギヤから成り、出力要素として機能するサンギヤS2、該サンギヤS2と対向させて配設され、第1の入力要素として機能するリングギヤR2、前記サンギヤS2と対向させて配設され、固定要素として機能するリングギヤR3、前記サンギヤS2と噛合するピニオンP2a、該ピニオンP2a及びリングギヤR2と噛合するピニオンP2b、並びに第2の入力要素として機能し、ピニオンP2a、P2bを回転自在に支持するキャリヤCR2を備える。該キャリヤCR2は、サンギヤS2及びリングギヤR2、R3を連結する連結要素としても機能する。前記ピニオンP2aによってロングピニオンが、ピニオンP2bによってショートピニオンが構成される。
そして、前記サンギヤS1は、第1の伝動軸としての中空軸18を介して出力回転体としての出力ディスク19と連結され、無段変速装置12によって変速され、出力された出力速度noの回転がサンギヤS1に伝達される。また、前記キャリヤCR1は、後方(図において右方)の入力ディスク17と直接連結されるとともに、入力軸16を介してエンジン及び前方(図において左方)の入力ディスク17と間接的に連結され、エンジンから伝達された入力速度niの回転が、前記入力軸16を介してキャリヤCR1に伝達され、さらに、後方の入力ディスク17に伝達される。
そして、前記キャリヤCR1は、オーバドライブモード用の摩擦係合要素としてのクラッチC1を介してリングギヤR2と連結され、発生させられた回転をリングギヤR2に伝達する。また、リングギヤR1は、キャリヤCR2と連結され、発生させられた回転をキャリヤCR2に伝達する。
前記サンギヤS2は、第2の伝動軸としての中空軸26及び無段モード用のクラッチC3を介して出力軸23と連結され、サンギヤS2に発生させられた回転を出力軸23に伝達する。そして、前記リングギヤR3はケース10と連結される。
また、前記入力軸16は直結モード用の摩擦係合要素としてのクラッチC2を介して出力軸23と連結される。該出力軸23は、差動装置としての図示されないディファレンシャル装置と連結され、出力軸23に伝達された回転がディファレンシャル装置に伝達され、左右の駆動軸に分配されて駆動輪に伝達される。なお、前記クラッチC2によって第1の摩擦係合要素が、クラッチC1によって第2の摩擦係合要素が構成される。また、クラッチC1は入力軸16とギヤユニット32との間に配設される。
前記クラッチC1〜C3を係脱させるために、アクチュエータとしての図示されない油圧サーボが配設され、クラッチC1〜C3及び各油圧サーボによってモード設定要素が構成される。
次に、前記構成の無段変速機11の動作について説明する。
図5は本発明の第1の実施の形態における無段変速機の作動表を示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における変速線図である。なお、図6において、横軸にプラネタリギヤ機構13(図4)の各要素の入出力関係を表す位置を、縦軸に各要素の回転速度を採ってある。該回転速度は、零の値を採る基準線より上方において正の値を、基準線より下方において負の値を採る。
この場合、変速線図は、ギヤユニット31におけるサンギヤS1、リングギヤR1及びキャリヤCR1の各要素の回転状態を示す入出力機構変速線部53、並びにギヤユニット32におけるサンギヤS2、リングギヤR2、R3及びキャリヤCR2の各要素の回転状態を示す増速機構変速線部54を備える。
そして、前記入出力機構変速線部53において、サンギヤS1及びリングギヤR1の各歯数をZs1、Zr1とし、サンギヤS1とキャリヤCR1との間の距離を表す値を1としたとき、リングギヤR1とキャリヤCR1との間の距離を表す値λ1は、
λ1=Zs1/Zr1
になる。
また、前記増速機構変速線部54において、サンギヤS2及びリングギヤR2、R3の各歯数をZs2、Zr2、Zr3とし、サンギヤS2とキャリヤCR2との間の距離を表す値を1としたとき、リングギヤR2とキャリヤCR2との間の距離を表す値λ2は、
λ2=Zs2/Zr2
になり、リングギヤR3とキャリヤCR2との間の距離を表す値λ3は、
λ3=Zs2/Zr3
になる。
そして、運転者が、所定の図示されない操作部を操作して所定のモードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、図示されない制御部のモード設定処理手段は、モード設定処理を行い、図示されない油圧回路において、所定の油圧サーボに油圧を供給し、クラッチC1〜C3を選択的に係合させることによって、パーキング・ニュートラル(P、N)モード、無段モード、直結モード及びオーバドライブ(OD)モードを選択し、設定する。
すなわち、前記モード設定処理手段は、図5に示されるように、クラッチC1〜C3をいずれも解放することによってパーキング・ニュートラルモードを、クラッチC3を係合させることによって無段モードを、クラッチC2、C3を係合させることによって直結モードを、クラッチC1、C3を係合させることによってオーバドライブモードを設定する。
ところで、運転者が前記操作部を操作して無段モードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、クラッチC3が係合させられ、クラッチC1、C2が解放される。そして、前記エンジンの出力軸と連結された入力軸16を介して、エンジンからの入力速度niの回転がキャリヤCR1に伝達される。同時に、無段変速装置12に前記入力速度niの回転が伝達され、無段変速装置12によって変速され、反転させられた回転が出力回転体としての出力ディスク19から出力され、中空軸18を介してサンギヤS1に伝達される。このとき、出力ディスク19の出力速度noは、図6に示される範囲Rnoで変化させられる。
その結果、ギヤユニット31において、キャリヤCR1は入力速度niで回転させられ、サンギヤS1は出力速度noで回転させられ、入力速度niの回転と出力速度noの回転とが合成され、リングギヤR1の回転がキャリヤCR2に伝達される。
そして、ギヤユニット32において、キャリヤCR2に回転が伝達されると、リングギヤR3が固定されているので、サンギヤS2に増速させられた回転が発生させられ、出力軸23に出力され、該出力軸23が出力速度NOで回転させられる。このとき、サンギヤS2の回転速度nsは、図6に示される範囲Rnsで変化させられ、出力速度NOは回転速度nsと等しい値になる。
ところで、入力速度niに対する出力速度noの比を無段変速装置12の変速比γとしたとき、前記無段変速装置12において、中間転動体としてのパワーローラ20の傾きが変更されるのに伴って、変速比γが変化させられ、図6に示されるように、変速比γが負の方向において小さいアンダードライブ側の変速状態Budと、変速比γが負の方向において大きいオーバドライブ側の変速状態Bodとの間で変速状態が変化する。
そして、無段変速装置12の変速状態がBudからオーバドライブ側に変化して、出力速度noが前記範囲Rno内で負の方向において高くなり、それに伴って、回転速度nrが正の方向において低くなる。その結果、回転速度ns及び出力速度NOも低くなり、入力速度niに対する出力速度NOの比で表される無段変速機11の出力変速比ηは正の方向において小さくなり、前進出力速度が低くなり、前進方向の車速が低くなる。
続いて、無段変速装置12がギヤニュートラル状態Bgnに置かれると、回転速度nrが零になり、トルクを無限に発散する状態が形成される。これに伴って、回転速度ns、出力速度NO、出力変速比η及び車速がいずれも零になる。
さらに、パワーローラ20の傾きが変更され、変速比γが負の方向において更に大きくされ、無段変速装置12の変速状態が更にオーバドライブ側に変化すると、回転速度nrが負の方向において高くなる。これに伴って、回転速度ns、出力速度NO及び出力変速比ηが負の方向において大きくなる。その結果、後進出力速度が高くなり、後進方向の車速が高くなる。
ところで、前述されたように、直結モード及びオーバドライブモードを選択することができるようになっている。そのために、前記入力軸16と出力軸23との間に所定のクラッチを配設し、該クラッチを係脱させることによって入力軸16と出力軸23とを選択的に直接連結することができるようにし、前記ギヤユニット32におけるサンギヤS2、リングギヤR2、R3及びキャリヤCR2の四つの要素のうちの一つの要素、本実施の形態においては、リングギヤR3を固定することによって、無段変速装置12の変速状態を変速状態Bodの近傍に固定し、値の大きい所定の出力変速比ηを達成することができるようにしている。
そして、運転者が前記操作部を操作して直結モードを選択したり、車速及びスロットル開度が変化したりすると、クラッチC2、C3が係合させられ、クラッチC1が解放される。
これに伴って、前記エンジンの出力軸と連結された入力軸16を介して、エンジンからの入力速度niの回転が、無段変速装置12を介することなく、クラッチC2を介して直接出力軸23に伝達される。そして、出力変速比ηは1になる。
このとき、クラッチC3が係合させられるのに伴って、入力速度niの回転がサンギヤS2に伝達され、ギヤユニット32において、リングギヤR3が固定されるので、キャリヤCR2の回転速度が決まり、リングギヤR1の回転速度nrが決まる。したがって、無段変速装置12は図6に示される変速状態Bf1に固定される。その結果、無段変速装置12の変速比γを所定の値γ1で固定して、中速の速度範囲において車両を郊外で定常走行させることができるので、燃費を向上させることができる。
また、運転者が前記操作部を操作してオーバドライブモードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、クラッチC1、C3が係合させられ、クラッチC2が解放される。
これに伴って、前記エンジンの出力軸と連結された入力軸16を介して、エンジンからの入力速度niの回転がキャリヤCR1及びリングギヤR2に伝達され、この状態で、リングギヤR3が固定されているので、キャリヤCR2の回転速度が決まり、リングギヤR1の回転速度が決まる。その結果、無段変速装置12は図6に示される変速状態Bf2に固定され、出力ディスク19の出力速度noは、図6に示される範囲Rno内の所定の値に固定される。
一方、リングギヤR3が固定された状態でキャリヤCR2の回転速度が決まるので、サンギヤS2の回転速度nsが決まり、サンギヤS2の回転が出力軸23に出力され、出力軸23は回転速度nsと等しい出力速度NOで回転させられる。
このように、ギヤユニット32の各要素のうちの一つの要素、本実施の形態においては、リングギヤR3を固定することによって、無段変速装置12の変速比γを値γ1より大きい所定の値γ2で固定して、無段変速装置12を介することなく、入力速度niに対応させて増速された一定の出力速度NOで出力軸23を回転させることができ、高速の速度範囲において車両を高速道路で定常走行させることができるので、燃費を向上させることができる。値γ2は、無段変速装置12によって達成される最大変速比γmaxより小さくされる。
このように、本実施の形態においては、オーバドライブモードが選択されると、変速比の値γ1が、無段変速装置12によって達成される変速比γの範囲内に収められる。したがって、直結モードとオーバドライブモードとでモードを切り替えたときに、変速比を滑らかに変化させることができる。したがって、変速ショックが発生するのを抑制することができる。
また、本実施の形態においては、キャリヤCR1とリングギヤR2とが連結され、キャリヤCR1の回転がリングギヤR2に伝達されるようになっている。この場合、ギヤユニット32において、径の大きいリングギヤR2を介して回転が入力されるので、ギヤユニット32の荷重を小さくすることができ、ギヤユニット32の耐久性を向上させることができる。
そして、本実施の形態においては、ギヤユニット32において、リングギヤR3が固定された状態で、キャリヤCR2が回転させられるので、潤滑用の油を遠心力を利用してピニオンP2a、P2bに供給することができる。したがって、キャリヤCR2の潤滑を円滑に行うことができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、前記技術の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同技術の形態の効果を援用する。
図7は本発明の第2の実施の形態における無段変速機の概念図である。
この場合、ギヤ機構としてのプラネタリギヤ機構13は、無段変速装置12の入出力機構として使用される第1の差動回転装置としてのギヤユニット33、及び増速機構として使用される第2の差動回転装置としてのギヤユニット34を備える。前記ギヤユニット33は、無段変速装置12に対する回転の入出力を行い、前記ギヤユニット34は、ギヤユニット21から伝達された回転を増幅して出力軸23に出力する。
前記ギヤユニット33は、ステップピニオンプラネタリギヤから成り、第1の入力要素として機能するサンギヤS1、第1の出力要素として機能するサンギヤS2、前記サンギヤS1と噛合するピニオンP1、前記サンギヤS2と噛合するピニオンP2、並びにピニオンP1、P2を回転自在に支持し、第2の入力要素及び第2の出力要素として機能するキャリヤCR1を備える。該キャリヤCR1は、サンギヤS1、S2を連結する連結要素としても機能する。前記ピニオンP1、P2によってロングピニオンが構成される。
また、前記ギヤユニット34は、SS−CC型プラネタリギヤから成り、出力要素として機能するサンギヤS3、サンギヤS3と対向させて配設され、第1の入力要素として機能するリングギヤR3、サンギヤS3と対向させて配設され、第2の入力要素として機能するリングギヤR4、前記サンギヤS3及びリングギヤR3と噛合するピニオンP3、該ピニオンP3及びリングギヤR4と噛合するピニオンP4、並びにピニオンP3、P4を回転自在に支持し、固定要素として機能するキャリヤCR3を備える。該キャリヤCR3は、サンギヤS3及びリングギヤR3、R4を連結する連結要素としても機能する。前記ピニオンP3によってロングピニオンが、ピニオンP4によってショートピニオンが構成される。
そして、前記サンギヤS1は、第1の伝動軸としての中空軸18を介して出力回転体としての出力ディスク19と連結され、無段変速装置12によって変速され、出力された出力速度noの回転がサンギヤS1に伝達される。また、前記キャリヤCR1は、後方(図において右方)の入力ディスク17と直接連結されるとともに、入力軸16を介してエンジン及び前方(図において左方)の入力ディスク17と間接的に連結され、エンジンから伝達された入力速度niの回転が、前記入力軸16を介してキャリヤCR1に伝達され、さらに、後方の入力ディスク17に伝達される。
前記サンギヤS2は、第2の伝動軸としての中空軸26を介してリングギヤR3と連結され、発生させられた回転をリングギヤR3に伝達する。そして、キャリヤCR1は、オーバドライブ用の摩擦係合要素としてのクラッチC1を介してリングギヤR4と連結され、発生させられた回転をリングギヤR4に伝達する。
前記サンギヤS3は、第3の伝動軸としての中空軸28及び無段モード用のクラッチC3を介して出力軸23と連結され、発生させられた回転を出力軸23に伝達する。また、キャリヤCR3はケース10と連結される。
そして、前記入力軸16は直結モード用の摩擦係合要素としてのクラッチC2を介して出力軸23と連結される。該出力軸23は、差動装置としての図示されないディファレンシャル装置と連結され、出力軸23に伝達された回転がディファレンシャル装置に伝達され、左右の駆動軸に分配されて駆動輪に伝達される。なお、前記クラッチC2によって第1の摩擦係合要素が、クラッチC1によって第2の摩擦係合要素が構成される。
前記クラッチC1〜C3を係脱させるために、アクチュエータとしての図示されない油圧サーボが配設され、クラッチC1〜C3及び各油圧サーボによってモード設定要素が構成される。
次に、前記構成の無段変速機11の動作について説明する。
図8は本発明の第2の実施の形態における変速線図である。なお、図において、横軸にプラネタリギヤ機構13(図7)の各要素の入出力関係を表す位置を、縦軸に各要素の回転速度を採ってある。該回転速度は、零の値を採る基準線より上方において正の値を、基準線より下方において負の値を採る。また、無段変速機11の作動表については、第1の実施の形態と同じであるので、図5を援用する。
この場合、変速線図は、ギヤユニット33におけるサンギヤS1、S2及びキャリヤCR1の各要素の回転状態を示す入出力機構変速線部55、並びにギヤユニット34におけるサンギヤS3、リングギヤR3、R4及びキャリヤCR3の各要素の回転状態を示す増速機構変速線部56を備える。
そして、前記入出力機構変速線部55において、サンギヤS1、S2及びピニオンP1、P2の各歯数をZs1、Zs2、Zp1、Zp2とし、サンギヤS1とキャリヤCR1との間の距離を表す値を1としたとき、サンギヤS2とキャリヤCR1との間の距離を表す値λ1は、
λ1=(Zs1/Zp1)・(Zp2/Zs2)
になる。
また、増速機構変速線部56において、サンギヤS3及びリングギヤR3、R4の各歯数をZs3、Zr3、Zr4とし、サンギヤS3とキャリヤCR2との間の距離を表す値を1としたとき、リングギヤR3とキャリヤCR3との間の距離を表す値λ2は、
λ2=Zs3/Zr3
になり、リングギヤR4とキャリヤCR3との間の距離を表す値λ3は、
λ3=Zs3/Zr4
になる。
そして、運転者が、所定の図示されない操作部を操作して所定のモードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、図示されない制御部のモード設定処理手段は、モード設定処理を行い、図示されない油圧回路において、所定の油圧サーボに油圧を供給し、クラッチC1〜C3を選択的に係合させることによって、パーキング・ニュートラルモード、無段モード、直結モード及びオーバドライブモードを選択し、設定する。
すなわち、前記モード設定処理手段は、図5に示されるように、クラッチC1〜C3をいずれも解放することによってパーキング・ニュートラルモードを、クラッチC3を係合させることによって無段モードを、クラッチC2、C3を係合させることによって直結モードを、クラッチC1、C3を係合させることによってオーバドライブモードを設定する。
ところで、運転者が前記操作部を操作して無段モードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、クラッチC3が係合させられ、クラッチC1、C2が解放される。そして、前記エンジンの出力軸と連結された入力軸16を介して、エンジンからの入力速度niの回転がキャリヤCR1に伝達される。同時に、無段変速装置12に前記入力速度niの回転が伝達され、無段変速装置12によって変速され、反転させられた回転が出力ディスク19から出力され、中空軸18を介してサンギヤS1に伝達される。このとき、出力ディスク19の出力速度noは、図8に示される範囲Rnoで変化させられる。
その結果、ギヤユニット33において、キャリヤCR1は入力速度niで回転させられ、サンギヤS1は出力速度noで回転させられ、入力速度niの回転と出力速度noの回転が合成され、サンギヤS2の回転がリングギヤR3に伝達される。
そして、ギヤユニット34において、リングギヤR3に回転が伝達されると、キャリヤCR3が固定されているので、サンギヤS3に増速させられた回転が発生させられ、出力軸23に出力され、該出力軸23が出力速度NOで回転させられる。このとき、サンギヤS3の回転速度ns’は、図8に示される範囲Rns’で変化させられ、出力速度NOは回転速度nsと等しい値になる。
ところで、入力速度niに対する出力速度noの比を無段変速装置12の変速比γとしたとき、前記無段変速装置12において、パワーローラ20の傾きが変更されるのに伴って、変速比γが変化させられ、図8に示されるように、変速比γが負の方向において小さいアンダードライブ側の変速状態Budと、変速比γが負の方向において大きいオーバドライブ側の変速状態Bodとの間で変速状態が変化する。
そして、無段変速装置12の変速状態がBudからオーバドライブ側に変化して、出力速度noが前記範囲Rno内において負の方向において高くなり、それに伴って、サンギヤS2の回転速度nsが負の方向において高くなる。その結果、回転速度ns’及び出力速度NOが正の方向に高くなり、入力速度niに対する出力速度NOの比で表される無段変速機11の出力変速比ηは正の方向において大きくなり、前進出力速度が高くなり、前進方向の車速が高くなる。
続いて、無段変速装置12がギヤニュートラル状態Bgnに置かれると、サンギヤS2の回転速度nsが零になり、トルクを無限に発散する状態が形成される。これに伴って、回転速度ns’、出力速度NO、出力変速比η及び車速がいずれも零になる。
さらに、パワーローラ20の傾きが変更され、変速比γが負の方向において更に小さくされ、無段変速装置12の変速状態が更にアンダードライブ側に変化すると、サンギヤS2の回転速度nsが正の方向において高くなる。これに伴って、回転速度ns’、出力速度NO及び出力変速比ηが負の方向において大きくなる。その結果、後進出力速度が高くなり、後進方向の車速が高くなる。
ところで、前述されたように、直結モード及びオーバドライブモードを選択することができるようになっている。そのために、前記入力軸16と出力軸23との間に所定のクラッチを配設し、該クラッチを係脱させることによって入力軸16と出力軸23とを選択的に直接連結することができるようにし、前記ギヤユニット34におけるサンギヤS3、リングギヤR3、R4及びキャリヤCR3の四つの要素のうちの一つの要素、本実施の形態においては、キャリヤCR3を固定することによって、無段変速装置12の変速状態を変速状態Bodの近傍に固定し、値の大きい所定の出力変速比ηを達成することができるようにしている。
すなわち、運転者が前記操作部を操作して直結モードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、クラッチC2、C3が係合させられ、クラッチC1が解放される。
これに伴って、前記エンジンの出力軸と連結された入力軸16を介して、エンジンからの入力速度niの回転が、無段変速装置12を介することなく、クラッチC2を介して直接出力軸23に伝達され、出力変速比ηは1になる。
このとき、クラッチC3が係合させられるのに伴って、入力速度niの回転がサンギヤS3に伝達され、ギヤユニット34において、キャリヤCR3が固定されているので、リングギヤR3、R4の回転速度が決まり、サンギヤS2の回転速度nsが決まる。したがって、無段変速装置12は図8に示される変速状態Bf1に固定される。その結果、無段変速装置12の変速比γを所定の値γ1で固定して、中速の速度範囲において車両を郊外で定常走行させることができるので、燃費を向上させることができる。
また、運転者が前記操作部を操作してオーバドライブモードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、クラッチC1、C3が係合させられ、クラッチC2が解放される。
これに伴って、前記エンジンの出力軸と連結された入力軸16を介して、エンジンからの入力速度niの回転がキャリヤCR1及びリングギヤR4に伝達され、この状態で、キャリヤCR3が固定されているので、リングギヤR3の回転速度が決まり、サンギヤS2の回転速度nsが決まる。その結果、無段変速装置12は図8に示される変速状態Bf2に固定され、出力ディスク19の出力速度noは、図8に示される範囲Rno内の所定の値に固定される。
一方、キャリヤCR3が固定された状態でリングギヤR4の回転速度が決まるので、サンギヤS3の回転速度ns’が決まり、サンギヤS3の回転が出力軸23に出力され、出力軸23は回転速度ns’と等しい出力速度NOで回転させられる。
このように、ギヤユニット34の各要素のうちの一つの要素、本実施の形態においては、キャリヤCR3を固定することによって、無段変速装置12の変速比γを値γ1より大きい所定の値γ2で固定して、無段変速装置12を介することなく、入力速度niに対応させて増速された一定の出力速度NOで出力軸23を回転させることができ、高速の速度範囲において車両を高速道路で定常走行させることができるので、燃費を向上させることができる。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、前記技術の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同技術の形態の効果を援用する。
図9は本発明の第3の実施の形態における無段変速機の概念図である。
この場合、ギヤ機構としてのプラネタリギヤ機構13は、無段変速装置12の入出力機構として使用される第1の差動回転装置としてのギヤユニット31、及び増速機構として使用される第2の差動回転装置としてのギヤユニット35を備える。前記ギヤユニット31は、無段変速装置12に対する回転の入出力を行い、前記ギヤユニット35は、ギヤユニット31から伝達された回転を増幅して出力軸23に出力する。
前記ギヤユニット31は、ダブルプラネタリギヤから成り、第1の入力要素として機能するサンギヤS1、該サンギヤS1と対向させて配設され、第1の出力要素として機能するリングギヤR1、前記サンギヤS1と噛合するピニオンP1a、該ピニオンP1a及びリングギヤR1と噛合するピニオンP1b、並びに第2の入力要素及び第2の出力要素として機能し、ピニオンP1a、P1bを回転自在に支持するキャリヤCR1を備える。該キャリヤCR1は、サンギヤS1及びリングギヤR1を連結する連結要素としても機能する。
また、前記ギヤユニット35は、ラビニョ型プラネタリギヤから成り、出力要素として機能するサンギヤS2、固定要素として機能するサンギヤS3、サンギヤS2、S3と対向させて配設され、第1の入力要素として機能するリングギヤR2、前記サンギヤS2及びリングギヤR2と噛合するピニオンP2、前記サンギヤS3及びピニオンP2と噛合するピニオンP3、並びに第2の入力要素として機能し、ピニオンP2、P3を回転自在に支持するキャリヤCR2を備える。該キャリヤCR2は、サンギヤS2、S3及びリングギヤR2を連結する連結要素としても機能する。また、前記ピニオンP2によってロングピニオンが、ピニオンP3によってショートピニオンが構成される。
そして、前記サンギヤS1は、第1の伝動軸としての中空軸18を介して出力回転体としての出力ディスク19と連結され、無段変速装置12によって変速され、出力された出力速度noの回転がサンギヤS1に伝達される。また、前記キャリヤCR1は、後方(図において右方)の入力ディスク17と直接連結されるとともに、入力軸16を介してエンジン及び前方(図において左方)の入力ディスク17と間接的に連結され、エンジンから伝達された入力速度niの回転が、前記入力軸16を介してキャリヤCR1に伝達され、さらに、後方の入力ディスク17に伝達される。
そして、前記キャリヤCR1は、オーバドライブモード用の摩擦係合要素としてのクラッチC1を介してキャリヤCR2と連結され、発生させられた回転をキャリヤCR2に伝達する。また、リングギヤR1は、リングギヤR2と連結され、発生させられた回転をリングギヤR2に伝達する。
前記サンギヤS2は、第2の伝動軸としての中空軸26及び無段モード用のクラッチC3を介して出力軸23と連結され、発生させられた回転を出力軸23に伝達する。そして、サンギヤS3はケース10と連結される。
また、前記入力軸16は直結モード用の摩擦係合要素としてのクラッチC2を介して出力軸23と連結される。該出力軸23は、差動装置としての図示されないディファレンシャル装置と連結され、出力軸23に伝達された回転がディファレンシャル装置に伝達され、左右の駆動軸に分配されて駆動輪に伝達される。なお、前記クラッチC2によって第1の摩擦係合要素が、クラッチC1によって第2の摩擦係合要素が構成される。
前記クラッチC1〜C3を係脱させるために、アクチュエータとしての図示されない油圧サーボが配設され、クラッチC1〜C3及び各油圧サーボによってモード設定要素が構成される。
次に、前記構成の無段変速機11の動作について説明する。
図10は本発明の第3の実施の形態における変速線図である。なお、図において、横軸にプラネタリギヤ機構13(図9)の各要素の入出力関係を表す位置を、縦軸に各要素の回転速度を採ってある。該回転速度は、零の値を採る基準線より上方において正の値を、基準線より下方において負の値を採る。また、無段変速機11の作動表については、第1の実施の形態と同じであるので、図5を援用する。
この場合、変速線図は、ギヤユニット31におけるサンギヤS1、リングギヤR1及びキャリヤCR1の各要素の回転状態を示す入出力機構変速線部57、並びにギヤユニット35におけるサンギヤS2、S3、リングギヤR2及びキャリヤCR2の各要素の回転状態を示す増速機構変速線部58を備える。
そして、前記入出力機構変速線部57において、サンギヤS1及びリングギヤR1の各歯数をZs1、Zr1とし、サンギヤS1とキャリヤCR1との間の距離を表す値を1としたとき、リングギヤR1とキャリヤCR1との間の距離を表す値λ1は、
λ1=Zs1/Zr1
になる。
また、前記増速機構変速線部58において、サンギヤS2、S3及びリングギヤR2の各歯数をZs2、Zs3、Zr2とし、サンギヤS2とキャリヤCR2との間の距離を表す値を1としたとき、リングギヤR2とキャリヤCR2との間の距離を表す値λ2は、
λ2=Zs2/Zr2
になり、サンギヤS3とキャリヤCR2との間の距離を表す値を1としたとき、リングギヤR2とキャリヤCR2との間の距離を表す値λ3は、
λ3=Zs3/Zr2
になる。
そして、運転者が、所定の図示されない操作部を操作して所定のモードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、図示されない制御部のモード設定処理手段は、モード設定処理を行い、図示されない油圧回路において、所定の油圧サーボに油圧を供給し、クラッチC1〜C3を選択的に係合させることによって、パーキング・ニュートラルモード、無段モード、直結モード及びオーバドライブモードを選択し、設定する。
すなわち、前記モード設定処理手段は、図5に示されるように、クラッチC1〜C3をいずれも解放することによってパーキング・ニュートラルモードを、クラッチC3を係合させることによって無段モードを、クラッチC2、C3を係合させることによって直結モードを、クラッチC1、C3を係合させることによってオーバドライブモードを設定する。
ところで、運転者が前記操作部を操作して無段モードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、クラッチC3が係合させられ、クラッチC1、C2が解放される。そして、前記エンジンの出力軸と連結された入力軸16を介して、エンジンからの入力速度niの回転がキャリヤCR1に伝達される。同時に、無段変速装置12に前記入力速度niの回転が伝達され、無段変速装置12によって変速され、反転させられた回転が出力ディスク19から出力され、中空軸18を介してサンギヤS1に伝達される。このとき、出力ディスク19の出力速度noは、図10に示される範囲Rnoで変化させられる。
その結果、ギヤユニット31において、キャリヤCR1は入力速度niで回転させられ、サンギヤS1は出力速度noで回転させられ、入力速度niの回転と出力速度noの回転とが合成され、リングギヤR1の回転がリングギヤR2に伝達される。
そして、ギヤユニット35において、リングギヤR2に回転が伝達されると、サンギヤS3が固定されているので、サンギヤS2に増速させられた回転が発生させられ、出力軸23に出力され、該出力軸23が出力速度NOで回転させられる。このとき、サンギヤS2の回転速度nsは、図10に示される範囲Rnsで変化させられ、出力速度NOは回転速度nsと等しい値になる。
ところで、入力速度niに対する出力速度noの比を無段変速装置12の変速比γとしたとき、前記無段変速装置12において、パワーローラ20の傾きが変更されるのに伴って、変速比γが変化させられ、図10に示されるように、変速比γが負の方向において小さいアンダードライブ側の変速状態Budと、変速比γが負の方向において大きいオーバドライブ側の変速状態Bodとの間で変速状態が変化する。
そして、無段変速装置12の変速状態がBudからオーバドライブ側に変化して、出力速度noが前記範囲Rno内において負の方向において高くなり、それに伴って、回転速度nrが正の方向において低くなる。その結果、回転速度ns及び出力速度NOも低くなり、入力速度niに対する出力速度NOの比で表される無段変速機11の出力変速比ηは正の方向において小さくなり、前進出力速度が低くなり、前進方向の車速が低くなる。
続いて、無段変速装置12がギヤニュートラル状態Bgnに置かれると、サンギヤS2の回転速度nsが零になり、トルクを無限に発散する状態が形成される。これに伴って、回転速度ns、出力速度NO、出力変速比η及び車速がいずれも零になる。
さらに、パワーローラ20の傾きが変更され、変速比γが負の方向において更に大きくされ、無段変速装置12の変速状態が更にオーバドライブ側に変化すると、回転速度nrが負の方向において高くなる。これに伴って、回転速度ns、出力速度NO及び出力変速比ηが負の方向において大きくなる。その結果、後進出力速度が高くなり、後進方向の車速が高くなる。
ところで、前述されたように、直結モード及びオーバドライブモードを選択することができるようになっている。そのために、前記入力軸16と出力軸23との間に所定のクラッチを配設し、該クラッチを係脱させることによって入力軸16と出力軸23とを選択的に直接連結することができるようにし、前記ギヤユニット35におけるサンギヤS2、S3、リングギヤR2及びキャリヤCR2の四つの要素のうちの一つの要素、本実施の形態においては、サンギヤS3を固定することによって、無段変速装置12の変速状態を変速状態Bodの近傍に固定し、値の大きい所定の出力変速比ηを達成することができるようにしている。
すなわち、運転者が前記操作部を操作して直結モードを選択したり、車速、スロットル開度等が変化したりすると、クラッチC2、C3が係合させられ、クラッチC1が解放される。
これに伴って、前記エンジンの出力軸と連結された入力軸16を介して、エンジンからの入力速度niの回転が、無段変速装置12を介することなく、クラッチC2を介して直接出力軸23に伝達され、出力変速比ηは1になる。
このとき、クラッチC3が係合させられるのに伴って、入力速度niの回転がサンギヤS2に伝達され、ギヤユニット35において、サンギヤS3が固定されているので、リングギヤR2の回転速度が決まり、リングギヤR1の回転速度nrが決まる。したがって、無段変速装置12は図10に示される変速状態Bf1に固定される。その結果、無段変速装置12の変速比γを所定の値γ1で固定して、中速の速度範囲において車両を郊外で定常走行させることができるので、燃費を向上させることができる。
また、運転者が前記操作部を操作してオーバドライブモードを選択したり、車速、スロットル開度等したりすると、クラッチC1、C3が係合させられ、クラッチC2が解放される。
これに伴って、前記エンジンの出力軸と連結された入力軸16を介して、エンジンからの入力速度niの回転がキャリヤCR1、CR2に伝達され、この状態で、サンギヤS3が固定されているので、リングギヤR2の回転速度が決まり、リングギヤR1の回転速度nrが決まる。その結果、無段変速装置12は図10に示される変速状態Bf2に固定され、出力ディスク19の出力速度noは、図10に示される範囲Rno内の所定の値に固定される。
一方、サンギヤS3が固定された状態でキャリヤCR2の回転速度が決まるので、サンギヤS2の回転速度nsが決まり、サンギヤS2の回転が出力軸23に出力され、出力軸23は回転速度nsと等しい出力速度NOで回転させられる。
このように、ギヤユニット35の各要素のうちの一つの要素、本実施の形態においては、サンギヤS3を固定することによって、無段変速装置12の変速比γを値γ1より大きい所定の値γ2で固定して、無段変速装置12を介することなく、入力速度niに対応させて増速された一定の出力速度NOで出力軸23を回転させることができ、高速の速度範囲において車両を高速道路で定常走行させることができるので、燃費を向上させることができる。
また、本実施の形態においては、リングギヤR1、R2が連結され、リングギヤR1の回転がリングギヤR2に伝達されるようになっている。この場合、ギヤユニット35において、径の大きいリングギヤR2を介して回転が入力されるので、ギヤユニット35の荷重を小さくすることができ、ギヤユニット35の耐久性を向上させることができる。
そして、本実施の形態においては、ギヤユニット35において、サンギヤS3が固定された状態で、キャリヤCR2が回転させられるので、潤滑用の油を遠心力を利用してピニオンP2、P3に供給することができる。したがって、キャリヤCR2の潤滑を円滑に行うことができる。