JP4660903B2 - ポリエステル重合触媒およびこれを用いて製造されたポリエステルならびにポリエステルの製造方法 - Google Patents

ポリエステル重合触媒およびこれを用いて製造されたポリエステルならびにポリエステルの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル重合触媒およびこれを用いて製造されたポリエステルならびにポリエステルの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、アンチモン化合物を用いない新規のポリエステル重合触媒、およびこれを用いて製造されたポリエステルならびにポリエステルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(以下、PET と略す)は、機械的特性および化学的特性に優れており、多用途への応用、例えば、衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用などの各種フィルムやシート、ボトルやエンジニアリングプラスチックなどの成形物への応用がなされている。
【0003】
PET は、工業的にはテレフタル酸もしくはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル化もしくはエステル交換によってビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造し、これを高温、真空下で触媒を用いて重縮合することで得られる。重縮合時に用いられる触媒としては、三酸化アンチモンが広く用いられている。三酸化アンチモンは、安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるが、重縮合時に金属アンチモンが析出するため、PET に黒ずみや異物が発生するという問題点を有している。また、最近環境面からアンチモンの安全性に対する問題が指摘されている。このような経緯で、アンチモンを含まないか極少量のみ含むポリエステルが望まれている。
【0004】
重縮合触媒として、三酸化アンチモンを用いて、かつ PET の黒ずみや異物の発生を抑制する試みが行われている。例えば、特許第2666502号においては、重縮合触媒として三酸化アンチモンとビスマスおよびセレンの化合物を用いることで、PET 中の黒色異物の生成を抑制している。また、特開平9-291141号においては、重縮合触媒としてナトリウムおよび鉄の酸化物を含有する三酸化アンチモンを用いると、金属アンチモンの析出が抑制されることを述べている。ところが、これらの重縮合触媒では、結局アンチモンを含まないポリエステルという目的は達成できない。
【0005】
三酸化アンチモンの代わりとなる重縮合触媒の検討も行われている。特に、テトラアルコキシチタネートに代表されるチタン化合物がすでに提案されているが、これを用いて製造された PET は著しく着色すること、ならびに熱分解を容易に起こすという問題がある。
【0006】
このような、テトラアルコキシチタネートを重縮合触媒として用いたときの問題点を克服する試みとして、例えば、特開昭55-116722号では、テトラアルコキシチタネートをコバルト塩およびカルシウム塩と同時に用いる方法が提案されている。また、特開平8-73581号によると、重縮合触媒としてテトラアルコキシチタネートをコバルト化合物と同時に用い、かつ蛍光増白剤を用いる方法が提案されている。ところが、これらの提案では、テトラアルコキシチタネートを重縮合触媒として用いたときの PET の着色は低減されるものの、一方 PET の熱分解を効果的に抑制することは達成されていない。
【0007】
三酸化アンチモンの代わりとなる重縮合触媒でかつ、テトラアルコキシチタネートを用いたときのような問題点を克服する重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物が実用化されているが、この触媒は非常に高価であるという問題点や、重合中に反応系から外へ留出しやすいため反応系の触媒濃度が変化し重合の制御が困難になるという問題点を有している。
【0008】
アルミニウム化合物は一般に触媒活性に劣ることが知られている。アルミニウム化合物の中でも、アルミニウムのキレート化合物は他のアルミニウム化合物に比べて重縮合触媒として高い触媒活性を有することが報告されているが、上述のアンチモン化合物やチタン化合物と比べると十分な触媒活性を有しているとは言えず、しかもアルミニウム化合物を触媒として用いて長時間を要して重合したポリエステルは熱安定性に劣るという問題点があった。
【0009】
一般に、フェノール系化合物やリン化合物あるいはフェノール部を同一分子内に有するリン化合物は酸化防止剤としてよく知られており、ポリエステルの熱分解を抑制することができることが知られている。フェノール部を同一分子内に有するリン化合物はこのように熱分解を抑制することはできるが、これらの化合物がポリエステルの融点を実質的に変化させずに重合反応を大きく促進することは知られていない。実際に、ポリエステル重合の代表的な触媒であるアンチモン化合物またはチタン化合物あるいはゲルマニウム化合物を重合触媒としてポリエステルを重合する際に、フェノール部を同一分子内に有するリン化合物を添加しても、実質的に有用なレベルまで重合が促進されることは認められない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アンチモン化合物以外の新規の重縮合触媒、およびこれを用いて製造されたポリエステルならびにポリエステルの製造方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の筆者らは、アルミニウム化合物を触媒として用いて重合したポリエステルの熱安定性を向上する目的で重合時に各種酸化防止剤の添加効果を検討したところ、アルミニウム化合物にフェノール部を同一分子内に有するリン化合物を組み合わせることによって、ポリエステルの熱安定性が向上するとともに、もともと触媒活性に劣るアルミニウム化合物が重縮合触媒として十分な活性をもつようになることを見いだし本発明に到達した。本発明の重縮合触媒を用いると、アンチモン化合物を用いない品質に優れたポリエステルを得ることができる。
【0012】
すなわち、本発明は上記課題の解決法として、アルミニウム化合物とフェノール部を同一分子内に有するリン化合物とからなるポリエステル重合触媒およびこれを用いて製造されたポリエステルならびにポリエステルの製造方法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、アンチモン化合物以外の新規の重縮合触媒、およびこれを用いて製造されたポリエステルならびにポリエステルの製造方法を提供するものである。本発明の重縮合触媒は、アルミニウム化合物とフェノール部を同一分子内に有するリン化合物とからなるポリエステル重合触媒である。
【0014】
本発明の重縮合触媒を構成するアルミニウム化合物としては特に限定はされないが、例えば、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウム、金属アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。
【0015】
本発明のアルミニウム化合物の使用量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して5×10-7〜0.01モルが好ましく、更に好ましくは1×10-6〜0.005モルである。
【0016】
本発明の重縮合触媒を構成するフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果がとくに大きく好ましい。
【0017】
本発明で言うホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物とは、それぞれ下記式(4)〜(9)で表される構造を有する化合物のことを言う。
【0018】
【化4】
Figure 0004660903
【0019】
【化5】
Figure 0004660903
【0020】
【化6】
Figure 0004660903
【0021】
【化7】
Figure 0004660903
【0022】
【化8】
Figure 0004660903
【0023】
【化9】
Figure 0004660903
【0024】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジエチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジフェニル、などが挙げられる。本発明のフェノール部を同一分子内に有するホスフィン酸系化合物としては、例えば、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニル、および下記式(4)〜(7)で表される化合物などが挙げられる。本発明のフェノール部を同一分子内に有するホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
また、本発明の重縮合触媒を構成するフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物を用いると特に触媒活性が向上するため好ましい。
【0025】
【化10】
Figure 0004660903
【0026】
【化11】
Figure 0004660903
【0027】
【化12】
Figure 0004660903
【0028】
(式(1)〜(3)中、R1はフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基およびフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4,R5,R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造やシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。R2とR4の末端どうしは結合していてもよい。)
【0029】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジエチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メチルホスフィンオキサイド、および下記式(10)〜(13)で表される化合物などが挙げられる。これらのうちで、下記式(12)で表される化合物およびp−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチルがとくに好ましい。
【0030】
【化13】
Figure 0004660903
【0031】
【化14】
Figure 0004660903
【0032】
【化15】
Figure 0004660903
【0033】
【化16】
Figure 0004660903
上記の式(12)にて示される化合物としては、SANKO-220(三光株式会社製)があり、使用可能である。
【0034】
これらのフェノール部を同一分子内に有するリン化合物をポリエステルの重合時に添加することによってアルミニウム化合物の触媒活性が向上するとともに、重合したポリエステルの熱安定性も向上する。
【0035】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の使用量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して5×10-7〜0.01モルが好ましく、更に好ましくは1×10-6〜0.005モルである。
【0036】
本発明の重縮合触媒であるアルミニウム化合物およびフェノール部を同一分子内に有するリン化合物に加えて、アルカリ金属またはそれらの化合物あるいはアルカリ土類金属またはそれらの化合物からなる群より選ばれる一種もしくは二種以上の金属または金属化合物を共存することにより、触媒活性をさらに向上することができるので好ましい。
【0037】
本発明のアルカリ金属及びそれらの化合物並びにアルカリ土類金属及びそれらの化合物としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の他に、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Baから選ばれる一種もしくは二種以上の化合物であれば特に限定はされないが、例えば、これらの金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫酸水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1-プロパンスルホン酸、1-ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、iso-プロポキシ、n-ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。これらのアルカリ金属及びそれらの化合物並びにアルカリ土類金属及びそれらの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等のジオールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重合系に添加しなければならず重合工程上問題となる。さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重合時にポリエステルが加水分解等の副反応を受け易くなるとともに、重合したポリエステルは着色し易くなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。従って、本発明のアルカリ金属及びそれらの化合物並びにアルカリ土類金属及びそれらの化合物として好適なものは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫酸水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物、および酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、とくにアルカリ金属及びアルカリ土類金属の酢酸塩が好ましい。
【0038】
これらアルカリ金属及びそれらの化合物並びにアルカリ土類金属及びそれらの化合物の使用量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して1×10-6〜0.1モルの範囲であることが好ましく、更に好ましくは5×10-6〜0.05モルの範囲であることである。
【0039】
本発明によるポリエステルの製造は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、PETを製造する場合は、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化後、重縮合する方法、もしくは、テレフタル酸ジメチルなどのテレフタル酸のアルキルエステルとエチレングリコールとのエステル交換反応を行った後、重縮合する方法のいずれの方法でも行うことができる。また、重合の装置は、回分式であっても、連続式であってもよい。
【0040】
本発明の触媒は、重縮合反応のみならずエステル化反応およびエステル交換反応にも触媒活性を有する。テレフタル酸ジメチルなどのジカルボン酸のアルキルエステルとエチレングリコールなどのグリコールとのエステル交換反応は、通常亜鉛などのエステル交換触媒の存在下で行われるが、これらの触媒の代わりかもしくはこれらの触媒と共存して本発明の触媒を用いることもできる。また、本発明の触媒は、溶融重合のみならず固相重合や溶液重合においても触媒活性を有する。
【0041】
本発明の重縮合触媒の添加時期は、重縮合反応の開始直前が望ましいが、エステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前および反応途中の任意の段階で反応系に添加することもできる。とくに、アルミニウム化合物は重縮合反応の開始直前に添加することが好ましい。
【0042】
本発明の重縮合触媒の添加方法は、粉末状もしくはニート状であってもよいし、エチレングリコールなどの溶媒のスラリー状もしくは溶液であってもよく、特に限定されない。また、アルミニウム化合物とフェノール部を同一分子内に有するリン化合物とを予めニート状もしくはエチレングリコールなどの溶媒中で混合したものを添加してもよいし、これらを別々に添加してもよい。また、アルミニウム化合物とフェノール部を同一分子内に有するリン化合物を同じ添加時期に添加してもよいし、これらを別々の添加時期に添加してもよい。また、アルミニウム化合物とフェノール部を同一分子内に有するリン化合物と、アルカリ金属及びそれらの化合物並びにアルカリ土類金属及びそれらの化合物とを予め混合したものを添加してもよいし、これらを別々に添加してもよい。また、これらを同じ添加時期に添加してもよいし、これらを別々の添加時期に添加してもよい。
【0043】
本発明の重合触媒を用いてポリエステルを重合する際には、アンチモン化合物やゲルマニウム化合物を併用してもよい。ただし、アンチモン化合物としては重合して得られるポリエステルに対してアンチモン原子として50ppm以下の量で添加することが好ましい。より好ましくは30ppm以下の量で添加することである。アンチモンの添加量を50ppm以上にすると、金属アンチモンの析出が起こり、ポリエステルに黒ずみや異物が発生するため好ましくない。ゲルマニウム化合物としては重合して得られるポリエステル中にゲルマニウム原子として20ppm以下の量で添加することが好ましい。より好ましくは10ppm以下の量で添加することである。ゲルマニウムの添加量を20ppm以上にするとコスト的に不利となるため好ましくない。
【0044】
本発明で用いられるアンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが挙げられ、これらのうち三酸化アンチモンが好ましい。また、ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、これらのうち二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0045】
また、本発明の重合触媒はチタン化合物、スズ化合物、コバルト化合物などの他の重合触媒をポリエステルの熱安定性および色調を損なわない範囲で共存させることが可能である。
【0046】
本発明に言うポリエステルとは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種または二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種または二種以上とから成るもの、またはヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から成るもの、または環状エステルから成るものをいう。
【0047】
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、 テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3ーシクロブタンジカルボン酸、1,3ーシクロペンタンジカルボン酸、1,2ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,3ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,4ーシクロヘキサンジカルボン酸、2,5ーノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5ー(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1,3ーナフタレンジカルボン酸、1,4ーナフタレンジカルボン酸、1,5ーナフタレンジカルボン酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸、2,7ーナフタレンジカルボン酸、4、4’ービフェニルジカルボン酸、4、4’ービフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’ービフェニルエーテルジカルボン酸、1,2ービス(フェノキシ)エタンーp,p’ージカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられ、これらのジカルボン酸のうちテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸とくに2,6ーナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0048】
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3、4、3’、4’ービフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0049】
グリコールとしてはエチレングリコール、1、2ープロピレングリコール、1、3ープロピレングリコール、ジエチレングリ コール、トリエチレングリコール、1、2ーブチレングリコール、1、3ーブチレングリコール、2、3ーブチレングリコール、1,4ーブチレングリコール、1、5ーペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオー ル、1,2ーシクロヘキサンジオール、1,3ーシクロヘキサンジオール、1,4ーシクロヘキサンジオール、1,2ーシクロヘキサンジメタノール、1,3ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジエタノール、1,10ーデカメチレングリコール、1、12ードデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4, 4’ージヒドロキシビスフェノール、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシ)ベン ゼン、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1、2ービス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5ーナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられ、これらのグリコールのうちエチレングリコールおよび1,4ーブチレングリコールが好ましい。
【0050】
これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
【0051】
ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3ーヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、pー( 2ーヒドロキシエトキシ)安息香酸、4ーヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0052】
環状エステルとしては、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、β-メチル-β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0053】
また、本発明のポリエステルには公知のリン系化合物を共重合成分として含むことができる。リン系化合物としては二官能性リン系化合物が好ましく、例えば、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、(2-カルボキシルエチル)メチルホスフィン酸、(2-カルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸、(2-メトキシカルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸メチル、(4-メトキシカルボニルフェニル)フェニルホスフィン酸メチル、[2-(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル]メチルホスフィン酸のエチレングリコールエステル、(1,2-ジカルボキシエチル)ジメチルホスフィンオキサイド、9,10-ジヒドロ-10-オキサ-(2,3-カルボキシプロピル)-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイドなどが挙げられる。これらのリン系化合物を共重合成分として含むことで、得られるポリエステルの難燃性等を向上させることが可能である。
【0054】
多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などが挙げられる。
【0055】
本発明で用いられるポリエステルは主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルとは、全酸成分に対してテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルとは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。ここで言うアルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいても良い。
【0056】
本発明で用いられるナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、1,3ーナフタレンジカルボン酸、1,4ーナフタレンジカルボン酸、1,5ーナフタレンジカルボン酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸、2,7ーナフタレンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0057】
本発明で用いられるアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1、2ープロピレングリコール、1、3ープロピレングリコール、1、2ーブチレングリコール、1、3ーブチレングリコール、2、3ーブチレングリコール、1,4ーブチレングリコール、1、5ーペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオー ル、1,2ーシクロヘキサンジオール、1,3ーシクロヘキサンジオール、1,4ーシクロヘキサンジオール、1,2ーシクロヘキサンジメタノール、1,3ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジエタノール、1,10ーデカメチレングリコール、1、12ードデカンジオール等があげられる。これらは同時に2種以上を使用しても良い。
【0058】
本発明のポリエステルには、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体以外の酸成分として蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、 テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3ーシクロブタンジカルボン酸、1,3ーシクロペンタンジカルボン酸、1,2ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,3ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,4ーシクロヘキサンジカルボン酸、2,5ーノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、5ー(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、4、4’ービフェニルジカルボン酸、4、4’ービフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’ービフェニルエーテルジカルボン酸、1,2ービス(フェノキシ)エタンーp,p’ージカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3、4、3’、4’ービフェニルテトラカルボン酸などに例示される多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などを共重合成分として含むことができる。また、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3ーヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、pー( 2ーヒドロキシエトキシ)安息香酸、4ーヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸などに例示されるヒドロキシカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を含むこともできる。また、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、β-メチル-β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどに例示される環状エステルを含むこともできる。
【0059】
本発明のポリエステルには、アルキレングリコール以外のグリコール成分として、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4, 4’ージヒドロキシビスフェノール、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1、2ービス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5ーナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどに例示される多価アルコールなどを共重合成分として含むことができる。
【0060】
また、本発明のポリエステルには公知のリン系化合物を共重合成分として含むことができる。リン系化合物としては二官能性リン系化合物が好ましく、例えば、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、(2-カルボキシルエチル)メチルホスフィン酸、(2-カルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸、(2-メトキシカルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸メチル、(4-メトキシカルボニルフェニル)フェニルホスフィン酸メチル、[2-(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル]メチルホスフィン酸のエチレングリコールエステル、(1,2-ジカルボキシエチル)ジメチルホスフィンオキサイド、9,10-ジヒドロ-10-オキサ-(2,3-カルボキシプロピル)-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイドなどが挙げられる。これらのリン系化合物を共重合成分として含むことで、得られるポリエステルの難燃性等を向上させることが可能である。
【0061】
本発明のポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ(1,4ーシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートおよびこれらの共重合体が好ましく、これらのうちポリエチレンテレフタレートおよびこの共重合体が特に好ましい。
【0062】
本発明のポリエステル中にはリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤やフェノール系、芳香族アミン系等の酸化防止剤を含むことができ、これらを一種もしくは二種以上含有することによってポリエステルの熱安定性を高めることなどができる。
【0063】
リン系安定剤としては、リン酸ならびにトリメチルホスフェート等のリン酸エステル、亜リン酸、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレンジホスファイト等の亜リン酸エステル、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等の亜ホスホン酸エステル、メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のホスホン酸ならびにホスホン酸のモノあるいはジアルキルエステルなどが挙げられる。
【0064】
フェノール系酸化防止剤としては、テトラキス-[メチル-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、4,4'-ブチリデンビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、チオジエチレンービス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが挙げられる。
【0065】
本発明のポリエステル中には、コバルト化合物等の青み付け剤、有機系、無機系、および有機金属系のトナー、ならびに蛍光増白剤などを含むことができ、これらを一種もしくは二種以上含有することによって、ポリエステルの黄み等の着色を抑えることができる。
【0066】
本発明のポリエステル中には他の任意の重合体や安定剤、酸化防止剤、制電剤、消泡剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。
【0067】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが本発明はもとよりこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例および比較例においてポリエステルの固有粘度(IV)は次のようにして測定した。フェノール / 1,1,2,2-テトラクロロエタンの 6 / 4 混合溶媒(重量比)を用いて、温度30℃で測定した。
【0068】
(実施例1)
ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートに対し、触媒として、塩化アルミニウムの3g/lエチレングリコール溶液をポリエステル中の酸成分に対してアルミニウムとして0.015mol%加え、次いで前記した式(12)で表される化合物(化合物A)をポリエステル中の酸成分に対して0.01mol%加えて、常圧にて245℃で10分間攪拌した。次いで50分を要して275℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて0.1mmHgとしてさらに同温同圧で3時間重縮合反応を行った。得られたポリマーの物性値を表1に示す。化合物Aは、三光株式会社製SANKO-220を用いた。
【0069】
(実施例2〜7および比較例1〜2)
触媒を変更したこと以外は実施例1と全く同様にしてポリエステルを重合した。得られたポリマーの物性値を表1に示す。表中、化合物Aとは前記した式(12)で表される化合物、化合物Bとはp−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチルのことをそれぞれ指す。化合物Aは、三光株式会社製SANKO-220を用いた。金属触媒の添加量は金属原子としての添加量である。
【0070】
(比較例3)
触媒として、三酸化アンチモンをアンチモン原子としてポリエステル中の酸成分に対して0.05mol%添加して、実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。
得られたポリマーの物性値を表1に示す。
【0071】
(比較例4)
触媒として、三酸化アンチモンをアンチモン原子としてポリエステル中の酸成分に対して0.05mol%添加して、次いで前記した式(12)で表される化合物(化合物A)をポリエステル中の酸成分に対して0.01mol%加えて、実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。得られたポリマーの物性値を表1に示す。化合物Aは、三光株式会社製SANKO-220を用いた。
【0072】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物をアンチモン化合物と共存して用いても、アンチモン化合物の触媒活性は影響を受けないが、該フェノール部を同一分子内に有するリン化合物を本発明のアルミニウム化合物と共存して用いると、もともと触媒活性に劣っていたアルミニウム化合物の触媒活性が大幅に向上し、アンチモン化合物と同等の触媒活性をもつようになる。
【0073】
【表1】
Figure 0004660903
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、アンチモン化合物以外の新規の重縮合触媒、およびこれを用いて製造されたポリエステルならびにポリエステルの製造方法が提供される。本発明のポリエステルは、衣料用繊維、産業資材用繊維、各種フィルム、シート、ボトルやエンジニアリングプラスチックなどの各種成形物、および塗料や接着剤などへの応用が可能である。

Claims (10)

  1. ポリエステルを製造する際に、アルミニウム化合物と、フェノール部を同一分子内に有するリン化合物とからなるポリエステル重合触媒を溶融重合で、アルミニウム化合物の使用量として、前記ポリエステルを構成するカルボン酸成分1モルに対して5×10 −7 〜0.01モル、フェノール部を同一分子内に有するリン化合物の使用量として、前記ポリエステルを構成するカルボン酸成分1モルに対して5×10 −7 〜0.01モル用いることを特徴とするポリエステルの製造方法
  2. 前記アルミニウム化合物が、カルボン酸塩、無機酸塩、またはキレート化合物である請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
  3. 前記アルミニウム化合物が、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、またはアルミニウムアセチルアセトネートである請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
  4. 前記ポリエステルが、主たる酸成分がテレフタル酸もしくはそのエステル形成性誘導体、またはナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルであって、前記ポリエステル重合触媒を、エステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前および反応途中のいずれかの段階、または、重縮合反応の開始直前に添加する請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  5. フェノール部を同一分子内に有するリン化合物が、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルの製造方法
  6. フェノール部を同一分子内に有するリン化合物が、一種または二種以上のホスホン酸系化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルの製造方法
  7. フェノール部を同一分子内に有するリン化合物が、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上である請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルの製造方法
    Figure 0004660903
    Figure 0004660903
    Figure 0004660903
    (式(1)〜(3)中、R1はフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基およびフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4,R5,R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造や脂環構造や芳香環構造を含んでいてもよい。R2とR4の末端どうしは結合していてもよい。)
  8. 前記ポリエステル重合触媒に、アルカリ金属及びそれらの化合物並びにアルカリ土類金属及びそれらの化合物からなる群より選ばれる一種もしくは二種以上共存する請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステルの製造方法
  9. ポリエステルを製造する際に、アンチモン化合物をアンチモン原子としてポリエステルに対して50ppm以下の量で添加することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  10. ポリエステルを製造する際に、ゲルマニウム化合物をゲルマニウム原子としてポリエステルに対して20ppm以下の量で添加することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
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