JP4660886B2 - 敷寝具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用時の寝心地を改善するための敷寝具に関するものである。更には、使用時の床つき感がなく、温熱特性、汗の処理機能を有し、清潔でリサイクルが可能な繊維構造体及びそれを用いた敷寝具、家具、ベッド、車両用クッション材、生活資材等の製品の提供に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、木綿綿、羊毛綿、ポリエステル硬綿や、ウレタンフォーム、およびこれらを単体あるいは積層して用いた敷寝具が多数、提案されている。木綿綿、羊毛綿、ポリエステル綿では厚みが減少し、へたるという問題がある。特に、木綿綿、羊毛綿では吸汗性があるものの詰め物層に水分が滞留するという問題があり、敷寝具の管理においては好ましくない。また、ダニの繁殖やかびなどの問題から敬遠される傾向もあるため、ウレタンフォームやポリエステル綿を主体として構成されることが多い。一方、ウレタンフォームやポリエステル綿を詰め綿として用いた場合、クッション性、吸汗性が低いという課題があるので好ましくない。そのため、羊毛などの吸湿性のある繊維素材を巻綿として用いて詰め物であるポリエステル硬綿を包み込むという改善も行われている。
【0003】
これに対し、特許第2887648号公報では、綿、合成繊維などを使用した布団において粒状シリカゲルを備えた調湿性寝具が提案されている。また、特開平6−316014号公報では、微細な無数の孔のあるシートによって吸水・除湿機能を持たせた布団も提案されている。
【0004】
しかし、これらの方法においては、吸湿した水分の放出処理や、使用した粒状物の脱落などの点で問題がある。さらに、吸湿性シート状物としてのものであり、敷寝具として使用する際の体圧の分散などについては考慮されていないという問題が存在した。
【0005】
また、送風機などの装置を用いて通気除湿する方法(実開昭55−45839号公報)も採用されているが、大きな効果を得るためには装置設備としての費用必要であり、日常の使用における維持管理が難しいという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術における、使用時の汗などによる水分が敷寝具内に滞留するという欠点を改良し、同時に形態保持性、クッション性に優れ、蒸れにくさも併せ持つ熱可塑性弾性樹脂製の網状構造体と、吸湿性に優れた繊維集合体とを積層させた敷寝具を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために次の手段をとるものである。
即ち本発明は、ハード層及びソフト層からなる敷寝具であって、前記ハード層とソフト層の圧縮反発力が各々10kg以上と10kg未満であり、且つソフト層の20℃×65%RH下での水分率がハード層のものより3%以上大きいことを特徴とする敷寝具である。
そして具体的にはソフト層が人体側に面するように積層されてなることを特徴とする上記記載の敷寝具、20℃×65%RH下での水分率が、ソフト層で4%以上、ハード層で1%未満であることを特徴とする上記記載の敷寝具、ハード層が通気度40cc/cm2 /秒以上の繊維集合体から構成されてなり、見掛け密度が0.005g/cc〜0.1g/ccであることを特徴とする上記記載の敷寝具、ソフト層が、吸湿性を有する繊維を5%以上含む繊維集合体から構成されてなる単層もしくは2層以上の構造体であることを特徴とする上記記載の敷寝具、及びハード層の下面に結露防止層を設けてなることを特徴とする上記記載の敷寝具である。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明で使用するハード層とは木綿、麻、椰子殻繊維、ジュートなどのセルロース系繊維や、羊毛、絹、羽毛などの蛋白質系繊維などの天然繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂からなる合成繊維などの単一または混合したシート状に成形された繊維集合体である。
【0009】
ハード層としては、ポリエステル短繊維と低融点接着繊維を混綿し、熱圧縮成形して厚みと圧縮特性を調整した硬綿(ファイバークッション)、発泡ウレタンマット等を使用することができるが、より望ましくは、ゴム弾性を持つ熱可塑性エラストマー100%からなる連続線条のランダムループを3次元スプリング構造化したポリエステル系熱可塑性樹脂からなる網状構造体を用いることができる。その構造および製法については、特開平7−238456号公報に記載されているものを採用することができる。
【0010】
該網状構造体は、連続線条からなるランダムループの3次元スプリング構造を有するため、その上面と下面との間に大きな空隙を有する。従って、該網状構造体を敷寝具の詰め物として使用した場合、敷布団の使用者の体と敷寝具の底面との間に、空気や熱・水分の移動が可能となり、むれ感の発生を抑制することができる。
【0011】
該ハード層の厚みは20mm〜50mmであることが望ましい。厚みが20mm未満では変形の機能が著しく低下するため、床つき感を生じたりするため好ましくない。また、50mmを超えると、折り曲げにくくなると共に嵩張りすぎたり、重量が増加して収納作業にも問題を生じるばかりでなく、使用時の安定感が損なわれることがあるので好ましくない。ハード層の好ましい範囲としては25〜45mmである。
【0012】
該ハード層の見掛け密度は0.005g/ccから0.1g/ccであることが望ましい。見掛け密度が0.005g/cc未満では反発性が失われるのでクッション材として不適当であり、0.1g/ccを超えると弾発性が強くなり、寝心地が悪くなる。本発明の好ましい見掛け密度は0.002〜0.08g/ccである。
【0013】
該ハード層の圧縮反発力は10kg以上であることが望ましい。圧縮反発力が10kg未満では身体の重さを受け止め、床つき感を抑えるクッション材として不適当であり、寝心地が悪くなる。
【0014】
また、ハード層の通気度が小さいと寝心地についてはむれ感を生じやすく、また、容易に乾燥しないので、衛生面にも問題を生じ、洗濯などが困難である。従って、通気度は40cc/cm2 /秒以上が好ましく、更に50cc/cm2 /秒以上であることがより好ましい。
【0015】
さらに、ハード層の20℃×65%RHにおける水分率は1%未満であることが望ましく、後述するソフト層の20℃×65%RHにおける水分率は4%以上であることが望ましい。即ち、ハード層とソフト層のハード層の20℃×65%RHにおける水分率の差は3%以上であることが望ましい。叙上の条件を満たさないと、敷布団の使用時に発生した水分(汗)を吸収することができず、さらには水分の滞留を生じてしまう。
【0016】
また、該ハード層の周りを、木綿、麻、椰子殻繊維、ジュートなどのセルロース系繊維や、羊毛、絹、羽毛などの蛋白質系繊維などの天然繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂からなる合成繊維、およびこれらの合成繊維に吸湿性、防ダニ性、抗菌性などの加工を施した単一または混合したシート状に成形された繊維集合体によって、実質的に包み込んでも良い。
【0017】
ソフト層は繊維集合体であるが、木綿、麻、椰子殻繊維、ジュートなどのセルロース系繊維や、羊毛、絹、羽毛などの蛋白質系繊維などの天然繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂からなる合成繊維、およびこれらの合成繊維に吸湿性、防ダニ性、抗菌性などの加工を施した単一または混合したシート状に成形された繊維集合体などが使用でき、各種の繊維素材をウェブや不織布状に加工して使用することができる。また、適宜、同種または異種の繊維を混合あるいは、シート状にしたものを積層して用いても良い。
【0018】
ソフト層としては、従来のポリエステル短繊維と低融点接着繊維を混綿し、熱圧縮成形して厚みと圧縮特性を調整したシート状の綿や、ポリエステル短繊維と吸湿性を有する他の繊維とを混合またはシート状態で積層して使用することができるが、より望ましくは、ポリエステル繊維にアクリル酸、メタクリル酸などのビニル基を含有した酸および/またはそのアルカリ金属塩を重合率5%以上でグラフト重合させ末端酸性基をアルカリ金属塩としたものを用いることができるその詳しい内容については、特開平12−45181号公報に記載されている。
【0019】
該吸湿性を有するポリエステル短繊維は、少なくとも5%以上使用することが望ましい。混率が5%未満では十分な吸湿性能が得られない。好ましくは20%以上、使用することが望ましい。
【0020】
さらに該吸湿性ポリエステルの使用に際しては、通常のポリエステル短繊維と混綿することによる混合されたシート状綿として使用してもよいし、該吸湿性ポリエステル短繊維だけからなるのシート状綿とその他のシート状綿とを積層しても差し支えない。
【0021】
該ソフト層の20℃×65%RHにおける水分率は4%以上であることが望ましい。即ち、敷布団の使用時に発生した水分(汗)を吸収するためにはソフト層の吸湿能力が必要である。さらに、吸湿した水分を敷布団に長く滞留させないために、ソフト層とハード層の20℃×65%RHにおける水分率の差が3%以上であることが望ましい。
【0022】
該ソフト層の目付は100g/m2 から800g/m2 であることが望ましい。目付が100g/m2 未満では体を柔らかく受け止めるクッション材として不適当であり、800g/m2 を超えると不安定になり、寝心地が悪くなる。本発明の好ましい目付は250〜650g/m2 である。
【0023】
また、ソフト層の厚みは5mm未満では厚みが不足し、通気性が損なわれたり、床つき感を生じたりするため好ましくない。また、50mmを超えると、嵩張りすぎたり、使用時の安定感が損なわれることがあるので好ましくない。ソフト層の厚みの好ましい範囲としては10〜35mmである。
【0024】
該ソフト層の圧縮反発力は10kg未満であることが望ましい。圧縮反発力が10kgを超えると、身体を横たえたときの柔軟性に欠け、硬さによる違和感を生し、寝心地が悪くなる。
【0025】
上記ソフト層及びハード層からなる敷寝具を使用するに際し、ソフト層が人体側に面するようにすることが望ましい。即ち、ハード層が人体側に面すると、接触状態が硬くなり寝心地が悪くなるばかりだけでなく、ソフト層の吸湿能力による汗の移行が抑制されてしまうためである。
【0026】
本発明において、ハード層およびソフト層に用いる熱可塑性繊維集合体として、主な素材がポリエステル系樹脂による繊維集合体を混合して用いる場合、同じポリエステル系樹脂による繊維集合体を用いることがリサイクル性の観点から好ましい。
【0027】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明する。本明細書において用いた測定法は下記の通りである。
(イ) 厚さ、目付、見掛け密度
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、100g/cm2 の荷重下で4ケ所の高さを測定し、その平均値を厚みとした。また、その重量を測定し、重量を面積で除して目付を、目付を厚みで除した値で見かけ密度を示した。
【0028】
(ハ)圧縮反発力
JIS K 6401に準じ、テンシロンにて直径20cmの金属板で試料の厚みの75%まで圧縮した時の変位と反発力を測定した。この時の圧縮率−圧縮反発力曲線から、圧縮率30%における圧縮反発力(kg)を読みとった。
【0029】
(ニ)通気度
直径10cmに打ち抜いた試料を厚さを十分にカバーできる高さを有した内径φ10cmの金属円筒に圧縮ひずみ5%を付与した状態で封入し、そのひずみ分だけの厚さのパッキンでヨコ漏れがないようシールした後、株式会社テクノワールド社製の通気度測定器を用いて通気量を測定し、これを通気度とした。差圧は142Paで行った。
【0030】
(ホ)水分率
試料を約10gを秤量し、絶乾状態で、試料を秤量し(M0)、20℃×65%RH下で8時間調湿後の試料についても秤量した(M1)。これらの重量から、{(M1−M0)/M0}×100(%)を求めた。
【0031】
(ヘ) 寝心地および寝床内気候
試料敷布団について、1時間の乾燥後、28℃、75%RHの環境下に3時間放置し、その後パネラーが3時間使用して以下の評価を行った(n=5)。
1)むれ感:掛布団(綿100%タオルケット)を掛けて寝た状態で、被験者がむれ感を感じるまでの時間で判断した。
1時間以上:○、30分〜1時間:△、30分以下:×
2)床つき感:寝たときに「どすん」と底面に当たった感じの程度を主観申告で評価した。
感じない:◎、ほとんど感じない:○、やや感じる:△、感じる:×
3)ゆれ感:寝たときに体が揺動する感じの程度を主観申告で評価した。
感じない:◎、ほとんど感じない:○、やや感じる:△、感じる:×
4)寝床内気候:被験者の背中に取り付けた小型温湿度センサにより、寝床内温湿度を計測した。
(1時間時点)
【0032】
(実施例1)
ハード層としてポリエステル系熱可塑性樹脂からなる網状構造体(見掛け密度0.04g/cc、厚さ40mm、幅83cm、長さ191cm)を用いた。ソフト層は、吸湿ポリエステル短繊維を80%、レギュラーポリエステル短繊維を20%を使用した目付500g/m2 のシート状綿を用いた。
これらを木綿100%の側地を使用して敷布団に構成した。作製した布団を28℃×75%RHの環境下において被験者をソフト層が人体側に面するように寝かせて寝心地を評価した。結果は、床つき感、ゆれ感は感じられず、1時間以上経過してもむれ感を感じない敷寝具であるという回答であった。
【0033】
(実施例2)
実施例1と同じハード層を使用し、ソフト層には吸湿ポリエステル短繊維100%で目付250g/m2 のシート状綿を作製し、その上にレギュラーポリエステル短繊維100%で目付250g/m2 のシート状綿を積層したシート状綿を用いた。これらを木綿100%の側地を使用して敷布団に構成した。作製した布団を用いて実施例1と同様に被験者をソフト層が人体側に面するように寝かせて寝心地を評価した。結果は、床つき感、ゆれ感は感じられず、1時間以上経過してもむれ感を感じない敷寝具であるという回答であった。
【0034】
(実施例3)
実施例1と同じハード層を使用し、ソフト層には吸湿ポリエステル短繊維を50%、レギュラーポリエステル短繊維50%を混綿して目付500g/m2 のシート状綿を作製した。さらに、ハード層の下部にアクリレート系繊維からなる結露防止シートを設置した。これらを木綿100%の側地を使用して敷布団に構成した。作製した布団を用いて実施例1と同様に被験者をソフト層が人体側に面するように寝かせて寝心地を評価した。結果は、床つき感、ゆれ感は感じられず、1時間以上経過してもむれ感を感じない敷寝具であるという回答であった。
【0035】
(実施例4)
実施例1と同じハード層、ソフト層の構成の布団を用いて被験者をハード層が人体側に面するように寝かせて寝心地を評価した。結果は、ゆれ感は感じられなかったが、ハード層が人体側のため硬く感じられ、1時間以上経過するとむれ感を感じる敷寝具であるという回答であった。
【0036】
(比較例1)
ハード層としてポリウレタンフォーム(見掛け密度0.08g/cc、厚さ50mm、幅80cm、長さ190cm)を用いた。ソフト層は、実施例1と同じ構成である。これらを木を使用して敷布団に構成した。実施例1と同様の条件で被験者をソフト層が人体側に面するように寝かせて寝心地を評価した。結果は、ゆれ感はないものの、床つき感があり、30分〜1時間でむれ感を感じる敷寝具であるという回答であった。
【0037】
(比較例2)
実施例1と同じハード層を使用し、ソフト層には吸湿ポリエステル短繊維を50%、レギュラーポリエステル短繊維を50%を使用した目付830g/m2 のシート状綿を用いた。これらを木綿100%の側地を使用して敷布団に構成した。作製した布団を用いて実施例1と同様の条件で被験者をソフト層が人体側に面するように寝かせて寝心地を評価した。結果は、1時間以上経過してもむれ感を感じないものであったが、床つき感は無いが、ゆれ感がある敷寝具であるという回答であった。
【0038】
(比較例3)
実施例1と同じハード層を使用し、ソフト層には吸湿ポリエステル短繊維を3%、レギュラーポリエステル短繊維を97%使用した目付500g/m2 のシート状綿を用いた。これらを木綿100%の側地を使用して敷布団に構成した。作製した布団を用いて実施例1と同様の条件で被験者をソフト層が人体側に面するように寝かせて寝心地を評価した。結果は、床つき感を無くしたものであったが、むれ感を強く感じる敷寝具であるという回答であった。
【0039】
上記、各実施例,比較例におけるハード層、ソフト層の物性、および評価結果について表1に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
本発明によると暑熱環境下での使用において発生しやすい蓄熱や発汗による水分が敷寝具内に滞留するという欠点を改善した快適な敷寝具を提供することを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の敷寝具の一例の構造を示す断面図である。
【図2】 図1中のソフト層(1)の構造の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1:ソフト層、2:ハード層、3:側地、4:結露防止層、
5:レギュラーポリエステル層、 6:吸湿性ポリエステル層
Claims (4)
- ハード層及びソフト層からなる敷寝具であって、前記ハード層とソフト層の圧縮反発力が各々10kg以上と10kg未満であり、且つソフト層の20℃×65%RH下でのソフト層の水分率が4%以上、ハード層の水分率が1%未満であることを特徴とする敷寝具。
- ソフト層が人体側に面するように積層されてなることを特徴とする請求項1記載の敷寝具。
- ハード層が通気度40cc/cm2/秒以上の繊維集合体から構成されてなり、見掛け密度が0.005g/cc〜0.1g/ccであることを特徴とする請求項1〜2いずれかに記載の敷寝具。
- ソフト層が、吸湿性を有する繊維を5%以上含む繊維集合体から構成されてなる単層もしくは2層以上の構造体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の敷寝具。
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