JP4660866B2 - 易接着性ポリアミドフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生鮮食品、加工食品、医薬品、医療機器、電子部品等の包装用フィルムにおいて重要な特性とされる接着性、透明性、耐屈曲疲労性、さらには滑り性を兼ね備えた易接着性ポリアミドフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ポリアミド系樹脂フィルムは靱性や耐屈曲性等を含めた機械的特性、光学特性、熱的特性、ガスバリア性等に優れているため、包装用途を初めとして様々な用途に広く用いられている。そのうち、例えば包装袋として使用する際には、一般的には二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に接着改質層を設け、必要に応じて印刷や有機バリア層、無機あるいは金属蒸着層を施し、さらに接着剤層を設けた上へ、ドライラミネート法あるいは押出ラミネート法によりシーラント層を設ける等してポリアミドフィルムの積層体とし、この積層体を用いて袋を作成し、内容物を充填後開口部をヒートシールして、たとえば味噌や醤油等の調味料、スープやレトルト食品等の水分含有食品あるいは薬品等包装して一般消費者に提供している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記従来のポリアミドフィルムには、ポリアミド系樹脂自体の特性に由来する吸湿性が高いという難点があるため、高湿度環境下で使用すると吸湿して接触面積が増大することにより滑り性が低下し、加工時の取扱い作業性を著しく害するという問題点がある。さらには吸湿による積層体各層への水分の侵入により、層間の接着力が著しく低下し、包装袋として使用した場合、破袋の原因となる。例えばレトルト食品を沸水処理あるいは、レトルト処理する際は一層破袋しやすくなる。
【0004】
ところで、接着改質層材料として数多くの材料が提案されている。中でも、ポリエステルを中心とした比較的極性が高いフィルムに対しては、水溶性あるいは水分散性のポリエステル系樹脂あるいはアクリル系樹脂を用いることが提案されている(特開昭54−43017号公報、特公昭49−10243号公報、特開昭52−19786号公報、特開昭52−19787号公報等)。しかし、これらをポリアミドフィルムに応用した場合、上記ポリエステル系樹脂はフィルムを巻いてロールとしたとき、ブロッキングを起こしやすいという欠点があり、また上記アクリル系樹脂は接着性に劣るという欠点がある。そこで、これらの欠点を改善する目的で、上記ポリエステル系樹脂と上記アクリル系樹脂を混合して用いることが提案されている(特開昭58−124651号公報)が、欠点の改善は十分とは言い難い。
【0005】
更に、グラフト変性を中心とした種々の変性ポリエステルを使用することも提案されている。例えば、特開平2−3307号公報、特開平2−171243号公報、特開平2−310048号公報では、水溶性あるいは水分散できる親水基含有ポリエステル樹脂に不飽和結合含有化合物をグラフト化させた樹脂が、ポリエステルフィルムの接着改質層材料として好適であることが開示されている。しかし、この様に、ポリエステル樹脂中に予め共重合等で親水基を含有させた樹脂のグラフト変性では、高度の接着性、耐水性がない。
【0006】
また、特開平3−273015号公報、特公平3−67626号公報でも、ポリエステルのグラフト変性樹脂がポリエステルフィルムの接着改質層材料として有用であることが開示されている。しかし、これらの樹脂についても、ポリアミドフィルムで使用した場合、凝集力に乏しいため、乾燥状態での接着性は向上するものの湿潤下での接着性は乏しく、特に2次加工、3次加工と多加工になるにつれ、膜のはがれ、キズがつく等の問題があるのが現状である。
【0007】
本発明は、上記の欠点を解決しようとするものであり、その目的は、耐屈曲疲労性、透明性を損なうことなく、高い湿度下における滑り性および接着性に優れた易接着性ポリアミドフィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、低吸水性である特定のポリアミド系樹脂と、元々耐衝撃性、耐屈曲疲労性が比較的良好な特定の脂肪族ポリアミド樹脂を積層した基材フィルムを使用することで、耐屈曲疲労性を損なうことなく、透明性および高湿度下における滑り性を満足し、更には特定の組成物からなる接着改質層を形成することにより高い接着力を有する事を見い出し、本発明に至った。即ち、本発明は以下の通りである。
【0009】
(1) 脂肪族ポリアミド系樹脂(a)を主成分とするX層と、芳香族ポリアミド系樹脂(b)と脂肪族ポリアミド系樹脂(c)との共重合体および/または混合物を主成分とするY層とが、X/YまたはY/X/Yの層構成をなす基材フィルムの少なくとも片面に、疎水性ポリエステル樹脂に二重結合を有する酸無水物を含む少なくとも1種以上の重合性不飽和単量体がグラフトされた自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を主成分とする樹脂組成物からなる接着改質層が積層されてなることを特徴とする易接着性ポリアミドフィルム。
(2) 脂肪族ポリアミド系樹脂(a)が、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体およびナイロン6/12共重合体からなる群より選択される少なくとも1つである上記(1) 記載の易接着性ポリアミドフィルム。
(3) Y層中の芳香族ポリアミド系樹脂(b)成分が1モル%以上含有される上記(1) 記載の易接着性ポリアミドフィルム。
(4) 芳香族ポリアミド樹脂(b)が、テレフタル酸と炭素数6〜12の脂肪族ジアミンからなる重合体、m−キシリレンジアミンおよび/またはp−キシリレンジアミンと炭素数6〜12のα−脂肪族ジカルボン酸および/またはω−脂肪族ジカルボン酸とからなる重合体、およびテレフタル酸と炭素数6〜12の脂肪族ジアミンからなるポリアミドとイソフタル酸と炭素数6〜12の脂肪族ジアミンからなるポリアミドとの混合体および/または共重合体からなる群より選択される少なくとも1つである上記(1) 記載の易接着性ポリアミドフィルム。
(5) 脂肪族ポリアミド系樹脂(c)が、ナイロン6およびナイロン66からなる群より選択される少なくとも1つである上記(1) 記載の易接着性ポリアミドフィルム。(6) 重合性不飽和単量体が、マレイン酸無水物とスチレンである上記(1) 記載の易接着性ポリアミドフィルム。
(7) 接着改質層が、自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を含有する塗布液を、未延伸または一軸延伸された基材フィルムに塗布、乾燥した後、当該フィルムを一軸またはそれ以上で延伸し、熱固定することにより形成されてなる層である上記(1) 記載の易接着性ポリアミドフィルム。
(8) 基材フィルムが、耐屈曲疲労性改良剤を含有する上記(1) 記載の易接着性ポリアミドフィルム。
(9) 耐屈曲疲労性改良剤の含有量が、基材フィルム中の全ポリアミド樹脂100重量部に対し、0.2〜10重量部である上記(8) 記載の易接着性ポリアミドフィルム。
(10)耐屈曲疲労性改良剤が、ブロックポリエステルアミド、ブロックポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、変性エチレンプロピレンゴムおよびエチレン/アクリレート共重合体からなる群より選択される少なくとも1つである上記(8) 記載の易接着性ポリアミドフィルム。
(11)基材フィルムが、無機および/または有機微粒子を含有する上記(1) 記載の易接着性ポリアミドフィルム。
(12)無機および/または有機微粒子の平均粒子径が、0.5〜5.0μmである上記(11)記載の易接着性ポリアミドフィルム。
(13)無機および/または有機微粒子の合計の含有量が、基材フィルム中の全ポリアミド樹脂100重量部に対し、0.05〜1.0重量部である上記(11)記載の易接着性ポリアミドフィルム。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、特定の基材フィルムの少なくとも片面に、特定の組成からなる接着改質層が積層されてなる。
【0011】
(基材フィルム)
本発明においては、基材フィルムは、脂肪族ポリアミド系樹脂(a)を主成分とするX層と、芳香族ポリアミド系樹脂(b)と脂肪族ポリアミド系樹脂(c)との共重合体および/または混合物を主成分とするY層とが、X/YまたはY/X/Yの層構成をなすフィルムである。
【0012】
脂肪族ポリアミド系樹脂(a)は耐衝撃性、耐屈曲疲労性が比較的良好な樹脂であり、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体が好適に使用される。これらは単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0013】
芳香族ポリアミド系樹脂(b)は低吸水性の樹脂であり、テレフタル酸と炭素数6〜12の脂肪族ジアミンからなる重合体、m−キシリレンジアミンおよび/またはp−キシリレンジアミンと炭素数6〜12のα−脂肪族ジカルボン酸および/またはω−脂肪族ジカルボン酸とからなる重合体、およびテレフタル酸と炭素数6〜12の脂肪族ジアミンからなるポリアミドとイソフタル酸と炭素数6〜12の脂肪族ジアミンからなるポリアミドとの混合体および/または共重合体が好適に使用される。これらは単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0014】
脂肪族ポリアミド系樹脂(c)は耐衝撃性、耐屈曲疲労性が比較的良好な樹脂であり、ナイロン6、ナイロン66が好適に使用される。これらは単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0015】
Y層中、芳香族ポリアミド系樹脂(b)成分は、1モル%以上含有されていることが好ましい。この含有量が1モル%未満であると、滑り性が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0016】
X層、Y層が上記の組成であり、基材フィルムがX/YまたはY/X/Yの層構成であると、滑り性が向上し、特に、従来のポリアミドフィルムに由来する吸水性を抑えるので、高湿度下における滑り性も向上する。また、脂肪族ポリアミド樹脂をX層およびY層の成分として使用するので、易接着性ポリアミドフィルムの落下衝撃や屈曲に対する強度が大きい。
【0017】
また、本発明においては、上記基材フィルムは耐屈曲疲労性をさらに向上させる点から、耐屈曲疲労性改良剤を含有することが好ましく、例えば、ブロックポリエステルアミド、ブロックポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、変性エチレンプロピレンゴム、変性アクリル等のエラストマーやエチレン/アクリレート共重合体が好適に使用される。耐屈曲疲労性改良剤は、X層、Y層のいずれに含有されていてもよく、また両方に含有されていてもよい。またこれらは単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0018】
上記の耐屈曲疲労性改良剤の含有量は、基材フィルム中の全ポリアミド樹脂合計100重量部に対して、好ましくは0.2〜10重量部、当該含有量が0.2重量部未満であると、耐屈曲疲労性改良剤の添加による効果が期待できず、逆に10重量部を超えると、透明性が低下するおそれがあり好ましくない。
【0019】
また、本発明においては、フィルム同士のブロッキング防止や滑り性向上のため、上記基材フィルムは無機微粒子や有機微粒子等の粒子系滑剤を含有することが好ましい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等が挙げられ、有機微粒子としては、例えば、架橋アクリル粒子、架橋ポリスチレン粒子等が挙げられる。これらの微粒子は単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。また、X層、Y層のどちらか片方に添加しても良いし、両方ともに添加しても良い。透明性と易滑性のバランスをとる上で、無機微粒子と有機微粒子を併用することは好ましい。
【0020】
上記の無機微粒子および/または有機微粒子は、基材フィルム中の全ポリアミド樹脂合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜1.0重量部、より好ましくは0.15〜0.7重量部含有される。この含有量が0.05重量部未満ではフィルムの易滑性が不十分となり、1.0重量部を超えると基材フィルムの透明性が劣る傾向にある。
【0021】
上記の無機微粒子および/または有機微粒子は、好ましくは0.5〜5.0μm、より好ましくは1.0〜4.0μmの平均粒子径のものを用いる。平均粒子径が0.5μm未満では基材フィルムに充分な易滑性が付与できず、逆に5.0μmを超えると基材フィルムの透明性が劣ったり半調印刷性が低下するので好ましくない。
【0022】
上記の無機微粒子や有機微粒子に加えて、有機系潤滑剤を併用することが好ましい。有機系潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、エルカ酸アマイド、N−ステアリルステアリン酸アマイド、エチレンビスべへン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の高級脂肪酸アマイドや脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。また、X層、Y層のどちらか片方に添加しても良いし、両方ともに添加しても良い。
【0023】
本発明においては、目的、性能を損なわない限り、基材フィルムに各種添加剤をさらに配合してもよく、例えば、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、滑剤、有機系潤滑剤、顔料、帯電防止剤、界面活性剤等を配合することができる。
【0024】
当該基材フィルムは公知の製造方法により製造することができる。即ち、各層を構成する樹脂組成物を別々の押出機を用いて溶融し、共押出により製造する方法、各層を構成する樹脂組成物をラミネートにより積層する方法、およびこれらを組み合わせた方法等を採用することができる。さらに、当該基材ポリアミドフィルムは、未延伸のままあるいは延伸された状態のどちらでも使用することができるが、フィルムの加工適性を向上させる点で、一軸または二軸方向に延伸して使用することが望ましい。延伸方法としては、テンター式遂次二軸延伸方法、テンター式同時二軸延伸方法、チューブラー法等の公知の方法を用いることができる。基材フィルムにおけるX層とY層の厚み比率は特に規定しない。
【0025】
(接着改質層)
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、上記の基材フィルムの少なくとも片面に、接着改質層が積層されてなるものであり、この接着改質層は疎水性ポリエステル樹脂に少なくとも1種以上の重合性不飽和単量体がグラフトされた自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を主成分とする樹脂組成物からなる。なお、本発明において「グラフト重合」とは、幹ポリマー主鎖に当該主鎖とは異なる重合体からなる枝ポリマーを導入することである。
【0026】
疎水性ポリエステル
本発明で使用される疎水性ポリエステル樹脂とは、本来それ自身で水に分散または溶解しない本質的に水不溶性であるポリエステル樹脂である。水に分散または溶解する疎水性ポリエステル樹脂をグラフト重合に使用すると、本発明の易接着性ポリアミドフィルムの接着性、耐水性が悪くなる。
【0027】
疎水性ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸60〜99.5モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜40モル%、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸0.5〜10モル%であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸が60モル%未満である場合や脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸が40モル%を超える場合は、本発明の易接着性ポリアミドフィルムの接着強度が低下するおそれがある。
【0028】
また、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸が0.5モル%未満の場合、後にグラフト重合される重合性不飽和単量体の効率的なグラフト重合が行われにくくなり、逆に10モル%を超える場合は、グラフト重合反応の後期に粘度が上昇しすぎて、反応の均一な進行を妨げるので好ましくない。より好ましくは、芳香族ジカルボン酸70〜98モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜30モル%、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸2〜7モル%である。
【0029】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。
5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の親水性含有ジカルボン酸を使用すると接着改質層の耐水性が低下するので用いない方が好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸等が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物等が挙げられる。
【0030】
重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸;2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられ、これらの中でも、重合性の点から、フマル酸、マレイン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸が好ましい。
【0031】
疎水性ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコールが挙げられる。炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等が挙げられ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0032】
エーテル結合含有グリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにはビスフェノール類の二つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるグリコール類〔例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等〕等が挙げられる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要により使用し得る。
【0033】
疎水性ポリエステル樹脂は、0〜5モル%の3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを共重合成分とすることもできる。3官能以上のポリカルボン酸としては、例えば、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等が挙げられる。3官能以上のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。3官能以上のポリカルボン酸やポリオールは、それぞれ全ジカルボン酸成分あるいは全グリコール成分中、好ましくは0〜5モル%、より好ましくは0〜3モル%の範囲で共重合されるが、5モル%を超えると重合時のゲル化が起こりやすく、好ましくない。
【0034】
また、疎水性ポリエステル樹脂の分子量は、重量平均分子量で5000〜50000の範囲が好ましい。当該分子量が5000未満の場合、本発明の易接着性ポリアミドフィルムの接着強度が低下するおそれがあり、逆に50000を超えると重合時のゲル化等の問題が起きるおそれがある。
【0035】
重合性不飽和単量体
疎水性ポリエステル樹脂にグラフト重合される重合性不飽和単量体としては、例えば、フマル酸;フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のフマル酸のモノエステルまたはジエステル類;マレイン酸とその無水物;マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸のモノエステルまたはジエステル類;イタコン酸とその無水物;イタコン酸のモノエステルまたはジエステル類;フェニルマレイミド等のマレイミド類;スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体や、アクリル重合性単量体として、例えば、アルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド等のアミド基含有(メタ)アクリル単量体;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル単量体;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム酸、アンモニウム塩)等のカルボキシル基含有(メタ)アクリル単量体等が挙げられる。上記単量体は1種もしくは2種以上を用いて共重合させることができる。本発明においては、重合性不飽和単量体として少なくとも二重結合を有する酸無水物を使用することが必要であり、これにより、接着性に優れた易接着性ポリアミドフィルムとなる。このような二重結合を有する酸無水物として、上記の例示の中でもマレイン酸無水物が好適である。また、重合過程におけるゲル化防止の点で、スチレンとマレイン酸無水物を併用することが特に好ましい。
【0036】
グラフト共重合体
グラフト共重合体における疎水性ポリエステル樹脂と重合性不飽和単量体の重量比率、即ち疎水性ポリエステル樹脂/重合性不飽和単量体は、好ましくは40/60〜95/5、より好ましくは55/45〜93/7、特に好ましくは60/40〜90/10である。疎水性ポリエステル樹脂の重量比率が40重量%未満の場合、疎水性ポリエステル樹脂の優れた接着性を発揮することができないおそれがあり、逆に95重量%を超えると、疎水性ポリエステル樹脂の欠点であるブロッキングが起こりやすくなる。
【0037】
接着改質層に用いられるグラフト共重合体は、一般には、疎水性ポリエステル樹脂を有機溶剤中に溶解させた状態で、重合開始剤および重合性不飽和単量体を添加して反応させることにより得られる。グラフト重合反応終了後の反応生成物は、所望のグラフト共重合体の他に、グラフト重合を受けなかった疎水性ポリエステル樹脂および疎水性ポリエステル樹脂にグラフト重合しなかった重合性不飽和単量体からなる重合体も含有しているが、本発明において、グラフト共重合体はこれらすべてを含む。
【0038】
本発明において、グラフト共重合体の酸価は、600当量/106 g以上、特に1200当量/106 g以上であることが好ましい。当該酸価が600当量/106 g未満の場合、本発明の易接着性ポリアミドフィルムの接着性が不十分となるおそれがある。
【0039】
上記のグラフト共重合体は、有機溶媒の溶液または分散液あるいは水系溶媒の溶液または分散液の形態になる。特に、水系溶媒の分散液、即ち水分散樹脂の形態が作業環境、塗布性の点で好ましい。このような水分散樹脂を得るには、通常、有機溶媒中で、前記疎水性ポリエステル樹脂に、親水性重合性不飽和単量体を含む重合性不飽和単量体をグラフト重合し、次いで、水添加、有機溶媒留去により達成される。
【0040】
上記の親水性重合性不飽和単量体とは、親水基を有するか、親水基に変化し得る基を有する重合性不飽和単量体をいう。親水基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩基等が挙げられ、親水基に変化し得る基としては、例えば、酸無水物基、グリシジル基、クロル基等を挙げることができる。これらの中で、水分散性の点およびグラフト共重合体の酸価が高くなる点から、カルボキシル基を有するか、カルボキシル基に変化し得る基(例えば酸無水物基)を有する重合性不飽和単量体を使用することが好ましい。このような親水性重合性不飽和単量体は、前述の重合性不飽和単量体として例示されたもののうち、カルボキシル基、酸無水物基、水酸基、アミノ基等を有する単量体が挙げられ、中でも酸無水物基を有する単量体、特にマレイン酸無水物が好ましい。
【0041】
水分散化
グラフト共重合体を水分散樹脂とする場合、グラフト共重合体中の枝ポリマーである重合性不飽和単量体の重合体成分の重量平均分子量は500〜50000であるのが好ましい。当該重合体成分の重量平均分子量を500以下にコントロールすることは一般に困難であり、グラフト効率が低下し、疎水性ポリエステル樹脂への親水基の付与が十分に行なわれない傾向がある。また、グラフト共重合体中の重合性不飽和単量体の重合体成分は分散粒子の水和層を形成するが、十分な厚みの水和層をもたせ、安定な分散体を得るためには当該重合体成分の重量平均分子量は500以上であることが望ましい。また当該重合体成分の重量平均分子量の上限は溶液重合における重合性の点で50000が好ましい。この範囲内での分子量のコントロールは、重合開始剤の使用量、単量体滴下時間、重合時間、反応溶媒、単量体組成あるいは必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行なうことができる。
【0042】
上記の水分散樹脂は重合方法により多様な粒子径の水分散樹脂が得られるが、レーザー光散乱法により測定される平均粒子径が10〜500nmであることが適当であり、分散安定性の点で400nm以下が好ましく、より好ましくは300nm以下である。500nmを超えると造膜性が低下して被覆膜が不均一となって、形成された接着改質層表面が光沢の低下により透明性が低下し、逆に10nm未満では接着改質層の耐水性が劣るおそれがあり、好ましくない。
【0043】
水分散グラフト共重合を得るには、グラフト重合は、沸点が50〜250℃の水性有機溶媒を反応溶媒とすることが好ましい。ここで水性有機溶媒とは20℃における水に対する溶解性が少なくとも10g/l以上、望ましくは20g/l以上であるものをいう。沸点が250℃を超えるものは、蒸発速度が遅く塗膜の高温焼付によっても充分に取り除くことができず、逆に沸点が50℃未満では、それを溶媒としてグラフト重合すると、50℃未満の温度でラジカルに解裂する開始剤を用いる必要があるので取扱上の危険が増大し、好ましくない。このような水性有機溶媒として以下の第1群の水性有機溶媒および/または第2群の水性有機溶媒が挙げられる。
【0044】
疎水性ポリエステル樹脂をよく溶解し、かつ親水性重合性不飽和単量体を含む重合性不飽和単量体およびそれと疎水性ポリエステル樹脂とのグラフト共重合体を比較的良く溶解する溶媒である第1群の水性有機溶媒としては、エステル類例えば酢酸エチル;ケトン類例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン;環状エーテル類例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン;グリコールエーテル類例えばエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル;カルビトール類例えばメチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール;グリコール類若しくはグリコールエーテルの低級エステル類例えばエチレングリコールジアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート;ケトンアルコール類例えばダイアセトンアルコール、更にはN−置換アミド類例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0045】
疎水性ポリエステル樹脂をほとんど溶解しないが、親水性重合性不飽和単量体を含む重合性不飽和単量体およびそれと疎水性ポリエステル樹脂とのグラフト共重合体を比較的よく溶解する溶媒である第2群の水性有機溶媒として、水、低級アルコール類、低級カルボン酸類、低級アミン類等が挙げられるが、特に好ましいものとしては炭素数1〜4のアルコール類およびグリコール類である。
【0046】
グラフト重合を単一溶媒で行なう場合は、第1群の水性有機溶媒からただ一種を選んで行なうことができる。混合溶媒で行なう場合は第1群の水性有機溶媒からのみ複数種選ぶ場合と、第1群の水性有機溶媒から少なくとも一種を選びそれに第2群の水性有機溶媒から少なくとも一種を加える場合がある。グラフト重合反応の進行挙動、グラフト共重合体およびそれから導かれる水分散体の外観、性状等を考慮すると、第1群および第2群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒を使用するのがよい。
【0047】
疎水性ポリエステル分子鎖は、第1群の溶媒中では広がりの大きい鎖ののびた状態にあり、第1群/第2群の混合溶媒中では広がりの小さい糸まり状に絡まった状態にあることが、これら溶液中の疎水性ポリエステル樹脂の粘度測定により確認された。疎水性ポリエステル樹脂の溶解状態を調整し分子間架橋を起こりにくくすることがゲル化防止に有効である。効率の高いグラフト重合とゲル化抑制の両立は後者の混合溶媒系において達成される。第1群/第2群の混合溶媒の重量比率は好ましくは95/5〜10/90、より好ましくは90/10〜20/80、特に好ましくは85/15〜30/70の範囲である。最適の混合比率は使用する疎水性ポリエステル樹脂の溶解性等に応じて決定される。
【0048】
上記のグラフト重合には、重合開始剤、例えば、公知の有機過酸化物類や有機アゾ化合物類を用い得る。有機過酸化物として、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート等が挙げられ、有機アゾ化合物として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。グラフト重合を行うための重合開始剤の使用量は、重合性不飽和単量体に対して、少なくとも0.2重量%以上、好ましくは0.5重量%以上であることが望ましい。
【0049】
重合開始剤の他に、枝ポリマーの鎖長を調節するための連鎖移動剤、例えば、オクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール等を必要に応じて用い得る。この場合、重合性不飽和単量体に対して0〜5重量%の範囲で添加されるのが望ましい。
【0050】
本発明においては、グラフト共重合体は塩基性化合物で中和することが好ましく、中和することによって容易に水分散化することができる。塩基性化合物としては塗膜形成時あるいは硬化剤配合による焼付硬化時に揮散する化合物が望ましく、アンモニアや、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミンが挙げられる。塩基性化合物は、グラフト共重合体中のカルボキシル基含有量に応じて、部分中和もしくは完全中和によって水分散体のpH値が5.0〜9.0の範囲となるように使用するのが望ましい。沸点が100℃以下の塩基性化合物を使用すると、乾燥後の塗膜中の残留塩基性化合物も少なく、本発明の易接着性ポリアミドフィルムの接着性、耐水性、耐熱水接着性が優れたものとなる。
【0051】
本発明において、疎水性ポリエステル樹脂に重合性不飽和単量体をグラフト重合させたグラフト共重合体は自己架橋性を有する。常温では架橋しないが、塗布後乾燥時の熱で、1)グラフト共重合体中に存在するカルボキシル基の脱水反応、または2)熱ラジカルによる水素引き抜き反応等の分子間反応、を行い架橋剤なしで架橋する。これにより初めて、本発明の易接着性ポリアミドフィルムの接着性、耐水性を発現できる。塗膜の架橋性については、様々の方法で評価できるが、グラフト共重合体を溶解するクロロホルム中での不溶分率で調べることができる。80℃以下で乾燥し、120℃で5分間熱処理して得られる塗膜の不溶分率が、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。塗膜の不溶分率が50%未満の場合は、接着性、耐水性が十分でないばかりでなく、ブロッキングも起こしてしまう。
【0052】
上記グラフト共重合体は、そのままで接着改質層を形成し得るが、さらに架橋剤(硬化用樹脂)を配合して硬化を行うことにより、接着改質層に高度の耐水性を付与し得る。
【0053】
架橋剤としては、例えば、アルキル化フェノール類、クレゾール類等とホルムアルデヒドとの縮合物であるフェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素、メラミン、ベンゾグアナミン等とホルムアルデヒドとの付加物;この付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物等のアミノ樹脂;多官能性エポキシ化合物;多官能性イソシアネート化合物;ブロックイソシアネート化合物:多官能性アジリジン化合物;オキサゾリン化合物等が挙げられる。
【0054】
フェノールホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、アルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチル)フェノール、p−t−アミルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンフェノール、p−t−ブチルフェノール、o−、m−、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4’−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニルo−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノール等のフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物が挙げられる。
【0055】
アミノ樹脂としては、例えば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン等が挙げられ、好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、メチロール化ベンゾグアナミン等が挙げられる。
【0056】
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0057】
多官能性イソシアネート化合物としては、例えば、低分子または高分子の芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのイソシアネート化合物の3量体がある。さらに、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物、またはポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類等の高分子活性水素化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0058】
ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて調製し得る。イソシアネートブロック化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類;チオフェノール、メチルチオフェノール等のチオフェノール類;アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のハロゲン置換アルコール類;t−ブタノール、t−ペンタノール等の第3級アルコール類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタム等のラクタム類;芳香族アミン類;イミド類;アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステル等の活性メチレン化合物;メルカプタン類;イミン類;尿素類;ジアリール化合物類;重亜硫酸ソーダ等が挙げられる。
【0059】
これらの架橋剤は、それぞれ単独または2種以上混合して用い得る。架橋剤の配合量としては、グラフト共重合体100重量部に対して、5重量部〜40重量部が好ましい。架橋剤の配合方法としては、(1)架橋剤が水溶性である場合、直接グラフト共重合体の水系溶媒溶液または分散液中に溶解または分散させる方法、または(2)架橋剤が油溶性である場合、グラフト化反応終了後、反応液に添加する方法がある。これらの方法は、架橋剤の種類、性状により適宜選択し得る。さらに架橋剤には、硬化剤あるいは促進剤を併用し得る。
【0060】
上記グラフト共重合体はそのままでも接着改質層を形成し得るが、他の目的から、汎用のポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル樹脂、それらの共重合体、各種水溶性樹脂等や各種機能性樹脂(例えばポリアニリンやポリピロール等の導電性樹脂や抗菌性樹脂、紫外線吸収性樹脂、ガスバリア性樹脂)を配合して接着改質層を形成してもかまわない。
【0061】
接着改質層に、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、各種界面活性剤、帯電防止剤、無機滑剤、有機滑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させることもできる。
【0062】
接着改質層の形成は、グラフト共重合体の有機溶媒溶液または分散液あるいは水系溶媒の溶液または分散液、好ましくは水系溶媒分散液を、好ましくは未延伸または一軸延伸された基材フィルムに塗布、乾燥することにより行われる。上記溶液または分散液中のグラフト共重合体の固形分含有量は、通常1重量%〜50重量%、好ましくは3重量%〜30重量%である。
【0063】
塗布方法としては、グラビア方式、リバース方式、ダイ方式、バー方式、ディップ方式等の公知の方法が採用される。塗布液の塗布量は、固形分として0.005〜10g/m2 、好ましくは0.02〜0.5g/m2 である。塗布量が0.005g/m2 未満になると、本発明の易接着性ポリアミドフィルムの十分な接着強度が得られない。10g/m2 を超えるとブロッキングが発生し、実用上問題がある。
【0064】
塗布後の乾燥条件は特に規制は無いが、グラフト共重合体のもつ自己架橋性を発現するためには、基材フィルムおよびグラフト共重合体に熱劣化が起こらない範囲内で、熱量を多くする条件が好ましい。具体的には80℃〜250℃、さらに好ましくは150℃〜220℃である。ただし乾燥時間を長くすることにより、比較的低い温度でも十分な自己架橋性を発現するため上記の条件に限らない。
【0065】
未延伸あるいは一軸延伸された基材フィルムに上記塗布液を塗布、乾燥後、当該フィルムを一軸またはそれ以上で延伸する場合、塗布後の乾燥温度はその後の延伸に影響しない範囲の条件で乾燥する必要があり、基材フィルムの場合、塗膜の水分率を2%以下にして延伸し、その後200℃以上で熱固定を行うことにより塗膜が強固になり、接着改質層と基材フィルムとの接着性が飛躍的に向上する。水分率が2%を超えると乾燥温度にもよるが、横延伸工程中に結晶化が起こり易くなり、平面性の悪化や延伸性が損なわれる場合がある。
【0066】
二軸延伸された基材フィルムに上記塗布液を塗布する場合、基材フィルムと接着改質層との接着性をさらに良くするため、接着改質層の形成前に基材フィルムにコロナ処理、火炎処理、電子線照射等による表面処理をしてもよい。
【0067】
接着改質層は各種材料と良好な接着性を有するが、接着改質層上に層形成する際には、さらに接着性をよくするために、予め当該接着改質層にさらにコロナ処理、火炎処理、電子線照射等による表面処理をしても良い。
【0068】
本発明の易接着性ポリアミドフィルムを包装材として使用する場合には、接着改質層上に熱接着性を与える為のポリオレフィン系樹脂よりなるシーラント層が形成される。当該ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、LDPE、LLDPE、CPP等が例示される。当該シーラント層は必ずしも単層である必要はなく複層であってもよく、複層構造とするときの各層を構成する樹脂も、同種の樹脂の組合せはもとより、異種ポリマーの共重合物や変性物、ブレンド物等を積層したものであってもよい。例えば、ラミネート性やシーラント性を高めるため、ベースとなる熱可塑性ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)や融点よりも低いポリマーを配合したり、耐熱性を付与するため逆にTgや融点の高いポリマーを配合することも可能である。
【0069】
シーラント層には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、帯電防止剤、抗菌剤、滑剤、耐ブロッキング剤、他の樹脂等をブレンドすることも可能である。
【0070】
当該シーラント層は、接着剤を用いたドライラミネート法やウェットラミネート法、更には溶融押出ラミネート法や共押出ラミネート法等によって、接着改質層の上に形成される。
【0071】
上記包装材料をボイル処理やレトルト処理等の加熱処理を施す場合には、接着改質層とシーラント層の間には、例えば無機蒸着層が形成される。当該無機蒸着層は、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムやこれらの混合物等を含有するものである。酸化アルミニウムと酸化珪素の混合物を含有する無機蒸着層は、透明で、ボイル処理やレトルト処理あるいはゲルボ試験(耐屈曲性試験)にも耐え得る優れたガスバリア性を付与できることから特に好ましい。この場合、無機蒸着層中の酸化アルミニウムの含有率は、好ましくは5重量%以上45重量%以下、より好ましくは10重量%以上35重量%以下、特に好ましくは15重量%以上25重量%以下である。
【0072】
上記無機蒸着層の膜厚は、通常10〜5000Å、好ましくは50〜2000Åである。膜厚が10Å未満では満足のいくガスバリア性が得られ難く、また5000Åを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点で却って不利となる。
【0073】
無機蒸着層の作製には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、あるいはCVD等の化学蒸着法等が適宜用いられる。例えば真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiO2 とAl2 O3 の混合物、あるいはSiO2 とAlの混合物等が用いられる。加熱には、抵抗加熱、誘導加熱、電子線加熱等を採用することができ、また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。更に、基材ポリアミドフィルムにバイアスを印加したり、加熱したりあるいは冷却する等、成膜条件も任意に変更することができる。上記蒸着材料、反応ガス、基板バイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0074】
かくして得られる本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、味噌、漬物、惣菜、ベビーフード、佃煮、こんにゃく、ちくわ、蒲鉾、水産加工品、ミートボール、ハンバーグ、ジンギスカン、ハム、ソーセージ、その他の畜肉加工品、茶、コーヒー、紅茶、鰹節、昆布、ポテトチップス、バターピーナッツ等の油菓子、米菓、ビスケット、クッキー、ケーキ、饅頭、カステラ、チーズ、バター、切り餅、スープ、ソース、ラーメン、わさび等の食品や、練り歯磨き等の包装用材料として有効に利用することができ、ペットフード、農薬、肥料、輸液パック、あるいは半導体や精密材料の包装用材料や、さらには医療、電子、化学、機械等の産業材料の包装用材料にも有効に活用することができる。
【0075】
また包装材料の形態にも特に制限がなく、袋、フタ材、カップ、チューブ、スタンディングパック等に幅広く適用できる。
【0076】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書中の特性値の測定は下記の方法に従った。
【0077】
1.接着性
易接着性ポリアミドフィルムの接着改質層(接着改質層の表面に無機蒸着層を設けた場合も含む)の表面にシーラント層を設けた積層フィルムについて、東洋測器社製「テンシロンUTM2」を用いて、予め接着改質層とシーラント層との界面に剥離部を設け、テンシロンのチャックに固定した。この界面に水を付着させながら90度剥離を行い、接着改質層とシーラント層間のS−Sカーブから接着性を評価した(単位はg/15mm)。200g/15mm以上であれば接着性は良好であると判断した。
【0078】
2.透明性
易接着性ポリアミドフィルムについて、JIS−K6714に準拠して、東洋精機製作所へイズテスターにてへイズ値を測定した。へイズ値が、5.0%以下のものは透明性良好と評価した。
【0079】
3.動摩擦係数
易接着性ポリアミドフィルムについて、接着改質層形成面と接着改質層非形成面との間の動摩擦係数をASTM−D−1894法に準じて、50%RHまたは65%RHの湿度雰囲気下で測定した。湿度50%RH雰囲気下での動摩擦係数(A)が1.0以下のフィルムが滑り性良好と評価できる。また、高湿度下での滑り性は、湿度65%RH雰囲気下での動摩擦係数(B)と湿度50%RH雰囲気下で動摩擦係数(A)との比ができるだけ小さい方が良好と判断でき、比(B)/(A)が1.5以下のものが優れているとした。
【0080】
4.耐屈曲疲労試験
易接着性ポリアミドフィルムについて、耐屈曲疲労試験を理学工業社製のゲルボフレックステスターを用いて以下の方法により評価した。直径3.5インチの固定ヘッド側に、他の端を可動ヘッド側に固定し、初期の把持間隔を7インチとした。ストロークの最初の3.5インチで440度のひねりを与え、その後2.5インチは直線水平運動で全ストロークを終えるような屈曲疲労を40回/分の速さで1000回行い、フィルムに発生したピンホール個数を数えた。なお、測定は25℃の環境下で行い、フィルムに発生する穴の個数が20個/7インチ四方以下を良品とした。
【0081】
(疎水性ポリエステル樹脂A−1の調製)
攪拌機、温度計および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート345重量部、1,4−ブタンジオール211重量部、エチレングリコール270重量部およびテトラ−n−ブチルチタネート0.5重量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、フマル酸14重量部およびセバシン酸160重量部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温しエステル化反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、0.22mmHgの減圧下で1時間30分反応させ、疎水性ポリエステル樹脂(A−1)を得た。得られたポリエステルは、淡黄色透明であった。
【0082】
NMRで測定した重量平均分子量は20000であり、組成は以下のようであった(単位モル%)。
テレフタル酸:70
セバシン酸:26
フマル酸:4
エチレングリコール:50
1,4−ブタンジオール:50
【0083】
(グラフト共重合体B−1および塗布液の調製)
攪拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に疎水性ポリエステル樹脂(A−1)75重量部、メチルエチルケトン56重量部およびイソプロピルアルコール19重量部を入れ、65℃で加熱、攪拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、無水マレイン酸15重量部をポリエステル溶液に添加した。次いで、スチレン10重量部、およびアゾビスジメチルバレロニトリル1.5重量部を12重量部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1ml/minでポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間攪拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノール5重量部を添加した。次いで、水300重量部とトリエチルアミン15重量部を反応溶液に加え、1時間攪拌した。その後、反応器内温を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のアンモニアを蒸留により留去し、水分散グラフト共重合体(B−1)を得た。当該水分散グラフト共重合体(B−1)は淡黄色透明であった。当該水分散グラフト共重合体(B−1)を、固形分濃度10%になるように水:イソプロピルアルコール=9:1(重量比)で希釈して塗布液を調製した。
【0084】
参考例1
X層として、94.4重量部のナイロン6、ポリラウリンラクタム/ポリエーテル共重合体(ダイセルヒュルス社製、ダイアミド、耐屈曲疲労改良剤)5重量部、平均粒径1.6μmの多孔質シリカ0.4重量部およびエチレンビスステアリン酸アマイド0.2重量部からなる樹脂組成物、Y層としてナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比50/50モル比)2重量部と98重量部のナイロン6からなる樹脂組成物を使用し、Y層/X層/Y層の層構成で、厚み比率をY層:X層:Y層=1.5:7.0:1.5で溶融共押出し積層して、20℃の回転ドラム上で冷却して厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを50℃で3.0倍に縦延伸した。次いで上記の水分散グラフト共重合体(B−1)含有塗布液をダイコーター方式で塗布し、70℃の熱風で乾燥し、次いで125℃で横方向に4.0倍延伸し、215℃で熱固定を行い、厚み15μmの2軸延伸コーティングポリアミドフィルムを得た。最終的な水分散グラフト共重合体(B−1)含有塗布液の塗布量は0.1g/m2であった。
【0085】
参考例2
X層として94.4重量部のナイロン6、ポリラウリンラクタム/ポリエーテル共重合体(ダイセルヒュルス社製、ダイアミド)5重量部、平均粒径1.6μmの多孔質シリカ0.4重量部およびエチレンビスステアリン酸アマイド0.2重量部からなる樹脂組成物、Y層としてナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比50/50モル比)100重量部からなる樹脂組成物を使用し、Y層/X層/Y層の層構成で、厚み比率をY層:X層:Y層=1.5:7.0:1.5で溶融共押出し積層して、40℃の回転ドラム上で冷却して厚さ180μmの未延伸ポリアミドフィルムを得た。この未延伸フィルムを70℃で3.0倍に縦延伸した。次いで上記の水分散グラフト共重合体(B−1)含有塗布液をダイコーター方式で塗布し、70℃の熱風で乾燥し、次いで125℃で横方向に4.0倍延伸し、215℃で熱固定を行い厚み15μmの2軸延伸コーティングポリアミドフィルムを得た。最終的な水分散グラフト共重合体(B−1)含有塗布液の塗布量は0.1g/m2であった。
【0086】
参考例3
参考例1において、Y層としてナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比50/50モル比)2重量部、ポリラウリンラクタム/ポリエーテル共重合体(ダイセルヒュルス社製、ダイアミド)5重量部と93重量部のナイロン6からなる樹脂組成物を使用したこと以外は、参考例1と全く同様に行ない、2軸延伸コーティングポリアミドフィルムを得た。
【0087】
参考例4
参考例2において、Y層としてナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比50/50モル比)95重量部、ポリラウリンラクタム/ポリエーテル共重合体(ダイセルヒュルス社製、ダイアミド)5重量部からなる樹脂組成物を使用したこと以外は、参考例2と全く同様に行ない、2軸延伸コーティングポリアミドフィルムを得た。
【0088】
実施例1
参考例1において、基材フィルムの層構成をX層/Y層、厚み比をX層:Y層=7:3とし、Y層上に水分散グラフト共重合体(B−1)含有塗布液をダイコーター方式で塗布したこと以外は、参考例1と全く同様に行ない、2軸延伸コーティングポリアミドフィルムを得た。
【0089】
実施例2
参考例2において、基材フィルムの層構成をX層/Y層、厚み比をX層:Y層=7:3とし、Y層上に水分散グラフト共重合体(B−1)含有塗布液をダイコーター方式で塗布したこと以外は、参考例2と全く同様に行ない、2軸延伸コーティングポリアミドフィルムを得た。
【0090】
(グラフト共重合体B−2および塗布液の調製)
攪拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に疎水性ポリエステル樹脂(A−1)75重量部、メチルエチルケトン56重量部およびイソプロピルアルコール19重量部を入れ、65℃で加熱、攪拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、メタクリル酸17.5重量部とアクリル酸エチル7.5重量部の混合物、およびアゾビスジメチルバレロニトリル1.2重量部を25重量部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.2ml/minでポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間攪拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、水300重量部とトリエチルアミン25重量部を反応溶液に加え、1時間攪拌した。その後、反応器内温を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、水分散グラフト共重合体(B−2)を得た。当該水分散グラフト共重合体(B−2)は淡黄色透明であった。当該水分散グラフト共重合体(B−2)を、固形分濃度10%になるように水:イソプロピルアルコール=9:1(重量比)で希釈して塗布液を調製した。
【0091】
比較例1
参考例1において、水分散グラフト共重合体(B−1)含有塗布液の代わりに水分散グラフト共重合体(B−2)含有塗布液を用いたこと以外は、参考例1と全く同様に行ない、2軸延伸コーティングポリアミドフィルムを得た。
【0092】
比較例2
参考例1において、Y層としてナイロン6を100重量部用いたこと以外は、参考例1と全く同様に行ない、2軸延伸コーティングポリアミドフィルムを得た。
【0093】
比較例3
参考例1において、基材フィルムに水分散グラフト共重合体(B−1)含有塗布液を塗布しなかったこと以外は、参考例1と全く同様に行ない、2軸延伸コーティングポリアミドフィルムを得た。
【0094】
実施例1、実施例2、参考例1〜4および比較例1〜3で得られた2軸延伸コーティングポリアミドフィルムについて評価した。その結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1より、実施例1および2で得られた2軸延伸コーティングポリアミドフィルムは、滑り性、特に高湿度下における滑り性、透明性、耐屈曲疲労性および接着性が良好であることがわかる。
【0097】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、所定のポリエステル系グラフト共重合体を特定の基材フィルム上に特定の組成の接着改質層を形成してなるものであり、耐屈曲疲労性、透明性を損なうことなく、滑り性、特に高湿度下における滑り性や接着性に優れ、特にドライラミネートや押出ラミネート等で接着改質層上に積層されるシーラント材や、金属、無機物またはそれら酸化物の薄膜との接着性に優れ、積層体のレトルト処理や沸水処理による破袋を著しく減少させることができる。
Claims (10)
- ナイロン6を主成分とするX層と、ナイロン6Tとナイロン6との共重合体および/または混合物を主成分とするY層とが、X/Yの層構成をなす基材フィルムのY層上に、疎水性ポリエステル樹脂に二重結合を有する酸無水物を含む少なくとも1種以上の重合性不飽和単量体がグラフトされた自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を主成分とする樹脂組成物からなる接着改質層が積層されてなることを特徴とする易接着性ポリアミドフィルム。
- Y層中のナイロン6Tが1モル%以上含有されることを特徴とする請求項1記載の易接着性ポリアミドフィルム。
- 重合性不飽和単量体が、マレイン酸無水物とスチレンであることを特徴とする請求項1記載の易接着性ポリアミドフィルム。
- 接着改質層が、自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を含有する塗布液を、未延伸または一軸延伸された基材フィルムに塗布、乾燥した後、当該フィルムを一軸またはそれ以上で延伸し、熱固定することにより形成されてなる層であることを特徴とする請求項1記載の易接着性ポリアミドフィルム。
- 基材フィルムが、耐屈曲疲労性改良剤を含有することを特徴とする請求項1記載の易接着性ポリアミドフィルム。
- 耐屈曲疲労性改良剤の含有量が、基材フィルム中の全ポリアミド樹脂100重量部に対し、0.2〜10重量部であることを特徴とする請求項5記載の易接着性ポリアミドフィルム。
- 耐屈曲疲労性改良剤が、ブロックポリエステルアミド、ブロックポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、変性エチレンプロピレンゴムおよびエチレン/アクリレート共重合体からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項5記載の易接着性ポリアミドフィルム。
- 基材フィルムが、無機および/または有機微粒子を含有することを特徴とする請求項1記載の易接着性ポリアミドフィルム。
- 無機および/または有機微粒子の平均粒子径が、0.5〜5.0μmであることを特徴とする請求項8記載の易接着性ポリアミドフィルム。
- 無機および/または有機微粒子の合計の含有量が、基材フィルム中の全ポリアミド樹脂100重量部に対し、0.05〜1.0重量部であることを特徴とする請求項8記載の易接着性ポリアミドフィルム。
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