JP4374638B2 - ガスバリア性積層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生鮮食品、加工食品、医薬品、医療機器、電子部品等の包装用フィルムにおいて重要な特性とされるガスバリア性や防湿性に優れ、且つ透明性及び取扱性に優れた積層フィルムまたはシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品の流通形態や食生活の変革によって食品の包装形態も大幅に変わってきており、包装用のフィルムやシート(以下フィルムで代表する)に対する要求特性はますます厳しくなってきている。
流通販売過程における温度や湿分、酸素、紫外線、更には細菌やカビ等の微生物の影響による製品の品質低下は、販売上の損失を招くのみならず食品衛生面からも大きな問題である。この様な品質低下を防止する方法として、従来は酸化防止剤や防腐剤等を食品に直接添加していたが、最近では、消費者保護の立場から食品添加物の規制が厳しくなり、添加量の減少もしくは無添加が求められており、この様な状況の下で、気体や水分の透過度が小さく、しかも冷凍加工やボイル処理、レトルト処理等によっても食品としての品質低下を起こさない様な包装フィルムへの要望が高まっている。
【0003】
即ち魚肉、畜肉、貝類等の包装においては、蛋白質や油脂等の酸化や変質を抑制し、味や鮮度を保持することが重要であり、そのためには、ガスバリア性のよい包装材を用いて空気の透過を遮断することが望まれる。しかもガスバリア性フィルムで包装すると、内容物の香気が保持されると共に水分の透過も阻止されるので、乾燥物では吸湿劣化が抑制され、含水物の場合は水分の揮発による変質や固化が抑制され、包装時の新鮮な風味を長時間維持することが可能となる。
【0004】
こうした理由から、かまぼこ類の練り製品、バター、チーズ等の乳製品、味噌、茶、コーヒー、ハム・ソーセージ類、インスタント食品、カステラ、ビスケット等の菓子類の包装フィルムにおいては、前記ガスバリア性や防湿性が極めて重要な特性とされている。これらの特性は食品包装用フィルムに限られるものではなく、無菌状態での取扱いが必要とされる医療品、あるいは防錆性が必要な電子部品などの包装用フィルムとしても極めて重要となる。
【0005】
ガスバリア性に優れたフィルムとしては、プラスチックフィルム上にアルミニウム等の金属箔を積層したもの、塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体をコーティングしたものが知られている。また、無機質薄膜を利用したものとして、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の蒸着膜を積層したものも知られている。
【0006】
実際に使用する形態としては、印刷層、さらに接着剤層を設けた上へ、ドライラミネート法によってシーラント層を設けるか、あるいは押出ラミネート法によりシーラント層を設けるなどしてポリアミドフィルムの積層体とし、該積層体を用いて袋を作成し内容物を充填後開口部をヒートシールして、例えば味噌や醤油などの調味料、スープやレトルト食品等の水分含有食品あるいは薬品などを包装して一般消費者に提供している。
【0007】
上記の様な従来のガスバリア性フィルムには、それぞれ次の様な問題点が指摘されている。ガスバリア層としてアルミニウム箔を積層したものは、経済性やガスバリア性において優れたものではあるが、不透明であるため包装した時に内容物が見えず、またマイクロ波を透過しないため電子レンジによる処理ができない。
【0008】
また、塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体をコーティングしたものは、水蒸気や酸素等に対するガスバリア性が十分でなく、特に高温処理による性能低下が著しい。しかも塩化ビニリデン系については、焼却時の塩素ガスの発生等により大気汚染を招くことも懸念される。
【0009】
そこで、ガスバリア層として酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機質蒸着層を形成した樹脂フィルムが提案された。酸化ケイ素や酸化アルミニウム等が蒸着される基材フィルムとしては、従来より寸法安定性の良いポリエステルフィルム(PET)が使用されてきた。
【0010】
構成としてはPET/蒸着層/接着層/PET/接着層/未延伸ポリプロピレン(CPP)の様な積層構造とするのが通例となっているが、この様な積層構造のフィルムでは、落下衝撃に対する強度不足が問題となる。
【0011】
一方、PET/蒸着層/接着層/延伸ナイロン(ONY)/接着層/未延伸ポリプロピレン(CPP)の様な積層構造の場合、ナイロンの収縮によりボイル処理やレトルト処理後のガスバリア性が劣化するという問題が生じてくる。
【0012】
そこで、高温熱水処理時の収縮率を低減させたナイロンを積層したフィルム(特開平7−276571号)が提案されている。しかし、積層するフィルムが多くなるため製造工程や搬送・保管時のプロセスが繁雑になるので経済性に劣ることや、フィルムが厚くなるため取り扱いが困難になるなど実用にそぐわない。
【0013】
ナイロンフィルムを蒸着基材として使用したガスバリア性フィルムが検討されたが、ナイロンフィルムは吸湿や加熱による寸法変化が大きいためバリア性が不安定であり、特にボイル処理やレトルト処理後のガスバリア性が劣化するという問題が生じてくる。
【0014】
そこでガスバリア性向上対策として、加熱処理により予め収縮率を低減させた延伸ナイロンを蒸着基材として使用した積層フィルム(特公平7−12649号)が提案されている。しかし、製造工程や搬送・保管時のプロセスが繁雑になるため実用にそぐわない。また、高温処理時の収縮率が小さいナイロン(特公平7−12649号では、120℃で5分間加熱したときの縦方向及び横方向の寸法変化率の絶対値の和が2%以下)であっても、高温熱水処理であるボイル処理では優れたガスバリア性を維持できない。
【0015】
また、ナイロンフィルムを蒸着基材に用いた場合、ナイロンフィルムと蒸着層の間に水が浸入すると層間の接着力が著しく低下し、包装袋として用いたとき破袋の原因となるだけではなくガスバリア性の低下にもつながると考えられる。
【0016】
この様に酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機質蒸着層を設けた積層構造のガスバリア性フィルムは強度が必ずしも十分でなく、またボイル処理やレトルト処理によるガスバリア性の劣化が指摘される。
【0017】
この他、透明で内容物を透視することができ且つ電子レンジへの適用が可能なガスバリアフィルムとして、特公昭51−48511号には、合成樹脂基材の表面にSixOy系(例えばSiO2 )を蒸着したガスバリアフィルムが提案されている。ところが、ガスバリア性の良好なSiOx系(x=1.3〜1.8)蒸着膜はやや褐色を有しており、透明ガスバリアフィルムとしては、品質において十分なものとは言えない。
【0018】
特開昭62−101428号には、酸化アルミニウムを主体とする無機質蒸着層を設けたものが記載されているが、これはガスバリア性が不十分であるばかりでなく、耐屈曲性の問題もある。
【0019】
また、耐ボイル性や、耐レトルト性を有するガスバリア層としてAl2 O3 ・SiO2 系の例として特開平2−194944号に提案されているものもあるが、Al2 O3 とSiO2 を積層したものであり、ガスバリア層の形成が煩雑で且つ大掛かりな装置を必要とする。しかもこれらの無機質薄膜をガスバリア層とするフィルムも、ガスバリア特性と耐屈曲性を両立させるという観点からすると依然として不十分と言わざるを得ない。即ち優れた耐ボイル性や耐レトルト性を与えるには、ある程度以上(例えば2000Å程度以上)の膜厚が要求されるのに対し、膜厚を厚くすると耐屈曲性が劣化して落下衝撃に耐えなくなるという問題があり、十分なガスバリア性や防湿性を備え、且つ耐ボイル性や耐レトルト性も良好であり、更には耐屈曲性に優れ落下衝撃にも十分に耐え得る様なガスバリア性フィルムは現在のところ提案されていない。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる事情に着目してなされたものであり、その目的は、優れた透明性、ガスバリア性、接着性を有し、ボイル処理や印刷工程後においてもその優れたバリア性を損なうことがなく、また、耐屈曲性も良好で落下衝撃にも十分耐える強度特性を備え、更には熱封緘性にも優れたガスバリア性積層フィルムまたはシートを経済的に提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は以下の通りである。
(1)ポリアミドフィルムの少なくとも一方の面に、疎水性ポリエステルに一種以上の重合性不飽和単量体がグラフトされた、ポリエステル系グラフト重合体を含む層および金属酸化物薄膜層が順に形成されていることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
(2)ポリアミドフィルムがテレフタル酸またはイソフタル酸と脂肪族ジアミンからなるアミド単位を10モル%以上構成成分として含有する芳香族ポリアミドを50重量%以上含む層を少なくとも1つ有することを特徴とする(1)記載のガスバリア性積層フィルム。
(3)95℃の熱水中で30分間のボイル処理後の基材ポリアミドフィルムと金属酸化物薄膜層との密着強度が100g/15mm以上であることを特徴とする(1)記載のガスバリア性積層フィルム。
(4)重合性不飽和単量体が二重結合を有する酸無水物を少なくとも1種含むことを特徴とする(1)、(2)または(3)記載のガスバリア性積層フィルム。
(5)重合性不飽和単量体が少なくともマレイン酸の無水物とスチレンを含有することを特徴とする(4)記載のガスバリア性積層フィルム。
(6)ポリエステル系グラフト重合体を含む層が、該グラフト重合体を含む塗布液を、未延伸または一軸延伸フィルムに塗布、乾燥後、該フィルムを更に、一軸またはそれ以上延伸後、熱固定することによって形成された(1)記載のガスバリア性積層フィルム。
(7)金属酸化物薄膜層が酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物からなる薄膜層である(1)または(2)記載のガスバリア性積層フィルム。
(8)該金属酸化物薄膜層において酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物中の酸化アルミニウムの含有率が5重量%以上45重量%以下である(1)または(2)記載のガスバリア性積層フィルム。
【0022】
上記の構成から成る本発明のガスバリア性積層フィルムは、初期及びボイル処理後においても優れたガスバリア性と接着性を有し、且つ、透明性、耐ピンホール性に優れたガスバリア性積層フィルムである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明で規定する各層構成材について詳細に説明すると共に、上記特性を定めた理由について詳述する。
【0024】
ポリアミドフィルム
本発明のポリアミドフィルムにおいて、テレフタル酸またはイソフタル酸と脂肪族ジアミンからなるアミド単位を構成成分として含有する芳香族ポリアミドが好ましく使用することができる。
【0025】
該アミド単位を10モル%以上含有することが必要であるが、他のポリアミド単位との共重合体であってもよく、又他のポリアミド単位を有するポリアミド、例えば脂肪族ポリアミドが50重量%以下の量で混合されていてもよい。
【0026】
本発明において、上記芳香族ポリアミドを含むフィルムの片方の面に脂肪族ポリアミドフィルムを積層したフィルム、或いは脂肪族ポリアミドフィルムの両方の面に上記芳香族ポリアミドを含むフィルムが積層された積層フィルムを使用することが好ましい。この場合においてポリエステル系グラフト重合体を含む層および金属酸化物薄膜層は芳香族ポリアミドフィルム側に形成される。
【0027】
脂肪族ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられ、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0028】
本発明で使用される脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン612、ナイロン46及びこれらの共重合体、ブレンド物等が挙げられるが、ナイロン6及びナイロン66が好ましい。
【0029】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムにはブロックポリエステルアミドなどの耐屈曲疲労改善剤を添加、使用することもできる。
【0030】
本発明において積層ポリアミドフィルムを使用する場合、当該積層ポリアミドフィルムは公知の製造方法により製造することができる。すなわち、各層を構成する重合体を別々の押出し機を用いて溶融し、共押出しにより製造する方法、各層を構成する重合体をラミネートにより積層する方法、及びこれらを組み合わせた方法などをとることができる。更に、積層ポリアミドフィルムは、未延伸フィルムと延伸フィルムのどちらでも使用することができるが、本発明に従って得られるガスバリア性積層フィルムはフィルムの加工適性を向上させる為に一軸または二軸方向に延伸されたものであることが望ましい。延伸方法としては、テンター式逐次二軸延伸方法、テンター式同時二軸延伸方法、チューブラー法などの公知の方法を用いることができる。また、本発明のガスバリア性積層フィルムの目的、性能を損なわない限り各種添加剤、例えば、滑剤、酸化防止剤、耐候剤、ゲル化防止剤、ブロッキング防止剤、顔料、帯電防止剤などを適宜配合しても良い。
【0031】
ポリアミドフィルムの厚さは特に限定されないが、0〜30μm、好ましくは10〜30μm、さらに好ましくは15〜25μmであり、この範囲を外れると、フィルム強度、コストが問題を生じる。
【0032】
ポリエステル系グラフト重合体を含む層
ポリアミドフィルムに被覆されるポリエステル系グラフト重合体層はポリアミドフィルムの接着性を改善する目的で使用される。該グラフト重合体は、一般には、疎水性ポリエステルを有機溶媒中に溶解させた状態において、重合開始剤及び重合性不飽和単量体混合物を反応させることにより得られる。グラフト化反応終了後の反応生成物は、通常、所望の疎水性ポリエステル−重合性不飽和単量体混合物間のグラフト重合体の他に、グラフト化を受けなかった疎水性ポリエステル及び疎水性ポリエステルにグラフト化しなかった重合体不飽和単量体をも含有している。本発明におけるグラフト重合体とは、これら混合物を含めて総称する。
【0033】
本発明において、疎水性ポリエステルに重合性不飽和単量体をグラフト重合させた反応物の酸価は600eq/106 g以上であることが好ましい。より好ましくは、反応物の酸価は1200eq/106 g以上である。反応物の酸価が600eq/106 g未満である場合は、本発明の目的であるポリアミドフィルム層との接着性が十分とはいえない。
【0034】
また、本発明の目的に適合する望ましい疎水性ポリエステルと重合性不飽和単量体の重量比率は、ポリエステル/重合性不飽和単量体=40/60〜95/5の範囲が望ましく、更に望ましくは55/45〜93/7、最も望ましくは60/40〜90/10の範囲である。
疎水性ポリエステルの重量比率が40重量%未満であるとき、ポリエステルの優れた接着性を発揮することができない。一方、疎水性ポリエステルの重量比率が95重量%より大きいときは、ポリエステルの欠点であるブロッキングが起こりやすくなる。
【0035】
本発明のグラフト重合体は、有機溶媒の溶液または分散液、あるいは、水性溶媒の溶液または分散液の形態で使用することが出来るが、水性溶媒の分散液つまり、水分散樹脂の形態が、作業環境、塗布性の点で好ましい。この様な水分散樹脂を得るには、通常、有機溶媒中で、前記疎水性ポリエステルに、親水性単量体を含む重合性不飽和単量体をグラフト重合し、次いで、水を添加してグラフト重合体を分散させ、有機溶媒留去により達成される。
【0036】
本発明での水分散樹脂は、レーザー光散乱法により測定される平均粒子系は500nm以下であり、半透明ないし乳白色の外観を呈する。重合方法の調整により、多様な粒子径の水分散樹脂が得られるが、この粒子径は10〜500nmが適当であり、分散安定性の点で、400nm以下が好ましく、より好ましくは300nm以下である。500nmを越えると被覆膜表面の光沢の低下がみられ、被覆物の透明性が低下し、10nm未満では、本発明の目的である耐水性が低下するため、好ましくない。
【0037】
疎水性ポリエステル
本発明において、疎水性ポリエステルとは、本来それ自身で水に分散または溶解せず本質的に水不溶性である必要がある。水に分散するまたは溶解するポリエステルをグラフト重合に使用すると、本発明の目的である接着性、耐水性が悪くなる。
【0038】
本発明において疎水性ポリエステルは芳香族ジカルボン酸残基を有するものが好ましく、又グラフト化が効率的に行われるために若干量の二重結合を有するものが好ましい。
【0039】
芳香族ジカルボン酸60〜99.5モル%、脂肪族ジカルボン酸及び/または脂環族ジカルボン酸0〜40モル%、二重結合を含有するジカルボン酸0.5〜10モル%の組成のジカルボン酸成分を用いることが好ましい。芳香族ジカルボン酸が60モル%未満である場合や脂肪族ジカルボン酸及び/または脂環族ジカルボン酸が40モル%を越えた場合は、接着強度が低下する。
【0040】
また、二重結合を含有するジカルボン酸が0.5モル%未満の場合、ポリエステルに対する重合性不飽和単量体の効率的なグラフト化が行われにくくなり、逆に10モル%を越える場合は、グラフト化反応の後期に余りにも粘度が上昇し、反応の均一な進行を妨げるので好ましくない。より好ましくは、芳香族ジカルボン酸は70〜98モル%、脂肪族ジカルボン酸及び/または脂環族ジカルボン酸0〜30モル%、二重結合を含有するジカルボン酸2〜7モル%である。
【0041】
芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等を挙げることができる。5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の親水基含有ジカルボン酸は、本発明の目的である耐水性が低下する点で、用いない方が好ましい。
【0042】
脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸等を挙げることができ、脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及びその酸無水物等を挙げることができる。
【0043】
二重結合を含有するジカルボン酸の例としては、α,β−不飽和ジカルボン酸として、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸を、二重結合を含有する脂環族ジカルボン酸として、2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等を挙げることができる。このうち好ましいのは、重合性の点から、フマル酸、マレイン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸である。
【0044】
一方、疎水性ポリエステルのグリコール成分は、炭素数2〜10の脂肪族グリコール及び/または炭素数6〜12の脂環族グリコール及び/またはエーテル結合含有グリコールを用いることが出来る。炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等を挙げることができ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
【0045】
エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の二つのフェノール性水酸基に、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどを挙げることができる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要により使用しうる。
【0046】
本発明で使用される疎水性ポリエステル中に、5モル%迄の3官能以上のポリカルボン酸及び/またはポリオールを共重合することができる。3官能以上のポリカルボン酸としては、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等が使用される。一方、3官能以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用される。3官能以上のポリカルボン酸及び/またはポリオールは、全酸成分あるいは全グリコール成分に対し5モル%迄、望ましくは3モル%迄の範囲であり、5モル%を越えると重合時のゲル化が起こりやすく、好ましくない。
【0047】
また、疎水性ポリエステルの分子量は、重量平均で5000〜50000の範囲が好ましい。分子量が5000未満の場合は接着強度の低下があり、逆に50000を越えると重合時のゲル化等の問題が起きてしまう。
【0048】
重合性不飽和単量体
また、本発明の重合性不飽和単量体として以下のものが例示される。フマル酸、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸のモノエステル及びジエステル、マレイン酸とその無水物、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸のモノエステル及びジエステル、イタコン酸とその無水物、イタコン酸のモノエステル及びジエステル、フェニルマレイミド等のマレイミド等、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどである。またアクリル重合性単量体としては、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等);ヒドロキシ含有アクリル単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート;アミド基含有アクリル単量体、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド;アミノ基含有アクリル単量体、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート;エポキシ基含有アクリル単量体、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート;カルボキシル基またはその塩を含有するアクリル単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)等が挙げられる。好ましくは、マレイン酸無水物とそのエステルである。上記モノマーは1種もしくは2種以上を用いて疎水性ポリエステルにグラフト重合させるが、本発明の目的のために、二重結合を有する酸無水物を少なくとも1種含むことが望ましい。とりわけ、マレイン酸無水物とスチレンを組合わせて重合性不飽和単量体として使用することが望ましい。
【0049】
本発明のポリエステル系グラフト重合体は水分散樹脂の形態であることが好ましく、この目的のために親水性単量体を含む重合性不飽和単量体が使用される。
【0050】
水分散樹脂の調製に使用する親水性単量体とは、親水基を有するか、後で親水基に変化できる基を有する単量体を指す。親水基を有する単量体として、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩基等を有する単量体を挙げることができる。一方、親水基に変化できる基を有する単量体として、酸無水物基、グリシジル基、クロル基などを有する単量体を挙げることができる。これらの中で、水分散性の点から、カルボキシル基が好ましく、カルボキシル基を有するか、カルボキシル基を発生する基を有する単量体が好ましい。
所望の酸価を達成する点で、カルボキシル基を含有しているか、カルボキシル基を発生する単量体が含まれているほうが好ましい。
【0051】
グラフト重合
本発明のグラフト重合は、一般には、疎水性ポリエステルを有機溶剤中に溶解させた状態において、重合開始剤及び重合性不飽和単量体混合物を反応させることにより実施される。グラフト化反応終了時の反応生成物は、通常、所望の疎水性ポリエステル−重合性不飽和単量体混合物間のグラフト重合体の他に、グラフト化を受けなかった疎水性ポリエステル及び疎水性ポリエステルにグラフト化しなかった重合性不飽和単量体をも含有している。本発明におけるグラフト重合体とは、これら混合物も含めて総称する。
【0052】
重合開始剤及びその他の添加剤
本発明で用い得るグラフト重合開始剤としては、当業者には公知の有機過酸化物類や有機アゾ化合物類を用い得る。
有機過酸化物として、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、有機アゾ化合物として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などを挙げることが出来る。グラフト重合を行うための重合開始剤の使用量は、重合性不飽和単量体に対して、少なくとも0.2重量%以上、好ましくは0.5重量%以上であり、上限は特に限定されないが、6重量%が好ましい。
【0053】
グラフト重合開始剤の他に、枝ポリマーの鎖長を調節するための連鎖移動剤、例えばオクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールなどを必要に応じて用い得る。この場合、重合性不飽和単量体に対して5重量%迄の範囲で添加されるのが望ましい。
【0054】
反応溶媒
本発明の実施のためのグラフト化反応溶媒は沸点が50〜250℃の水性有機溶媒から構成されることが好ましい。ここで水性有機溶媒とは20℃における水に対する溶解性が少なくとも10g/L以上、望ましくは20g/L以上であるものをいう。沸点が250℃を越えるものは、余りに蒸発速度がおそく、塗膜の高温焼付によっても充分に取り除くことが出来ないので不適当である。また沸点が50℃未満では、それを溶媒としてグラフト化反応を実施する場合、50℃未満の温度でラジカルに開裂する重合開始剤を用いねばならないので取り扱い上の危険が増大し、好ましくない。
【0055】
疎水性ポリエステルをよく溶解し重合性不飽和単量体混合物及びその重合体を比較的良く溶解する第一群の水性有機溶媒としては、エステル類例えば酢酸エチル、ケトン類例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、環状エーテル類例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、グリコールエーテル類例えばエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、カルビトール類例えばメチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、グリコール類若しくはグリコールエーテルの低級エステル類例えばエチレングリコールジアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ケトンアルコール類例えばダイアセトンアルコール、更にはN−置換アミド類例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を例示することが出来る。
【0056】
これに対し、疎水性ポリエステルをほとんど溶解しないが、重合性不飽和単量体混合物及びその重合体を比較的よく溶解する第二群の水性有機溶媒として、水、低級アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等)、低級グリコール類(例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等)、低級カルボン酸類(例えば、蟻酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸等)、低級アミン類などを挙げることが出来るが、本発明の実施に特に好ましいものとしては炭素数1〜4のアルコール類及びグリコール類である。
【0057】
グラフト化反応を単一溶媒で行う場合は、第一群の水性有機溶媒からただ一種を選んで行うことが出来る。混合溶媒で行う場合は第一群の水性有機溶媒からのみ複数種選ぶ場合と、第一群の水性有機溶媒から少なくとも一種を選びそれに第二群の水性有機溶媒から少なくとも一種を加える場合がある。
【0058】
グラフト化反応溶媒を第一群の水性有機溶媒からの単一溶媒とした場合と、第一群及び第二群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒とした場合のいずれにおいてもグラフト重合反応を行うことができる。しかし、グラフト化反応の進行挙動、グラフト化反応生成物及びそれから導かれる水分散樹脂の外観、性状などに差異が見られ、第一群及び第二群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒を使用する方が好ましい。
【0059】
第一群の溶媒中では疎水性ポリエステルの分子鎖は広がりの大きい鎖ののびた状態にあり、一方第一群および第二群の混合溶媒中では広がりの小さい糸まり状に絡まった状態にあることがこれら溶液中の疎水性ポリエステルの粘度測定により確認された。ポリエステルの溶解状態を調節し分子間架橋を起こりにくくすることがゲル化防止に有効である。効率の高いグラフト化とゲル化抑制の両立は後者の混合溶媒系において達成される。混合溶媒の第一群/第二群の重量比率は望ましくは95/5〜10/90、より望ましくは90/10〜20/80、さらに望ましくは85/15〜30/70の範囲である。最適の混合比率は使用するポリエステルの溶解性などに応じて決定される。
【0060】
水分散化
酸性基を有する親水性単量体を共重合したグラフト重合体は塩基性化合物で中和することが好ましく、中和することによって容易に水分散化することが出来る。塩基性化合物としては塗膜形成時、或いは架橋剤配合による焼付硬化時に揮散する化合物が望ましく、アンモニア、有機アミン類などが好適である。望ましい化合物の例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを挙げることが出来る。塩基性化合物は、グラフト化反応生成物中に含まれるカルボキシル基含有量に応じて、少なくとも部分中和、もしくは完全中和によって水分散樹脂のpH値が5.0〜9.0の範囲であるように使用するのが望ましい。沸点が100℃以下の塩基性化合物を使用した場合であれば、乾燥後の塗膜中の残留塩基性化合物も少なく、金属や金属酸化物薄膜層との接着性や該積層体の耐水性や耐熱水接着性が優れる。
【0061】
本発明により生成される水分散樹脂では、重合性不飽和単量体の重合物の重量平均分子量は500〜50000であるのが好ましい。重合性不飽和単量体の重合物の重量平均分子量を500以下にコントロールすることは一般に困難であり、グラフト効率が低下し、ポリエステルへの親水性基の付与が十分に行われない傾向がある。また、重合性不飽和単量体のグラフト重合体は分散粒子の水和層を形成するが、十分な厚みの水和層をもたせ、安定な分散体を得るためには重合性不飽和単量体のグラフト重合物の重量平均分子量は500以上であることが望ましい。また重合性不飽和単量体のグラフト重合体の重量平均分子量の上限は溶液重合における重合性の点で50000が好ましい。この範囲内での分子量のコントロールは重合開始剤量、単量体滴下時間、重合時間、反応溶媒、単量体組成あるいは必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行うことが出来る。
【0062】
本発明において、疎水性ポリエステルに重合性不飽和単量体をグラフト重合させた反応生成物は、自己架橋性を有する。常温では架橋しないが、乾燥時の熱で、1)グラフト重合体中に存在するカルボキシル基の脱水反応、2)熱ラジカルによる水素引き抜き反応等の分子間反応を行い架橋剤なしで架橋する。これにより初めて、本発明の目的である接着性、耐水性を発現できる。
【0063】
塗膜の自己架橋性については、様々の方法で評価できるが、疎水性ポリエステル及び重合性不飽和単量体の両方を溶解するクロロホルム溶媒での不溶分率で調べることができる。
【0064】
80℃以下で乾燥し、120℃で5分間熱処理して得られる塗膜の不溶分率は、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。塗膜の不溶分率が50%未満の場合は、接着性、耐水性が十分でないばかりでなく、ブロッキングも起こしてしまう。
【0065】
上記グラフト重合体は、そのままで本発明に用い得るが、さらに架橋剤(硬化用樹脂)を配合して硬化を行うことにより、ポリエステル系グラフト重合体層に高度の耐水性を付与し得る。
【0066】
架橋剤としては、アルキル化フェノール類、クレゾール類などとホルムアルデヒドとの縮合物のフェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加物;この付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物などのアミノ樹脂;多官能性エポキシ化合物;多官能性イソシアネート化合物;ブロック化イソシアネート化合物;多官能性アジリジン化合物;オキサゾリン化合物などを用い得る。
【0067】
フェノールホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、アルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチル)フェノール、p−tert−アミルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(以下、ビスフェノールAという。)、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、α−フェニル−o−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノールなどのフェノール類、クレゾール類とホルムアルデヒドとの縮合物を挙げることができる。
【0068】
アミノ樹脂としては、例えば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられるが、好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、メチロール化ベンゾグアナミンなどを挙げることができる。
【0069】
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリジシルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル及びポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0070】
多官能性イソシアネート化合物としては、低分子または高分子の芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートを用い得る。低分子または高分子の芳香族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、低分子または高分子の脂肪族のジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリデンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、このイソシアネート化合物の3量体である。さらに、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物、またはポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類などの高分子活性水素化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物を挙げることができる。
【0071】
ブロック化イソシアネート化合物は上記イソシアネート化合物とブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて調整し得る。イソシアネートブロック化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類;チオフェノール、メチルチオフェノールなどのチオフェノール類;アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類;t−ブタノール、3−ペンタノールなどの第3級アルコール類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタムなどのラクタム類;芳香族アミン類;イミド類;アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物;メルカプタン類;イミン類;尿素類;ジアリール化合物類;重亜硫酸ソーダなどを挙げることができる。
【0072】
オキサゾリン化合物としては、2−メチル−2−オキサゾリンなどを挙げることができる。
【0073】
これらの架橋剤は、それぞれ単独または2種以上混合して用い得る。架橋剤の配合量としては、グラフト重合体100重量部に対して、5重量部〜40重量部が好ましい。架橋剤の配合方法としては、(1)架橋剤が水溶性である場合、直接グラフト重合体の水性溶媒溶液または分散液中に溶解または分散させる方法、または(2)架橋剤が油溶性である場合、グラフト化反応終了後、反応液に添加する方法がある。これらの方法は、架橋剤の種類、性状により適宜選択し得る。さらに架橋剤には、従来公知の硬化剤あるいは促進剤を併用し得る。
【0074】
上記グラフト重合体は、そのままで本発明に用い得るが、他の目的から汎用のポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル樹脂、それらの共重合体、各種水溶性樹脂等や各種機能性樹脂、例えばポリアニリンやポリピロール等の導電性樹脂や抗菌性樹脂、紫外線吸収性樹脂、ガスバリア性樹脂を混合してポリエステル系グラフト重合体層を形成しても構わない。
【0075】
ガスバリア性積層フィルム
本発明のガスバリア性積層フィルムは、上記の基材となるポリアミドフィルム上に、上記グラフト重合体を含む層、および金属酸化物薄膜層をこの順に付与することにより好適に形成され得る。ポリアミドフィルムがテレフタル酸またはイソフタル酸と脂肪族ジアミンからなるアミド単位を構成成分として含有する芳香族ポリアミドフィルムが積層された積層フィルムの場合は、該芳香族ポリアミドフィルム上にこれらの層が形成される。
【0076】
塗布液としては、グラフト重合体の有機溶媒の溶液または分散液、あるいは、水性溶媒の溶液または分散液を用い得る。特に、水溶液または水分散液が、環境に対して問題となる有機溶媒を用いない点で好ましい。有機溶媒あるいは水性溶媒中のグラフト重合体の固形分含有量は、通常、1重量%〜50重量%、好ましくは3重量%〜30重量%である。
【0077】
塗布後のグラフト重合体の乾燥条件は特に規制は無いが、該グラフト重合体のもつ自己架橋性を発現するためには、基材となるポリアミドフィルム及び該グラフト重合体に熱劣化が起こらない範囲内で、熱量を多くする条件が好ましい。具体的には80℃〜250℃、さらに好ましくは150℃〜220℃である。ただし乾燥時間を長くすることにより、比較的低い温度でも、十分な自己架橋性を発現するため、上記の条件に限らない。
【0078】
該グラフト重合体層に、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、各種界面活性剤、帯電防止剤、無機滑剤、有機滑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させることができ、これらは塗布液中に含有させて、基材表面に付与される。
【0079】
ポリエステル系グラフト重合体層を形成するために、グラフト重合体を含む塗布液を基材となるポリアミドフィルムに塗布する方法としては、グラビア方式、リバース方式、ダイ方式、バー方式、ディップ方式などの公知の塗布方法を用い得る。
【0080】
塗布液の塗布量は、固形分として0.005〜10g/m2 、好ましくは、0.02〜0.5g/m2 である。塗布量が0.005g/m2 未満になると、ポリアミドフィルムとの十分な接着強度が得られない。10g/m2 より大きくなるとブロッキングが発生し、実用上問題がある。
【0081】
二軸延伸積層ポリアミドフィルム上に塗布する場合、積層ポリアミドフィルムとポリエステル系グラフト重合体層との接着性をさらに良くする為、積層ポリアミドフィルムにコロナ処理、火炎処理、電子線照射等による表面処理をしてもよい。下記の塗布後延伸する場合でも同様の処理により効果が得られる。
【0082】
未延伸あるいは一軸延伸後のフィルムに上記塗布液を塗布した後、乾燥、延伸する場合、塗布後の乾燥温度はその後の延伸に影響しない範囲の条件で乾燥する必要があり、基材ポリアミドフィルムの場合、水分率を2%以下にして延伸し、その後200℃以上で熱固定を行うことにより塗膜が強固になり、ポリエステル系グラフト重合体層と基材ポリアミドフィルムとの接着性が飛躍的に向上する。水分率が2%より多くなると乾燥温度にもよるが、結晶化が起こりやすくなり、平面性の悪化や延伸性が損なわれる場合がある。
【0083】
本発明のポリエステル系グラフト重合体を含む層が被覆されたフィルムは、各種材料と良好な接着性を有するが、さらに接着性や印刷性をよくするために、該グラフト重合体層にさらにコロナ処理、火炎処理、電子線照射等による表面処理をしても良い。
【0084】
金属酸化物薄膜層
次に、金属酸化物薄膜層としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムやこれらの混合物などの無機質薄膜層が挙げられる。ここでいう酸化ケイ素とは、SiOやSiO2 等の各種ケイ素酸化物の混合物からなり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl2 O3 等の各種アルミニウム酸化物の混合物からなり、各酸化物内における酸素の結合量はそれぞれの作製条件によって異なってくる。
【0085】
特に酸化アルミニウムと酸化ケイ素の混合物は、透明性や耐屈曲性も優れることから本発明における金属酸化物薄膜層として好ましい。さらに、該薄膜層中に占める酸化アルミニウムの含有率が、5重量%以上45重量%以下の酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物が好ましい。
【0086】
酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜層中の酸化アルミニウム量が5重量%未満なるものでは、薄膜中に格子欠陥が生じ十分なガスバリア性が得られないといった問題が生じ、また酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜層中の酸化アルミニウム量が45重量%超になると、膜の柔軟性が低下し、熱水処理時における寸法変化によって膜の破壊(割れや剥離)が生じ易くなってバリア性が低下するといった問題が生じ、本発明の目的にそぐわなくなる。
【0087】
酸化アルミニウムのより好ましい含有率は10重量%以上35重量%以下、更に好ましくは15重量%以上25重量%以下である。尚、該金属酸化物薄膜層中には、その特性を損なわない範囲で更に他の酸化物等を微量(せいぜい3重量%迄)含んでいても構わない。
【0088】
上記酸化ケイ素と酸化アルミニウムとからなる金属酸化物薄膜層の膜厚は、通常10〜5000Å、好ましくは50〜2000Åである。膜厚が10Å未満では満足のいくガスバリア性が得られ難く、また5000Åを越えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点で却って不利となる。
【0089】
酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜層の作製には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、あるいはCVD等の化学蒸着法等が適宜用いられる。例えば真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiO2 とAlの混合物、あるいはSiO2 とAl2 O3 の混合物等が用いられる。加熱には、抵抗加熱、誘導加熱、電子線加熱等を採用することができ、また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。更に、基材にバイアスを印加したり、基材を加熱したり冷却する等、成膜条件も任意に変更することができる。上記蒸着材料、反応ガス、基材バイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0090】
また、蒸着の前あるいは蒸着中に、基材の表面にコロナ処理、火炎処理、低温プラズマ処理、グロー放電処理、逆スパッタ処理、粗面化処理などを施し、金属酸化物薄膜層の密度強度向上を図ることも有効である。
【0091】
この様な成分組成の酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜層とすることにより透明で、ボイル処理やゲルボ試験(耐屈曲性試験)にも耐え得る優れた性能のガスバリア積層フィルムを得ることが可能となる。
【0092】
尚、本発明にかかる積層フィルムのガスバリア性には、基材ポリアミドフィルムと上記金属酸化物薄膜層との密着強度が大きく関係しており、密着強度が大きいほどガスバリア性は向上する。そして本発明者らの検討結果によれば、優れたガスバリア性を有し、且つボイル処理後においてもその優れたガスバリア性を維持させるには、95℃の熱水中で30分間のボイル処理後の密着強度を100g/15mm以上にすべきであることを確認している。より好ましい密着強度は150g/15mm以上、さらに好ましくは200g/15mm以上、一層好ましくは250g/15mm以上である。密着強度が100g/15mmに満たない場合は、ボイル処理によってガスバリア性が悪くなる傾向が現れてくる。
【0093】
この理由は、密着強度が大きければ、ボイル処理やレトルト処理によって基材に若干の収縮が起こった場合でも、金属酸化物薄膜層の剥離が起こり難くなるためと考えられる。
【0094】
この様に優れた密着強度を得るための手段としては、金属酸化物薄膜層の基材の表面に、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、逆スパッタ処理、粗面化処理等を施したり、あるいは密着力向上の為のアンカーコート層を形成する等の方法があるが、勿論これらの方法に限定されるものではない。
【0095】
ポリオレフィンフィルム
上記金属酸化物薄膜層の表面には、主たる目的として、熱接着性を与える為のポリオレフィンフィルムが積層されるが、該ポリオレフィンフィルムは金属酸化物薄膜層の保護層としての機能も有しており、その機能を有効に果たす上で、該薄膜層とポリオレフィンフィルムとの接着力を高めることは極めて有効であり、その為の手段として、金属酸化物薄膜層とポリオレフィンフィルム層との間に接着剤層を設けることは極めて有効である。
【0096】
ポリオレフィンフィルムは、必ずしも単層である必要はなく複層であってもよく、複層構造とするときの各層を構成する樹脂も、同種の樹脂の組合せはもとより、異種ポリマーの共重合物や変性物、ブレンド物などを積層したものであってもよい。例えば、ラミネート性やヒートシール性を高めるため、ベースとなる熱可塑性ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)や融点よりも低いポリマーを複合したり、耐熱性を付与するために逆にTgや融点の高いポリマーを複合することも可能である。
【0097】
上記ポリオレフィンフィルムには、必要に応じて各種の添加剤、例えば可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、帯電防止剤、抗菌剤、滑剤、耐ブロッキング剤、他の樹脂などをブレンドすることも可能である。
【0098】
接着剤層を構成する樹脂として特に好ましいのは、ガラス転移温度が−10℃〜40℃の範囲の樹脂、例えばポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂などであり、これらは単独で使用し得るほか、必要により2種以上を併用したり溶融混合して使用し、あるいは官能基として例えば、カルボン酸基、酸無水物、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル骨格やメタアクリル酸エステル骨格を有する化合物;グリシジル基やグリシジルエーテル基を含むエポキシ化合物;オキサゾリン基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基等の反応性官能基を有する硬化剤もしくは硬化促進剤を配合した接着剤組成物を使用することも有効である。
【0099】
そしてポリオレフィンフィルムの積層は、接着剤を用いたドライラミネート法やウェットラミネート法、更には溶融押し出しラミネート法や共押出しラミネート法などによって、金属酸化物薄膜層の上に積層される。
【0100】
かくして得られる本発明のガスバリア性積層フィルムおよびシートは、その優れたガスバリア性及びボイル処理やレトルト処理によるガスバリア持続性及び2次加工特性を生かし、包装材料として味噌、漬物、惣菜、ベビーフード、佃煮、こんにゃく、ちくわ、蒲鉾、水産加工品、ミートボール、ハンバーグ、ジンギスカン、ハム、ソーセージ、その他の畜肉加工品、茶、コーヒー、紅茶、鰹節、昆布、ポテトチップス、バターピーナッツなどの油菓子、米菓、ビスケット、クッキー、ケーキ、饅頭、カステラ、チーズ、バター、切り餅、スープ、ソース、ラーメン、わさび、また、練り歯磨きなどの包装に有効に利用することができ、更にはペットフード、農薬、肥料、輸液パック、或いは半導体や精密材料包装など医療、電子、化学、機械などの産業材料包装にも有効に活用することができる。また包装用材料の形態にも特に制限がなく、袋、フタ材、カップ、チューブ、スタンディングパック等に幅広く適用できる。
【0101】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。
本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することももちろん可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。また、下記実施例で採用した各種の性能試験は次の方法によって行った。
【0102】
酸素透過率:酸素透過度測定装置(「OX−TRAN 10/50A」ModernControls社製)を使用し、湿度0%、温度25℃、圧力1atmで測定した。
水蒸気透過率:水蒸気透過度測定装置(「PERMATRAN」ModernControls社製)を使用し、湿度0%、温度25℃、圧力1atmで測定した。
密着強度:ラミネートしたものを東洋測器社製「テンシロンUTM2」を用いて、界面に水を付着させながら180度剥離し、金属酸化物薄膜層と基材層間のS−Sカーブを測定して求めた。
耐屈曲疲労試験:耐屈曲疲労試験(以下、ゲルボ試験)は、理学工業社製のゲルボフレックステスターを用いて評価した。条件としては、(MIL−B131H)DE112インチ×8インチの試験片を直径3(1/2)インチの円筒状とし、両端を保持し、初期把握間隔7インチとし、ストロークの3(1/2)インチで、400度のひねりを加える。この動作の繰り返し往復運動を40回/minの速さで、1000回行う。測定雰囲気は、20℃、相対湿度は65%である。このときのピンホール数を数えた。
【0103】
共重合ポリエステルの調整
攪拌機、温度計、及び部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート345部、1,4−ブタンジオール211部、エチレングリコール270部、及びテトラ−n−ブチルチタネート0.5部を仕込み、160℃から220℃まで、4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、フマル酸14部及びセバシン酸160部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、0.22mmHgの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステルを得た。得られたポリエステルは、淡黄色透明であった。
【0104】
NMRで測定した組成(単位モル%)及び重量平均分子量は以下のようであった。
テレフタル酸:70、セバシン酸:26、フマル酸:4
エチレングリコール:50、1,4−ブタンジオール:50
重量平均分子量:20000
【0105】
攪拌機、温度計、還流装置と定量滴定装置を備えた反応器に共重合ポリエステル樹脂75部、メチルエチルケトン56部及びイソプロピルアルコール19部を入れ、65℃で加熱、攪拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、無水マレイン酸15部をポリエステル溶液に添加した。次いで、スチレン10部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル1.5部を12部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1ml/minでポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間攪拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノール5部を添加した。次いで、水300部とトリエチルアミン15部を反応溶液に加え、1時間攪拌した。その後、反応器内温を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のアンモニアを蒸留により留去し、グラフト重合体の水分散樹脂を得た。該水分散樹脂は淡黄色透明であった。
該水分散樹脂を、固形分濃度10%になるように水:イソプロピルアルコール=9:1(重量比)で希釈して塗布液を調整した。
【0106】
参考例1
A層として40重量部のナイロン6、ナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比50/50)60重量部の混合物、B層として100重量部のナイロン6をTダイから積層しながら溶融押出しし、20℃の回転ドラム上で冷却して厚さ150μmの未延伸ポリアミドフィルムを得た。この未延伸フィルムを50℃で3.1倍に縦延伸した。次いで125℃で横方向に3.3倍延伸し、215℃で熱固定を行い、厚み15μmの2軸延伸フィルムを得た。
また同時に上記のグラフト重合体の水分散樹脂をナイロン6T/ナイロン6共重合体を含む層側に約0.1μmコートした。
【0107】
このフィルムは、耐屈曲疲労性、接着性のいずれも優れたものであった。
このフィルムを真空蒸着装置へ送り、チャンバー内を1×10-5Torrの圧力に保持し、SiO2 が70重量%とAl2 O3 が30重量%から成る混合酸化物を15kWの電子線加熱によって蒸発させ、厚さ200Åの無色透明な金属酸化物薄膜層をコーティング面に蒸着させ、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜層を形成させた。次いでこの金属酸化物薄膜層上に、ポリオレフィンフィルムとして無延伸ポリエチレン(厚さ:55μm)を接着剤(武田薬品社製「A310/A10」、塗布量2g/m2 )でドライラミネートし、45℃で4日間エージングしてガスバリア性積層フィルムを得た。このガスバリア性積層フィルムについて、
(1)未処理フィルムの酸素透過度(cc/m2 ・atm・day)
(2)95℃の熱水中に30分浸漬後、1時間放置後のフィルムの酸素透過度(cc/m2 ・atm・day)
(3)95℃の熱水中に30分浸漬後、1時間放置後のフィルムの水蒸気透過度(g/m2 ・day)
(4)95℃の熱水中に30分浸漬後、1時間放置後のフィルムの剥離界面に水を滴下した時の密着力(g/15mm)
(5)耐屈曲疲労試験後のピンホール数(個)
を測定した。
【0108】
実施例2
参考例1の方法において、A層として25重量部のナイロン6、ナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比50/50)75重量部の混合物とする以外は、参考例1と全く同様に行った。
【0109】
実施例3
参考例1の方法において、A層としてナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比50/50)100重量部とする以外は、参考例1と全く同様に行った。
【0110】
比較例1
参考例1の方法において、A層として100重量部のナイロン6としたこととグラフト重合体の水分散樹脂の代わりにポリエステル系コート剤(東洋紡績株式会社「AGN131」)を使用した以外は、参考例1と全く同様にした。
【0111】
比較例2
参考例1の方法において、A層として75重量部のナイロン6、ナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比50/50)25重量部の混合物とする以外は、比較例1と全く同様にした。
【0112】
結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
参考例4
ナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比50/50)をTダイから溶融押出しし、単層のポリアミドフィルムとする以外は参考例1と全く同様に行った。
【0115】
参考例5
ナイロン6をTダイから溶融押出しし、単層のポリアミドフィルムとする以外は参考例1と全く同様に行った。(この場合、グラフト重合体層はナイロン6フィルムの片面に設ける。)
【0116】
参考例4および5の結果を表2に示す。
【0117】
【表2】
【0118】
表1および表2中、(1)〜(5)は以下を示す。
(1)未処理フィルムの酸素透過度(cc/m2 ・atm・day)
(2)95℃の熱水中に30分浸漬後、1時間放置後のフィルムの酸素透過度(cc/m2 ・atm・day)
(3)95℃の熱水中に30分浸漬後、1時間放置後のフィルムの水蒸気透過度(g/m2 ・day)
(4)95℃の熱水中に30分浸漬後、1時間放置後のフィルムの剥離界面に水を滴下した時の密着力(g/15mm)
(5)耐屈曲疲労試験後のピンホール数(個)
【0119】
【発明の効果】
上記の様な本発明のガスバリア性積層フィルムを用いた本発明の包装材料は、ボイル処理においても金属酸化物薄膜層とポリアミドフィルム表面の界面における水の進入が少ない。従って、金属酸化物薄膜層のポリアミドフィルム表面からの剥離・浮きあるいは金属酸化物薄膜層の化学変化による劣化が抑制されると考えられる。
さらに、ポリアミドが芳香族ポリアミドである場合は、ポリアミドフィルムの硬度が大きいため金属酸化物薄膜層は緻密で欠陥の少ないものとなると考えられる。そのため、ボイル時のポリアミドフィルムの寸法変化にもかかわらず、良好なバリア性が維持されると考えられる。
Claims (5)
- テレフタル酸またはイソフタル酸と脂肪族ジアミンからなるアミド単位を10モル%以上構成成分として含有する芳香族ポリアミドを75重量%以上含む層の片面に脂肪族ポリアミド層を積層したポリアミドフィルムの該芳香族ポリアミドを含む層の面に、芳香族ジカルボン酸60〜99.5モル%、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環族ジカルボン酸0〜40モル%、二重結合を有するジカルボン酸0.5〜10モル%の組成のジカルボン酸成分を用い、炭素数2〜10の脂肪族及び/又は炭素数6〜12の脂環族及び/又はエーテル結合含有グリコールをグリコール成分とする疎水性ポリエステルに少なくともマレイン酸の無水物とスチレンを含有する重合性不飽和単量体がグラフトされた、ポリエステル系グラフト重合体を含む層および金属酸化物薄膜層が順に形成されていることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
- 95℃の熱水中で30分間のボイル処理後の基材ポリアミドフィルムと金属酸化物薄膜層との密着強度が100g/15mm以上であることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性積層フィルム。
- ポリエステル系グラフト重合体を含む層が、該グラフト重合体を含む塗布液を、未延伸または一軸延伸フィルムに塗布、乾燥後、該フィルムを更に、一軸またはそれ以上延伸後、熱固定することによって形成された請求項1記載のガスバリア性積層フィルム。
- 金属酸化物薄膜層が酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物からなる薄膜層である請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 該金属酸化物薄膜層において酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物中の酸化アルミニウムの含有率が5重量%以上45重量%以下である請求項4記載のガスバリア性積層フィルム。
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