JP4452961B2 - 積層フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生鮮食品、加工食品、医薬品、医療機器、電子部品等の包装用フィルムにおいて重要な特性であるガスバリア性や防湿性に優れ、且つ透明性及び取扱性に優れた積層フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品の流通形態や食生活の変革によって食品の包装形態も大幅に変わってきており、包装用のフィルムやシートに対する要求特性はますます厳しくなってきている。
【0003】
流通販売過程における温度や湿分、酸素、紫外線、更には細菌やカビ等の微生物の影響による製品の品質低下は、販売上の損失を招くのみならず食品衛生面からも大きな問題である。この様な品質低下を防止する方法として、従来は酸化防止剤や防腐剤等を食品に直接添加していたが、最近では、消費者保護の立場から食品添加物の規制が厳しくなり、添加量の減少もしくは無添加が求められており、この様な状況の下で、気体や水分の透過度が小さく、しかも冷凍加工や煮沸処理、レトルト処理等によっても食品としての品質低下を起こさない様な包装フィルムへの要望が高まっている。
【0004】
すなわち、魚肉、畜肉、貝類等の包装においては、蛋白質や油脂等の酸化や変質を抑制し、味や鮮度を保持することが重要であり、そのためには、ガスバリア性のよい包装材を用いて空気の透過を遮断することが望まれる。しかもガスバリア性フィルムで包装すると、内容物の香気が保持されると共に水分の透過も阻止されるので、乾燥物では吸湿劣化が抑制され、含水物の場合は水分の揮発による変質や固化が抑制され、包装時の新鮮な風味を長時間維持することが可能となる。
こうした理由から、かまぼこ等の練り製品、バター、チーズ等の乳製品、味噌、茶、コーヒー、ハム・ソーセージ類、インスタント食品、カステラ、ビスケット等の菓子類の包装フィルムにおいては、前記ガスバリア性や防湿性が極めて重要な特性とされている。これらの特性は食品包装用フィルムに限られるものではなく、無菌状態での取扱いが必要とされる医療品、あるいは防錆性が必要な電子部品などの包装用フィルムとしても極めて重要となる。
【0005】
ガスバリア性に優れたフィルムとしては、プラスチックフィルム上にアルミニウム等の金属箔を積層したもの、塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体をコーティングしたものが知られている。また、無機質薄膜を利用したものとして、酸化珪素や酸化アルミニウム等の蒸着膜を積層したものも知られている。
【0006】
実際に使用する形態としては、印刷層、さらに接着剤を設けた上へ、ドライラミネート法によってシーラント層を設けるか、あるいは押出ラミネート法によりシーラント層を設けるなどしてポリアミドフィルムの積層体とし、該積層体を用いて袋を作成し内容物を充填後、開口部をヒートシールして、たとえば味噌や醤油などの調味料、スープやレトルト食品等の水分含有食品あるいは薬品など包装して一般消費者に提供している。
【0007】
上記の様な従来のガスバリア性フィルムには、それぞれ次の様な問題点が指摘されている。ガスバリア層としてアルミニウム箔を積層したものは、経済性やガスバリア性において優れたものではあるが、不透明であるため包装した時に内容物が見えず、またマイクロ波を透過しないため電子レンジによる処理ができない。
また、塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体をコーティングしたものは、水蒸気や酸素等に対するガスバリア性が十分でなく、特に高温処理による性能低下が著しい。しかも塩化ビニリデン系については、焼却時の塩素ガスの発生等により大気汚染を招くことも懸念される。
【0008】
そこで、ガスバリア層として酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機質蒸着層を形成した樹脂フィルムが提案された。酸化珪素や酸化アルミニウム等が蒸着される基材フィルムとしては、寸法安定性の良いポリエステルフィルム(PET)が従来から使用されてきた。構成としては、PET/蒸着層/接着層/PET/接着層/未延伸ポリプロピレン(CPP)の様な積層構造とするのが通例となっているが、この様な積層構造のフィルムでは、落下衝撃に対する強度不足が問題となる。
【0009】
一方、PET/蒸着層/接着層/延伸ナイロン(ONY)/接着層/未延伸ポリプロピレン(CPP)の様な積層構造の場合、ナイロンの収縮により煮沸処理やレトルト処理後のガスバリア性が劣化するという問題が生じてくる。
【0010】
そこで高温熱水処理時の収縮率を低減させたナイロンを積層したフィルム(特開平7−276571号公報)が提案されている。しかし、積層するフィルムが多くなるため製造工程や搬送・保管時のプロセスが繁雑になるので経済性に劣ることや、フィルムが厚くなるため取り扱いが困難になるなど実用にそぐわない。
【0011】
一方、ナイロンフィルムを蒸着基材として使用したガスバリア性フィルムが検討されたが、ナイロンフィルムは吸湿や加熱による寸法変化が大きいためバリア性が不安定であり、特に煮沸処理やレトルト処理後のガスバリア性が劣化するという問題が生じてくる。
【0012】
そこでガスバリア性向上対策として、加熱処理により予め収縮率を低減させた延伸ナイロンを蒸着基材として使用した積層フィルム(特公平7−12649号公報)が提案されている。しかし、製造工程や搬送・保管時のプロセスが繁雑になるため実用にそぐわない。また、高温処理時の収縮率が小さいナイロン(特公平7−12649号公報では、120℃で5分間加熱したときの縦方向及び横方向の寸法変化率の絶対値の和が2%以下)であっても、高温熱水処理である煮沸処理では優れたガスバリア性を維持できない。
【0013】
また、ナイロンフィルムを蒸着基材に用いた場合、ナイロンフィルムと蒸着層の間に水が浸入すると層間の接着力が著しく低下し、包装袋として用いたとき破袋の原因となるだけではなくガスバリア性の低下にもつながると考えられる。この様に酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機質蒸着層を設けた積層構造のガスバリア性フィルムは強度が必ずしも十分でなく、また煮沸処理やレトルト処理によるガスバリア性の劣化が指摘される。
【0014】
この他、透明で内容物を透視することができ且つ電子レンジへの適用が可能なガスバリアフィルムとして、特公昭51−48511号公報には、合成樹脂基材の表面にSixOy系(例えばSiO2 )を蒸着したガスバリアフィルムが提案されている。ところが、ガスバリア性の良好なSiOx系(x=1.3〜1.8)蒸着膜はやや褐色を有しており、透明ガスバリアフィルムとしては、品質において十分なものとは言えない。特開昭62−101428号公報には、酸化アルミニウムを主体とする無機質蒸着層を設けたものが記載されているが、これはガスバリア性が不十分であるばかりでなく、耐屈曲性の問題もある。
【0015】
また、耐煮沸性や耐レトルト性を有するガスバリア層として、Al2O3 ・SiO2系の例として特開平2−194944号公報に提案されているものもあるが、Al2O3 とSiO2を積層したものであり、ガスバリア層の形成が煩雑であり、且つ大掛かりな装置を必要とする。しかも、これら無機質薄膜をガスバリア層とするフィルムも、ガスバリア特性と耐屈曲性を両立させるという観点からすると、依然として不十分と言わざるを得ない。即ち、優れた耐煮沸性や耐レトルト性を与えるには、ある程度以上(例えば、2,000Å程度以上)の膜厚が要求されるのに対し、膜厚を厚くすると耐屈曲性が劣化して落下衝撃に耐えなくなるという問題があり、十分なガスバリア性や防湿性を備え、且つ耐煮沸性や耐レトルト性も良好であり、更には耐屈曲性に優れ落下衝撃にも十分に耐え得る様なガスバリアフィルムは現在のところ提案されていない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる事情に着目してなされたものであり、その目的は、初期及びボイル処理後においてもガスバリア性と接着性に優れ、かつ透明性や耐屈曲疲労性にも優れる積層フィルムを経済的に提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み、本発明者らは鋭意研究の結果ついに本発明に到達した。すなわち、本発明の課題は下記の達成手段により解決される。
【0018】
1. 二軸配向ポリアミドフィルムの少なくとも片面に無機質蒸着層、次いでシーラント層を設けた積層フィルムであって、前記二軸配向ポリアミドフィルムが、A/B/A、またはA/B/Cの層構成からなり、A層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、下記に示すX及びYからなる組成物、またはX単独からなる組成物からなり、B層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、Y単独からなる組成物、Y及びXからなる組成物、Y及びZからなる組成物、又はX、Y、及びZからなる組成物のいずれか一種の組成物からなり、C層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、X及び/又はYからなる組成物からなり、前記積層フィルムの95℃熱水浸漬中の平均寸法変化率が3.0%以下及び最大寸法変化率差が2.0%以下であり、かつ、前記熱水より取り出した後の平均寸法変化率が2.0%以下及び最大寸法変化率差が2.0%以下であることを特徴とする積層フィルム。
(X):テレフタル酸と脂肪族ジアミンまたはアジピン酸とメタキシリレンジアミンからなる芳香族ポリアミド樹脂成分(a)と脂肪族ポリアミド系樹脂またはイソフタル酸と脂肪族ジアミンからなる芳香族ポリアミド樹脂(b)の混合体及び/又は共重合体で、該芳香族ポリアミド樹脂成分(a)を10モル%以上含有した樹脂組成物
(Y):脂肪族ポリアミド系樹脂
(Z):耐屈曲疲労性改良剤
【0021】
. A層、またはA層及びC層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、前記Xを50〜100重量部、前記Yを50〜0重量部配合して得られ、B層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、前記Xを0〜10重量部、前記Yを80〜100重量部、前記Zを0〜10重量部配合して得られることを特徴とする前記1に記載の積層フィルム。
【0022】
. 前記記載の二軸配向ポリアミドフィルムと無機質蒸着層との間にアンカーコート層を積層することを特徴とする前記1又は2に記載の積層フィルム。
【0023】
. 前記無機質蒸着層が酸化珪素及び/又は酸化アルミニウムの混合物薄膜層であることを特徴とする前記1乃至3のいずれかに記載の積層フィルム。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明で規定する各層構成材について詳細に説明すると共に、請求項記載の特性を定めた理由について詳述する。
【0025】
本発明の積層フィルムは、95℃熱水浸漬中の平均寸法変化率が3.0%以下及び最大寸法変化率差が2.0%以下であり、かつ、前記熱水より取り出した後の平均寸法変化率が2.0%以下及び最大寸法変化率差が2.0%以下であることが必要である。
【0026】
すなわち、前記二軸配向ポリアミドフィルムの95℃熱水浸漬中の平均寸法変化率が3.0%を超えると、及び/または最大寸法変化率差が2.0%を超えると、煮沸処理中、または、レトルト処理中に積層フィルムのガスバリア層を構成する無機質蒸着層に変形応力を生じしめ、該無機質蒸着層の破壊もしくは剥離を生じさせる原因となり、煮沸処理後、または、レトルト処理後において、優れたガスバリア性を持続することが出来ないため好ましくない。
【0027】
前記積層フィルムの95℃熱水浸漬中の平均寸法変化率は、2.7%以下が好ましく、2.3%以下が特に好ましい。また、95℃熱水浸漬中の最大寸法変化率差は、1.8%以下が好ましく、1.5%以下が特に好ましい。
【0028】
また、前記積層フィルムを95℃熱水浸漬後に該熱水より取り出した後の平均寸法変化率が、2.0%を超えると、及び/または最大寸法変化率差が2.0%を超えると、煮沸処理後、または、レトルト処理後に積層フィルムのガスバリア層を構成する無機質蒸着層に変形応力を生じしめ、該無機質蒸着層の破壊もしくは剥離を生じさせる原因となり、煮沸処理後、または、レトルト処理後において、優れたガスバリア性を持続することが出来ないため好ましくない。
【0029】
前記積層フィルムの95℃熱水浸漬後に該熱水より取り出した後の平均寸法変化率は、1.8%以下が好ましく、特に好ましくは1.5%以下である。また、95℃熱水浸漬後に該熱水より取り出した後の最大寸法変化率差は、1.8%以下が好ましく、特に好ましくは1.5%以下である。
【0030】
すなわち、積層フィルムの95℃熱水浸漬中の平均寸法変化率を3.0%以下及び最大寸法変化率差を2.0%以下とし、かつ、該熱水より取り出した後の平均寸法変化率を2.0%以下及び最大寸法変化率差を2.0%以下とすることにより、ガスバリア層を構成する無機質蒸着層の支持層としての機能を果たすものであり、とりわけ煮沸処理やレトルト処理後においても優れたガスバリア性を持続することが出来る。
【0031】
95℃熱水浸漬中の平均寸法変化率が3.0%以下及び最大寸法変化率差が2.0%以下であり、かつ、該熱水より取り出した後の平均寸法変化率が4.0%以下及び最大寸法変化率差が2.0%以下である積層フィルムを製造するためには、下記の製造方法が好適である。
【0032】
本発明の積層フィルムの基層の二軸配向ポリアミドフィルムは、A/B(二種二層)、A/B/A(二種三層)、またはA/B/C(三種三層)の構成を有していることが好ましく、カールの点から、対称層構成であるA/B/A構成が特に好ましい。
【0033】
二軸配向ポリアミドフィルムの各層の厚み比率は、A層、またはA層及びC層を5〜50%とすることが好ましく、さらに好ましくは10〜40%であり、特に好ましくは12〜35%である。二種三層のA/B/A構成の場合は、前記記載の表層のA層の厚み比率は、両表層の厚み比率の和を意味し、三種三層のA/B/C構成の場合は、前記記載の表層のA層及びC層の厚み比率は、両表層の厚み比率の和を意味する。A層、またはA層及びC層の厚み比率が5%未満では、寸法安定性が不十分となり、酸素透過度が悪化するため好ましくない。一方、A層、またはA層及びC層の厚み比率が50%を超えると、耐屈曲疲労性が悪化し、ピンホール数が増加するため好ましくない。
【0034】
A層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、下記に示すX及びYからなる組成物、又はX単独からなる組成物を配合していることが好ましく、B層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、Y単独からなる組成物、Y及びXからなる組成物、Y及びZからなる組成物、又はX、Y、及びZからなる組成物のいずれか一種の組成物を配合していることが好ましく、 C層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、X及び/又はYからなる組成物が好ましい。
【0035】
前記Xは、テレフタル酸と脂肪族ジアミンまたはアジピン酸とメタキシリレンジアミンからなる芳香族ポリアミド樹脂成分(a)と脂肪族ポリアミド系樹脂またはイソフタル酸と脂肪族ジアミンからなる芳香族ポリアミド樹脂(b)の混合体及び/又は共重合体で、該芳香族ポリアミド樹脂成分(a)を10モル%以上含有した樹脂組成物である。また、前記Yは脂肪族ポリアミド系樹脂であり、前記Zは耐屈曲疲労性改良剤である。
【0036】
また、A層、またはA層及びC層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、前記Xを50〜100重量部、前記Yを50〜0重量部配合していることが好ましく、B層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、前記Xを0〜10重量部、前記Yを80〜100重量部、前記Zを0〜10重量部配合していることが好ましい。
【0037】
本発明で使用される脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン612、ナイロン46及びこれらの共重合体、ブレンド物等が挙げられるが、ナイロン6及びナイロン66が好ましい。また、これらのポリアミドにその性質を損なわない範囲で少量の各種耐ブロッキング剤、帯電防止剤、安定剤等の作用効果の分かった公知の物質を含有してよい。
【0038】
また、本発明で使用される耐屈曲疲労性改良剤としては、ブロックポリエステルアミド、ブロックポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、変性エチレンプロピレンゴム、変性アクリルなどのエラストマーやエチレン/アクリレート共重合体を混合配合することが出来る。
【0039】
本発明の積層フィルムの基材となるポリアミドフィルムは、A/B、A/B/A、またはA/B/Cの層構成を有する実質的に未配向のポリアミドシートを縦2段延伸し、続いて横延伸し、更に熱固定することによって得られる二軸配向ポリアミドフィルムが好適である。
【0040】
すなわち、実質的に未配向のポリアミドシートを縦延伸するにあたり、第1段目の延伸を施し、Tg以下に冷却することなく、引続き第2段目の延伸を行い、しかるのち3.0倍以上5.0倍以下、好ましくは、3.5倍以上4.2倍以下の倍率で横延伸し、更に熱固定することによって得られる二軸配向ポリアミドフィルムである。これらの縦延伸には、熱ロール延伸、赤外線輻射延伸等の公知の縦延伸方法を用いてよい。
【0041】
次に、本発明の積層フィルムの基材となる二軸配向ポリアミドフィルムを好適に製造する方法について、詳細に説明する。まず、該A/B、該A/B/A、または該A/B/Cの層構成の実質的に未配向のポリアミドシートを製膜するにあたり、各層を構成する重合体を別々の押出し機を用いて溶融し、共押出し、口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化しポリアミドシートを得る方法、各層を構成する重合体をラミネートにより積層する方法、及びこれらを組み合わせた方法などをとることができる。このポリアミドシートは、実質的に未配向状態である。
【0042】
この未延伸ポリアミドシートを、まずTg+10℃以上、Tc+20℃以下の温度で、1.1〜3.0倍に第1段延伸する。1.1以下では、延伸効果が現れず、また、3.0を越えると配向結晶化が進行し、後述する第2段延伸での延伸応力が高くなり破断したり、あるいは横延伸での破断につながるため好ましくない。より好ましくは、1.5〜2.5倍である。延伸温度は、Tg+10℃未満では、ネッキングを生じ厚み斑が増大しやすくなり、Tc+20℃を越えると熱結晶化が著しく進行し、横延伸で破断しやすくなり好ましくない。より好ましくは、Tg+20〜Tc+10℃である。
【0043】
この第1段延伸後、引続き第2段延伸をするわけであるが、その間のシート温度を如何にするかが本発明の特徴の1つである。すなわち、強制的に冷却するのではなく加熱保温し、しかも第2段延伸の予熱あるいは延伸のための加熱を兼用することにある。強制的に冷却し、更に第2段延伸のために再加熱すると熱結晶化が著しく進行し、横延伸応力が増大し、破断が頻発し好ましくない。Tg以下に冷却しないこの加熱保温の区間でも熱結晶化は進行するが、前述の強制冷却、再加熱に比べると甚だ遅く実用上問題とはならない。
【0044】
次に、このシートを総合縦延伸倍率が、3.1〜4.0倍となるように第2段延伸する。3.1倍未満であると横延伸応力が低下し破断が少なくなるものの、縦方向強度が小さくなり、4.0倍を越えると横延伸応力が著しく増加し破断が頻発し好ましくない。総合縦延伸倍率は、3.3〜3.7倍とすることが好ましい。
【0045】
第2段目の縦延伸温度は、Tg+10℃〜Tc+20℃である。Tg+10℃未満では、横延伸応力が著しく増加し破断が頻発し好ましくなく、Tc+20℃を越えると厚み斑が大きくなり、かつ熱結晶化が著しく進行し、横延伸応力が増大し、破断が頻発し好ましくない。より好ましくはTg+20℃〜Tc+10℃である。
【0046】
このようにして得られた一軸配向ポリアミドフィルムを、ステンターを使用して、100℃〜融点未満の温度で3.0〜5.0倍横延伸し、次いで熱固定し巻き取る。好ましくは、横延伸温度が100〜180℃であり、横延伸倍率は3.5〜4.2倍である。横延伸温度が低すぎると横延伸性が悪化(破断発生)し、高すぎると厚み斑が悪くなる。横延伸の延伸倍率においては、3倍以上にしなければ、横方向の強度が低くなる。
【0047】
このように、該A/B、該A/B/A、または該A/B/Cの層構成の実質的に未配向のポリアミドシートの縦延伸を2段階に分け、第1段延伸実施後、Tg以下に冷却することなく、引続き第2段延伸を施し、次いで横延伸、熱固定を行って得た二軸配向ポリアミドフィルムを基材として使用することは、95℃熱水浸漬中の平均寸法変化率が3.0%以下及び最大寸法変化率差が2.0%以下であり、かつ、前記熱水より取り出した後の平均寸法変化率が2.0%以下及び最大寸法変化率差が2.0%以下となる、積層フィルムを得るのに好適である。
【0048】
この理由は、縦延伸を2段階行うことにより、シート表面が熱履歴を受け熱結晶化が適度に促進され、得られた二軸配向ポリアミドフィルムの表面結晶化が促進され、前記二軸配向ポリアミドフィルムの吸湿性が低減し、熱水浸漬時及び該熱水解放後の寸法変化が低減されるためと考えられる。また、同時に、縦延伸を2段階に分割することによる延伸応力の削減効果のみならず、第1延伸と第2延伸のあいだを加熱保温することにより、強制冷却から再加熱時に生ずるポリアミド特有の水素結合による結晶化促進作用を防止し、更に第1段延伸後シート配向緩和作用を引出し、横延伸前の1軸配向フィルムの構造を緩やかなものとしたため、横延伸時に発現する横配向の形成が容易になり、しかも横延伸応力低減により延伸性が向上するためと考えられる。その結果、操業トラブルの少ない積層フィルムを経済的に提供することができる。
【0049】
次に、ガスバリア層を構成する無機質蒸着層としては、酸化珪素、酸化アルミニウム酸化、酸化マグネシウムやこれらの混合物などが挙げられる。ここでいう酸化珪素とは、SiOやSiO2等の各種珪素酸化物の混合物からなり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl2O3等の各種アルミニウム酸化物の混合物からなり、各酸化物内における酸素の結合量はそれぞれの作製条件によって異なってくる。
【0050】
特に、酸化アルミニウムと酸化珪素の混合物は、透明性や耐屈曲性も優れることから、本発明におけるガスバリア層として好ましい。さらに、ガスバリア層中に占める酸化アルミニウムの含有率が5〜45重量%の酸化珪素と酸化アルミニウムの混合物が好ましい。
【0051】
酸化珪素/酸化アルミニウム系蒸着膜中の酸化アルミニウム含有量が5重量%未満では、蒸着膜中に格子欠陥が生じ十分なガスバリア性が得られないという問題が生じる。また、酸化珪素/酸化アルミニウム系蒸着膜中の酸化アルミニウム含有量が45重量%を超えると、膜の柔軟性が低下し、熱水処理時における寸法変化によって膜の破壊(割れや剥離)が生じ易くなり、バリア性が低下するという問題が生じ、本発明の目的にそぐわなくなる。
【0052】
酸化アルミニウムのより好ましい比率は、10〜35重量%、更に好ましくは15〜25重量%である。なお、前記酸化珪素/酸化アルミニウム系蒸着膜中には、その特性を損なわない範囲で更に他の酸化物等を微量(せいぜい3重量%まで)含んでいても構わない。
【0053】
上記酸化珪素と酸化アルミニウムとからなるガスバリア層の膜厚は、通常10〜5,000Å、好ましくは50〜2,000Åであり、膜厚が10Å未満では満足のいくガスバリア性が得られ難く、また5,000Åを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点で却って不利となる。
【0054】
酸化珪素/酸化アルミニウム系蒸着膜の作製には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、あるいはCVD等の化学蒸着法等が適宜用いられる。たとえば真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiO2とAl2O3との混合物、あるいはSiO2とAlとの混合物等が用いられる。加熱には、抵抗加熱、誘導加熱、電子線加熱等を採用することができ、また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。更に、基板にバイアスを印加したり、基板を加熱したり冷却する等、成膜条件も任意に変更することができる。上記蒸着材料、反応ガス、基板バイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0055】
また、蒸着の前あるいは蒸着中に、基層となる二軸配向ポリアミドフィルムの表面にコロナ処理、火炎処理、低温プラズマ処理、グロー放電処理、逆スパッタ処理、粗面化処理などを施し、蒸着膜の密着強度向上を図ることも有効である。この様な成分組成の酸化珪素/酸化アルミニウム系薄膜とすることにより透明で、煮沸処理やゲルボ試験(耐屈曲性試験)にも耐え得る優れた性能のガスバリアフィルムを得ることが可能となる。
【0056】
なお、本発明の二軸配向ポリアミドフィルムの少なくとも片面に無機質蒸着層、次いでシーラント層を設けた積層フィルムのガスバリア性には、基層となる二軸配向ポリアミドフィルムと前記ガスバリア層との密着強度が大きく関係しており、密着強度が大きいほどガスバリア性は向上する。そして本発明者らの検討結果によれば、優れたガスバリア性を有し、且つ煮沸処理後においてもその優れたガスバリア性を維持させるには、煮沸処理後の密着強度を100g/15mm以上にすべきであることを確認している。より好ましい密着強度は150g/15mm以上、さらに好ましくは200g/15mm以上、一層好ましくは250g/15mm以上である。密着強度が100g/15mmに満たない場合は、煮沸処理によってガスバリア性が悪くなる傾向が現われてくる。この理由は、密着強度が大きければ、煮沸処理やレトルト処理によって蒸着基材に若干の収縮が起こった場合でも、無機質蒸着層の剥離が起こり難くなるためと考えられる。
【0057】
この様に優れた密着強度を得るための手段としては、無機質蒸着層の基層となる二軸配向ポリアミドフィルムの表面に、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、逆スパッタ処理、粗面化処理等を施したり、あるいはポリアミド系樹脂フィルム上に密着力向上の為のアンカーコート層を形成する等の方法があるが、勿論これらの方法に限定されるものではない。
【0058】
密着強度向上の為に好ましく使用される前記アンカーコート剤としては、反応性ポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、メラミン変性アルキド樹脂、エポキシ硬化アクリル樹脂、エポキシ系樹脂(アミン、カルボキシル基末端ポリエステル、フェノール、イソシアネート等を硬化剤として用いたもの)、イソシアネート系樹脂(アミン、尿素、カルボン酸等を硬化剤として用いたもの)、ウレタン−ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、反応性アクリル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等及びこれらの共重合体が例示される。これらは水に可溶化及至分散化した水性樹脂として用いることもできる。この他、シランカップリング剤などの無機系コート剤をアンカーコート剤として使用することも有効である。
【0059】
前記アンカーコート層の形成法としては、ポリアミド系樹脂フィルムの製造時に塗布するインライン方法、ポリアミド系樹脂フィルムの製造とは別工程で塗布するオフライン方法のいずれを採用することもできる。また、塗布には公知の塗工法、たとえばロールコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、グラビアコート法、含浸法、カーテンコート法等を採用することができる。
【0060】
また、本発明者らの検討結果によると、該アンカーコート層の形成による基層と無機質蒸着層との密着強度の向上には、コスト、衛生性の点から水系ポリエステル樹脂の使用が好ましい。この様なポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸またはトリカルボン酸とグリコール類を重縮合することによって得られる。該重縮合に用いられる成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、トリメリット酸等の酸成分、及びエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、エチレングリコール変性ビスフェノールA等のグリコール成分が挙げられるが、勿論これらに限られるものではない。またこのポリエステル系樹脂は、アクリル系モノマーをグラフト共重合したものであっても構わない。
【0061】
該アンカーコート層の好ましい厚みは0.01〜10μm、より好ましくは0.02〜5μmであり、厚さが0.02μm未満では密着強度向上効果が十分に発揮され難くなる傾向があり、また5μmを越えて過度に厚くしてもそれ以上の密着性向上効果は発揮されず、経済的にも不利となる。
【0062】
前記無機質蒸着層の表面には、熱接着性を付与するために、ポリオレフィン系樹脂よりなるヒートシール層が形成されるが、該ヒートシール層は無機質蒸着層の保護層としての機能も有しており、その機能を有効に果たす上で、該無機質蒸着層とヒートシール層との接着力を高めることは極めて有効であり、そのための手段として、無機質蒸着層とヒートシール層との間に接着剤層を設けることは極めて有効である。
【0063】
ヒートシール層を構成するポリオレフィン系樹脂は、必ずしも単層である必要はなく複層であってもよく、複層構造とするときの各層を構成する樹脂も、同種の樹脂の組合せはもとより、異種ポリマーの共重合物や変性物、ブレンド物などを積層したものであってもよい。たとえば、ラミネート性やヒートシール性を高めるため、ベースとなる熱可塑性ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)や融点よりも低いポリマーを複合したり、耐熱性を付与するため逆にTgや融点の高いポリマーを複合することも可能である。
【0064】
ヒートシール層を構成する上記ポリオレフィン系樹脂には、必要に応じて各種の添加剤、たとえば可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、帯電防止剤、抗菌剤、滑剤、耐ブロッキング剤、他の樹脂などをブレンドすることも可能である。
【0065】
接着剤層を構成する樹脂として特に好ましいのは、ガラス転移温度が−10℃〜40℃の範囲の樹脂、たとえばポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂などであり、これらは単独で使用し得るほか、必要により2種以上を併用したり溶融混合して使用し、あるいは官能基として例えば、カルボン酸基、酸無水物、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する化合物;グリシジル基やグリシジルエーテル基を含むエポキシ化合物;オキサゾリン基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基等の反応性官能基を有する硬化剤もしくは硬化促進剤を配合した接着剤組成物を使用することも有効である。
【0066】
そしてポリオレフィン系樹脂の積層は、接着剤を用いたドライラミネート法やウェットラミネート法、更には溶融押し出しラミネート法や共押し出しラミネート法などによって、無機質蒸着層の上にヒートシール層として形成される。
【0067】
かくして得られる本発明の積層フィルムまたはシートは、その優れたガスバリア性及び煮沸処理やレトルト処理によるガスバリア持続性及び2次加工特性を生かし、包装材料として味噌、漬物、惣菜、ベビーフード、佃煮、こんにゃく、ちくわ、蒲鉾、水産加工品、ミートボール、ハンバーグ、ジンギスカン、ハム、ソーセージ、その他の畜肉加工品、茶、コーヒー、紅茶、鰹節、昆布、ポテトチップス、バターピーナッツなどの油菓子、米菓、ビスケット、クッキー、ケーキ、饅頭、カステラ、チーズ、バター、切り餅、スープ、ソース、ラーメン、わさび、また、練り歯磨きなどの包装に有効に利用することができ、更にはペットフード、農薬、肥料、輸液パック、或は半導体や精密材料包装など医療、電子、化学、機械などの産業材料包装にも有効に活用することができる。 また包装材料の形態にも特に制限がなく、袋、フタ材、カップ、チューブ、スタンディングパック等に幅広く適用できる。
【0068】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。
【0069】
本発明は、下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することももちろん可能であり、それらはいずれも本発明技術的範囲に包含される。また、下記実施例で採用した各種の性能試験は次の方法によって行った。
【0070】
(1)酸素透過率:酸素透過度測定装置(「OX−TRAN 10/50A」ModernControls社製)を使用し、湿度0%、温度25℃で測定した。
【0071】
(2)密着強度:ラミネートしたものを東洋測器社製「テンシロンUTM2」を用いて、界面に水を付着させながら180度剥離し、ガスバリア層と基層材間のS−Sカーブを測定して求めた。
【0072】
(3)耐屈曲疲労試験:耐屈曲疲労試験(以下、ゲルボ試験)は、理学工業社製のゲルボフレックステスターを用いて評価した。条件としては、(MIL−B131H)DE112インチ×8インチの試験片を直径3(1/2)インチの円筒状とし、両端を保持し、初期把握間隔7インチとし、ストロークの3(1/2)インチで、400度のひねりを加える。この動作の繰り返し往復運動を40回/minの速さで、1000回行なう。測定雰囲気は、20℃、相対湿度は65%である。このときのピンホール数を数えた。
【0073】
(4)ガラス転移温度(Tg)及び低温結晶化温度(Tc):未配向ポリアミドシートを液体窒素中で凍結し、減圧解凍後にセイコー電子製DSCを用い、昇温速度10℃/分で測定し、得られた吸熱発熱曲線より、各積層ポリアミドシートのTg及びTcをそれぞれ評価し平均化することで、未配向ポリアミドシートのTg及びTcを見積もった。
【0074】
(5)フィルム温度:縦延伸における温度は、ミノルタ(株)製放射温度計IR−004を用いフィルムの温度を測定した。
【0075】
(6)製膜状況:2時間、同一条件で逐次2軸延伸し、破断回数を調べた。
【0076】
(7)寸法変化率
フィルム全方向に対し、10°ピッチで各々作成した長さ100mm×幅10mmの短冊を、23℃、65%RH環境下に2時間放置後、長さ方向の両端部から25mmの位置(チャックで固定される部分)にそれぞれ標線を引き、標線間の距離を処理前の長さ(A:mm)とする。次いで、差動変圧器式変位計測装置が装備された熱収縮応力試験機(株式会社エー・アンド・ディ製)を使用し、短冊状サンプルをチャックで固定し、初期荷重10gを前記サンプルにかけ、95℃の熱水中で30分間浸漬した時の標線間隔を測定し、熱水浸漬中の処理後の長さ(B:mm)とする。その後、熱水より短冊状サンプルを取り出して、表面に付着した水分を除去し、23℃、65%RH環境下に2時間放置後、標線間隔を測定し、熱水より取り出した後の処理後の長さ(C:mm)とする。寸法変化率は、下記(1)式及び(2)式で求めることができる。平均寸法変化率は、10°ピッチでフィルム全方向に各々測定した寸法変化率の平均値を示す。また、最大寸法変化率差は、前記で測定した各寸法変化率の最大値と最小値の差を示す。
熱水浸漬中の寸法変化率(%)=│A−B│/A×100・・・(1)
熱水より取り出した後の寸法変化率(%)=│A−C│/A×100・・・(2)
【0077】
(実施例1)
A層として、35重量部のナイロン6とナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比:65/35)65重量部の混合物、B層として100重量部のナイロン6をTダイからA/B/Aの厚み比率(%)を10/80/10の構成となるように積層しながら溶融押出しし、直流高電圧を印可して20℃の回転ドラム上に静電気的に密着させ、冷却固化せしめて厚さ180μmの未配向ポリアミドシートを得た。このシートのTgは47℃、Tcは77℃であった。
【0078】
このシートを延伸温度78℃で1.8倍に第1段縦延伸した後、75℃に保温しつつ延伸温度80℃で総合延伸倍率が3.2倍となるように第2段縦延伸を行い、引続きこのシートを連続的にステンターに導き、135℃で4倍に横延伸し、210℃で熱固定及び6%の横弛緩処理を施した後に冷却し、両縁部を裁断除去して、厚み15μmの二軸配向ポリアミドフィルムを得た。この際、同一条件で製膜を2時間続けても破断がまったく発生しなかった。また、縦延伸後に水分散性アクリルグラフトポリエステル樹脂を固形分厚みで約0.1μmとなるようコートした。このフィルムは、耐屈曲疲労性、接着性のいずれも優れていた。
【0079】
このフィルムを真空蒸着装置へ送り、チャンバー内を1×10−5Torrの圧力に保持し、SiO2:70重量%とAl2O3:30重量%混合酸化物を15kWの電子線加熱によって蒸発させ、厚さ190Åの無色透明な無機酸化物層をコーティング面に蒸着させ、無機蒸着層を形成させた。次いで、この無機蒸着層上に、シーラント層として未延伸ポリエチレン(厚さ:50μm)を接着剤(武田薬品社製「A310/A10」、塗布量2g/m)を用いてドライラミネートし、45℃で4日間エージングして積層フィルムを得た。
【0080】
この積層フィルムについて、下記(5)〜(8)の評価を行い、基層の二軸配向ポリアミドフィルムについては、製膜状況(2時間、同一条件で逐次2軸延伸した際の破断回数)のほか、下記(1)〜(4)の評価を行った。
(1)未処理フィルムの酸素透過度(cc/m2・atm・day)
(2)95℃の熱水中に30分浸漬後、1hr放置後のフィルムの酸素透過度 (cc/m2・atm・day)
(3)95℃の熱水中に30分浸漬後、1hr放置後のフィルムの剥離界面に水を滴下したときの密着力(g/15mm)
(4)耐屈曲疲労性試験後のピンホール数(個)
(5)熱水浸漬中の平均寸法変化率(%)
(6)熱水浸漬中の最大寸法変化率差(%)
(7)熱水より取り出した後の平均寸法変化率(%)
(8)熱水より取り出した後の最大寸法変化率差(%)
【0081】
(実施例2)
総合延伸倍率を3.5倍となるように第2段縦延伸を行う以外は、すべて実施例1と同様にして積層フィルムを得た。基層の二軸配向ポリアミドの製造時、同一条件で製膜を2時間続けても破断がまったく発生しなかった。
【0082】
(実施例3)
A層として、20重量部のナイロン6とナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比:65/35)80重量部の混合物を用い、A/Bの厚み比率を15/85の構成となるように積層する以外は、すべて実施例1と同様にして積層フィルムを得た。基層の二軸配向ポリアミドの製造時、同一条件で製膜を2時間続けても破断がまったく発生しなかった。
【0083】
(実施例4)
A層として、20重量部のナイロン6とナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比:65/35)80重量部の混合物を用い、C層として、20重量部のナイロン6と80重量部のMXD−6混合物を用い、A/B/Cの厚み比率(%)を10/80/10の構成とする以外は、すべて実施例1と同様にして積層フィルムを得た。基層の二軸配向ポリアミドの製造時、同一条件で製膜を2時間続けても破断がまったく発生しなかった。
【0084】
(比較例1)
総合延伸倍率を2.6倍となるように第2段縦延伸を行う以外は、すべて実施例1と同様にして積層フィルムを得た。基層の二軸配向ポリアミドの製造時、同一条件で製膜を2時間続けても破断がまったく発生しなかった。
【0085】
(比較例2)
A層として、80重量部のナイロン6とナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比:65/35)20重量部の混合物を用いる以外は、すべて実施例1と同様にして積層フィルムを得た。基層の二軸配向ポリアミドの製造時、同一条件で製膜を2時間続けても破断がまったく発生しなかった。
【0086】
(比較例3)
A層として、80重量部のナイロン6と20重量部のナイロンMXD−6の混合物を用いる以外は、すべて実施例1と同様にして積層フィルムを得た。基層の二軸配向ポリアミドの製造時、同一条件で製膜を2時間続けても破断がまったく発生しなかった。
【0087】
【表1】
Figure 0004452961
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、破断なく、優れたガスバリア性を有しているばかりでなく、ボイル処理後もその優れたガスバリア性を保持し、かつ耐屈曲疲労性を兼ね備えることができ、優れた積層フィルムを経済的に製造するのに有効である。

Claims (4)

  1. 二軸配向ポリアミドフィルムの少なくとも片面に無機質蒸着層、次いでシーラント層を設けた積層フィルムであって、前記二軸配向ポリアミドフィルムが、A/B/A、またはA/B/Cの層構成からなり、A層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、下記に示すX及びYからなる組成物、またはX単独からなる組成物からなり、B層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、Y単独からなる組成物、Y及びXからなる組成物、Y及びZからなる組成物、又はX、Y、及びZからなる組成物のいずれか一種の組成物からなり、C層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、X及び/又はYからなる組成物からなり、前記積層フィルムの95℃熱水浸漬中の平均寸法変化率が3.0%以下及び最大寸法変化率差が2.0%以下であり、かつ、前記熱水より取り出した後の平均寸法変化率が2.0%以下及び最大寸法変化率差が2.0%以下であることを特徴とする積層フィルム。
    (X):テレフタル酸と脂肪族ジアミンまたはアジピン酸とメタキシリレンジアミンからなる芳香族ポリアミド樹脂成分(a)と脂肪族ポリアミド系樹脂またはイソフタル酸と脂肪族ジアミンからなる芳香族ポリアミド樹脂(b)の混合体及び/又は共重合体で、該芳香族ポリアミド樹脂成分(a)を10モル%以上含有した樹脂組成物
    (Y):脂肪族ポリアミド系樹脂
    (Z):耐屈曲疲労性改良剤
  2. A層、またはA層及びC層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、前記Xを50〜100重量部、前記Yを50〜0重量部配合して得られ、B層に用いられるポリアミド樹脂組成物は、前記Xを0〜10重量部、前記Yを80〜100重量部、前記Zを0〜10重量部配合して得られることを特徴とする請求項記載の積層フィルム。
  3. 前記記載の二軸配向ポリアミドフィルムと無機質蒸着層との間にアンカーコート層を積層することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  4. 前記無機質蒸着層が酸化珪素及び/又は酸化アルミニウムの混合物薄膜層であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の積層フィルム。
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