JP4450116B2 - ガスバリア性積層フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスバリア性積層フィルム、特に、生鮮食品、加工食品、医薬品、医療機器、電子部品等の包装用フィルムにおいて重要な特性とされるガスバリア性や防湿性に優れ、且つ透明性および取扱性に優れた積層フィルム又はシート(以下フィルムで代表する)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品の流通形態や食生活の変革によって食品の包装形態も大幅に変わってきており、包装用のフィルムに対する要求特性はますます厳しくなってきている。
【0003】
流通販売過程における温度や湿分、酸素、紫外線、更には細菌やカビ等の微生物の影響による製品の品質低下は、販売上の損失を招くのみならず食品衛生面からも大きな問題である。この様な品質低下を防止する方法として、従来は酸化防止剤や防腐剤等を食品に直接添加していたが、最近では、衛生性の観点から食品添加物の添加量の減少もしくは無添加が求められており、この様な状況の下で、気体や水分の透過度が小さく、しかも冷凍加工や煮沸処理、レトルト処理等によっても食品としての品質低下を起こさない様な包装フィルムヘの要望が高まっている。
【0004】
即ち魚肉、畜肉、貝類等の包装においては、蛋白質や油脂等の酸化や変質を抑制し、味や鮮度を保持することが重要であり、そのためには、ガスバリア性のよい包装材を用いて空気の透過を遮断することが望まれる。しかもガスバリア性フィルムで包装すると、内容物の香気が保持されると共に水分の透過も阻止されるので、乾燥物では吸湿劣化が抑制され、含水物の場合は水分の揮発による変質や固化が抑制され、包装時の新鮮な風味を長時間維持することが可能となる。
【0005】
こうした理由から、かまぼこ等の練り製品、バター、チーズ等の乳製品、味噌、茶、コーヒー、ハム・ソーセージ類、インスタント食品、カステラ、ビスケット等の菓子類の包装フィルムにおいては、前記ガスバリア性や防湿性が極めて重要な特性とされている。これらの特性は食品包装用フィルムに限られるものではなく、無菌状態での取扱いが必要とされる医薬品、あるいは防錆性が必要な電子部品などの包装用フィルムとしても極めて重要となる。
【0006】
ガスバリア性に優れたフィルムとしては、プラスチックフィルム上にアルミニウム等の金属箔を積層したもの、塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体をコーティングしたものが知られている。また、金属酸化物薄膜を利用したものとして、プラスチックフィルム上に酸化珪素や酸化アルミニウム等の蒸着膜を積層したものも知られている。
【0007】
実際に使用する形態としては、印刷層、さらに接着剤層を設けた上へ、ドライラミネート法によってシーラント層を設けるか、あるいは押出ラミネート法によりシーラント層を設けるなどしてポリアミドフィルムの積層体とし、該積層体を用いて袋を作成し内容物を充填後開口部をヒートシールして、たとえば味噌や醤油などの調味料、スープやレトルト食品等の水分含有食品あるいは薬品など包装して一般消費者に提供している。
【0008】
上記の様な従来のガスバリア性フィルムには、それぞれ次の様な問題点が指摘されている。ガスバリア層としてアルミニウム箔を積層したものは、経済性やガスバリア性において優れたものではあるが、不透明であるため包装した時に内容物が見えず、またマイクロ波を透過しないため電子レンジによる処理ができない。
【0009】
また、塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体をコーティングしたフィルムは、水蒸気や酸素等に対するガスバリア性が十分でなく、特に高温処理による性能低下が著しい。しかも塩化ビニリデン系樹脂をコートしたフィルムは、焼却時の塩素ガスの発生等により大気汚染を招くことも懸念される。
【0010】
そこで、ガスバリア層として酸化珪素や酸化アルミニウム等の金属酸化物薄膜層を形成したプラスチックフィルムが提案された。酸化珪素や酸化アルミニウム等を蒸着するための基材フィルムとしては、従来より寸法安定性の良い2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)が使用されてきた。
【0011】
積層構成としてはPET/金属酸化物薄膜層/接着層/PET/接着層/未延伸ポリプロピレン(CPP)の様な積層構造とするのが通例となっているが、この様な積層構造のフィルムでは、落下衝撃に対する強度不足が問題となる。
【0012】
一方、PET/金属酸化物薄膜層/接着層/延伸ナイロン(ONY)/接着層/未延伸ポリプロピレン(CPP)の様な積層構造の場合、ナイロンの収縮により煮沸処理やレトルト処理後のガスバリア性が劣化するという問題が生じてくる。
【0013】
そこで高温熱水処理時の収縮率を低減させたナイロンを積層したフィルム(特開平7−276571号公報)が提案されている。しかし、積層するフィルムが多くなるため製造工程や搬送・保管時のプロセスが繁雑になるので経済性に劣ることや、フィルムが厚くなるため取り扱いが困難になるなど実用にそぐわない。
【0014】
ナイロンフィルムを無機質の蒸着基材として使用したガスバリア性フィルムが検討されたが、ナイロンフィルムは吸湿や加熱による寸法変化が大きいためバリア性が不安定であり、特に煮沸処理やレトルト処理後のガスバリア性が劣化するという問題が生じてくる。
【0015】
そこでガスバリア性向上対策として、加熱処理により予め収縮率を低減させた延伸ナイロンフィルムを金属酸化物薄膜層形成のための基材として使用した積層フィルム(特公平7−12649号公報)が提案されている。しかし、製造工程や搬送・保管時のプロセスが繁雑になるため実用にそぐわない。また、高温処理時の収縮率が小さいナイロン(特公平7−12649号公報では、120℃で5分間加熱したときの縦方向及び横方向の寸法変化率の絶対値の和が2%以下)であっても、高温熱水処理である煮沸処理では優れたガスバリア性を維持できない。
【0016】
また、ナイロンフィルムを金属酸化物薄膜を形成する基材フィルムに用いた場合、ナイロンフィルムと金属酸化物薄膜層との間に水が浸入すると層間の接着力が著しく低下し、包装袋として用いたとき破裂の原因となるだけではなくガスバリア性の低下にもつながると考えられる。
【0017】
この様に、酸化珪素や酸化アルミニウム等の金属酸化物薄膜層を設けた積層構造のガスバリア性フィルムは強度が必ずしも十分でなく、また煮沸処理やレトルト処理によるガスバリア性の劣化が指摘されている。
【0018】
この他、透明で内容物を透視することができ且つ電子レンジヘの適用が可能なガスバリア性フィルムとして、特公昭51−48511号公報には、プラスチックフィルム基材の表面にSixOy系(例えばSi02)を蒸着したガスバリア性フイルムが提案されている。ところが、ガスバリア性の良好なSiOx系(x=1.3〜1.8)蒸着膜はやや褐色を有しており、透明ガスバリア性フィルムとしては、品質において十分なものとは言えない。
【0019】
また、特開昭62−101428号公報には、酸化アルミニウムを主体とする金属酸化物薄膜層を設けたガスバリア性フィルムが記載されているが、これはガスバリア性が不十分であるばかりでなく、耐屈曲性の問題もある。
【0020】
また耐煮沸性や耐レトルト性を有するガスバリア層としてAl・SiO系蒸着層として特開平2−194944号公報に提案されているものもあるが、AlとSiOを積層したものであり、スバリア層の形成が煩雑で且つ大掛かりな装置を必要とする。しかもこれら金属酸化物薄膜をガスバリア層とするフィルムも、ガスバリア特性と耐屈曲性を両立させるという観点からすると依然として不十分と言わざるを得ない。即ち優れた耐煮沸性や耐レトルト性を与えるには、ある程度以上(例えば2,000Å程度以上)の膜厚が要求されるのに対し、膜厚を厚くすると耐屈曲性が劣化して落下衝撃に耐えなくなるという問題があり、十分なガスバリア性や防湿性を備え、且つ耐煮沸性や耐レトルト性も良好であり、更には耐屈曲性に優れ落下衝撃にも十分に耐え得る様なガスバリアフィルムは現在のところ提案されていない。また、インキによる印刷を行うと金属酸化物薄膜層に傷がつき、ガスバリア性が低下するという懸念があった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来のガスバリア性積層フィルムの有する問題点を解決し、優れた透明性とガスバリア性、接着性を有し、煮沸処理やインキ印刷工程後においてもその優れたバリア性を損なうことがなく、また、耐屈曲性も良好で落下衝撃にも十分に耐える強度特性を備え、更には熱封緘性にも優れたガスバリア性積層フィルムを経済的に提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のガスバリア性積層フィルムは、下記の組成物からなり、A/B又はA/B/Aの層構成の積層ポリアミドフィルムの一方又は両方のA層上に、二重結合を有する酸無水物からなる親水性を有する重合性不飽和単量体を含有する重合性不飽和単量体を疎水性ポリエステル系樹脂にグラフト共重合して得られた自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を構成成分とする接着改質層、金属酸化物薄膜層からなるガスバリア層、熱硬化性樹脂層及びヒートシール層を順次積層してなり、前記接着改質層が、自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を含有する塗布液を塗布、乾燥後、フィルムを延伸し、200℃以上で熱固定することによって形成されたものであることを特徴とする。
・A層を形成するポリアミド系樹脂組成物
(X)成分:テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と脂肪族ジアミンとからなる芳香族ポリアミド樹脂成分(a)10モル%以上と脂肪族ポリアミド系樹脂成分(b)90モル%以下との混合重合体及び/又は共重合体からなる組成物
・B層を形成するポリアミド系樹脂組成物
脂肪族ポリアミド系樹脂からなる組成物
【0023】
上記の構成からなる本発明のガスバリア性積層フィルムは、初期及びボイル処理後においても優れたガスバリア性と接着性を有し、且つ、透明性、耐ピンホール性に優れたガスバリア性積層フィルムである。
【0025】
の場合において、A層を形成するポリアミド系樹脂組成物が(X)成分:テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と脂肪族ジアミンとからなる芳香族ポリアミド系樹脂成分(a)10モル%以上と脂肪族ポリアミド系樹脂成分(b)90モル%以下との混合重合体及び/又は共重合体100重量部に対し、(Z)成分:耐屈曲疲労性改良剤20重量部以下を含有する組成物であることができる。
【0028】
また、この場合において、 二重結合を有する酸無水物が、マレイン酸の無水物を含有することができる。
【0029】
また、この場合において、重合性不飽和単量体がスチレンを含有することができる。
【0030】
また、この場合において、金属酸化物薄膜層からなるガスバリア層が、酸化珪素と酸化アルミニウムとの混合物からなる薄膜であることができる。
【0031】
また、この場合において、金属酸化物薄膜層からなるガスバリア層が、酸化珪素を95〜55重量%及び酸化アルミニウムを5〜45重量%含有することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガスバリア性積層フィルムの実施の形態を説明する。
【0033】
本発明において、ガスバリア性積層フィルムの基層を構成するフィルムは、下記の組成物からなり、A/B又はA/B/Aの層構成の積層ポリアミドフィルムである。
【0034】
ここで、基層を構成する積層ポリアミドフィルムのA層を形成するポリアミド樹脂組成物としては下記の組成物を示すことができる。
i)(X)成分:テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と脂肪族ジアミンとからなる芳香族ポリアミド樹脂成分(a)10モル%以上と脂肪族ポリアミド系樹脂成分(b)90モル%以下との混合重合体及び/又は共重合体からなる組成物
ii)上記(X)成分100重量部に対し、(Y)成分:脂肪族ポリアミド系樹脂成分100重量部以下を含有する組成物
iii)上記(X)成分100重量部に対し(Z)成分:耐屈曲疲労性改良剤20重量部以下を含有する組成物
iv)上記(X)成分100重量部に対し上記(Y)成分100重量部以下、上記(Z)成分20重量部以下を含有する組成物
【0035】
ここで、本発明の上記(X)成分は、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と炭素数6〜12の脂肪族ジアミンとからなる芳香族ポリアミド系樹脂成分(a)10モル%以上と脂肪族ポリアミド系樹脂成分(b)90モル%以下との混合重合体及び/又は共重合体からなる組成物であって、▲1▼テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と炭素数6〜12の脂肪族ジアミンとからなる芳香族ポリアミド系樹脂と脂肪族ポリアミド系樹脂との混合重合体、▲2▼テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と炭素数6〜12の脂肪族ジアミンとからなる芳香族ポリアミド系樹脂単位及び脂肪族ポリアミド系樹脂単位からなるブロック共重合体又はランダム共重合体、又は、▲3▼テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と炭素数6〜12の脂肪族ジアミンとからなる芳香族ポリアミド系樹脂単位及び脂肪族ポリアミド系樹脂単位からなるブロック共重合体又はランダム共重合体と、脂肪族ポリアミド系樹脂との混合重合体を含むものである。
【0036】
本発明において使用される上記芳香族ポリアミド系樹脂成分(a)は、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と炭素数6〜12の脂肪族ジアミンとからなる重合体である。
【0037】
また、本発明において使用される、(X)成分を構成する脂肪族ポリアミド系樹脂成分(b)、(Y)成分及びB層を構成するのに用いられる脂肪族系ポリアミド樹脂としては、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン612、ナイロン46およびこれらの共重合体、混合重合体等が挙げられるが、ナイロン6及びナイロン66が好ましい。
【0038】
また、本発明で使用する耐屈曲疲労性改良剤(Z)成分は、ブロックポリエステルアミド系エラストマー、ブロックポリエーテルアミド系エラストマー、ブロックポリエーテルエステルアミド系エラストマー、ブロックポリエーテルエステル系エラストマー、ブロックポリエステル系エラストマー、変性エチレンプロピレンゴム、変性アクリルなどのエラストマーやエチレンアクリレート共重合体から選ばれた1種又は2種以上からなることができる。
【0039】
また、本発明において基層の積層ポリアミドフィルムを構成するポリアミド系樹脂組成物は脂肪族ポリアミド系樹脂を主成分とするものである。この脂肪族ポリアミド系樹脂の例示は前記の通りである。
【0040】
本発明のガスバリア性積層フィルムを形成するのに用いる前記の、A/B又はA/B/Aの層構成の積層ポリアミドフィルムは公知の製造方法により製造することができる。すなわち、各層を構成する重合体を別々の押出し機を用いて溶融し、共押出しにより製造する方法、各層を構成する重合体からなるフィルムをラミネートにより積層する方法、およびこれらを組み合わせた方法などをとることができる。更に、上記の積層ポリアミドフィルムは、未延伸フィルムと延伸フィルムのどちらでも使用することができるが、フィルムの加工適性を向上させる為に一軸又は二軸方向に延伸して使用することが望ましい。延伸方法としては、テンター式逐次二軸延伸方法、テンター式同時二軸延伸方法、チューブラー法などの公知の方法を用いることができる。また、本発明で用いる積層ポリアミドフィルムの目的、性能を損なわない限り各種添加剤、例えば、滑剤、酸化防止剤、耐候剤、ゲル化防止剤、ブロッキング防止剤、顔料、帯電防止剤などを適宜配合しても良い。
【0041】
本発明のガスバリア性積層フィルムは、上記積層ポリアミドフィルムの少なくとも一方の表面に、親水性を有する重合性不飽和単量体を含有する重合性不飽和単量体を疎水性ポリエステル系樹脂にグラフト共重合して得られた自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を構成成分とする接着改質層が形成されるとともに、少なくとも一方の接着改質層の表面に金属酸化物薄膜からなるガスバリア層、熱硬化性樹脂層及びヒートシール層が順次形成されてなるものである。
【0042】
上記接着改質層を形成するには、積層ポリアミドフィルムに接着改質層を構成する自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体の有機溶媒溶液若しくは分散液又は水系溶媒溶液若しくは分散液を塗布液として用いるのが好適である。
【0043】
本発明において用いる、自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体は親水性を有する重合性不飽和単量体を含有する重合性不飽和単量体を疎水性ポリエステル系樹脂にグラフト共重合して得られたものである。
【0044】
本発明において用いる自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を得るためのグラフト共重合を行うには、一般には、疎水性ポリエステル系樹脂を有機溶剤中に溶解させた状態において、ラジカル開始剤及び重合性不飽和単量体の混合物を反応せしめることにより実施される。グラフト化反応終了後の反応生成物は、所望の疎水性ポリエステル系樹脂−重合性不飽和単量体混合物間のグラフト重合体の他に、グラフト化を受けなかった疎水性ポリエステル系樹脂及び疎水性ポリエステル系樹脂にグラフト化しなかったラジカル重合体をも含有しているが、本発明における自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体とは、これらすべてが含まれる。ここで、グラフト化とは、幹ポリマー主鎖に、主鎖とは異なる重合体からなる枝ポリマーを導入することである。
【0045】
本発明において、疎水性ポリエステル系樹脂に重合性不飽和単量体をグラフト共重合させて得た自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体の酸価は600eq/106g以上であることが好ましい。より好ましくは、酸価は1200eq/106g以上である。反応物の酸価が600eq/106g未満である場合は、本発明の目的である、無機薄膜からなるガスバリア層との接着性が十分とはいえない。
【0046】
また、本発明のガスバリア性積層フィルムを得る目的に適合する、望ましい疎水性ポリエステル系樹脂と重合性不飽和単量体との重量比率は、疎水性ポリエステル系樹脂/重合性不飽和単量体=40/60〜95/5の範囲が望ましく、更に望ましくは55/45〜93/7、最も望ましくは60/40〜90/10の範囲である。
【0047】
疎水性ポリエステル系樹脂の上記重量比率が40重量%未満であるとき、自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を構成成分とする接着改質層は、優れた接着性を発揮することができない。一方、疎水性ポリエステル系樹脂の重量比率が95重量%より大きいときは、自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を構成成分とする接着改質層は、ブロッキングを起こしやすくなる。
【0048】
本発明で用いる自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体は、有機溶媒による溶液若しくは分散液又は水系溶媒による溶液若しくは分散液の形態になる。特に、水系溶媒による自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体の分散液つまり、水分散樹脂(以下単に「水分散樹脂」と記すことがある)の形態が、作業環境、塗布性の点で好ましい。この様な水分散樹脂を得るには、通常、有機溶媒中で、前記の疎水性ポリエステル系樹脂に、親水性を有する重合性不飽和単量体を有する重合性不飽和単量体をグラフト重合し、次いで、水添加し、さらに有機溶媒を留去することにより達成される。
【0049】
本発明のガスバリア性積層フィルムを製造するための上記水分散樹脂は、レーザー光散乱法により測定される平均粒子径は通常500nm以下であり、半透明ないし乳白色の外観を呈する。重合反応の調整により、多様な粒子径の水分散樹脂が得られるが、この粒子径は10〜500nmが適当であり、分散安定性の点で、400nm以下が好ましく、より好ましくは300nm以下である。水分散樹脂の粒子径が500nmを越えると被覆膜表面の光沢が低下する傾向がみられ、被覆物の透明性が低下する傾向にある。一方、水分散樹脂の粒子径が10nm未満の場合では、本発明の目的である耐水性が低下する傾向があるため、好ましくない。
【0050】
本発明において用いる疎水性ポリエステル系樹脂は、本来、それ自身で水に分散または溶解しない本質的に水不溶性である必要がある。水に分散する又は水に溶解するポリエステル樹脂をグラフト重合に使用すると、本発明の目的である接着性、耐水性が悪くなり、実用的でない。
【0051】
この疎水性ポリエステル系樹脂のジカルボン酸成分の組成は、通常、芳香族ジカルボン酸60〜99.5モル%、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環族ジカルボン酸0〜40モル%、重合性不飽和単量体としての重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸0.5〜10モル%であることが好ましい。
【0052】
芳香族ジカルボン酸が60モル%未満である場合や脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環族ジカルボン酸が40モル%を越えた場合は、接着強度が低下する傾向にある。また、上記重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸が0.5モル%未満の場合、疎水性ポリエステル系樹脂に対する重合性不飽和単量体の効率的なグラフト化が行われにくくなり、逆に10モル%を越える場合は、グラフト化反応の後期に余りにも粘度が上昇し、反応の均一な進行を妨げるので好ましくない。より好ましくは、芳香族ジカルボン酸は70〜98モル%、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環族ジカルボン酸0〜30モル%、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸2〜7モル%のポリエステルである。
【0053】
芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等を挙げることができる。5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の親水基含有ジカルボン酸は、本発明の目的である耐水性が低下する点で用いる方が好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等を挙げることができ、脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物等を挙げることができる。
【0054】
重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸の例としては、α、β−不飽和ジカルボン酸として、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、不飽和二重結合を含有する脂環族ジカルボン酸として、2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等を挙げることができる。このうち好ましいのは、重合性の点から、フマル酸、マレイン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸である。
【0055】
一方、疎水性ポリエステル系樹脂のグリコール成分は、通常、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール及び/又はエーテル結合含有グリコールよりなるのが好ましいが、炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等を挙げることができ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
【0056】
エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらに、ビスフェノール類の二つのフェノール性水酸基に、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどを挙げることができる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルグリコールも必要により使用することができる。
【0057】
本発明で使用される疎水性ポリエステル系樹脂中に、0〜5モル%の3官能以上のポリカルボン酸及び/又はポリオールを共重合することができる。この、3官能以上のポリカルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等が使用される。一方、3官能以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用される。3官能以上のポリカルボン酸及び/又はポリオールは、全酸性分又は全グリコール成分に対し0.01〜5モル%、望ましくは0.01〜3モル%の範囲で共重合されるが、5モル%を越えると重合時のゲル化が起こりやすく、好ましくない。
【0058】
また、疎水性ポリエステル系樹脂の分子量は、重量平均で5000〜50000の範囲が好ましい。分子量が5000未満の場合は接着強度の低下があり、逆に50000を越えると重合時のゲル化等の問題が起きてしまう。
【0059】
また、本発明において用いる、疎水性ポリエステル系樹脂にグラフト共重合するのに好適な重合性不飽和単量体を例示すると、フマル酸、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸のモノエステル又はジエステル、マレイン酸とその無水物、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸のモノエステル又はジエステル、イタコン酸とその無水物、イタコン酸のモノエステル又はジエステル、フェニルマレイミド等のマレイミドなど、また、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどである。また、アクリル重合性単量体は、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのヒドロキシ含有アクリル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミド、N,N−ジメチロ−ルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドのアミド基含有アクリル単量体;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートのアミノ基含有アクリル単量体;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートのエポキシ基含有アクリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸及び/それらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)等のカルボキシル基又はその塩を含有するアクリル単量体が挙げられる。好ましくは、マレイン酸無水物とそのエステルである。上記モノマーは1種もしくは2種以上を用いて共重合させることができる。
【0060】
上記の重合性不飽和単量体のうち、「親水性を有する重合性不飽和単量体」は、親水基を有するか、後で親水基に変化することができる基を有する重合性不飽和単量体を指す。親水基を有する重合性不飽和単量体として、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩基等を含む重合性不飽和単量体を挙げることができる。一方、親水基に変化することができる重合性不飽和単量体として、酸無水物基、グリシジル基、クロル基などを挙げることができる。これらの中で、水分散性を持たせる点から、カルボキシル基であるのが好ましく、カルボキシル基を有するか、カルボキシル基に変化することができる基を有する重合性不飽和単量体が好ましい。特に好ましいのは、二重結合を有する酸無水物からなる重合性不飽和単量体である。
【0061】
本発明において行うグラフト重合は、一般には、疎水性ポリエステル系樹脂を有機溶媒中に溶解させた状態において、ラジカル開始剤及び重合性不飽和単量体混合物を反応せしめることにより実施される。本発明で用いるグラフト重合開始剤としては、当業者には公知の有機過酸化物類や有機アゾ化合物類を用いることができる。
【0062】
有機過酸化物として、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシビバレート、有機アゾ化合物として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などを挙げることができる。また、グラフト重合を行うための重合開始剤の使用量は、重合性モノマーに対して、少なくとも0.2重量%以上、好ましくは0.5重量%以上である。
【0063】
重合開始剤の他に、枝ポリマーの鎖長を調節するための連鎖移動剤、例えばオクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールなどを必要に応じて用い得る。この場合、重合性モノマーに対して0〜5重量%の範囲で添加されるのが好ましい。
【0064】
本発明フィルムを製造するのに用いる自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を得るためのグラフト化反応溶媒は沸点が50〜250℃の水性有機溶媒から構成されることが好ましい。ここで、水性有機溶媒とは20℃における水に対する溶解性が少なくとも10g/リットル以上、望ましくは20g/リットル以上であるものをいう。沸点が250℃を越えるものは、あまりに蒸発速度がおそく、塗膜の高温焼付によっても充分に取り除くことができないので不適当である。また沸点が50℃より低いものでは、それを溶媒としてグラフト化反応を実施する場合、50℃より低い温度でラジカルに解裂する開始剤を用いねばならないので取扱上の危険が増大し、好ましくない。疎水性ポリエステル系樹脂をよく溶解し、かつ、親水性を有する重合性不飽和単量体、特に二重結合を有する酸無水物を含有する重合性不飽和単量体混合物およびその重合体を比較的良く溶解する第一群の水性有機溶媒としては、エステル類、例えば、酢酸エチル、ケトン類、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、環状エーテル類例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、グリコールエーテル類例えばエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、カルビトール類例えばメチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、グリコール類若しくはグリコールエーテルの低級エステル類例えばエチレングリコールジアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ケトンアルコール類例えばダイアセトンアルコール、更にはN−置換アミド類例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を例示することができる。
【0065】
これに対し、疎水性ポリエステル系樹脂をほとんど溶解しないが、親水性重合性単量体混合物およびその重合体を比較的よく溶解する第二群の水性有機溶媒として、水、低級アルコール類、低級カルボン酸類、低級アミン類などを挙げることができるが、本発明の実施に特に好ましいものとしては炭素数1〜4のアルコール類およびグリコール類を挙げることができる。
【0066】
グラフト化反応を単一溶媒で行う場合は、第一群の水性有機溶媒から一種の溶媒を選んで行うことができる。混合溶媒で行う場合は第一群の水性有機溶媒から複数種選ぶ場合と、第一群の水性有機溶媒から少なくとも一種を選びそれに第二群の水性有機溶媒から少なくとも一種を加える場合がある。
【0067】
グラフト重合反応溶媒を第一群の水性有機溶媒からの単一溶媒とした場合と、第一群および第二群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒とした場合のいずれにおいてもグラフト重合反応を行うことができる。しかし、グラフト化反応の進行挙動、グラフト化反応生成物およびそれから導かれる水分散体の外観、性状などに差異がみられ、第一群および第二群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒を使用する方が好ましい。
【0068】
第一群の溶媒中では疎水性ポリエステル系樹脂の分子鎖は広がりの大きい鎖ののびた状態にあり、一方第一群/第二群の混合溶媒中では、広がりの小さい糸まり状に絡まった状態にあることがこれら溶液中の共重合ポリエステルの粘度測定により確認された。疎水性ポリエステル系樹脂の溶解状態を調節し分子間架橋を起こりにくくすることがゲル化防止に有効である。効率の高いグラフト化とゲル化抑制の両立は後者の混合溶媒系において達成される。第一群/第二群の混合溶媒の重量比率はより望ましくは95/5〜10/90さらに望ましくは90/10〜20/80、最も望ましくは85/15〜30/70の範囲である。最適の混合比率は使用するポリエステルの溶解性などに応じて決定される。
【0069】
本発明にかかわるグラフト化反応生成物は塩基性化合物で中和することが好ましく、中和することによって容易に水分散化することができる。塩基性化合物としては塗膜形成時、或いは硬化剤配合による焼付硬化時に揮散する化合物が望ましく、アンモニア、有機アミン類などが好適である。望ましい化合物の例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノピスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチアルミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを挙げることができる。塩基性化合物は、グラフト化反応生成物中に含まれるカルボキシル基含有量に応じて、少なくとも部分中和、若しくは、完全中和によって水分散体のPH値が5.0〜9.0の範囲であるように使用するのが望ましい。沸点が100℃以下の塩基性化合物を使用した場合であれば、乾燥後の塗膜中の残留塩基性化合物も少なく、金属や無機蒸着膜との接着性や該積層体の耐水性や耐熱水接着性が優れる。
【0070】
本発明により生成される水分散性樹脂では、重合性不飽和単量体の重合物の重量平均分子量は500〜50000であるのが好ましい。重合性不飽和単量体の重合物の重量平均分子量を500未満にコントロールすることは一般に困難であり、グラフト効率が低下し、疎水性ポリエステル系樹脂への親水性基の付与が十分に行われない傾向がある。また、重合性不飽和単量体がグラフト重合して得られた自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体は分散粒子の水和層を形成するが、十分な厚みの水和層をもたせ、安定な分散体を得るためには、重合性不飽和単量体のグラフト重合物の重量平均分子量は500以上であることが望ましい。また、重合性不飽和単量体のグラフト重合物の重量平均分子量の上限は溶液重合における重合性の点で50000が好ましい。この範囲内での分子量のコントロールは重合開始剤の量、モノマー滴化時間、重合時間、反応溶媒、モノマー組成あるいは必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行うことができる。
【0071】
本発明において、疎水性ポリエステル系樹脂に重合性不飽和単量体をグラフト重合させた反応物は、自己架橋性を有する。常温では架橋しないが、乾燥時の熱で、1)反応物中に存在するシラノール基の脱水反応、2)熱ラジカルによる水素引き抜き反応等の分子間反応を行い、架橋剤なしで架橋する。これにより初めて、本発明の目的である接着性、耐水性を発現できる。塗膜の架橋性については、様々の方法で評価できるが、疎水性ポリエステル系樹脂および重合性不飽和単量体がグラフト重合して得られた自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体の両方を溶解するクロロホルム溶媒での不溶分率で調べることができる。塗布層を80℃以下で乾燥し、120℃で5分間熱処理して得られる塗膜の不溶分率は、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。塗膜の不溶分率が50%未満の場合は、接着改質層の接着性、耐水性が十分でないばかりでなく、ブロッキングを生ずることがある。
【0072】
上記自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体は、そのままで本発明を構成する接着改質層を形成することができるが、さらに架橋剤(硬化用樹脂)を配合して硬化を行うことにより、接着改質層に高度の耐水性を付与することができる。
【0073】
架橋剤としては、アルキル化フェノール類、クレゾール類などのホルムアルデヒドとの縮合物のフェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加物、この付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールとからなるアルキルエーテル化合物などのアミノ樹脂;多官能性エポキシ化合物;多官能性イソシアネート化合物;ブロックイソシアネート化合物;多官能性アジリジン化合物;オキサゾリン化合物など任意のものを用いることができる。
【0074】
フェノールホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、アルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル又はブチル)フェノール、p−tert−アミルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−、m−又はp−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4’−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニルo−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物などを挙げることができる。
【0075】
アミノ樹脂としては、例えば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチルールベンゾグアナミンなどが挙げられるが好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、およびメチロール化ベンゾグアナミンなどを挙げることができる。
【0076】
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリリジルエーテルなどを挙げることができる。
【0077】
多官能性イソシアネート化合物としては、低分子又は高分子の芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートを用いることができる。ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのイソシアネート化合物の3量体がある。さらに、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物、またはポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類などの高分子活性水素化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物を挙げることができる。
【0078】
ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて調整することができる。イソシアネートブロック化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類;チオフェノール、メチルチオフェノールなどのチオフェノール類;アセトキシム、メチルエチケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類;t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第3級アルコール類;ε−カプロラクタム、δ−パレロラクタム、ν−ブチロラクタム、β−プロピルラクタムなどのラクタム類;芳香族アミン類;イミド類;アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物;メルカプタン類;イミン類;尿素類;ジアリール化合物類;重亜硫酸ソーダなどを挙げることができる。
【0079】
これらの架橋剤は、それぞれ単独または2種以上混合して用いることができる。架橋剤の配合量としては、自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体100重量部に対して5〜40重量部が好ましい。架橋剤の配合方法としては、(1)架橋剤が水溶性である場合、直接グラフト共重合体の水系溶媒溶液または分散液中に溶解または分散させる方法、または(2)架橋剤が油溶性である場合、グラフト化反応終了後、反応液に添加する方法がある。これらの方法は、架橋剤の種類、性状により適宜選択し得る。さらに架橋剤には、硬化剤あるいは促進剤を併用することができる。
【0080】
上記自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を含む塗布液は、そのままで本発明ガスバリア性積層フィルムの接着改質層を形成するのに用いることができるが、他の目的から汎用のポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、それらの共重合体、各種水溶性樹脂等や各種機能性樹脂、例えばポリアニリンやポリピロール等の導電性樹脂や抗菌性樹脂、紫外線吸収性樹脂、ガスバリア性樹脂を混合して接着改質層を形成するのに用いることができる。本発明においては、接着改質層を形成するための塗布液に、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、各種界面活性剤、帯電防止剤、無機滑剤、有機滑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させることができる。
【0081】
本発明における接着改質層は、積層ポリアミドフィルムの少なくとも一方の表面に、前記自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体の有機溶媒溶液若しくは分散液又は水系溶媒溶液若しくは分散液を塗布液として用いて形成されるのが通常である。特に、水溶液又は水分散液とするのが、環境に対して問題になる有機溶媒を用いない点で好ましい。塗布液中の自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体の固形分含有量は、通常、1〜50重量%、好ましくは3〜30重量%である。
【0082】
接着改質層を形成するために、自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を含む塗布液を積層ポリアミドフィルムに塗布する方法としては、グラビア方式、リバース方式、ダイ方式、バー方式、ディップ方式などの公知の塗布方式を用いることができる。
【0083】
塗布液の塗布量は、固形分として、通常、0.005〜10g/m2、好ましくは、0.02〜0.5g/m2である。塗布量が0.005g/m2未満になると、接着改質層と積層ポリアミドフィルムとの間の接着強度が低下する傾向にある。また、塗布量が10g/m2を越えるとブロッキングが発生し、実用上問題がある。
【0084】
二軸延伸積層ポリアミドフィルム上に塗布する場合、積層ポリアミドフィルムと接着改質層との接着性をさらに良くする為、ポリアミドフィルムにコロナ放電処理、火炎処理、電子線照射等による表面処理をしてもよい。塗布液を塗布後延伸する場合でもフィルム表面に同様の処理をあらかじめ行っておくことにより同様の効果を得ることができる。
【0085】
塗布後の自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体の乾燥条件は特に規制は無いが、該グラフト共重合体のもつ自己架橋性を発見するためには、積層ポリアミドフィルム及び該グラフト共重合体に熱劣化が起こらない範囲内で、熱量を多くする条件が好ましい。具体的には80〜250℃、さらに好ましくは150〜220℃である。ただし乾燥時間を長くすることにより、比較的低い温度でも、十分な自己架橋性を発現するため、上記の条件に限るものではない。
【0086】
未延伸あるいは一軸延伸後の積層ポリアミドフィルムに上記塗布液を塗布した後、乾燥、延伸する場合、塗布後の乾燥温度はその後の延伸に影響しない範囲の条件で乾燥する必要があり、積層ポリアミドフィルムの場合、フィルム中の水分率を2%以下にして延伸し、その後200℃以上で熱固定を行うことにより塗膜との接着が強固になり、接着改質層と積層ポリアミドフィルムとの接着性が飛躍的に向上する。水分率が2%以上になると乾燥温度にもよるが、結晶化が起こり易くなり、平面性の悪化や延伸性が損なわれる場合がある。
【0087】
ガスバリア性積層フィルムの接着改質層の表面を、さらに接着性や印刷性をよくするために、該接着改質層表面にさらにコロナ放電処理、火炎処理、電子線照射等による表面処理をしても良い。
【0088】
本発明においては、接着改質層は積層ポリアミドフィルムの一方の表面又は両方の表面に形成する。かかる接着改質層が積層ポリアミドフィルムの一方の表面に形成されている場合には、該接着改質層の表面に金属酸化物薄膜からなるガスバリア層を形成し、接着改質層が積層ポリアミドフィルムの両方の表面に形成されている場合は、その一方の表面又は両方の表面に金属酸化物薄膜からなるガスバリア層を形成することができる。
【0089】
ガスバリア層を構成する金属酸化物薄膜層としては、酸化珪素、酸化アルニウム、酸化マグネシウムやこれらの混合物などの薄膜が典型的な薄膜として挙げられる。ここでいう酸化珪素とは、SiOやSiO2等の各種珪素酸化物の混合物からなり、酸化アルミニウムとはAlOやAl23等の各種アルミニウム酸化物の混合物からなり、各酸化物内における酸素の結合量はそれぞれの作製条件によって異なってくる。
【0090】
特に酸化アルミニウムと酸化珪素の混合物は透明性や耐屈曲性も優れることから本発明のガスバリア性積層フィルム中のガスバリア層として好ましい。さらに、上記ガスバリア層が、酸化珪素を95〜55重量%、酸化アルミニウムが5〜45重量%である酸化珪素と酸化アルミニウムの混合物からなる薄膜であるのが好ましい。
【0091】
ガスバリア層としての金属酸化物薄膜が酸化珪素・酸化アルミニウム系蒸着膜の場合、酸化アルミニウム量が5重量%未満である場合は、蒸着膜中に格子欠陥が生じ十分なガスバリア性が得られないといった問題が生じ、また、酸化珪素・酸化アルミニウム系蒸着膜中の酸化アルミニウム量が45重量%超になると、膜の柔軟性が低下し、熱水処理時における寸法変化によって膜の破壊(割れや剥離)が生じ易くなってガスバリア性が低下するといった問題が生じ、本発明の目的にそぐわなくなる。
【0092】
上記ガスバリア層中の酸化アルミニウム量の、より好ましい比率は10〜35重量%、更に好ましい比率は15〜25重量%である。なお、ガスバリア層中には、その特性を損なわない範囲で更に他の酸化物等を微量(一般には全層中の3重量%以下)含んでいてもよい。
【0093】
本発明における金属酸化物薄膜からなるガスバリア層の膜厚は、通常10〜5,000Å、好ましくは50〜2,000Åである。膜厚が10Å未満では満足のいくガスバリア性が得られ難く、また5,000Åを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点で却って不利となる。
【0094】
金属酸化物薄膜からなるガスバリア層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、あるいはCVD等の化学蒸着法等が適宜用いられる。たとえば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiO2とAl23の混合物、あるいはSiO2とAlの混合物等が用いられる。加熱には、抵抗加熱、誘導加熱、電子線加熱等を採用することができ、また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。更に、基板にバイアスを印加したり、基板を加熱したり冷却する等、成膜条件も任意に変更することができる。上記の薄膜形成材料、反応ガス、基板バイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0095】
また、金属酸化物薄膜形成操作の前あるいは操作中に、基層となる積層ポリアミドフィルムの表面にコロナ放電処理、火炎処理、低温プラズマ処理、グロー放電処理、逆スパッタ処理、粗面化処理などを施し、金属酸化物薄膜の密着強度向上を図ることも有効である。また、積層ポリアミドフィルム上に密着力向上の為のアンカーコート層を形成する等の方法もあるが、勿論これらの方法に限定されるものではない。
【0096】
特に、金属酸化物薄膜が酸化珪素・酸化アルミニウム系薄膜である場合は、より透明で、得られた蒸着フィルムを煮沸処理やゲルボ試験(耐屈曲性試験)による大きな負荷の付与にも耐え得る優れた性能のガスバリアフィルムを得ることが可能となる。
【0097】
なお、本発明のガスバリア性積層フィルムのガスバリア性には、基層となる積層ポリアミドフィルムと上記ガスバリア層との密着強度が大きく関係しており、密着強度が大きいほどガスバリア性は向上する。そして本発明者らの検討結果によれば、優れたガスバリア性を有し、且つ煮沸処理後においてもその優れたガスバリア性を維持させるには、煮沸処理後のガスバリア層の密着強度が100g/15mm以上であることが好ましいことを確認した。より好ましい密着強度は150g/15mm以上、さらに好ましくは200g/15mm以上、一層好ましくは250g/15mm以上である。密着強度が100g/15mmに満たない場合は、煮沸処理によってガスバリア性が悪くなる傾向が現われてくる。
【0098】
この理由は、ガスバリア層の密着強度が大きければ、煮沸処理やレトルト処理によって金属酸化物薄膜が形成されている積層ポリアミドフィルムに若干の収縮が起こった場合でも、金属酸化物薄膜層の剥離が起こり難くなるためと考えられる。
【0099】
金属酸化物薄膜層上の被覆層として熱硬化性樹脂層を形成する。この場合、2液性の熱硬化性樹脂が用いることができるが、金属酸化物薄膜層の保護という機能から、金属酸化物薄膜層との密着性・耐熱性・対薬品性が求められる。そのため熱硬化性樹脂層を形成するのに用いる樹脂として特に好ましいのは、ポリエステル樹脂とイソシアネート系化合物からなる熱硬化性樹脂である。このようなポリエステル樹脂はジカルボン酸又はトリカルボン酸のような酸成分と、グリコール成分とを公知の方法を用いて重縮合して作製されるポリエステル樹脂である。このような酸成分の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸及びトリメリット酸などが挙げれれるが、特にこれらに限定されない。グリコールの例としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、シクリヘキサンジオール、エチレングリコール変性ビスフエノールAなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。また、イソシアネート系化合物の例としては2官能および3官能の脂肪族あるいは芳香族を骨格に有するものが挙げられる。塗布には公知の塗工法、例えばロールコート法、リバースキスコート法、ロールフラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、グラビアコート、含浸法、カーテンコート法等を任意に採用することができる。
【0100】
上記金属酸化物薄膜層の表面には、熱硬化性樹脂層及びヒートシール層を順次形成する。フィルムの最外表面には、主に熱接着性を与えることを目的としてポリオレフィン系樹脂よりなるヒートシール層を形成する。このヒートシール層は金属酸化物薄膜層の保護層としての機能も有している。
【0101】
ヒートシール層を構成するポリオレフィン系樹脂はポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1系樹脂あるいはこれらのランダムないしブロック共重合体等を例示することができる。このポリオレフィン系樹脂には、必要に応じて各種の添加剤、たとえば可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、帯電防止剤、抗菌剤、滑剤、耐ブロッキング剤、他の樹脂などをブレンドすることも可能である。
【0102】
また、ヒートシール層を構成するポリオレフィン系樹脂は、必ずしも単層である必要はなく複層であってもよく、複層構造とするときの各層を構成する樹脂も、同種の樹脂の組合せはもとより、異種ポリマーの共重合物や変性物、ブレンド物などを積層したものであってもよい。たとえば、ラミネート性やヒートシール性を高めるため、主構成成分の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)や融点(Tm)よりも低いポリマーを複合したり、耐熱性を付与するため逆にTgやTmの高いポリマーを複合することも可能である。
【0103】
そして、ヒートシール層を構成するポリオレフィン系樹脂の積層は、接着剤を用いたドライラミネート法やウェットラミネート法、更には溶融押し出しラミネート法や共押し出しラミネート法などによって、金属酸化物薄膜層の上にヒートシール層として形成される。
【0104】
本発明における機能を有効に果たす上で、この金属酸化物薄膜層とヒートシール層との接着力を高めることは有効であり、その為の手段として、金属酸化物薄膜層とヒートシール層との間に接着剤層を設けることは極めて有効である。
【0105】
上記接着剤層を構成する樹脂として特に好ましいのは、ガラス転移温度が−10〜40℃の範囲の樹脂、たとえばポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂などであり、これらは単独で使用することができるが、必要により2種以上を併用したり溶融混合して使用し、あるいは官能基として例えば、カルボン酸基、酸無水物、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する化合物:グリシジル基やグリシジルエーテル基を含むエポキシ化合物;オキサゾリン基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基等の反応性官能基を有する硬化剤もしくは硬化促進剤を配合した接着剤組成物を使用することも有効である。
【0106】
かかる熱硬化性樹脂層とヒートシール層との間には、任意の印刷インキにより印刷インキ層を適宜形成することができる。
【0107】
かくして得られた本発明のガスバリア性積層フィルムは、その優れたガスバリア性および煮沸処理やレトルト処理によるガスバリア持続性及び2次加工特性を生かし、包装材料として味噌、漬物、惣菜、ベビーフード、佃煮、こんにゃく、ちくわ、蒲鉾、水産加工品、ミートボール、ハンバーグ、ジンギスカン、ハム、ソーセージ、その他の畜肉加工品、茶、コーヒー、紅茶、鰹節、昆布、ポテトチップス、バターピーナッツなどの油菓子、米菓、ビスケット、クッキー、ケーキ、饅頭、カステラ、チーズ、バター、切り餅、スープ、ソース、ラーメン、わさびなどの包装に、また、練り歯磨きなどの包装に有効に利用することができ、更にはペットフード、農薬、肥料、輸液パック、或は半導体や精密材料包装など医療、電子、化学、機械などの産業材料包装にも有効に活用することができる。
【0108】
また包装材料の形態にも特に制限がなく、袋、フタ材、カップ、チューブ、スタンディングパック等に幅広く適用できる。
【0109】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することももちろん可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。また、本明細書中に記載したそれぞれの特性値の性能試険は次の方法によって行った。
【0110】
1)酸素透過率:酸素透過度測定装置(「OX−TRAN 10/50A」 Modern Controls社製)を使用し、湿度0%、温度25℃で測定した。
【0111】
2)水蒸気透過率:水蒸気透過度測定装置(「PERMATRAN」Modern Controls社製)を使用し、湿度0%、温度25℃で測定した。
【0112】
3)密着強度:ラミネートしたものを東洋測器社製「テンシロンUTM2」を用いて、界面に水を付着させながら180度剥離し、ガスバリア層と積層ポリアミドフィルムとの間のS−Sカーブを測定して求めた。
【0113】
4)耐屈曲疲労試験:耐屈曲疲労試験(以下、ゲルボ試験と云う)は、理学工業社製のゲルボフレックステスターを用いて評価した。条件としては、(MIL−B131H)DE112インチ×8インチの試験片を直径3(1/2)インチの円筒状とし、両端を保持し、初期把握間隔7インチとし、ストロークの3(1/2)インチで、400度のひねりを加えた。この動作の操り返し往復運動を40回/minの速さで、1000回行なった。測定雰囲気は、20℃、相対湿度は65%である。試験後のフィルムのピンホール数を数えた。
【0114】
(共重合ポリエステルの調製)
撹拌機、温度計及び部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート345部、1,4−ブタンジオール211部、エチレングリコール270部及びテトラ−n−ブチルチタネート0.5部を仕込み、160〜220℃まで、4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、フマル酸14部及びセバシン酸160部を加え、200〜220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、0.22mmHgの減圧下で1時間30分反応させ、ポリエステルを得た。得られたポリエステルは、淡黄色透明であった。
【0115】
NMRで測定した組成および重量平均分子量は以下のようであった。
テレフタル酸 :70(モル%)
セバシン酸 :26(モル%)
フマル酸 :4 (モル%)
エチレングリコール :50(モル%)
1.4−ブタンジオール:50(モル%)
重量平均分子量 :20000
【0116】
(自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体の調整)
撹拌機、温度計、還流装置及び定量滴下装置を備えた反応器に共重合ポリエステル樹脂75部、メチルエチルケトン56部およびイソプロピルアルコール19部を入れ、65℃で加熱、撹拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、無水マレイン酸15部をポリエステル溶液に添加した。次いで、スチレン10部及びアゾビスジメチルバレロニトリル1.5部を12部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1cc/minでポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノール5重量部を添加した。次いで、水300重量部とトリエチルアミン15重量部とを反応溶液に加え、1時間撹拌した。その後、反応器内温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のアンモニアを蒸留により留去し、自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を得た。この自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体は淡黄色透明であった。この自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を、固形分濃度10重量%になるように水:イソプロピルアルコール=9:1(重量比)で希釈して塗布液を調整した。
【0117】
(実施例1)
A層として40重量部のナイロン6、60重量部のナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比50/50)との混合物、B層として100重量部のナイロン6をTダイから積層しながら溶融押出しし、20℃に調温した回転ドラム上で冷却して厚さ150μmの未延伸ポリアミドフィルムを得た。この未延伸ポリアミドフィルムを50℃で3.1倍に縦延伸した。次いで125℃で横方向に3.3倍延伸し、215℃で熱固定を行い、厚み15μmの2軸延伸フィルムを得た。また、同時に上記水分散グラフトポリエステル樹脂を約0.1μm厚になるようコートした。
【0118】
このフィルムは、耐屈曲疲労性、接着性のいずれも優れたものであった。このフィルムを真空蒸着装置へ送り、チャンバー内を1×105Torrの圧力に保持し、Si02:70重量%とAl23:30重量%との混合酸化物を15Kwの電子線加熱によって蒸発させ、厚さ200Åの無色透明な金属酸化物薄膜層をコーティング面に蒸着させ、ガスバリア層を形成させた。この金属酸化物薄膜上に2液型ポリエステル/イソシアネート系プライマー(大日精化工業社製PD−4と同VM−Dを重量比20:1で混合したもの)を塗布・乾燥・硬化後、グラビア印刷法による赤白重ね印刷を行った。
【0119】
次いでこの印刷インキ層上に、シーラント層として無延伸ポリエチレン(厚さ:55μm)を接着剤(武田薬品社製A310/A10)、塗布量2g/m2ドライラミネートし、45℃で4日間エージングしてガスバリア性積層フィルムを得た。このガスバリア性積層フィルムについて、
(1)未処理フィルムの酸素透過度(cc/m2・atm・day)
(2)95℃の熱水中に30分浸漬後、湿度0%、温度25℃の空気中に1時間放置し、その雰囲気中で測定した酸素透過度(cc/m2・atm・day)
(3)95℃の熱水中に30分浸漬後、湿度0%、温度25℃の空気中に1時間放置し、その雰囲気中で測定した水蒸気透過度(g/m2・day)
(4)95℃の熱水中に30分浸漬後、温度25℃の空気中に1時間放置後のフィルムの剥離界面に水を滴下したときの密着力(g/15mm)
(5)耐屈曲疲労試験後のピンホール数(個)を測定した。
得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示した。
【0120】
(実施例2)
実施例1の方法において、A層として25重量部のナイロン6、75重量部のナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比50/50)混合物とする以外は、実施例1と全く同様におこなった。得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示した。
【0121】
(実施例3)
実施例1の方法において、A層としてナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比50/50)100重量部とする以外は、実施例1と全く同様におこなった。得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示した。
【0122】
(比較例1)
実施例1の方法において、A層として100重量部のナイロン6としたことと、熱硬化性樹脂被覆層を設けなかったことと、コート剤としてポリエステル系コート剤(東洋紡績株式会社製AGN131)を使用した以外は、実施例1と全く同様にした。得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示した。
【0123】
(比例2)
実施例1の方法において、A層として75重量部のナイロン6、25重量部のナイロン6T/ナイロン6共重合体(共重合比50/50)混合物としたこと以外は、比較例1(熱硬化性樹脂被覆層を設けなかったことと、コート剤としてポリエステル系コート剤(東洋紡績株式会社製AGN131)を使用したこと)と全く同様にした。得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示した。
【0124】
【表1】
Figure 0004450116
【0125】
【発明の効果】
本発明のガスバリア性積層フィルムによれば、包装体として食品等をボイル処理した後においても金属酸化物薄膜層と積層ポリアミドフィルム層との界面における水の進入が少ない。したがって、金属酸化物薄膜層の積層ポリアミドフィルム表面からの剥離・浮きあるいは金属酸化物薄膜層の化学変化による劣化が抑制されると考えられる。
【0126】
これは、A層のポリアミドフィルムの表面の硬度が大きいため金属酸化物薄膜層は緻密で欠陥の少ないものとなっていると考えられ、そのため、ボイル時には積層ポリアミドフィルムが若干寸法変化しているにもかかわらず、良好なガスバリア性が維持されているものと考えられる。
【0127】
また、熱硬化性樹脂層を設けることにより、塩素などが浸入して金属酸化物薄膜層を劣化させることを防ぐことができ、また、印刷した場合に印刷インキ中の無機粒子が金属酸化物薄膜層に傷をつけるのを防ぐことができるといった効果により、ガスバリア性積層フィルムのスバリア性の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のガスバリア性積層フィルムの断面の一例を示す図である。
(b)は本発明のガスバリア性積層フィルムの断面の他の例を示す図である。
(c)は本発明のガスバリア性積層フィルムの断面の他の例を示す図である。
(d)は本発明のガスバリア性積層ポリアミドフィルムの断面の、さらに他の例を示す図である。
【符号の説明】
1 積層ポリアミドフィルム
2 接着改質層
3 ガスバリア層
4 熱硬化性樹脂層
5 印刷インキ層
6 ポリオレフィン層

Claims (6)

  1. 下記の組成物からなり、A/B又はA/B/Aの層構成の積層ポリアミドフィルムの一方又は両方のA層上に、二重結合を有する酸無水物からなる親水性を有する重合性不飽和単量体を含有する重合性不飽和単量体を疎水性ポリエステル系樹脂にグラフト共重合して得られた自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を構成成分とする接着改質層、金属酸化物薄膜層からなるガスバリア層、熱硬化性樹脂層及びヒートシール層を順次積層してなり、前記接着改質層が、自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を含有する塗布液を塗布、乾燥後、フィルムを延伸し、200℃以上で熱固定することによって形成されたものであることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
    ・A層を形成するポリアミド系樹脂組成物
    (X)成分:テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と脂肪族ジアミンとからなる芳香族ポリアミド樹脂成分(a)10モル%以上と脂肪族ポリアミド系樹脂成分(b)90モル%以下との混合重合体及び/又は共重合体からなる組成物
    ・B層を形成するポリアミド系樹脂組成物
    脂肪族ポリアミド系樹脂からなる組成物
  2. A層を形成するポリアミド系樹脂組成物が、(X)成分:テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と脂肪族ジアミンとからなる芳香族ポリアミド系樹脂成分(a)10モル%以上と脂肪族ポリアミド系樹脂成分(b)90モル%以下との混合重合体及び/又は共重合体100重量部に対し、(Z)成分:耐屈曲疲労性改良剤20重量部以下を含有する組成物であることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性積層フィルム。
  3. 二重結合を有する酸無水物が、マレイン酸の無水物を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のガスバリア性積層フィルム。
  4. 重合性不飽和単量体がスチレンを含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のガスバリア性積層フィルム。
  5. 金属酸化物薄膜層からなるガスバリア層が、酸化珪素と酸化アルミニウムとの混合物からなる薄膜であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のガスバリア性積層フィルム。
  6. 金属酸化物薄膜層からなるガスバリア層が、酸化珪素を95〜55重量%及び酸化アルミニウムを5〜45重量%含有することを特徴とする請求項記載のガスバリア性積層フィルム。
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