JP4660811B2 - 印刷インキ用ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、印刷インキ、特に、芳香族炭化水素を使用しない特殊グラビア印刷インキ用のポリアミド樹脂組成物に関して、アルコール混合溶媒に対する溶液安定性を良好に確保しながら、耐ブロッキング性や密着性に優れたものを提供する。
特殊グラビアインキは、通常、ポリアミド樹脂をバインダーとして、硝化綿と、アルキルチタネートなどの有機金属配位化合物と、着色顔料又は染料とから、或は必要に応じてワックスなどの添加剤を加えて構成されている。
一般に、ポリアミド樹脂はトルエンなどの芳香族炭化水素とアルコールの混合物に溶解し、また、硝化綿はエステル系溶剤に溶解することから、グラビア印刷インキはトルエン、アルコール、エステルの混合溶剤に溶解して使用されている。
しかしながら、近年の大気汚染防止やPRTR(化学物質管理促進法)などの観点から、トルエンなどの芳香族系溶剤の使用は規制されつつあり、これらの芳香族系溶剤が必要になるポリアミド樹脂に替えて、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素と、イソプロパノール、ノルマルプロパノール等のアルコールと、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステルとの混合溶剤、又はアルコールとエステルの混合溶剤に可溶で、且つ溶液安定性に優れたポリアミド樹脂の開発が強く望まれている。
上記溶液安定性とは、溶剤に溶解した場合に凝集物の発生や固化が起こらないことを意味し、従来のポリアミド樹脂ではトルエン等の芳香族炭化水素を含有しなければ安定な溶液は得られなかった。
一方、トルエンフリーインキ用として市販されているポリアミド樹脂の多くは、低分子量化したり、極性・凝集力を低下させることで、トルエンを含まない溶剤への溶液安定性を確保しているが、インキ粘度の低下や耐ブロッキング性、密着性に問題が残るものが多い。
また、従来から存在するフレキソ印刷インキ用ポリアミド樹脂がアルコール可溶樹脂であることは知られているが、いずれも低軟化点であって、印刷物がブロッキングを起こし易いうえ、乾燥性が遅いため、グラビア印刷インキへの使用には問題がある。
従来の印刷インキ用ポリアミド樹脂としては、特許文献1に、耐熱性と密着性を向上する目的で、重合脂肪酸、ポリアミン、さらに必要に応じてモノカルボン酸或はモノアミンからなる成分を縮合反応して得られ、且つ、トルエン/イソプロパノールの特定比率の混合溶媒中に所定の粘度で溶解させた特定のポリアミド樹脂が開示され、さらに、このポリアミド樹脂に硝化綿とキレート剤を配合した印刷インキ用ビヒクルが開示されている。
また、特許文献2〜8には、主に、重合脂肪酸と脂肪族モノカルボン酸の配合率や組成に特徴を持たせて縮合反応させた印刷インキ用ポリアミド樹脂が記載されている。
先ず、特許文献2には、フレキソインキを提供するのに好適な高分子量脂肪酸ポリアミド樹脂を製造する目的で、特定組成のアミン成分(A)と、重合脂肪酸45〜55当量%(二量体脂肪酸65〜75重量%含有)、C12〜C22の不飽和一塩基脂肪酸15〜30当量%、及び残りとしてC1〜C5の低級脂肪族一塩基酸を含む酸成分(B)とを縮合して得られ、且つ、上記成分(B)の酸当量と成分(A)のアミン当量の比率を特定化したポリアミド樹脂が開示されている。
特許文献3には、ヒートシール耐熱性、耐油性、未処理ポリオレフィンに対する接着性などを向上する目的で、重合脂肪酸(A)、C2〜C3の脂肪族モノカルボン酸(B)、C12〜C22の飽和脂肪族モノカルボン酸(C)及びポリアミン(D)を縮合重合させて得られ、(B)と(C)の比率が全カルボン酸成分の15〜35当量%であり、且つ、(C)の量が全モノカルボン酸成分の3〜20当量%であって、所定の融点とトルエン/イソプロピルアルコールの混合溶剤に対して所定の溶液粘度を有する印刷インキ用ポリアミド樹脂組成物が開示されている。
特許文献4には、アルコール可溶性(アルコール混合溶媒への良好な溶液安定性)及び低温安定性を具備し、耐熱性、耐油性などを向上する目的で、重合脂肪酸(A)(C54の三塩基酸を少なくとも40重量%含有)、C2〜C4の脂肪族モノカルボン酸(B)、及び特定のポリアミン(C)を縮合重合させて得られ、全カルボン酸成分(A+B)に占める(B)の比率が20〜40当量%であり、成分(C)の組成が特定化され、且つ特定の重量平均分子量を有する印刷インキ用ポリアミド樹脂が開示されている。
特許文献5には、アルコール可溶性の付与と耐油性を向上する目的で、C4以下の脂肪族モノカルボン酸(A)と重合脂肪酸(B)を、所定のジアミン又はポリアミンと縮合反応させて得られ、全カルボン酸(A+B)に対するモノカルボン酸(A)の比率が15〜65モル当量%である印刷インキ用ポリアミド樹脂が開示されている。
特許文献6には、上記特許文献5と同様の目的で、C4以下の脂肪族モノカルボン酸(A)と重合脂肪酸(B)(三塩基酸を40重量%以上含む)とを、ポリアミン(C)と縮合反応させて得られ、全カルボン酸(A+B)に対するモノカルボン酸(A)の比率が15〜65モル当量%であり、全カルボン酸中に占める三塩基酸の量が15〜60モル当量%である印刷インキ用ポリアミド樹脂が開示されている。
特許文献7には、上記特許文献5と同様の目的で、脂肪族モノカルボン酸(A)と、重合脂肪酸(B)とを、所定のポリアミンと縮合反応させて得られ、全カルボン酸(A+B)に対するモノカルボン酸(A)の比率が10〜50モル当量%であり、モノカルボン酸(A)がC4以下の脂肪族モノカルボン酸(E)とC12〜C22の脂肪族モノカルボン酸(F)との混合物であり、全モノカルボン酸(A)に対するC4以下の脂肪族モノカルボン酸(E)の比率が30〜90モル当量%であり、ポリアミン組成が特定化された印刷インキ用ポリアミド樹脂が開示されている。
特許文献8は本出願人が先に開示したもので、非芳香族系溶剤への溶液安定性(アルコール可溶性)の付与と、耐熱性や耐ブロッキング性を向上する目的で、(a)重合脂肪酸と、(b)C3以下の脂肪族モノカルボン酸とを、所定のポリアミンと縮合反応して得られ、全カルボン酸成分(a+b)に対するb成分の比率が20〜60%当量であり、全アミン成分の組成と、全カルボン酸成分と全アミン成分の当量比率を特定化するとともに、溶融粘度と軟化点を限定した印刷インキ用ポリアミド樹脂組成物である。
特開平5−295313号公報 特公平6−89136号公報 特開平7−331154号公報 特開平9−157591号公報 特開平9−249842号公報 特開平10−7791号公報 特開平10−182816号公報 特開2002−129083号公報
前述したように、非芳香族系溶剤、具体的には、アルコール混合溶媒に対する溶液安定性をポリアミド樹脂に付与するには、アミド結合部の水素結合に起因する凝集力を低下させ、或は低分子量化する必要があるが、凝集力が低下すると樹脂強度が低減し、また、低分子量化に伴って粘度低下が起こることから、このアルコール可溶性のポリアミド樹脂を用いた印刷インキにおいては、耐ブロッキング性や密着性、耐熱性が著しく低下し、乾燥性も悪く印刷速度が上がらないという問題が発生する。
溶液安定性を得るためにトルエンを必要とする特許文献1のポリアミド樹脂を除いて、他の特許文献2〜7に列挙された印刷インキ用ポリアミド樹脂は概ねアルコール混合溶媒への溶液安定性を具備している。このため、これらのポリアミド樹脂についても、耐ブロッキング性や密着性は満足すべき水準にはなく、また、乾燥性、耐油性、耐水性のいずれか一つ以上についても充分ではない。さらに、本出願人が開示した特許文献8のポリアミド樹脂についても、改善の余地は残るのである。
本発明は、印刷インキ用ポリアミド樹脂において、アルコール可溶性を確保しながら、耐ブロッキング性や密着性を改善することを技術的課題とする。
一般に、アルコール可溶性を付与するには、ポリアミド樹脂の凝集力の低下や低分子量化が必要になるが、その反面、これらの操作に起因して耐ブロッキング性や密着性は低下してしまう。この相反する実情に鑑みて、本発明者らは、上記特許文献2〜8に開示された公知のアルコール可溶性ポリアミド樹脂について、その樹脂を構成する成分の種類や比率を変化させるのではなく、アルコール可溶性を損なわない条件で、耐ブロッキング性や密着性の低下を補える成分をこの従来のポリアミド樹脂に補強的に混合することを着想した。
そして、鋭意研究の結果、ごく低分子量ではあるが、高凝集力で高極性であり、且つ、所定のモノカルボン酸と重合脂肪酸とポリエチレンポリアミンとの反応で得られた脂肪酸アミド樹脂を、従来のアルコール可溶性のポリアミド樹脂に特定比率範囲で配合すると、アルコール可溶性を担保しながら、耐ブロッキング性や密着性を有効に改善できることを見い出し、本発明を完成した。
即ち、本発明1は、脂肪酸アミド樹脂(イ)と溶融粘度が150mPa・s/160℃以上のアルコール可溶性の印刷インキ用ポリアミド樹脂(ロ)を配合してなり、
上記脂肪酸アミド樹脂(イ)が、
(A)ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラギン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エルシン酸、パーム油脂肪酸、やし油脂肪酸、トール油脂肪酸、米糠脂肪酸、大豆油脂肪酸、カカオ脂脂肪酸、牛脂脂肪酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸より選ばれた22以下のモノカルボン酸、
(B)重合脂肪酸、
(C)エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ピペラジンからなるポリエチレンポリアミン
を下記の条件(1)〜(2)により縮合反応して得られる溶融粘度が50mPa・s/160℃以下の生成物であり、
(1)(A)と(B)の全カルボン酸成分に対する(A)成分の比率が60〜90%当量であること
(2)(A)成分のうちの、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸より選ばれた12未満のモノカルボン酸(D)の比率が上記全カルボン酸成分に対して0〜30%当量であること
上記脂肪酸アミド樹脂(イ)とポリアミド樹脂(ロ)を(イ)/(ロ)=10/90〜50/50の重量比で配合することを特徴とする印刷インキ用ポリアミド樹脂組成物である。
本発明2は、上記本発明1のポリアミド樹脂組成物を含有する印刷インキである。
前述したように、アルコール混合溶媒への溶液安定性を付与するには、ポリアミド樹脂を低分子量化したり、極性・凝集力を低下させる必要があるが、凝集力の低下は樹脂強度の低下を、また、低分子量化は粘度低下を招くため、耐ブロッキング性や密着性を損なうことになる。
本発明では、従来のアルコール可溶性ポリアミド樹脂に、所定のモノカルボン酸と重合脂肪酸とポリエチレンポリアミンとを反応させて上記条件(1)〜(2)で得られるごく低分子量で高凝集力の脂肪酸アミド樹脂を併用添加することにより、アルコール可溶性を確保しながら、上記従来樹脂で問題になっていた耐ブロッキング性や密着性などのインキ特性を有効に克服・改善できる。この脂肪酸アミド樹脂の溶融粘度は50mPa・s/160℃以下であり、これを従来のポリアミド樹脂の溶融粘度と比べれば、本発明の脂肪酸アミド樹脂は、従来のポリアミド樹脂より明らかに分子量が顕著に低く(後述の図1と図3参照)、ごく低分子量の脂肪酸アミドを従来のアルコール可溶性ポリアミド樹脂に混合する点に本発明の特徴がある。
ちなみに、脂肪酸アミド樹脂の製造では、C22以下の所定の長鎖系のモノカルボン酸を使用することで凝集力と極性を高く保持できるが、これに加えて、性能を損なわない範囲でC12未満の所定の短鎖モノカルボン酸を併用することで、脂肪酸アミド樹脂をより有効に高凝集力化、高極性化することができる。
本発明は、第一に、C22以下の所定のモノカルボン酸と重合脂肪酸を併せた全カルボン酸に対する当該モノカルボン酸の当量比率と、C22以下の上記モノカルボン酸のうちのC12未満の所定の短鎖モノカルボン酸の全カルボン酸に対する当量比率を特定化したごく低分子量の脂肪酸アミド樹脂を、従来のアルコール可溶性ポリアミド樹脂に特定の重量比率で配合した印刷インキ用ポリアミド樹脂組成物であり、第二に、このポリアミド樹脂組成物を含有する印刷インキである。
上記アルコール可溶性ポリアミド樹脂とは、(a)脂肪族炭化水素とアルコール、或はさらにエステルや、(b)アルコールとエステルのようなグラビア特殊インキやフレキソインキなどに汎用されるアルコール混合溶媒(必須成分であるアルコールと他の非芳香族系溶媒との混合物)に対して溶液安定性を示すポリアミド樹脂をいう。
上記モノカルボン酸(A)は、炭素数22以下の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸、天然油脂由来の脂肪酸、芳香族モノカルボン酸などを単用又は併用でき、C16〜C20のモノカルボン酸が好ましい。上記飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸は、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラギン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エルシン酸などから選ばれる。これらの脂肪族モノカルボン酸を多く含む天然油脂由来の脂肪酸、パーム油脂肪酸、やし油脂肪酸、トール油脂肪酸、米糠脂肪酸、大豆油脂肪酸、カカオ脂脂肪酸、牛脂脂肪酸などから選ばれる
上記C22以下のモノカルボン酸(A)においては、上記条件(1)に示すように、重合脂肪酸(B)を加えた全カルボン酸成分に対する含有比率は所定範囲内に限定される。
また、C22以下のモノカルボン酸(A)のうちのC12未満の短鎖モノカルボン酸(D)についても、上記条件(2)に示すように、全カルボン酸成分に対する含有比率は所定範囲内に限定される。
このC12未満の短鎖モノカルボン酸ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などから選ばれ、物性、経済性、入手の容易性などから酢酸、プロピオン酸が好ましい。
上記重合脂肪酸(B)は、トール油、大豆油、ヤシ油、ヌカ油などの植物油系、牛脂系等の乾性油、半乾性油から得られる不飽和脂肪酸又はそのエステル(具体的には、C8〜C24、主としてC18の不飽和脂肪酸など)を重合し、蒸留精製した脂肪酸である。
得られた重合脂肪酸の一般的組成は、C18の一塩基酸が0〜10重量%,C36の二塩基酸が60〜99重量%,C54の三塩基酸が30重量%以下であり、残存する不飽和二重結合に水素添加したものを使用しても良い。
上記ポリエチレンポリアミン(C)は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ピペラジン等から選ばれ、これらを任意で割合で単用又は併用することができる。
上記脂肪酸アミド樹脂(イ)の製造に際しては、上記条件(1)〜(2)を満たすことが必要であるが、これらの条件を除いては、公知の重合脂肪酸系ポリアミド樹脂の合成方法に基づいて、C22以下のモノカルボン酸(A)と重合脂肪酸(B)とポリエチレンポリアミン(C)を任意に縮合反応して製造される。通常、反応温度は160〜250℃、好ましくは180〜240℃である。着色防止の見地から窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましく、反応完結又は揮発成分除去を促進するため、減圧で行うこともできる。
上記条件(1)を詳述すれば、モノカルボン酸(A)と重合脂肪酸(B)を併せた全カルボン酸成分に対する当該成分(A)の比率は60〜90%当量である。蓋し、モノカルボン酸(A)が上記適正当量未満であると、重合脂肪酸が適正当量を越え、脂肪酸アミド樹脂の分子量が上がり過ぎ、ポリオレフィン基材への濡れ性が低下して界面破壊が起き易いため、ポリオレフィン基材に対する密着性が低下するからである。
また、上記条件(2)を詳述すれば、モノカルボン酸(A)成分のうちのC12未満の短鎖モノカルボン酸(D)の比率は上記全カルボン酸成分に対して0〜30%当量である。蓋し、短鎖モノカルボン酸が上記適正当量を越えると脂肪酸アミド樹脂の分子量が低下し、樹脂強度が下がって凝集破壊が起き易いため、ポリオレフィン基材に対する密着性がやはり低下するからである。また、極性が上がり過ぎて、アルコール混合溶媒への溶液安定性が低下するという問題もある。
ちなみに、全カルボン酸に対する短鎖モノカルボン酸の含有比率を規定する条件(2)で重要な点は、短鎖モノカルボン酸が0%当量であり、それ以外のC12〜C22の長鎖モノカルボン酸が全比率を占めても差し支えないことである(後述の製造例1と3参照)。
本発明の脂肪酸アミド樹脂(イ)の溶融粘度は50mPa・s/160℃以下である。
当該溶融粘度は樹脂の分子量に関係し、チェインストッパーとしてのモノカルボン酸量によって影響されるが、上記(1)〜(2)の条件下で製造すると、脂肪酸アミド樹脂の溶融粘度は概ね50mPa・s/160℃以下となる。逆に、溶融粘度が50mPa・s/160℃を越えると、脂肪酸アミド樹脂(イ)の分子量が増してポリオレフィン基材に対する密着性が低下する恐れが発生する。
従来のアルコール可溶性ポリアミド樹脂(ロ)の溶融粘度は150mPa・s/160℃以上であるが、一般には概ね1000mPa・s/160℃以上あり、6000mPa・s/160℃以上の製品も存在することから(後述の比較例1、比較例3〜4参照)、従来のポリアミド樹脂(ロ)に対比すると、本発明の脂肪酸アミド樹脂(イ)の溶融粘度をきわめて低く、従って、脂肪酸アミド樹脂はごく低分子量である。
従来の上記アルコール可溶性の印刷インキ用ポリアミド樹脂(ロ)は重合脂肪酸をエチレンジアミン等のポリアミンで縮合したものであり、原料処方などは特に問わず、他の原料、例えば、アジピン酸、フタル酸、ロジンなどの酸類やアルコールなどで変性されていても良い。
前記脂肪酸アミド樹脂(イ)とアルコール可溶性ポリアミド樹脂(ロ)の配合割合は、(イ)/(ロ)=10/90〜50/50の重量比で使用できる。脂肪酸アミド樹脂(イ)の配合比率が10重量%未満では、従来のアルコール可溶性ポリアミド樹脂の問題を解消できない。逆に、脂肪酸アミド樹脂(イ)が50重量%を越えると、樹脂強度が下がり、凝集破壊で密着性が低下するうえ、トータルのポリアミド樹脂の分子量が低下し、脂肪酸アミド樹脂(イ)の性状が強く顕現して、耐油性、耐水性が低下する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、通常、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類を中心として、このアルコール類にヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、或は、さらに酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピルなどのエステル類を加えた混合溶媒、又はアルコール類とエステル類の混合溶媒(即ち、アルコール混合溶媒)に溶解した後、硝化綿、有機金属配位化合物を配合し、さらには、着色剤(顔料及び染料)、ロジン系、石油系若しくは芳香族系の樹脂類、可塑性、ワックス類などの他の添加剤を配合して、印刷インキに調製される。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、特に、グラビア特殊インキやフレキソインキに適している。
耐熱性、乾燥性などの性能を向上する見地から、ポリアミド樹脂に硝化綿及び有機金属配位化合物を併用添加するが、この場合、硝化綿の配合量は、ポリアミド樹脂に対して5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%である。有機金属配位化合物としては、有機チタネート系、有機アルミニウム系、有機ジルコニウム系化合物などが挙げられるが、ジ−イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネートなどのアルキルチタネート系化合物が好ましい。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物を用いたグラビアインキの配合例を挙げると、例えば、ポリアミド樹脂組成物10〜30重量%、硝化綿1〜20重量%、顔料5〜40重量%、添加剤0〜15重量%、溶剤40〜70重量%である。
このグラビアインキの印刷対象物は特に制限されないが、処理又は未処理のポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、アルミニウム等の金属箔、或はアルミ蒸着フィルムなどが好ましい。
以下、本発明の脂肪酸アミド樹脂の製造例、当該脂肪酸アミド樹脂と従来のポリアミド樹脂を混合してなる本発明のポリアミド樹脂組成物の実施例、当該ポリアミド樹脂組成物を用いた印刷インキの調製例、当該印刷インキの溶液安定性、耐ブロッキング性、対ポリオレフィン密着性などの各種性能評価試験例を順次説明する。また、製造例、調製例、実施例中の「%」、「部」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の実施例、調製例、試験例などに拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
《脂肪酸アミド樹脂の製造実施例》
図1に示すように、製造例1〜3のうち、製造例1と製造例3はモノカルボン酸としてC12〜C22の長鎖モノカルボン酸のみを使用し、C12未満の短鎖モノカルボン酸を使用しない例であり、製造例1は長鎖モノカルボン酸としてステアリン酸を用いた例、製造例3は同じくトール油脂肪酸を用いた例である。また、製造例2はモノカルボン酸として長鎖モノカルボン酸と短鎖モノカルボン酸を併用した例である。
また、比較製造例1〜2のうち、比較製造例1は全カルボン酸に対する短鎖モノカルボン酸の比率が50%当量を越える例、比率製造例2は全カルボン酸に対する長鎖と短鎖を併せたモノカルボン酸全量の比率が40%当量より低い例である。
(1)製造例1
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管を備えた4つ口フラスコに、重合脂肪酸、ステアリン酸、エチレンジアミンを図1に示す含有量(単位:上段は重量(g)/下段は当量比)で仕込み、窒素ガスを導入しながら230℃で4時間脱水縮合した後、減圧下で2時間脱水して、脂肪酸アミド樹脂を得た。脂肪酸アミド樹脂の溶融粘度は23mpa・s/160℃であった。
尚、上記重合脂肪酸には、ハリダイマー250(組成比はモノマー酸3%、ダイマー酸79%、トリマー酸18%;ハリマ化成社製)を使用した(以下の製造例2〜3、比較製造例1〜2も同じ)。
(2)製造例2
上記製造例1を基本として、モノカルボン酸をステアリン酸単独から、ステアリン酸、プロピオン酸及び酢酸の混合物に代替して図1の含有量で仕込んだ以外は、製造例1と同様の条件で製造して脂肪酸アミド樹脂を得た。脂肪酸アミド樹脂の溶融粘度は27mpa・s/160℃であった。
(3)製造例3
上記製造例1を基本として、モノカルボン酸をステアリン酸からトール油脂肪酸に代替して図1の含有量で仕込んだ以外は、製造例1と同様の条件で製造して脂肪酸アミド樹脂を得た。脂肪酸アミド樹脂の溶融粘度は40mpa・s/160℃であった。
尚、上記トール油脂肪酸はハートールFA−1(ハリマ化成社製)を用いた。
(4)比較製造例1
上記製造例1を基本として、モノカルボン酸をステアリン酸から、プロピオン酸と酢酸の混合物に代替して図1の含有量で仕込んだ以外は、製造例1と同様の条件で製造して脂肪酸アミド樹脂を得た。脂肪酸アミド樹脂の溶融粘度は20mpa・s/160℃であった。
(5)比較製造例2
上記製造例1を基本として、モノカルボン酸をステアリン酸からトール油脂肪酸に代替して図1の含有量で仕込んだ以外は、製造例1と同様の条件で製造して脂肪酸アミド樹脂を得た。脂肪酸アミド樹脂の溶融粘度は850mpa・s/160℃であった。
そこで、上記製造例1〜3並びに比較製造例1〜2で得られた各脂肪酸アミド樹脂を従来のアルコール可溶性ポリアミド樹脂に混合して、本発明のポリアミド樹脂組成物を製造した。
《ポリアミド樹脂組成物の実施例》
図2〜図3に示すように、比較例1〜7のうち、比較例1〜4は従来のアルコール可溶性ポリアミド樹脂のみを使用したブランク例であり、比較例1と3は冒述の特許文献7に準拠したポリアミド樹脂の例、比較例2は冒述の特許文献8に準拠したポリアミド樹脂の例、比較例4は市販のアルコール可溶性ポリアミド樹脂の例である。比較例5は従来のポリアミド樹脂に対して脂肪酸アミド樹脂を過剰に多く混合した例である。比較例6は前記比較製造例2の脂肪酸アミド樹脂と上記比較例1のポリアミド樹脂を混合した例である。比較例7は前記比較製造例1の脂肪酸アミド樹脂と上記比較例1のポリアミド樹脂を混合した例である。
一方、実施例1〜5のうち、実施例1は前記製造例1の脂肪酸アミド樹脂と上記比較例1のポリアミド樹脂を混合した例、実施例2は前記製造例1の脂肪酸アミド樹脂と上記比較例2のポリアミド樹脂を混合した例、実施例3は前記製造例1〜2の脂肪酸アミド樹脂と上記比較例3のポリアミド樹脂を混合した例、実施例4は前記製造例1〜2の脂肪酸アミド樹脂と市販のポリアミド樹脂である比較例4を混合した例、実施例5は前記製造例3の脂肪酸アミド樹脂と上記比較例1のポリアミド樹脂を混合した例である。
(1)比較例1
重合脂肪酸、モノカルボン酸(ステアリン酸とプロピオン酸)、及びポリアミンを図3に示す含有量(単位:上段は重量(g)/下段は当量比)で4つ口フラスコに仕込み、前記脂肪酸アミド樹脂の製法(具体的には、製造例1)と同様の条件で製造して、アルコール可溶性のポリアミド樹脂を得た。当該ポリアミド樹脂の溶融粘度は6000mpa・s/160℃であった。
尚、上記重合脂肪酸は前記製造例1と同じものを使用した(比較例2〜4も同じ)。
(2)比較例2
重合脂肪酸、モノカルボン酸(酢酸)、及びポリアミンを図3に示す含有量で4つ口フラスコに仕込み、上記比較例1と同様の条件で製造して、アルコール可溶性のポリアミド樹脂を得た。当該ポリアミド樹脂の溶融粘度は150mpa・s/160℃であった。
(3)比較例3
重合脂肪酸、モノカルボン酸(トール油脂肪酸と酢酸)、及びポリアミンを図3に示す含有量で4つ口フラスコに仕込み、上記比較例1と同様の条件で製造して、アルコール可溶性のポリアミド樹脂を得た。当該ポリアミド樹脂の溶融粘度は1800mpa・s/160℃であった。
(4)比較例4
市販のアルコール可溶性ポリアミド樹脂(ニューマイド856;ハリマ化成社製)を使用した。当該ポリアミド樹脂の反応成分組成は図3に示す通りであり、ポリアミド樹脂の溶融粘度は1100mpa・s/160℃である。
(5)実施例1
前記製造例1の脂肪酸アミド樹脂と上記比較例1のポリアミド樹脂を図2に示す混合比率で配合して、ポリアミド樹脂組成物を得た。
(6)実施例2
前記製造例1の脂肪酸アミド樹脂と上記比較例2のポリアミド樹脂を図2に示す混合比率で配合して、ポリアミド樹脂組成物を得た。
(7)実施例3
前記製造例1〜2の脂肪酸アミド樹脂と上記比較例3のポリアミド樹脂を図2に示す混合比率で配合して、ポリアミド樹脂組成物を得た。
(8)実施例4
前記製造例1〜2の脂肪酸アミド樹脂と上記比較例4のポリアミド樹脂を図2に示す混合比率で配合して、ポリアミド樹脂組成物を得た。
(9)実施例5
前記製造例3の脂肪酸アミド樹脂と上記比較例1のポリアミド樹脂を図2に示す混合比率で配合して、ポリアミド樹脂組成物を得た。
(10)比較例5
図2に示すように、前記製造例1の脂肪酸アミド樹脂と上記比較例1のポリアミド樹脂を、脂肪酸アミド樹脂が60%を越える重量比率、即ち、脂肪酸アミド樹脂/ポリアミド樹脂=80%/20%で配合して、ポリアミド樹脂組成物を得た。
(11)比較例6
前記比較製造例2の脂肪酸アミド樹脂(全カルボン酸に対するモノカルボン酸の当量比が30%である)と、上記比較例1のポリアミド樹脂とを図2に示す混合比率で配合して、ポリアミド樹脂組成物を得た。
(12)比較例7
前記比較製造例1の脂肪酸アミド樹脂(全カルボン酸に対する短鎖モノカルボン酸の当量比が75%である)と、上記比較例1のポリアミド樹脂とを図2に示す混合比率で配合して、ポリアミド樹脂組成物を得た。
次いで、上記実施例1〜5並びに比較例1〜7の各ポリアミド樹脂組成物を硝化綿、キレート剤及び白色顔料などと配合して、試験用の白インキを調製した。
《試験用白インキの調製例》
下記の混合物100部とガラスビーズ100部を高速ミキサーで約2時間撹拌混合し、これにキレート剤であるジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン(T−50;日本曹達社製)を1部加えて良く混合し、試験用白インキを調製した。
ポリアミド樹脂/脂肪酸アミド 15部
硝化綿溶液 15部
酸化チタン 20部
溶剤 50部
合計 100部
尚、硝化綿溶液は硝化綿(HIG1/4;旭化成社製)を酢酸エチルに溶解させたものを用い、溶剤はアルコールと脂肪族炭化水素とエステルの混合溶剤を用い、具体的には、メチルシクロヘキサン/n−プロピルアルコール/メタノール/酢酸n−プロピル=5/3/1/1(重量比)の混合物を用いた。
そして、上記試験用白インキを下記に示す各種性能評価試験に供した。
《白インキの性能評価試験例》
(a)低温下での溶液安定性
上記試験用の白インキを0℃で24時間放置した後、その流動性の評価を行った。
評価基準は次の通りである。
○:流動性は良好であった。
△:スラリー状を呈した。
×:固化してしまった。
(b)耐ブロッキング性
上記試験用の白インキをコロナ放電処理延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)にバーコーターNo.46で塗布し、24時間放置して印刷物を作成した。次いで、この印刷物を未塗工のOPP処理面と重ね合わせ、1kg/cm2の荷重をかけて60℃で24時間放置して、印刷物を剥がす際の抵抗の度合いを調べた。
そして、抵抗なしの場合の評価を「5」、抵抗がある場合を「3」、抵抗が大きい場合を「1」とし、抵抗なしと抵抗がある場合の中間を「4」、抵抗がある場合と大きい場合の中間を「2」として、全体を5段階評価した。
(c)対ポリオレフィン密着性
上記試験用の白インキをコロナ放電処理延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)にバーコーターNo.10で塗布し、24時間放置して印刷物を作成した。次いで、この印刷面にセロテープ(ニチバン社製)を貼り付けたあと、素早くテープを引き剥がして、印刷面の状態を観察した。
そして、印刷面の剥離がなく良好な場合の評価を「5」、剥離がある場合を「3」、剥離が多い場合を「1」とし、剥離なしと剥離がある場合の中間を「4」、剥離がある場合と多い場合の中間を「2」として、全体を5段階評価した。
(d)耐熱性
上記試験用の白インキをコロナ放電処理延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)にバーコーターNo.10で塗布し、24時間放置して印刷物を作成した。次いで、この印刷面にアルミニウム箔を重ね合わせ、ヒートシールテスターを用いて温度180℃、荷重2kg/cm2、圧着時間1秒の条件で熱圧着し、室温まで冷却してからアルミニウム箔を引き剥がして、印刷面の状態を観察した。
そして、印刷面の剥離がなく良好な場合の評価を「5」、剥離がある場合を「3」、剥離が多い場合を「1」とし、剥離なしと剥離がある場合の中間を「4」、剥離がある場合と多い場合の中間を「2」として、全体を5段階評価した。
(e)耐油性
上記試験用の白インキをコロナ放電処理延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)にバーコーターNo.10で塗布し、24時間放置して印刷物を作成した。次いで、この印刷物にサラダ油を塗布して室温で24時間放置した後、10回手揉みを行ったあと、印刷面の状態を観察した。
そして、印刷面の剥離がなく良好な場合の評価を「5」、剥離がある場合を「3」、剥離が多い場合を「1」とし、剥離なしと剥離がある場合の中間を「4」、剥離がある場合と多い場合の中間を「2」として、全体を5段階評価した。
(f)白インキの性能評価
図2の下寄り欄は夫々これらの試験結果である。
図1と図3の下寄り欄を見ると、従来のアルコール可溶性ポリアミド樹脂である比較例1、比較例3〜4の溶融粘度は1000mPa・s/160℃を越える(特に、比較例1は6000mPa・s/160℃に達した)のに対し、本発明の脂肪酸アミド樹脂(製造例1〜3)の溶融粘度は50mPa・s/160℃以下であり、ごく低分子量であることが認められる。このごく低分子量の脂肪酸アミド樹脂を適正量で配合した実施例1〜5のインキはアルコールと脂肪族炭化水素とエステルの(非芳香族)混合溶媒に対する溶液安定性に優れ、それも常温より厳しい条件の低温(0℃)での溶液安定性に優れることが確認できた。また、従来のポリアミド樹脂で問題になっていた耐ブロッキング性、対ポリオレフィン密着性にも優れ、耐熱性や耐油性も概ね良好であった。
これに対して、従来のポリアミド樹脂だけのブランク例である比較例1〜4のインキは低温での溶液安定性は良好であったが、やはり耐ブロッキング性と密着性はかなり劣っていた。尚、これらの比較例1〜4のうち、比較例1のインキは耐ブロッキング性と密着性こそ劣るものの、低温溶液安定性の点では他の比較例2〜4より優位であった。
一方、脂肪酸アミド樹脂の配合量が過剰に多い比較例5を実施例1に対比すると、比較例5のインキは密着性が低下するとともに、インキの分子量が不足ぎみになって耐熱性や耐油性も劣った。これにより、ポリアミド樹脂全量に対する本発明の脂肪酸アミド樹脂の配合量は60重量%以下の適正範囲に抑えることの重要性が明らかになった。
また、実施例1、3、5と比較例6〜7は、脂肪酸アミド樹脂と従来のポリアミド樹脂(上述のように、実施例3を除く他のすべては溶液安定性に優れる比較例1を使用)の配合量が脂肪酸アミド/ポリアミド樹脂=20%/80%である点で共通する。そこで、この実施例1、3、5と比較例6を対比すると、脂肪酸アミド樹脂の製造に際して、全カルボン酸量に対するモノカルボン酸量の比率が適正範囲より少ない比較例6では密着性や耐ブロッキング性が低下した。これは、重合脂肪酸の比率が多くなって脂肪酸アミド樹脂の分子量が増してポリオレフィンへの濡れ性が低下した結果、密着性などのインキ性能が低下したためと推定できる。即ち、脂肪酸アミド樹脂と従来のポリアミド樹脂の配合量が適正でも、脂肪酸アミド樹脂の製造に際して、全カルボン酸量に対するモノカルボン酸全量が適正比率から外れると良好なインキ性能が得られず、このモノカルボン酸量を適正比率に保持すること(即ち、本発明の条件(1))の重要性が明らかになった。
さらに、上記実施例1、3、5と比較例7を対比すると、脂肪酸アミド樹脂の製造に際して、全カルボン酸量に対するC12未満の短鎖モノカルボン酸量の比率が適正範囲より多い比較例7では溶液安定性が低下し、密着性や耐ブロッキング性も実施例より劣った。これは、極性が上がり過ぎてアルコール混合溶媒への溶液安定性が損なわれるとともに、脂肪酸アミド樹脂の分子量が低下して凝集破壊が起き易くなり、密着性などのインキ性能が低下したためと推定できる。即ち、脂肪酸アミド樹脂と従来のポリアミド樹脂の配合量が適正でも、脂肪酸アミド樹脂の製造に際して、全カルボン酸量に対する短鎖モノカルボン酸量が適正比率から外れるとやはり良好なインキ性能が得られず、この短鎖モノカルボン酸量を適正比率に保持すること(即ち、本発明の条件(2))の重要性が明らかになった。
以上を総合すると、アルコール混合溶媒への良好な溶解性を示す比較例1〜4のポリアミド樹脂に、本発明のごく低分子量の脂肪酸アミド樹脂を配合すると、耐ブロッキング性や対ポリオレフィン密着性で劣る比較例1〜4の問題点を有効に克服できるとともに、耐熱性や耐油性も良好な水準を保持でき、インキに全般的な優れた性能を付与できることが判明した。
そして、この優れたインキ性能の付与には、本発明の脂肪酸アミド樹脂は従来のポリアミド樹脂に対して適正量で配合すること、また、この脂肪酸アミド樹脂の製造に際しては、全カルボン酸量に対するモノカルボン酸全量並びに短鎖モノカルボン酸量を夫々適正比率に保持することが必要である点が確認できた。
製造例1〜3及び比較製造例1〜2の各脂肪酸アミドに関する図表であり、図1Aは各脂肪酸アミド樹脂を製造する際の重合脂肪酸、モノカルボン酸及びポリアミンの含有量を示し、図1Bは本発明の条件(1)〜(2)の当量比を示し、図1Cは得られた樹脂の恒数を示す。 実施例1〜5及び比較例1〜7の各ポリアミド樹脂組成物の混合量、各ポリアミド樹脂組成物を用いた試験用インキの各種性能試験結果を示す図表である。 比較例1〜4の従来の各ポリアミド樹脂を製造する際の重合脂肪酸、モノカルボン酸、ポリアミンの含有量、得られた樹脂の恒数を示す図表である。

Claims (2)

  1. 脂肪酸アミド樹脂(イ)と溶融粘度が150mPa・s/160℃以上のアルコール可溶性の印刷インキ用ポリアミド樹脂(ロ)を配合してなり、
    上記脂肪酸アミド樹脂(イ)が、
    (A)ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラギン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エルシン酸、パーム油脂肪酸、やし油脂肪酸、トール油脂肪酸、米糠脂肪酸、大豆油脂肪酸、カカオ脂脂肪酸、牛脂脂肪酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸より選ばれた22以下のモノカルボン酸、
    (B)重合脂肪酸、
    (C)エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ピペラジンからなるポリエチレンポリアミン
    を下記の条件(1)〜(2)により縮合反応して得られる溶融粘度が50mPa・s/160℃以下の生成物であり、
    (1)(A)と(B)の全カルボン酸成分に対する(A)成分の比率が60〜90%当量であること
    (2)(A)成分のうちの、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸より選ばれた12未満のモノカルボン酸(D)の比率が上記全カルボン酸成分に対して0〜30%当量であること
    上記脂肪酸アミド樹脂(イ)とポリアミド樹脂(ロ)を(イ)/(ロ)=10/90〜50/50の重量比で配合することを特徴とする印刷インキ用ポリアミド樹脂組成物。
  2. 請求項1のポリアミド樹脂組成物を含有する印刷インキ。
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