JP4660505B2 - 基板キャリアシステムおよび基板を研磨する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基板を研磨し平坦化する研磨装置の基板キャリアシステム及び基板を研磨する方法に関するものであり、特に半導体ウェハのような基板を化学的、機械的に研磨し平坦化する研磨装置の基板キャリアシステム及び基板を研磨する方法に関するものである。
従来の研磨装置の基板キャリアシステムは、基板キャリア下面にポリッシング対象物を保持し、ポリッシング対象物を研磨パッドに対して押圧すると共に、研磨パッドの研磨面に砥液を供給し、基板と研磨パッドを相対運動させてポリッシング対象物を研磨していた。この研磨の際、基板が基板キャリア下面から外れないようするために、基板キャリアはリテーナリングを備えていた。基板キャリアは、リテーナリングにより基板を囲んで保持していた。
弾性を有する研磨パッドには、研磨の際、ポリッシング対象物の周縁部分が過研磨される、所謂「縁だれ」が発生する。この「縁だれ」を抑制するため、リテーナリングは、その周縁部分で僅かに下向きに撓むように研磨パッドに押圧されている。
以上のような従来の研磨装置によれば、リテーナリングを研磨パッドに押圧すると、「縁だれ」が解消し、ポリッシング対象物の表面の仕上げ精度は向上する。一方で、リテーナリングが研磨パッドによって摩耗し、研磨面と基板キャリアの距離は変化する。この結果、研磨条件がリテーナリングの摩耗に応じて変化してしまう。しかし、従来の研磨装置では、このような研磨条件の変化に対しては対策がなされていなかった。
そこで、本発明は、研磨面と基板キャリアの距離を一定に保ちつつ基板に加わる研磨圧力を調整することができる基板キャリアシステム、および研磨方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の基板キャリアシステムでは、研磨の間、基板を保持する基板キャリアと、前記基板キャリアを駆動、上昇及び下降させるために前記基板キャリアに接続された基板キャリア駆動軸と、前記基板キャリア駆動軸に接続されたボールネジ及びボールナットと、前記基板キャリアを所望の鉛直方向位置まで上昇及び下降させるための、前記ボールネジに取り付けられたパルスモータと、前記基板と前記基板キャリアとの間に加圧流体を供給するための加圧流体源と、前記パルスモータ、前記ボールネジ及びボールナットによって前記基板キャリアが所望の鉛直方向位置で固定されるまで、前記基板キャリアの鉛直方向位置を制御し、且つ前記基板を前記研磨面に対して押圧するために前記基板と前記基板キャリアとの間に加圧流体を供給するための、制御機構を備える、という構成を採っている。
また、本発明の基板を研磨する方法では、基板キャリアによって前記基板を保持し、前記基板キャリアを降下させることによって、前記基板キャリアを前記研磨面に接触させ、前記基板キャリアを鉛直方向に上昇させ、前記研磨面から所定の距離の位置で固定し、前記基板を前記研磨面に対して押圧するために前記基板と前記基板キャリアの間に加圧流体を供給し、前記基板を研磨するために、前記基板と研磨面とに相対摺動運動を生じさせる、という構成を採っている。
以上に説明したように本発明は、基板キャリアを所望の位置に固定した状態で、圧力室に所定の圧力の加圧流体を供給し、基板をターンテーブルの研磨面に押圧する。このため、リテーナリングが摩耗していても、研磨パッドと基板キャリアとの位置を一定にすることができる。この結果、リテーナリングや研磨面の摩耗に関わらず、圧力室に供給される加圧流体の圧力を制御することにより、基板に加わる研磨圧力を常に所望の値に調整することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。この説明の目的から、各図において互いに同一あるいは相当する部材には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る基板キャリアシステムを含む研磨装置1の外形図である。図1を参照してこの研磨装置の構成を説明する。
研磨装置1は、基板Sを保持する基板キャリア10と、基板キャリア10を回転駆動する基板キャリア駆動軸12と、基板キャリア駆動軸12を支持する基板キャリアヘッド13と、揺動軸14を備える。揺動軸14が自己を中心として揺動することにより基板キャリアヘッド13、基板キャリア10も同じように揺動する。
研磨装置1はさらに、研磨工具15が固定された研磨テーブル36と、後述のリフタ29とプッシャ30間の搬送を行うロータリトランスポータ27とを備える(共に後述する)。研磨工具15は、研磨パッド15Aと、固定砥粒15Bから構成される。研磨テーブル36は、研磨パッド15Aが固定されたターンテーブル36Aと、固定砥粒15Bが固定されたスクロールテーブル36Bから構成される。研磨工具15の研磨面17は、研磨パッド15Aの研磨面17Aと、固定砥粒15Bの研磨面17Bから構成される。
ターンテーブル36Aおよびスクロールテーブル36Bには、純水、砥液又は薬液(又はこれらの組合せ)のいずれかが研磨に際して研磨液として供給可能である。揺動軸14を揺動させることにより、基板キャリア10を、ターンテーブル36Aの真上、スクロールテーブル36Bの真上、プッシャ30(後述する)の真上に位置することが可能である。揺動軸14は位置決め機構(図示略)を有し、基板キャリア10の揺動による位置決めが可能である。
研磨装置1はさらに、基板Sを反転させる基板反転機28と、基板反転機28とロータリトランスポータ27間で基板Sを搬送するリフタ29と、ロータリトランスポータ27によって搬送された基板Sを基板キャリア10に受け渡すプッシャ30と、ターンテーブル36Aの研磨パッド15Aのドレッシングを行う第1のドレッサ20と、スクロールテーブル36Bの固定砥粒15Bのドレッシングを行う第2のドレッサ50とを備える。
図2を参照して、基板キャリア10の構成を説明する。基板キャリア10は、内部に収納空間を有する円筒容器状の基板キャリア本体2と、基板キャリア本体2の下端に一体に取り付けられたリテーナリング3を有する。基板キャリア本体2およびリテーナリング3の内部に画成された空間内には、基板Sの上面に接するシールリング42と、環状のホルダーリング5と、シールリング42を支持する概略円盤状のチャッキングプレート6とが収容されている。基板Sの下面が被研磨面SAである。
シールリング42は、弾性膜からなり、その外周部がホルダーリング5と(ホルダーリング5の下端に固定された)チャッキングプレート6との間に挟み込まれており、チャッキングプレート6の上面外縁、側周部、下面外縁を覆っている。これによりシールリング42とチャッキングプレート6との間には空間Gが形成されている。研磨時には、シールリング42が基板Sの上面に密着し、この空間Gをシールする。
ホルダーリング5と基板キャリア本体2との間には弾性膜からなる加圧シート7が張設されている。この加圧シート7は、外周縁部を基板キャリア本体2のハウジング部2Aと加圧シート支持部2Bとの間に挟み込み、内周縁部をホルダーリング5の上端部5Aとストッパ部5Bとの間に挟み込んで固定されている。基板キャリア本体2、チャッキングプレート6、ホルダーリング5、および加圧シート7を組み合わせることによって基板キャリア本体2の内部に圧力室21が形成されている。
圧力室21にはチューブ、コネクタ等からなる流体路31が連通されており、圧力室21は流体路31上に配置されたレギュレータR1を介して圧縮空気源(図示略)に接続されている。
基板Sとチャッキングプレート6との間に形成される空間の内部には、基板Sに当接するセンターバッグ8およびリングチューブ9が設けられている。円形状の当接部を有するセンターバッグ8は、チャッキングプレート6の下面の中心部に配置され、環状の当接部を有するリングチューブ9はこのセンターバッグ8の周囲を取り囲むようにセンターバッグ8の外側に配置されている。
チャッキングプレート6と基板Sとの間に形成される空間は、前述のセンターバッグ8およびリングチューブ9によって複数の空間に区画されている。すなわち、センターバッグ8とリングチューブ9の間には圧力室22が、リングチューブ9の外側には圧力室23がそれぞれ形成されている。センターバッグ8の内部には、弾性膜81とセンターバッグホルダー82とによって中心部圧力室(または単に圧力室と表す)24が形成されている。リングチューブ9の内部には、弾性膜91とリングチューブホルダー92とによって中間部圧力室(または単に圧力室と表す)25が形成されている。
圧力室22、23、中心部圧力室24、および中間部圧力室25には、チューブ、コネクタ等からなる流体路32、33、34、35がそれぞれ連通されている。各圧力室22〜25はそれぞれの流体路32〜35上に配置されたレギュレータR2、R3、R4、R5を介して供給源としての圧縮空気源(図示略)に接続されている。
前述したチャッキングプレート6の上方の圧力室21及び前述の圧力室22〜25には、各圧力室に連通される流体路31〜35を介して圧縮空気又は大気圧空気等の流体が供給されるようになっている。圧力室21〜25の流体路31〜35上に配置されたレギュレータR1〜R5によってそれぞれの圧力室21〜25に供給される加圧流体の圧力を調整することができる。これにより各圧力室21〜25の内部の圧力を各々独立に制御でき、または大気圧にすることができる。このように、レギュレータR1〜R5によって各圧力室21〜25の内部の圧力を独立に可変とすることにより、基板Sを研磨パッド15Aに押圧する押圧力を基板Sの部分ごとに調整することができる。なお、圧力室22、23を真空源(図示略)に切替接続することができるよう構成され、圧力室22、23を真空に切り替えることができる。
ここで、シールリング42の外周面とリテーナリング3との間には、僅かな間隙Hがあるので、(ホルダーリング5とチャッキングプレート6およびチャッキングプレート6に取付けられたシールリング42等の)所定の構成要素は、基板キャリア本体2およびリテーナリング3に対して上下方向に移動可能で、フローティングする構造となっている。ホルダーリング5のストッパ部5Bには、その外周縁部から外方に突出する突起5Cが複数箇所に設けられており、この突起5Cがリテーナリング3の内方に突出している部分3Aの上面3Bに係合することにより、(ホルダーリング5等の)構成要素の上下方向への移動が所定の位置までに制限される。
レギュレータR1〜R5、流体路31〜35、圧力室21〜25、チャッキングプレート6を含んで、基板押圧機構11が構成される。
次に、基板キャリア10を回転させる機構、基板キャリア10を上下に移動させる機構等について説明する。基板キャリア10は、基板キャリア駆動軸12の下端部に取り付けられたロードセル51に、ジンバル機構52を介して接続されている。
装置内に鉛直に配置された基板キャリア駆動軸12はスプライン軸受53に挿入され、スプライン軸受53はプーリ54に挿入されている。プーリ54は、プーリ54を収納する支持体56の中空部56Aに回転可能に取り付けられている。鉛直に配置された基板キャリア駆動軸12は、水平に配置された支持体56を貫通する。基板キャリア駆動軸12は、駆動手段(図示略)により、プーリ54にかけられたタイミングベルト55(図中、2点鎖線にて表示)を介して回転駆動される。タイミングベルト55は、中空部56A内部を移動する。
支持体56の上部には、ボールネジ58の一端部に連結されたパルスモータ57が取り付けられている。ボールネジ58は、基板キャリア駆動軸12の上端部に連結されたボールナット59に螺合されている。パルスモータ57の回転により、基板キャリア10と基板キャリア10に接続されたが基板キャリア駆動軸12とが一体となって上下に移動し、所望の位置に停止する。パルスモータとして、ステッピングモータ、サーボモータを使用することができる。
なお、支持体56を含んで支持体56より上の部分は、図2には図示されていない基板キャリアヘッド13(図1参照)の内部に収納されている。また、支持体56の下側に突出する基板キャリア駆動軸12の一部、ロードセル51、およびジンバル機構52の一部は防水板60A、Bに囲まれているが、防水板60A、Bは図1では省略してある。
ターンテーブル36Aには、検出機構としての第1の終点検知機構18が備えられ、スクロールテーブル36Bには、検出機構としての第2の終点検知機構19が備えられている。第1、第2の終点検知機構18、19は、基板Sの研磨量が所定の値(終点)に達した場合これを検知し、制御機構(図示略)に検出信号を送る。第1、第2の終点検知機構18、19のセンサは、光学式、渦電流式などいずれの形式であってもよい。研磨装置1が研磨トルクを検出する研磨トルク検出機構(図示略)を備えるようにし、検出された研磨トルクの値によって、研磨量を求める場合は、テーブル自体には終点検知機構を設けなくてもよい。
なお、パルスモータ57、ボールネジ58、ボールナット59、ロードセル51、基板キャリア駆動軸12を含んで、リテーナリング位置調整機構4が構成される。さらに、パルスモータ57、ボールネジ58、ボールナット59、ロードセル51、基板キャリア駆動軸12を含んで、リテーナリング押圧機構16が構成される。
図2を参照し、適宜図1、図3を参照して、本発明の実施の形態に係る基板キャリアシステムを含む研磨装置1の基板キャリア10の作用を説明する。
本実施の形態の研磨装置1において、基板Sを基板キャリア10にて保持するときには、まず基板キャリア10の全体を基板Sの真上に位置させる。センターバッグ8および(リングチューブ9の内部の)圧力室24、25に所定の圧力の加圧流体を供給し、これらを所定の圧力まで加圧する。制御機構(図示略)より、パルスモータ57に基板キャリア10を下降させるパルス信号を送る。パルスモータ57の回転によりボールネジ58が回転し、ボールネジ58の回転により、ボールナット59にねじ込まれ、これにより基板キャリア駆動軸12が下降するため基板キャリア10が下降し、センターバッグ8およびリングチューブ9の下端面が保持しようとする基板Sに密着する。
次に、圧力室22、23をそれぞれ流体路32、33を介して真空源(図示略)に接続することにより、圧力室22、23の内部を負圧にし、圧力室22、23の吸引作用により基板Sを真空吸着する。そして、基板Sを吸着した状態で、制御機構(図示略)より、パルスモータ57に基板キャリア10を上昇させるパルス信号を送る。パルスモータ57を下降のときの回転とは反対の方向に回転し、前述の下降のときと同様に(ボールネジ58、ボールナット59、基板キャリア駆動軸12を介して)基板キャリア10を上昇させる。次に揺動軸14を揺動して基板キャリア10を移動させ、基板キャリア10の全体を、研磨パッド15Aを有するターンテーブル36Aの真上に位置させる。なお、基板Sの外周縁はリテーナリング3によって保持され、研磨の際に基板Sが基板キャリア10から飛び出さないようになっている。
次に、基板キャリア10を下降させ、基板Sの被加工面とリテーナリング3の下面を研磨パッド15Aに接触させる。基板Sとリテーナリング3が研磨面17Aに接触すると基板キャリア駆動軸12の下端部に設置されたロードセル51に荷重がかかり、ロードセル51がこの荷重を検出し、検出した荷重信号を制御機構(図示略)に送り、制御機構は研磨パッド15Aに基板Sとリテーナリング3が接触したことを認識する。
次に、制御機構がパルスモータ57に対し、所定の量だけ上昇するようにパルス信号を送ると、パルスモータ57が回転し、基板キャリア10が所定の位置まで上昇する。このため、リテーナリング3が摩耗していても、研磨パッド15Aとリテーナリング3との位置を一定にすることができる。具体的には、基板キャリア10を0.2mm程度上昇させるが、基板Sは0.8mm程度の厚さがあるため、研磨の際に基板キャリア10の下面から外に飛び出すことはない。
この状態で、圧力室21〜23にそれぞれ所定の圧力の加圧流体を供給し、基板Sをターンテーブル36Aの研磨面17Aに押圧する。そして、研磨液供給ノズル(図示略)から研磨液を流すことにより、研磨パッド15Aに十分な量の研磨液が保持され、基板Sの被研磨面(下面)SAと研磨パッド15Aの研磨面17Aとの間に研磨液が存在した状態で研磨が行われる。
ここで(図3参照)、基板Sの(圧力室22、23の下方に位置する部分)C2、C4は、それぞれ圧力室22、23に供給される加圧流体の圧力で研磨面17Aに押圧される。また、基板Sの中心部圧力室24の下方に位置する部分C1は、センターバッグ8の弾性膜81を介して、中心部圧力室24に供給される加圧流体の圧力で研磨パッド15Aに押圧される。基板Sの中間部圧力室25の下方に位置する部分C3は、リングチューブ9の弾性膜91を介して、中間部圧力室25に供給される加圧流体の圧力で研磨面17Aに押圧される。圧力室21に加圧流体を供給することにより、あるいは供給された加圧流体の圧力を変えることにより、基板Sの研磨面17Aへの押圧力を変更することができる。
したがって、基板Sに加わる研磨圧力は、各圧力室21〜25に供給される加圧流体の圧力をそれぞれ制御することにより調整することができる。すなわち、基板Sをターンテーブル36A上の研磨パッド15Aに押圧する押圧力を基板Sの部分C1〜C4ごとに調整できる。これは、流体路31〜35にそれぞれ配置されたレギュレータR1〜R5によって、各圧力室21〜25に供給される加圧流体の圧力を独立に調整することにより行われる。
このように、基板Sの部分C1〜C4ごとに研磨圧力が所望の値に調整された状態で、回転しているターンテーブル36Aの研磨パッド15Aに基板Sが押圧される。基板Sを研磨パッド15Aに押圧する押圧力を適宜調整することにより、基板Sの(中心部圧力室24の下方に位置する部分C1、圧力室22の下方に位置する部分C2、中間部圧力室25の下方に位置する部分C3、圧力室22の部分C4)の部分における研磨圧力の分布を所望の分布とすることができる。
このように、基板Sを同心の4つの円(円部分C1および円環部分C2〜C4)に区切り、それぞれの部分C1〜C4を独立した押圧力で押圧することができる。研磨レートは基板Sの研磨パッド15Aに対する押圧力に依存するが、前述したように基板Sの各部分C1〜C4の押圧力を調整することができるので、当該4つの部分C1〜C4の研磨レートを独立に制御することが可能となる。したがって、基板Sの表面の研磨すべき薄膜の膜厚に半径方向の分布があっても、基板Sの全面に亘って研磨の不足や過研磨をなくすことができる。
また、リテーナリング3が、研磨面17Aに接触しない状態で基板Sを研磨することができ、リテーナリング3が研磨面17Aに接触する研磨に比べて、研磨液の基板Sの被研磨面SAと研磨面17Aとの間への入り込みがよくなり、研磨速度を高くすることができる。よって、研磨レートが上昇し、さらにリテーナリング3が研磨面に接触せずリテーナリング3の摩耗が抑制され、リテーナリング3の寿命が飛躍的に延びる。
リテーナリング3を研磨パッド15Aに接触させて研磨を行う場合には、基板キャリア10を十分下降させ、基板Sとリテーナリング3が研磨パッド15Aに接触した後、次の動作が行われる。すなわち、パルスモータ57がボールネジ58を回転させるために、制御機構(図示略)からパルスモータ57にパルス信号が送られ、この動作でボールナット59、基板キャリア駆動軸12を介して基板キャリア10が更に下降し、これにより、予めレシピ設定されたリテーナリング圧に対応する荷重をロードセル51が検出するまで、リテーナリング3が研磨パッド15Aに押圧される。
研磨圧はフィードバック制御により制御される。リテーナリング3が研磨パッド15Aに押し付けられると、それに伴いロードセル51に荷重がかかり、荷重が所定の値に達するとパルスモータ57の回転を停止させるために、ロードセル51からの荷重信号が制御機構に伝達される。その後、前述のように圧力室21〜23を加圧して基板Sを研磨パッド15Aに押し付け、必要に応じて中心部圧力室24、および中間部圧力室25の圧力変更が行われ、ターンテーブル36Aを回転させて研磨が行われる。
こうすることにより、研磨パッド15AとしてICI1000/SUBA400等の研磨布を使用するときに問題となる研磨パッドの「縁だれ」を、リテーナリング圧を制御することにより解決し、ひいては基板Sのエッジ部分の研磨後の面内均一性を改善し生産性を向上させることができる。
次に、図を参照し、リテーナリング3を研磨面17に接触させて行う研磨工程と、リテーナリング3を研磨面17に接触させないで行う研磨工程と、を本実施の形態の研磨装置1にて行う場合を説明する。但し、ターンテーブル36A、スクロールテーブル36Bは以下に示す研磨工具15を使用するものとする。
図2を参照し、適宜図5、図4(A)を参照し、研磨手順(1)を説明する。この手順では、最初に金属膜61が研磨され、その後に、金属膜61の残りと金属膜62が同時に研磨される。
この場合、図1と同じように、図5に示すように、ターンテーブル36Aが研磨パッド15Aを、スクロールテーブル36Bが研磨パッド115Aを使用する。なお、図5では、スクロールテーブル36Bの研磨工具として研磨パッド115A(固定砥粒15Bの代わり)が用いられている点が、図1と異なる。研磨パッド115Aは、研磨面117Aを有する。
また、図4(A)の断面図に示すように、基板S1は、メッキ等により形成された(銅など)の金属膜61と、金属膜61の下にあるバリア層としての金属膜62を含んで構成される。位置X1までは、金属膜61だけの研磨が行われ、位置X1から位置Y1の間は金属膜61と金属膜62の研磨が同時に行われる。
まず、基板キャリアヘッド13を、揺動軸14を中心に揺動し、基板キャリア10がプッシャ30の真上に移動するようにする。次に、圧力室24、25を加圧し、プッシャ30にてポリッシング対象物たる基板S1を基板キャリア10の下面(シールリング42と弾性膜81,82)に接触するまで上昇させる。その後、圧力室22、23を負圧にして基板S1を吸着させ、基板キャリア10に基板S1を保持する。このとき基板キャリア10に保持された基板S1はリテーナリング3に囲まれている。
次に基板キャリア10をターンテーブル36Aの真上に移動させた後、パルスモータ57を回転して基板キャリア10を下降させ、ターンテーブル36Aの研磨パッド15Aにリテーナリング3を接触させ、基板S1を研磨パッド15Aに押圧する。但し、この際、基板キャリア10が一旦研磨パッド15Aに接触した後、パルスモータ57を下降の場合の回転とは反対の方向に回転させ、基板キャリア10を僅かに(例えば、0.2mm)上昇させ、リテーナリング3を研磨パッド15Aに対して上方に位置させ、リテーナリング3の下面と研磨パッド15Aの研磨面17Aとの間に所定の隙間を形成する。
そして圧力室21〜23を加圧し、基板S1を研磨パッド15Aに押圧し、ターンテーブル36Aを回転させ、基板S1と研磨面17Aとの間に相対運動を生じさせ金属膜61を研磨する。この技術(すなわち、リテーナリングが研磨面17Aと接触しない研磨)は、基板S1の被研磨面SA1と研磨面17Aとの間への研磨液の入り込みがよくなり研磨レートを上昇させることができる。さらにリテーナリング3が摩耗しないため飛躍的にその寿命が延びる。
所定の研磨量の研磨を行い、第1の終点検知機構18により被研磨面SA1が位置X1達したことを検知した時点で、ターンテーブル36Aの回転を止める。そして、圧力室21を大気圧にし、さらに圧力室22、23を負圧にし、基板S1を基板キャリア10に吸着させる。そして、パルスモータ57を回転して基板キャリア10を上昇させ、ターンテーブル36Aでの研磨を終了させる。
その後、基板キャリアヘッド13を、揺動軸14を中心に揺動し、基板キャリア10をスクロールテーブル36Bの真上に移動させる。そして、基板キャリア10を下降させ、圧力室21〜23を加圧し、被研磨基板面SA1を研磨パッド115Aに押圧し研磨する。この際、基板キャリア10が一旦研磨パッド115Aに接触した後、基板キャリア10を上昇させず、パルスモータ57を僅かに回転し基板キャリア10を僅かに下降させて、リテーナリング3を研磨パッド115Aに対して押圧し、金属膜61と金属膜62を研磨する。このようにすると研磨パッド115Aは「縁だれ」の問題を生じさせない。このため、被研磨基板面SA1の周縁部までより均一に研磨し、平坦度を高めることが可能になる。
所定の研磨量を研磨した時点、すなわち被研磨面SA1が位置Y1に達した時点で、第2の終点検知機構19によりこれを検知し、研磨を終了させる。
そして、圧力室21を大気圧に、圧力室22、23を負圧にし、基板S1を基板キャリア10に吸着する。そして、基板キャリア10を上昇させ、スクロールテーブル36Bでの研磨工程を終了させる。次に、基板キャリア10をプッシャ30の真上に移動させて、プッシャ30を基板受け渡し位置まで上昇させる。圧力室22、23を大気圧に戻し、基板S1を基板キャリア10から離脱させ、基板S1をプッシャ30に渡す。
前述の研磨手順(1)において、基板S1の研磨される部分は、金属膜61と金属膜62を含むものとして説明した。しかし、図4(B)に示すように、基板S2の研磨される部分が、金属膜61のみを有し、最初に位置X2まで研磨し、次に位置Y2まで研磨する場合も、前述の研磨手順(1)と同様の研磨手順(1)に従った研磨を行うことができる。この場合、位置X2までは研磨レートを高くし、生産性を重視した研磨を行い、位置X2から位置Y2までは、表面の平坦度向上を重視した研磨を行うことができる。
図2を参照し、適宜図4(B)を参照して、研磨手順(2)として、金属膜61を研磨する際に1つの研磨テーブル36で行う場合の研磨手順を説明する。この例では、ターンテーブル36A(図2)を利用し、ターンテーブル36Aには研磨パッド15Aを使用するものとする。また、研磨される基板S2は図4(B)で示したものを使用している。
この手順と前述の研磨手順(1)と相違する部分だけ説明すると、位置X2までは、リテーナリング3の下に隙間を確保して基板S2の研磨を行い、次に基板キャリア10を上昇させた後、(基板キャリア10をスクロールテーブル36Bに移動させることなく)再び基板キャリア10を下降させ、リテーナリング3を研磨面117Aに押圧した研磨を、位置Y2まで行う。研磨手順(2)で研磨を行った場合、前述の研磨手順(1)とほぼ同様な効果を得ることができ、手順(2)では、さらに基板キャリア10のスクロールテーブル36Bへの移動がない分、作業時間を短縮することができる。
図6を参照し、適宜図4を参照して、研磨手順(3)について説明する。この手順としては、固定砥粒15Bで研磨した後に研磨パッド15Aで研磨する場合の研磨手順を説明する。本研磨手順(3)は、研磨手順(1)と基本的に同様である。
図6の装置では、ターンテーブル36Aに固定砥粒15Bが使用され、スクロールテーブル36Bに研磨パッド15Aが使用されている点が、図1と異なる。但し、被加工物は、図4(A)に示す基板S1であってもよいし、図4(B)に示す基板S2であってもよい。
以下の説明は基盤S2にも適用できる。すなわち、以下の記載では、S1をすべてS2に置き換えることが出来る。基板S1を基板キャリア10に吸着させる。そして、基板キャリア10をターンテーブル36Aの真上に移動させ、基板キャリア10をリテーナリング3が固定砥粒15Bに接触するまで下降させる。リテーナリング3が固定砥粒15Bに接触した後、基板キャリア10を僅かに上昇させ、リテーナリング3と固定砥粒15Bの研磨面17Bとの間に所定の隙間を形成させる。次に、基板S1を固定砥粒15Bに押圧し研磨する。固定砥粒15Bではリテーナリング3の初期押圧により「縁だれ」の問題が生じないため、リテーナリング3を研磨面17Bに押圧してリバウンドを抑制する必要がない。
リテーナリング3と固定砥粒15Bの研磨面17Bとの間に所定の隙間が形成されるため、研磨液の、基板S1の被研磨面SA1と固定砥粒15Bの研磨面17Bとの間への入り込みがよくなり、研磨レートを上昇させることができ、さらにリテーナリング3が摩耗しないため飛躍的にその寿命が延びる。
所定の研磨量を研磨した時点、すなわち基板S1の被研磨面SA1が位置X1(基板S2の場合はX2)に達した時点で、これを第1の終点検知機構18により検出し、検出後、基板キャリア10を上昇させ、ターンテーブル36Aでの研磨を終了させる。
その後基板キャリア10に基板S1を吸着させ、基板キャリア10をスクロールテーブル36Bの真上に移動させ、下降させて、リテーナリング3を研磨パッド15Aに接触させる。その後、基板キャリア10を僅かに下降させ、リテーナリング3を研磨パッド15Aに押圧する。そして、基板S1を研磨パッド15Aに押圧し研磨する。このため基板S1の周縁部までより均一に研磨することが可能になる。
第2の終点検知機構19により、所定の研磨量を研磨した時点、すなわち被研磨面SA1が位置Y1(基板S2の場合は位置Y2)に達した時点を検出し、基板キャリア10を上昇させ、スクロールテーブル36Bでの研磨を終了させる。研磨後の基板S1は、基板キャリア10をプッシャ30の真上に移動させて、プッシャ30に渡される。
なお、研磨手順(3)において、研磨工程の順番は、前述のような、固定砥粒15Bを使用した研磨、研磨パッド15Aを使用した研磨の順ではなく、この逆でもよい。但し、逆の順序で研磨を行う場合も、前述のように、研磨パッド15Aを使用して研磨をする際に、リテーナリング3を研磨パッド15Aに押圧し、固定砥粒15Bを使用して研磨をする際に、リテーナリング3と固定砥粒15Bの間に所定の隙間を形成するとよい。
以上、2つの研磨工具15を使用する研磨工程を1つの基板キャリアにより連続して行う場合を述べた。しかし、3つ以上の研磨工具15を使用する研磨工程を行う場合も本発明が有用なことは言うまでもない。また、研磨する膜を具体的に金属膜として述べてきたが、その他、絶縁膜、STI(shallow trench isolation)研磨の際にも本発明が有効であることは言うまでもない。また、本研磨装置1は、1つの研磨工具15を使用する研磨工程の場合だけでなく、複数の研磨工具15を使用する場合でも適用できる。また、リテーナリング3の押圧を必要とする場合と、リテーナリング3の押圧を必要とせず、リテーナリング3と研磨面17との間に隙間を設ける場合の両方の研磨に対応している。よって、本発明は、基板の平坦度の高い研磨と、研磨レートが高く生産性の高い研磨に対応した研磨を行うため、研磨装置1、研磨方法としての汎用性が高くなる。
図7は、本発明の更に他の実施形態に係る基板キャリアシステムを含む研磨装置を示している。この実施形態に係る研磨装置は、リテーナリング位置調整機構4に関して、上記した各実施形態の研磨装置と異なっている。すなわち、上記装置では、リテーナリング位置調整機構4は設けられておらず、本実施形態の装置では、パルスモータ57の代わりに、アクチュエータ又はリテーナリング押圧機構として、空気シリンダが用いられている。
本実施形態のリテーナリング位置調整機構は、上記実施形態と同じような精度で研磨面に対してリテーナリングを相対的に位置決めできない。実際、本実施形態の機構は、リテーナリングを研磨面に接触させながら上向き方向の作動力を加えることにより効果的に調整される。加えられる力は、リテーナリングと研磨面との接触を維持するのに十分な大きさだけでよく、これにより、研磨液が容易にリテーナリングと研磨面との間を通過し、基板面と研磨面との間に入り込み、研磨レートの向上を実現できる。言うまでも無く、上記した実施形態で行われたように、本実施形態ではリテーナリング位置調整機構がリテーナリングを研磨面から離間させることができる。
本発明の実施の形態に係る研磨装置の基板キャリアシステムを含む外形図である。 基板キャリアがターンテーブルの真上にある場合の、図1の研磨装置の部分拡大断面模式図である。 図1の研磨装置の基板キャリアに保持された基板の底面図である。 図4(A)は、金属膜とこの金属膜に挟まれる他の金属膜とが研磨される部分の基板の断面を示す模式的断面図である。図4(B)は、一つの金属膜からなりこの一つの金属膜が研磨される基板の断面を示す模式的断面図である。 本発明の他の実施の形態に係る基板キャリアシステムを含む研磨装置の外形図である。 本発明のさらに他の実施の形態に係る基板キャリアシステムを含む研磨装置の外形図である。 本発明の更に他の実施形態に係る基板キャリアシステムを含む研磨装置の部分拡大断面模式図である。

Claims (5)

  1. 基板キャリアシステムであって、
    研磨の間、基板を保持する基板キャリアと、
    前記基板キャリアを駆動、上昇及び下降させるために前記基板キャリアに接続された基板キャリア駆動軸と、
    前記基板キャリア駆動軸に接続されたボールネジ及びボールナットと、
    前記基板キャリアを所望の鉛直方向位置まで上昇及び下降させるための、前記ボールネジに取り付けられたパルスモータと、
    前記基板と前記基板キャリアとの間に加圧流体を供給するための加圧流体源と、
    前記パルスモータ、前記ボールネジ及びボールナットによって前記基板キャリアが所望の鉛直方向位置で固定されるまで、前記基板キャリアの鉛直方向位置を制御し、且つ前記基板を前記研磨面に対して押圧するために前記基板と前記基板キャリアとの間に加圧流体を供給するための、制御機構と、
    前記基板キャリア駆動軸の下端に取り付けられて前記基板キャリアと前記研磨面との接触を検出するロードセルとを備え、
    前記制御機構は、前記基板キャリアの下面が前記研磨面と接触するまで前記基板キャリアを降下させて、その後、前記基板キャリアの鉛直方向位置を固定するために前記基板キャリアが前記研磨面から所定の距離だけ上昇するまで前記基板キャリアを上昇させ、前記基板と前記基板キャリアの間に加圧流体を供給し、更に前記基板を研磨するために前記基板と研磨面とに相対摺動運動を生じさせるものである、基板キャリアシステム。
  2. 前記基板上に前記加圧流体の流体圧を印加するための圧力室を画成するための弾性部材を更に備えている、請求項1に記載の基板キャリアシステム。
  3. 前記研磨面からの前記所定の距離は、前記基板の厚さ未満である、請求項に記載の基板キャリアシステム。
  4. 前記弾性部材は、前記基板キャリアの半径方向にわたる複数の前記圧力室を画成している、請求項2に記載の基板キャリアシステム。
  5. 基板を研磨する方法であって、
    基板キャリアによって前記基板を保持し、
    前記基板キャリアの駆動軸に連結されたボールナットと、このボールナットに螺合するボールネジに取り付けられたパルスモータによって、前記基板キャリアを降下させ前記基板キャリアを前記研磨面に接触させ、その後前記基板キャリアを鉛直方向に上昇させ、前記研磨面から所定の距離の位置で固定し、
    前記基板を前記研磨面に対して押圧するために、前記基板と前記基板キャリアの間に設けられた弾性部材によって画成される圧力室の内部に加圧流体を供給し、
    前記基板を研磨するために、前記基板と研磨面とに相対摺動運動を生じさせるステップを含み、
    前記基板キャリアと前記研磨面との接触は、前記基板キャリア駆動軸の下端に取り付けられたロードセルによって検出する、研磨方法。
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