JP4659999B2 - 電子レンジ用紙カップの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子レンジで使用する紙カップの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動販売機などで熱い飲料用、即席食品用などに紙カップが広く使用されている。また、一般的ではないものの、飲料や惣菜などの入った紙カップを直接電子レンジを利用し、加熱調理することも行なわれている。一般的な紙カップPは、図9に示すように、胴部材1と底部材2とからなり、胴部材1は主に胴部11を形成し、上端を外側にカールしてトップカール部12とし、下端を内側に折り返して折り返し部13としている。一方、底部材2は主に底面部21を形成し、外周縁部を下方へ略直角に屈曲して接合部22としている。胴部材1と底部材2の接合は、底部材2の接合部22を、胴部材1の折り返し部13と、胴部11の下端部とで挟んで加熱圧着している。この底部材2の接合部22を挟み込んで接合した部分を糸じり部Zと称し、底面部21を上げ底にしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般形状の紙カップPに内容物を入れて電子レンジで加熱調理した場合、紙カップの底の糸じり部Zに焦げを生じる場合があるという問題がある。その原因は、つぎのように考えられる。紙の材料のパルプのセルロースは基本的には電子レンジのマイクロ波を吸収する。従って、紙の重なる糸じり部Zでは、紙厚が増し発熱量が増す。一方、表面積は変わらないため熱の放出量が同じで、発生した熱を蓄積することになり、温度が上昇し、焦げを発生させる原因となっている。ただし、内容物がある場合には、焦げが発生しにくくなる。それは、紙に発生し蓄積された熱が内容物に奪われるためと考えられる。つまり、通常の紙カップPでは、図9に示すように、胴部材1と底部材2の接合部位として糸じり部Zを持つ構造であるため、この糸じり部Zは、表側と裏側の両面からマイクロ波の照射を受けること、内容物に触れることななく、畜熱されやすく、そのために焦げが生じやすい。
【0004】
本発明は、紙カップの中に、飲料や即席食品などの内容物を入れ、電子レンジで加熱調理した時に、糸じり部に焦げを発生させることのない電子レンジ用紙カップの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記のような課題を解決すべく検討した結果、本発明は、紙を主強度材としてそれぞれブランクからなる胴部材と底部材とを用いて紙カップを製造する工程において、前記底部材のブランクを押圧して、該底部材の外周縁部の内面側から上方に凸状の反転前底面部と、前記底部材の外周縁部が下方へ略垂直な接合部とを形成する反転前底部材成形工程と、前記胴部材のブランクを筒状に巻き回して胴部を形成するとともに、該胴部の上端側を外側にカールしてトップカール部を形成する工程内で、前記反転前底部材の前記接合部の先端が前記胴部の下端側に向くように配置して、前記胴部の下端側を内側に折り返した折り返し部と前記胴部とで前記接合部を挟み込む糸じり部で、前記胴部材と前記反転前底部材とを互いに接合して紙カップを成形する紙カップ成形工程と、前記反転前底面部を下方に反転して前記底部材の前記外周縁部の内面側から下方へ凹状に変形したU字形状の底面部を形成する底部材成形工程を備えたことを特徴とする電子レンジ用紙カップの製造方法である。
【0006】
本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法によれば、紙カップの底面部の形状を容易に凹状に変形することができ、紙カップの中に、飲料や即席食品などの内容物を入れ、電子レンジで加熱調理した時に、糸じり部に焦げを発生させることのない電子レンジ用紙カップを得ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照しながら、本発明について、さらに詳しく説明する。図1は、本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法により製造した電子レンジ用紙カップの一実施例の部分断面図である。電子レンジ用紙カップAは、図1−aに示すように、胴部材1と底部材2とから構成されている。胴部材1は、胴部11と、上端を外側にカールしたトップカール部12と、下端を内側に折り返した折り返し部13とからなっている。一方、底部材2は、内面側から下方に凹状に変形した底面部21Uと、外周縁部を下方へ略直角に屈曲した接合部22とからなっている。胴部材1と底部材2の接合は、底部材2の接合部22を、胴部材1の折り返し部13と、胴部11の下端部とで挟んで加熱圧着している。
【0008】
この底面部21Uは、図1−bに示すように、内面側から下方に凹状に変形されたU字形状をしている。また、底面部21Uは、図1−cに示すように、下面部21Uaと壁面部21Ubとからなり、下面部21Uaと壁面部21Ubとの間に曲面部Rが形成されており、下面部21Uaは平面状とし、壁面部21Ubは胴部材1の折り返し部13に近ずけることが好ましい。
【0009】
また、曲面部Rは、曲率半径が3〜10mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは、5〜8mmの範囲である。曲面部Rの曲率半径が3mm未満の場合には、ピンホールが発生し、洩れの原因になる。一方、曲面部Rの曲率半径が10mmを超す場合には、糸じり部Zに焦げが発生しやすくなる。
【0010】
また、底面部21Uの最大深さdは、胴部材1の折り返し部13の上端から折り返し部13の幅の70%以上が望ましい。70%以上にすることによって、電子レンジ内で糸じり部Zの裏側からのマイクロ波の照射を遮ることができ、糸じり部Zの焦げの発生を防ぐことができる。70%未満の場合には、糸じり部Zが焦げる危険がある。
【0011】
また、下面部21Uaと胴部11の下端により形成される下端面Xとの距離xは、上方に8mm未満、下方に2mm未満の範囲が好ましく、さらに好ましくは、上方に0〜3mmの範囲である。距離xが、図2−aに示すように、上方に8mm以上の場合には、糸じり部Zの裏側からのマイクロ波を遮蔽する効果がなくなる。また、距離xが、図2−bに示すように、下方に2mm以上の場合には、電子レンジ用紙カップAは、安定性を失う危険がある。
【0012】
つぎに、本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法について説明するが、まず、図3に示すような胴部材ブランク31と底部材ブランク32とを使用して従来の紙カップを作製する紙カップ成形工程を簡単に説明する。図4は、一般的な紙カップを成形する紙カップ成型機の一例を示した図である。この成型機100は、一般的な紙カップを成形する成形機と同様であり、(A)胴巻き成形部、(B)底カール部(糸じり部)成形部、(C)トップカール成形部の3つの部分から成り立っている。この紙カップ成型機の工程を詳細に説明すると、フィーダーから送られた胴部材ブランク31は、筒状に貼られる部分がホットエアー101で予熱加工され、表面の樹脂が溶融した状態で(A)胴巻き成形部に送られる。(A)胴巻き成形部では、胴巻き型102に吸引されながら巻き付けられ、胴巻き紙の熱シールが行なわれる。筒状に熱シールされた胴巻き紙は、(B)底カール部へ送られる。(B)底カール部では、型110の位置で、まず、打ち抜かれた底部材ブランク32が、吸引固定され、つぎに、型111の位置で、胴巻き紙が挿入される。つづいて、型112、型113、型114の位置で、胴部材1と底部ブランク32を貼り合わせる部分をホットエアー101で予熱加工し、型115の位置で、胴部材の下端を内側に折り返ししながら圧着することにより、胴部材1と底部材2を一体化する。このカップ状に成形されたものが、(C)トップカール成形部へ受け渡される。(C)トップカール成形部では、型120の金型内に嵌め込まれ、潤滑油が塗布され、型121、型122、型123の位置で胴部材1の上端が外側へカールされてトップカール部12が形成される。最後に、型124で排出されて紙カップが製造される。
【0013】
つぎに、本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法について説明する。まず、本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法では、図5−aに示すような反転前底部材2′を作製する。この反転前底部材2′は、上方に凸状に変形した反転前底面部21U′と、外周縁部を下方に略垂直な接合部22とから構成され、その反転前底面部21U′の形状は、上辺が平面状である半円弧状である。また、図5−bに示すように、反転前底面部21U′の最大高さhは、糸じり部Zの内側の幅zとした時に、「2×z+2>h>2×z−8」の式に適応する値とする。
【0014】
この反転前底部材2′の成形工程は、胴部材1と反転前底部材2′とを接合する前に、図6に示すような上型201と下型202とからなる金型200を使用したプレス加工で行うことができる。この加工により平面状の底部材ブランク32から反転前底部材2′が成形される。この工程は、前述の紙カップ成形機の底カール部(B)の底部材ブランク32の供給部に直結して行なうことも、あるいは、予め紙カップ成形機外で行った成形後の反転前底部材2′を前述の紙カップ成形機の底カール部(B)の底部材ブランク32の供給部で供給することもできる。
【0015】
つぎに、胴部材1の下方、あるいは、図7に示すように、上方から予め成形された反転前底部材2′を嵌め込み、反転前底部材2′の接合部22を、胴部材1の折り返し部13と、胴部11の下端部とで挟んで加熱圧着して胴部材1と反転前底部材2′を接合して反転前の電子レンジ用紙カップA′を製造する。
【0016】
つづいて、図8に示すように、上方に凸状の反転前底面部21U′を下方に反転して下方に凹状の底面部21Uとすることによって電子レンジ用紙カップAを製造することができる。
【0017】
つぎに、本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法で製造する電子レンジ用紙カップAの胴部材1および底部材2に使用する材料は、紙を主強度材とし、最内層に熱可塑性樹脂を有することを基本としている。
【0018】
主強度材となる紙としては、紙カップ成形適性の良いカップ原紙を使用することが好ましい。坪量は、とくに限定されないが、紙カップ成形適性上、150〜300g/m2の範囲がより好ましい。
【0019】
最内層に使用する熱可塑性樹脂は、内容物の保護、特に液状の物質を入れても洩れない機能、また、熱シールにより胴部の貼り合わせ、そして胴部と底部の接着を可能にする機能を持っている必要がある。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、エチレンビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。厚さとしては、15〜60μmの範囲が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、押し出し加工あるいはラミネート加工によって、最内層に形成される。
【0020】
例えば、具体的な材料の構成としては、表面側から紙層/ポリエチレン樹脂層、ポリエチレン樹脂層/紙層/ポリエチレン樹脂層、発泡ポリエチレン樹脂層/紙層/ポリエチレン樹脂層、紙層/ポリプロピレン樹脂層、ポリプロピレン樹脂層/紙層/ポリプロピレン樹脂層、紙層/ポリエステル樹脂層、ポリエステル樹脂層/紙層/ポリエステル樹脂層、紙層/ナイロン樹脂層、ナイロン樹脂層/紙層/ナイロン層などが挙げられる。
【0021】
特に、底部材2の材料は、凹凸状に変形するため、変形しやすく、変形時に、ひび割れやピンホールが生じない構成を選定する必要があり、ポリエステル樹脂層、ナイロン樹脂層を有する構成が好ましい。
【0022】
本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法で製造した電子レンジ用紙カップの用途は、インスタントラーメン、惣菜類などを温める即席食品用の容器、あるいはコーヒー、紅茶、スープなどを温める飲料用の容器として有効である。
【0023】
【実施例】
つぎに、本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法について実施例をあげて、さらに具体的に説明する。
【0024】
〔実施例〕
胴部材1の材料として、表面からカップ原紙280g/m2/低密度ポリエチレン樹脂の材料を使用し、底部材2の材料として、表面からカップ原紙255g/m2/低密度ポリエチレン樹脂25μmの構成の材料を使用した。まず、図3のような底部材ブランク32を打ち抜き、図6に示すような金型200を用いたプレス加工により、図5−aに示すような反転前底部材2′を成形した。同様に胴部材ブランク31を打ち抜き、この胴部材ブランク31をマンドレルに巻き付け、筒状の胴部材1に形成した。つぎに、図4に示すような工程で、胴部材1の下方から予め成形した反転前底部材2′を嵌め込み、反転前底部材2′の接合部22を、胴部材1の折り返し部13と、胴部11の下端部とで挟んで加熱圧着して胴部材1と反転前底部材2′を接合し、胴部材1の上端を外側にカールしトップカール部12を形成し反転前の電子レンジ用紙カップA′を作成した。さらに、図8に示すように、上方に凸状の反転前底面部21U′を下方に反転して下方に凹状の底面部21Uを有する電子レンジ用紙カップAを製造した。
【0025】
【発明の効果】
本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法では、まず、上方に凸状に変形した反転前底面部を形成し、つぎに、反転して下方に凹状の底面部にする方法であり、この製造方法で製造することによって、底面部の形状が下方に凹状に変形した紙カップを容易に製造することができる。このような方法で製造した底面部の形状が下方に凹状に変形した電子レンジ用紙カップは、紙カップの中に、飲料や即席食品などの内容物を入れ、電子レンジで加熱調理した時に、糸じり部に焦げを発生させることがないという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法により製造した電子レンジ用紙カップの一実施例を示す一部切り欠け断面図である。
【図2】本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法により製造した電子レンジ用紙カップの底部材の形状を示す断面図である。
【図3】本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法により製造する電子レンジ用紙カップの胴部材ブランクおよび底部材ブランクを示す展開図である。
【図4】一般的な紙カップを紙カップ成形機で成形する工程を示す図である。
【図5】反転前底部材の断面図および変転前の電子レンジ用紙カップの部分断面図のである。
【図6】本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法により反転前底部材を作製する方法を示す図である。
【図7】本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法により反転前の電子レンジ用紙カップを作製する方法を示す図である。
【図8】本発明の電子レンジ用紙カップの製造方法により反転前の電子レンジ用紙カップから反転後の電子レンジ用紙カップを製造する方法を示す図である。
【図9】従来の紙カップを示す一部切り欠け断面図である。
【符号の説明】
A 電子レンジ用紙カップ
A’ 電子レンジ用紙カップ(反転前)
P 紙カップ(従来)
Z 糸じり部
1 胴部材
11 胴部
12 トップカール部
13 折り返し部
2 底部材
2’ 反転前底部材
21 底面部
21U 底面部(反転変形後)
21U’ 反転前底面部
21Ua 下面部(反転変形後)
21Ub 壁面部(反転変形後)
22 接合部(底部材)
31 胴部材ブランク
32 底部材ブランク
R 曲面部
X 下端面(胴部材の胴部の下端により形成される面)
x 下端面と底面部の下面部との距離
d 反転変形後の底面部の最大深さ
h 反転前底面部の最大高さ
100 成形機
101 ホットエアー
102 胴巻き型
111〜127 型(マンドレル)
200 金型
201 上型
202 下型
Claims (1)
- 紙を主強度材としてそれぞれブランクからなる胴部材と底部材とを用いて紙カップを製造する工程において、
前記底部材のブランクを押圧して、該底部材の外周縁部の内面側から上方に凸状の反転前底面部と、前記底部材の外周縁部が下方へ略垂直な接合部とを形成する反転前底部材成形工程と、
前記胴部材のブランクを筒状に巻き回して胴部を形成するとともに、該胴部の上端側を外側にカールしてトップカール部を形成する工程内で、前記反転前底部材の前記接合部の先端が前記胴部の下端側に向くように配置して、前記胴部の下端側を内側に折り返した折り返し部と前記胴部とで前記接合部を挟み込む糸じり部で、前記胴部材と前記反転前底部材とを互いに接合して紙カップを成形する紙カップ成形工程と、
前記反転前底面部を下方に反転して前記底部材の前記外周縁部の内面側から下方へ凹状に変形したU字形状の底面部を形成する底部材成形工程を備えたことを特徴とする電子レンジ用紙カップの製造方法。
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