JP3953584B2 - 電子レンジ用紙カップ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子レンジで使用する紙カップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動販売機などで熱い飲料用、即席食品用などに紙カップが広く使用されている。また、一般的ではないものの、飲料や惣菜などの入った紙カップを直接電子レンジを利用し、加熱調理することも行なわれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般形状の紙カップに内容物を入れて電子レンジで加熱調理した場合、紙カップの底の糸じりの部分に焦げを生じる場合があるという問題がある。その原因は、つぎのように考えられる。紙の材料のパルプのセルロースは基本的には電子レンジのマイクロ波を吸収する。従って、紙の重なる部分では、紙厚が増し発熱量が増す。一方、表面積は変わらないため熱の放出量が同じで、発生した熱を蓄積することになり、温度が上昇し、焦げを発生させる原因となっている。ただし、内容物がある場合には、焦げが発生しにくくなる。それは、紙に発生し蓄積された熱が内容物に奪われるためと考えられる。つまり、通常の紙カップでは、図1に示すように、胴部材1と底部材2の接合部位として糸じり部4を持つ構造であるため、この糸じり部4は、内容物に触れることななく、畜熱されやすく、そのために焦げが生じやすい。
【0004】
本発明は、紙カップの中に、飲料や即席食品などの内容物を入れ、電子レンジで加熱調理した時に、焦げを発生させることのない電子レンジ用紙カップを提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記のような課題を解決すべく検討した結果、本発明の電子レンジ用紙カップは、150〜300g/m 2 の範囲の紙を主強度材とし最内層に熱可塑性樹脂を有する積層体からなる胴部材と底部材とからなる紙カップであって、前記胴部材下端部を内側に屈曲し、前記底部材外周辺部と熱接着して接合し、形成されていることを特徴とする電子レンジ用紙カップである。また、前記底部材が外周辺部を外面に折り込んだ形状であることを特徴とし、前記底部材が前記紙カップの内面方向に凸型形状であることを特徴とする。さらに、前記胴部材の外周に段加工紙を巻き付けたこと、前記胴部材の外周に発泡加工紙を巻き付けたことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、紙カップの中に、飲料や即席食品などの内容物を入れ、電子レンジで加熱調理した時に、焦げを発生させることのない電子レンジ用紙カップを得ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照しながら、本発明について、さらに詳しく説明する。
図2は、本発明による電子レンジ用紙カップの一実施例を示している。電子レンジ用紙カップAは、胴部材1と底部材2とからなっている。
【0008】
一般的な紙カップは、図1に示すように、底部材2の外周辺部を下方へ屈曲し、その屈曲部5を挟んで胴部材1の下端部を内側に折り込み、加熱圧着して接合して形成されている。この底部材2の屈曲部5を挟んで折り込んだ部分を糸じり部4と称し、底部を上げ底にしている。この糸じり部4の一部が、電子レンジ内で畜熱し、焦げを生じる。
【0009】
本発明の電子レンジ用紙カップは、糸じり部を設けずに、図2に示すように、胴部材1の下端部を内側に屈曲させ、その胴部材1の屈曲部6と底部材2の外周辺部の外面とで接着接合して形成されている。底部材2は、図2のような外周辺部が屈曲していない平らな形状の電子レンジ用紙カップAと、図3のような外周辺部が外側に折り返された折り返し部7を有する形状の電子レンジ用紙カップBとがある。後者の形状では、底部材2の紙の端面がでない構造のため、底部材2への内容物のしみ込みがないという利点がある。
【0010】
また、本発明の電子レンジ用紙カップの底部を安定させるために、図4に示すように、底部材2を内面方向に絞り変形させ、凸型形状の電子レンジ用紙カップCもある。
【0011】
また、実際の製造は、図5に示すような胴部ブランク8と底部ブランク9とが、紙カップ成型機で成型され、紙カップは作製される。一般的に、胴部ブランク8は、あらかじめ前工程で打ち抜かれたものを使用し、底部ブランク9は、紙カップ成型機上で打ち抜かれる。
【0012】
この胴部ブランク8と底部ブランク9とを使用して紙カップを作製する工程を図6でもって簡単に説明すると、まず、胴部ブランク8を筒状に貼り合わせるために、胴部ブランク8の貼り合わせ部を熱風で予熱し、表面の樹脂を溶融させる。つぎに、図6−aに示すように、胴部ブランク8を胴巻き型(マンドレル)10に巻き付け、圧着し、筒状の胴部材1に貼り合わせる。つづいて、図6−bに示すように、胴部材1の中に底部ブランク9を嵌め込み、同時に、胴部材1および底部ブランク9の接着部分の樹脂を熱風で予熱する。そして、図6−cに示すように、胴部材1の下端を内側にカール、屈曲させ、図6−dに示すように、上部からプレスで圧着し、底の部分が形成される。さらに、胴部材1の上端を外側にカールし、トップカール部3を形成し、電子レンジ用紙カップを完成する。
【0013】
つぎに、本発明の電子レンジ用紙カップに使用する材料の構成は、紙を主強度材とし、最内層に熱可塑性樹脂を有することを基本としている。例えば、紙層/ポリエチレン樹脂層、ポリエチレン樹脂層/紙層/ポリエチレン樹脂層、発泡ポリエチレン樹脂層/紙層/ポリエチレン樹脂層、ポリプロピレン樹脂層/紙層/ポリプロピレン樹脂層などが挙げられる。
【0014】
主強度材となる紙としては、紙カップ成形適性の良いカップ原紙を使用することが好ましい。坪量は、とくに限定されないが、紙カップ成形適性上、150〜300g/m2 の範囲がより好ましい。
【0015】
最内層に使用する熱可塑性樹脂は、内容物の保護、特に液状の物質を入れても洩れない機能、また、熱シールにより胴部の貼り合わせ、そして胴部と底部の接着を可能にする機能を持っている必要がある。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。厚さとしては、15〜60μmの範囲が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、押し出し加工あるいはラミネート加工によって、最内層に形成される。
【0016】
実際に、上述の構成の電子レンジ用紙カップを電子レンジで使用した時、内容物が加熱されているため直接手で持ちにくく、より断熱性の優れた電子レンジ用紙カップが必要となる。従って、断熱性のある電子レンジ用紙カップとして、上述の電子レンジ用紙カップの胴部の外周の断熱性のある材料を巻き込んだ形態の電子レンジ用紙カップをさらに見出した。
【0017】
一つには、図7に示すように、電子レンジ用紙カップDは、上述の電子レンジ用紙カップA、B、あるいはCの紙カップ本体11の胴部外周に外周壁12として段加工を施した段加工紙を巻き込み、胴部と接着固定した形態である。この段加工紙には、坪量が50〜200g/m2 の範囲のクラフト紙あるいはコートクラフト紙を使用する。このコートクラフト紙は、表面にクレー層がコートされている紙である。つまり、ベースの晒クラフト紙の表面に印刷適性などの性質を持たせたクレー層がコートされている。
【0018】
二つには、図8に示すように、電子レンジ用紙カップEは、上述の電子レンジ用紙カップA、B、あるいはCの紙カップ本体11の胴部外周に外周壁12として発泡加工を施した発泡加工紙を巻き込み、胴部と接着固定した形態である。この発泡加工紙は、構成が発泡する熱可塑性樹脂層/紙層/熱可塑性樹脂層が基本となっている。具体的には、発泡する低密度ポリエチレン樹脂層/コート紙/低密度ポリエチレン樹脂と高密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂層の構成の積層体などが使用される。実際に、紙カップ本体に巻き込む場合には、発泡した樹脂層を表面にしても良く、あるいは発泡しない樹脂層を表面にしてもよい。
【0019】
本発明の電子レンジ用紙カップの用途は、インスタントラーメンなどの温める即席食品用の容器、あるいはコーヒー、紅茶、スープなどの熱い飲料用の容器である。
【0020】
【実施例】
次に、本発明について実施例をあげて、さらに具体的に説明する。
【0021】
〔実施例1〕
胴部材1の材料として、表面から低密度ポリエチレン樹脂層40μm/カップ原紙280g/m2 /低密度ポリエチレン樹脂と高密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂層25μmの構成の材料を使用し、底部材2の材料として、表面から低密度ポリエチレン樹脂層30μm/カップ原紙220g/m2 /低密度ポリエチレン樹脂25μmの構成の材料を使用した。まず、図5のような胴部ブランクに打ち抜き、このブランクをマンドレルに巻き付け、筒状の胴部材に形成した。つぎに、図6に示すような工程で、胴部材1の下方から底部ブランクを嵌め込み、接着部分を熱風で加熱し、胴部材の下端を内側にカールし屈曲して、平らなプレスで圧着し底の部分を形成した。つづいて、胴部材の上端を外側にカールしトップカール部を形成した。さらに、加熱し、表面のポリエチレン樹脂層を発泡させ、図9に示すような断熱性のある電子レンジ用紙カップFを作成した。
【0022】
〔実施例2〕
胴部材の材料として、表面からカップ原紙280g/m2 /低密度ポリエチレン樹脂層25μmの構成の材料を使用し、底部材の材料として、表面からカップ原紙220g/m2 /低密度ポリエチレン樹脂層25μmの構成の材料を使用し、実施例1と同様にして電子レンジ用紙カップの本体11を作成した。
つぎに、外周壁12として、まず巻き取り状態のクラフト紙の表面に印刷によって加工し、紙カップ本体11に合わせて扇形あるいは長方形に打ち抜きブランクを作成する。打ち抜かれたブランクをコルゲート加工により波状にし、端部同志を接着し、筒状にする。筒状に形成された外周壁12に紙カップ本体11を挿入し、接着剤で接着して紙カップ本体11と外周壁12とを一体化し、図7に示すような電子レンジ用紙カップDを作成した。このブランクのコルゲート加工から紙カップ本体11との接合までは、専用機で行なうこともできる。
【0023】
〔比較例1〕
実施例2と胴材料を使用し、紙カップ本体11の作成は、従来の底の部分に糸じり部をもうける方法によって、紙カップの内寸法、つまり容量が同等になるような形状で作成した。
【0024】
同じ内寸法で、同じ容量の実施例1および2、そして比較例の紙カップに水450mlを入れ、電子レンジ(NEC社製、電子レンジMC−E2家庭用高周波出力:500W)にて加熱調理を行なった。
その結果、実施例1および2においては、紙カップのどの部分にも焦げの発生は見られなかった。
一方、比較例1においては、加熱調理2分後に糸じり部がやや茶色に変色し、5分後には糸じり部に焦げが発生した。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、紙カップの中に、飲料や即席食品などの内容物を入れ、電子レンジで加熱調理した時に、焦げを発生させることのない電子レンジ用紙カップを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の紙カップを示す斜視図である。
【図2】本発明による電子レンジ用紙カップの一実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明による電子レンジ用紙カップの別の実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明による電子レンジ用紙カップの底部材の形状を示す斜視図である。
【図5】本発明による電子レンジ用紙カップの胴部材のブランクおよび底部材のブランクを示す展開図である。
【図6】本発明による電子レンジ用紙カップの一実施例を作成する工程を示す図である。
【図7】本発明による電子レンジ用紙カップの別の実施例を示す斜視図である。
【図8】本発明による電子レンジ用紙カップの別の実施例を示す斜視図である。
【図9】本発明による電子レンジ用紙カップの一実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
A 電子レンジ用紙カップ
B 電子レンジ用紙カップ(底折り返し)
C 電子レンジ用紙カップ(底凸状)
D 電子レンジ用紙カップ(段加工紙巻)
E 電子レンジ用紙カップ(発泡加工紙巻)
F 電子レンジ用紙カップ(発泡加工紙)
1 胴部材
2 底部材
3 カール部
4 糸じり部
5 屈曲部(底部材)
6 屈曲部(胴部材)
7 折り返し部(底部材)
8 胴部ブランク
9 底部ブランク
10 マンドレル
11 紙カップ本体
12 外周壁

Claims (4)

  1. 150〜300g/m 2 の範囲の紙を主強度材とし最内層に熱可塑性樹脂を有する積層体からなる胴部材と底部材とからなる紙カップであって、前記胴部材下端部を内側に屈曲し、外周辺部を外面に折り込んだ形状である前記底部材外周辺部と熱接着して接合し、形成されていることを特徴とする電子レンジ用紙カップ。
  2. 前記底部材が前記紙カップの内面方向に凸型形状であることを特徴とする請求項1に記載する電子レンジ用紙カップ
  3. 前記胴部材の外周に段加工紙を巻き付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載する電子レンジ用紙カップ。
  4. 前記胴部材の外周に発泡加工紙を巻き付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載する電子レンジ用紙カップ。
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