JP4770022B2 - 電子レンジ対応紙カップ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子レンジで使用する紙カップに関するものである。詳しくは、底面部に断熱性を有する電子レンジ対応紙カップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動販売機などで熱い飲料用、即席食品用などに紙カップが広く使用されている。また、一般的ではないものの、飲料や惣菜などの入った紙カップを直接電子レンジを利用し、加熱調理することも行なわれている。一般的な紙カップPは、図7に示すように、胴部材1と底部材2とからなり、胴部材1は主に胴部11を形成し、上端部を外側にカールしてトップカール部12とし、下端部を内側に折り返して折り返し部13としている。一方、底部材2は主に底面部21を形成し、外周縁部を下方へ略直角に屈曲して屈曲部22としている。胴部材1と底部材2の接合は、底部材2の屈曲部22を、胴部材1の折り返し部13と、胴部11の下端部とで挟んで加熱圧着している。この底部材2の屈曲部22を挟み込んで接合した部分を糸じり部Zと称し、底面部21を上げ底にしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般形状の紙カップPに内容物を入れて電子レンジで加熱調理した場合、紙カップの底の糸じり部Zに焦げを生じる場合があるという問題がある。その原因は、つぎのように考えられる。紙の材料のパルプのセルロースは基本的には電子レンジのマイクロ波を吸収する。従って、紙の重なる糸じり部Zでは、紙厚が増し発熱量が増す。一方、表面積は変わらないため熱の放出量が同じで、発生した熱を蓄積することになり、温度が上昇し、焦げを発生させる原因となっている。ただし、内容物がある場合には、焦げが発生しにくくなる。それは、紙に発生し蓄積された熱が内容物に奪われるためと考えられる。つまり、通常の紙カップPでは、図7に示すように、胴部材1と底部材2の接合部位として糸じり部Zを持つ構造であるため、この糸じり部Zは、表側と裏側の両面からマイクロ波の照射を受けること、内容物に触れることななく、畜熱されやすく、そのために焦げが生じやすい。
【0004】
本発明は、紙カップの中に、飲料や即席食品などの内容物を入れ、電子レンジで加熱調理した時に、糸じり部に焦げを発生させることがなく、加熱後に内容物を冷ますことがない底面部に断熱性を有する電子レンジ対応紙カップを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記のような課題を解決すべく検討した結果、本発明は、状の胴部と該胴部の上端部を外側にカールしたトップカール部と該胴部の下端部を内側に折り返した折り返し部とを有する胴部材と、底面部と該底面部の外周縁部を下方へ略直角に屈曲した屈曲部とを有する底部材とが、それぞれ紙を主強度材として構成され、前記胴部と前記折り返し部との間に前記屈曲部が挟み込まれた糸じり部で前記胴部材と前記底部材とが互いに接合された紙カップであって、該紙カップの前記底面部が該底面部の前記外周縁部から下方に凹状に変形したU字形状に形成され、かつ、前記底面部の外面に断熱部材を該断熱部材の表面と前記胴部の下端により形成される下端面との距離が前記下端面より上方に8mm未満、及び前記下端面から下方に2mm未満の範囲に貼着してなることを特徴とする電子レンジ対応紙カップである。また、前記断熱部材が、段ボール、またはエンボス加工紙からなることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、紙カップの底面部の形状を下方に凹状にし、底面部の外面に断熱部材を貼着することによって、紙カップの中に、飲料や即席食品などの内容物を入れ、電子レンジで加熱調理した時に、糸じり部に焦げを発生させることがなく、加熱後に下面に置いた時に内容物が冷めにくい底面部に断熱性を有する電子レンジ対応紙カップを得ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照しながら、本発明について、さらに詳しく説明する。図1は、本発明による電子レンジ対応紙カップの一実施例の一部切り欠け断面図である。電子レンジ対応紙カップAは、図1−aに示すように、胴部材1と底部材2と断熱部材3とから構成されている。胴部材1は、胴部11と、上端部を外側にカールしてトップカール部12と、下端部を内側に折り返して折り返し部13とからなっている。底部材2は、内面から見て下方に凹状に変形した底面部21Uと、外周縁部を下方へ略直角に屈曲して屈曲部22とからなっている。胴部材1と底部材2の接合は、底部材2の屈曲部22を、胴部材1の折り返し部13と、胴部11の下端部とで挟んで加熱圧着している。そして、底部材2の底面部21Uの外面に、断熱性を有する材料からなる断熱部材3を貼着している。
【0008】
底面部21Uは、図1−bに示すように、内面から見て下方に凹状に変形されたU字形状をしている。好ましくは、図1−cに示すように、下面部21Uaと壁面部21Ubとからなるトレー形状であり、下面部21Uaは平面状とし、壁面部21Ubは胴部材1の折り返し部13に近ずけることが好ましい。下面部Uaを平面状にすることによって、断熱部材3を貼着しやすくなる。また、底面部21Uの最大深さdは、胴部材1の折り返し部13の上端から折り返し部13の幅の70%以上が望ましい。70%以上にすることによって、電子レンジ内で糸じり部Zの裏側からのマイクロ波の照射を遮ることができ、糸じり部Zの焦げの発生を防ぐことができる。70%未満の場合には、糸じり部Zが焦げる危険がある。
【0009】
また、断熱部材3の表面と胴部11の下端により形成される下端面Xとの距離xは、上方に8mm未満、下方に2mm未満の範囲が好ましい。距離xが、図2−aに示すように、上方に8mm以上の場合には、糸じり部Zの裏側からのマイクロ波を遮蔽する効果がなくなる。また、距離xが、図2−bに示すように、下方に2mm以上の場合には、電子レンジ対応紙カップAは、安定性を失う危険がある。
【0010】
断熱部材3は、底部材2の底面部21Uの下面部21Uaの外面に貼着するが、必ずしも下面部21Uaの全面に貼着する必要はなく、部分的に貼着してもよい。また、断熱部材3の形状は、円形、多角形、星形などでよく、特に限定されることはない。この断熱部材3を下面部21Uaに貼着することによって、電子レンジ対応紙カップA内に熱い内容物を入れて下面に置いた時に、断熱部材3が下面に接触した場合でも熱の伝導が少ないため、内容物が冷めにくくなる。また、内容物の熱さを感じることなく、手で断熱部材3に触れて電子レンジ対応紙カップAを持つことができる。
【0011】
本発明の電子レンジ対応紙カップAの胴部材1および底部材2に使用する材料は、紙を主強度材とし、最内層に熱可塑性樹脂を設けることを基本としている。
【0012】
主強度材となる紙としては、紙カップ成形適性の良いカップ原紙を使用することが好ましい。坪量は、とくに限定されないが、紙カップ成形適性上、150〜300g/m2の範囲がより好ましい。
【0013】
最内層に使用する熱可塑性樹脂は、内容物の保護、特に液状の物質を入れても洩れない機能、また、熱シールにより胴部の貼り合わせ、そして胴部材1と底部材2の接着を可能にする機能を持っている必要がある。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、エチレンビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。厚さとしては、15〜60μmの範囲が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、押し出し加工あるいはラミネート加工によって、最内層に形成される。
【0014】
例えば、具体的な材料の構成としては、表面側から紙層/ポリエチレン樹脂層、ポリエチレン樹脂層/紙層/ポリエチレン樹脂層、発泡ポリエチレン樹脂層/紙層/ポリエチレン樹脂層、紙層/ポリプロピレン樹脂層、ポリプロピレン樹脂層/紙層/ポリプロピレン樹脂層、紙層/ポリエステル樹脂層、ポリエステル樹脂層/紙層/ポリエステル樹脂層、紙層/ナイロン樹脂層、ナイロン樹脂層/紙層/ナイロン層などが挙げられる。
【0015】
特に、底部材2の材料は、凹凸状に変形する時、変形しやすく、変形時に、ひび割れやピンホールが生じない構成を選定する必要があり、ポリエステル樹脂層、ナイロン樹脂層を有する構成が好ましい。
【0016】
また、断熱部材3に使用する材料としては、断熱性を有するシート状の材料であればよく、例えば、段ボール、発泡シート、発泡加工紙、エアーキャップシート、エンボス加工紙などがあげられる。中でも断熱効果、加工性、環境対応などの点から、段ボール、エンボス加工紙が好ましい。
【0017】
この段ボールは、A段、B段、E段、F段などの種類があるが、特に限定されるものではない。電子レンジ対応紙カップAの大きさに適合する種類の段ボールを使用することができる。また、片面のライナーがない、いわゆる片面段ボールでもよく、段加工した中芯を外面に出して使用してもよい。さらに、波型に段加工をした段ボールも使用することができる。
【0018】
このエンボス加工紙は、通常の段ボールとは異なり、中芯紙に点状模様、格子模様などの1〜2mmの深さのエンボス加工を行い、ライナー紙と貼り合わせたものである。ライナー紙は片面あるいは両面に貼り合わせる。断熱効果があり、断熱部材3として使用することができる。また、中芯紙は100〜180g/m2の範囲で、ライナー紙は200〜270g/m2の範囲で使用することができる。
【0019】
つぎに、本発明の電子レンジ対応紙カップAを製造する方法について説明する。
【0020】
まず、断熱部材3が貼着される前の電子レンジ対応紙カップaが、図3に示すような胴部材ブランク10と底部材ブランク20とから製造されるが、その製造方法は、大きく二つの方法に分けることができる。
【0021】
一つの方法は、図4に示すように、まず一般的な紙カップと同様な形状の紙カップを作製する。この底部材2の変形前の紙カップの製造は、紙カップ成型機で一般的な紙カップと同様に成型することができる。一般的に、胴部材ブランク10は、あらかじめ前工程で打ち抜かれたものを使用し、底部材ブランク20は、紙カップ成型機上で打ち抜かれる。この底面部21が底上げとなっている紙カップをつぎの工程で底面部21を下方に凹状に変形してU字形状の底面部21Uとする方法である。
【0022】
もう一つの方法は、図5に示すように、予め、胴部材1と底部材2とを別の工程で加工しておく。そして、つぎの工程で、筒状に成形した胴部材1aとU字形状の底面部21Uを有する底部材2aとを、底部材1の屈曲部22を胴部材1の折り返し部13と胴部11の下端部とで挟んで接合する方法である。
【0023】
つぎに、電子レンジ対応紙カップaと断熱部材3とをそれぞれ別々に作成し、図6に示すように、電子レンジ対応紙カップaの底面部21Uの外面に断熱部材3を接着剤を用いて貼り合わせる。
【0024】
接着剤としては、例えば、セルロ−ス系、ポリ酢酸ビニル系、ポリアクリル系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、エポキシ系、アミノ樹脂系、ゴム系、ジエン系、その他をビヒクルの主成分とする溶剤型、エマルジョン型、ホットメルト型、その他等の接着剤を使用することができる。特に接着剤は、限定されるものではないが、熱湯などの熱い内容物を入れても、熱により剥がれてしまうことのない、耐熱性のあるタイプの接着剤を使用することが好ましい。
【0025】
本発明の電子レンジ対応紙カップの用途は、インスタントラーメン、惣菜類などを温める即席食品用の容器、あるいはコーヒー、紅茶、スープなどを温める飲料用の容器として有効である。
【0026】
【実施例】
次に、本発明について実施例をあげて、さらに具体的に説明する。
【0027】
〔実施例〕
胴部材1の材料として、表面からカップ原紙280g/m2/低密度ポリエチレン樹脂μmの構成の材料を使用し、底部材2の材料として、表面からカップ原紙255g/m2/低密度ポリエチレン樹脂25μmの構成の材料を使用した。まず、胴部材1の材料を図3のような胴部材ブランク10に打ち抜き、この胴部材ブランク10をマンドレルに巻き付け、筒状の胴部材1aに形成した。つぎに、一般的な紙カップの成形機で、胴部材1の下方から底部材ブランク20を嵌め込み、接着部分を熱風で加熱し、胴部材1の下端を内側に折り返して折り返し部13とした。つづいて、胴部材1の上端部を外側にカールしトップカール部12を形成した。作製した紙カップの底面部21をつぎの工程で下方に凹状に変形してU字形状の底面部21Uとして電子レンジ対応紙カップaを作成した。つぎに、材料として、E段ボールを使用して、電子レンジ対応紙カップaの下端の円周よりやや小さい面積の円形の断熱部材3を打ち抜き加工で打ち抜いて作製した。この断熱部材3を電子レンジ対応紙カップaのaの底面部21Uの下面部21Uaの外面にポリアクリル系樹脂のエマルジョン型の接着剤を用いて接着して本発明の電子レンジ対応紙カップAを作製した。
【0028】
〔比較例〕
実施例と同一の材料を使用し、紙カップの胴部材1の胴部11の外径、高さなど胴部材1の形状を実施例と同一にし、底部材2の底面部21は平面状である従来の形状で作成した。
【0029】
本発明の電子レンジ対応紙カップの実施例、そして実施例と同じ外寸法の比較例の紙カップに水200mlを入れ、電子レンジ(NEC社製、電子レンジMC−E2家庭用高周波出力:500W)にて加熱調理を行なった。その結果、実施例においては、電子レンジ対応紙カップのどの部分にも焦げの発生は見られなかった。一方、比較例においては、加熱調理2分後に糸じり部がやや茶色に変色し、5分後には糸じり部に焦げが発生した。また、熱い内容物が入った状態で下面上に置いた時に、断熱部材の表面が下面に接触したが、内容物は急激に冷めることなく、かつ、熱さを感じることなく断熱部材の面を手で押さえて本発明の電子レンジ対応紙カップを持つことができた。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、紙カップの底面部の形状が下方に凹状に変形したU字形状にし、底面部の外面に断熱部材を貼着することによって、紙カップの中に、飲料や即席食品などの内容物を入れ、電子レンジで加熱調理した時に、糸じり部に焦げを発生させることがなく、加熱後に内容物を下面に置いた時に、内容物を冷ましにくい底面部に断熱性を有する電子レンジ対応紙カップを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電子レンジ対応紙カップの一実施例を示す一部切り欠け断面図である。
【図2】本発明による電子レンジ対応紙カップの底部材の形状を示す断面図である。
【図3】本発明による電子レンジ対応紙カップの胴部材ブランクおよび底部材ブランクを示す展開図である。
【図4】断熱部材を貼着する前の電子レンジ対応紙カップを製造する方法を説明する図である。
【図5】断熱部材を貼着する前の電子レンジ対応紙カップを製造するもう一つの方法を説明する図である。
【図6】本発明の電子レンジ対応紙カップを製造する方法を説明する図である。
【図7】従来の紙カップを示す部分断面図である。
【符号の説明】
A 電子レンジ対応紙カップ
a 電子レンジ対応紙カップ(断熱部材の貼着前の状態)
P 紙カップ(従来)
Z 糸じり部
1 胴部材
1a 胴部材(接合前)
10 胴部材ブランク
11 胴部
12 トップカール部
13 折り返し部
2 底部材
2a 底部材(接合前)
20 底部材ブランク
21 底面部
21U 底面部(変形後)
21Ua 下面部(変形後)
21Ub 側壁部(変形後)
22 屈曲部(底部材)
3 断熱部材

Claims (3)

  1. 状の胴部と該胴部の上端部を外側にカールしたトップカール部と該胴部の下端部を内側に折り返した折り返し部とを有する胴部材と、底面部と該底面部の外周縁部を下方へ略直角に屈曲した屈曲部とを有する底部材とが、それぞれ紙を主強度材として構成され、前記胴部と前記折り返し部との間に前記屈曲部が挟み込まれた糸じり部で前記胴部材と前記底部材とが互いに接合された紙カップであって、該紙カップの前記底面部が該底面部の前記外周縁部から下方に凹状に変形したU字形状に形成され、かつ、前記底面部の外面に断熱部材を該断熱部材の表面と前記胴部の下端により形成される下端面との距離が前記下端面より上方に8mm未満、及び前記下端面から下方に2mm未満の範囲に貼着してなることを特徴とする電子レンジ対応紙カップ。
  2. 前記断熱部材が、段ボールからなることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ対応紙カップ。
  3. 前記断熱部材が、エンボス加工紙からなることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ対応紙カップ。
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