JP4659502B2 - アクチュエータ - Google Patents
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Description
このような形状記憶合金の形状回復力を利用したアクチュエータは、装置の小型化、軽量性、静音性などの優れた特徴を持っている。
このアクチュエータは、温度変化により伸縮する形状記憶合金で形成された第1および第2の線材と、第1および第2の線材への通電を制御することにより第1および第2の線材の温度を変化させる通電制御装置と、第1および第2の線材の温度変化により発生するそれぞれの形状回復力の少なくともいずれかを加えられることにより変動する可動子と、第1および第2の線材の少なくとも一方にかかる荷重を吸収するための緩衝部材と、を備える。
横軸は温度Tを示し、縦軸は電気抵抗値(以下、単に「抵抗値」とよぶ)Rを示す。同図実線に示すグラフは、本実施例における形状記憶合金の温度−抵抗特性であり、同図破線に示すグラフは、一般的な形状記憶合金の温度−抵抗特性である。
本実施例において示す形状記憶合金は、Ni−Ti−Cuを含む構成される。Ni、Ti、Cuの組成比は、それぞれ46.9%、44.8%、8.3%である。形状記憶合金は、温度変化に伴って形状を変化させ、形状の変化に伴って抵抗値が変化する。このように、形状記憶合金の温度、形状、抵抗値の間には互いに相関関係がある。以下、「線材」とは、このような形状記憶合金にて形成された長細いひも状の形であるとして説明する。
このように、形状記憶合金においては、温度と抵抗値の間には同図に示すような関係が成立する。したがって、線材の抵抗値を測定すれば、線材の温度を知ることができる。
これに対し、上記のようなNi−Ti−Cuによる形状記憶合金によれば、同図の実線にて示したような温度−抵抗特性を示す。そのため、一般的な形状記憶合金に比べて、抵抗値から温度を特定しやすい。
厳密には、温度−抵抗特性において形状記憶合金は少なからずヒステリシスが発生するため、必ずしも抵抗値から温度が特定されるわけではない。しかし、この形状記憶合金の抵抗の変化を主として支配しているのは温度ではなく形状記憶合金の歪であるため、最終的に抵抗値から形状記憶合金の歪量を特定することが可能となる。
以下、温度TBのことを動作限界温度とよぶ。動作限界温度は、同図に示したように線材のオースティナイト相への相転移が完了するときの温度として規定されてもよいし、線材をそれ以上加熱しても外部の障害物による抑止力に抗して収縮を続けられなくなるときの温度として規定されてもよい。
形状記憶合金制御装置10は、線材制御回路150と通電制御装置100を含む。
線材制御回路150においては、電源180、線材スイッチとしての第1トランジスタTr1、制御抵抗としての第1抵抗R1、線材200が直列に接続されている。そして、線材200の一端は接地されている。
電源180は、定電圧の電源である。第1トランジスタTr1は、第1抵抗R1と線材200の通電を制御するためのスイッチの役割を果たす。第1トランジスタTr1がオンされると、電源180により、第1抵抗R1と線材200の経路に定電圧が印加される。第1トランジスタTr1のオン抵抗を無視すれば、第1抵抗R1と線材200には、電源電圧をそれぞれの抵抗値に応じて分圧した電圧が印加されることになる。
以下、通電制御装置100が線材200の伸縮を制御するために第1トランジスタTr1をオンして通電させることを「作用通電」とよび、作用通電が実行される時間のことを「作用通電時間」とよぶ。
以下、通電制御装置100が線材200の線材電位V1を計測するために第1トランジスタTr1をオンして通電させることを「検出通電」とよび、検出通電が実行される時間のことを「検出通電時間」とよぶ。作用通電時間は、線材電位V1に応じて可変であるが、検出通電時間は可変であってもよいし一定であってもよい。
線材200の通電制御は、周期Tを1単位として実行される。同図に示すT1やT2がこの1周期に相当する時間である。
周期T1のうち、W1として示される期間は検出通電時間にあたる。検出通電時間は、線材電位V1を検出するための通電時間である。検出通電時間W1は周期T1の1/10程度の長さである。周期T1のうち、U1として示される期間は作用通電時間にあたる。作用通電時間は、線材200を通電加熱して線材200の伸縮を制御するための期間である。通電制御装置100は、検出通電時間W1において検出した線材電位V1に基づいて、作用通電時間U1を決定する。
図4(a)は、補正前の制御値と温度の関係を示す模式図である。横軸は温度Tを示し、縦軸は制御値Iを示す。
図4(b)は、補正後の制御値と温度の関係を示す模式図である。横軸は温度Tを示し、縦軸は補正後の制御値Jを示す。
通電制御装置100は、所定の比較電位に対する線材電位V1の差や比として制御値を計算する。比較電位は接地電位や電源電圧のように予め定められた電位であってもよい。ここでは、比較電位=電源電位、制御値=線材電位/比較電位として説明するが、制御値は、線材電位と比較電位を変数とした所定の線形計算により算出される値であればよい。
温度TBにおいて、線材の抵抗値が5Ωであるとする。この場合、線材電位V1は約7Vとなる。このときの制御値は、7÷20により約0.3となる。このように、制御値と線材電位、線材電位と抵抗値は相関関係を有するので、制御値により線材200の抵抗値を間接的に知ることができる。制御値は線材200の抵抗値に応じて変化する値であるといえる。
この回路においては、第1トランジスタTr1と第1抵抗R1をつなぐ点の電位V2が、通電制御装置100により比較電位として検出されている。
第1抵抗R1と線材200に印加される電圧は、第1トランジスタTr1のオン抵抗により電源電圧から若干電圧降下している。また、電源180の電圧そのものが変動することもある。たとえば、電源180が別の回路との共有電源であるときには、その回路の処理負荷に応じて、第1抵抗R1と線材200に印加される電圧も変動する可能性がある。同図に示す形状記憶合金制御装置10において、通電制御装置100は線材電位V1の検出時に比較電位V2を検出する。このため、通電制御装置100は実際に第1抵抗R1および線材200に印加される電圧に基づいて制御値を計算できる。そのため、制御値に基づいて線材200の状態をより正確に判定できる。以下、特に断らない限り、形状記憶合金制御装置10というときには図5に示した形状記憶合金制御装置10であるとして説明する。
ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的には検出プログラムや算出プログラム等のコンピュータプログラムによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
指示検出部130は、ユーザからの線材200の制御目標となる指示値を検出する。ここでいう指示値は、目標とすべき補正制御値であってもよいし、抵抗値や温度、線材200の長さなどの線材200の状態を示す変数であってもよい。指示検出部130は、補正制御値と、抵抗値、温度、長さ等の変数の対応関係を定義したテーブルデータを記憶する。指示検出部130は、このテーブルデータを参照して、目標とすべき補正制御値を特定し制御部140に通知する。
あるいは、指示検出部130は、これらの変数を互いに別の変数に変換するための演算式を記憶してもよい。たとえば、目標値が抵抗値として指示されたときには、指示検出部130は、抵抗値から補正制御値を演算するために予め定義された演算式によって、指示された抵抗値を補正制御値に変換して、制御部140に通知する。
状態検出部110は、検出通電部112、線材電位検出部114、補正値記憶部129および制御値取得部116を含む。
検出通電開始タイミングになると、制御部140は検出通電部112に検出通電の実行を指示する。検出通電部112は、所定の検出通電時間、第1トランジスタTr1をオンして検出通電させる。このとき、検出通電部112は検出通電の開始の旨を線材電位検出部114に伝える。
作用部120は、時間特定部122、作用通電部124、リミット判定部126およびリミット制御部128を含む。
時間特定部122は、補正制御値に応じて作用通電時間を決定する。時間特定部122は、まず、制御値取得部116から取得した補正制御値と制御部140により指示された目標とすべき補正制御値との差を制御偏差として計算する。時間特定部122は、予め制御偏差と作動通電時間を対応づけたデータテーブルを記憶する。時間特定部122は、このデータテーブルを参照して、制御偏差に応じた作動通電時間を決定する。作用通電部124は、時間特定部122により決定された作用通電時間、第1トランジスタTr1をオンして線材200を通電させる。
なお、時間特定部122は、制御偏差から作動通電時間を特定するための演算式を記憶してもよい。このときには、時間特定部122は、計算された制御偏差を変数として、この演算式により作動通電時間を算出してもよい。
このフローチャートに示す各ステップは、形状記憶合金制御装置10の電源が投入されてから繰り返し実行される処理である。すなわち、同図に示すフローチャートは、検出通電後に作用通電が実行される1周期分の処理を示している。
1.供給電力に基づく判定:
所定の期間において、線材200に供給される電力量が予め定められたリミット値に達したときにリミット条件が成立したと判定する。たとえば、所定回数の周期において、作用通電時間の長さが所定時間を超えた場合に、リミット条件が成立すると判定してもよい。このような判定方法によれば、線材200の状態に関わらず、線材200への過度の電力供給を未然に防ぐことができる。そのため、線材電位の検出処理に不具合が生じた場合であっても、リミット条件の成否を判定できる。
2.制御値に基づく判定:
制御値と、予め定められた基準値との差または比が所定値を超えたときにリミット条件が成立したと判定してもよい。たとえば、補正制御値が温度TAにおいて想定される補正制御値から20%以上小さくなったときに、リミット条件が成立すると判定してもよい。このような判定方法によれば、線材200が動作限界温度に達する前に線材200への通電を抑制できる。線材200の最高温度を動作限界温度よりも低く設定することができるため、より安全な制御が可能となる。
あるいは、補正制御値や制御偏差の単位時間あたりの変化量に応じて、リミット条件の成否を判定してもよい。たとえば、補正制御値が所定時間変化しない場合や、制御偏差が所定時間縮小しない場合には、線材200の温度が既に動作限界温度に達してしまっている可能性があるので、リミット条件が成立したと判定してもよい。制御値に基づく判定方法によれば、線材200の実際の状態に応じてリミット条件判定を実行できる。
あるいは、リミット条件が成立したときには、線材200を冷却するために設けられた冷却ファンなどの冷却装置を駆動することにより、能動的に線材200から除熱してもよい。
以下、このような形状記憶合金制御装置10の線材200を含んで構成される各種のアクチュエータについて説明する。
第1線材220と第2線材222は、共に、温度変化により伸縮する形状記憶合金で形成された線材である。形状記憶合金制御装置10の通電制御装置100において制御部140は、第1線材220と第2線材222のいずれか一方に制御対象を切り換える。たとえば、図3を再度参照し、制御部140は、周期T1では第1線材220を制御対象とし、周期T2では第2線材222を制御対象として周期ごとに切り換えてもよい。第1線材220の作用通電時間においては、第2線材222は作用通電されない。また、第2線材222が作用通電時間においては、第1線材220は作用通電されない。
第1型アクチュエータ230は、図10に示す構成のほかに形状記憶合金制御装置10を含んで構成されているともいえる。
可動子206は第1線材220と対向する面(以下、「第1面」とよぶ)に複数個の突起を有する。また、第2線材222と対向する面(以下、「第2面」とよぶ)にも複数個の突起を有する。可動子206は、これらの突起にて第1線材220や第2線材222と当接する。可動子206は、このように第1面および第2面については同図紙面に向かう方向にては、櫛歯形状の形態となっている。そして、櫛歯の先、すなわち、突起によって第1線材220や第2線材222に当接しているといえる。
すなわち、第1線材220が緊張収縮し、第2線材222が弛緩伸長しているときには可動子206は同図下方に変位する。
すなわち、第2線材222が緊張収縮し、第1線材220が弛緩伸長しているときには可動子206は同図上方に変位する。
第1型アクチュエータ230は、たとえば、カメラつき携帯電話のような小型カメラのレンズ駆動装置としての応用が考えられる。可動子206の変位に応じてレンズを駆動することにより、小容積に光学式ズームレンズ機構を収めることができる。
図11(a)は、第2型アクチュエータの正面図である。図11(b)は、第2型アクチュエータの側面図である。
第2型アクチュエータ240において可動子206は、軸支持基材242に固定された回転軸208を中心として回動可能に形成されている。第1線材220の一端は可動子206に接続され、他端は固定基材246に接続される。第2線材222の一端は可動子206に接続され、他端は固定基材246に接続される。可動子206は、第1線材220や第2線材222の接続される点にかかる力によって回転軸208を中心として回動する。すなわち、第1線材220が緊張収縮し、第2線材222が弛緩伸長しているときには、可動子206は図11(a)において反時計回りに回動する。一方、第2線材222が緊張収縮し、第1線材220が弛緩伸長しているときには、可動子206は図11(a)において時計回りに回動する。このように、可動子206は第1線材220と第2線材222のうち、緊張収縮している側に回動する。
図12(a)は、第3型アクチュエータの正面図である。図12(b)は、第3型アクチュエータの側面図である。
第3型アクチュエータ250において可動子206は、固定基材246に固定された回転軸208を中心として回動可能に形成される。第1線材220の一端は可動子206に接続され、他端は可動固定材252に接続される。また、第2線材222の一端は可動子206に接続され、他端は可動固定材252に接続される。可動子206は、第1線材220や第2線材222が接続される点にかかる力によって回転軸208を中心として回動する。すなわち、第1線材220が緊張収縮し、第2線材222が弛緩伸長しているときには、可動子206は図12(a)において反時計回りに回動する。第2線材222が緊張収縮し、第1線材220が弛緩伸長しているときには、可動子206は図12(a)において時計回りに回動する。このように、可動子206は第1線材220と第2線材222のうち、緊張収縮している側に回動する。
第2型アクチュエータ240や第3型アクチュエータ250は、小型の舵取り機構として応用可能である。たとえば、玩具や医療器具への応用が考えられる。
図13(a)は、第4型アクチュエータが非変形時の外観図である。図13(b)は、第4型アクチュエータの変形時の外観図である。図13(a)においては、第4型アクチュエータ260の上面と正面が並べて示されている。
第4型アクチュエータ260において第1線材220の一端は可動部256に接続され、他端は固定部254に接続されている。また、第2線材222の一端も可動部256に接続され、他端は固定部254に接続されている。変形材258は、ゴムにて形成され可動部256と固定部254と接続される。変形材258は、第1線材220や第2線材222の伸縮によって変形する。固定部254は所定位置に固定されている。
第5型アクチュエータ270においては、第4型アクチュエータ260の変形材258の部分がバネによって形成されている。この場合の可動部256の動きは第4型アクチュエータ260と同様である。第5型アクチュエータ270においても、変形材258が第1線材220と第2線材222の緊張収縮により発生する力を吸収できる。
第4型アクチュエータ260や第5型アクチュエータ270は、小型の首振り機構として応用可能である。たとえば、玩具や医療器具への応用が考えられる。一例として、第4型アクチュエータ260や第5型アクチュエータ270は血管内に設置され、外部からの通電により血流の方向や量を制御するための微小弁として機能する。
Claims (4)
- 温度変化により伸縮する形状記憶合金で形成された第1および第2の線材と、
前記第1および第2の線材への通電を制御することにより前記第1および第2の線材の温度を変化させる通電制御装置と、
前記第1および第2の線材の温度変化により発生するそれぞれの形状回復力の少なくともいずれかを加えられることにより変動し、前記第1の線材が緊張収縮しているときには第1の面にその形状回復力を加えられ、前記第2の線材が緊張収縮しているときには前記第1の面とは反対側の第2の面にその形状回復力を加えられ、前記第1または第2の面のいずれかの側に変位する可動子と、
前記第1および第2の線材の少なくとも一方にかかる荷重を低減するための緩衝部材と、
前記可動子の前記第1および第2の面にそれぞれ対向するように設けられた第1および第2の支持基材と、を備え、
前記第1の線材は前記可動子の第1の面と前記第1の支持基材との間に伸縮方向が前記第1の面に対して略平行となるように掛け渡されるとともに、前記第2の線材は前記可動子の第2の面と前記第2の支持基材との間に伸縮方向が前記第2の面に対して略平行となるように掛け渡され、
前記第1の支持基材における前記第1の線材との対向面、前記可動子における前記第1の線材との対向面、前記第2の支持基材における前記第2の線材との対向面および前記可動子における前記第2の線材との対向面にはそれぞれ突起が設けられ、
これらの突起は、前記第1の線材が前記第1の支持基材の突起と当接する位置と前記可動子の突起と当接する位置が互い違いとなるように、また、前記第2の線材が前記第2の支持基材の突起と当接する位置と前記可動子の第2の面における突起と当接する位置が互い違いとなるように設けられており、
前記可動子は、前記第1および第2の面に設けられた突起に対する前記第1および第2の線材からの作用力によって前記第1または第2の面のいずれかの側に変位することを特徴とするアクチュエータ。 - 前記通電制御装置は、前記第1および第2の線材のうちの一方を緊張収縮させるとき他方が弛緩伸長するように通電制御することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
- 前記緩衝部材は、前記第1および第2の支持基材がそれぞれに設けられた突起に対する前記第1および第2の線材からの作用力によって変位可能となるように前記第1および第2の支持基材を支持することにより、前記第1および第2の線材の少なくとも一方にかかる荷重を吸収することを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
- 前記緩衝部材は、前記第1および第2の支持基材の少なくとも一方の変位量に応じてその変位を妨げる方向に力を付与することを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ。
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