JP4659415B2 - 摺動部材および樹脂塗料組成物 - Google Patents
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Description
ポリアミドイミド(以下、PAIと略称する。)樹脂にエポキシ樹脂とアルミナなどの硬質粒子およびポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略称する。)樹脂などの固体潤滑剤を配合することにより、ピストンスカートなどの過酷な使用条件でも高い耐摩耗性を示す表面被膜層が知られている(特許文献1)。
また、PAI樹脂に含油したマイクロカプセルを配合することにより、ピストンスカートなどの過酷な使用条件でも高い耐摩耗性を示す表面被膜層が知られている(特許文献2)。
また、PTFE樹脂と膨張化黒鉛を焼結金属に含浸焼成し、シリコーン油などの潤滑油を後含浸して含油樹脂被覆材料とすることにより高い耐摩耗性を示す表面被膜層が知られている(特許文献3)。
また、特許文献2記載の表面被膜は、マイクロカプセルを配合した塗布液を塗布してから焼成を行なうため、マイクロカプセルの外壁と、マイクロカプセルに内包されている油とが耐える程度の焼成温度しか適用できない。よって、ポリイミド(以下、PIと略称する。)樹脂やPTFE樹脂などの耐熱樹脂は使用できないという欠点がある。また、マイクロカプセルは高価であり、コスト面で使用上の問題がある。
また、特許文献3記載の表面被膜は、膨張化黒鉛を使用して気孔を形成し、潤滑油を後含浸させるが、膨張化黒鉛は耐摩耗性が低いため、被膜の耐摩耗性もその分だけ減殺され低くなるという問題がある。
上記連通孔に潤滑油が含浸されてなることを特徴とする。
本発明の樹脂塗料組成物は、樹脂と、気孔形成材と、硬質粒子とが配合されてなる、上記気孔形成材の未抽出分が残存する多孔質樹脂被膜を形成するための樹脂塗料組成物であって、上記気孔形成材は、塗膜形成後に、上記気孔形成材を溶解し、かつ上記樹脂および硬質粒子を溶解しない抽出溶媒により抽出される物質であり、有機アルカリ金属塩および有機アルカリ土類金属塩から選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする。
潤滑油は、摺動部材に練り込まれるのではなく、上記連通孔に含浸されることにより、該連通孔を介して摺動面への該潤滑油の流動性が確保されるため、摺動面で潤滑油が消費されると、含浸された潤滑油が連通孔を経て常に摺動面に供給されるので、含浸されている潤滑油全量の 60 %以上が潤滑油として利用可能となる。
なお、潤滑油として利用可能とは、該潤滑油が上記多孔質樹脂表面に滲み出し可能であり、各用途および使用条件において摺動面へ潤滑性を付与できることをいう。
本発明に係る樹脂塗料組成物は、10%以上の連通孔率を有する多孔質樹脂被膜を形成する成分を配合してなるので、摺動部材の表面に上記摺動部材表面被膜を形成することが可能である。
以下、連通孔率に続いて本発明の樹脂塗料組成物を構成する樹脂、気孔形成材および硬質粒子について説明し、次に樹脂溶媒、抽出溶媒、多孔質樹脂被膜形成方法および摺動部材表面被膜について説明する。
以上の計算は、同一サイズの球体を考えた場合であるが、複数のサイズの球体を充填した場合は、六方最密充填よりも充填率は大きくなり、連通孔率は小さくなる。
また、粉末状の球体樹脂粒子を圧縮成形した後に焼結する場合、点接触はあり得ず、球体樹脂粒子は変形して面接触する。このため、六方最密充填よりも充填率はより大きくなり、連通孔率はより小さくなる。このため従来の焼結樹脂成形体の連通孔率は 20%程度が限界となっている。また被膜とした場合、樹脂成分が気孔形成材内部に入り込む可能性があるため、連通孔率はさらに小さくなる。
具体的には、連通孔率は数1内の式(1)に示す方法で算出した。
V;焼成された洗浄前成形体の体積
ρ;焼成された洗浄前成形体の密度
W;焼成された洗浄前成形体の重量
V1;樹脂粉末の体積
ρ1;樹脂粉末の密度
W1;樹脂粉末の重量
V2;気孔形成材の体積
ρ2;気孔形成材の密度
W2;気孔形成材の重量
V3;洗浄後の多孔質樹脂の体積
W3;洗浄後の多孔質樹脂の重量
V'2;洗浄後に多孔質樹脂に残存する気孔形成材の体積
これらの中でも、特にPI系樹脂およびPTFE樹脂からなる樹脂混合物に後述の硬質粒子および気孔形成材を配合した樹脂塗料組成物が、耐摩擦摩耗特性に優れた摺動部材表面被膜を形成するのに好適である。
PAI樹脂は、分子内にイミド結合とアミド結合とを有する樹脂である。また、芳香族系PAI樹脂のイミド結合は、ポリアミド酸などの前駆体であっても、また閉環したイミド環であってもよく、さらにはそれらが混在している状態であってもよい。このような芳香族系PAI樹脂は、芳香族第一級ジアミン、たとえばジフェニルメタンジアミンと芳香族三塩基酸無水物、たとえばトリメリット酸無水物のモノまたはジアシルハライド誘導体から製造されるPAI樹脂、芳香族三塩基酸無水物と芳香族ジイソシアネート化合物、たとえばジフェニルメタンジイソシアネートとから製造されるPAI樹脂などがあり、さらに、アミド結合に比べてイミド結合の比率を大きくしたPAI樹脂として、芳香族、脂肪族または脂環族ジイソシアネート化合物と芳香族四塩基酸二無水物および芳香族三塩基酸無水物とから製造されるPAI樹脂等があり、いずれのPAI樹脂であっても使用することができる。
また、PI樹脂と、PAI樹脂とを併用することもできる。
気孔形成材は、無機塩化合物、有機塩化合物、またはこれらの混合物であることが好ましく、特に洗浄抽出工程が容易となる水溶性物質であることが好ましい。また、アルカリ性物質、好ましくは防錆剤として使用できる弱アルカリ性物質が好ましい。弱アルカリ塩としては、有機アルカリ金属塩、有機アルカリ土類金属塩、無機アルカリ金属塩、無機アルカリ土類金属塩などが挙げられる。未抽出分が脱落したときも、比較的軟らかく、転動面やすべり面を損傷し難いことから、有機アルカリ金属塩、有機アルカリ土類金属塩を用いることが好ましい。なお、これらの金属塩は1種または2種以上混合して用いてもよい。また、抽出溶媒として安価な水を使用することができ、気孔形成時における廃液処理などが容易となることから水溶性の弱アルカリ塩を使用することが好ましい。
また、焼成時における気孔形成材の溶融を防止するため、気孔形成材は使用する樹脂の焼成温度よりも高い融点の物質を使用する。
本発明に好適に用いることができる水溶性有機アルカリ金属塩としては、安息香酸ナトリウム(融点 430℃)、酢酸ナトリウム(融点 320℃)またはセバシン酸ナトリウム(融点 340℃)、コハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムなどが挙げられる。融点が高く、多種の樹脂に対応でき、かつ水溶性が高いという理由から、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムまたはセバシン酸ナトリウムが特に好ましい。
無機アルカリ金属塩としては、例えば、炭酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、タングステン酸ナトリウムなどが挙げられる。
本発明に使用できる気孔形成材の配合割合は、樹脂粉末、気孔形成材および硬質粒子を含めた全量に対して、10 体積%以上、好ましくは 20 体積%以上、より好ましくは 30 体積%〜70 体積%とする。
抽出溶媒による気孔形成材の抽出後、被覆層に残存する気孔形成材は微量であるので、気孔形成材の体積が略連通孔の体積になると考えると、気孔形成材の配合割合が、10 体積%未満では油潤滑による特徴的な優れた摺動特性を示すことができない。また、潤滑剤が希薄な使用条件で優れた摺動特性を発揮するためには、 30 体積%〜70 体積%の気孔形成材を配合することが好ましい。
(1)PI系樹脂を樹脂溶媒に溶解してなる樹脂ワニスに、気孔形成材および硬質粒子を配合して、均一に撹拌する方法。
(2)PTFE樹脂粉末、気孔形成材および硬質粒子を抽出溶媒に配合し、撹拌して気孔形成材を溶解させると共にPTFE樹脂粉末および硬質粒子を分散させた後、抽出溶媒を除去して気孔形成材配合物を得る。次いで、この気孔形成材配合物を樹脂ワニスに配合して、均一に撹拌する方法。
(3)PI系樹脂粉末、気孔形成材および硬質粒子を抽出溶媒に配合し、撹拌して気孔形成材を溶解させると共にPI系樹脂粉末および硬質粒子を分散させた後、抽出溶媒を除去して気孔形成材配合物を得る。次いで、この気孔形成材配合物を樹脂溶媒に配合して、均一に撹拌する方法。
(4)PI系樹脂粉末、気孔形成材および硬質粒子を樹脂溶媒に配合して、均一に撹拌する方法。
(5)PI系樹脂粉末、気孔形成材および硬質粒子を樹脂溶媒に配合して、均一に撹拌した後、樹脂溶媒を除去して粉砕し、粉体の樹脂塗料組成物とする方法。
上記樹脂塗料組成物において、硬質粒子は必要に応じて配合される。また、耐摩擦摩耗特性を向上させる目的でPTFE樹脂粉末を上記樹脂塗料組成物に配合することもできる。
また、抽出溶媒を除去する方法としては、加熱蒸発、真空蒸発、窒素ガスによるバブリング、透析、凍結乾燥などの方法を用いることができる。手法が容易で、設備が安価であることから加熱蒸発により抽出溶媒の除去を行なうことが好ましい。
含浸させることができる潤滑油としては、例えば、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油等の鉱油、ポリブデン、ポリαオレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂やポリオールエステル油、リン酸エステル、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等、一般に使用されている潤滑油であれば特に限定することなく使用できる。
上記潤滑油には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、極圧剤、酸化防止剤、防錆剤、流動点降下剤、無灰系分散剤、金属系清浄剤、界面活性剤、摩耗調整剤などを配合できる。酸化防止剤としては、フェノ一ル系、アミン系、イオウ系などを単独または、混合して使用できる。
特に潤滑油が含浸された多孔質樹脂被膜から供給される潤滑油は長期にわたり酸化劣化しないことが望まれるので、上記のような酸化防止剤を配合することが好ましい。
含浸方法としては、多孔質樹脂被膜の内部まで含浸できる方法であればよい。潤滑油が満たされた含浸槽に多孔質樹脂被膜を浸漬した後、減圧して含浸する減圧含浸が好ましい。また、高粘度のシリコーン油などを用いる場合、加圧含浸することができる。これらを組み合わせた加圧減圧含浸としてもよい。
固形分体積比 70 : 10 : 20 でPAI樹脂ワニス(日立化成工業(株)製HPC−4250−30)、球状アルミナ(アドマテックス(株)製アドマファインAQ−502)、気孔形成材である安息香酸ナトリウム粉末(和光純薬(株)製試薬)をミキサーにて 5 分間混合して得た樹脂塗量組成物を、φ33 mm×6 mm のSUS304円盤にディッピング法にて塗布し、乾燥( 100℃×30 分間)させ、焼成( 180℃×1 時間)し、膜厚 50μm の気孔形成材含有塗膜を得た。その後、気孔形成材含有塗膜を 80℃の温水で超音波洗浄器にて洗浄し気孔形成材を溶出させ、乾燥し、連通孔率 38%の多孔質樹脂被膜試験片を得た。
固形分体積比 70 : 10 : 20 でPAI樹脂ワニス(日立化成工業(株)製HPC−4250−30)、球状アルミナ(アドマテックス(株)製アドマファインAQ−502)、気孔形成材である安息香酸ナトリウム粉末(和光純薬(株)製試薬)をミキサーにて 5 分間混合して得た樹脂塗量組成物を、φ33 mm×6 mm のSUS304円盤にディッピング法にて塗布し、乾燥( 100℃×30 分間)させ、焼成( 180℃×1 時間)し、膜厚 50μm の気孔形成材含有塗膜を得た。その後、気孔形成材含有塗膜を 80℃の温水で超音波洗浄器にて洗浄し気孔形成材を溶出させ、乾燥し、連通孔率 38%の多孔質樹脂被膜含有体とした後、オートマチックトランスミッション油(昭和シェル石油(株)製デキシロン2)を真空含浸法にて含浸し、多孔質樹脂被膜試験片を得た。
固形分体積比 60 : 10 : 10 : 20 でPAI樹脂ワニス(日立化成工業(株)製HPC−4250−30)、PTFE樹脂(スリーエム(株)製ホスタフロンTF9207)、球状アルミナ(アドマテックス(株)製アドマファインAQ−502)、気孔形成材である安息香酸ナトリウム粉末(和光純薬(株)製試薬)をミキサーにて 5 分間混合して得た樹脂塗量組成物を、φ33 mm×6 mm のSUS304円盤にディッピング法にて塗布し、乾燥( 100℃×30 分間)させ、焼成( 180℃×1 時間)し、膜厚 50μm の気孔形成材含有塗膜を得た。その後、気孔形成材含有塗膜を 80℃の温水で超音波洗浄器にて洗浄し気孔形成材を溶出させ、乾燥し、連通孔率 38%の多孔質樹脂被膜試験片を得た。
固形分体積比 60 : 10 : 10 : 20 でPAI樹脂ワニス(日立化成工業(株)製HPC−4250−30)、PTFE樹脂(スリーエム(株)製ホスタフロンTF9207)、球状アルミナ(アドマテックス(株)製アドマファインAQ−502)、気孔形成材である安息香酸ナトリウム粉末(和光純薬(株)製試薬)をミキサーにて 5 分間混合して得た樹脂塗量組成物を、φ33 mm×6 mm のSUS304円盤にディッピング法にて塗布し、乾燥( 100℃×30 分間)させ、焼成( 180℃×1 時間)し、膜厚 50μm の気孔形成材含有塗膜を得た。その後、気孔形成材含有塗膜を 80℃の温水で超音波洗浄器にて洗浄し気孔形成材を溶出させ、乾燥し、連通孔率 38%の多孔質樹脂被膜含有体とした後、オートマチックトランスミッション油(昭和シェル石油(株)製デキシロン2)を真空含浸法にて含浸し、多孔質樹脂被膜試験片を得た。
固形分体積比 60 : 10 : 10 : 20 でPI樹脂ワニス(宇部興産(株)製U−ワニス−A)、PTFE樹脂(スリーエム(株)製ホスタフロンTF9207)、球状アルミナ(アドマテックス(株)製アドマファインAQ−502)、気孔形成材である安息香酸ナトリウム粉末(和光純薬(株)製試薬)をミキサーにて 5 分間混合して得た樹脂塗量組成物を、φ33 mm×6 mm のSUS304円盤にディッピング法にて塗布し、乾燥( 100℃×30 分間)させ、焼成( 350℃×1 時間)する操作を2回繰り返し、膜厚 50μm の気孔形成材含有塗膜を得た。その後、気孔形成材含有塗膜を 80℃の温水で超音波洗浄器にて洗浄し気孔形成材を溶出させ、乾燥し、連通孔率 38%の多孔質樹脂被膜試験片を得た。
固形分体積比 60 : 10 : 10 : 20 でPI樹脂ワニス(宇部興産(株)製U−ワニス−A)、PTFE樹脂(スリーエム(株)製ホスタフロンTF9207)、球状アルミナ(アドマテックス(株)製アドマファインAQ−502)、気孔形成材である安息香酸ナトリウム粉末(和光純薬(株)製試薬)をミキサーにて 5 分間混合して得た樹脂塗量組成物を、φ33 mm×6 mm のSUS304円盤にディッピング法にて塗布し、乾燥( 100℃×30 分間)させ、焼成( 350℃×1 時間)する操作を2回繰り返し、膜厚 50μm の気孔形成材含有塗膜を得た。その後、気孔形成材含有塗膜を 80℃の温水で超音波洗浄器にて洗浄し気孔形成材を溶出させ、乾燥し、連通孔率 38%の多孔質樹脂被膜含有体とした後、オートマチックトランスミッション油(昭和シェル石油(株)製デキシロン2)を真空含浸法にて含浸し、多孔質樹脂被膜試験片を得た。
固形分体積比 80 : 10 : 10 でPAI樹脂ワニス(日立化成工業(株)製HPC−4250−30)、球状アルミナ(アドマテックス(株)製アドマファインAQ−502)、PTFE樹脂粉末(スリーエム(株)製ホスタフロンTF9207)をミキサーにて 5 分間混合して得た樹脂塗量組成物を、φ33 mm×6 mm のSUS304円盤にディッピング法にて塗布し、乾燥( 100℃×30 分間)させ、焼成( 180℃×1 時間)し、膜厚 50μm の樹脂混合体被覆試験片を得た。
油中摺動試験:
油中での摩擦摩耗特性を調べるために以下の試験条件にてリングオンディスク試験を行なった。
油:オートマチックトランスミッション油(昭和シェル石油(株)製デキシロン2)
面圧:5.5 MPa、速度:64 m/分、時間:5 時間
試験片:φ33 mm×6 mm、膜厚:50μm
相手材:φ17 mm×φ21 mm×10 mm、SUJ2(表面粗さRa 0.5μm)
測定項目:比摩耗量(×10-8 mm3/(N・m))
無潤滑摺動試験:
無潤滑での摩擦摩耗特性を調べるために以下の試験条件にてリングオンディスク試験を行なった。
面圧:5.5 MPa、速度:64 m/分、時間:30 分間
試験片:φ33 mm×6 mm、膜厚:50μm
相手材:φ17 mm×φ21 mm×10 mm、SUJ2(表面粗さRa 0.5μm)
測定項目:比摩耗量(×10-8 mm3/(N・m))
無潤滑摺動試験において、実施例2、実施例4および実施例6は比較例1に比べて、摩耗量が 88%〜93%減少した。これは無潤滑摺動状態では、比較例1が配合物自体の潤滑性に留まることに対し、実施例2、実施例4および実施例6ではあらかじめ多孔質樹脂被膜に潤滑油を保有しているために、摺動面への潤滑油の供給が連通孔を経由して十分になされることにより、優れた摺動特性が得られるものと考えられる。
また、PTFE樹脂をPI系樹脂と併用する場合は、PI系樹脂単独の場合に比べて、耐摩擦摩耗特性の向上が認められた。これはPTFE樹脂の潤滑性が寄与しているものと考えられる。
また、耐焼付き性が高いことから自動車やオートバイはもとより冷却能力が水冷式よりも低い空冷式エンジンないしはオイルクーラーの省略された芝刈り機、草刈り機、ウェルダー、小型発電機等の潤滑条件の厳しい小型の汎用内燃機関、空気圧縮機およびアクチュエータなどに用いられるピストン等に、好適に利用できる。
Claims (3)
- 基材の表面の少なくとも摺動部分に表面被膜が形成されている摺動部材であって、前記表面被膜は、多孔質樹脂被膜であり、
前記多孔質樹脂被膜は、樹脂と、有機アルカリ金属塩および有機アルカリ土類金属塩から選ばれた少なくとも一つの気孔形成材と、硬質粒子とを含む被覆層とした後、前記気孔形成材を溶解し、かつ前記樹脂および硬質粒子を溶解しない抽出溶媒を用いて前記被覆層から前記気孔形成材を抽出して得られる連通孔を有し、その連通孔率が 10%以上であり、該多孔質樹脂被膜内に前記気孔形成材の未抽出分が残存していることを特徴とする摺動部材。 - 前記連通孔に潤滑油が含浸されてなることを特徴とする請求項1記載の摺動部材。
- 樹脂と、気孔形成材と、硬質粒子とが配合されてなる、前記気孔形成材の未抽出分が残存する多孔質樹脂被膜を形成するための樹脂塗料組成物であって、前記気孔形成材は、塗膜形成後に、前記気孔形成材を溶解し、かつ前記樹脂および硬質粒子を溶解しない抽出溶媒により抽出される物質であり、有機アルカリ金属塩および有機アルカリ土類金属塩から選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする樹脂塗料組成物。
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